【解決手段】PTO軸の駆動装置は、車体に設けられた原動機の動力によって駆動するPTO軸と、車体の駐車を検出可能な駐車スイッチと、駐車スイッチに接続され且つ、PTO軸の駆動に関して許可又は不許可に切換可能な許可スイッチと、駐車スイッチが車体の駐車を検出した状態で許可スイッチが許可である場合はPTO軸を駆動可能に切り換わる第1切換装置と、を備え、許可スイッチは、自己復帰型のスイッチである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、トラクタを駐車した状態を検出スイッチで検出したことを条件としてPTO軸を駆動しているため、作業者はトラクタを駐車させた状態で作業を行うことができる。このようにトラクタを駐車させた状態でPTO軸を駆動することは、作業者等にとって便利である。近年、このような機能をさらに発展させたPTO軸の駆動装置が望まれている。
【0005】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、車両を駐車させた状態で、PTO軸を駆動させる意思の確認を作業者等が行った際に、PTO軸の駆動を行うことができる作業機におけるPTO軸の駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この技術的課題を解決するための本発明の技術的手段は、以下に示す点を特徴とする。
本発明の作業機におけるPTO軸の駆動装置は、車体の駐車を検出可能な駐車スイッチと、前記駐車スイッチに接続され且つ、前記車体に設けられた原動機の動力によって駆動するPTO軸の駆動に関して許可又は不許可に切換可能な許可スイッチと、前記駐車スイッチが前記車体の駐車を検出した状態で前記許可スイッチが前記許可である場合は前記PTO軸を駆動可能に切り換わる第1切換装置と、を備え、前記許可スイッチは、自己復帰型のスイッチである。
【0007】
作業機におけるPTO軸の駆動装置は、前記車体に搭載した複数の機器が中立位置であることを検出する複数の第1ニュートラルスイッチを備え、前記第1切換装置は、前記複数の第1ニュートラルスイッチが前記中立位置を検出し且つ前記駐車スイッチが前記車体の駐車を検出した状態で前記許可スイッチが前記許可である場合は前記PTO軸を駆動可能に切り換わる。
【0008】
作業機におけるPTO軸の駆動装置は、運転席への作業者の着座を検出するシートスイッチと、前記駐車スイッチが前記車体の駐車を検出していない状態で前記シートスイッチが前記着座を検出していない場合は警告し、前記シートスイッチが前記着座を検出している又は前記駐車スイッチが前記車体の駐車を検出している場合は警告をしない報知装置と、を備えている。
【0009】
作業機におけるPTO軸の駆動装置は、前記PTO軸の駆動を入切する入切スイッチと、運転席への作業者の着座を検出するシートスイッチと、前記第1切換装置の出力端子及び前記シートスイッチの出力端子が接続され且つ、第1切換装置の出力端子又は前記シートスイッチの出力端子からの入力に基づいて前記PTO軸を駆動可能に切り換わる第2切換装置と、を備え、前記第1切換装置の第1入力端子に前記駐車スイッチの出力端子又は前記許可スイッチの出力端子が接続され、且つ前記第1切換装置の第2入力端子に前記入切スイッチの出力端子が接続されている。
【0010】
作業機におけるPTO軸の駆動装置は、前記PTO軸の駆動を入切する入切スイッチと、運転席への作業者の着座を検出するシートスイッチと、第3入力端子を有し、前記第3入力端子への入力が行われた場合に前記PTO軸を駆動可能に切り換わる第2切換装置と、前記駐車スイッチ及び許可スイッチが直列に接続され且つ、前記駐車スイッチの出力端子又は前記許可スイッチの出力端子が前記第1切換装置の第1入力端子に接続される第1系統と、前記入切スイッチの出力端子が前記第1切換装置の第2入力端子に接続され且つ、前記第1切換装置の出力端子が前記第2切換装置の第3入力端子に接続される第2系統と、前記シートスイッチの出力端子が前記第2切換装置の第3入力端子に接続される第3系統と、を備えている。
【0011】
作業機におけるPTO軸の駆動装置は、前記PTO軸が中立位置であることを検出する複数の第1ニュートラルスイッチを備え、前記第2切換装置は、前記複数の第1ニュートラルスイッチが前記PTO軸の中立を検出した場合は前記エンジンの駆動を継続可能である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、車両を駐車させた状態で、PTO軸を駆動させる意思の確認を行った際に、PTO軸の駆動を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
図8は、本実施形態におけるPTO軸の駆動装置を備えた作業機1の全体図を示している。
図8に示す作業機1はトラクタであるが、当該作業機1は、トラクタに限定されず、コンバイン、田植機等の農業機械であっても、建設機械等であってもよい。
【0015】
まず、トラクタ1の全体構成について説明する。
図8に示すように、トラクタ1は、車輪を有する走行車体(以降、車体という)3と、原動機4と、変速装置5とを備えている。原動機4は、ディーゼルエンジン、ガソリンエンジン、電動機等である。この実施形態では、原動機4は、ディーゼルエンジン(以降、エンジンという)である。
【0016】
また、車体3には運転席6と、運転席6を囲むキャビン7とが設けられている。また、車体3の後部には、3点リンク機構等で構成された連結部8が設けられている。連結部8には、作業装置2が着脱可能である。例えば、耕耘装置、施肥装置、薬剤散布装置等の作業装置2を連結部8に連結することによって、走行車体3によって作業装置2を牽引することができる。
【0017】
図1に示すように、変速装置5は、主軸(推進軸)5aと、主変速部5bと、副変速部5cと、シャトル部5dと、PTO動力伝達部5eとを備えている。推進軸5aは、変速装置5のハウジングケースに回転自在に支持され、当該推進軸5aには、エンジン4のクランク軸からの動力が伝達される。主変速部5bは、複数のギア及び当該ギアの接続を変更するシフタを有している。主変速部5bは、複数のギアの接続(噛合)をシフタで適宜変更することによって、推進軸5aから入力された回転を変更して出力する(変速する)。
【0018】
副変速部5cは、主変速部5bと同様に、複数のギア及び当該ギアの接続を変更するシフタを有している。副変速部5cは、複数のギアの接続(噛合)をシフタで適宜変更することによって、主変速部5bから入力された回転を変更して出力する(変速する)。
シャトル部5dは、シャトル軸12と、前後進切替部13とを有している。シャトル軸12には、副変速部5cから出力された動力がギア等を介して伝達される。前後切換部13は、例えば、油圧クラッチ等で構成され、油圧クラッチの入切によってシャトル軸12の回転方向、即ち、トラクタ1の前進及び後進を切り換える。
【0019】
PTO動力伝達部5eは、PTO推進軸14と、PTOクラッチ15とを有している。PTO推進軸14は、回転自在に支持され、推進軸5aからの動力が伝達可能である。PTO推進軸14は、ギア等を介してPTO軸16に接続されている。PTOクラッチ15は、推進軸5aの動力をPTO推進軸14に伝達する第1動作と、推進軸5aの動力をPTO推進軸14に伝達しない第2動作とに切換可能なクラッチである。具体的には、PTOクラッチ15は、油圧クラッチで構成され、PTO推進軸14と一体回転可能なハウジング15aと、推進軸5aと一体回転自在なクラッチ部材15bと、作動油によりハウジング15a内を移動自在なピストン15cとを有している。
【0020】
したがって、ピストン15cを移動させて、クラッチ部材15bをハウジング15aに接合すれば、PTOクラッチ15は第1動作に移行して、エンジン4からの動力が推進軸5a及びPTOクラッチ15を介してPTO推進軸14に伝達され、当該PTO推進軸14の動力はPTO軸16に伝達される。即ち、PTO軸16は、変速装置5を介してエンジン4の動力によって駆動する。一方、ピストン15cを移動させて、クラッチ部材15bをハウジング15aから離反すれば、PTOクラッチ15は第2動作に移行して、推進軸5aの動力はPTO推進軸14に伝達されず、推進軸5aの動力が切断状態になる。なお、PTOクラッチ15による動力の伝達又は切断は、ピストン15cに油路を介して接続された作動弁17(切換弁)によって行う。作動弁17には、作動油(油)を供給するポンプ18が接続されている。
【0021】
図2は、PTO軸の駆動装置20を示している。
PTO軸の駆動装置20は、駐車スイッチ21と、許可スイッチ22と、入切スイッチ23と、第1切換装置24と、第2切換装置25とを備えている。また、PTO軸の駆動装置20は、シートスイッチ26を備えている。
駐車スイッチ21は、走行車体(車体)3の駐車を検出可能なスイッチである。具体的には、駐車スイッチ21はON又はOFFに切換可能である。駐車スイッチ21は、車体3に揺動自在に支持された駐車レバー(パーキングブレーキ)を当該車体3の制動を行う位置(制動位置)にした場合に、駐車レバーの揺動に伴いONに切り換えられ、駐車を検出する。また、駐車スイッチ21は、駐車レバーを車体3の制動を解除する位置(解除位置)にした場合に、駐車レバーの揺動に伴いOFFに切り換えられ、駐車を検出しない。
【0022】
許可スイッチ22は、PTO軸16の駆動に関して許可又は不許可に切換可能なスイッチである。許可スイッチ22は、作業者(運転者)が操作するスイッチであって、例えば、運転席の近傍、車体3の側部、後部のいずれかに設けられている。なお、許可スイッチ22の設置位置は前述した位置に限定されない。以降、説明の便宜上、PTO軸16の駆動に関して許可をすることを「PTO許可」、PTO軸16の駆動に関して不許可とすることを「PTO不許可」という。
【0023】
許可スイッチ22は、ON又はOFFに切換可能であって、切換後にON又はOFFを保持しない自己復帰型のスイッチである。例えば、許可スイッチ22は、モーメンタリスイッチである。許可スイッチ22は、ONである場合は、PTO許可となり、OFFである場合はPTO不許可となる。
入切スイッチ23は、PTO軸16の駆動を入切するON又はOFFに切換可能である。例えば、入切スイッチ23は、ONである場合は、PTO軸16の駆動が「入」の状態であり、OFFである場合は、PTO軸16の駆動が「切」の状態である。入切スイッチ23は、運転席6の近傍に設けられ、作業者(運転者)が操作可能である。入切スイッチ23をONにすると、作動弁17が所定位置に切り換わり、PTOクラッチ15が第1動作して、PTO軸16は駆動(回転)する。一方、入切スイッチ23をOFFにすると、作動弁17が所定位置に切り換わり、PTOクラッチ15が第2動作して、PTO軸16の駆動(回転)を停止する。
【0024】
シートスイッチ26は、運転席6への作業者の着座を検出するスイッチである。例えば、シートスイッチ26はON又はOFFに切換可能である。シートスイッチ26は、運転席6のシート(座部、背もたれ)内、又は、シートの下方等に設けられている。作業者がシートに乗った場合に、シートスイッチ26はONとなり、着座を検出する。また、作業者がシートから降りた場合に、シートスイッチ26はOFFとなり、着座をしていないことを検出する。
【0025】
第1切換装置24は、駐車スイッチ21が車体3の駐車を検出した状態(ONになっている状態)で、許可スイッチ22が許可である場合(ONになっている場合)は、PTO軸16を駆動可能に切り換わる装置である。第1切換装置24は、例えば、有接点リレー、無接点リレー、シーケンサ等である。この実施形態では、第1切換装置24は、コイル部24aと、スイッチ部24bと、第1入力端子24cと、第2入力端子24dとを有する有接点リレーである。なお、第1切換装置(リレー)24は、コイル部24aが励磁された時にスイッチ部24bがONになる「シングル・ステイブル形」であっても、コイル部24が励磁されたことを保持(ラッチ)してスイッチ部24bがONになる「ラッチング形」であっても、その他のリレーであってもよい。
【0026】
第1切換装置24は、コイル部24aに通電してスイッチ部24bがONになった場合、第2切換装置25に電力を供給して、PTO軸16を駆動する。一方、第1切換装置24は、コイル部24aに通電せずスイッチ部24bがOFFになった場合、第2切換装置25への電力の供給を停止して、PTO軸16の駆動を停止する。
第2切換装置25は、PTO軸16の駆動を維持又は停止する装置である。即ち、第2切換装置25は、第3入力端子25aと、第4入力端子25bと、ソレノイド(図示省略)とを有している。第2切換装置25の第3入力端子25a及び第4入力端子25bに通電されている場合は、ソレノイドは作動せず、エンジン4の駆動を維持することでPTO軸16の駆動を維持する。一方、第2切換装置25の第3入力端子25a等への通電が解除された場合は、ソレノイドが作動して、エンジンを始動するキースイッチ(イグニッションスイッチ)28をオフ(エンジン停止位置)に切り換え、これにより、PTO軸16の駆動を停止する。なお、この実施形態では、第2切換装置25は、エンジン4の駆動を入切することによって、PTO軸16の駆動を停止していたが、その他の方法であってもよい。また、第2切換装置25は、タイマを有していることが望ましい。即ち、第2切換装置25の第3入力端子25a等への通電が解除されてからの時間(解除時間)をタイマで計測し、解除時間が予め定められた時間に達した場合に、ソレノイドが作動して、キースイッチをオフ(エンジン停止位置)に切り換えることが望ましい。
【0027】
次に、駐車スイッチ21、許可スイッチ22、入切スイッチ23、第1切換装置24、第2切換装置25及びシートスイッチ26の接続について説明する。
駐車スイッチ21の入力端子21aは、電源系に接続され、駐車スイッチ21の出力端子21bは許可スイッチ22の入力端子22aに接続されている。即ち、駐車スイッチ21と許可スイッチ22とは直列に接続されている。許可スイッチ22の出力端子22bは、第1切換装置24の第1入力端子24cに接続されている。即ち、許可スイッチ22の出力端子22bは、第1切換装置24のコイル24aに接続されている。
【0028】
入切スイッチ23の入力端子23aは、電源系に接続され、入切スイッチ23の出力端子23bは、第1切換装置24の第2入力端子24dに接続されている。即ち、入切スイッチ23の出力端子23bは、スイッチ24bの一端に接続されている。
したがって、第1切換装置24に着目して整理すると、当該第1切換装置24の第1入力端子24cに許可スイッチ22が接続され、第1切換装置24の第2入力端子24dに入切スイッチ23が接続されている。なお、第1切換装置24への許可スイッチ22及び入切スイッチ23の接続は逆であってもよい。即ち、第1切換装置24の第2入力端子24dに許可スイッチ22の出力端子22bが接続され、第1切換装置24の第1入力端子24cに入切スイッチ23の出力端子23bが接続されていてもよい。
【0029】
第2切換装置25の第3入力端子25aには、第1切換装置24の出力端子24eが接続されている。また、第2切換装置25の第3入力端子25aには、シートスイッチ26の出力端子26bが接続されている。なお、シートスイッチ26の入力端子26aは、電源系に接続され、第2切換装置25の第4入力端子25bは、電源系に接続されている。
図2に示すように、各種スイッチ(駐車スイッチ21、許可スイッチ22、入切スイッチ23、シートスイッチ26)と、切換装置(第1切換装置24、第2切換装置25)とを接続する系統を整理すると、PTO軸の駆動装置20は、第1系統L1、第2系統L2、第3系統L3とを有している。なお、第1系統L1、第2系統L2及び第3系統L3は、スイッチ及び切換装置を接続する配線部材等で構成されている。
【0030】
第1系統L1は、駐車スイッチ21及び許可スイッチ22を直列に接続し、さらに、許可スイッチ22の出力端子22bを第1切換装置24の第1入力端子24cに接続している。なお、
図1に示す駐車スイッチ21と許可スイッチ22とを直列に繋ぐ順番を入れ、入れ替え後の駐車スイッチ21の出力端子22bを第1切換装置24の第1入力端子24cに接続した系統を、第1系統L1としてもよい。
【0031】
第2系統L2は、入切スイッチ23の出力端子22bを第1切換装置24の第2入力端子24に接続し、第1切換装置24の出力端子24eを第2切換装置25の第3入力端子25aに接続している。第3系統L3は、シートスイッチ26の出力端子26bを第2切換装置25の第3入力端子25aに接続している。
したがって、PTO軸の駆動装置20が、第1系統L1、第2系統L2、第3系統L3を有しているため、PTO軸16を駆動に関する制御を、系統毎に処理が行え、処理の独立性を向上が保たれ、安全性を向上させることができる。また、系統毎にメンテナンスを行うことができ、信頼性を向上させることができる。
【0032】
次に、トラクタを駐車(停止)させた状態で、PTO軸16の動力で作業を行うこと(定置PTO)について説明する。なお、説明の便宜上、定置PTOを行う前は、イグニッションスイッチ28がオンであり、エンジン4が駆動していることを前提とする。
定置PTOによる作業を行う場合、作業者は、入切スイッチ23をONにする。そうすると、第2系統L2の電源(電力)は、第1切換装置24のスイッチ24bに通電する。また、作業者は、駐車レバーを制動位置にセットし、駐車スイッチ21をONにする。また、作業者が許可スイッチ22をONにする。第1系統L1の電源(電力)は、第1切換装置24のコイル24bに通電するため、第1切換装置24がONとなり、第2切換装置24の第3入力端子25aに流れる電圧(電流)は維持される。したがって、トラクタ1を駐車した状態で、PTO軸16の駆動を行うことができる。つまり、車両2の駐車を検出し且つ、許可スイッチ22がPTO許可である場合に、トラクタ1を駐車した状態で、作業装置2によって作業を行うことができる。
【0033】
ここで、許可スイッチ22に自己保持型のスイッチを採用した場合は、許可スイッチ22を再び押さない限り、PTO不許可にならない。この場合、例えば、駐車レバーを制動解除位置にセットしたり、イグニッションスイッチ28をOFFにした後、再び、駐車レバーを制動位置又はイグニッションスイッチ28をONにした場合、許可スイッチ22を押さなくてもONである。そのため、許可スイッチ22が自己保持型のスイッチである場合は、作業者の戻し忘れがあることに加えて、常に「許可」状態とすることが可能となるため、作業者の勘違い等により意図しないタイミングでPTO軸が駆動してしまうことがある。一方、この実施形態の許可スイッチ22は自己復帰型のスイッチである。そのため、第1切換装置24がシングル・ステイブル形の場合は、許可スイッチ22を押している間だけPTO許可の状態にすることができる。許可スイッチ22を押している間だけ、PTO許可の状態とした場合には、自己保持型に比べて、PTO軸16の停止のタイミングを設定しやすく、定置PTOにおける作業性を向上させることができる。また、許可スイッチ22を押している間だけ、PTO許可の状態とした場合、自己保持型のように作業者の戻し忘れによってPTO軸が駆動してしまうことがなく、戻し忘れによるPTO軸の駆動を防止することができる。
【0034】
第1切換装置24がラッチング形の場合は、許可スイッチ22を押した後、何らかの動作や状態を行うことによって、PTO許可からPTO不許可の状態に切り換えることができる。例えば、再び、イグニッションスイッチ28をONからOFFにした場合に、再び許可スイッチ22を押すことなく、PTO不許可の状態にすることができる。なお、駐車レバーを制動解除位置にした場合に、第1切換装置24をPTO許可からPTO不許可の状態に切り換えるように構成してもよい。
[第2実施形態]
図3は、第2実施形態のPTO軸の駆動装置20を示している。第2実施形態で示すPTO軸の駆動装置は、上述した第1実施形態のPTO軸の駆動装置に適用可能である。なお、第1実施形態と同様の構成の説明は省略する。
【0035】
図3に示すように、PTO軸の駆動装置20は、複数の第1ニュートラルスイッチ30を備えている。複数の第1ニュートラルスイッチ30は、車体3に搭載した複数の機器が中立位置であることを検出するスイッチである。複数の第1ニュートラルスイッチ30は、複数の機器のそれぞれに対応して設けられている。複数の機器とは、走行に関する動作を行う機器であって、例えば、前後切換レバー、変速レバー、クラッチペダル等である。前後切換レバーは、前進位置、後進位置、中立位置に切換自在なレバーであって、前進位置である場合、シャトル部5dを前進に切り換え、後進位置である場合、シャトル部5dを後進に切り換える。変速レバーとは、主変速部5b又は副変速部5cの変速を行うレバーであって、リンク機構等を介してシフタに接続されている。変速レバーは、主変速部5b又は副変速部5cの変速に対応した位置(変速位置)と、中立位置に切換可能である。クラッチペダルは、運転席6の近傍に揺動自在に支持され、車輪を支持する車軸又はデフ装置への動力伝達を入切する。例えば、第1ニュートラルスイッチ30は、前後切換レバーの中立位置を検出する第1スイッチ30aと、変速レバーの中立位置を検出する第2スイッチ30bと、クラッチペダルの中立位置を検出する第3スイッチ30cとを含んでいる。第1スイッチ30a、第2スイッチ30b及び第3スイッチ30cは、ON又はOFFに切り換え可能なスイッチであって、中立位置を検出した場合にONに切り換わる。
【0036】
第1スイッチ30a、第2スイッチ30b及び第3スイッチ30cは直列に接続され、第1スイッチ30aの入力端子は電源系に接続され、第3スイッチ30cの出力端子は、入切スイッチ23の入力端子23aに接続されている。したがって、第1スイッチ30a、第2スイッチ30b及び第3スイッチ30cのすべてが中立位置を検出した場合に、入切スイッチ23の入力端子23aに通電が可能である。
【0037】
したがって、第1切換装置24は、入切スイッチ23をONにしている状況下で、複数の第1ニュートラルスイッチ30の全てが中立位置を検出し、且つ、駐車スイッチ21が車体3の駐車を検出した状態で、許可スイッチ22が許可ある場合は、PTO軸を駆動可能に切り換わる。即ち、第1ニュートラルスイッチ30によって、少なくとも2つ以上の走行機器の中立位置を検出した場合に、第1切換装置24がONになるように設定されている。即ち、車体3が確実に停止(駐車)する条件を、駐車スイッチ21だけでなく第1ニュートラルスイッチ30で設定している。そのため、トラクタ1がより確実に駐車状態である場合に、PTO軸16を駆動して作業装置2で作業を行うことができる。
【0038】
なお、上述した実施形態では、複数の第1ニュートラルスイッチ30は、3つの機器の中立位置を検出するスイッチであったが、少なくとも2つ以上の機器の中立位置を検出するものであればよい。また、第1ニュートラルスイッチ30は、変速装置のシャトルプールの中立位置を検出するスイッチであっても、原動機が油圧式駆動装置(HST)である場合に走行を設定するアクセルペダルを踏んでいない状態(中立位置)を検出するスイッチであってもよく、その他のスイッチであってもよい。
[第3実施形態]
図4は、第3実施形態のPTO軸の駆動装置20を示している。
図5は、第3実施形態における変速装置5の一部を示している。第3実施形態で示すPTO軸の駆動装置は、上述した第1実施形態又は第2実施形態のPTO軸の駆動装置に適用可能である。なお、第1実施形態又は第2実施形態と同様の構成の説明は省略する。
【0039】
図5に示すように、トラクタ1のPTO軸16は、前部及び後部に設けられていて、後部のPTO軸16aと前部のPTO軸16bとを別々に駆動することが可能である。具体的には、PTO動力伝達部5eのPTO推進軸14は、第1PTO推進軸14aと、第2PTO推進軸14bとを含んでいる。第1PTO推進軸14aには、後部のPTO軸16aが接続され、第2PTO推進軸14bには、前部のPTO軸16bが接続されている。
【0040】
図4に示すように、PTO軸の駆動装置20は、複数の第2ニュートラルスイッチ31を備えている。複数の第2ニュートラルスイッチ31は、複数のPTO軸(第1PTO推進軸14a、第2PTO推進軸14b)の中立を検出するスイッチである。第2ニュートラルスイッチ31は、第1PTO検出スイッチ31aと、第2PTO検出スイッチ31bとを含んでいる。第1PTO検出スイッチ31a及び第2PTO検出スイッチ31bは、ON又はOFFに切り換え可能なスイッチであって、中立位置を検出した場合にONに切り換わる。
【0041】
第1PTO検出スイッチ31a及び第2PTO検出スイッチ31bは、直列に接続され、第2PTO検出スイッチ31bの出力端子は、第3スイッチ30cの出力端子に接続されている。また、第3スイッチ30cの出力端子は、入切スイッチ23の入力端子23aに接続されている。
したがって、第2切換装置25は、複数の第2ニュートラルスイッチ31がPTO軸16の中立を検出した場合は、電力が供給され続けるため、エンジン4の駆動を継続可能である。
【0042】
また、
図4に示すように、第2PTO検出スイッチ31bの出力端子を、切換装置27に接続し、シートスイッチ26の出力端子26bをスタータに接続される切換装置27に接続してもよい。この場合には、第1PTO検出スイッチ31a及び第2PTO検出スイッチ31bがONで且つシートスイッチ26がONである状態で、イグニッションスイッチ28をONすることにより、エンジン4を始動することができる。
[第4実施形態]
図6は、第4実施形態のPTO軸の駆動装置における報知機構を示す図である。第4実施形態で示すPTO軸の駆動装置は、上述した第1実施形態〜第3実施形態のPTO軸の駆動装置に適用可能である。第4実施形態におけるPTO軸の駆動装置の回路構成は、上述した第1実施形態〜第3実施形態のいずれかと同じである。その他、第1実施形態〜第3実施形態と同様の構成の説明は省略する。
【0043】
図6に示すように、PTO軸の駆動装置20は、制御装置33と、報知装置34とを備えている。制御装置33は、CPU等から構成され、報知装置34の制御を行う。制御装置33には、駐車スイッチ21、許可スイッチ22、シートスイッチ26及び報知装置34が接続されている。報知装置34は、スピーカ、LED、液晶パネル等で構成されている。報知装置34は、駐車スイッチ21、許可スイッチ22及びシートスイッチ26から制御装置33に入力される信号に基づいて警告を行う。報知装置34は、運転席6の近傍、又は、車体3の周囲に設けられている。
【0044】
図7は、制御装置33及び報知装置34の動作のフローチャートを示している。
図7の処理開始は、イグニッションスイッチ(キースイッチ)28がオンであり、エンジン4が駆動している状態で開始されることを前提とする。
図7に示すように、制御装置33は、エンジン4が駆動している状態において、作業者が運転席6に着座しているか否かを判断する(S1)。制御装置33は、作業者が運転席6に着座しており、シートスイッチ26がONである場合(S1、Yes)、報知装置34による警告を行わない(S2)。制御装置33は、作業者が運転席6に着座しておらず、シートスイッチ26がOFFである場合(S1、No)、車体3が駐車状態であるか否かを判断する(S3)。制御装置33は、駐車レバーが制動位置であり、駐車スイッチ21がONである場合(S3、Yes)、報知装置34による警告を行わない(S2)。制御装置33は、駐車レバーが制動解除位置であり、駐車スイッチ21がOFFである場合(S3、No)、報知装置34による警告を行う(S4)。即ち、報知装置34は、駐車スイッチ21が車体3の駐車を検出していない状態でシートスイッチ26が着座を検出していない場合は警告する。即ち、トラクタ1を駐車していない状態で且つ、作業者が運転席6に着座しておらずトラクタ1から離れた場合、報知装置34は、警告を発して、作業者に注意を促すようにしている。
【0045】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。本発明は、第1実施形態〜第4実施形態に示した構成について、全ての組み合わせが適用可能である。