【解決手段】車両用通信システム100は、車両に搭載される計器10と、計器10と直接又は間接的に無線通信が可能な携帯端末20と、を備える。携帯端末20は、車両に関する車両情報(例えば位置情報)を取得する取得手段と、取得手段が取得した車両情報に関連したデータ(例えばナビゲーションデータ)を第1周期で計器10に送信する送信制御手段と、を備える。送信制御手段は、車両情報の所定期間における変化量が所定範囲内である場合は、第1周期よりも長い第2周期でデータを計器10に送信する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなシステムでは、計器などの車載装置と携帯端末との通信間隔は一定であり、比較的短い間隔に設定されている。常にこのような短い間隔で通信を行っていると、車内で使用される携帯端末は内蔵バッテリーで駆動されている場合が多いため、携帯端末のバッテリー消費が早くなってしまう。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、車内で使用される携帯端末のバッテリー消費を抑制することができる車両用通信システム、携帯端末、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る車両用通信システムは、
車両に搭載される計器と、前記計器と直接又は間接的に無線通信が可能な携帯端末と、を備える車両用通信システムであって、
前記携帯端末は、
前記車両に関する車両情報を取得する取得手段と、
前記取得手段が取得した前記車両情報に関連したデータを第1周期で前記計器に送信する送信制御手段と、を備え、
前記送信制御手段は、
前記車両情報の所定期間における変化量が所定範囲内である場合は、前記第1周期よりも長い第2周期で前記データを前記計器に送信する、
ことを特徴とする。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る携帯端末は、
車両に搭載される計器と直接又は間接的に無線通信が可能な携帯端末であって、
前記車両に関する車両情報を取得する取得手段と、
前記取得手段が取得した前記車両情報に関連したデータを第1周期で前記計器に送信する送信制御手段と、を備え、
前記送信制御手段は、
前記車両情報の所定期間における変化量が所定範囲内である場合は、前記第1周期よりも長い第2周期で前記データを前記計器に送信する、
ことを特徴とする。
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の第3の観点に係るプログラムは、
コンピュータに、
車両に関する車両情報を取得する処理と、
取得した前記車両情報に関連したデータを第1周期で無線通信により送信する処理と、
前記車両情報の所定期間における変化量が所定範囲内である場合は、前記第1周期よりも長い第2周期で前記データを無線通信により送信する処理と、
を実行させる。
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の第4の観点に係る車両用通信システムは、
車両に搭載される無線通信装置と、前記無線通信装置と無線通信が可能な携帯端末と、を備える車両用通信システムであって、
前記無線通信装置は、
前記車両に関する車両情報を取得する取得手段と、
前記取得手段が取得した前記車両情報に関連したデータを第1周期で前記携帯端末に送信する送信制御手段と、を備え、
前記送信制御手段は、
前記車両情報の所定期間における変化量が所定範囲内である場合は、前記第1周期よりも長い第2周期で前記データを前記携帯端末に送信する、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、車内で使用される携帯端末のバッテリー消費を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0013】
(第1実施形態)
第1実施形態に係る車両用通信システム100は、
図1に示すように、計器10と携帯端末20とを備え、両者の間で近距離無線接続を確立し、種々の通信を実行するシステムである。
【0014】
(計器10)
計器10は、車両1に搭載され、例えば、車両1に関する各種情報を報知する複合計器として構成されている。
【0015】
計器10は、
図1及び
図2に示すように、計器部11と、画像表示部12と、BT(Bluetooth(登録商標、以下略))通信部13と、制御部14と、制御メモリ15と、ビデオメモリ16と、を備える。
【0016】
計器部11は、例えばスピードメータである。計器部11は、目盛り、数値等からなる指標部(図示せず)と、この指標部を指示する指針11aとを備え、両者を対比判読させることで車両1の車速を報知する。また、計器部11は、指針11aを回転させるステッピングモータ(図示せず)を備える。ステッピングモータは、制御部14の制御の下で動作する。
【0017】
画像表示部12は、車両1に関する各種情報を示す画像を表示するものである。画像表示部12は、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機ELディスプレイ(OELD:Organic Electro-Luminescence Display)等からなり、制御部14の制御の下で車両情報を表示する。
【0018】
この実施形態では、画像表示部12は、後述するように携帯端末20から受信したナビゲーションデータに応じた、現在地近傍の地図画像や案内経路画像を含むナビゲーション画像を表示可能となっている。
【0019】
BT通信部13は、アンテナと、所定のBTプロファイルに対応したBTモジュールとから構成され、他のBT機器(本実施形態では携帯端末20)との間でBT接続(BT仕様を満たす無線通信)を行う。なお、計器10と携帯端末20とは既知の手法によりペアリングされており、両者の間でBT接続が可能となっているものとする。
【0020】
制御部14は、CPU(Central Processing Unit)、グラフィックコントローラなどから構成され、制御メモリ15に格納されている動作プログラムを実行して、計器10の各部の動作を制御する。制御部14は、各種ドライバを介して、計器部11や画像表示部12の動作を制御する。なお、制御部14の少なくとも一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの専用回路によって構成されていてもよい。
【0021】
また、制御部14は、車両1に搭載されたECU(Electronic Control Unit)30と有線接続されており、CAN(Controller Area Network)、LIN(Local Interconnect Network)、ハードワイヤードなどの通信方式で、車両1に関する各種情報を取得する。ECU30から取得した車両情報に基づいて、制御部14は、車速に応じた回転角で指針11aを回転させたり、残燃料などの各種情報画像を画像表示部12に表示させたりする。
【0022】
制御メモリ15は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等から構成され、制御部14を構成するCPUのワークエリア、CPUが実行する動作プログラムを記憶するプログラムエリア、データエリア等として機能する。プログラムエリアには、計器部11や画像表示部12の動作を制御するためのプログラムや、BT接続を確立するためのプログラム等の動作プログラムが記憶される。データエリアには、図示するように、ペアリング済みの他のBT機器(本実施形態では携帯端末20)と共通の識別コードであるリンクキーL等が記憶される。
【0023】
ビデオメモリ16は、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ等から構成され、画像表示部12に表示させる画像のデータ(画像データ)を記憶する。
【0024】
制御部14のCPUは、グラフィックコントローラを介して、ビデオメモリ16に記憶された画像データに基づき、画像表示部12の表示制御を行う。グラフィックコントローラは、CPUからの表示制御指令などに基づき、画像表示部12における表示動作の制御内容を決定する。例えば、表示制御部は、画像表示部12の画面に表示させる画像の切換タイミングを決定することなどにより、各種の表示を実行させるための制御を行う。なお、制御部14では、表示コンテンツ毎にレイヤーが割り当てられており、個別の表示制御が可能となっている。
【0025】
また、制御部14は、携帯端末20との間でBT接続を確立し、種々の制御を行う。例えば、制御部14は、携帯端末20から受信したデータ(ナビゲーションデータを含む)に基づいて、携帯端末20の表示部22(後述)に表示可能な画像を、画像表示部12に表示させるなどの制御を行う。そのため、携帯端末20の表示部22に表示可能なナビゲーション画像は、計器10の画像表示部12で表示可能となっている。
【0026】
(携帯端末20)
携帯端末20は、例えばスマートフォンからなり、いわゆる携帯電話の機能、BT接続の機能等を備える。携帯端末20は、車両用通信システム100において、ユーザ(主に車両1の運転者)に携帯され、車両1の搭乗時に使用される。
【0027】
携帯端末20は、
図1及び
図2に示すように、BT通信部21と、表示部22と、操作部23と、通信部24と、GNSS(Global Navigation Satellite System)ユニット25と、制御部26と、制御メモリ27と、不揮発性メモリ28と、を備える。
【0028】
BT通信部21は、アンテナと、計器10と共通するBTプロファイルに対応したBTモジュールとから構成され、他のBT機器(本実施形態では計器10)との間でBT接続を行う。
【0029】
表示部22は、バックライトを有する液晶ディスプレイ(LCD)や、有機ELディスプレイ(OELD)等から構成され、制御部26の制御の下で所定の画像を表示する。
【0030】
表示部22は、制御部26によって、表示輝度の調整制御や、表示動作のオフ(スリープ時も含む)制御が可能となっている。特にこの実施形態では、後述する「低電力モード」となった場合には、表示部22の表示輝度を暗く制御する、又は、表示部22の表示動作をオフする「消費電力低減制御」が実行される。
【0031】
操作部23は、ユーザの操作に応答して、操作内容を示す信号を制御部26に供給する。操作部23は、例えば、タッチパネル(タッチスクリーン)から構成され、表示部22と一体となっている。携帯端末20では、操作部23からのユーザ操作により、BT接続設定のオン・オフ切替操作や、後述するアプリケーションソフトの起動操作が可能となっている。なお、当該ユーザ操作は、音声による操作であってもよい。
【0032】
通信部24は、インターネット通信を行うための構成であり、WAN(Wide Area Network)に直接アクセスできる通信モジュール、WANにアクセス可能な外部装置(モバイルルータなど)や公衆無線LAN(Local Area Network)のアクセスポイント等と通信するための通信モジュールなどから構成される。
【0033】
GNSSユニット25は、GNSS信号を受信するアンテナ、受信したGNSS信号に基づいて車両1の位置(自車位置)を算出するコントローラなどから構成され、算出した自車位置を示す位置情報を所定周期(更新周期)で制御部26に出力する。
【0034】
この実施形態では、更新周期として、通常モードで用いられる第1周期(例えば100ms)と、低電力モードで用いられる第2周期(例えば300ms)が予め定められている。更新周期については後述する。
【0035】
制御部26は、CPUなどから構成され、制御メモリ27に格納されている動作プログラムを実行して、携帯端末20の各部の動作を制御する。なお、制御部26は、少なくとも一部がASICなどの専用回路によって構成されていてもよい。
【0036】
制御メモリ27は、ROM、RAM、フラッシュメモリ等から構成され、制御部26を構成するCPUのワークエリア、CPUが実行する動作プログラムを記憶するプログラムエリア、データエリア等として機能する。プログラムエリアには、通常の通話処理を実行するためのプログラムや、BT接続を確立するためのプログラム等の動作プログラムが記憶される。データエリアには、図示するように、計器10と共通のリンクキーL等が記憶される。このように、計器10と携帯端末20とはペアリングされ、両者には共通のリンクキーLが記憶されている。
【0037】
特に、本実施形態では、制御メモリ27は、後述する「更新周期制御処理」を実行可能とするアプリケーションソフトのプログラムPを記憶している。このプログラムPは、例えば、カーナビゲーション実行のためのアプリケーションソフト(ナビゲーションソフト)に含まれるものであり、計器10もしくは車両1の提供者によってサーバに用意され、携帯端末20のユーザによってインターネットを経由して予めダウンロードされたものである。
【0038】
制御部26は、操作部23からユーザ操作に応じて、ナビゲーションソフトを起動し、GNSSユニット25からの位置情報に基づいて、現在位置近傍の地図データを読み出し、案内経路を決定する。そして、制御部26は、位置情報、ガイド情報(地図情報や案内経路情報を含む)などを示す「ナビゲーションデータ」を、無線通信を介して、計器10の制御部14に送信する。なお、ナビゲーションデータは、位置情報やガイド情報を示す、画像データやコマンドデータであればよい。
【0039】
不揮発性メモリ28は、フラッシュメモリ等から構成され、表示部22に表示させる画像のデータ(画像データ)や、電話番号、発信着信履歴等の各種データを記憶する。
【0040】
制御部26は、制御メモリ27のROMから読み出した動作プログラムや固定データを用いて、携帯端末20の全体動作を制御するための処理を実行する。このときには、制御部26がROMから固定データを読み出す固定データ読出動作や、制御部26がRAMに各種データを書き込んで一時記憶させるデータ書込動作、制御部26がRAMに一時記憶されている各種データを読み出すデータ読出動作、制御部26が、図示しないI/F(InterFace)を介して外部から各種信号の入力を受け付ける受信(取得)動作や、I/Fを介して外部へと各種信号を送信する送信動作なども行われる。また、制御部26は内蔵のタイマにより、適宜計時を行う。
【0041】
制御部26は、次に説明する更新周期制御処理を実行することにより、携帯端末20のバッテリー消費を抑制する低電力モードの場合は、通常モードでは第1周期であった更新周期を、第1周期よりも第2周期に設定する。
【0042】
具体的には、低電力モードの場合には、制御部26は、GNSSユニット25のコントローラから位置情報の取得周期を通常よりも長い第2周期に設定・制御する。また、制御部26は、位置情報を取得したことに応じて、当該位置情報に関連したデータ(前述のナビゲーションデータ)を、無線通信を介して計器10に送信する。したがって、ナビゲーションデータの送信周期も、低電力モードの場合には、通常よりも長い第2周期となる。
【0043】
つまり、ここで言う更新周期とは、携帯端末20の制御部26が車両に関する車両情報(ここでは位置情報)を取得する周期と、車両情報の取得に応じて車両情報に関連したデータ(ここではナビゲーションデータ)を送信する周期とを含む。
【0044】
なお、自車位置の算出を行うGNSSユニット25のコントローラの機能は、制御部26の機能に含まれていてもよい。つまり、低電力モードの場合には、GNSS信号を取得する周期や自車位置を算出する周期が、通常よりも長い周期に制御されてもよい。
【0045】
以上の構成からなる車両用通信システム100は、次に説明する更新周期制御処理を実行することで、車両1内で使用される携帯端末20のバッテリー消費を抑制する。
【0046】
(更新周期制御処理)
図3は、更新周期制御処理のフローチャートである。携帯端末20の制御部26(CPU)は、例えば、操作部23がプログラムPによるアプリケーションソフトの起動操作(携帯端末20に対してのユーザ操作)を受け付けたことを契機に更新周期制御処理を開始する。当該処理の開始時には、携帯端末20と計器10とは、前述のようにペアリングされており、両者の間では既知のBT接続手法によって、BT接続要求を送信した一方の装置を他方の装置が認証した上で互いにネゴシエーションを行って、BT接続が確立されている(BT通信が可能となっている)ものとする。また、BT接続によって、携帯端末20の表示部22に表示可能なナビゲーション画像の少なくとも一部が、計器10の画像表示部12に表示可能な状態であるとする。なお、画像表示部12における表示は、携帯端末20のナビゲーション画像がそのまま表示される態様(ミラーリング表示)であってもよいし、当該ナビゲーション画像の一部が表示される態様や、レイアウトが変更されて表示される態様であってもよい。
【0047】
更新周期制御処理を開始すると、まず、制御部26は、設定されている更新周期が経過したか否かを判別する(ステップS1)。なお、初回処理時では、更新周期は、通常の第1周期に設定されている。
【0048】
更新周期が経過していない場合は待機する(ステップS1;No)一方で、更新周期が経過した場合(ステップS1;Yes)、制御部26は、車両情報(位置情報)をGNSSユニット25から取得し、この取得に応じて車両情報に関連したデータ(ナビゲーションデータ)をBT通信を介して計器10へと送信する(ステップS2)。
【0049】
続いて、制御部26は、車両情報の変化量は所定範囲内であるか否かを判別する(ステップS3)。具体的には、所定期間における位置情報の差分(比率であってもよい)が予め定めた閾値以内であるか否かを判別する。なお、変化量は、ステップS2で車両情報を取得する毎に、制御メモリ15のRAMなどに記憶した複数の車両情報(複数の位置情報)に基づいて算出される。
【0050】
車両情報(位置情報)の変化量が所定範囲内であれば、車両1は、高速道路などで略定速運行している、または、信号待ちや渋滞で略移動していないと見做せる。つまり、計器10にBT通信を介して表示されるナビゲーション画像の更新の重要度が低い状況であると見做すことができる。この場合は、下記のように低電力モードに移行して、携帯端末20のバッテリー消費を抑制する制御が実行される。
【0051】
車両情報の変化量が所定範囲内で無い場合(ステップS3;No)、制御部26は、更新周期を第1周期に設定し(ステップS4)、表示部22の通常の表示制御を行う(ステップS5)。つまり、通常モードでの制御が行われる。
具体的には、ステップS4で既に更新周期が第1周期であった場合には、更新周期は変更されずに通常モードでの制御が継続される。一方、後述のステップS6で更新周期が第2周期に変更されていた場合には、第1周期に設定を戻すことになる。
【0052】
車両情報の変化量が所定範囲内である場合(ステップS3;Yes)、制御部26は、更新周期を第1周期よりも長い第2周期に設定する(ステップS6)。つまり、低電力モードでの制御が行われる。
具体的には、ステップS6で更新周期が第1周期であった場合には、更新周期を第2周期に変更しステップS7の処理へと進む。この場合、次回のステップS1の処理においては変更後の第2周期が用いられることになる。一方、既に更新周期が第2周期であった場合には、更新周期を変更せずに、ステップS7の処理へと進む。
【0053】
なお、第2周期は、第1周期よりも大きいものであれば固定でなくともよく、ステップS3でYesと判別される毎に、徐々に周期を大きくする構成として、より携帯端末20のバッテリー消費を抑制する構成としてもよい。
【0054】
ステップS7で、制御部26は、消費電力低減制御を実行する(ステップS7)。消費電力低減制御では、携帯端末20の表示部22における表示輝度を通常状態よりも暗くする、あるいは、表示部22における表示をオフにする制御が行われる。なお、この消費電力低減制御は、次回以降の処理で、ステップS3でNoと判別された場合に、ステップS5で解除され、通常の表示制御に復帰することになる。
【0055】
低電力モードでは、第2周期への変更と併せて、消費電力低減制御が実行されるため、より良好に、携帯端末20のバッテリー消費が抑制される。
【0056】
制御部26は、例えばナビゲーションアプリがオフされるまで、以上の処理を繰り返し実行する。以上が更新周期制御処理である。
【0057】
(第1実施形態の変形例)
ここからは、変形例に係る更新周期制御処理を、
図4を参照して説明する。変形例に係る車両用通信システム100の構成は前記と同様であり、更新周期制御処理の一部のみが異なる。したがって、上記と異なる点を中心に以下では説明する。
【0058】
この変形例では、携帯端末20の制御部26は、ステップS3で車両情報の変化量が所定範囲内で無いと判別すると(ステップS3;No)、第1周期を近似式より求めて設定する(ステップS4A)。
【0059】
近似式は、過去の統計データを用いて生成される。統計データは、過去の車両情報の取得・送信間隔(周期)と、車両情報の変化量の絶対値とのデータ列からなる(
図5のプロットを参照)。制御部26は、N次多項式による近似などによって近似式を生成し、生成した近似式を参照して、最新の変化量(直近のステップS3で算出した変化量)に対応した予測値を第1周期に設定する。
【0060】
なお、前回の設定値(ステップS4Aで新たに設定される前の周期)と、今回の予測値との差異が大きくなりすぎると、急激に第1周期が変化するおそれもある。これを避けるため、前回の設定値と今回の予測値との差の絶対値を求め、その絶対値に係数α(0<α<1)を掛けた補正値を求め、この補正値を今回の予測値に加算したものを、ステップS4Aで新たに設定される第1周期としてもよい。
【0061】
ステップS5又はS7に続いて、制御部26は、統計データを更新し(ステップS8)、近似式の更新が必要であるか否かを判別する(ステップS9)。制御部26は、例えば、内蔵のタイマにより一定期間が経過した場合に近似式の更新が必要であると判別し(ステップS9;Yes)、近似式の更新を行う(ステップS10)。ステップS10の処理後、又はステップS9でNoと判別した場合、ステップS1に処理を戻す。
【0062】
(第2実施形態)
第1実施形態及びその変形例では、携帯端末20が更新周期制御処理を実行する例を説明したが、同様な処理を車両1側(計器10など)で実行する構成としてもよい。このような構成の第2実施形態を、
図6(a)(b)などを参照して説明する。なお、同様な機能を有する構成については、前述と同一の符号を付して説明する。
【0063】
第2実施形態では、計器10が
図3と同様な更新周期制御処理を実行する。計器10の制御部14は、制御メモリ15に格納されているプログラムP(更新周期制御処理の動作プログラム)を実行する。
【0064】
また、第2実施形態に係る車両1は、ユーザ操作に応じてクルーズコントロール(例えば、車速を制御するACC(Adaptive Cruise Control)など)による制御が可能となっており、クルーズコントロールがオン/オフされると、ECU30から当該オン/オフを示す信号が制御部14へと送信される。
【0065】
計器10の制御部14は、例えば、車両1のイグニッションがオンされたことに応じて更新周期制御処理を開始する。なお、処理の流れは第1実施形態とほぼ同様であるため、
図3を参照して以下に簡潔に説明する。なお、第2実施形態では、BT通信によって車両1側から送出された車両情報(車速などの計測値や、各種警告など)が、携帯端末20の表示部22に表示可能(音声出力可能であってもよい)に構成されている。
【0066】
更新周期制御処理を開始すると、まず、制御部14は、設定されている更新周期が経過したか否かを判別する(ステップS1)。更新周期が経過した場合(ステップS1;Yes)、制御部14は、車速や各種警告などの情報をECU30から取得し、取得した情報に関連したデータを、BT通信を介して携帯端末20へと送信する(ステップS2)。
【0067】
続いて、ステップS3の代わりに、第2実施形態では、制御部14は、クルーズコントロールがオン状態であるか否かを判別する。クルーズコントロールがオン状態である場合は、車両1は、高速道路などで略定速運行していると見做せ、携帯端末20にBT通信を介して車両情報を頻繁に送信する必要性が低い状況であると見做すことができる。
【0068】
したがって、クルーズコントロールがオン状態である場合は、制御部14は、車両情報の送信周期を通常モード時よりも大きい第2周期に設定する(ステップS6)、一方、クルーズコントロールがオフ状態である場合は、制御部14は、第1周期に設定する(ステップS4)。なお、計器10は車両1のバッテリーから電力が供給されるため、ステップS7のような処理を実行する必要はない。制御部14は、例えばイグニッションがオフされるまで、以上の処理を繰り返し実行する。
【0069】
以上の第2実施形態によれば、
図6(a)に示すように、クルーズコントロールがオン状態の場合には、携帯端末20への車両情報の送信周期が、クルーズコントロールがオフ状態の場合よりも長くなる。このため、結果的に、BT接続先の携帯端末20のデータ通信量を抑えることができ、携帯端末20のバッテリー消費が抑制される。なお、第1実施形態と同様に、車両情報を取得する周期も変化させてもよい。
【0070】
(第2実施形態の変形例)
図6(b)に示すように、車両1に搭載された無線通信装置40と計器10とが有線接続され、無線通信装置40が携帯端末20とBT通信を行う構成としてもよい。この場合は、BT通信部13の機能を無線通信装置40が備え、無線通信装置40の制御部が、前記の更新周期制御処理を実行する構成とすればよい。また、ECU30は、無線通信装置40と計器10との少なくともいずれかに接続されていればよい。
【0071】
なお、第1実施形態とその変形例においても、
図6(b)に示す構成としてもよい。つまり、前述したように携帯端末20と計器10とが直接BT通信可能な構成だけでなく、携帯端末20と無線通信装置40とがBT通信を行うことで、携帯端末20は、計器10と間接的に無線通信が可能な構成としてもよい。
【0072】
(第3実施形態)
ここからは、第3実施形態として、車両1側(計器10など)で、
図4に示す更新周期制御処理と同様な処理を実行する構成を説明する。なお、処理の流れは第1実施形態の変形例とほぼ同様であるため、
図4を参照して以下に簡潔に説明する。また、各装置の構成は、第2実施形態と同様であるため、異なる点を中心に説明する。
【0073】
第3実施形態では、計器10の制御部14は、
図4に示すステップS3で車両情報(例えば、ECU30から取得可能な車速パルスが示す車速)の変化量が所定範囲内で無いと判別すると(ステップS3;No)、第1周期を近似式より求めて設定する(ステップS4A)。近似式は、
図5を参照して説明したのと同様に生成される。
【0074】
制御部14は、車両情報の変化量が所定範囲内であると判別すると(ステップS3;Yes)、携帯端末20に車両情報を送信する周期を、第1周期よりも大きい第2周期に設定する(ステップS6)。なお、第3実施形態では、第2周期は、ステップS3でYesと判別される毎に、徐々に周期を大きくする。また、計器10は車両1のバッテリーから電力が供給されるため、ステップS7のような処理を実行する必要はない。ステップS8〜S10は、前記と同様である。制御部14は、例えばイグニッションがオフされるまで、以上の処理を繰り返し実行する。
【0075】
以上の第3実施形態によれば、
図7(a)に示すように、変化の少ない(変化がない場合も含む)車両情報については、送信・取得周期を大きくすることで通信頻度を低下させ、通信量を削減する。このため、結果的に、BT接続先の携帯端末20のデータ通信量を抑えることができ、携帯端末20のバッテリー消費が抑制される。また、
図7(b)に示すように、より変化が大きい車両情報についてはより短い周期で、送信・取得が可能となるため、携帯端末20側で表示される情報(音声出力されてもよい)を、精度良く更新することができる。
【0076】
(第3実施形態の変形例)
第3実施形態においても変形例として、
図6(b)に示すように、車両1に搭載された無線通信装置40と計器10とが有線接続され、無線通信装置40が携帯端末20とBT通信を行う構成としてもよい。この場合は無線通信装置40の制御部が、前記の更新周期制御処理を実行する構成とすればよい。
【0077】
なお、本発明は、以上の実施形態、変形例、及び図面によって限定されるものではない。本発明の要旨を変更しない範囲で、適宜、実施形態及び図面に変更(構成要素の削除も含む)を加えることが可能である。
【0078】
以上の説明では、携帯端末20と、計器10又は無線通信装置40とがBT仕様を満たす無線通信を行う例を示したが、UWB(Ultra Wide Band)、Z−Wave、ZigBee(登録商標)等の他の近距離無線通信規格に準拠する通信も可能である。
【0079】
また、車両用通信システム100が用いられる車両1の種別は、限定されるものではない。自動二輪車、自動四輪車等、さまざまな車両1に適用可能である。ただし、車両用通信システム100は、車載装置と携帯端末20との有線接続が一般的に想定されない自動二輪車用のシステムとして特に好適である。自動二輪車搭乗時では、携帯端末20の充電が困難であり、バッテリー消費が懸念されるためである。
【0080】
また、携帯端末20はスマートフォンに限られず、スマートウォッチ、タブレットPC、PDA(Personal Digital Assistant)などであってもよい。また、計器10は、アナログ計器である計器部11を備えず、画像表示部12の表示画像により計器として機能してもよい。
【0081】
また、車両1が移動しているか否か(略定速運行しているか否かなど)の判別は、GNSS信号や位置情報に基づくものに限られない。例えば、車両1に搭載されるヨーレートセンサや、車両1あるいは携帯端末20に搭載される加速度センサ、ジャイロセンサなどの各種センサからの検出信号に基づいて判別されてもよい。BT通信を介してこのような検出信号のやりとりを行えば、携帯端末20と計器10と無線通信装置40とのいずれが更新周期制御処理を実行する際であっても、適切に車両1の状態を判別できる。
【0082】
また、プログラムPは、着脱自在の記録媒体により配布・提供されてもよい。また、プログラムPは、各種装置(携帯端末20、計器10、無線通信装置40)と接続された他の機器からダウンロードされるものであってもよい。また、各種装置は、他の機器と電気通信ネットワークなどを介して各種データの交換を行うことによりプログラムPに従う各処理を実行してもよい。
【0083】
以上の説明では、本発明の理解を容易にするために、重要でない公知の技術的事項の説明を適宜省略した。