特開2017-226609(P2017-226609A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-226609(P2017-226609A)
(43)【公開日】2017年12月28日
(54)【発明の名称】含水ゲル組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/02 20060101AFI20171201BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20171201BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20171201BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20171201BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20171201BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20171201BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20171201BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20171201BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20171201BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20171201BHJP
   A61K 8/365 20060101ALI20171201BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20171201BHJP
   A61K 8/26 20060101ALI20171201BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20171201BHJP
   A61P 17/00 20060101ALN20171201BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALN20171201BHJP
【FI】
   A61K8/02
   A61K9/06
   A61K47/38
   A61K47/18
   A61K47/12
   A61K47/22
   A61K47/02
   A61K8/73
   A61K8/44
   A61K8/36
   A61K8/365
   A61K8/49
   A61K8/26
   A61K9/70 405
   A61K9/70
   A61P17/00
   A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-123122(P2016-123122)
(22)【出願日】2016年6月22日
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】森 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】垣貫 健一
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 菜月
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA71
4C076AA72
4C076BB31
4C076DD21
4C076DD30
4C076DD38
4C076DD41Z
4C076DD42
4C076DD43Z
4C076DD45
4C076DD51
4C076DD51Z
4C076DD60Z
4C076EE32
4C076FF35
4C076FF36
4C083AB051
4C083AB052
4C083AB221
4C083AB222
4C083AB382
4C083AC122
4C083AC271
4C083AC272
4C083AC291
4C083AC292
4C083AC301
4C083AC302
4C083AC311
4C083AC312
4C083AC482
4C083AC581
4C083AC582
4C083AC851
4C083AC852
4C083AD042
4C083AD112
4C083AD271
4C083AD272
4C083AD282
4C083AD332
4C083AD532
4C083CC02
4C083DD12
4C083DD41
4C083EE01
(57)【要約】
【課題】高い含水率を保持しつつも、長時間にわたって高いゲル安定性を有し、ゲル強度の低下やゲルからの液の分離を充分に抑制することのできる含水ゲル組成物に関する。
【解決手段】次の成分(A)、(B)、(C)、及び(D):
(A)カルボキシメチルセルロース又はその塩を75質量%以上含むアニオン性水溶性高分子化合物、
(B)L−グルタミン酸、酢酸、ジメチルヒドロキシプロピオン酸、及びニコチン酸から選ばれる1種又は2種以上のカルボキシル基含有化合物(b1)を含む中和酸、
(C)多価金属化合物、及び
(D)水 60質量%以上95質量%以下
を含有する含水ゲル組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)、(C)、及び(D):
(A)カルボキシメチルセルロース又はその塩を75質量%以上含むアニオン性水溶性高分子化合物、
(B)L−グルタミン酸、酢酸、ジメチルヒドロキシプロピオン酸、及びニコチン酸から選ばれる1種又は2種以上のカルボキシル基含有化合物(b1)を含む中和酸、
(C)多価金属化合物、及び
(D)水 60質量%以上95質量%以下
を含有する含水ゲル組成物。
【請求項2】
成分(B)が、L−グルタミン酸を20質量%以上100質量%以下含む請求項1に記載の含水ゲル組成物
【請求項3】
成分(B)が、さらにマレイン酸、フマル酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フタル酸、及びL−アスパラギン酸から選ばれる1種又は2種以上のカルボキシル基含有化合物(b2)を含む請求項1又は2に記載の含水ゲル組成物。
【請求項4】
成分(C)が、アルミニウムを含む化合物又はその塩である請求項1〜3のいずれか1項に記載の含水ゲル組成物。
【請求項5】
成分(A)の含有量と成分(B)の含有量との質量比((A)/(B))が、2以上30以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の含水ゲル組成物。
【請求項6】
成分(B)の含有量が、0.1質量%以上1.2質量%以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載の含水ゲル組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の含水ゲル組成物と、不織布、織布、編布、及び紙から選ばれる基材層とが積層された貼付剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含水ゲル組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、種々の高分子化合物をゲル基剤として用いたゲルにより、所望の効果を付与した貼付剤やパップ剤が作製されている。かかる高分子化合物のなかでも、カルボキシメチルセルロース又はその塩は、高い含水率を実現し得ることから、こうした種々の剤に多く用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ポリアクリル酸及び/又はその塩、カルボキシメチルセルロース又はその塩等の水溶性高分子物質を含有する水性粘着基剤に、アルミニウム化合物等の金属架橋剤と、グリシン等のアミノ酸等を含有する粘着剤組成物が開示されており、かかる粘着剤組成物を支持体に塗布した後に適度な粘着性や密着性を発現させている。また、特許文献2には、カルボキシメチルセルロース又はその塩等のアニオン性水溶性高分子と、水に可溶なアルミニウム塩等の無機塩と、有機酸又は無機酸を混合して得られるパップ剤が開示されており、保形性や保水性を高めている。
【0004】
さらに、特許文献3には、カルボキシメチルセルロース又はその塩等のアニオン性水溶性高分子の水溶液と、アルミニウム化合物等の架橋剤と、微小繊維状セルロースとよりなる水性ゲルが開示されており、静電気的な相互作用により架橋を生じさせてゲル化を進行させるために、さらに無水コハク酸や乳酸等の酸性化合物も用いている。かかる水性ゲルは、上記特定のセルロースによって、ゲル強度の向上とゲルの均一化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−265373号公報
【特許文献2】特開平11−116468号公報
【特許文献3】特開2003−277637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
こうしたゲルにおいて、その含水率を高めれば、使用場面においてみずみずしい肌触りをもたらし、皮膚への追随性にも優れ、快適な使用感を得ることができるため、ゲル基剤としてカルボキシメチルセルロース又はその塩をより多くの量で用いるのが有効ではあるものの、含水率が高まるにつれ、長時間にわたってゲルの安定性を確保するのが困難となってしまうため、さらなる改善が望まれる。
【0007】
しかしながら、上記特許文献1では、もっぱら粘着性や密着性の発現に着目するに留まり、カルボキシメチルセルロース又はその塩の量を増大させながらゲルの安定性を高めるようとするには、依然として詳細な検討を要する状況にある。また、上記特許文献2〜3に記載の技術において採用されるコハク酸や乳酸、或いはフマル酸等によってゲル化を開始又は進行させたとしも、経時的に高いゲル安定性を確保するのは困難であり、特にカルボキシメチルセルロース又はその塩を用いる際の中和剤として、従来より多用されているコハク酸を添加すると、高温での保存環境では、時間が経過するにつれてゲルが不安定化してしまうことも判明した。そのため、長時間にわたる過酷な保存環境に晒されると、ゲル強度の低下やゲルからの液の分離が引き起こされてしまうおそれがある。
【0008】
したがって、本発明は、高い含水率を保持しつつも、長時間にわたって高いゲル安定性を有し、ゲル強度の低下やゲルからの液の分離を充分に抑制することのできる含水ゲル組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで本発明者は、種々検討したところ、多量のカルボキシメチルセルロース又はその塩を含むアニオン性水溶性高分子化合物を用いて、水の含有量を高めながら、特定のカルボキシル基含有化合物を含む中和酸と多価金属化合物を含有することにより、経時的にも高いゲル安定性を確保することのできる含水ゲル組成物が得られることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、次の成分(A)、(B)、(C)、及び(D):
(A)カルボキシメチルセルロース又はその塩を75質量%以上含むアニオン性水溶性高分子化合物、
(B)L−グルタミン酸、酢酸、ジメチルヒドロキシプロピオン酸、及びニコチン酸から選ばれる1種又は2種以上のカルボキシル基含有化合物(b1)を含む中和酸、
(C)多価金属化合物、及び
(D)水 60質量%以上95質量%以下
を含有する含水ゲル組成物に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の含水ゲル組成物によれば、高い含水率を保持しながら、経時的なゲル安定性を充分に確保することが可能となるため、長時間にわたる過酷な保存環境下においても、ゲル強度の低下やゲルからの液の分離を効果的に抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の含水ゲル組成物は、成分(A)として、カルボキシメチルセルロース又はその塩を75質量%以上含むアニオン性水溶性高分子化合物を含有する。かかるアニオン性水溶性高分子化合物を用いることにより、カルボキシメチルセルロース又はその塩が有するカルボキシル基と、架橋剤として作用する後述の成分(C)の多価金属化合物とがイオン架橋を形成して、高い保水性と良好なゲル強度を備えるゲルを構築することができる。本発明において「水溶性高分子化合物」とは、水へ分散した場合に均一に溶解し粘度を付与するものをいう。
【0013】
カルボキシメチルセルロースの塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、アンモニウム塩から選ばれる1種又は2種以上が挙げられ、イオン架橋を良好に形成させる観点、及びコスト面や入手容易性等の観点から、カルボキシメチルセルロースナトリウムが好ましい。また、カルボキシメチルセルロース又はその塩のエーテル化度は、適度なゲル強度を保持して皮膚への追随性を高める観点、及びゲルの安定性を確保する観点から、好ましくは0.6〜1.1であり、より好ましくは0.65〜0.9である。
【0014】
なお、エーテル化度とは、グルコース単位あたりのカルボキシメチル基の置換度をいう。エーテル化度は、例えばCMC工業会分析法(灰化法)に従い得ることができる。カルボキシメチルセルロースナトリウム1gを精秤し、磁性ルツボに入れて600℃で灰化し、灰化によって生成した酸化ナトリウムをN/10硫酸でフェノールフタレインを指示薬として滴定し、カルボキシメチルセルロースナトリウム1gあたりの滴定量YmLを次式に入れて計算し、求めたエーテル化度を示すことができる。
エーテル化度=(162×Y)/(10,000−80×Y)
【0015】
カルボキシメチルセルロース又はその塩は、皮膚への追随性を確保しつつ適度なゲル強度を保持する観点、及び経時的なゲル安定性を確保する観点から、1質量%水溶液としたときの25℃における粘度が、B型粘度計による測定において、好ましくは1,500〜10,000mPa・sであり、より好ましくは2,500〜8,000mPa・sである。
【0016】
カルボキシメチルセルロース又はその塩の含有量は、良好な使用感とゲルの高い安定性とを兼ね備える観点から、成分(A)のアニオン性水溶性高分子化合物中に、75質量%以上であって、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上であり、さらに好ましくは95質量%以上であり、好ましくは100質量%以下である。
【0017】
成分(A)のアニオン性水溶性高分子化合物に含まれ得る、上記カルボキシメチルセルロース又はその塩以外のアニオン性水溶性高分子化合物とは、分子内に存在する極性基がアニオン性官能基のみ存在する化合物であり、かかる化合物としては、具体的には、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸又はその塩、ポリスチレンスルホン酸又はその塩、ポリイソプレンスルホン酸又はその塩、ポリビニルナフタレンスルホン酸又はその塩、ポリビニルスルホン酸又はその塩、ポリ(メタ)アクリルアミドジメチルプロパンスルホン酸又はその塩、ポリ(メタ)アクリロイロキシエチルスルホン酸又はその塩、アルギン酸又はその塩、アニオン性のデンプン誘導体等が挙げられる。
【0018】
成分(A)の含有量は、カルボキシメチルセルロース又はその塩が有するカルボキシル基と後述する成分(C)の多価金属化合物とが、良好にイオン架橋を形成してゲルを構築する観点から、本発明の含水ゲル組成物中に、好ましくは2.2質量%以上であり、より好ましくは2.7質量%以上であり、さらに好ましくは3質量%以上である。また、成分(A)の含有量は、ゲルに適度な柔軟性及び皮膚への追随性を付与する観点から、本発明の含水ゲル組成物中に、好ましくは6質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下であり、さらに好ましくは4質量%以下である。そして、成分(A)の含有量は、本発明の含水ゲル組成物中に、好ましくは2.2〜6質量%であり、より好ましくは2.7〜5質量%であり、さらに好ましくは3〜4質量%である。
【0019】
本発明の含水ゲル組成物は、成分(B)として、L−グルタミン酸、酢酸、ジメチルヒドロキシプロピオン酸、及びニコチン酸から選ばれる1種又は2種以上のカルボキシル基含有化合物(b1)を含む中和酸を含有する。中和酸とは、本発明の含水ゲル組成物のように高含水量を実現するために、上記成分(A)においてカルボキシメチルセルロース又はその塩を高い含有量とするにあたり、いわゆる架橋剤として作用する後述の成分(C)から多価金属イオンを遊離させるために併用する酸化合物である。かかる中和酸として、従来多用されていたコハク酸や乳酸、或いはフマル酸等を用いると、遊離した多価金属イオンを不安定化させ得ることが本発明者により判明した。そして、本発明者は、かかるカルボキシル基含有化合物(b1)を含む成分(B)の中和酸を用いることにより、予想外にも、高温での保存において経時的なゲル安定性の向上に大きく寄与できることを見出したのである。
【0020】
上記成分(b1)のなかでも、経時的なゲル安定性を効果的に高める観点から、L−グルタミン酸が好ましい。かかるL−グルタミン酸の含有量は、長時間にわたり、ゲル強度の低下やゲルからの液の分離を有効に抑制する観点から、成分(B)中に、好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上であり、好ましくは100質量%以下である。
【0021】
成分(B)は、さらに成分(b1)以外の、その他のカルボキシル基含有化合物(b2)を中和酸として含むことができる。すなわち、本発明の含水ゲル組成物において、成分(B)の中和酸として、上記成分(b1)を単独で用いてもよいが、成分(b1)とともに成分(b2)を併用してもよい。
かかる成分(b2)としては、分子内にカルボキシル基を1〜3個有する有機酸、又はアミノ酸が挙げられ、具体的には、例えば、グリコール酸、乳酸等の分子内にカルボキシル基を1個有する有機酸;シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、メチルマロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、フタル酸、酒石酸、リンゴ酸等の分子内にカルボキシル基を2個有する有機酸;クエン酸、プロパントリカルボン酸等の分子内にカルボキシル基を3個有する有機酸;グリシン、L−アスパラギン酸、トラネキサム酸等のアミノ酸が挙げられる。上記成分(b2)のなかでも、上記成分(b1)と相まって、より効果的にゲル強度の低下やゲルからの液の分離を抑制する観点から、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フタル酸、及びL−アスパラギン酸から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、フマル酸、コハク酸、グルタル酸、及びアジピン酸から選ばれる1種又は2種以上がより好ましい。
【0022】
成分(B)の含有量は、より効果的にゲル強度の低下やゲルからの液の分離を抑制する観点から、本発明の含水ゲル組成物中に、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.2質量%以上であり、さらに好ましくは0.3質量%以上である。また、成分(B)の含有量は、成分(A)と後述する成分(C)によるゲルの構築を阻害しない観点から、本発明の含水ゲル組成物中に、好ましくは1.2質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下であり、さらに好ましくは0.9質量%以下である。そして、成分(B)の含有量は、本発明の含水ゲル組成物中に、好ましくは0.1〜1.2質量%であり、より好ましくは0.2〜1質量%であり、さらに好ましくは0.3〜0.9質量%である。
【0023】
成分(A)の含有量と成分(B)の含有量との質量比((A)/(B))は、pHが低くなり過ぎず、かつゲルの構築を良好に進行させる観点から、好ましくは2以上であり、より好ましくは2.5以上であり、さらに好ましくは3以上であり、よりさらに好ましくは4以上である。また、成分(A)の含有量と成分(B)の含有量との質量比((A)/(B))は、ゲルの構築を良好に進行させる観点から、好ましくは30以下であり、より好ましくは18以下であり、さらに好ましくは12以下であり、よりさらに好ましくは10以下である。そして、成分(A)の含有量と成分(B)の含有量との質量比((A)/(B))は、好ましくは2〜30であり、より好ましくは2.5〜18であり、さらに好ましくは3〜12であり、よりさらに好ましくは4〜10である。
さらに、成分(A)に含まれるカルボキシメチルセルロース又はその塩のカルボキシメチル基1モルに対し、成分(B)のカルボキシル基(成分(b1)及び成分(b2)の総カルボキシル基)のモル数は、好ましくは0.1〜0.8モルであり、より好ましくは0.2〜0.5モルである。
【0024】
本発明の含水ゲル組成物は、成分(C)として、多価金属化合物を含有する。かかる成分(C)は、上記成分(A)に含まれるカルボキシメチルセルロース又はその塩が有するカルボキシル基とイオン架橋を形成して、高い保水性と良好なゲル強度を備えるゲルを構築することができる。
【0025】
かかる成分(C)としては、アルミニウム、マグネシウム、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、カドミウム、鉛、カルシウム等の多価金属を含む化合物又はこれらの塩が挙げられる。具体的には、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、水酸化アルミニウムマグネシウム等の多価金属水酸化物;酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、アルミン酸ナトリウム等の多価金属酸化物;硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、硫酸アルミニウムアンモニウム、炭酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸亜鉛、炭酸亜鉛、塩化亜鉛、(メタ)ケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト等の多価金属無機塩;酢酸アルミニウム、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸亜鉛、乳酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、ミリスチン酸アルミニウム、アルミニウムグリシネート、安息香酸アルミニウム、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、チオグリコール酸のカルシウムやマグネシウム等のアルカリ土類金属塩等の多価金属有機塩等が挙げられる。なかでも、架橋時の反応速度を制御し易いという観点から、アルミニウムを含む化合物又はその塩が好ましく、水酸化アルミニウム又は(メタ)ケイ酸アルミン酸マグネシウムがより好ましい。
【0026】
成分(C)の含有量は、成分(A)とともに良好にイオン架橋を形成する観点から、本発明の含水ゲル組成物中に、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上であり、さらに好ましくは0.1質量%以上である。また、成分(C)の含有量は、ゲルに適度な柔軟性及び皮膚への追随性を付与する観点から、本発明の含水ゲル組成物中に、好ましくは2質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下であり、さらに好ましくは0.4質量%以下であり、よりさらに好ましくは0.25質量%以下である。そして、成分(C)の含有量は、本発明の含水ゲル組成物中に、好ましくは0.01〜2質量%であり、より好ましくは0.05〜1質量%であり、さらに好ましくは0.1〜0.4質量%であり、よりさらに好ましくは0.1〜0.25質量%である。
【0027】
成分(A)と成分(C)の質量比((A)/(C))は、効率的にイオン架橋を形成し、成分(B)とも相まってゲル強度の低下を有効に確保する観点から、好ましくは3以上であり、より好ましくは10以上であり、さらに好ましくは15以上である。また、成分(A)と成分(C)の質量比((A)/(C))は、ゲルの柔軟性を保持して皮膚への良好な追随性を保持する観点から、好ましくは100以下であり、より好ましくは50以下であり、さらに好ましくは30以下である。そして、成分(A)と成分(C)の質量比((A)/(C))は、好ましくは3〜100であり、より好ましくは10〜50であり、さらに好ましくは15〜30である。
【0028】
本発明の含水ゲル組成物は、成分(D)として、水を60質量%以上90質量%以下含有する。上記のとおり、本発明の含水ゲル組成物では、成分(A)においてカルボキシメチルセルロース又はその塩が高い含有量であることにより高含水量としつつも、経時的なゲル安定性にも優れるため、使用場面においてみずみずしい肌触りや適度な柔軟性を確保しながら、長時間にわたる過酷な保存環境下においても、ゲル強度の低下やゲルからの液の分離を効果的に抑制することが可能となり、優れた使用感をもたらすことができる。
【0029】
成分(D)の含有量は、優れた使用感を付与する観点から、本発明の含水ゲル組成物中に、60質量%以上であって、好ましくは65質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは75質量%以上である。また、成分(A)の含有量は、ゲルの安定性を確保する観点から、本発明の含水ゲル組成物中に、95質量%以下であって、好ましくは92質量%以下であり、より好ましくは90質量%以下であり、さらに好ましくは85質量%以下である。そして、成分(D)の含有量は、本発明の含水ゲル組成物中に、60質量%以上95質量%以下であって、好ましくは65〜92質量%であり、より好ましくは70〜90質量%であり、さらに好ましくは75〜85質量%である。
【0030】
本発明の含水ゲル組成物は、上記成分のほか、通常、化粧品や医薬品等で用いられる他の成分、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース等のノニオン性水溶性高分子化合物;グリセリン等の保湿剤のほか、油剤、界面活性剤、薬効成分、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、溶解剤、着色料、冷感剤、温感剤、香料等を適宜含有させてもよい。
【0031】
本発明の含水ゲル組成物を製造するには、例えば、まず上記成分(B)及び成分(D)を混合して成分(B)を均一に溶解させた後、別途その他の上記成分及び必要に応じて他の成分を混合して、溶解又は分散させ、成分(B)及び成分(D)の混合液に添加する。次いで、これを撹拌して未架橋ゲル原液を調製した後、剥離可能なフィルムにかかる未架橋ゲル原液を挟み込み、ベーカー式アプリケーター等を用いて展延する。そして、常温下又は加温下で数日間熟成させることにより、本発明の含水ゲル組成物を得る。
【0032】
さらに、本発明の含水ゲル組成物を層状に形成してゲル層として用い、不織布等の基材層やフィルム等の剥離層を積層して貼付剤を作製することができる。かかる積層方法としては、上述のゲル原液を挟み込む一方又は双方の面を基材層又は剥離層とする方法や、一旦含水ゲル組成物からなるゲル層を作製した後、基材層や剥離層をかかる層に押し付けて積層させる方法等が挙げられる。
【0033】
本発明の含水ゲル組成物は、取り扱い性の観点から、不織布、織布、編布、又は紙等の基材層に積層して使用することが好ましく、不織布に積層して使用することがより好ましい。従来の含水ゲル組成物では、基材層に積層する場合には、ゲルから分離した液の染み出し抑制の点から、基材層を構成する素材として疎水性のものを用いることが通常であるが、本発明の含水ゲル組成物は、基材層として親水性の素材のものを用いても、長時間にわたりゲルからの液の分離を有効に抑制し、基材層への液の染み出しを防止することができる。よって、目的に応じて基材層としてあらゆる素材のものを選択することが可能である。例えば、本発明の含水ゲル組成物を冷却用貼付シートとして用いる場合、冷却効果の向上の点から、積層する基材層として親水性繊維を含有した不織布を用いることが好ましい。
【0034】
なお、親水性繊維の素材としては、レーヨン、コットン、キュプラ、麻、ウール、シルク、アセテート、セルロース、木材パルプ、非木材パルプ等の繊維;水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、アミド基、アミノ酸基等の親水性基を有するポリマー、例えばポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、酢酸セルロース、ポリアクリルアミド、メラミン樹脂、ナイロン、親水性ポリウレタン等の親水性ポリマーからなる繊維;親水化処理したポリエステル等、親水化処理した疎水性ポリマーからなる繊維;ポリエチレンやポリプロピレン等の疎水性ポリマーからなる疎水性部と親水性部とを備える複合繊維等が挙げられる。
【0035】
本発明の含水ゲル組成物は、例えば上記のようにゲル層を形成して貼付剤を作製し、ゲル層の面を皮膚に貼付して用いるのが好ましく、高水分量であるが故に、使用時においてみずみずしい肌触りをもたらすとともに、経時的なゲル安定性に優れることから、過酷な保存環境下であっても長時間にわたって快適な使用感を保持したまま使用することができる。したがって、本発明の含水ゲル組成物は、外皮(頭皮を含む)に貼付するための化粧料、医薬品、医薬部外品及び雑貨として、その用途は多岐に亘り、所望の部位の皮膚上に貼付して快適な使用を実現することができる。
【実施例】
【0036】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明する。なお、表中に特に示さない限り、各成分の含有量は質量%を示す。
【0037】
[実施例1〜4、比較例1〜11]
表1に示す処方にしたがい、下記方法により含水ゲル組成物を含む貼付剤を作製した。
具体的には、まず精製水と中和酸を万能混合攪拌機(5DMV−rr、(株)ダルトン製)に投入し、5分間混合及び溶解させた。次に、グリセリン、パラオキシ安息香酸メチルを加温溶解させたプロピレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、乾燥水酸化アルミニウムゲルとの混合液を撹拌機に投入し、ゲージ圧を−0.095MPaの圧力まで減圧した状態で0.5時間かけて高速撹拌し、撹拌を止め常圧に戻して未架橋ゲル原液を調製した。
【0038】
次いで、得られた未架橋ゲル原液を、片面をシリコン処理したポリプロピレン(PP)フィルムのシリコン処理面とポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの間に挟み込み、ベーカー式アプリケーターによってゲル原液の厚さを0.8mmに調整して展延した。次いでPPフィルムを剥離し、展延したゲル層に不織布(PET:パルプ=80質量%:20質量%、坪量=20g/m2、エアレイド製 厚さ:0.22mm)をゲル層に張り合わせて、シート状の貼付剤にした。得られた貼付剤をアルミピローに封入して密封した後、50℃で2日間熟成し、未架橋ゲル原液中の架橋反応を進行させてゲルを形成した。なお、2日間の熟成でゲルが形成されなかった場合、その後ゲルが形成されるまで必要日数をかけた。
得られたゲルを用い、下記方法にしたがって各評価を行った。
結果を表1に示す。
【0039】
《ゲル形成時における評価》
形成直後のゲル強度につき、下記基準にしたがって官能評価した。
なお、比較例8〜11においては、ゲルの形成が完了する目途が立たず、その他の評価を行うことができなかった。
・ゲル強度
PETフィルムを剥がしてから、ゲル面を上にしてテーブル上に置き、
上からゲル部を親指で押してゲルの状態を観察した。
AA: 強く押してもあまり変形せず、ゲルはつぶれない
A: 強く押すと一時的に変形するが、ゲルはつぶれない
B: 押し続けるとゲルはつぶれるが、身体貼付剤として使用上問題ない
C: 押すとゲルは簡単につぶれ、身体貼付剤として使用上も支障をきたす
【0040】
《ゲル保存時における評価》
架橋後のゲル層を備えた貼付剤を型抜きして、試験片を得た(50mm×100mm)。得られた試験片を50℃で1ヶ月間保存し、保存後のゲル強度について上記基準にしたがって同様に評価するとともに、ゲル安定性を下記基準にしたがって評価した。
・ゲル安定性
AA: ゲル形成時よりもゲル保存時のゲル強度が高い
A: ゲル形成時とゲル保存時のゲル強度は同程度
B: ゲル形成時よりもゲル保存時のゲル強度が低い
【0041】
【表1】
【0042】
表1の結果によれば、成分(b1)を中和酸とする実施例1〜4は、いずれもゲル形成時から保存後に至るまで良好なゲル強度を保持しつつ、優れた安定性を示すことがわかる。これに比して、中和酸として成分(b2)のみを単独で用いた比較例1〜11は、上記実施例1〜4よりも劣る結果ではあるものの、そのなかでもマレイン酸、フマル酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フタル酸、L−アスパラギン酸を用いた比較例1〜7は、若干良好な結果を示していることもわかる。
【0043】
[実施例5〜6、比較例12〜13]
表2に示す処方にしたがい、まず精製水とポリビニルアルコールを混合し60℃プロペラ撹拌して溶解させた。室温に戻してから、中和酸を加えてプロペラ撹拌し溶解させたのち、万能混合攪拌機(5DMV−rr、(株)ダルトン製)に移し替えた。次いで実施例1と同様にして、その余の成分の混合液を撹拌機に追加投入し、減圧・高速撹拌して未架橋ゲル原液を調製した。
【0044】
次いで、実施例1と同様にして、得られた未架橋ゲル原液を用いて、シート状の貼付剤にし、常温で1週間熟成して未架橋ゲル原液中の架橋反応を進行させてゲルを形成した後、架橋後のゲル層を備えた貼付剤を型抜きして、試験片を得た(180mm×250mm)。得られた試験片を50℃で2ヶ月間保存し、保存後のゲル強度について上記基準にしたがって同様に評価するとともに、不織布への染み出し量を下記方法にしたがって測定した。
結果を表2に示す。
【0045】
《不織布への含水ゲルの染み出し量の測定》
保存後の試験片から不織布部分を剥がし、重量(x)を測定した。不織布部分を流水で十分に洗浄し、水を切ってからペーパータオル(エリエールプロワイプ ソフトタオルホワイト;大王製紙(株)製)の上に広げて、室温で1週間乾燥させた。乾燥後の重量(y;約0.9g)を測定し、洗浄乾燥前後の重量差(x−y;単位g)を求め、不織布への含水ゲルの染み出し量の評価の指標とした。
かかる値が1g以上であると、視覚的にも触感的(べたつき感の発現等)にも明確に不織布への染み出しを確認することができ、使用感に劣ることを意味する。
【0046】
【表2】
【0047】
表2の結果によれば、中和酸として成分(b1)を単独で用いた実施例5、及び成分(b1)と成分(b2)を併用した実施例6は、成分(b2)を単独で用いた比較例12〜13に比して、過酷な保存環境に晒されても良好なゲル強度を保持し、高い含水率でありながらゲルからの液の分離を有効に抑制し、優れた使用感をもたらすものであることがわかる。