特開2017-226614(P2017-226614A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2017-226614バナジウム化合物、薄膜形成用原料及び薄膜の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-226614(P2017-226614A)
(43)【公開日】2017年12月28日
(54)【発明の名称】バナジウム化合物、薄膜形成用原料及び薄膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/00 20060101AFI20171201BHJP
   C23C 16/18 20060101ALI20171201BHJP
   H01L 21/285 20060101ALI20171201BHJP
【FI】
   C07F9/00 ACSP
   C23C16/18
   H01L21/285 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-123398(P2016-123398)
(22)【出願日】2016年6月22日
(71)【出願人】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100161115
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 智史
(72)【発明者】
【氏名】岡部 誠
(72)【発明者】
【氏名】西田 章浩
(72)【発明者】
【氏名】吉野 智晴
【テーマコード(参考)】
4H050
4K030
4M104
【Fターム(参考)】
4H050AA01
4H050AA03
4H050AB78
4H050AB84
4H050AB99
4H050WB14
4H050WB21
4K030AA11
4K030AA13
4K030AA16
4K030BA19
4K030BA38
4K030CA04
4K030CA12
4K030FA10
4K030HA01
4K030LA15
4M104BB29
4M104DD45
(57)【要約】
【課題】自然発火性が無く、300℃以上の熱分解温度を有するバナジウム化合物を得ること。
【解決手段】下記一般式(1)で表されるバナジウム化合物。
【化1】

一般式(1)において、Rは炭素原子数1〜7の直鎖又は分岐状のアルキル基を表し、nは2〜4の数を表す。一般式(1)において、nが2であり、Rが第三ブチル基又は第三ペンチル基であるものは、ALDウインドウが広く、熱分解温度が高く、ALD材料として使用した場合に炭素残渣が少なく品質の良好なバナジウム含有薄膜を形成することができることから好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるバナジウム化合物。
【化1】
(式中、Rは炭素原子数1〜7の直鎖又は分岐状のアルキル基を表し、nは2〜4の数を表す。)
【請求項2】
請求項1に記載の化合物を含有してなる薄膜形成用原料。
【請求項3】
請求項2に記載の薄膜形成用原料を気化させて得られるバナジウム化合物を含有する蒸気を、基体が設置された成膜チャンバー内に導入し、該バナジウム化合物を分解及び/又は化学反応させて該基体の表面にバナジウム原子を含有する薄膜を形成する薄膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なバナジウム化合物、該化合物を含有してなる薄膜形成用原料及び該薄膜形成用原料を用いた薄膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バナジウムを含有する薄膜材料は、LSIなどの電子材料用の銅含有膜のためのバリア層や密着層として用いられている。
【0003】
上記の薄膜の製造法としては、スパッタリング法、イオンプレーティング法、塗布熱分解法やゾルゲル法等のMOD法、化学気相成長法等が挙げられるが、組成制御性、段差被覆性に優れること、量産化に適すること、ハイブリッド集積が可能である等多くの長所を有しているので、ALD(Atomic Layer Deposition)法を含む化学気相成長(以下、単にCVDと記載することもある)法が最適な製造プロセスである。
【0004】
化学気相成長法に用いられるバナジウム原子供給源として、様々な原料が多数報告されている。例えば、特許文献1には、MOCVD法による薄膜形成用原料として用いることができる有機バナジウム化合物が開示されている。また、特許文献2には、MOCVD法及びALD法による薄膜形成用原料として好適に用いることができるものとして、テトラキス(エチルメチルアミノ)バナジウムが開示されている。特許文献1及び特許文献2には、本発明のバナジウム化合物について具体的な記載がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−023010号公報
【特許文献2】特開2004−323493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
化学気相成長用原料等を気化させて基材表面に金属を含有する薄膜を形成する場合、自然発火性が無く、高品質な薄膜を形成することができる化学気相成長用原料が好適である。なかでも、バナジウムを含有する高品質な薄膜を形成するためには、ALD法を用いて300℃以上の加熱を行うことが必要であることから、ALD法に適用可能であり、自然発火性が無く、300℃以上の熱分解温度を有する化学気相成長用原料が求められていた。上記高品質な薄膜とは、膜中に混入した炭素残渣が少ないことを意味する。従来知られていた、テトラキス(アルキルアミノ)バナジウムは熱分解温度が低く、バナジウムを含有する高品質な薄膜を形成することが難しかった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、検討を重ねた結果、特定のバナジウム化合物が上記課題を解決し得ることを知見し、本発明に到達した。
【0008】
本発明は、下記一般式(1)で表されるバナジウム化合物及びこれを含有してなる薄膜形成用原料を提供するものである。
【0009】

【化1】
【0010】
(式中、Rは炭素原子数1〜7の直鎖又は分岐状のアルキル基を表し、nは2〜4の数を表す。)
【0011】
また、本発明は、上記一般式(1)で表されるバナジウム化合物を含有してなる薄膜形成用原料を気化させて得られる該バナジウム化合物を含有する蒸気を、基体が設置された成膜チャンバー内に導入し、該バナジウム化合物を分解及び/又は化学反応させて該基体の表面にバナジウム原子を含有する薄膜を形成する薄膜の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、自然発火性が無く、300℃以上の熱分解温度を有するバナジウム化合物を得ることができる。該バナジウム化合物はCVD法による金属薄膜形成用の薄膜形成用原料として適している。また、該バナジウム化合物はALD法に適用可能なことからALD法用薄膜形成用原料として特に適している。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明に係る薄膜の製造方法に用いられる化学気相成長用装置の一例を示す概要図である。
図2図2は、本発明に係る薄膜の製造方法に用いられる化学気相成長用装置の別の例を示す概要図である。
図3図3は、本発明に係る薄膜の製造方法に用いられる化学気相成長用装置の別の例を示す概要図である。
図4図4は、本発明に係る薄膜の製造方法に用いられる化学気相成長用装置の別の例を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のバナジウム化合物は、上記一般式(1)で表されるものであり、CVD法等の気化工程を有する薄膜製造方法のプレカーサとして好適なものであり、ALD法を用いて薄膜を形成することもできる。
【0015】
本発明の上記一般式(1)において、Rは、炭素原子数1〜7の直鎖又は分岐状のアルキル基を表す。
【0016】
上記Rで表される炭素数1〜7の直鎖又は分岐状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、第二ブチル基、第三ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基及びヘキシル基が挙げられる。
【0017】
ALDウインドウと呼ばれるALD法に適用可能な温度範囲が広く且つ熱分解温度が高くなることから、上記一般式(1)におけるRは、2級アルキル基又は3級アルキル基であることが好ましく、なかでも3級アルキル基であることがより好ましく、第三ブチル基又は第三ペンチル基であることが特に好ましい。
【0018】
上記一般式(1)において、nは2〜4の数を表す。特にnが2である場合は、熱安定性が高く、ALD材料として使用した場合に良好なバナジウム含有薄膜を形成することができることから好ましい。
【0019】
上記一般式(1)において、nが2であり、Rが第三ブチル基又は第三ペンチル基であるものは、ALDウインドウが広く、熱分解温度が高く、ALD材料として使用した場合に炭素残渣が少なく品質の良好なバナジウム含有薄膜を形成することができることから好ましい。なかでも上記一般式(1)において、nが2であり、Rが第三ブチル基であるものは、得られる薄膜全体の膜厚のばらつきが少なく平滑な薄膜を得ることができる効果が非常に高いことから特に好ましい。
【0020】
一般式(1)で表されるバナジウム化合物の好ましい具体例としては、下記化学式No.1〜No.18で表される化合物が挙げられる。なお、下記化学式No.1〜No.18において「Me」はメチル基を表し、「Et」はエチル基を表し、「Pr」はイソプロピル基を表し、「bu」は第二ブチル基を表し、「Bu」は第三ブチル基を表し、「Am」は第三ペンチル基を表す。
【0021】
【化2】
【0022】
【化3】
【0023】
【化4】
【0024】
本発明のバナジウム化合物は、その製造方法により特に制限されることはなく、周知の反応を応用して製造される。例えば、バナジウムのハロゲン化物、硝酸塩等の無機塩又はその水和物と、該当するジアザジエン化合物とを、ナトリウム、リチウム、水素化ナトリウム、ナトリウムアミド、水酸化ナトリウム、ナトリウムメチラート、アンモニア、アミン等の塩基の存在下で反応させる方法、バナジウムのハロゲン化物、硝酸塩等の無機塩又はその水和物と、該当するジアザジエン化合物のナトリウム錯体、リチウム錯体、カリウム錯体等を反応させる方法などが挙げられる。
【0025】
本発明の薄膜形成用原料とは、上記で説明した本発明のバナジウム化合物を薄膜のプレカーサとしたものであり、その形態は、該薄膜形成用原料が適用される製造プロセスによって異なる。例えば、金属原子としてバナジウムのみを含む薄膜を製造する場合、本発明の薄膜形成用原料は、上記バナジウム化合物以外の金属化合物及び半金属化合物を非含有である。一方、金属原子としてバナジウムを含めた2種類以上の金属及び/又は半金属を含む薄膜を製造する場合、本発明の薄膜形成用原料は、上記バナジウム化合物に加えて、所望の金属を含む化合物及び/又は半金属を含む化合物(以下、他のプレカーサともいう)を含有する。本発明の薄膜形成用原料は、後述するように、更に、有機溶剤及び/又は求核性試薬を含有してもよい。本発明の薄膜形成用原料は、上記説明のとおり、プレカーサであるバナジウム化合物の物性がCVD法、ALD法に好適であるので、特に化学気相成長用原料(以下、CVD用原料ということもある)として有用である。
【0026】
本発明の薄膜形成用原料が化学気相成長用原料である場合、その形態は使用されるCVD法の輸送供給方法等の手法により適宜選択されるものである。
【0027】
上記の輸送供給方法としては、CVD用原料を該原料が貯蔵される容器(以下、単に原料容器と記載することもある)中で加熱及び/又は減圧することにより気化させて蒸気とし、必要に応じて用いられるアルゴン、窒素、ヘリウム等のキャリアガスと共に、該蒸気を基体が設置された成膜チャンバー内(以下、堆積反応部と記載することもある)へと導入する気体輸送法、CVD用原料を液体又は溶液の状態で気化室まで輸送し、気化室で加熱及び/又は減圧することにより気化させて蒸気とし、該蒸気を成膜チャンバー内へと導入する液体輸送法がある。気体輸送法の場合は、上記一般式(1)で表されるバナジウム化合物そのものをCVD用原料とすることができる。液体輸送法の場合は、上記一般式(1)で表されるバナジウム化合物そのもの又は該化合物を有機溶剤に溶かした溶液をCVD用原料とすることができる。これらのCVD用原料は更に他のプレカーサや求核性試薬等を含んでいてもよい。
【0028】
また、多成分系のCVD法においては、CVD用原料を各成分独立で気化、供給する方法(以下、シングルソース法と記載することもある)と、多成分原料を予め所望の組成で混合した混合原料を気化、供給する方法(以下、カクテルソース法と記載することもある)がある。カクテルソース法の場合、本発明のバナジウム化合物と他のプレカーサとの混合物若しくは該混合物を有機溶剤に溶かした混合溶液をCVD用原料とすることができる。この混合物や混合溶液は更に求核性試薬等を含んでいてもよい。
【0029】
上記の有機溶剤としては、特に制限を受けることはなく周知一般の有機溶剤を用いることができる。該有機溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシエチル等の酢酸エステル類;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジブチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン類;ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン等の炭化水素類;1−シアノプロパン、1−シアノブタン、1−シアノヘキサン、シアノシクロヘキサン、シアノベンゼン、1,3−ジシアノプロパン、1,4−ジシアノブタン、1,6−ジシアノヘキサン、1,4−ジシアノシクロヘキサン、1,4−ジシアノベンゼン等のシアノ基を有する炭化水素類;ピリジン、ルチジン等が挙げられる。これらの有機溶剤は、溶質の溶解性、使用温度と沸点、引火点の関係等により、単独で用いてもよいし、又は二種類以上を混合して用いてもよい。これらの有機溶剤を使用する場合、プレカーサを有機溶剤に溶かした溶液であるCVD用原料中におけるプレカーサ全体の量が0.01〜2.0モル/リットル、特に0.05〜1.0モル/リットルとなるようにするのが好ましい。プレカーサ全体の量とは、本発明の薄膜形成用原料が、本発明のバナジウム化合物以外の金属化合物及び半金属化合物を非含有である場合、本発明のバナジウム化合物の量であり、本発明の薄膜形成用原料が、該バナジウム化合物に加えて他の金属を含む化合物及び/又は半金属を含む化合物(他のプレカーサ)を含有する場合、本発明のバナジウム化合物及び他のプレカーサの合計量である。
【0030】
また、多成分系のCVD法の場合において、本発明のバナジウム化合物と共に用いられる他のプレカーサとしては、特に制限を受けず、CVD用原料に用いられている周知一般のプレカーサを用いることができる。
【0031】
上記の他のプレカーサとしては、水素化物、水酸化物、ハロゲン化物、アジ化物、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アルキニル、アミノ、ジアルキルアミノアルキル、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ジアミン、ジ(シリル−アルキル)アミノ、ジ(アルキル−シリル)アミノ、ジシリルアミノ、アルコキシ、アルコキシアルキル、ヒドラジド、ホスフィド、ニトリル、ジアルキルアミノアルコキシ、アルコキシアルキルジアルキルアミノ、シロキシ、ジケトナート、シクロペンタジエニル、シリル、ピラゾレート、グアニジネート、ホスホグアニジネート、アミジナート、ホスホアミジナート、ケトイミナート、ジケチミナート、カルボニル及びホスホアミジナートを配位子として有する化合物からなる群から選択される一種類又は二種類以上のケイ素や金属の化合物が挙げられる。
【0032】
プレカーサの金属種としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム、スカンジウム、イットリウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金、亜鉛、カドミウム、アルミニウム、ガリウム、インジウム、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウムが挙げられる。
【0033】
上記の他のプレカーサは、当該技術分野において公知のものであり、その製造方法も公知である。製造方法の一例を挙げれば、例えば、有機配位子としてアルコール化合物を用いた場合には、先に述べた金属の無機塩又はその水和物と、該アルコール化合物のアルカリ金属アルコキシドとを反応させることによって、プレカーサを製造することができる。ここで、金属の無機塩又はその水和物としては、金属のハロゲン化物、硝酸塩等を挙げることができ、アルカリ金属アルコキシドとしては、ナトリウムアルコキシド、リチウムアルコキシド、カリウムアルコキシド等を挙げることができる。
【0034】
上記の他のプレカーサは、シングルソース法の場合は、本発明のバナジウム化合物と、熱及び/又は酸化分解の挙動が類似している化合物が好ましく、カクテルソース法の場合は、熱及び/又は酸化分解の挙動が類似していることに加え、混合時に化学反応等による変質を起こさないものが好ましい。
【0035】
上記の他のプレカーサのうち、チタン、ジルコニウム又はハフニウムを含むプレカーサとしては、下記式(II−1)〜(II−5)で表される化合物が挙げられる。
【0036】
【化5】
【0037】
(式中、Mは、チタン、ジルコニウム又はハフニウムを表し、R及びRは各々独立に、ハロゲン原子で置換されてもよく、鎖中に酸素原子を含んでもよい炭素数1〜20のアルキル基を表し、Rは炭素数1〜8のアルキル基を表し、Rは炭素数2〜18の分岐してもよいアルキレン基を表し、R及びRは各々独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、R、R、R及びRは各々独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、pは0〜4の整数を表し、qは0又は2を表し、rは0〜3の整数を表し、sは0〜4の整数を表し、tは1〜4の整数を表す。)
【0038】
上記式(II−1)〜(II−5)において、R及びRで表される、ハロゲン原子で置換されてもよく、鎖中に酸素原子を含んでもよい炭素数1〜20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、第二ブチル基、第三ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、第三ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロヘキシル基、ヘプチル基、3−ヘプチル基、イソヘプチル基、第三ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、第三オクチル基、2−エチルヘキシル基、トリフルオロメチル基、パーフルオロヘキシル基、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基、2−ブトキシエチル基、2−(2−メトキシエトキシ)エチル基、1−メトキシ−1,1−ジメチルメチル基、2−メトキシ−1,1−ジメチルエチル基、2−エトキシ−1,1−ジメチルエチル基、2−イソプロポキシ−1,1−ジメチルエチル基、2−ブトキシ−1,1−ジメチルエチル基、2−(2−メトキシエトキシ)−1,1−ジメチルエチル基等が挙げられる。また、Rで表される炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、第二ブチル基、第三ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、第三ペンチル基、ヘキシル基、1−エチルペンチル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロヘキシル基、ヘプチル基、イソヘプチル基、第三ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、第三オクチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。また、Rで表される炭素数2〜18の分岐してもよいアルキレン基とは、グリコールにより与えられる基であり、該グリコールとしては、例えば、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2,4−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−ブタンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1−メチル−2,4−ペンタンジオール等が挙げられる。また、R及びRで表される炭素数1〜3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、2−プロピル基等が挙げられ、R、R、R及びRで表される炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、第二ブチル基、第三ブチル基、イソブチル基等が挙げられる。
【0039】
具体的にはチタンを含むプレカーサとして、テトラキス(エトキシ)チタニウム、テトラキス(2−プロポキシ)チタニウム、テトラキス(ブトキシ)チタニウム、テトラキス(第二ブトキシ)チタニウム、テトラキス(イソブトキシ)チタニウム、テトラキス(第三ブトキシ)チタニウム、テトラキス(第三ペンチル)チタニウム、テトラキス(1−メトキシ−2−メチル−2−プロポキシ)チタニウム等のテトラキスアルコキシチタニウム類;テトラキス(ペンタン−2,4−ジオナト)チタニウム、(2,6−ジメチルヘプタン−3,5−ジオナト)チタニウム、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオナト)チタニウム等のテトラキスβ−ジケトナトチタニウム類;ビス(メトキシ)ビス(ペンタン−2,4−ジオナト)チタニウム、ビス(エトキシ)ビス(ペンタン−2,4−ジオナト)チタニウム、ビス(第三ブトキシ)ビス(ペンタン−2,4−ジオナト)チタニウム、ビス(メトキシ)ビス(2,6−ジメチルヘプタン−3,5−ジオナト)チタニウム、ビス(エトキシ)ビス(2,6−ジメチルヘプタン−3,5−ジオナト)チタニウム、ビス(2−プロポキシ)ビス(2,6−ジメチルヘプタン−3,5−ジオナト)チタニウム、ビス(第三ブトキシ)ビス(2,6−ジメチルヘプタン−3,5−ジオナト)チタニウム、ビス(第三アミロキシ)ビス(2,6−ジメチルヘプタン−3,5−ジオナト)チタニウム、ビス(メトキシ)ビス(2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオナト)チタニウム、ビス(エトキシ)ビス(2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオナト)チタニウム、ビス(2−プロポキシ)ビス(2,6,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオナト)チタニウム、ビス(第三ブトキシ)ビス(2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオナト)チタニウム、ビス(第三アミロキシ)ビス(2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオナト)チタニウム等のビス(アルコキシ)ビス(βジケトナト)チタニウム類;(2−メチルペンタンジオキシ)ビス(2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオナト)チタニウム、(2−メチルペンタンジオキシ)ビス(2,6−ジメチルヘプタン−3,5−ジオナト)チタニウム等のグリコキシビス(βジケトナト)チタニウム類;(メチルシクロペンタジエニル)トリス(ジメチルアミノ)チタニウム、(エチルシクロペンタジエニル)トリス(ジメチルアミノ)チタニウム、(シクロペンタジエニル)トリス(ジメチルアミノ)チタニウム、(メチルシクロペンタジエニル)トリス(エチルメチルアミノ)チタニウム、(エチルシクロペンタジエニル)トリス(エチルメチルアミノ)チタニウム、(シクロペンタジエニル)トリス(エチルメチルアミノ)チタニウム、(メチルシクロペンタジエニル)トリス(ジエチルアミノ)チタニウム、(エチルシクロペンタジエニル)トリス(ジエチルアミノ)チタニウム、(シクロペンタジエニル)トリス(ジエチルアミノ)チタニウム等の(シクロペンタジエニル)トリス(ジアルキルアミノ)チタニウム類;(シクロペンタジエニル)トリス(メトキシ)チタニウム、(メチルシクロペンタジエニル)トリス(メトキシ)チタニウム、(エチルシクロペンタジエニル)トリス(メトキシ)チタニウム、(プロピルシクロペンタジエニル)トリス(メトキシ)チタニウム、(イソプロピルシクロペンタジエニル)トリス(メトキシ)チタニウム、(ブチルシクロペンタジエニル)トリス(メトキシ)チタニウム、(イソブチルシクロペンタジエニル)トリス(メトキシ)チタニウム、第三ブチルシクロペンタジエニル)トリス(メトキシ)チタニウム、(ペンタメチルシクロペンタジエニル)トリス(メトキシ)チタニウム等の(シクロペンタジエニル)トリス(アルコキシ)チタニウム類等が挙げられ、ジルコニウムを含むプレカーサ又はハフニウムを含むプレカーサとしては、上記チタンを含むプレカーサとして例示した化合物におけるチタンを、ジルコニウム又はハフニウムに置き換えた化合物が挙げられる。
【0040】
希土類元素を含むプレカーサとしては、下記式(III−1)〜(III〜3)で表される化合物が挙げられる。
【0041】
【化6】
【0042】
(式中、Mは、希土類原子を表し、R及びRは各々独立に、ハロゲン原子で置換されてもよく、鎖中に酸素原子を含んでもよい炭素数1〜20のアルキル基を表し、Rは炭素数1〜8のアルキル基を表し、R及びRは各々独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、R及びRは各々独立に、炭素数1〜4のアルキル基を表し、p’は0〜3の整数を表し、r’は0〜2の整数を表す。)
【0043】
上記の希土類元素を含むプレカーサにおいて、Mで表される希土類原子としては、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムが挙げられ、R、R、R、R、R、R及びRで表される基としては、前記のチタンを含むプレカーサで例示した基が挙げられる。
【0044】
また、本発明の薄膜形成用原料には、必要に応じて、本発明のバナジウム化合物及び他のプレカーサの安定性を付与するため、求核性試薬を含有してもよい。該求核性試薬としては、グライム、ジグライム、トリグライム、テトラグライム等のエチレングリコールエーテル類、18−クラウン−6、ジシクロヘキシル−18−クラウン−6、24−クラウン−8、ジシクロヘキシル−24−クラウン−8、ジベンゾ−24−クラウン−8等のクラウンエーテル類、エチレンジアミン、N,N’−テトラメチルエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、1,1,4,7,7−ペンタメチルジエチレントリアミン、1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、トリエトキシトリエチレンアミン等のポリアミン類、サイクラム、サイクレン等の環状ポリアミン類、ピリジン、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジン、N−メチルモルホリン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサン、オキサゾール、チアゾール、オキサチオラン等の複素環化合物類、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸−2−メトキシエチル等のβ−ケトエステル類又はアセチルアセトン、2,4−ヘキサンジオン、2,4−ヘプタンジオン、3,5−ヘプタンジオン、ジピバロイルメタン等のβ−ジケトン類が挙げられ、これら求核性試薬の使用量は、プレカーサ全体の量1モルに対して0.1モル〜10モルの範囲が好ましく、より好ましくは1〜4モルである。
【0045】
本発明の薄膜形成用原料には、これを構成する成分以外の不純物金属元素分、不純物塩素などの不純物ハロゲン分、及び不純物有機分が極力含まれないようにする。不純物金属元素分は、元素毎では100ppb以下が好ましく、10ppb以下がより好ましく、総量では、1ppm以下が好ましく、100ppb以下がより好ましい。特に、LSIのゲート絶縁膜、ゲート膜、バリア層として用いる場合は、得られる薄膜の電気的特性に影響のあるアルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素の含有量を少なくすることが必要である。不純物ハロゲン分は、100ppm以下が好ましく、10ppm以下がより好ましく、1ppm以下が最も好ましい。不純物有機分は、総量で500ppm以下が好ましく、50ppm以下がより好ましく、10ppm以下が最も好ましい。また、水分は、化学気相成長用原料中でのパーティクル発生や、薄膜形成中におけるパーティクル発生の原因となるので、プレカーサ、有機溶剤及び求核性試薬については、それぞれの水分の低減のために、使用の際にあらかじめできる限り水分を取り除いた方がよい。プレカーサ、有機溶剤及び求核性試薬それぞれの水分量は、10ppm以下が好ましく、1ppm以下がより好ましい。
【0046】
また、本発明の薄膜形成用原料は、形成される薄膜のパーティクル汚染を低減又は防止するために、パーティクルが極力含まれないようにするのが好ましい。具体的には、液相での光散乱式液中粒子検出器によるパーティクル測定において、0.3μmより大きい粒子の数が液相1ml中に100個以下であることが好ましく、0.2μmより大きい粒子の数が液相1ml中に1000個以下であることがより好ましく、0.2μmより大きい粒子の数が液相1ml中に100個以下であることが最も好ましい。
【0047】
本発明の薄膜形成用原料を用いて薄膜を製造する本発明の薄膜の製造方法としては、本発明の薄膜形成用原料を気化させた蒸気、及び必要に応じて用いられる反応性ガスを、基体が設置された成膜チャンバー内に導入し、次いで、プレカーサを基体上で分解及び/又は化学反応させて金属を含有する薄膜を基体表面に成長、堆積させるCVD法によるものである。原料の輸送供給方法、堆積方法、製造条件、製造装置等については、特に制限を受けるものではなく、周知一般の条件及び方法を用いることができる。
【0048】
上記の必要に応じて用いられる反応性ガスとしては、例えば、酸化性のものとしては酸素、オゾン、二酸化窒素、一酸化窒素、水蒸気、過酸化水素、ギ酸、酢酸、無水酢酸等が挙げられ、還元性のものとしては水素が挙げられ、また、窒化物を製造するものとしては、モノアルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、アルキレンジアミン等の有機アミン化合物、ヒドラジン、アンモニア等が挙げられ、これらは1種類又は2種類以上使用することができる。
【0049】
また、上記の輸送供給方法としては、前述した気体輸送法、液体輸送法、シングルソース法、カクテルソース法等が挙げられる。
【0050】
また、上記の堆積方法としては、原料ガス又は原料ガスと反応性ガスを熱のみにより反応させ薄膜を堆積させる熱CVD、熱とプラズマを使用するプラズマCVD、熱と光を使用する光CVD、熱、光及びプラズマを使用する光プラズマCVD、CVDの堆積反応を素過程に分け、分子レベルで段階的に堆積を行うALDが挙げられる。
【0051】
上記基体の材質としては、例えばシリコン;窒化ケイ素、窒化チタン、窒化タンタル、酸化チタン、窒化チタン、酸化ルテニウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ランタン等のセラミックス;ガラス;金属ルテニウム等の金属が挙げられる。基体の形状としては、板状、球状、繊維状、鱗片状が挙げられ、基体表面は、平面であってもよく、トレンチ構造等の三次元構造となっていてもよい。
【0052】
また、上記の製造条件としては、反応温度(基体温度)、反応圧力、堆積速度等が挙げられる。反応温度については、本発明のバナジウム化合物が充分に反応する温度である100℃以上が好ましく、150℃〜500℃がより好ましい。本発明のバナジウム化合物は300℃以上の熱分解温度を有することから、250℃〜450℃が特に好ましい。また、反応圧力は、熱CVD又は光CVDの場合、大気圧〜10Paが好ましく、プラズマを使用する場合、2000Pa〜10Paが好ましい。
また、堆積速度は、原料の供給条件(気化温度、気化圧力)、反応温度、反応圧力によりコントロールすることができる。堆積速度は、大きいと得られる薄膜の特性が悪化する場合があり、小さいと生産性に問題を生じる場合があるので、0.01〜100nm/分が好ましく、1〜50nm/分がより好ましい。また、ALD法の場合は、所望の膜厚が得られるようにサイクルの回数でコントロールされる。
【0053】
上記の製造条件として更に、薄膜形成用原料を気化させて蒸気とする際の温度や圧力が挙げられる。薄膜形成用原料を気化させて蒸気とする工程は、原料容器内で行ってもよく、気化室内で行ってもよい。いずれの場合においても、本発明の薄膜形成用原料は0〜150℃で蒸発させることが好ましい。また、原料容器内又は気化室内で薄膜形成用原料を気化させて蒸気とする場合に原料容器内の圧力及び気化室内の圧力はいずれも1〜10000Paであることが好ましい。
【0054】
本発明の薄膜の製造方法は、ALD法を採用して、上記の輸送供給方法により、薄膜形成用原料を気化させて蒸気とし、該蒸気を成膜チャンバー内へ導入する原料導入工程のほか、該蒸気中の上記バナジウム化合物により上記基体の表面に前駆体薄膜を形成する前駆体薄膜成膜工程、未反応のバナジウム化合物ガスを排気する排気工程、及び、該前駆体薄膜を反応性ガスと化学反応させて、該基体の表面にバナジウム原子を含有する薄膜を形成するバナジウム含有薄膜形成工程を有していてもよい。
【0055】
以下では、上記の各工程について、窒化バナジウム薄膜を形成する場合を例に詳しく説明する。窒化バナジウム薄膜をALD法により形成する場合は、まず、前記で説明した原料導入工程を行う。薄膜形成用原料を蒸気とする際の好ましい温度や圧力は上記で説明したものと同様である。次に、堆積反応部に導入したバナジウム化合物により、基体表面に前駆体薄膜を成膜させる(前駆体薄膜成膜工程)。このときに、基体を加熱するか、堆積反応部を加熱して、熱を加えてもよい。この工程で成膜される前駆体薄膜は、バナジウム酸化物薄膜、又は、バナジウム化合物の一部が分解及び/又は反応して生成した薄膜であり、目的の窒化バナジウム薄膜とは異なる組成を有する。本工程が行われる際の基体温度は、室温〜500℃が好ましく、200〜500℃がより好ましい。本工程が行われる際の系(成膜チャンバー内)の圧力は1〜10000Paが好ましく、10〜1000Paがより好ましい。
【0056】
次に、堆積反応部から、未反応のバナジウム化合物ガスや副生したガスを排気する(排気工程)。未反応のバナジウム化合物ガスや副生したガスは、堆積反応部から完全に排気されるのが理想的であるが、必ずしも完全に排気される必要はない。排気方法としては、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスにより系内をパージする方法、系内を減圧することで排気する方法、これらを組み合わせた方法などが挙げられる。減圧する場合の減圧度は、0.01〜300Paが好ましく、0.01〜100Paがより好ましい。
【0057】
次に、堆積反応部にアンモニアガス等の反応性ガスを導入し、該反応性ガスの作用又は反応性ガス及び熱の作用により、先の前駆体薄膜成膜工程で得た前駆体薄膜から窒化バナジウム薄膜を形成する(窒化バナジウム含有薄膜形成工程)。本工程において熱を作用させる場合の温度は、室温〜500℃が好ましく、150〜350℃がより好ましい。本工程が行われる際の系(成膜チャンバー内)の圧力は1〜10000Paが好ましく、10〜1000Paがより好ましい。本発明のバナジウム化合物は、アンモニアガス等の反応性ガスとの反応性が良好であり、窒化バナジウム薄膜を得ることができる。また、本発明のバナジウム化合物は、オゾン等の酸化性ガスとの反応性も良好であり、酸化バナジウム薄膜を得ることもできる。
【0058】
本発明の薄膜の製造方法において、上記のようにALD法を採用した場合、上記の原料導入工程、前駆体薄膜成膜工程、排気工程、及び、窒化バナジウム含有薄膜形成工程からなる一連の操作による薄膜堆積を1サイクルとし、このサイクルを必要な膜厚の薄膜が得られるまで複数回繰り返してもよい。この場合、1サイクル行った後、上記排気工程と同様にして、堆積反応部から未反応のバナジウム化合物ガス及び反応性ガス(窒化バナジウム薄膜を形成する場合はアンモニアガス等)、更に副成したガスを排気した後、次の1サイクルを行うことが好ましい。
【0059】
また、窒化バナジウム薄膜のALD法による形成においては、プラズマ、光、電圧などのエネルギーを印加してもよく、触媒を用いてもよい。該エネルギーを印加する時期及び触媒を用いる時期は、特には限定されず、例えば、原料導入工程におけるバナジウム化合物ガス導入時、前駆体薄膜成膜工程又は窒化バナジウム含有薄膜形成工程における加温時、排気工程における系内の排気時、窒化バナジウム含有薄膜形成工程におけるアンモニアガス等の反応性ガス導入時でもよく、上記の各工程の間でもよい。
【0060】
また、本発明の薄膜の製造方法においては、薄膜堆積の後に、より良好な電気特性を得るために不活性雰囲気下、酸化性雰囲気下又は還元性雰囲気下でアニール処理を行ってもよく、段差埋め込みが必要な場合には、リフロー工程を設けてもよい。この場合の温度は、200〜1000℃であり、250〜500℃が好ましい。
【0061】
本発明の薄膜形成用原料を用いて薄膜を製造する装置は、周知な化学気相成長法用装置を用いることができる。具体的な装置の例としては図1のようなプレカーサをバブリング供給で行うことのできる装置や、図2のように気化室を有する装置が挙げられる。また、図3及び図4のように反応性ガスに対してプラズマ処理を行うことのできる装置が挙げられる。図1図4のような枚葉式装置に限らず、バッチ炉を用いた多数枚同時処理可能な装置を用いることもできる。
【0062】
本発明の薄膜形成用原料を用いて製造される薄膜は、他のプレカーサ、反応性ガス及び製造条件を適宜選択することにより、メタル、酸化物セラミックス、窒化物セラミックス等の所望の種類の薄膜とすることができる。該薄膜は種々の電気特性及び光学特性等を示すことが知られており、種々の用途に応用されている。該薄膜は、例えば、LSIなどの電子材料用の銅含有膜のためのバリア層や密着層として用いられている。
【実施例】
【0063】
以下、実施例及び評価例をもって本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明は以下の実施例等によって何ら制限を受けるものではない。
【0064】
[実施例1 化合物No.5の合成]
300ml4つ口フラスコに、塩化バナジウム(III)10.2g(0.0646mol)とテトラヒドロフラン52gを仕込み、室温下で撹拌した。その中に、N,N’−ジ−tert−ブチル−1,4−ジアザ−1,3−ブタジエン32.6g(0.194mol)とリチウム1.35g(0.194mol)をテトラヒドロフラン110gへ溶かして調整した溶液を、ドライアイス−イソプロピルアルコール冷却下、液温−20〜−15℃で滴下した。滴下終了後、80℃加熱下で撹拌した後、微減圧下、オイルバス温度60℃にて脱溶媒を行なった。この残渣をトルエンに溶解させ、ろ過を行なった。得られたトルエン溶液を、減圧下、オイルバス温度100℃にて脱溶媒し、残渣を20Pa、160℃の条件下で蒸留精製して、目的物を得た。収量は17.1gであり、収率は68.4%であった。得られた目的物を大気中で放置することで自然発火性の有無を確認したところ、自然発火性は無かった。
【0065】
(分析値)
(1)元素分析 V: 13.0質量%、C:61.1質量%、H:11.1質量%、N:14.4質量%)
(理論値 V: 13.1質量%、C:61.4質量%、H:11.3質量%、N:14.3質量%)
(2)常圧TG−DTA
質量50%減少温度:231℃(Ar流量:100ml/分、昇温10℃/分)
(3)減圧TG−DTA
質量50%減少温度: 151℃(10Torr、Ar流量:50ml/分、昇温10℃/分)
【0066】
[実施例2 化合物No.6の合成]
300ml4つ口フラスコに、塩化バナジウム(III)3.54g(0.0225mol)とテトラヒドロフラン20gを仕込み、室温下で撹拌した。その中に、N,N’−ジ−tert−アミル−1,4−ジアザ−1,3−ブタジエン13.3g(0.0675mol)とリチウム0.47g(0.0675mol)をテトラヒドロフラン30gへ溶かして調整した溶液を、ドライアイス−イソプロピルアルコール冷却下、液温−20〜−15℃で滴下した。滴下終了後、80℃加熱下で撹拌した後、微減圧下、オイルバス温度60℃にて脱溶媒を行なった。この残渣をトルエンに溶解させ、ろ過を行なった。得られたトルエン溶液を、減圧下、オイルバス温度100℃にて脱溶媒し、残渣を15Pa、125℃の条件下で蒸留精製して、目的物を得た。収量は3.56gであり、収率は35.6%であった。得られた目的物を大気中で放置することで自然発火性の有無を確認したところ、自然発火性は無かった。
【0067】
(分析値)
(1)元素分析 V: 11.6質量%、C:64.5質量%、H:10.9質量%、N:12.4質量%)
(理論値 V: 11.5質量%、C:64.4質量%、H:11.7質量%、N:12.5質量%)
(2)常圧TG−DTA
質量50%減少温度:263℃(Ar流量:100ml/分、昇温10℃/分)
(3)減圧TG−DTA
質量50%減少温度: 180℃(10Torr、Ar流量:50ml/分、昇温10℃/分)
【0068】
[評価例1]熱安定性評価
化合物No.5及び6並びに下記に示す比較化合物1について、DSC測定装置を用いて発熱ピークの温度を熱分解温度として測定することで、各化合物の熱安定性を確認した。結果を表2に示す。
【0069】
【化7】
【0070】
【表1】
【0071】
上記表1から分かるように、比較化合物1の熱分解温度は300℃未満であった。一方、化合物No.5及び化合物No.6の熱分解温度は300℃以上であった。化合物の熱分解温度が高いほど、熱安定性が高いと言える。薄膜形成用原料としての化合物の熱安定性が高ければ、より高温で成膜することができる。より高温で成膜することができるということは、得られる薄膜中の炭素残渣などの不純物少なくすることができる。よって、薄膜形成用原料としての化合物の熱安定性は得られる薄膜の品質に影響するものである。
【0072】
[実施例3]ALD法による窒化バナジウム薄膜の製造
化合物No.5及び6を化学気相成長用原料とし、図1に示すALD装置を用いて以下の条件のALD法により、シリコン基板上に窒化バナジウム薄膜を製造した。得られた薄膜について、X線反射率法による膜厚測定、X線回折法及びX線光電子分光法による薄膜構造及び薄膜組成の確認を行ったところ、膜厚は3〜6nmであり、膜組成は窒化バナジウム(XPS分析によるV2pピーク、N1sピークで確認)であった。炭素含有量は検出下限である0.1atom%よりも少なかった。1サイクル当たりに得られる膜厚は、0.02〜0.04nmであった。また、得られた窒化バナジウムの断面を観察したところ、化合物No.5を用いて製造した薄膜は、化合物No.6を用いて製造した薄膜よりも薄膜全体の膜厚のばらつきが非常に少なかった。
【0073】
(条件)
反応温度(基板温度):320℃、反応性ガス:アンモニアガス
(工程)
下記(1)〜(4)からなる一連の工程を1サイクルとして、150サイクル繰り返した。
(1)原料容器加熱温度70℃、原料容器内圧力100Paの条件で気化させた化学気相成長用原料の蒸気を導入し、系圧100Paで30秒間堆積させる。
(2)10秒間のアルゴンパージにより、未反応原料を除去する。
(3)反応性ガスを導入し、系圧力100Paで30秒間反応させる。
(4)10秒間のアルゴンパージにより、未反応原料を除去する。
【0074】
[比較例2]ALD法による窒化バナジウム薄膜の製造
比較化合物1を用いて、実施例3と同様の方法で窒化バナジウム薄膜を製造した。この結果、シリコン基板上に形成されたバナジウム含有薄膜中の炭素含有量は20atom%以上であった。
【0075】
実施例3の結果より、いずれも良質な窒化バナジウム薄膜をALD法によって得ることができた。一方、比較例2の結果、高品質な窒化バナジウム薄膜を得ることができないことが分かった。
図1
図2
図3
図4