特開2017-226736(P2017-226736A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-226736(P2017-226736A)
(43)【公開日】2017年12月28日
(54)【発明の名称】製罐塗料用樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 175/06 20060101AFI20171201BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20171201BHJP
   C08G 18/42 20060101ALI20171201BHJP
   C08G 18/22 20060101ALI20171201BHJP
   C08G 18/80 20060101ALI20171201BHJP
【FI】
   C09D175/06
   C09D7/12
   C08G18/42 008
   C08G18/22
   C08G18/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-122622(P2016-122622)
(22)【出願日】2016年6月21日
(71)【出願人】
【識別番号】310000244
【氏名又は名称】DICグラフィックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 好樹
(72)【発明者】
【氏名】大塚 良都
(72)【発明者】
【氏名】久保田 貴之
【テーマコード(参考)】
4J034
4J038
【Fターム(参考)】
4J034BA03
4J034DA01
4J034DB04
4J034DB07
4J034DF01
4J034DF16
4J034DF17
4J034DF20
4J034DF21
4J034DF22
4J034DF24
4J034HA01
4J034HA07
4J034HB05
4J034HB06
4J034HB07
4J034HB08
4J034HB09
4J034HB12
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC17
4J034HC22
4J034HC34
4J034HC35
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034HD03
4J034HD04
4J034HD05
4J034HD06
4J034HD07
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4J034HD09
4J034HD12
4J034HD15
4J034JA42
4J034KA01
4J034KB01
4J034KB02
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4J034KD02
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4J034KE02
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4J034QA02
4J034QA03
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4J034QB12
4J034QB14
4J034QB17
4J034RA07
4J038DG111
4J038DG302
4J038JA23
4J038JC38
4J038KA03
4J038KA08
4J038MA09
4J038NA03
4J038PA19
4J038PB04
4J038PC02
(57)【要約】
【課題】 本発明の課題は、特に飲料缶、食缶等の缶胴及び蓋の塗料に使用され、塗膜の加工性、耐レトルト性及び衛生性に優れることに加えて、特に耐食性、耐衝撃性に優れ、且つ、ビスフェノールA及びホルムアルデヒドを原料として使用しない製罐塗料用樹脂組成物を提供することにある。
【解決手段】 ジフェノール酸を原料の酸成分として有する水酸基含有ポリエステル樹脂(A)、ブロックポリイソシアネート樹脂(B)、及び金属アルコキシド系化合物又は金属キレート系化合物(C)含有することを特徴とする製罐塗料用樹脂組成物。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジフェノール酸を原料の酸成分として有する水酸基含有ポリエステル樹脂(A)、ブロックポリイソシアネート硬化剤(B)、及び金属アルコキシド系化合物又は金属キレート系化合物(C)を含有することを特徴とする製罐塗料用樹脂組成物。
【請求項2】
全樹脂固形分中の質量比率が、前記水酸基含有ポリエステル樹脂(A)が50〜95質量%、ブロックポリイソシアネート硬化剤(B)が3〜20質量%、金属アルコキシド系化合物又は金属キレート系化合物(C)の総量が0.01〜5質量%である請求項1に記載の製罐塗料用樹脂組成物。
【請求項3】
更に、有機顔料及び/又は無機顔料(D)を含有する請求項1又は2に記載の製罐塗料用樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料缶、食缶等の缶胴及び蓋の缶用塗料に使用される塗料用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飲料缶、食缶等の缶胴及び蓋の内面側には、エポキシ−フェノール系塗料、エポキシ−アミノ系塗料、エポキシ−アクリル系塗料等のエポキシ系塗料や、ポリエステル−フェノール系塗料、ポリエステル−アミノ系塗料等のポリエステル系塗料、及び塩化ビニル系塗料が広く使用されている。
【0003】
しかし、最近の研究でエポキシ樹脂の原料であるビスフェノールAがエストロゲン作用や胎児、乳幼児の脳に影響を与える可能性があるとの報告がなされている。また塩化ビニル系塗料においては、安定剤の問題や焼却時にダイオキシンが発生する問題がある。フェノール樹脂やアミノ樹脂等の原料として用いられ、塗料中に残存するホルムアルデヒドは、発ガン性など人体への有害性があり、また内容物のフレーバー性へ悪影響を与えることが知られている。
【0004】
このような各種人体への悪影響の懸念から、これらの原料を用いない塗料が市場から要望されているが、缶用途として満足する性能が得られないのが実情である。
【0005】
これらの原料を用いない塗料系として、高分子線状ポリエステル樹脂を主樹脂とし、硬化剤にイソシアネートを用いた塗料が挙げられる。高分子線状ポリエステル樹脂系塗料は、下地である金属材との密着性、塗膜の風味保持性、塗膜硬度に優れるという特徴を持っている。
【0006】
例えば特許文献1にはテレフタル酸とプロピレングリコールを主たるモノマーとしたポリエステル樹脂に対し、ブロックポリイソシアネートを硬化剤として用いることで、環境性・安全性とフレーバー性に優れる塗料用樹脂組成物が開示されている。
【0007】
また、特許文献2には、酸価≧15mgKOH/g、ヒドロキシル価20〜300mgKOH/g、および重量平均分子量Mw>15000g/molを有するポリエステルポリオールと、ブロックポリイソシアネート硬化剤からなる塗料組成物が提案され、加工性、衛生性に優れた塗膜が形成できるという記載がある。
【0008】
しかしながら、ポリエステルとブロックポリイソシアネートを反応させた塗膜は内容物による耐食性に劣り、腐食性の強い内容物を保管する際に腐食が発生する問題点を抱えている。
【0009】
耐食性に優れたポリエステル系樹脂組成物の例として、特許文献3には、ジフェノール酸を必須成分とするポリエステル樹脂、フェノール樹脂、金属アルコキシド系化合物及び又は金属キレート系化合物からなる塗料組成物が提案され、塗膜の加工性、耐レトルト性、耐食性が向上しているとの記載がある。しかし、これはホルムアルデヒドを含むフェノール樹脂を原料として用いており、また特に酸性アルコール飲料における耐食性が十分でない。
【0010】
【特許文献1】特開2004−359759号公報
【特許文献2】特開2006−169535号公報
【特許文献3】特開2012−031221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、特に飲料缶、食缶等の缶胴及び蓋の塗料に使用され、塗膜の加工性、耐レトルト性及び衛生性に優れることに加えて、特に耐食性、耐衝撃性に優れ、且つ、ビスフェノールA及びホルムアルデヒドを原料として使用しない製罐塗料用樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、ジフェノール酸を成分とする水酸基含有ポリエステル樹脂(A)、ブロックポリイソシアネート樹脂(B)、及び金属アルコキシド系化合物又は金属キレート系化合物(C)を硬化反応させ、塗膜の加工性、耐レトルト性及び衛生性に優れることに加えて、特に耐食性、耐衝撃性に優れた性能を有する食缶、飲料缶の缶胴又は蓋の缶用塗料に用いられる製罐塗料用樹脂組成物を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
即ち、本発明は、ジフェノール酸を原料の酸成分として有する水酸基含有ポリエステル樹脂(A)、ブロックポリイソシアネート樹脂(B)、及び金属アルコキシド系化合物又は金属キレート系化合物(C)含有することを特徴とする製罐塗料用樹脂組成物を提供することにある。
【発明の効果】
【0014】
本発明の製罐塗料用樹脂組成物は、特に飲料缶・食品缶等の缶胴又は蓋の特に内面側に用いられ、ビスフェノールA及びホルムアルデヒドを含有せず、加工性、耐レトルト性、衛生性、特に耐食性、耐衝撃性に優れた被膜を形成することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の製罐塗料用樹脂組成物は、ジフェノール酸を原料の酸成分として有する水酸基含有ポリエステル樹脂(A)、ブロックポリイソシアネート樹脂(B)、及び金属アルコキシド系化合物又は金属キレート系化合物(C)を含有することを特徴とする製罐塗料用樹脂組成物に関する。以下、本発明の組成物について更に詳細に説明する。
【0016】
本発明の製罐塗料用樹脂組成物に使用するジフェノール酸を原料の酸成分として有する水酸基含有ポリエステル樹脂(A)は、数平均分子量が3,000〜100,000、ガラス転移温度が0℃〜100℃であることが好ましい。尚、数平均分子量は、GPCのポリスチレン換算による数平均分子量である。
【0017】
前記水酸基含有ポリエステル樹脂(A)は、多塩基酸成分と多価アルコール成分とをエステル化反応させたものであればよい。多塩基酸成分としては、例えば、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、フマル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸などの1種以上の二塩基酸及び、これらの酸の低級アルキルエステル化物が主として用いられ、必要に応じて、安息香酸、クロトン酸、p−t−ブチル安息香酸などの一塩基酸、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、無水ピロメリット酸などの3価以上の多塩基酸などが併用される。
【0018】
多価アルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチルペンタンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどのニ価アルコールが主に用いられ、さらに必要に応じてグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの3価以上の多価アルコールを併用することができる。これらの多価アルコールは単独で、又は2種以上を混合して使用することが出来る。
【0019】
前記水酸基含有ポリエステル樹脂(A)中のジフェノール酸の導入量としては、0.1〜10質量%が好ましい。0.1質量%より低いと硬化性、耐食性の向上効果が得られず、また10質量%を超えると硬化が進み過ぎ、加工性が劣るようになる。
【0020】
本発明の製罐塗料用樹脂組成物に用いるジフェノール酸を原料の酸成分として有する水酸基含有ポリエステル樹脂(A)は、数平均分子量が3,000〜100,000であることが好ましく、より好ましくは6,000〜30,000である。ガラス転移温度は、0℃〜100℃であることが好ましく、より好ましくは、10〜90℃であり、更に好ましくは30〜60℃である。数平均分子量が3,000より低いと加工性が悪くなり、100,000より高いと塗料化時の粘度が高くなり適切な塗装ができなくなる。また、ガラス転移温度が0℃より低いと水蒸気、酸素等のバリアー性が劣るために塗膜の耐食性が劣り、またブロッキング性も劣るようになる。ガラス転移温度が100℃より高いと、塗膜が硬くなり加工性が悪くなる。
【0021】
市販品としては、例えば、東洋紡績(株)社製のバイロンGKY622、GK632、GK642などが挙げられる。
【0022】
本発明の製罐塗料用樹脂組成物に用いるブロックポリイソシアネート樹脂(B)としては、以下のポリイソシアネートを使用することができる。使用し得るポリイソシアネートとしては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジシソシアネート、キシレン−1,4−ジイソシアネート、キシレン−1,3−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2−ニトロジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、2,2’−ジフェニルプロパン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ナフチレン−1,4ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシジフェニル−4,4’−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、ポリフェニレン、ポリメチレンポリイソシアネート、クルードトリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、デカメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート等のジイソシアネート、及び前記イソシアネートのビウレット体、ウレトジオン変性体、カルボジイミド変性体、イソシアヌレート変性体、ウレトンイミン変性体、ポリオールとのアダクト体、これらの混合変性体が挙げられる。
【0023】
また、上記ポリイソシアネートと、ポリオール、ポリアミン等の含活性水素化合物とからなるプレポリマー、変性体、誘導体、混合物等のウレタン前駆体の形で用いることもできる。好適な硬化剤は、脂肪族系及び/又は脂環式イソシアネートであり、特にヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)のトリマー(イソシアヌレート体)を好適に用いることができる。
【0024】
本発明の製罐塗料用樹脂組成物においては、イソシアネート硬化剤成分の末端NCO基をブロック化処理することが好ましい。ブロック剤としては、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、ブチルフェノール等のフェノール系化合物、2−ヒドロキシピリジン、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ベンジルアルコール、メタノール、エタノール,n−ブタノール、イソブタノール、2−エチルヘキサノール等のアルコール系化合物、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアエトン等の活性メチレン系化合物、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等のメルカプタン系化合物、アセトアニリド、酢酸アミド等の酸アミド系化合物、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム等のラクタム系化合物、イミダゾール、2−メチルイミダゾール等のイミダゾール系化合物、尿素、チオ尿素、エチレン尿素等の尿素系化合物、ホルムアミドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトンオキシム、メチルエチルケトオキシム、メチルイソブチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム系化合物、ジフェニルアニリン、アニリン、カルバゾール、エチレンイミン、ポリエチレンイミン等のアミン系化合物が挙げられる。これらは単独で或いは2種以上を混合して使用することができる。
【0025】
本発明の製罐塗料用樹脂組成物に使用することの出来る金属アルコキシド系化合物又は金属キレート系化合物(C)は、ジフェノール酸を原料の酸成分として有する水酸基含有ポリエステル樹脂(A)とブロックポリイソシアネート樹脂(B)の硬化反応を触媒し、架橋反応を促進させる。更に、各々の樹脂の官能基と金属アルコキシド系化合物又は金属キレート系化合物(C)の間で、架橋反応が進行する。塗膜中の官能基架橋構造に金属が組み込まれることで、被膜の強度が向上し、結果として耐衝撃性や耐食性が飛躍的に向上する機能を付与するものである。金属アルコキシド系化合物又は金属キレート系化合物(C)としては、ジルコニウム、アルミニウム、チタン、スズなどのアルコキシド金属化合物や、アセト酢酸が金属に配位した金属キレート化合物が特に好ましい。
【0026】
本発明の製罐塗料用樹脂組成物の全樹脂固形分中の質量比率は、ジフェノール酸を原料の酸成分として有する水酸基含有ポリエステル樹脂(A)が50〜95質量%、ポリイソシアネート硬化剤(B)が3〜20質量%、金属アルコキシド系化合物又は金属キレート系化合物(C)の総量が0.01〜5質量%であることが好ましい。前記水酸基含有ポリエステル樹脂(A)の比率が50質量%より低いと塗膜の伸びが不足する為に加工性が悪化し、95質量%より高いと硬化性が不足し、耐レトルト白化性が劣るようになる。金属アルコキシド系化合物、又は金属キレート系化合物(C)の配合比率は、全固形分中で0.01〜5質量%を含有することが好ましい。金属アルコキシド系化合物、又は金属キレート系化合物(C)の含有量が、0.01質量%よりも低いと期待する耐衝撃性、耐食性の効果が得られず、5質量%を超えると塗膜が硬くなり加工性が劣るのに加え、塗料が増粘又はゲル化するなどの不具合が生じる。
【0027】
本発明の製罐塗料用樹脂組成物に使用することの出来る有機顔料及び/又は無機顔料(D)としては、例えば、クロム酸塩(黄鉛、クロムバーミリオン)フエロシアン化物(紺青)、硫化物(カドミウムエロー、カドミウムレッド)、酸化物(酸化チタン、ベンガラ、鉄黒、酸化亜鉛)硫酸塩(硫酸バリウム、硫酸鉛)、珪酸塩(群青、珪酸カルシウム)、炭酸塩(炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム)燐酸塩(コバルトバイオレット)金属粉末(アルミニウム粉末、ブロンズ)炭素(カーボンブラック)の如き無機顔料、アゾ系(ベンジジンイエロー、ハンザエロー、バルカンオレンジ、パーマネントレッドF5R、カーミン6B、レーキレッドC、クロモフタールレッド、クロモフタールエロー)、フタロシアニリン系(フタロシアニンブルー、フタロシアニリングリーン)、建染染料系(インダスレンブルー、チオインジゴボルドー)染付レーキ系(エオシンレーキ、キノリンエロー、ローダミンレーキ、メチルバイオレットレーキ)、キナクドリン系(シンカシアレッド、シンカシアバイオレット)ジオキジシン系(PVファストバイオレットBL)等如き有機顔料を挙げることができ、これらを単独あるいは混合して用いてよい。これらの顔料は、塗膜を着色し意匠性を付与することを可能とし、求められるデザインに対し、任意の有機顔料、無機顔料を添加することができる。
【0028】
使用する有機顔料及び/又は無機顔料(D)の配合比率は、全固形分中で対して、0.1から70質量部%を含有することが好ましい。
【0029】
本発明の製罐塗料用樹脂組成物は、特に缶用塗料に好ましく使用できる。更に、アルミニウム、錫メッキ鋼板、あるいは、前処理した金属、更には、スチールの如き、各種の金属素材への被覆用、木材やフィルムの如き他の素材や加工品への被覆剤として用いてもよい。以下、特に缶用塗料としての使用について述べる。
【0030】
本発明の製罐塗料用樹脂組成物を用いた塗料に使用し得る溶剤としては、特に制限はないが、たとえばトルエン、キシレン、ソルベッソ#100、ソルベッソ#150等の芳香族炭化水素系、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、ギ酸エチル、プロピオン酸ブチル等のエステル系の各種有機溶剤が挙げられる。また水混和性有機溶剤としてメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、シクロハキサノン等のケトン系、エチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、エチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、モノブチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル等のグリコールエーテル系の各種有機溶剤が挙げられる。
【0031】
本発明の樹脂組成物を使用した缶用塗料には、従来公知の滑剤、消泡剤、レベリング剤、滑剤、顔料等を添加することが可能である。これらはフィルムの乾燥条件、ラミネート条件により適切なものを併用することが可能である。
【0032】
本発明の製罐塗料用樹脂組成物を使用した缶用塗料は、エアースプレー、エアレススプレーまたは静電スプレーの如き、各種のスプレー塗装、浸漬塗装、ロールコーター塗装、グラビアコーターならびに電着塗装等公知の手段により、鋼板、缶用アルミニウム板等の金属基材やPETペットフィルム等の塗料として塗装することが出来る。塗布量は、乾燥塗膜厚では、0.1〜20μm程度が好ましい。
【0033】
また、本発明の製罐塗料用樹脂組成物は、缶用塗料として使用する場合には、100〜280℃、1秒〜30分間なる範囲内で焼付けされることが好ましく、この範囲であると性能良好な硬化塗膜を形成することが出来る。
【実施例】
【0034】
以下、本発明を実施例にて具体的に説明する。例中「部」及び「%」は、「質量部」、「質量%」を各々表わす。
尚、本発明におけるGPCによる数平均分子量(ポリスチレン換算)の測定は東ソー(株)社製HLC8220システムを用い以下の条件で行った。
分離カラム:東ソー(株)製TSKgelGMHHR−Nを4本使用。
カラム温度:40℃。移動層:和光純薬工業(株)製テトラヒドロフラン。
流速:1.0ml/分。
試料濃度:1.0質量%。試料注入量:100マイクロリットル。検出器:示差屈折計。
また、ガラス転移温度(Tg)の測定は、示差雰囲気下、冷却装置を用い温度範囲−80〜450℃、昇温温度10℃/分の条件で走査を実施した。
【0035】
実施合成例1(ジフェノール酸を必須の成分としたポリエステル樹脂(A)の合成)
酸成分として、テレフタル酸50質量部、イソフタル酸112質量部、ジフェノール酸、4.9質量部、多価アルコール成分として2−エチル−2−ブチル−1,3−ブタンジオール50質量部、1,4−ブタンジオール99質量部、1,4−シクロヘキサンジメタノール48質量部、チタンテトラブトキシド0.07質量部を2Lフラスコに仕込み、4時間かけて220℃まで徐々に昇温し、水を留出させエステル化を行った。所定量の水を留出させた後、30分かけて10mmHgまで減圧重合行うとともに温度を250℃まで昇温し、更にこのまま1mmHg以下で50分間後期重合を行った。ついで減圧重合を止めて、窒素気流下で220℃まで冷却し、無水トリメリット酸1.9質量部を添加し、220℃で30分攪拌しカルボキシ基変性(後付加)を行った後、樹脂を取り出し数平均分子量22,000、酸価5(mgKOH/g)、ガラス転移温度30℃のポリエステル樹脂(A−1)を得た。この後、100℃以下まで冷却し、シクロヘキサノン/ソルベッソ150=50/50の混合溶液で希釈し、不揮発分40%のポリエステル樹脂(A−1)溶液を得た。
【0036】
表1、2に示した割合(表中の数字は固形分質量比率を示す)で下記の原料を電子天秤にて計量・混合後、分散攪拌機を用いて25℃の温度下、3000rpmの回転数で1分間攪拌し、実施例1〜10、比較例1〜6の塗料を作製した。
尚、比較例5については、ブロックポリイソシアネート樹脂(B)の代わりに、フェノール樹脂(E−1)とエポキシ樹脂(E−2)を使用した。比較例6については、ジフェノール酸未使用のポリエステル樹脂(A−5)と、ブロックポリイソシアネート樹脂として
MEKオキシムブロックイソホロンジイソシアネートトリマー(B−3)を使用した。
(1)ポリエステル樹脂(A−1)ジフェノール酸を酸成分として有する水酸基含有ポリエステル樹脂
数平均分子量22,000、酸価5(mgKOH/g)、ガラス転移温度30℃、シクロヘキサノン/ソルベッソ150=50/50混合溶液の40%溶解品。
(2)ジフェノール酸変性ポリエステル樹脂(A−2)=バイロンGK−632、東洋紡績(株)製
数平均分子量16,000、酸価4(mgKOH/g)、ガラス転移温度52℃、シクロ
ヘキサノン/ソルベッソ150=50/50混合溶液の40%溶解品。
(3)ジフェノール酸変性ポリエステル樹脂(A−3)=バイロンGK−642、東洋紡績(株)製
数平均分子量18,000、酸価1(mgKOH/g)、ガラス転移温度82℃、シクロ
ヘキサノン/ソルベッソ150=50/50混合溶液の40%溶解品。
(3)ジフェノール酸未使用のポリエステル樹脂(A−4)=バイロンGK−360、東洋紡績(株)製
数平均分子量16,000、酸価5(mgKOH/g)、ガラス転移温度56℃、シクロ
ヘキサノン/ソルベッソ150=50/50混合溶液の40%溶解品。
(4)ジフェノール酸未使用のポリエステル樹脂(A−5)=バイロンGK−880、東洋紡績(株)製
数平均分子量18,000、酸価2(mgKOH/g)、ガラス転移温度84℃、シクロ
ヘキサノン/ソルベッソ150=50/50混合溶液の40%溶解品。
(5)ブロックポリイソシアネート樹脂(B−1)=Desmodur VP/LS 2078/2、Bayer製
ε−カプロラクタムブロックイソホロンジイソシアネート
(6)ブロックポリイソシアネート樹脂(B−2)=Desmodur BL 3475/1、Bayer製
活性メチレン系ブロックヘキサメチレンジイソシアネート
(7)ブロックポリイソシアネート樹脂(B−3)=スミジュール BL 3175、住化バイエルウレタン製
MEKオキシムブロックイソホロンジイソシアネートトリマー
(8)金属アルコキシド化合物(C−1)=B−1、日本曹達(株)製
テトラ−n−ブトキシチタン
(9)金属アルコキシド化合物(C−2)=ZA−65、マツモトファインケミカル(株
)製
ジルコニウムブトキシド
(10)金属キレート化合物(C−3)=ZC−150、マツモトファインケミカル(株)製
ジルコニウムアセチルアセトンキレート
(11)フェノール樹脂(E−1)=TD2495、DIC(株)製
パラクレゾール型フェノール樹脂、50%ノルマルブタノール溶液
(12)エポキシ樹脂(E−2)=エピクロンN−660、DIC(株)製
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、50%メチルエチルケトン溶液
(13)硬化触媒(E−3)NACURE5925、楠本化成(株)製
ドデシルベンゼンスルホン酸(触媒)、25%溶液
【0037】
〔評価サンプルの調製〕
アルミ5182板上に、前記各実施例1〜10及び比較例1〜6の缶用塗料を、乾燥膜厚が10μmとなるようにコーターにて塗装後、素材の最高到達温度250℃で23秒間焼付け塗装板を得た。
【0038】
〔評価項目〕
1−1.鉛筆硬度試験
試験塗装板をJIS−S−6006に規定された高級鉛筆を用いJIS−K−5400に準じて鉛筆硬度を測定した。
【0039】
1−2.加工性試験
試験塗装板を直径約25mm×高さ約17mmのキャップ形状に打抜き加工してからネジ加工したものを、125℃/30分間のレトルト処理を行い、塗膜の割れと剥離の程度を下記基準により目視で判定した。○以上が実用レベル。
◎:割れ、剥離が全く無い。
○:若干割れ、剥離がある。
△:割れ、剥離がやや多い。
×:割れ、剥離が著しい。
【0040】
1−3.耐水性試験
試験塗装板を125℃/30分間のレトルト処理した後、塗膜の白化の程度を目視で判定した。○以上が実用レベル。
◎:白化が全くない。
○:若干白化が認められる
△:白化がやや多い。
×:白化が著しい。
【0041】
1−4.密着性試験
試験塗装板を直径約25mm×高さ約17mmのキャップ形状に打抜き加工してからネジ加工したサンプルを作成する。ネジ切部にセロハン粘着テープを貼り付け、これをはがした後の塗膜の剥離状態を目視で判定した。原型(処理前)と125℃/30分間のレトルト処理後で、塗膜の割れと剥離の程度を下記基準により目視で判定した。○以上が実用レベル。
◎:剥離が全く無い。
○:若干剥離がある。
△:剥離がやや多い。
×:剥離が著しい。
【0042】
1−5.耐食性
試験塗装板をエタノール15%、塩化ナトリウム1.5%、クエン酸1.5%、リンゴ酸1.5%水溶液に24時間、55度で浸漬し、塗膜の白化及びブリスター発生状態を目視で判定した。○以上が実用レベル。
◎:ブリスター及び白化がない
○:ブリスター及び白化が少しある。
△:ブリスター及び白化がある。
×:塗膜の剥離がある。
【0043】
1−6.耐衝撃性
塗膜を外側にして塗板を2つ折にした試験片の間にブリキ板を3枚はさんで折り曲げ加工した後に、水道水中で120℃、90分のレトルト処理を施したものについて、折り曲げ先端部に6Vの電圧を3秒通電した際の加工部2cm幅の電流値(mA)を測定し、次に示す方法で評価した。○以上が実用レベル。
◎:通電量が15mA未満である。
○:通電量が15mA以上30mA未満である。
△:通電量が30mA以上45mA未満である。
×:通電量が45mA以上である。
【0044】
評価結果を表1、2に示す。表中の数字は、固形重量比率を表す。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
実施例に述べる製罐塗料用樹脂組成物では、鉛筆硬度、加工性、耐水性、密着性、耐食性、耐衝撃性共に実用上問題を生じないバランスのよい合格品が得られた。比較例の製罐塗料用樹脂組成物においては、評価項目中の何れかが欠如した結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の樹脂組成物は、発がん性、エストロゲン作用等の点で人体に悪影響を及ぼす可能性のあるホルムアルデヒド及びビスフェノールAを含有せずして、加工性、塗膜硬度、耐水性及び硬化性が良好で更に耐食性、耐衝撃性に優れる各種缶用の塗料として広く活用できる。