特開2017-226322(P2017-226322A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-226322(P2017-226322A)
(43)【公開日】2017年12月28日
(54)【発明の名称】路面状況推定装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 40/068 20120101AFI20171201BHJP
   B60C 23/04 20060101ALI20171201BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20171201BHJP
   B60C 11/24 20060101ALI20171201BHJP
   B60T 8/172 20060101ALI20171201BHJP
   G01M 17/007 20060101ALI20171201BHJP
   G01M 17/02 20060101ALI20171201BHJP
   B60C 23/06 20060101ALN20171201BHJP
【FI】
   B60W40/068
   B60C23/04 N
   B60C19/00 H
   B60C11/24 Z
   B60C19/00 B
   B60T8/172 B
   G01M17/00 Z
   G01M17/02 B
   B60C23/06 A
   B60C23/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-123899(P2016-123899)
(22)【出願日】2016年6月22日
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】特許業務法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 洋一朗
(72)【発明者】
【氏名】関澤 高俊
【テーマコード(参考)】
3D241
3D246
【Fターム(参考)】
3D241BA50
3D241CC08
3D241CD05
3D241DA04Z
3D241DA49Z
3D241DB02Z
3D241DB21Z
3D241DB32Z
3D241DB47Z
3D241DC47Z
3D241DC49Z
3D246EA02
3D246EA17
3D246GB01
3D246HA26A
3D246HA44A
3D246HA64A
3D246HA71B
3D246HA71C
3D246HA76A
3D246HA77A
3D246HA77B
3D246HA77C
3D246HA93B
3D246HA98A
3D246HB02B
3D246HB02C
3D246JB02
3D246JB06
3D246KA03
3D246KA07
3D246KA19
(57)【要約】
【課題】タイヤ側装置の省電力化を行うことが可能な路面状況推定装置を提供する。
【解決手段】車両の加減速時には、車両側装置2のみによって車両側で取得できる車輪速度等の各種情報に基づいて走行路面の路面状況を推定することができることから、送信機14によるデータ送信を行わないようにする。このように、送信機14によるデータ送信を常に行うのではなく、車両の加減速時には行われないようにすることで、データ送信のために必要な電力を少なくできるとともに、タイヤ側装置1の電源の大型化を抑制することが可能となる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に備えられるタイヤ(3)のトレッド(31)の裏面に取り付けられ、前記タイヤの振動の大きさに応じた検出信号を出力する振動検出部(11)と、前記タイヤの1回転中における前記トレッドのうちの前記振動検出部の配置箇所と対応する部分が接地している接地区間を抽出する区間抽出部(17)および前記接地区間中における前記検出信号の高周波成分のレベルを算出するレベル算出部(18)を有する信号処理部(13)と、前記タイヤが所定数回転する毎に前記高周波成分のレベルの算出結果を路面状況が表された路面状況データとして送信する送信機(14)と、を有するタイヤ側装置(1)と、
前記送信機から送信された前記路面状況データを受信する受信機(21)と、前記路面状況データに基づいて、前記タイヤの走行路面の路面状況を推定する路面状況推定部(22)と、を有する車両側装置(2)とを備え、
前記信号処理部には、前記振動検出部の検出信号に基づいて車両が加減速時であることを推定する加減速推定部(191)と、前記加減速推定部にて前記車両が加減速時であると推定されたときに、前記送信機による前記路面状況データの送信を停止する送信動作制御部(192)と、が備えられている路面状態推定装置。
【請求項2】
前記加減速推定部は、前記振動検出部の検出信号から前記トレッドのうちの前記振動検出部の配置箇所と対応する部分が接地している時間である接地時間を推定し、前記タイヤが回転する毎の前記接地時間の変化を算出する変化算出部(191a)を有し、前記接地時間の変化に基づいて前記車両が加減速時であることを推定する請求項1に記載の路面状態推定装置。
【請求項3】
前記加減速推定部は、前記振動検出部の検出信号から前記タイヤが1回転するのに掛かる時間である1回転時間を推定し、前記タイヤが回転する毎の前記1回転時間の変化を算出する変化算出部(191a)を有し、前記1回転時間の変化に基づいて前記車両が加減速時であることを推定する請求項1に記載の路面状態推定装置。
【請求項4】
前記信号処理部には、前記車両の走行路面の凹凸が基準路面よりも大きいことを検出する路面検出部(193)が備えられ、
前記送信動作制御部は、前記路面検出部にて、前記車両の走行路面の凹凸が基準路面よりも大きいことが検出されたときに、前記送信機による前記路面状況データの送信を停止する請求項1ないし3のいずれか1つに記載の路面状態推定装置。
【請求項5】
前記信号処理部には、前記タイヤが摩耗していることを検出する摩耗検出部(194)が備えられ、
前記送信動作制御部は、前記摩耗検出部にて、前記タイヤが摩耗していることが検出されたときに、前記送信機による前記路面状況データの送信を停止する請求項1ないし4のいずれか1つに記載の路面状態推定装置。
【請求項6】
前記信号処理部には、前記車両の速度である車速を推定し、該車速が所定の車速範囲から外れていることを検出する車速推定部(195)が備えられ、
前記送信動作制御部は、前記車速推定部にて、前記車速が前記車速範囲から外れていることが検出されたときに、前記送信機による前記路面状況データの送信を停止する請求項1ないし5のいずれか1つに記載の路面状態推定装置。
【請求項7】
前記信号処理部には、前記タイヤの空気圧を検出し、該空気圧が異常空気圧であることを検出する空気圧推定部(196)が備えられ、
前記送信動作制御部は、前記空気圧推定部にて、前記空気圧が前記異常空気圧であることが検出されたときに、前記送信機による前記路面状況データの送信を停止する請求項1ないし6のいずれか1つに記載の路面状態推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤが受ける振動に基づいて路面状況を推定する路面状況推定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1において、タイヤトレッドの裏面にタイヤ側装置を備え、タイヤ側装置にてタイヤに加えられる振動を検出すると共に、その振動の検出結果を車両側装置に伝え、路面状況の推定を行う路面状況推定装置が提案されている。この路面状況推定装置では、タイヤ回転に伴ってタイヤトレッドのうち振動発電素子の配置箇所と対応する部分が路面に接地しているときに、振動発電素子の検出信号における高周波成分のレベルが路面状況に応じて変わる。このため、タイヤトレッドのうち振動発電素子の配置箇所と対応する部分が路面に接地しているときを接地区間中として、接地区間中の振動発電素子の検出信号における高周波成分のレベルを路面状況データとして用いる。そして、タイヤが1回転する毎にタイヤ側装置から車両側装置に向けて路面状況データを送信し、車両側装置において路面状況データに基づいて路面状況を推定している。より詳しくは、電圧値として示される検出信号の高周波成分を積分した積分電圧値を路面状況データとして用い、車両側装置において、積分電圧値の大きさに基づいて路面摩擦係数(以下、路面μという)の推定などを行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−174636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、タイヤが1回転する毎にタイヤ側装置から車両側装置に向けて路面状況データを送信すると、送信のために必要な電力が多くなり、タイヤ側装置の電源の大型化などを招くことになる。このため、タイヤ側装置からの路面状況データの送信を必要なときに限定することで、省電力化を行うことが望まれる。
【0005】
本発明は上記点に鑑みて、タイヤ側装置の省電力化を行うことが可能な路面状況推定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の路面状態推定装置は、車両に備えられるタイヤ(3)のトレッド(31)の裏面に取り付けられ、タイヤの振動の大きさに応じた検出信号を出力する振動検出部(11)と、タイヤの1回転中におけるトレッドのうちの振動検出部の配置箇所と対応する部分が接地している接地区間を抽出する区間抽出部(17)および接地区間中における検出信号の高周波成分のレベルを算出するレベル算出部(18)を有する信号処理部(13)と、タイヤが所定数回転する毎に高周波成分のレベルの算出結果を路面状況が表された路面状況データとして送信する送信機(14)と、を有するタイヤ側装置(1)と、送信機から送信された路面状況データを受信する受信機(21)と、路面状況データに基づいて、タイヤの走行路面の路面状況を推定する路面状況推定部(22)と、を有する車両側装置(2)とを備えている。そして、信号処理部には、振動検出部の検出信号に基づいて車両が加減速時であることを推定する加減速推定部(191)と、加減速推定部にて車両が加減速時であると推定されたときに、送信機による路面状況データの送信を停止する送信動作制御部(192)と、が備えられている。
【0007】
このように、車両の加減速時には、車両側装置のみによって車両側で取得できる情報に基づいて走行路面の路面状況を推定することができることから、送信機によるデータ送信を行わないようにしている。このように、送信機によるデータ送信を常に行うのではなく、車両の加減速時には行われないようにしているため、データ送信のために必要な電力を少なくできる。
【0008】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態にかかる路面状況推定装置の全体のブロック構成を示した図である。
図2】タイヤ側装置が取り付けられたタイヤの断面模式図である。
図3】タイヤ回転時における振動発電素子の出力電圧波形図である。
図4A】アスファルト路のように路面摩擦係数(以下、μという)が比較的大きな高μ路面を走行している場合における振動発電素子の出力電圧の変化を示した図である。
図4B】凍結路のように路面μが比較的小さな低μ路面を走行している場合における振動発電素子の出力電圧の変化を示した図である。
図5】高μ路面を走行している場合と低μ路面を走行してる場合それぞれについて、接地区間中における出力電圧の周波数解析を行った結果を示した図である。
図6】高周波成分のレベルを接地区間中に抽出した高周波成分の積分によって算出する場合における信号処理回路部の具体的な回路構成を示した図である。
図7】走行路面が低μ路面の場合と高μ路面の場合それぞれの場合でのコンデンサでの充電の様子を示した図である。
図8】第2実施形態にかかる路面状況推定装置における信号処理回路部の具体的な回路構成を示した図である。
図9】送信制御部が実行する停止判定処理の詳細を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0011】
(第1実施形態)
図1図7を参照して、本実施形態にかかる路面状況推定装置について説明する。本実施形態にかかる路面状況推定装置は、車両の各車輪に備えられるタイヤの接地面における振動に基づいて走行中の路面状況を推定するものとして用いられる。
【0012】
図1に示すように路面状況推定装置100は、タイヤ側に設けられたタイヤ側装置1と、車体側に備えられた車両側装置2とを有する構成とされている。そして、路面状況推定装置100は、タイヤ側装置1より走行中の路面状況を表すデータを送信すると共に、車両側装置2がタイヤ側装置1から送信されたデータを受信し、そのデータに基づいて走行中の路面状況を推定する。具体的には、タイヤ側装置1および車両側装置2は、以下のように構成されている。
【0013】
タイヤ側装置1は、図1に示すように、振動発電素子11、電力供給回路12、信号処理回路部13、および送信機14を備えた構成とされ、図2に示されるように、タイヤ3のトレッド31の裏面側に設けられる。
【0014】
振動発電素子11は、タイヤ3が回転する際にタイヤ側装置1が描く円軌道に対して接する方向、つまり図2中の矢印Xの方向で示されるタイヤ接線方向の振動に応じた検出信号を出力する振動検出部を構成するものである。本実施形態の場合、振動発電素子11でタイヤ接線方向の振動に応じた検出信号を出力させるのに加えて、振動エネルギーを電気エネルギーに変換し、それに基づいてタイヤ側装置1の電源を生成している。このため、振動発電素子11は、タイヤ接線方向の振動に対して発電するように配設されている。このような振動発電素子11としては、例えば静電誘導型の発電素子(例えば、エレクトレット)、圧電素子、摩擦式、磁歪式、電磁誘導型の素子を適用できる。また、発電用途を加味しないタイヤ接線方向の振動に応じた検出信号を出力するだけであれば他のもの、例えば加速度センサなどを用いることもできる。
【0015】
例えば振動発電素子11として静電誘導型の発電素子を用いる場合には、マイナスの電荷を帯びる下部電極に対して静電誘導によってプラスに帯電させられる上部電極が水平方向に振動させられると、静電誘導による電荷が変動し、起電力を生じることで発電する。このような振動発電素子11の発電に基づいて、タイヤ側装置1の電源を生成すると共に、タイヤ接線方向の振動の大きさに応じた検出信号を生成する。
【0016】
すなわち、路面状況推定装置100が備えられた車両が走行する際には、タイヤ3の回転運動や路面の凹凸などの種々の要因によって、タイヤ3のトレッド31に振動が生じる。この振動が振動発電素子11に伝わることで、振動発電素子11による発電が行われ、それが電力供給回路12に伝えられることでタイヤ側装置1の電源が生成される。また、振動発電素子11の発電の際の出力電圧が振動の大きさに応じて変化することから、振動発電素子11の出力電圧をタイヤ接線方向の振動の大きさを表す検出信号として信号処理回路部13に伝えるようにしている。なお、振動発電素子11の出力電圧は、上部電極が振動によって往復動することから、交流電圧となる。
【0017】
電力供給回路12は、振動発電素子11の出力電圧に基づいて蓄電して電源を生成し、電力を信号処理回路部13および送信機14に供給するための回路であり、整流回路15および蓄電回路16を備えた構成とされている。
【0018】
整流回路15は、振動発電素子11より出力される交流電圧を直流変換する公知の回路である。振動発電素子11で出力される交流電圧は、この整流回路15で直流変換され、蓄電回路16に出力される。整流回路15は、全波整流回路であっても半波整流回路であってもよい。
【0019】
蓄電回路16は、整流回路15より印加される直流電圧を蓄電するための回路であり、コンデンサなどによって構成される。振動発電素子11の出力電圧は、整流回路15を介して蓄電回路16で蓄電され、ここで蓄電された電圧を電源として、タイヤ側装置1が備える信号処理回路部13や送信機14などへの電力供給を行っている。また、電力供給回路12が蓄電回路16を備えることによって、振動発電素子11が余剰に発電している時にはその余剰分を蓄電しておき、発電量が不足している場合に、その不足分を補えるようになっている。
【0020】
信号処理回路部13は、信号処理部に相当する部分であり、振動発電素子11の出力電圧をタイヤ接線方向の振動データを表す検出信号として用いて、この検出信号を処理することで路面状況を表すデータを得て、それを送信機14に伝える役割を果たす。すなわち、信号処理回路部13は、振動発電素子11の出力電圧の時間変化に基づいて、タイヤ3の回転時における振動発電素子11の接地区間を抽出している。なお、ここでいう接地区間とは、タイヤ3のトレッド31のうち振動発電素子11の配置箇所と対応する部分が路面接地している区間のことを意味している。本実施形態の場合、振動発電素子11の配置箇所がタイヤ側装置1の配置箇所とされているため、接地区間とはタイタイヤ3のトレッド31のうちタイヤ側装置1の配置箇所と対応する部分が路面接地している区間と同意である。以下、タイヤ3のトレッド31のうち振動発電素子11もしくはタイヤ側装置1の配置箇所と対応する部分のことを装置配置箇所という。
【0021】
そして、この振動発電素子11の接地区間中の検出信号に含まれる高周波成分が路面状況を表していることから、この高周波成分を抽出すると共に抽出した高周波成分に基づいて路面状況を表すデータを生成し、送信機14に伝えている。
【0022】
具体的には、信号処理回路部13は、各種回路やCPU、ROM、RAM、I/Oなどを備えた周知のマイクロコンピュータ等によって構成され、振動発電素子11の出力電圧に基づいて上記処理を行っている。そして、信号処理回路部13は、それらの処理を行う部分として区間抽出部17とレベル算出部18および送信制御部19を備えている。
【0023】
区間抽出部17は、振動発電素子11の出力電圧で表される検出信号のピーク値を検出することで、振動発電素子11の接地区間を抽出し、接地区間中であることをレベル算出部18に伝える。また、区間抽出部17は、送信機14に対してレベル算出部18の算出結果を路面状況が表された路面状況データとして車両側装置2に送信させる送信トリガを発生させる。以下、具体的に区間抽出部17の機能について説明する。
【0024】
タイヤ回転時における振動発電素子11の出力電圧波形は例えば図3に示す波形となる。この図に示されるように、タイヤ3の回転に伴って装置配置箇所が接地し始めた接地開始時に、振動発電素子11の出力電圧が極大値をとる。区間抽出部17では、この振動発電素子11の出力電圧が極大値をとる第1ピーク値のタイミングを接地開始時として検出している。さらに、図3に示されるように、タイヤ3の回転に伴って装置配置箇所が接地していた状態から接地しなくなる接地終了時に、振動発電素子11の出力電圧が極小値をとる。区間抽出部17では、この振動発電素子11の出力電圧が極小値をとる第2ピーク値のタイミングを接地終了時として検出している。
【0025】
振動発電素子11が上記のようなタイミングでピーク値をとるのは、以下の理由による。すなわち、タイヤ3の回転に伴って装置配置箇所が接地する際、振動発電素子11の近傍においてタイヤ3のうちそれまで略円筒面であった部分が押圧されて平面状に変形する。このときの衝撃を受けることで、振動発電素子11の出力電圧が第1ピーク値をとる。また、タイヤ3の回転に伴って装置配置箇所が接地面から離れる際には、振動発電素子11の近傍においてタイヤ3は押圧が解放されて平面状から略円筒状に戻る。このタイヤ3の形状が元に戻るときの衝撃を受けることで、振動発電素子11の出力電圧が第2ピーク値をとる。このようにして、振動発電素子11が接地開始時と接地終了時でそれぞれ第1、第2ピーク値をとるのである。また、タイヤ3が押圧される際の衝撃の方向と、押圧から開放される際の衝撃の方向は逆方向であるため、出力電圧の符号も逆方向となる。
【0026】
そして、区間抽出部17は、第1、第2ピーク値のタイミングをレベル算出部18に伝え、第1ピーク値のタイミングから第2ピーク値のタイミングまでの期間、振動発電素子11の出力電圧に含まれる高周波成分を整流して積分させる指示を出す。このようにして、区間抽出部17は、振動発電素子11の接地区間を抽出し、接地区間中であることをレベル算出部18に伝えている。
【0027】
また、振動発電素子11の出力電圧が第2ピーク値をとるタイミングが振動発電素子11の接地終了時となるため、区間抽出部17は、このタイミングで送信機14に送信トリガを送っている。これに基づき、送信機14より、レベル算出部18から伝えられる算出結果を路面状況データとして送信させている。このように、送信機14によるデータ送信を常に行うのではなく、振動発電素子11の接地終了時に限定して行うようにしているため、消費電力を低減することが可能となる。ただし、タイヤ3が1回転する毎に路面状況データを送信すると、送信のために必要な電力が多くなり、タイヤ側装置1の電源の大型化を招くことになるため、省電力化のためには、さらに路面状況データの送信を必要なときに限定することが望ましい。このため、本実施形態では、後述する送信制御部19において、データ送信の必要が無いタイミングを検出し、そのときには送信機14によるデータ送信が行われないようにする。
【0028】
レベル算出部18は、区間抽出部17から接地区間中であることが伝えられると、その期間中に振動発電素子11の出力電圧に含まれるタイヤ3の振動に起因する高周波成分のレベルを算出する。路面状況が同じ路面を一定速度で直進走行した場合、高周波成分のレベルは概ね一定となることから、高周波成分のレベルを算出することで路面状況を検出できる。このため、レベル算出部18は、その算出結果を路面状況が表された路面状況データとして送信機14に伝える。ここで、路面状況を表わす指標として高周波成分のレベルを算出するようにしているが、その理由について図4および図5を参照して説明する。
【0029】
図4Aは、アスファルト路のように路面μが比較的大きな高μ路面を走行している場合における振動発電素子11の出力電圧の変化を示している。また、図4Bは、凍結路のように路面μが比較的小さな低μ路面を走行している場合における振動発電素子11の出力電圧の変化を示している。
【0030】
これらの図から分かるように、路面μにかかわらず、接地区間の最初と最後、つまり装置配置箇所の接地開始時と接地終了時において第1、第2ピーク値が現れる。しかしながら、路面μの影響で、車両が低μ路面を走行しているときにはタイヤ3のスリップによる細かな高周波振動が出力電圧に重畳される。このため、高μ路面を走行している場合と低μ路面を走行してる場合それぞれについて、接地区間中における出力電圧の周波数解析を行うと、図5に示す結果となる。すなわち、低周波域では高μ路と低μ路のいずれを走行する場合にも高いレベルになるが、1kHz以上の高周波域では低μ路を走行する場合の方が高μ路を走行する場合よりも高いレベルになる。このため、振動発電素子11の出力電圧の高周波成分のレベルが路面状況を表す指標となる。
【0031】
したがって、レベル算出部18によって接地区間中における振動発電素子11の出力電圧の高周波成分のレベルを算出することで、これを路面状況データとすることが可能となる。例えば、高周波成分のレベルは、振動発電素子の出力電圧から高周波成分を抽出し、接地区間中に抽出した高周波成分を積分することで算出することができる。
【0032】
図6は、接地区間中に抽出した高周波成分の積分によって高周波成分のレベルを算出するときに適用する信号処理回路部13の具体的な回路構成を示した図である。
【0033】
図6において、区間抽出部17は、振動発電素子11の出力電圧を検出信号として入力し、検出信号の解析結果に基づいてレベル算出部18に積分指示信号を出力すると共に送信機14に対して送信トリガを出力する。
【0034】
具体的には、区間抽出部17は、パルス検出部171を有し、このパルス検出部171にて、振動発電素子11の接地開始時および接地終了時における検出信号のピークを検出している。そして、パルス検出部171は、振動発電素子11の検出信号が第1ピーク値となったタイミングで積分指示信号を出力し、第2ピーク値となったタイミングで積分指示信号を解除する。本実施形態の場合、パルス検出部171から積分指示信号としてハイレベルが出力されるとスイッチ172がオン、それがインバータ173によって反転されてローレベルが伝えられるとスイッチ174がオフされて高周波成分の積分が開始される。また、積分指示信号が解除されてパルス検出部171の出力がローレベルになるとスイッチ172がオフ、それがインバータ173によって反転されてハイレベルが伝えられるとスイッチ174がオンとなって高周波成分の積分が終了される。
【0035】
レベル算出部18は、ハイパスフィルタ部181、整流部182および積分部183を有した構成とされている。
【0036】
ハイパスフィルタ部181は、振動発電素子11の検出信号の高周波成分を抽出する。ハイパスフィルタ部181は、コンデンサ181a、181bおよび抵抗181cを有するCRフィルタ回路によって構成され、コンデンサ181a、181bの容量値や抵抗181cの抵抗値の調整により、振動発電素子11の検出信号の高周波成分のみを通過させる。
【0037】
整流部182は、ブリッジ状に配置したダイオード182a〜182dを有する全波整流回路によって構成されており、ハイパスフィルタ部181で抽出された検出信号の高周波成分を全波整流する。これにより、積分部183に対して全波整流後の正電圧のみが印加されるようにできる。
【0038】
積分部183は、振動発電素子11の検出信号の高周波成分を積分する部分であり、本実施形態では、積分部183はコンデンサ183aおよび抵抗183bを有した構成とされている。
【0039】
コンデンサ183aは、全波整流後の高周波成分に基づいて充電される。このコンデンサ183aの充電電圧が高周波成分を積分した値に相当し、このコンデンサ183aの積分電圧値が路面状況を表すデータとして送信機14に入力される。すなわち、図5に示したように、車両の走行路面が低μ路面である場合と高μ路面である場合とで振動発電素子11の検出信号の高周波成分のレベルが異なっていることから、路面状況に応じてコンデンサ183aの積分電圧値が変化する。
【0040】
図7は、走行路面が低μ路面の場合と高μ路面であるアスファルト路の場合それぞれの場合でのコンデンサ183aでの充電の様子を示している。それぞれの場合について、3回ずつ試行、つまり試行回数N=3としている。この図に示されるように、走行路面が低μ路面の場合、高μ路面の場合と比較して振動発電素子11の検出信号の高周波成分のレベルが大きくなるため、コンデンサ183aの積分電圧値が大きくなる。このように、路面状況に応じてコンデンサ183aの積分電圧値の大きさが変化するため、コンデンサ183aの積分電圧値が路面状況を表すデータとなる。
【0041】
抵抗183bは、パルス検出部171が積分指示信号を解除してスイッチ174がオンされたときに、コンデンサ183aに接続されることでコンデンサ183aを放電する。これにより、次に高周波成分の積分を行う際に、コンデンサ183aの電圧を0にリセットしておくことが可能となる。
【0042】
このような回路により、信号処理回路部13を構成することができ、振動発電素子11の出力電圧の高周波成分を積分部183にて積分することで、接地区間中における高周波成分のレベルを算出することができる。
【0043】
送信制御部19は、データ送信の必要が無いタイミングとして、車両の加減速時を検出し、車両の加減速時には送信機14からのデータ送信が行われないようにしている。後述するように、車両の加減速時には、車両側装置2において、車輪速度センサの検出信号等に基づいて路面μを推定することができる。このため、このタイミングでは、タイヤ側装置1から送られてくる路面状況データに基づいて路面μを推定するのではなく、車両側装置2が車輪速度等に基づいて路面μを推定すれば良い。したがって、送信制御部19は、車両の加減速時であることを推定し、加減速時には、送信機14に対してデータ送信の停止を指令し、送信機14からのデータ送信が行われないようにする。これにより、さらに消費電力を低減でき、タイヤ側装置1の省電力化を行うことを可能としている。
【0044】
具体的には、図6に示すように、本実施形態の送信制御部19は、加減速推定部191と送信動作制御部192とを有した構成とされている。
【0045】
加減速推定部191は、振動発電素子11の検出信号に基づいて、車両が加減速時であることの推定を行う。上記したように、タイヤ3の回転に伴って、振動発電素子11の出力電圧波形は図3に示す波形となる。車両の加減速時には、タイヤ3の回転も加減速するため、振動発電素子11の出力電圧波形も変化する。この出力電圧波形の変化に基づいて、加減速推定部191は、車両が加減速時であることを推定する。車両が加減速時であることについては、加減速推定部191に対して振動発電素子11の検出信号を入力すること、もしくは、パルス検出部171で検出される振動発電素子11の検出信号のピークのタイミングを入力することによって検出可能である。ここでは、加減速推定部191は、図6に示すように、パルス検出部171で検出される振動発電素子11の検出信号のピークのタイミングを入力することによって車両が加減速時であることを検出している。
【0046】
具体的には、加減速推定部191には、変化算出部191aが備えられており、この変化算出部191aでの算出結果に基づいて、車両が加減速時であることを推定している。
【0047】
例えば、装置配置箇所が路面接地している時間、つまり接地開始から接地終了までの時間を接地時間とすると、車両の加減速時には接地時間が変化する。この接地時間の変化に基づいて車両の加減速時を推定することができる。この場合、変化算出部191aにて、過去の接地時間、例えばタイヤ3の1回転前における接地時間に対する今回の回転時における接地時間の変化、例えばこれらの時間差を接地時間変化として算出する。そして、加減速推定部191は、例えば変化算出部191aで算出した接地時間変化を所定の閾値と比較することで、車両の加減速時であることを推定することができる。
【0048】
また、タイヤ3が1回転するのに掛かる時間を1回転時間とすると、車両の加減速時には1回転時間が変化する。この1回転時間の変化に基づいて車両の加減速時を推定することもできる。この場合、変化算出部191aにて、振動発電素子11の検出信号に基づいて1回転時間を算出する。例えば、タイヤ3が1回転する毎に図3に示した出力電圧波形を示すことから、時間的に連続する第1ピーク値同士の時間間隔もしくは第2ピーク値同士の時間間隔は、タイヤ3が1回転するのに掛かる時間となる。このため、変化算出部191aにて、タイヤ3の1回転前と今回の回転の際の第1ピーク値を取ったタイミング同士の時間間隔、もしくは、第2ピーク値を取ったタイミング同士の時間間隔を1回転時間として算出する。さらに、変化算出部191aにて、算出した1回転時間の変化、例えば1回転時間の時間差を回転時間変化として算出する。そして、例えば、加減速推定部191は、変化算出部191aで算出した回転時間変化を所定の閾値と比較することで、車両の加減速時であることを推定することができる。
【0049】
ここでは、加減速推定部191は、変化算出部191aで算出した接地時間変化もしくは回転時間変化を所定の閾値と比較することで、車両の加減速時であることを推定している。ここでいう所定の閾値は、接地時間変化もしくは回転時間変化として用いる対象に応じて異なる値となる。
【0050】
例えば、接地時間変化として、1回転前と今回の接地時間の時間差が用いられる場合、減速時には今回の接地時間の方が1回転前のものよりも長時間となり、加速時にはその関係が逆になる。したがって、例えば今回の接地時間から1回転前の接地時間を差し引いた値を時間差とした場合に、その時間差が正の値で示される第1閾値を超えていれば車両の減速時、負の値で示される第2閾値より小さければ車両の加速時と推定できる。
【0051】
同様に、回転時間変化として、1回転前と今回の1回転時間の時間差が用いられる場合、減速時には今回の1回転時間の方が1回転前のものよりも長時間となり、加速時にはその関係が逆になる。したがって、例えば今回の1回転時間から1回転前の1回転時間を差し引いた値を時間差とした場合に、その時間差が正の値で示される第1閾値を超えていれば車両の減速時、負の値で示される第2閾値より小さければ車両の加速時と推定できる。
【0052】
なお、接地時間変化と比較される第1閾値および第2閾値と回転時間変化と比較される第1閾値および第2閾値は独立して設定される値である。また、ここでいう車両の加速時や減速時は、ドライバが図示しないアクセルペダルもしくはブレーキペダルを踏み込んだ場合を想定している。このため、これらの操作が行われたときの加速度もしくは減速度、例えば0.1〜0.21Gが発生したときに想定される値に各閾値が設定される。
【0053】
送信動作制御部192は、加減速推定部191での推定結果を受け取り、車両の加減速時であるとの推定結果を受け取ったときに、送信機14に対してデータ送信の停止を指令する指令信号を出力する。送信動作制御部192は、車両の加減速時中にこの指令信号の出力を継続している。これに基づき、送信機14は、指令信号を受け取っている期間中には、データ送信を実行しないようにしている。このようにすることで、タイヤ3が1回転する毎に路面状況データが送信されることを抑制でき、送信のために必要な電力を少なくできるとともに、タイヤ側装置1の電源の大型化を抑制することが可能となる。
【0054】
送信機14は、信号処理回路部13から伝えられた路面状況データを車両側装置2に対して送信するものである。送信機14と車両側装置2が備える受信機21との間の通信は、例えば、Bluetooth(登録商標)などの公知の近距離無線通信技術によって実施可能である。路面状況データを送信するタイミングについては任意であるが、上記したように、本実施形態では、装置配置箇所の接地終了時に区間抽出部17から送信トリガが送られることで送信機14から路面状況データが送られるようになっている。また、送信機14は、送信トリガが送られてきても、送信制御部19からデータ送信の停止を指示する指令信号を受け取っていると、データ送信を行わないようにする。このように、送信機14によるデータ送信を常に行うのではなく、振動発電素子11の接地終了時に限定して行うようにしているため、消費電力を低減することが可能となる。さらに、車両の加減速時にはデータ送信が行われないようにしているため、送信のために必要な電力を少なくできるとともに、タイヤ側装置1の電源の大型化を抑制することが可能となる。
【0055】
なお、路面状況データについては、車両に備えられたタイヤ3毎に予め備えられている車輪の固有認識情報(以下、ID情報という)と共に送ることもできる。各車輪の位置については、車輪が車両のどの位置に取り付けられているかを検出する周知の車輪位置検出装置によって特定できることから、車両側装置2にID情報と共に路面状況データを伝えることで、どの車輪のデータであるかが判別可能になる。通常、走行路面の路面μは均一であると想定されるが、車両の左右輪で路面μが異なるμスプリット路なども有り、このようなμスプリット路においては各車輪毎に路面状況データが伝えるられると好ましい。勿論、各車輪毎に路面状況を推定するのではなく、各車輪から送られてきた路面状況データが示す積分電圧値の平均値を路面状況の推定に用いるなど、複数の路面状況データを路面状況の推定に用いるようにしても良い。
【0056】
一方、車両側装置2は、受信機21、状況推定部22、情報取得部23および車輪速度入力部24を備えた構成とされている。このような構成により、車両側装置2は、タイヤ側装置1より送信された路面状況データを受信し、このデータに基づいて各種処理を行うこと、もしくは、情報取得部23や車輪速度入力部24から得た各種情報に基づいて、走行中の路面状況を検出する。
【0057】
受信機21は、タイヤ側装置1が送信した路面状況データを受信するための装置である。受信機21で受信した路面状況データは、受信するたびに状況推定部22に逐次出力される。
【0058】
状況推定部22は、CPU、ROM、RAM、I/Oなどを備えた周知のマイクロコンピュータによって構成され、ROMなどに記憶されたプログラムに従って路面状況の検出のための処理を行っている。具体的には、状況推定部22は、路面状況データが示す積分電圧値の大きさに基づいて路面μを推定しており、例えば積分電圧値が判定閾値よりも大きければ走行路面が低μ路面、小さければ走行路面が高μ路面と判定する。判定閾値は、図7に示すように走行路面が低μ路面であるときに想定される積分電圧値と高μ路面であるときに想定される積分電圧値の中間値に設定される。このため、この判定閾値との大小比較によって、走行路面の路面状況を推定することが可能となる。
【0059】
一方、車両の加減速時には、タイヤ側装置1から路面状況データが送られて来ないが、その反面、車両側で取得できる車輪速度等の各種情報に基づいて車両側装置2のみで走行路面の路面状況を推定することができる。車両の加減速時には車輪スリップが発生することから、状況推定部22は、各車輪の車輪速度や情報取得部23から入力される各種情報に基づいて、路面μなどの路面状況を推定する。車両側装置2による路面μなどの路面状況の推定方法については種々の方法が公知となっているため、詳細については説明を省略するが、種々の方法のいずれを用いても良い。例えば、車輪速度から演算される車輪加減速度と、輪荷重検出により得られる輪荷重と、各輪のブレーキ液圧もしくは駆動トルクとから、路面μを推定することができる(例えば、特開平11−48938号公報参照)。また、車輪速度に基づいて推定車体速度を演算すると共に、推定車体速度に対する車輪速度の偏差として表されるスリップ率を演算し、このスリップ率に基づいて路面μを推定することもできる(例えば、特開平11−334555号公報参照)。さらに、前後加速度と横加速度のベクトル和から路面μを推定することもできる(例えば、特開平11−034828号公報参照)。このような種々の方法のいずれかを用いて、車両の加減速時には、車両側装置2において路面μなどの路面状況を推定する。
【0060】
情報取得部23は、状況推定部22に対して路面μなどの路面状況の推定に用いるのに必要な情報を取得する部分である。情報取得部23は、各種センサ類などによって構成されていても良いが、他の電子制御装置から車両の走行状態を示す各種情報を取得するもので構成することができる。例えば、情報取得部23は、ブレーキ制御用の電子制御装置(以下、ブレーキECUという)からブレーキ液圧などを取得したり、エンジン制御用の電子制御装置(以下、エンジンECUという)から駆動トルクなどを取得する。また、情報取得部23は、サスペンション制御用の電子制御装置(以下、サスペンションECUという)などより、輪荷重検出の結果を取得する。情報取得部23とブレーキECU、エンジンECUおよびサスペンションECUなどの各種ECUとは、例えば車載ネットワークであるCAN(Controller Area Networkの略)通信によって繋がっているため、ここから情報取得部23は各種情報を取り込んでいる。
【0061】
車輪速度入力部24は、車輪速度センサによって構成されていても良いし、ブレーキECUから車輪速度に関する情報を取得するもので構成されていても良い。また、情報取得部23にて、車輪速度入力部24を兼ねるようにし、車輪速度に関する情報を取得するようにしても良い。
【0062】
このようにして車両側装置2が構成されている。そして、上記したように、車両側装置2では、車両の加減速時以外のときにはタイヤ側装置1から送信されてきた路面状況データに基づいて路面状況を推定し、加減速時には車両側で取得できる車輪速度等の各種情報に基づいて走行路面の路面状況を推定している。
【0063】
なお、このようにして車両側装置2によって路面状況が推定されると、その推定結果を例えば車載ネットワークであるCAN通信に載せている。この路面状況の推定結果が例えばブレーキECUなどに入力され、アンチロックブレーキ制御などの車両運動制御を行う際の指標、例えばアンチロックブレーキ制御における制御開始閾値の設定に用いられる。
【0064】
以上説明したように、本実施形態にかかる路面状況推定装置100では、タイヤ側装置1においてタイヤ3の接地区間中における振動発電素子11の検出信号の高周波成分のレベルを算出させ、それを路面状況データとして送信している。より詳しくは、接地区間中の振動発電素子11の検出信号における高周波成分の積分電圧値を取得し、その積分電圧値を路面状況データとしている。そして、その路面状況データを車両側装置2で受信し、走行路面の路面状況を推定している。これにより、周波数解析を行わなくても路面状況を推定することが可能となる。
【0065】
そして、車両の加減速時には、車両側装置2のみによって車両側で取得できる車輪速度等の各種情報に基づいて走行路面の路面状況を推定することができることから、送信機14によるデータ送信を行わないようにしている。このように、送信機14によるデータ送信を常に行うのではなく、車両の加減速時には行われないようにしているため、データ送信のために必要な電力を少なくできるとともに、タイヤ側装置1の電源の大型化を抑制することが可能となる。
【0066】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して送信制御部19の構成を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0067】
上記実施形態では、車両側装置2のみによって路面状況の推定が行えるときには送信機14からデータ送信が行われないように、送信制御部19からデータ送信の停止の指令を出すようにしていた。これに加えて、本実施形態では、タイヤ側装置1で得られるデータが路面状況の推定に適していない状況などにおいても、送信機14からデータ送信が行われないように、送信制御部19からデータ送信の停止の指令を出すようにする。
【0068】
具体的には、図8に示すように、本実施形態では、送信制御部19に、加減速推定部191と送信動作制御部192に加えて、路面検出部193、摩耗検出部194、車速推定部195および空気圧推定部196を備えている。
【0069】
路面検出部193は、路面状況の推定に適さない走行路面、例えば砂利道などのようにアスファルト路などの基準路面よりも凹凸が大きい路面であることを検出し、そのような路面であることを検出すると、その検出結果を送信動作制御部192に伝える。基準路面より凹凸が大きい路面を走行するときには、図3に示した出力電圧波形のうち、接地区間ではない領域での低周波成分の振動が大きな値として表れる。これに基づき、例えば路面検出部193は、振動発電素子11の出力電圧波形のうち、接地区間ではない領域での低周波成分の振動の大きさに基づいて、基準路面より凹凸が大きい路面であることを検出し、その検出結果を送信動作制御部192に伝えている。
【0070】
摩耗検出部194は、タイヤ3の摩耗を検出し、路面状況の推定に適しないほどタイヤ3が摩耗した状態であることを検出した場合には、その検出結果を送信動作制御部192に伝える。例えば、タイヤ3の摩耗は、タイヤ3の使用量に対応している。このため、摩耗検出部194は、タイヤ3の累積回転数をカウントし、そのカウント数に基づいてタイヤ3の摩耗量を算出して、当該摩耗量が所定の閾値を超えていれば、路面状況の推定に適しないほどタイヤ3が摩耗した状態であることを検出する。例えば、上記した区間抽出部17での接地区間の抽出回数がタイヤ回転数に相当することから、その抽出回数を累積していくことでタイヤ回転数のカウントとすることができる。または、区間抽出部17で振動発電素子11の検出信号のパルス数、つまり検出信号が第1ピーク値もしくは第2ピーク値をとる毎にその数を累積することでタイヤ回転数のカウントとすることもできる。
【0071】
車速推定部195は、車速を検出し、路面状況の推定に適しない、もしくは推定を行う必要がないと想定される車速であることを検出した場合には、その検出結果を送信動作制御部192に伝える。例えば、路面μなどの路面状況は、自動ブレーキ制御などの車両運動制御に用いられる。しかしながら、車両運動制御として、所定の車速範囲において実行され、その車速範囲から外れると実行されない設定とされるものものある。また、車速が高い場合、1回転時間が短時間となり、そのような短時間に繰り返しデータ送信を行うことも消費電力の増大を招いて好ましくない。このため、車速推定部195で検出した車速が所定の閾速度を超えている場合には、その検出結果を送信動作制御部192に伝えている。
【0072】
空気圧推定部196は、タイヤ3の空気圧を検出し、路面状況の推定に適しない異常空気圧であることを検出した場合には、その検出結果を送信動作制御部192に伝える。例えば、図8に示すようにタイヤ側装置1内に圧力センサ197を備えておくことで、タイヤ3の空気圧を検出することができる。タイヤ3の空気圧が正常範囲外になった場合、図3に示す出力電圧波形に影響を及ぼすため、路面状況の推定を正確に行うことができなくなって、路面状況の推定結果に誤りが出る可能性がある。このような誤った路面状態に基づいて車両運動制御を実行すると、制御開始タイミングを誤判定するなどの問題を発生させる可能性がある。したがって、空気圧推定部195にて、タイヤ3の空気圧が正常範囲外となる異常空気圧であること、例えば空気圧が正常範囲よりも低下していることが検出された場合には、その検出結果を送信動作制御部192に伝えている。
【0073】
このように、本実施形態では、送信動作制御部192に、加減速推定部191に加えて、路面検出部193、摩耗検出部194、車速推定部195で得た結果が入力されるようになっている。そして、送信動作制御部192において、入力された各結果に基づいて、データ送信を停止するか否かを判定し、停止する場合には、送信機14に対してデータ送信の停止を指令する。
【0074】
具体的には、送信動作制御部192は、図9に示す停止判定処理を実行している。すなわち、ステップ100では、加減速推定部191から入力される結果に基づいて車両の加減速時であるか否かを判定する。ステップ110では、路面検出部103から入力される結果に基づいて、路面状況の推定に適さない走行路面である否かを判定する。ステップ120では、摩耗検出部194から入力される結果に基づいて、タイヤ3が摩耗している状況であるか否かを判定する。ステップ130では、車速推定部195から入力される結果に基づいて、車速が所定の車速範囲外であるか否かを判定する。ステップ140では、空気圧推定部196から入力される結果に基づいて、タイヤ3の空気圧が異常空気圧であるか否かを判定する。そして、ステップ100〜140のいずれも否定判定された場合には、ステップ150に進んで送信処理を実行し、いずれか1つでも肯定判定された場合には、ステップ160に進んで送信停止処理を実行する。そして、送信処理では、送信部14に対してデータ送信を停止するための指令を出さない、もしくは、データ送信を通常通り行うための指令を出す処理を実行する。また、送信停止処理では、送信部14に対してデータ送信を停止するための指令を出す処理を実行する。
【0075】
このように、送信動作制御部192において、入力された各結果に基づいて、データ送信を停止するか否かを判定している。そして、車両側装置2のみによって路面状況の推定が行えるときや、タイヤ側装置1で得られるデータが路面状況の推定に適していない状況、路面状況の推定が必要ではない状況のときに、送信機14からのデータ送信が停止されるようにしている。
【0076】
このようにすれば、さらにデータ送信のために必要な電力を少なくできるとともに、タイヤ側装置1の電源の大型化を抑制することが可能となる。
【0077】
(他の実施形態)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。
【0078】
(1)例えば、上記実施形態では、車両側装置2においてタイヤ側装置1から送信された積分電圧値を一定の判定閾値と比較することで路面状況を推定しているが、判定閾値を可変としても良い。
【0079】
例えば、タイヤ3に生じる振動は車速に応じて変化し、車速が大きいほど同じ路面状況であってもタイヤ3に生じる振動が大きくなる。このため、車速が大きいほど、振動発電素子11の検出信号に含まれる高周波成分も大きくなり、コンデンサ183aに充電される積分電圧値も大きくなる。したがって、例えば路面状況推定部22に車速データを入力し、車速データが示す車速が大きくなるほど判定閾値を大きな値に変化させることもできる。なお、車速データについては、例えば車速センサや車輪速度センサの検出信号に基づいて車載ECUで演算されたものをCAN通信を通じて取得すれば良い。
【0080】
(2)また、上記各実施形態では、振動発電素子11の高周波成分を積分した積分電圧値を路面状況を示す値として用いたが、接地区間中における高周波成分のレベルの値、例えば平均値や最大値を路面状況を示す値として用いることもできる。
【0081】
(3)また、上記実施形態では、接地パルス検出部171にて振動発電素子11の接地開始時から接地終了時までの間、つまり接地時間中の振動発電素子11の検出信号の高周波成分を抽出し、その高周波成分によってコンデンサ183aに充電させて積分電圧値を得た。しかしながら、これは積分電圧値を得るときの充電時間の一例を示したものであり、例えば振動発電素子11の接地開始から一定期間を積分電圧値を得るときの充電時間としても良い。例えば、車両が時速60km/hで走行する際の振動発電素子11の接地時間として想定される時間を充電時間とすることができる。その場合、車両が時速60km/h以上で走行する際に、充電時間中に振動発電素子11が接地区間以外に位置している期間が存在し、その期間中にも振動発電素子11の検出信号の高周波成分がコンデンサ183aに充電されることになる。したがって、その場合には、車速データを入力し、充電時間として振動発電素子11の接地時間として想定している車速を超えている場合には、路面状況推定を行わないようにするのが好ましい。
【0082】
(4)また、上記実施形態では、タイヤが1回転する毎にタイヤ側装置から車両側装置に向けて路面状況データを送信する場合について説明したが、タイヤが複数回転する毎にデータ送信が行われるようにすることも可能である。この場合、タイヤが1回転する毎にデータ送信が行われる場合と比較して、消費電力の低減を図ることができるが、このような場合であっても、さらにデータ送信を必要時等に限定することが望ましい。したがって、タイヤ3が所定数回転する毎にデータ送信が行われる場合において、必要時や正確な路面状態の推定が行えないときに、上記実施形態で説明したようなデータ送信の停止を行うことで、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0083】
1…タイヤ側装置、2…車両側装置、3…タイヤ、11…振動発電素子、12…電力供給回路、13…信号処理回路部、14…送信機、17…接地区間抽出部、18…高周波レベル算出部、19…送信制御部、21…受信機、22…路面状況推定部、31…トレッド、100…路面状況推定装置
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9