【課題】操縦部とは異なる位置に設けられたスイッチによってPTO軸の駆動を行っている際に、車体が駐車されていない状態である場合にはPTO軸の駆動を停止することができるようにする。
【解決手段】作業機におけるPTO軸の駆動装置は、車体の駐車を検出可能な駐車スイッチと、車体に設けられた操縦部に設けられ、且つ車体に設けられたPTO軸の駆動を入切する第1スイッチと、操縦部とは異なる位置に設けられ、且つPTO軸の駆動を入切する第2スイッチと、少なくとも第1スイッチ又は第2スイッチのいずれかが入である場合にPTO軸の駆動を行う制御装置と、を備え、制御装置は、第2スイッチの入によってPTO軸の駆動が行われている状態で、駐車スイッチが車体の駐車を検出しなくなった場合に、PTO軸の駆動を停止する第1制御部を有している。
前記第1スイッチは、前記入を示す第1位置と、前記切を示す第2位置とに切換可能であって、前記第1位置に対応する第1出力端子と、前記第2位置に対応する第2出力端子とを有し、
前記第2出力端子は、複数のラインで前記制御装置に接続されている請求項1又は2に記載の作業機におけるPTO軸の駆動装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図7は、本実施形態におけるPTO軸の駆動装置を備えた作業機1の全体図を示している。
図7に示す作業機1はトラクタであるが、当該作業機1は、トラクタに限定されず、コンバイン、田植機等の農業機械であっても、建設機械等であってもよい。
【0013】
まず、トラクタ1の全体構成について説明する。
図7に示すように、トラクタ1は、車輪を有する走行車体(以降、車体という)3と、原動機4と、変速装置5とを備えている。原動機4は、ディーゼルエンジン、ガソリンエンジン、電動機等である。この実施形態では、原動機4は、ディーゼルエンジン(以降、エンジンという)である。
【0014】
また、車体3には運転席6と、運転席6を囲むキャビン7とが設けられている。
図6に示すように、キャビン7内には、トラクタ1(車体3)の様々な操作を行う操縦部10を備えている。操縦部10は、運転席6の前方、側方などに設けられている。操縦部10は、運転席6の側方に設けられた操縦台10aと、操縦台10aに設けられた操縦具10bと、運転席6の前方に設けられたステアリングホイール10cとを有している。操縦具10bは、揺動自在に支持された操作レバー、切換するスイッチ、回転自在なダイヤル等である。
【0015】
図7に示すように、車体3の後部には、3点リンク機構等で構成された連結部8が設けられている。連結部8には、作業装置2が着脱可能である。例えば、耕耘装置、施肥装置、薬剤散布装置等の作業装置2を連結部8に連結することによって、走行車体3によって作業装置2を牽引することができる。
図1に示すように、変速装置5は、主軸(推進軸)5aと、主変速部5bと、副変速部5cと、シャトル部5dと、PTO動力伝達部5eとを備えている。推進軸5aは、変速装置5のハウジングケースに回転自在に支持され、当該推進軸5aには、エンジン4のクランク軸からの動力が伝達される。主変速部5bは、複数のギア及び当該ギアの接続を変更するシフタを有している。主変速部5bは、複数のギアの接続(噛合)をシフタで適宜変更することによって、推進軸5aから入力された回転を変更して出力する(変速する)。
【0016】
副変速部5cは、主変速部5bと同様に、複数のギア及び当該ギアの接続を変更するシフタを有している。副変速部5cは、複数のギアの接続(噛合)をシフタで適宜変更することによって、主変速部5bから入力された回転を変更して出力する(変速する)。
シャトル部5dは、シャトル軸12と、前後進切替部13とを有している。シャトル軸12には、副変速部5cから出力された動力がギア等を介して伝達される。前後切換部13は、例えば、油圧クラッチ等で構成され、油圧クラッチの入切によってシャトル軸12の回転方向、即ち、トラクタ1の前進及び後進を切り換える。
【0017】
PTO動力伝達部5eは、PTO推進軸14と、PTOクラッチ15とを有している。PTO推進軸14は、回転自在に支持され、推進軸5aからの動力が伝達可能である。PTO推進軸14は、ギア等を介してPTO軸16に接続されている。PTOクラッチ15は、推進軸5aの動力をPTO推進軸14に伝達する第1動作と、推進軸5aの動力をPTO推進軸14に伝達しない第2動作とに切換可能なクラッチである。具体的には、PTOクラッチ15は、油圧クラッチで構成され、PTO推進軸14と一体回転可能なハウジング15aと、推進軸5aと一体回転自在なクラッチ部材15bと、作動油によりハウジング15a内を移動自在なピストン15cとを有している。
【0018】
したがって、ピストン15cを移動させて、クラッチ部材15bをハウジング15aに接合すれば、PTOクラッチ15は第1動作に移行して、エンジン4からの動力が推進軸5a及びPTOクラッチ15を介してPTO推進軸14に伝達され、当該PTO推進軸14の動力はPTO軸16に伝達される。即ち、PTO軸16は、変速装置5を介してエンジン4の動力によって駆動する。一方、ピストン15cを移動させて、クラッチ部材15bをハウジング15aから離反すれば、PTOクラッチ15は第2動作に移行して、推進軸5aの動力はPTO推進軸14に伝達されず、推進軸5aの動力が切断状態になる。なお、PTOクラッチ15による動力の伝達又は切断は、ピストン15cに油路を介して接続された作動弁17(電磁弁)によって行う。作動弁17には、作動油(油)を供給するポンプ18が接続されている。
【0019】
図2は、PTO軸の駆動装置20を示している。
PTO軸の駆動装置20は、第1スイッチ21と、第2スイッチ22と、駐車スイッチ23と、制御装置24とを備えている。第1スイッチ21、第2スイッチ22及び駐車スイッチ23は、制御装置24に接続されている。なお、
図2では、スイッチを「SW」で示している。
【0020】
第1スイッチ21は、操縦部10の操縦台10aに設けられていて、PTO軸16の駆動を入切するスイッチである。即ち、第1スイッチ21は、作業者が運転席6に座っている状態でPTO軸16の駆動を入切することができるスイッチである。さらに言い換えれば、第1スイッチ21は、作業者が乗車した状態で操作するためのスイッチである。なお、第1スイッチ21は、操縦台10aに設けられた操縦具10bの1つである。
【0021】
第1スイッチ21は、ニュートラル位置(N位置、第3位置)25aと、ON位置(第1位置)25bと、OFF位置(第2位置)25cとの3つのポジションに切換可能である。第1スイッチ21がN位置25aである場合には、N位置25aであることを示す信号が出力端子29aを介して制御装置24に入力される。また、第1スイッチ21がON位置25bである場合には、ON位置25bであることを示す信号が出力端子(第1出力端子)29bを介して制御装置24に入力される。第1スイッチ21がOFF位置25cである場合には、OFF位置25cであることを示す信号が出力端子(第2出力端子)29cを介して制御装置24に入力される。
【0022】
制御装置24は、第1スイッチ21がN位置25aである場合には、当該第1スイッチ21がN位置に設定されたと認識する。制御装置24は、第1スイッチ21がON位置25bである場合は、PTO軸16の駆動が「入」の状態に設定されたと認識する。制御装置24は、第1スイッチ21がOFF位置25cである場合は、PTO軸16の駆動が「切」の状態に設定されたと認識する。
【0023】
この実施形態では、第1スイッチ21の出力端子29cと制御装置24とを結ぶラインは、少なくとも複数本に分岐している。具体的には、第1スイッチ21は、切換の操作を行う操作部21aと、複数の出力端子(接点)が設けられた本体21bと、本体21bに設けられ且つラインL1,L2,L3,L4を接続する接続部21cとを有している。接続部21cは、出力端子(接点)29aに繋がる第1接続部21c1、出力端子(接点)29bに繋がる第2接続部21c2と、出力端子(接点)29cに繋がる第3接続部21c3と、第3接続部21c4とは異なる位置で出力端子(接点)29cに繋がる第4接続部21c4とを含んでいる。
【0024】
第1接続部21c1と制御装置24の第1入力部32aとは、第1ラインL1で接続されている。第2接続部21c2と制御装置24の第2入力部32bとは、第2ラインL2で接続されている。第3接続部21c3と制御装置24の第3入力部32cとは、第3ラインL3で接続されている。第4接続部21c4と制御装置24の第4入力部32dとは、第4ラインL4で接続されている。
【0025】
そのため、制御装置24は、複数のラインL1,L2,L3,L4のうち、少なくとも1つのラインLから入力された信号が存在すると、PTO軸16の駆動が「切」の状態に設定されたと認識する。したがって、例えば、何らかの事情で、ラインLが断線したとしても、少なくとも1本のラインLが制御装置24に接続されていれば、PTO軸16の駆動を停止することができる。
【0026】
図3A、
図3Bに示すように、第1スイッチ21は、押し込みと回転とを行うことが可能なスイッチである。操作部21aは、平面視で円形状であって、支持部21eによって回転自在に支持されている。支持部21eの端部には本体21bが接続されている。以降、説明の便宜上、操作部21aのことを回転部21aという。
第1スイッチ21の回転部21aが操縦台10aの上面10a1から離間した上部位置がN位置25aである。回転部21aを上部位置(N位置25a)から回転部21を押し込んで操縦台10aの上面10a1に近接した下部位置にすると、第1スイッチ21はOFF位置25cになる。また、下部位置(OFF位置)25cから回転部21aを回転させて予め定められた所定位置にすると、第1スイッチ21はON位置25bになる。第1スイッチ21を所定位置(ON位置25b)にした後、回転部21aを離すと、当該回転部21aは自動的に下部位置を経由して上部位置に戻る。即ち、第1スイッチ21は、OFF位置25cの位置から自動的にN位置25aに戻るモーメンタリスイッチである。
【0027】
第2スイッチ22は、操縦部10とは異なる位置に設けられていて、PTO軸16の駆動を入切するスイッチである。具体的には、第2スイッチ22は、キャビン7の外側の後輪フェンダの上部、或いは、キャビン7の外側の後部に設けられるスイッチである。即ち、第2スイッチ22は、車体3の後部又は側部に設けられるスイッチである。言い換えれば、第2スイッチ22は、第1スイッチ21とは異なり、作業者が降車した状態で操作するためのスイッチである。
【0028】
第2スイッチ22は、PTO軸16の駆動を入切するON又はOFFに切換可能である。例えば、第2スイッチ22は、ONである場合は、PTO軸16の駆動が「入」の状態であり、OFFである場合は、PTO軸16の駆動が「切」の状態である。以下、説明の便宜上、第1スイッチ21を「内部PTOスイッチ21」、第2スイッチ22を「外部PTOスイッチ22」という。
【0029】
駐車スイッチ23は、走行車体(車体)3の駐車を検出可能なスイッチである。
図2に示すように、駐車スイッチ23は、第1検出スイッチ23aと、第2検出スイッチ23bとを有している。第1検出スイッチ23は、車体3に揺動自在に支持された駐車レバー(パーキングブレーキ)が当該車体3の制動を行う位置(制動位置)である場合にONとなり、駐車レバーが車体3の制動を解除する位置(解除位置)にある場合にOFFになる。また、第2検出スイッチ23bは、車体3の制動を行う制動装置が制動状態にある場合にONとなり、制動装置が制動を解除する状態(制動解除状態)にある場合にOFFになる。詳しくは、制動装置は、変速装置5に設けられた駆動軸(例えば、デフ装置に動力を伝達する駆動軸)に設けられたギアの回転をロック(停止)する装置である。第2検出スイッチ23bは、制動装置のロック部材が駆動軸のギアに係止して当該駆動軸の回転を停止した制動状態ではONになる。また、第2検出スイッチ23bは、制動装置のロック部材が駆動軸のギアから離脱して当該駆動軸の回転を許容した制動解除状態ではOFFになる。
【0030】
駐車スイッチ23は、第1検出スイッチ23a及び第2検出スイッチ23bがONである場合、車体3の駐車を検出する。また、駐車スイッチ23は、第1検出スイッチ23a及び第2検出スイッチ23bがOFFである場合、車体3の駐車を検出しない。
なお、この実施形態では、駐車スイッチ23は、第1検出スイッチ23a及び第2検出スイッチ23bで構成していたがいずれかのスイッチで構成してもよい。例えば、駐車スイッチ23を第1検出スイッチ23aのみで構成した場合は、第1検出スイッチ23aがONである場合は車体3の駐車を検出し、第1検出スイッチ23aがOFFである場合は車体3の駐車を検出しない。駐車スイッチ23を第2検出スイッチ23bのみで構成した場合は、第2検出スイッチ23bがONである場合は車体3の駐車を検出し、第2検出スイッチ23bがOFFである場合は車体3の駐車を検出しない。
【0031】
また、PTO軸の駆動装置20は、走行検出装置26と、シートスイッチ27と、報知装置28とを備えている。走行検出装置26、シートスイッチ27及び報知装置28は、制御装置24に接続されている。
走行検出装置26は、車体3(トラクタ1)の走行(走行状態)を検出する検出装置である。具体的には、走行検出装置26は、車体3(トラクタ1)の走行速度を計測する車速センサである。車速センサ26は、例えば、車輪又は車輪を回転させる車軸の回転数に基づいて車体3(トラクタ1)の走行速度を計測する。即ち、車速センサ26が計測した走行速度が零である場合は、車体3(トラクタ1)の走行は検出されず、走行速度が零よりも大きい場合は、車体3(トラクタ1)の走行を検出する。
【0032】
シートスイッチ27は、運転席6への作業者の着座を検出するスイッチである。 例えば、シートスイッチ27はON又はOFFに切換可能である。シートスイッチ27は、運転席6のシート(座部、背もたれ)内、又は、シートの下方等に設けられている。作業者がシートに乗った場合に、シートスイッチ27はONとなり、着座を検出する。また、作業者がシートから降りた(離れた)場合に、シートスイッチ27はOFFとなり、着座をしていないことを検出する。
【0033】
報知装置28は、制御装置28の制御に応じて警告を報知する装置で、スピーカ、LED、液晶パネル等で構成されている。報知装置28は、操縦部10、又は、車体3の周囲に設けられている。
制御装置24は、PTO軸16の駆動に関する制御(以下、PTO制御ということがある)を行う。制御装置24は、PTO制御として、PTO軸16の駆動又は駆動の停止を行う。具体的には、制御装置24には、PTO軸16の駆動又は停止を行うPTO駆動部30が接続されている。PTO駆動部30は、作動弁(電磁弁)17及び/又はエンジン4の駆動を強制的に停止させる停止装置である。
【0034】
制御装置24は、PTO軸16の駆動を停止する場合、作動弁(電磁弁)17にソレノイドを消磁することでPTOクラッチ15を第2動作にしたり、停止装置に制御信号を出力して当該停止装置を作動させることでエンジン4の駆動を停止する。また、制御装置24は、PTO軸16の駆動をする場合、エンジン4が駆動している状態で作動弁(電磁弁)17のソレノイドを励磁することでPTOクラッチ15を第1動作にする。制御装置24は、PTO制御として、PTO軸16の駆動に関係する警告を、報知装置28を通じて行う。
【0035】
なお、報知装置28は、駐車スイッチ23に故障が発生した場合、駐車スイッチ23が故障であることを報知してもよい。例えば、駐車レバーを制動位置にした状態において、第1検出スイッチ23aがONで且つ第2検出スイッチ23bがONである場合には、制御装置24は、駐車スイッチ23は故障しておらず車体3が駐車状態であると判断する。一方、駐車レバーを制動位置にした状態において、第2検出スイッチ23bがOFFで且つ第1検出スイッチ23aがONである場合には、制御装置24は、車体3が駐車状態であるものの、駐車スイッチ23が故障していると判断する。制御装置24は、駐車スイッチ23が故障であると判断した場合は、報知装置28に故障通知信号を出力する。報知装置28は、故障通知信号を受けて駐車スイッチ23が故障していることを報知する。報知装置28による駐車スイッチ23の故障の報知は、イグニッションスイッチ又はアクセサリスイッチがONである場合に継続して、イグニッションスイッチ又はアクセサリスイッチがOFFになった場合に停止する。
【0036】
制御装置24によるPTO制御は、例えば、制御装置24が、上述した様々なスイッチ(内部PTOスイッチ21、外部PTOスイッチ22、駐車スイッチ23、シートスイッ
チ27)の状態、走行検出装置(車速センサ)26で検出された車速に基づいて行う。
制御装置24は、第1制御部24a、第2制御部24b、第3制御部24cを有している。第1制御部24a、第2制御部24b及び第3制御部24cは、制御装置24を構成する電気電子部品、当該制御装置24に格納されたプログラム等から構成されている。また、第1制御部24a、第2制御部24b及び第3制御部24cは、PTO制御を行う。
【0037】
以下、第1制御部24a、第2制御部24b及び第3制御部24cによるPTO制御について詳しく説明する。
第1制御部24aは、外部PTOスイッチ22を入(ON)することによってPTO軸16の駆動が行われている状態で、駐車スイッチ23が車体3の駐車を検出しなくなった場合に、PTO軸16の駆動を停止する。
【0038】
詳しくは、エンジン4が駆動中に外部PTOスイッチ22がONで且つ駐車スイッチ23がONになってPTO軸16が駆動している状況下において、作業者が駐車レバーを制動位置から解除位置に変化させた場合(駐車スイッチ23がOFFになった場場合)、第1制御部24aは、作動弁17のソレノイドを消磁して、PTO軸16の駆動を停止する。
【0039】
第2制御部24bは、PTO軸16が駆動中に車速センサ26が車体3の走行を検出し且つシートスイッチ27が作業者の着座を検出していない場合は、報知装置28に警告を発生させる。
詳しくは、トラクタ1が走行中(車速センサ26で検出された車速>0)、内部PTOスイッチ21がON、シートスイッチ27がONである状況から、当該作業者が運転席6から離れることによりシートスイッチ27がOFFに変化した場合、第2制御部24bは、警告を発生する信号(以降、警告指令信号という)を報知装置28に出力する。報知装置34は、第2制御部24からの信号を受けて、警告を発して、作業者に注意を促す。
【0040】
なお、第2制御部24bは、シートスイッチ27がOFFになった経過時間(作業者が運転席6から離れた時間)を求め、経過時間が所定時間(例えば、1秒)以上である場合に、報知装置28に対して警告指令信号を出力してもよい。
第3制御部24bは、PTO軸16が駆動中に車速センサ26が車体3の走行を検出せず且つシートスイッチ27が作業者の着座を検出していない場合は、PTO軸16の駆動を停止する。
【0041】
詳しくは、トラクタ1が走行中、内部PTOスイッチ21がON、シートスイッチ27がONである状況から、トラクタ1が走行中から停止し(車速センサ26で検出された車速=0)且つ作業者が運転席6から離れることによりシートスイッチ27がOFFに変化した場合、第3制御部24bは、作動弁17のソレノイドを消磁することでPTO軸16の駆動を停止する。
【0042】
さて、制御装置24は、エンジン4の始動を牽制(禁止)する制御(以下、エンジン始動牽制ということがある)を行う。具体的には、制御装置24には、スタータ等をOFFにする牽制装置31が接続されている。制御装置24は、エンジン始動牽制を行う場合、作業者によってイグニッションがONになってエンジン4を始動しようとしたとしても、牽制装置31によってイグニッションスイッチのONに伴ってスタータをONせず、当該スタータをOFFに保持する。したがって、エンジン始動牽制が行われている場合は、エンジン4の始動を行うことができない。
【0043】
例えば、エンジン4の始動を行う際に、内部PTOスイッチ21がN位置25aでない場合、或いは、外部PTOスイッチ21がONである場合は、制御装置24は、エンジン始動牽制を行い、エンジン始動を許可しない。一方、エンジン4の始動を行う際に、内部PTOスイッチ21がN位置25a且つ外部PTOスイッチ22がOFFである場合に、エンジン始動牽制を行わず、エンジン始動を許可する。
【0044】
図4は、PTO制御及びエンジン始動牽制における処理をブロックで表した図である。また、
図5は、PTO制御及びエンジン始動牽制の状態遷移図を示している。
まず、
図4を用いてPTO制御及びエンジン始動牽制における処理を簡単に説明する。
図4に示すように、PTO制御での処理は、SW警告処理A1、PTO停止処理A2、
外部SW第1処理A3、外部SW第2処理A4、内部SW処理A5、離席警告処理A6を含む。エンジン始動牽制は、SW確認処理B1、エンジン始動牽制B2を含む。
【0045】
SW警告処理A1は、内部PTOスイッチ21及び外部PTOスイッチ22の両方がONされた場合の処理であって、当該スイッチ21、22の両方にONになった場合には、警告を発生する処理である。
PTO停止処理A2は、スイッチ又は走行の状態に基づいて、PTO駆動16の駆動を停止する処理である。
【0046】
外部SW第1処理A3は、外部PTOスイッチ22を短時間ONした場合の処理であって、外部PTOスイッチ22をONしている時間だけPTO駆動16の駆動を行う。
外部SW第2処理A4は、外部PTOスイッチ22を長時間にONした場合の処理であって、外部PTOスイッチ22を長時間ONした時点でPTO駆動16の駆動を保持する。内部SW処理A5は、内部PTOスイッチ21をONにした場合の処理であって、PTO駆動16の駆動を行う処理である。離席警告処理A6は、シートスイッチ27がOFFになった場合の処理であって、シートスイッチ27がOFFになった状態で所定の条件を満たすと警告を発生する処理である。
【0047】
SW確認処理B1は、エンジンの始動前に内部PTOスイッチ21及び外部PTOスイッチ22の状態を確認する処理である。エンジン始動牽制B2は、SW確認処理B1における内部PTOスイッチ21及び外部PTOスイッチ22の確認の結果に基づき、エンジンの始動を禁止する処理である。
次に、
図5を用いてPTO制御及びエンジン始動牽制における処理と条件について説明する。
【0048】
図5に示すように、PTO軸の駆動装置20の状態は、スイッチ等の入力を待つ待機状態C1、PTO軸駆動状態C2、PTO駆動軸停止状態C3、警告状態C4、エンジン始動牽制状態C5に大別される。
待機状態C1では、制御装置24は、内部PTOスイッチ21及び外部PTOスイッチ22からのONの入力を待つ(S1)。待機状態C1において、内部PTOスイッチ21がON且つシートスイッチ27がONに変更された場合、PTO軸の駆動装置20は、待機状態C1からPTO軸駆動状態C2に推移する(S2)。推移後のPTO軸駆動状態C2では、制御装置24は、内部SW処理A5によって、PTO軸16の駆動を示す信号(以降、駆動信号という)、即ち、作動弁17のソレノイドを励磁する信号を作動弁17に出力する。
【0049】
また、待機状態C1において、外部PTOスイッチ22がON且つ駐車スイッチ23がONに変更された場合、PTO軸の駆動装置20は、待機状態C1からPTO軸駆動状態C2に推移する(S3)。
ここで、推移後のPTO軸駆動状態C2において、外部PTOスイッチ22をONにした時間(経過時間)が所定時間以内(例えば、3秒以内)であって短時間の場合、制御装置24は、外部SW第1処理A3によって、外部PTOスイッチ22がONである間、作動弁17に駆動信号を出力する。また、PTO軸駆動状態C2において、外部PTOスイッチ22がONからOFFに変化した場合、PTO軸の駆動装置20は、PTO軸駆動状態C2から駆動停止状態C3に推移する(S4)。駆動停止状態C3では、制御装置24は、PTO停止処理A2によって、PTO軸16の駆動の停止を示す信号(以降、駆動停止信号という)、即ち、作動弁17のソレノイドを消磁する信号を作動弁17に出力する。
【0050】
また、PTO軸駆動状態C2において、外部PTOスイッチ22をONにした経過時間が所定時間超(例えば、3秒超)であって長時間の場合、制御装置24は、外部SW第2処理A4によって、作動弁17に駆動信号を出力し続け、PTO軸駆動状態C2を保持する(S5)。
PTO軸駆動状態C2において、内部SW処理A5によりPTO軸16の駆動を継続、又は、外部SW第2処理A4によってPTO軸16の駆動を継続している状況下で、内部PTOスイッチ22及び外部PTOスイッチ22のいずれかがOFFに変更になった場合、PTO軸の駆動装置20は、PTO軸駆動状態C2から駆動停止状態C3に推移する(S6)。制御装置24は、PTO停止処理A2によって、作動弁17に駆動停止信号を出力する。
【0051】
また、PTO軸駆動状態C2において、外部SW第2処理A4によってPTO軸16の駆動を継続している状況下で駐車スイッチ23がOFFになった場合、PTO軸の駆動装置20は、PTO軸駆動状態C2から駆動停止状態C3に推移する(S7)。制御装置24の第1制御部24aは、PTO停止処理A2によって、作動弁17に駆動停止信号を出力する。
【0052】
また、PTO軸駆動状態C2において、内部SW処理A5によりPTO軸16の駆動を継続している状況下で、シートスイッチ27のOFFの時間が所定時間(例えば、1秒)以上で且つ車速センサ26で検出された車速が零である場合は、PTO軸の駆動装置20は、PTO軸駆動状態C2から駆動停止状態C3に推移する(S8)。制御装置24の第3制御部24cは、PTO停止処理A2によって、作動弁17に駆動停止信号を出力する。
【0053】
また、PTO軸駆動状態C2において、内部SW処理A5によりPTO軸16の駆動を継続している状況下で、シートスイッチ27のOFFの時間が1秒以上で且つ車速センサ26で検出された車速が零よりも大きい場合は、PTO軸の駆動装置20は、PTO軸駆動状態C2から警告状態C4に推移する(S9)。制御装置24の第2制御部24bは、離席警告処理A6によって、警告指令信号を報知装置28に出力する。
【0054】
警告状態C4において、シートスイッチ27のOFFの時間が所定時間(例えば、0.2秒)以下である場合、PTO軸の駆動装置20は、警告状態C4からPTO軸駆動状態C2に推移する(S10)。PTO軸駆動状態C2において、制御装置24の第2制御部24bは、警告解除信号を報知装置28に出力し、当該報知装置28による警告を停止する。
【0055】
また、駆動停止状態C3において、PTO軸16の駆動が停止すると、PTO軸の駆動装置20は、待機状態C1に推移する(S11)。待機状態C1又はPTO軸駆動状態C2において、内部PTOスイッチ21と外部PTOスイッチ22との両方がONである場合は、PTO軸の駆動装置20は、警告状態C4に推移する(S12)。制御装置24は、SW警告処理A1によって、警告指令信号を報知装置28に出力する。報知装置28は、内部PTOスイッチ21と外部PTOスイッチ22との両方がONであることを報知する。
【0056】
さて、待機状態C1において、制御装置24は、SW確認処理B1により、内部PTOスイッチ21及び外部PTOスイッチ22の状態を監視している(以降、スイッチ監視という)。制御装置24がスイッチ監視している状態において、内部PTOスイッチ21がN位置25aでない場合、PTO軸の駆動装置20は、待機状態C1からエンジン始動牽制状態C5に推移する(S13)。また、制御装置24がスイッチ監視している状態において、外部PTOスイッチ21がONである場合、PTO軸の駆動装置20は、待機状態C1からエンジン始動牽制状態C5に推移する(S14)。
【0057】
エンジン始動牽制状態C5では、制御装置24は、エンジン始動牽制B2により、牽制装置31によってスタータをOFFに保持することにより、イグニッションスイッチをONしたとしてもエンジン4の始動ができないようにする。エンジン始動牽制状態C5において、内部PTOスイッチ21がN位置25aで且つ外部PTOスイッチ21がOFFである場合、PTO軸の駆動装置20は、エンジン始動牽制状態C5から待機状態C1に推移する(S15)。即ち、待機状態C1では、制御装置24は、イグニッションスイッチONによりエンジンの始動を許可する。
【0058】
以上の実施形態によれば、制御装置24は、外部PTOスイッチ21によってPTO軸16の駆動が行われている状態で、駐車スイッチ23が駐車を検出しなくなった場合、PTO軸の駆動を停止している。そのため、例えば、トラクタ1を駐車している状態で外部PTOスイッチ21を作業者がONし、トラクタ1の外部で作業者が作業を行っている状況下において、別の作業者がトラクタ1に乗車しトラクタ1の駐車を解除した場合、或いは、その他の何らかの事情でトラクタ1の駐車が解除になった場合などは、確実にPTO軸16の駆動を停止することができ、作業性と安全性とを両立することができる。
【0059】
制御装置24は、PTO軸16が駆動中に走行検出装置26が走行を検出し且つシートスイッチ27が作業者の着座を検出していない場合は、報知装置28に警告を発生させる。また、PTO軸16の作動中に走行検出装置26が走行を検出せず且つシートスイッチ27が作業者の着座を検出していない場合は、PTO軸16の駆動を停止する。
そのため、トラクタ1を走行させながら作業装置2を作動させて作業を行っている状況下で、作業者が運転席6に着座していない場合は、当該作業者に運転席6に着座してトラクタ1の走行及び作業装置2を作動させることを促すことができる。 一方で、作業者が運転席6に着座していない場合であっても、トラクタ1の走行が停止していることを走行検出装置26によって検出した場合には、PTO軸16の駆動を自動的に停止することができ、作業性と安全性とを両立することができる。
【0060】
内部PTOスイッチ21において、当該内部PTOスイッチ21のOFFを伝えるための第2出力端子29cは、複数のラインLで制御装置24に接続されている。そのため、例えば、何らかの事情で、ラインL1が断線したとしても、少なくとも1本のラインL1が制御装置24に接続されていれば、当該制御装置24は内部PTOスイッチ21のOFFを認識することができる。即ち、内部PTOスイッチ21によってPTO軸16を駆動できる構成でありながら、内部PTOスイッチ21によって、より確実にPTO軸16を停止することができる。
【0061】
制御装置26は、内部PTOスイッチ21がN位置25a且つ外部PTOスイッチ21がOFFである場合には、エンジン等の原動機4の駆動を許可する。そのため、内部PTOスイッチ21及び外部PTOスイッチ21のいずれかでPTO軸16を駆動することができる構成でありながら、エンジン4の始動直後には、PTO軸16が駆動してしまうことを確実に防止することができ、作業性と安全性とを両立することができる。
【0062】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。