【解決手段】インナーキャップ2の注出部10の内部には、ブリッジ部13を介して注出部10の内周面に接続される分離部12が設けられる。分離部12は、注出部10の開放端側に開口を有する嵌合孔14を有し、当該開口と反対側が底部15で閉鎖された筒形状を有する。軸体18の先端部が分離部12の嵌合孔14に嵌合して嵌合構造を構成しており、軸AXに平行な方向における軸体18及び分離部12の相対的な移動と、軸AX周りの軸体18及び分離部12の相対回転とが規制されている。オーバーキャップ3を開方向に回転させると、軸体18及び分離部12を介してブリッジ部13に伝達された回転力によってブリッジ部13の全周が破断し、分離部12が注出部10から分離される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のキャップのように、中栓から離脱した離脱部の上部を、蓋に設けた保持部内に入れ込んで保持する構成では、保持部による離脱部の保持力を高めるために、離脱部の上部の剛性を高くする必要がある。したがって、特許文献1に記載のように、保持される離脱部の上部は閉鎖された形状とし、離脱部の下部(すなわち、容器への取り付け時に容器内側を向く部分)に肉盗み部を設けることが一般的である。
【0005】
しかしながら、容器への取り付け時に容器内側を向く部分に肉盗み部等の凹部を設けると、容器内に充填された内容物が凹部に入り込むため、凹部に入り込んだ内容物が蓋を開けた際に垂れる場合があり、使い勝手を損なってしまう。
【0006】
それ故に、本発明は、オーバーキャップを開方向に回転させるだけで中栓の開封が可能であり、蓋を開けた際の液垂れを抑制できるキャップ構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、開口部を有する容器を封止するキャップ構造体に関するものであり、開口部に取り付けられるインナーキャップと、所定の回転軸を中心として回転させることによりインナーキャップの外周面に螺合するオーバーキャップとを備える。インナーキャップは、容器に取り付けられる取付部と、オーバーキャップが螺合するネジ部とを有するベース部と、回転軸を中心軸とする筒形状を有し、一方端がベース部に接続されると共に、他方端が開放された注出部と、破断可能な薄肉のブリッジ部を介して注出部に接続され、ブリッジ部と共に注出部を閉鎖する分離部とを有する。オーバーキャップは、ベース部に螺合するネジ部と、オーバーキャップの頂部の内側部分から回転軸に沿って突出する軸体とを有する。分離部は、注出部の他方端側に開口を有する嵌合孔を有し、当該開口と反対側が底部で閉鎖された筒形状を有する。軸体の先端部が分離部の嵌合孔に嵌合して嵌合構造を構成しており、軸体と分離部との嵌合構造は、回転軸に平行な方向における軸体及び分離部の相対的な移動を規制すると共に、回転軸周りの軸体及び分離部の相対的な回転とを規制する。
【0008】
また、本発明に係る包装容器は、開口部を有する容器と、上記のキャップ構造体とを備え、インナーキャップのベース部に設けられた取付部が容器の開口部に取り付けられるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、オーバーキャップを開方向に回転させるだけで中栓の開封が可能であり、蓋を開けた際の液垂れを抑制できるキャップ構造体を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、実施の形態に係るキャップ構造体を用いた包装容器の正面図である。
【0012】
包装容器5は、開口部(図示せず)を有するボトル状の容器4と、容器4の開口部を封止するキャップ構造体1とを備える。キャップ構造体1は、容器4の開口部に取り付けられるインナーキャップ2と、インナーキャップ2に螺合するオーバーキャップ3とから構成されている。
【0013】
図2は、
図1に示したII−IIラインに沿う断面図であり、
図3は、
図2に示したX部分の拡大図であり、
図4は、
図2に示したIV−IVラインに沿う断面図である。尚、図面に示す軸AXは、オーバーキャップ3をインナーキャップ2に螺合させる際の回転軸である。本実施形態では、軸AXと、インナーキャップ2の中心軸と、オーバーキャップ3の中心軸と、容器4の中心軸とが一致している。
【0014】
<インナーキャップの構成>
インナーキャップ2は、樹脂の一体成形品であり、ベース部9と、注出部10と、ブリッジ部13を介して注出部10に接続された分離部12とを備える。インナーキャップ2を構成する樹脂としては、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)またはこれらの混合物を用いることが好ましい。
【0015】
ベース部9は、容器4の開口部6に取り付けられる取付部7と、ネジ部8とから構成される。
【0016】
取付部7は、ほぼ円筒形状を有し、容器4の開口部6を挟み込んだ状態で開口部6に嵌合することにより、容器4に固定されている。取付部7のうち、容器4の開口部6の上端面に対向する部分には、周方向の全周に亘ってコンタクトリング(図示せず)が設けられており、このコンタクトリングの全周が容器4の開口部6の上端面に密着することにより、容器4とインナーキャップ2との間が封止されている。尚、本実施形態では、取付部7は嵌合により容器4の開口部6に取り付けられているが、取付部7及び容器4の開口部6に螺合可能なネジ山を設け、取付部7を開口部6に螺合させても良い。
【0017】
ネジ部8は、ほぼ円筒形状を有し、取付部7に接続されている。ネジ部8の外周面には、オーバーキャップ3に螺合可能な雄ネジが設けられている。
【0018】
注出部10は、軸AXを中心軸とする筒形状(管形状)を有する。注出部10の一方の端部11aは、ベース部9のネジ部8に接続されている。注出部10の他方の端部11bは、開放端となっている。尚、本実施形態において、注出部10は、内径が略一定の部分を指す。
【0019】
分離部12は、軸AXを中心軸とする有底円筒状の部材であり、注出部10の端部11b側に向いた開口を有する嵌合孔14と、嵌合孔14の開口とは反対側に底部15を有する。分離部12の外径の最大値は、注出部10の内径の最小値以下に設定されている。分離部12は、
図3に示すように、ブリッジ部13を介して注出部10の端部11aに接続されている。ブリッジ部13は、包装容器5の開封時にオーバーキャップ3を開栓するのに伴って破断される破断予定箇所であり、オーバーキャップ3に加えられる力で破断可能な薄肉に形成されており、分離部12の外周面と注出部10の内周面とを全周に亘って接続する。分離部12の底部15は、先細りの錐体状(本実施形態では、円錐状)に形成されている。
【0020】
<オーバーキャップの構成>
オーバーキャップ3は、樹脂の一体成形品であり、ベース部9のネジ部8に螺合するネジ部16と、頂部17の内側から軸AXに沿って突出する棒状の軸体18とを備える。開封時におけるオーバーキャップ3の伸びや変形を抑制するために、オーバーキャップ3を構成する樹脂としては、ポリプロピレン(PP)や高密度ポリエチレン(HDPE)等の樹脂を用いる。剛性を持たせるために、曲げ弾性率が高めの材料を用いて厚肉に形成することが好ましく、トルク(荷重)の掛かるネジ部を他の部分より厚肉にすることが特に好ましい。
【0021】
軸体18は、先端から頂部17側へと順に、横断面がほぼ円形である第1軸部20aと、第1軸部20aに接続され、横断面が歯車形状のスプライン軸である第2軸部20bと、第2軸部20b及び頂部17に接続される第3軸部20cとから構成される。
図2及び4に示すように、分離部12の嵌合孔14は、軸体18の第1軸部20a及び第2軸部20bに対応した形状を有しており、軸体18の第1軸部20a及び第2軸部20bは、分離部12の嵌合孔14に嵌合している。嵌合孔14の開口から所定範囲の横断面形状は、第2軸部20bのスプライン軸の横断面形状とほぼ同じ歯車形状であり、第2軸部20b及び嵌合孔14の一部の歯車形状が噛み合った状態となっている。また、横断面がほぼ円形の第1軸部20aによって軸体18が嵌合孔14から抜け止めされた状態となっている。尚、第2軸部20b及びこれに嵌合する嵌合孔14の一部は、必ずしも
図4に示すような歯車形状の横断面である必要はなく、軸AXと平行な方向及び軸AXを中心とする回転方向における軸体18及び分離部12の相対移動を阻止できる形状であれば良い。ただし、
図6で説明するキャップ構造体1の組み立て時の位置合わせが容易となるように、第2軸部20b及びこれに嵌合する嵌合孔14の一部の横断面形状は、回転対称とすることが好ましい。
【0022】
更に、オーバーキャップ3の頂部17の内側には、軸体18を取り囲む円筒形状のインナーリング19が設けられている。インナーリング19の外径は、インナーキャップ2の注出部10の端部11b近傍の内径と同じか僅かに大きい寸法に設定されており、包装容器5の開封後にオーバーキャップ3で再封した際に、インナーリング19が注出部10に嵌合して注出部10を密閉する。
【0023】
<包装容器の開封過程>
図5は、実施形態に係るキャップ構造体の開封過程を説明する図である。
【0024】
まず、
図5(a)は、包装容器5の未開封状態を示す。
【0025】
未開封状態では、上述したように、インナーキャップ2と容器4との間は、インナーキャップ2に設けられたコンタクトリング(図示せず)が容器4の開口部6の上端面に接触することにより封止されている。また、未開封状態では、インナーキャップ2の注出部10は、分離部12とブリッジ部13とによって密閉されている。
【0026】
次に、
図5(b)は、オーバーキャップ3を軸AXを中心に開方向(オーバーキャップ3の上方から見て反時計回り方向)に所定量回転させた状態であって、オーバーキャップ3のネジ部16とインナーキャップ2のネジ部8との螺合が解除される前の状態を示す。
【0027】
上述したように、オーバーキャップ3の軸体18とインナーキャップ2の分離部12との嵌合構造は、軸AXと平行な方向における軸体18及び分離部12の相対移動を規制すると共に、軸AX周りの軸体18及び分離部12の相対回転を規制している。したがって、オーバーキャップ3をインナーキャップ2に螺合させて完全に締め込んだ
図45(a)の状態からオーバーキャップ3を開方向に回転させると、分離部12は、オーバーキャップ3の軸体18と共にオーバーキャップ3の開方向に回転する。オーバーキャップ3に加えられた回転力は、軸体18及び分離部12を介してブリッジ部13に伝達され、オーバーキャップ3の回転量が一定以上となると、ブリッジ部13の全周が破断する。これにより、
図5(b)に示すように、分離部12が注出部10から分離されて、包装容器5が開封される。上述したように、分離部12は、軸体18との嵌合によって軸体18にロックされているため、開封後に分離部12が脱離することが防止されている。
【0028】
図5(c)は、オーバーキャップ3のネジ部16とインナーキャップ2のネジ部8との螺合が解除された状態を示す。
【0029】
図5(c)に示すように、オーバーキャップ3を取り外して、軸体18にロックされた分離部12を注出部10から引き出すことによって、容器4の内容物を注出部10から注ぎ出すことができる。また、軸体18にロックされた分離部12を注出部10内に挿入し、オーバーキャップ3を軸AXを中心に閉方向(オーバーキャップ3の上方から見て時計回り方向)に回転させることによって、容器4を再封することができる。
【0030】
尚、分離部12の外径と注出部10との内径との差は、なるべく小さくすることが好ましい。分離部12の外径と注出部10との内径とを略一致させることによって、注出部10から内容物を注出した後に、注出部10の内周面に付着した液体や固形物等を分離部12によって容器4の内部へと掻き戻すことができる。このような構成は、みじん切りの野菜やハーブ類、スパイス等の固形物を含んだ内容物、あるいは、ゲル状の内容物を包装する包装容器に好適である。
【0031】
<キャップ構造体の製造工程>
図6は、実施形態に係るキャップ構造体の製造工程の一部を説明する図である。
【0032】
キャップ構造体1は、インナーキャップ2及びオーバーキャップ3をそれぞれ別工程において樹脂で一体成形した後、インナーキャップ2にオーバーキャップ3を打栓により嵌合させることによって製造される。インナーキャップ2にオーバーキャップ3を嵌合させる際には、ブリッジ部13の破断を防止するために、インナーキャップ2の内部形状とほぼ同じ外形を有する受け治具23をインナーキャップ2の内部に挿入してインナーキャップ2を支持する。また、オーバーキャップ3の外面の損傷を防止するために、オーバーキャップ3の外径とほぼ同じ内部形状を有する抑え治具24にオーバーキャップ3を収納する。次に、
図6(a)に示すように、受け治具23で支持したインナーキャップ2の中心軸と、抑え治具24で保持したオーバーキャップ3の中心軸とを一致させ、オーバーキャップ3及びインナーキャップ2を互いに近づく方向に押圧する。押圧力によって雌ネジが雄ネジを乗り越え、
図6(b)に示すように、オーバーキャップ3のネジ部16がインナーキャップ2のネジ部8に嵌合し、軸体18が分離部12の嵌合孔14に嵌合する。その後、受け治具23及び抑え治具24を取り外すことによって、キャップ構造体1が完成する。完成したキャップ構造体1は、内容物を充填した容器の開口部に嵌合または螺合によって取り付けられ、
図1に示した包装容器5が完成する。
【0033】
そして、インナーキャップ2とオーバーキャップ3との打栓による嵌合を容易に行えるようにするため、インナーキャップ2のネジ部8及びオーバーキャップ3のネジ部
16の条数は、3〜4条とすることが好ましい。尚、インナーキャップ2のネジ部8及びオーバーキャップ3のネジ部16の条数は、容器の口径に応じて適宜設定することが
できる。
【0034】
以上説明したように、本実施形態に係るキャップ構造体1によれば、オーバーキャップ3を完全に締め込んだ状態から所定量開方向に回転させるだけで、インナーキャップ2の分離部12を注出部10から分離させて開封することができると共に、分離させた分離部12をオーバーキャップ3の軸体18にしっかりとロック(嵌合)することができる。したがって、本実施形態によれば、開封を容易に行うことができ、オーバーキャップ3の開閉を繰り返しても分離部12の脱落を防止できるキャップ構造体1を実現することができる。そして、使用後、注出部10内に内容物が付着したとしても、再封する際、軸体18に嵌合された分離部12により容器4内に押し戻されることで、密封性や液切れ性を確保することができる。
【0035】
また、本実施形態に係るキャップ構造体1を構成するインナーキャップ2の分離部12は、容器4に取り付けた際に容器4側となる部分が底部15で閉鎖されているため、オーバーキャップ3が未開封の状態において分離部12の内部に内容物が入り込むことがなく、開封時及び再開封時に内容物が液垂れすることがない。また、本実施形態に係るキャップ構造体1では、分離部12の下面に固形物の入り込む空間(肉盗み部等の凹部)がないため、見た目にも衛生的にも優れた包装容器5を構成できる。
【0036】
また、本実施形態では、分離部12の底部15が先細りの錐体状に形成されているため、容器4の内容物が分離部12に付着しても液切れが良い。
【0037】
尚、上記の実施形態において、注出部10と分離部12とをブリッジ部13で接続する箇所(
図2における上下方向の位置)は、特に限定されず、注出部10の内径が略一定な部分であればどの箇所であっても良い。注出部10と分離部12とを接続するブリッジ部13を注出部10の開放端(端部11b)側に近づけるほど、分離した分離部12の挿入量が少なくなるため、オーバーキャップ3の開閉がし易くなる。逆に、注出部10と分離部12とを接続するブリッジ部13を注出部10の端部11a側に近づけるほど、インナーキャップ2の成型時に金型内で樹脂を流れやすくすることができる。