【解決手段】ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂と結合し得る官能基を有するオレフィン系及び/又はスチレン系の変性熱可塑性エラストマー、及び、オレフィン系及び/又はスチレン系の未変性熱可塑性エラストマーを含有する樹脂組成物であり、ポリアミド樹脂からなる連続相Aと、連続相A内に分散されたポリオレフィン樹脂からなる分散相aと、分散相a内に分散されたポリアミド樹脂からなる微分散相a
ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、前記ポリアミド樹脂と結合し得る官能基を有する変性エラストマー、及び前記官能基を実質的に有しない未変性エラストマーを含有する樹脂組成物であり、
前記変性エラストマーが、変性オレフィン系熱可塑性エラストマー及び変性スチレン系熱可塑性エラストマーからなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記未変性エラストマーが、オレフィン系熱可塑性エラストマー及びスチレン系熱可塑性エラストマーからなる群から選択される少なくとも1種であり、かつ、前記ポリオレフィン樹脂以外のエラストマーであり、
前記ポリアミド樹脂からなる連続相Aと、連続相A内に分散された前記ポリオレフィン樹脂からなる分散相aと、分散相a内に分散された前記ポリアミド樹脂からなる微分散相a1’及び前記未変性エラストマーからなる微分散相a2’とを備え、
前記変性エラストマーの少なくとも一部が、連続相A内、微分散相a1’内、連続相Aと分散相aとの界面、及び分散相aと微分散相a1’との界面に存在し、
電子顕微鏡で観察される樹脂相分離断面構造において、最大直径が10μm以上である分散相aの断面積(該分散相a内の他の相の断面積を含む)の合計が全ての分散相aの断面積の合計に対して25%以上である、
ことを特徴とする樹脂組成物。
電子顕微鏡で観察される樹脂相分離断面構造において、全ての分散相aの断面積(該分散相a内の他の相の断面積を含む)の合計が、樹脂組成物の全断面積に対して20〜80%であることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。本発明の樹脂組成物は、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、前記ポリアミド樹脂と結合し得る官能基を有する変性エラストマー、及び前記官能基を実質的に有しない未変性エラストマーを含有する樹脂組成物である。
【0019】
<ポリアミド樹脂>
本発明に係るポリアミド樹脂は、アミド結合(−NH−CO−)を介して複数のモノマーが重合されてなる重合体であり、本発明の樹脂組成物において、連続相A及び微分散相a
1’を形成する樹脂である。
【0020】
前記ポリアミド樹脂を構成するモノマーとしては、アミノ酸、ラクタム、ジアミン及びジカルボン酸が挙げられる。前記アミノ酸としては、6‐アミノカプロン酸、11‐アミノウンデカン酸、12‐アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸等が挙げられ、前記ラクタムとしては、ε‐カプロラクタム、ウンデカンラクタム、ω−ラウリルラクタム等が挙げられる。また、前記ジアミンとしては、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,13−ジアミノトリデカン、1,14−ジアミノテトラデカン、1,15−ジアミノぺンタデカン、1,16−ジアミノヘキサデカン、1,17−ジアミノヘプタデカン、1,18−ジアミノオクタデカン、1、19−ジアミノノナデカン、1,20−ジアミノエイコサン、2−メチル−1,5−ジアミノペンタン、2−メチル−1,8−ジアミノオクタン等の脂肪族ジアミン;シクロヘキサンジアミン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン等の脂環式ジアミン;キシリレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン等の芳香族ジアミン等が挙げられる。さらに、前記ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシリン酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、オクタデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。これらのモノマーとしては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
このようなポリアミド樹脂としては、ポリアミド11(PA11)、ポリアミド6(PA6)、ポリアミド66(PA66)、ポリアミド610(PA610)、ポリアミド612(PA612)、ポリアミド12(PA12)、ポリアミド6T(PA6T)、ポリアミド6I、ポリアミド9T、ポリアミドM5T、ポリアミド1010(PA1010)、ポリアミド1012(PA1012)、ポリアミド10T、ポリアミドMXD6、ポリアミド6T/66、ポリアミド6T/6I、ポリアミド6T/6I/66、ポリアミド6T/2M−5T、ポリアミド9T/2M−8T等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
これらの中でも、本発明に係るポリアミド樹脂としては、PA11、PA12、PA6、PA66、PA610、PA1010及びPA1012のうちの少なくとも1種であることが好ましく、PA11であることがより好ましい。
【0023】
なお、本発明において、PA11とは、前記モノマーとして炭素数が11であるモノマーが重合されてなるポリアミド樹脂であって、炭素数が11であるアミド結合含有単位を主鎖に含む樹脂である。前記炭素数が11であるモノマーとしては、11−アミノウンデカン酸、ウンデカンラクタムが好ましく、中でも、11−アミノウンデカン酸をモノマーとして単独重合させたポリアミド樹脂は、該11−アミノウンデカン酸がヒマシ油から得られる化合物であるため、環境保護の観点(特にカーボンニュートラルの観点)から望ましい。また、PA11としては、炭素数が11未満であるモノマーに由来する構成単位、炭素数が12以上であるモノマーに由来する構成単位、及び他の構成単位を単独で又は2種以上を組み合わせて含有していてもよいが、前記炭素数が11であるモノマーに由来する構成単位の含有量が、PA11中の全構成単位のうちの50モル%以上であることが好ましく、100モル%であることがより好ましい。
【0024】
さらに、本発明において、PA6とは、炭素数が6であるモノマーのうち、ε−カプロラクタムの単独重合体であり、PA66とは、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との共重合体であり、PA6Tとは、ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸との共重合体である。
【0025】
また、本発明に係るポリアミド樹脂の重量平均分子量としては、特に限定されないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による重量平均分子量(ポリスチレン換算)で、5,000〜100,000であることが好ましく、7,500〜70,000であることがより好ましく、10,000〜50,000であることがさらに好ましい。
【0026】
本発明に係るポリアミド樹脂の含有量としては、前記ポリアミド樹脂、前記ポリオレフィン樹脂、前記変性エラストマー及び前記未変性エラストマーの合計質量に対して50〜70質量%であることが好ましく、55〜65質量%であることがより好ましい。前記含有量が前記下限未満である場合には前記ポリオレフィン樹脂からなる連続相が形成される傾向にあり、他方、前記上限を超える場合には前記ポリオレフィン樹脂からなる分散相aの最大直径が小さくなる傾向にある。
【0027】
<ポリオレフィン樹脂>
本発明に係るポリオレフィン樹脂は、本発明の樹脂組成物において、分散相aを形成する樹脂である。
【0028】
前記ポリオレフィン樹脂としては、特に限定されるものではなく、種々のポリオレフィンを用いることができ、例えば、エチレン単独重合体(ポリエチレン)、プロピレン単独重合体(ポリプロピレン)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体等が挙げられる。前記α−オレフィンとは、通常、炭素数3〜20の不飽和炭化水素化合物であり、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等が挙げられる。
【0029】
このようなポリオレフィン樹脂としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよく、中でも、樹脂組成物の剛性がより向上する傾向にあるという観点から、プロピレンに由来する構成単位を主構成単位として有するポリプロピレン樹脂及び/又はエチレンに由来する構成単位を主構成単位として有するポリエチレン樹脂であることが好ましく、ポリプロピレン樹脂であることがより好ましい。また、このようなポリプロピレン樹脂及びポリエチレン樹脂としては、プロピレン又はエチレンに由来する構成単位の含有量が、それぞれ、ポリプロピレン樹脂又はポリエチレン樹脂中の全構成単位のうちの50モル%以上であることが好ましく、100モル%であることがより好ましい。前記含有量が前記下限未満である場合には、樹脂組成物の剛性が低下する傾向にある。
【0030】
本発明に係るポリオレフィン樹脂の重量平均分子量としては、特に限定されないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による重量平均分子量(標準ポリスチレン換算、温度:140〜150℃)で、10,000〜500,000であることが好ましく、50,000〜450,000であることがより好ましく、100,000〜400,000であることがさらに好ましい。
【0031】
本発明に係るポリオレフィン樹脂の含有量としては、前記ポリアミド樹脂、前記ポリオレフィン樹脂、前記変性エラストマー及び前記未変性エラストマーの合計質量に対して10〜35質量%であることが好ましく、15〜30質量%であることがより好ましい。前記含有量が前記下限未満である場合には前記ポリオレフィン樹脂からなる分散相aの最大直径が小さくなる傾向にあり、他方、前記上限を超える場合には前記ポリオレフィン樹脂からなる連続相が形成される傾向にある。
【0032】
なお、本発明に係るポリオレフィン樹脂は、本発明に係るポリアミド樹脂と相容性がなく、かつ、前記ポリアミド樹脂と結合し得る官能基を実質的に有しないという点において、後述する変性エラストマーとは異なる。また、本発明の樹脂組成物において、後述する前記官能基を実質的に有しない未変性エラストマーとしては、本発明に係るポリオレフィン樹脂以外のエラストマーであることが必要である。本発明において、「前記ポリアミド樹脂と結合し得る官能基を実質的に有しない」樹脂又はエラストマーとは、該樹脂又はエラストマーにおける前記官能基の割合が0.1質量%以下であることをいい、好ましくは0質量%であることをいう。
【0033】
<変性エラストマー>
本発明に係る変性エラストマーは、前記ポリアミド樹脂と結合し得る官能基を有するエラストマーであり、本発明の樹脂組成物において、前記ポリアミド樹脂と前記ポリオレフィン樹脂とを相容化させる相容化剤として機能する。
【0034】
本発明の樹脂組成物において、前記変性エラストマーとしては、変性オレフィン系熱可塑性エラストマー及び変性スチレン系熱可塑性エラストマーからなる群から選択される少なくとも1種であることが必要である。前記変性オレフィン系熱可塑性エラストマーとは、前記官能基を有するオレフィン系熱可塑性エラストマーであり、前記変性スチレン系熱可塑性エラストマーとは、前記官能基を有するスチレン系熱可塑性エラストマーである。
【0035】
前記オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ぺンテン、1−オクテン等のα−オレフィンのうちの2種以上のモノマーの共重合体が挙げられ、これらの共重合体うちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、前記オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、樹脂組成物の剛性及び耐衝撃性がより向上する傾向にあるという観点から、エチレン又はプロピレンと炭素数3〜8のα−オレフィンとの共重合体、すなわち、エチレンと炭素数3〜8のα−オレフィンとの共重合体、及び、プロピレンと炭素数4〜8のα−オレフィンとの共重合体のうちの少なくとも1種であることが好ましい。このようなオレフィン系熱可塑性エラストマーとして、より具体的には、例えば、エチレン−プロピレン共重合体(EPR)、エチレン−1−ブテン共重合体(EBR)、エチレン−1−ペンテン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体(EOR)、プロピレン−1−ブテン共重合体(PBR)、プロピレン−1−ペンテン共重合体、プロピレン−1−オクテン共重合体(POR)が挙げられる。
【0036】
前記スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系化合物と共役ジエン化合物又は前記α−オレフィンとのブロック共重合体、及びその水添体が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。前記スチレン系化合物としては、例えば、スチレン;α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン等のアルキルスチレン;p−メトキシスチレン;ビニルナフタレンが挙げられる。また、前記共役ジエン化合物としては、ブタジエン、イソプレン、ピぺリレン、メチルぺンタジエン、フェニルブタジエン、3,4−ジメチル−1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン等が挙げられる。このようなスチレン系熱可塑性エラストマーとして、より具体的には、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレン共重合体(SEPS)が挙げられる。
【0037】
また、前記ポリアミド樹脂と結合し得る官能基としては、前記ポリアミド樹脂と共有結合し得る官能基、より具体的には、例えば、酸無水物基(−CO−O−OC−)、カルボキシル基(−COOH)、エポキシ基[−C
2O(2つの炭素原子と1つの酸素原子とからなる三員環構造)]、オキサゾリン基(−C
3H
4NO)、イソシアネート基(−NCO)が挙げられる。これらの中でも、反応性が高い傾向にあるという観点から、前記官能基としては、酸無水物基が好ましい。
【0038】
また、前記官能基を前記オレフィン系熱可塑性エラストマー及びスチレン系熱可塑性エラストマーに付与する方法としては特に制限されず、公知の方法を適宜用いることができる。例えば、前記エラストマーに前記酸無水物基を付与する方法としては、酸無水物を前記エラストマーのモノマーとしてさらに添加する方法が挙げられ、前記酸無水物としては、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ブテニル無水コハク酸が挙げられる。前記酸無水物としては、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよく、中でも、反応性が高い傾向にあるという観点から、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸が好ましく、無水マレイン酸がより好ましい。
【0039】
本発明に係る変性エラストマーとしては、具体的には、無水マレイン酸変性EPR、無水マレイン酸変性PBR、無水マレイン酸変性EBR、無水マレイン酸変性EOR、無水マレイン酸変性POR等の無水マレイン酸変性オレフィン系熱可塑性エラストマー;無水マレイン酸変性SEBS、無水マレイン酸変性SBS、無水マレイン酸変性SIS、無水マレイン酸変性SEPS等の無水マレイン酸変性スチレン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。このような変性エラストマーとしては、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、本発明に係る変性エラストマーにおいて、前記官能基の割合としては、0.5質量%以上であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましい。
【0040】
これらの中でも、本発明に係る変性エラストマーとしては、変性オレフィン系熱可塑性エラストマーであることが好ましく、反応性が高い、前記ポリオレフィン樹脂とより相容しやすい、樹脂組成物の剛性及び耐衝撃性がより向上する傾向にあるといった観点から、無水マレイン酸変性PBR、無水マレイン酸変性EBR及び無水マレイン酸変性EORのうちの少なくとも1種であることがより好ましい。
【0041】
また、本発明に係る変性エラストマーの重量平均分子量としては、特に限定されないが、重量平均分子量が大きい方が樹脂組成物の耐衝撃性が向上する傾向にあるという観点からは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による重量平均分子量(標準ポリスチレン換算、温度:140〜150℃)で、10,000〜500,000であることが好ましく、20,000〜500,000であることがより好ましく、25,000〜400,000であることがさらに好ましい。
【0042】
本発明に係る変性エラストマーの含有量としては、前記ポリアミド樹脂、前記ポリオレフィン樹脂、前記変性エラストマー及び前記未変性エラストマーの合計質量に対して5〜25質量%であることが好ましく、5〜20質量%であることがより好ましい。前記含有量が前記下限未満である場合には樹脂組成物において十分な耐衝撃性が発揮されなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超える場合には樹脂組成物において十分な剛性が発揮されなくなる傾向にある。
【0043】
<未変性エラストマー>
本発明に係る未変性エラストマーとは、前記ポリアミド樹脂と結合し得る官能基を実質的に有しないエラストマーのことをいい、本発明の樹脂組成物において、微分散相a
2’を形成する樹脂である。
【0044】
本発明の樹脂組成物において、前記未変性エラストマーとしては、オレフィン系熱可塑性エラストマー及びスチレン系熱可塑性エラストマーからなる群から選択される少なくとも1種であることが必要である。前記オレフィン系熱可塑性エラストマー及びスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、前記変性エラストマーにおいてエラストマーとして挙げたものとそれぞれ同じ物が挙げられる。これらの中でも、本発明の樹脂組成物に含有されるエラストマーとしては、前記ポリオレフィン樹脂と相容しやすい傾向にある観点から、EPR、EBR、EOR、PBR、POR、SBS、SIS、SEBS及びSEPSのうちの少なくとも1種であることが好ましく、EPR、EBR、EOR及びSEBSのうちの少なくとも1種であることがより好ましい。
【0045】
なお、本発明に係る未変性エラストマーは、前記官能基を実質的に有しないという点において、前記変性エラストマーとは異なる。また、本発明の樹脂組成物において、前記未変性エラストマーとしては、前記ポリオレフィン樹脂以外のエラストマーであることが必要である。そのため、本発明の樹脂組成物においては、前記エラストマーの中から、前記ポリオレフィン樹脂の種類に応じて含有させる未変性エラストマーを選択する。
【0046】
本発明に係る未変性エラストマーの重量平均分子量としては、特に限定されないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による重量平均分子量(標準ポリスチレン換算、温度:140〜150℃)で、5,000〜1,000,000であることが好ましく、10,000〜700,000であることがより好ましく、10,000〜500,000であることがさらに好ましい。
【0047】
本発明に係る未変性エラストマーの含有量としては、前記ポリアミド樹脂、前記ポリオレフィン樹脂、前記変性エラストマー及び前記未変性エラストマーの合計質量に対して5〜25質量%であることが好ましく、5〜20質量%であることがより好ましい。前記含有量が前記下限未満である場合には樹脂組成物において十分な耐衝撃性が発揮されなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超える場合には樹脂組成物において十分な剛性が発揮されなくなる傾向にある。
【0048】
<その他の成分>
本発明の樹脂組成物としては、剛性がさらに向上する傾向にある観点から、フィラーをさらに含有することが好ましい。本発明の樹脂組成物は、フィラーを含有させても優れた耐衝撃性を発揮することができる。
【0049】
前記フィラーとしては、無機繊維(ガラス繊維、アルミナ繊維、カーボン繊維(炭素繊維)、チタン酸カリウム繊維等);有機繊維(芳香族ポリエステル繊維、芳香族ポリアミド繊維、フッ素樹脂繊維、ポリイミド繊錐、植物性繊維等);ガラス、シリカ、黒鉛、珪酸化合物(珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、カオリン、タルク、クレー等)、金属酸化物(酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アンチモン、アルミナ等)、金属炭酸塩又は硫酸塩(カルシウム、マグネシウム、亜鉛等の炭酸塩又は硫酸塩)などからなる粒子やフレークが挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、前記フィラーとしては、炭素繊維及びガラス繊維のうちの少なくとも1種であることがより好ましい。
【0050】
また、前記フィラーとしては、樹脂組成物の剛性向上効果が高くなる傾向にある観点から、平均アスペクト比が10以上であることが好ましく、20以上であることがより好ましい。なお、本発明において、アスペクト比とは、長軸方向の長さと短軸方向の直径との比(長軸方向の長さ/短軸方向の直径)のことをいう。また、前記長軸方向の長さは最長軸の長さを、前記短軸方向の直径は前記最長軸に直行する面の最大長さを意味し、前記平均アスペクト比は、任意の100個以上のフィラーの長軸方向の長さ及び短軸方向の直径を電子顕微鏡により測定して各アスペクト比を求め、その値を平均化することにより求めることができる。
【0051】
これらのフィラーを本発明の樹脂組成物に含有せしめる場合、その含有量としては、前記ポリアミド樹脂、前記ポリオレフィン樹脂、前記変性エラストマー、前記未変性エラストマー及び前記フィラーの合計質量に対して50質量%以下であることが好ましく、3〜35質量%であることがより好ましい。前記含有量が前記下限未満である場合には、樹脂組成物の剛性が十分に向上しない傾向にあり、他方、前記上限を超える場合には、樹脂組成物の成形性が低下する傾向にある。
【0052】
また、本発明の樹脂組成物としては、前記ポリアミド樹脂と前記変性エラストマーとの反応物をさらに含有していてもよい。前記反応物とは、前記変性エラストマーが有する前記官能基が前記ポリアミド樹脂と反応することによって生じる成分である。かかる反応物を得る方法としては、特に制限されず、本発明の樹脂組成物の製造において、前記ポリアミド樹脂と前記変性エラストマーとを含む混合材料を加熱溶融混練することにより、本発明の樹脂組成物中に得ることができる。
【0053】
このような反応物が本発明の樹脂組成物に含有される場合、その含有量としては、前記ポリアミド樹脂、前記ポリオレフィン樹脂、前記変性エラストマー、前記未変性エラストマー及び前記反応物の合計質量に対して35質量%以下であることが好ましく、5〜30質量%であることがより好ましい。前記含有量が前記下限未満である場合には、樹脂組成物において十分な耐衝撃性が発揮されなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超える場合には、樹脂組成物において十分な剛性が発揮されなくなる傾向にある。
【0054】
また、本発明の樹脂組成物としては、本発明の効果を阻害しない範囲内において、必要に応じて、例えば、上記以外の他の熱可塑性樹脂、抗酸化剤、抗紫外線剤、熱安定化剤、難燃剤、難燃助剤、着色剤、抗菌剤、帯電防止剤、滑剤、離型剤、発泡剤等の添加剤のうちの1種を単独で含有していても2種以上を組み合わせて含有していてもよい。前記他の熱可塑性樹脂としては、ポリエステル系樹脂(ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリ乳酸、ポリヒドロキシアルカン酸)、ポリカーボネート樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。前記難燃剤としては、ハロゲン系難燃剤(ハロゲン化芳香族化合物等)、リン系難燃剤(窒素含有リン酸塩化合物、リン酸エステル等)、窒素系難燃剤(グアニジン、トリアジン、メラミン、及びこれらの誘導体等)、無機系難燃剤(金属水酸化物等)、ホウ素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、硫黄系難燃剤、赤リン系難燃剤等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。前記難燃助剤としては、各種アンチモン化合物、亜鉛を含む金属化合物、ビスマスを含む金属化合物、水酸化マグネシウム、粘度質珪酸塩等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。前記着色剤としては、顔料、染料等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
これらの添加剤を本発明の樹脂組成物に含有せしめる場合、その含有量としては、樹脂組成物の全量において合計で10質量%以下であることが好ましい。
【0056】
<樹脂組成物>
次いで、本発明の樹脂組成物の構造をその好適な実施形態に即して図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下の説明及び図面中、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0057】
本発明の樹脂組成物は、
図1に示すように、前記ポリアミド樹脂からなる連続相A(10)と、連続相A内に分散された前記ポリオレフィン樹脂からなる分散相a(20)と、分散相a内に分散された前記ポリアミド樹脂からなる微分散相a
1’(31)及び前記未変性エラストマーからなる微分散相a
2’(32)とを備え、前記変性エラストマーの少なくとも一部が、連続相A内(41)、微分散相a
1’内(42)、連続相Aと分散相aとの界面(43)、及び分散相aと微分散相a
1’との界面(44)に存在するものであり、かつ、電子顕微鏡で観察される樹脂相分離断面構造において、最大直径が10μm以上である分散相aの断面積(該分散相a内の他の相の断面積を含む)の合計が全ての分散相aの断面積の合計に対して25%以上であることを特徴とするものである。
【0058】
本発明において、前記樹脂組成物の相構造(樹脂相分離断面構造)は、電子顕微鏡を用いて観察することができ、このような観察方法としては、例えば、射出成形せしめた樹脂組成物の断面に100Wで1分間酸素プラズマエッチング処理を施した後、この断面を電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM、株式会社日立ハイテクマニファクチャ&サービス製、「S−4300 TYPE II」、加速電圧2kV)を用いて観察する方法が挙げられる。
【0059】
本発明に係る連続相A(10)は、前記ポリアミド樹脂からなる相である。本発明の樹脂組成物において、連続相A(10)内には、該連続相内に分散された前記ポリオレフィン樹脂からなる分散相a(20)が存在する。また、連続相A(10)内には、該連続相内に分散された変性エラストマーからなる分散相b(41)もさらに存在する。さらに、連続相A(10)内には、前記未変性エラストマーからなる分散相c(21)がさらに存在することが好ましく、前記ポリアミド樹脂と前記変性エラストマーとの反応物からなる分散相(図示せず)がさらに存在していてもよい。
【0060】
本発明に係る分散相a(20)は、前記ポリオレフィン樹脂からなる相であり、かつ、連続相A(10)内に分散している相である。本発明の樹脂組成物では、前記樹脂相分離断面構造において、最大直径が10μm以上である分散相aの断面積の合計が全ての分散相aの断面積の合計に対して25%(面積%)以上であることが必要である。最大直径が10μm以上である分散相aの占める割合が前記下限未満であると、十分な耐衝撃性が発揮されない。また、最大直径が10μm以上である分散相aの断面積の合計が全ての分散相aの断面積の合計に対して占める割合としては、25〜80%であることが好ましく、25〜70%であることがより好ましい。前記割合が前記下限未満である場合には樹脂組成物において十分な剛性が発揮されなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超える場合には分散相aを形成することが困難となる傾向にある。
【0061】
また、前記樹脂相分離断面構造において、本発明に係る分散相aの平均最大直径としては、0.1〜30μmの範囲内にあることが好ましく、0.1〜20μmの範囲内にあることがより好ましい。分散相aの平均最大直径が前記下限未満である場合には樹脂組成物において十分な剛性が発揮されなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超える場合には樹脂組成物において十分な耐衝撃性が発揮されなくなる傾向にある。
【0062】
また、本発明に係る分散相aの全含有量としては、前記樹脂相分離断面構造において、全ての分散相aの断面積(該分散相内aの他の相の断面積を含む)の合計が、樹脂組成物の全断面積に対して20〜80%(面積%)であることが好ましく、25〜70%であることがより好ましい。分散相aの含有量が前記下限未満である場合には樹脂組成物において十分な剛性が発揮されなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超える場合には樹脂組成物において十分な耐衝撃性が発揮されなくなる傾向にある。
【0063】
なお、本発明において、分散相及び後述する微分散相の断面積には、該相内にそれ以外の他の相が存在する場合にはそれらの断面積も含む。例えば、分散相aの断面積には、該分散相a内に同分散相a以外の他の相(微分散相、超微分散相等)が存在する場合にはそれらの断面積を含む。
【0064】
さらに、本発明において、分散相及び後述する微分散相の最大直径とは、該相の断面が円状である場合にはその最長径(長軸方向の長さ)のことをいい、該相の断面が円状でない場合にはその外接円の直径のことをいう。また、本発明において、分散相及び後述する微分散相の平均最大直径とは、前記電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)で観察される、10(N)箇所の互いに重ならない30μm以上×40μm以上(より好ましくは30μm×40μm〜40μm×50μm)の各微小範囲において、観察される全ての分散相(又は全ての微分散相)の最大直径をそれぞれ測定し、N箇所の全測定値を平均した値のことをいう。
【0065】
さらに、本発明において、全ての分散相aの断面積の合計に対する、最大直径が10μm以上である分散相aの断面積の合計の割合(以下、場合により「粗大分散相率」という。)とは、前記電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)で観察される、10(N)箇所の互いに重ならない30μm以上×40μm以上(より好ましくは30μm×40μm〜40μm×50μm)の各微小範囲において、観察される全ての分散相aの断面積及び最大直径を測定してその範囲内における粗大分散相率(n)をそれぞれ求め、N箇所の粗大分散相率(n)を平均した値のことをいう。
【0066】
また、本発明において、樹脂組成物の全断面積に対する全ての分散相(又は全ての微分散相)の断面積の合計の割合(以下、場合により「分散相(又は全ての微分散相)の全含有量」という。)は、前記電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)で観察される、互いに重ならない10(N)箇所の30μm以上×40μm以上(より好ましくは30μm×40μm〜40μm×50μm)の各微小範囲において、観察される全ての分散相(又は全ての微分散相)の断面積を測定してその範囲内における分散相(又は全ての微分散相)の全含有量(n)を求め、N箇所の全含有量(n)を平均した値のことをいう。
【0067】
本発明に係る分散相a(20)の少なくとも1つの内には、該分散相内に分散された、前記ポリアミド樹脂からなる微分散相a
1’(31)及び前記未変性エラストマーからなる微分散相a
2’(32)が存在する。微分散相a
1’(31)及び微分散相a
2’(32)は、分散相a(20)のうちの少なくとも1つの内に存在していればよく、微分散相a
1’(31)及び微分散相a
2’(32)は、互いに別の分散相a(20)内に分散するものであってよい。また、分散相a(20)内には、該分散相内に分散された変性エラストマーからなる微分散相(図示せず)及び/又は前記ポリアミド樹脂と前記変性エラストマーとの反応物からなる微分散相(図示せず)が存在していてもよい。
【0068】
本発明に係る微分散相a
1’(31)は、前記ポリアミド樹脂からなる相であり、かつ、分散相a(20)内に分散している相である。本発明の樹脂組成物において、微分散相a
1’(31)のうちの少なくとも1つの内には、該微分散相内に分散された変性エラストマーからなる超微分散相a’’(42)がさらに存在する。さらに、微分散相a
1’(31)内には、前記ポリアミド樹脂と前記変性エラストマーとの反応物からなる超微分散相(図示せず)がさらに存在していてもよい。
【0069】
本発明に係る微分散相a
2’(32)は、前記未変性エラストマーからなる相であり、かつ、分散相a(20)内に分散している相である。本発明の樹脂組成物において、微分散相a
2’(32)内には、該微分散相内に分散された変性エラストマーからなる超微分散相(図示せず)及び/又は、前記ポリアミド樹脂と前記変性エラストマーとの反応物からなる超微分散相(図示せず)がさらに存在していてもよい。
【0070】
本発明に係る微分散相a
1’(31)及び微分散相a
2’(32)の平均最大直径としては、それぞれ独立に、前記樹脂相分離断面構造において測定される平均最大直径が0.01〜5μmの範囲内にあることが好ましく、0.05〜3μmの範囲内にあることがより好ましい。なお、前記微分散相a
1’(31)及び微分散相a
2’(32)の平均最大直径の求め方は上記のとおりである。
【0071】
また、本発明に係る微分散相a
1’(31)の全含有量としては、前記樹脂相分離断面構造において、全ての微分散相a
1’の断面積(該微分散相a
1’内の他の相の断面積を含む)の合計が、樹脂組成物の全断面積に対して1〜30%(面積%)であることが好ましく、3〜25%であることがより好ましい。前記含有量が前記下限未満である場合には樹脂組成物において十分な耐衝撃性が発揮されなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超える場合には樹脂組成物において十分な剛性が発揮されなくなる傾向にある。なお、前記微分散相a
1’の全含有量の求め方は上記のとおりである。
【0072】
また、本発明に係る微分散相a
2’(32)の全含有量としては、前記樹脂相分離断面構造において、全ての微分散相a
2’の断面積(該微分散相a
2’内の他の相の断面積を含む)の合計が、樹脂組成物の全断面積に対して1〜30%(面積%)であることが好ましく、3〜25%であることがより好ましい。前記含有量が前記下限未満である場合には樹脂組成物において十分な耐衝撃性が発揮されなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超える場合には樹脂組成物において十分な剛性が発揮されなくなる傾向にある。なお、前記微分散相a
2’の全含有量の求め方は上記のとおりである。
【0073】
本発明の樹脂組成物においては、前記変性エラストマーの少なくとも一部が、連続相A内(41)、微分散相a
1’内(42)、連続相Aと分散相aとの界面(43)、及び分散相aと微分散相a
1’との界面(44)に存在する。また、前記未変性エラストマーからなる分散相c(21)がさらに存在する場合、前記変性エラストマーは、連続相Aと分散相cとの界面(45)にさらに存在することが好ましい。前記変性エラストマーが連続相A(10)内に存在する場合には、上記の変性エラストマーからなる分散相b(41)として存在し、微分散相a
1’(31)内に存在する場合には、上記の変性エラストマーからなる超微分散相a’’(42)として存在する。また、連続相Aと分散相aとの界面(43)又は分散相aと微分散相a
1’との界面(44)に存在する場合、或いは、連続相Aと分散相cとの界面(45)にさらに存在する場合には、これら界面のそれぞれ少なくとも一部の面に存在すればよいが、その界面の全面に存在することがより好ましい。
【0074】
本発明の樹脂組成物において、該樹脂組成物がさらに前記フィラーを含有する場合、前記フィラーの存在する相としては特に限定されず、連続相A(10)、分散相a(20)、微分散相a
1’(31)、微分散相a
2’(32)、前記変性エラストマーからなる相(連続相A内、微分散相a
1’内、連続相Aと分散相aとの界面、分散相aと微分散相a
1’との界面)及びその他の相のうちのいずれか1種の相又は2種以上の複数の相のいずれの相内に存在していてよい。
【0075】
<樹脂組成物の製造方法>
次いで、本発明の樹脂組成物の製造方法について説明する。本発明の樹脂組成物は、前記ポリアミド樹脂、前記ポリオレフィン樹脂、前記変性エラストマー、前記未変性エラストマー、及び必要に応じて他の成分を混合することによって得ることができる。前記混合方法は、特に制限されないが、前記ポリアミド樹脂及び前記変性エラストマーを予め混合した後に、前記ポリオレフィン樹脂及び前記未変性エラストマーを添加する方法が好ましい。
【0076】
このような混合方法としては、混練装置を用いる混練方法が挙げられる。前記混練装置としては、例えば、押出機(一軸スクリュー押出機、二軸溶融混練押出機等)、ニーダ、ミキサ(高速流動式ミキサ、パドルミキサ、リボンミキサ等)が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、2種以上を組み合わせて用いる揚合には、連続的に運転してもよく、回分的に(バッチ式で)運転してもよい。さらに、前記ポリアミド樹脂、前記ポリオレフィン樹脂、前記変性エラストマー、前記未変性エラストマー、及び必要に応じて他の成分はそれぞれ一括して混練してもよいし、いずれか一種又は2種以上を複数回に分けて添加投入(多段配合)して混練してもよい。
【0077】
前記混練の温度としては、特に制限されず、混合する樹脂の種類によって適宜調整されるものであるため一概にはいえないが、本発明に係る各樹脂が溶融された状態で混合されることができるという観点からは、100〜350℃であることが好ましく、180〜320℃であることがより好ましく、200〜300℃であることがさらに好ましい。
【0078】
また、本発明の樹脂組成物の製造方法としては、先ず前記ポリアミド樹脂及び前記変性エラストマーの混合物を固形物及び/又は溶融物として得て、これと前記ポリオレフィン樹脂及び前記未変性エラストマーとを溶融混練してもよいし、多段配合式の混練装置等を用いて、上流側で前記ポリアミド樹脂と前記変性エラストマーとを混合又は溶融混練した後に下流側で前記ポリオレフィン樹脂及び前記未変性エラストマーを添加して溶融混練することにより樹脂組成物を得てもよい。
【0079】
本発明の樹脂組成物の製造方法において、前記ポリアミド樹脂の仕込み量としては、前記ポリアミド樹脂、前記ポリオレフィン樹脂、前記変性エラストマー及び前記未変性エラストマーの仕込み量の合計質量に対して、50〜70質量%であることが好ましく、55〜65質量%であることがより好ましい。前記ポリアミド樹脂の仕込み量が前記下限未満である場合には前記ポリオレフィン樹脂からなる連続相が形成される傾向にあり、他方、前記上限を超える場合には前記ポリオレフィン樹脂からなる分散相aの最大直径が小さくなる傾向にある。なお、前記製造方法では、前記ポリアミド樹脂と前記変性エラストマーとが反応物を生成し得るため、前記ポリアミド樹脂の仕込み量と得られる樹脂組成物における含有量とは必ずしも一致するものではない。
【0080】
また、本発明の樹脂組成物の製造方法において、前記ポリオレフィン樹脂の仕込み量としては、前記ポリアミド樹脂、前記ポリオレフィン樹脂、前記変性エラストマー及び前記未変性エラストマーの仕込み量の合計質量に対して、10〜35質量%であることが好ましく、15〜30質量%であることがより好ましい。また、前記ポリアミド樹脂の仕込み量1質量部に対して0.1〜0.7質量部であることが好ましく、0.2〜0.6質量部であることがより好ましい。前記ポリオレフィン樹脂の仕込み量が前記下限未満である場合には前記ポリオレフィン樹脂からなる分散相aの最大直径が小さくなる傾向にあり、他方、前記上限を超える場合には前記ポリオレフィン樹脂からなる連続相が形成される傾向にある。
【0081】
さらに、本発明の樹脂組成物の製造方法において、前記変性エラストマーの仕込み量としては、前記ポリアミド樹脂、前記ポリオレフィン樹脂、前記変性エラストマー及び前記未変性エラストマーの仕込み量の合計質量に対して、5〜25質量%であることが好ましく、5〜20質量%であることがより好ましい。また、前記ポリアミド樹脂の仕込み量1質量部に対して0.07〜0.5質量部であることが好ましく、0.07〜0.4質量部であることがより好ましい。前記変性エラストマーの仕込み量が前記下限未満である場合には樹脂組成物において十分な耐衝撃性が発揮されなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超える場合には樹脂組成物において十分な剛性が発揮されなくなる傾向にある。なお、前記製造方法では、前記ポリアミド樹脂と前記変性エラストマーとが反応物を生成し得るため、前記変性エラストマーの仕込み量と得られる樹脂組成物における含有量とは必ずしも一致するものではない。
【0082】
また、本発明の樹脂組成物の製造方法において、前記未変性エラストマーの仕込み量としては、前記ポリアミド樹脂、前記ポリオレフィン樹脂、前記変性エラストマー及び前記未変性エラストマーの仕込み量の合計質量に対して、5〜25質量%であることが好ましく、5〜20質量%であることがより好ましい。また、前記ポリアミド樹脂の仕込み量1質量部に対して0.07〜0.5質量部であることが好ましく、0.07〜0.4質量部であることがより好ましい。前記未変性エラストマーの仕込み量が前記下限未満である場合には樹脂組成物において十分な耐衝撃性が発揮されなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超える場合には樹脂組成物において十分な剛性が発揮されなくなる傾向にある。
【0083】
このような製造方法により、本発明の樹脂組成物を効率よくかつ確実に得ることができる。得られる樹脂組成物としては、ペレット化等により固形化された固形物であってもよいし、溶融物であってもよい。
【0084】
<成形体>
本発明の樹脂組成物はどのように成形してもよく、その方法は特に制限されない。また、得られる成形体の形状、大きさ及び厚さ等も特に制限されず、その用途も特に制限されない。例えば、前記成形体は、自動車、鉄道車両、船舶及び飛行機等の外装材、内装材及び構造材等として用いることができる。また、前記自動車用の材としては、自動車用外装材、自動車用内装材、自動車用構造材、自動車用衝撃エネルギー吸収材、自動車用歩行者保護材、自動車用乗員保護材及びエンジンルーム内部品等が挙げられ、具体的には、例えば、耐衝撃吸収部品、バンパー、スポイラー、カウリング、フロントグリル、ガーニッシュ、ボンネット、トランクリッド、フェンダーパネル、ドアパネル、ルーフパネル、インストルメントパネル、ドアトリム、クオータートリム、ルーフライニング、ピラーガーニッシュ、デッキトリム、トノボード、パッケージトレイ、ダッシュボード、コンソールボックス、キッキングプレート、スイッチベース、シートバックボード、シートフレーム、アームレスト、サンバイザ、インテークマニホールド、エンジンヘッドカバー、エンジンアンダーカバー、オイルフィルターハウジング、エアフィルターボックス、車載用電子部品(ECU、TVモニター等)のハウジングが挙げられる。
【0085】
さらに、前記成形体は、例えば、建築物及び家具等の内装材、外装材及び構造材、具体的には、例えば、ドア表装材、ドア構造材、各種家具(机、椅子、棚、箪笥等)の表装材、構造材等としても用いることができ、その他、包装体、収容体(トレイ等)、保護用部材、パーティション部材、家電製品(薄型TV、冷蔵庫、洗濯機、掃除機、携帯電話、携帯ゲーム機、ノート型パソコン等)及び鞄(スーツケース等)の筐体及び構造体としても用いることができる。
【実施例】
【0086】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、各実施例及び比較例において得られた樹脂組成物の物性評価及びモルフォロジー観察はそれぞれ以下に示す方法により行った。
【0087】
<樹脂組成物の物性評価>
(シャルピー衝撃強さの測定)
各実施例及び比較例で得られた物性測定用試験片を用いて、JIS K7111−1に準拠して、シャルピー衝撃強さ[kJ/m
2]を測定した。なお、測定は、温度:23℃、打撃方向:エッジワイズ、ノッチタイプ:Aの条件で行った。
【0088】
(曲げ弾性率の測定)
各実施例及び比較例で得られた物性測定用試験片を用いて、JIS K7171に準拠して、曲げ弾性率[MPa]を測定した。なお、測定は、支点間距離(L)を64mmとした2つの支点(曲率半径:5mm)で支持しつつ、支点間中心に配置した作用点(曲率半径:5mm)から速度2mm/分にて荷重を負荷して行った。
【0089】
(総合評価)
上記で測定したシャルピー衝撃強さ及び曲げ弾性率から、次式:
総合評価=(シャルピー衝撃強さ[kJ/m
2])×(曲げ弾性率[MPa])÷1000
により、総合評価の値を算出した。総合評価の値は、フィラーを含有していない樹脂組成物間、又は同素材のフィラーを含有する樹脂組成物間で比較し、値がより大きい程、優れた耐衝撃性及び優れた剛性をいずれもバランスよく発揮することができると評価する。
【0090】
<モルフォロジー観察>
先ず、前記シャルピー衝撃強さの測定に供した物性測定用試験片の凍結破断面に対して、プラズマリアクタ(ヤマト科学株式会社製、「PR300」)を用いて、100Wで1分間、酸素プラズマエッチング処理を施した。次いで、前記破断面に対して、オスミウムコーター(株式会社真空デバイス製、「HPC−1S」)を用いて、5秒間オスミウムコート処理を施した。次いで、前記破断面を、電界放出形走査電子顕微鏡(FE−SEM、株式会社日立ハイテクマニファクチャ&サービス製、「S−4300 TYPE II」)を用いて、加速電圧2kVの条件で観察した。
【0091】
また、得られた30μm×40μmの範囲の画像(FE−SEM写真)において、画像分析ソフト(旭化成エンジニアリング株式会社製、「A像くん」)を用いてポリオレフィン樹脂からなる分散相(分散相a)の断面積及び最大直径を測定し、次式:
粗大分散相率(n)[%]=(最大直径が10μm以上である分散相aの断面積の合計÷全ての分散相aの断面積の合計)×100
により、粗大分散相率(n)、すなわち、最大直径が10μm以上である分散相aの断面積の合計が全ての分散相aの断面積の合計に対して占める割合を求めた。同様に、任意の互いに重ならない10(N)箇所の30μm×40μmの範囲における粗大分散相率(n)を求め、それらのN箇所の平均値を算出して粗大分散相率[%]とした。なお、前記最大直径は、各分散相の断面の最長径とし、断面が円状ではない場合には、その断面の外接円の直径とした。
【0092】
(実施例1)
先ず、ポリアミド樹脂としてポリアミド11(PA11、アルケマ株式会社製、「リルサンBMNO」、重量平均分子量:18,000)を、ポリオレフィン樹脂としてポリプロピレン(PP、日本ポリプロ株式会社製、「ノバテックMA1B」、重量平均分子量:312,000)を、変性エラストマーとして無水マレイン酸変性エチレン−1−ブテン共重合体(m−EBR、三井化学株式会社製、「タフマーMH7020」)を、未変性エラストマーとしてスチレン−エチレン/ブチレン−スチレン共重合体(SEBS−1、JSR株式会社製、「ダイナロン8601P」)を用い、質量比(PA11の質量:PPの質量:m−EBRの質量:SEBS−1の質量)が60:25:10:5となるように溶融混練して樹脂混合物を得た。前記溶融混練は、スクリュー径:30mm、L/D:77の二軸溶融混練押出機(株式会社日本製鋼所製、「TEX30 77BW―20V」)を用いて、温度:200℃、押出速度:10kg/時間、スクリュー回転数:200rpmの条件で実施し、PA11及びm−EBRは前記二軸溶融混練押出機の最も滞留時間が長くなる部位より投入し、PP及びSEBS−1はサイドフィーダーを用いて前記二軸溶融混練押出機の途中から投入した。
【0093】
次いで、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製、「NEX1000−9E」)を用いて、設定温度:200℃、金型温度:30℃の射出条件で得られた樹脂組成物を射出成形し、JIS K7139に規定された多目的試験片を作成し、これを物性測定用試験片とした。
【0094】
得られた物性測定用試験片を用いて、樹脂組成物の物性評価を行った。得られた結果を樹脂組成物の仕込み時の配合割合(質量比)と共に表1に示す。また、前記シャルピー衝撃強さの測定に供した物性測定用試験片を用いて、モルフォロジー観察を行った。
図2に、得られた物性測定用試験片の凍結破断面に酸素プラズマ処理を施した後の電界放射型走査電子顕微鏡写真(FE−SEM写真)を示す。また、
図3として、
図2に示すFE−SEM写真に
図1と対応する符号を付したFE−SEM写真を示す。さらに、実施例1で得られた粗大分散相率を表1に併せて示す。
【0095】
(比較例1〜3)
樹脂組成物の製造において、SEBS−1を用いず、各樹脂の仕込み時の配合割合をそれぞれ表1に示す配合割合としたこと以外は、実施例1と同様にして各物性測定用試験片をそれぞれ得た。得られた物性測定用試験片を用いて樹脂組成物の物性評価を行った結果を樹脂組成物の仕込み時の配合割合と共にそれぞれ表1に示す。また、前記シャルピー衝撃強さの測定に供した物性測定用試験片を用いて、モルフォロジー観察を行った。
図4に比較例1で得られた物性測定用試験片の凍結破断面に酸素プラズマ処理を施した後のFE−SEM写真を、
図5に比較例2で得られた物性測定用試験片の凍結破断面に酸素プラズマ処理を施した後のFE−SEM写真を、
図6に比較例3で得られた物性測定用試験片の凍結破断面に酸素プラズマ処理を施した後のFE−SEM写真を、それぞれ示す。
【0096】
図4〜
図5に示すように、SEBS−1を用いずに得られた樹脂組成物では、PPからなる連続相内にPA11からなる分散相が確認されたが、最大直径が10μm以上である分散相は確認されなかった(比較例1〜2)。また、
図6に示すように、PA11の仕込み量を増やしても、SEBS−1を用いずに得られた樹脂組成物では、PPからなる連続相とPA11からなる連続相とからなる共連続相が形成され、各連続相内にそれぞれ分散相が確認されたが、最大直径が10μm以上である分散相は確認されなかった(比較例3)。
【0097】
【表1】
【0098】
(実施例2)
樹脂組成物の製造において、各樹脂の仕込み時の配合割合ををそれぞれ表2に示す配合割合とし、溶融混練において、炭素繊維(CF、東レ株式会社製、「TV14―006」、平均アスペクト比:100〜900)を、質量比(PA11の質量:PPの質量:m−EBRの質量:SEBS−1の質量:CFの質量)が48:16:8:8:20となるようにさらに添加したこと以外は、実施例1と同様にして物性測定用試験片を得た。得られた物性測定用試験片を用いて樹脂組成物の物性評価を行った結果を樹脂組成物の仕込み時の配合割合と共にそれぞれ表2に示す。また、前記シャルピー衝撃強さの測定に供した物性測定用試験片を用いて、モルフォロジー観察を行い、得られた粗大分散相率を表2に併せて示す。
【0099】
(比較例4)
樹脂組成物の製造において、SEBS−1を用いず、各樹脂の仕込み時の配合割合をそれぞれ表2に示す配合割合としたこと以外は、実施例2と同様にして物性測定用試験片を得た。得られた物性測定用試験片を用いて樹脂組成物の物性評価を行った結果を樹脂組成物の仕込み時の配合割合と共にそれぞれ表2に示す。また、前記シャルピー衝撃強さの測定に供した物性測定用試験片を用い、モルフォロジー観察を行って得られた粗大分散相率を表2に併せて示す。
【0100】
【表2】
【0101】
(実施例3〜6)
樹脂組成物の製造において、SEBS−1に変えて、SEBS−2(実施例3):スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン共重合体(旭化成ケミカルズ株式会社製、「タフテックH1062」)、EOR(実施例4):エチレン−1−オクテン共重合体(ダウ・ケミカル日本株式会社製、「エンゲージXLT8677」)、EBR(実施例5):エチレン−1−ブテン共重合体(三井化学株式会社製、「タフマーDF610」)、EPR(実施例6):エチレン−プロピレン共重合体(三井化学株式会社製、「タフマーP−0680」)をそれぞれ用いたこと以外は、実施例2と同様にして各物性測定用試験片をそれぞれ得た。得られた物性測定用試験片を用いて樹脂組成物の物性評価を行った結果を各樹脂組成物の仕込み時の配合割合と共にそれぞれ表3に示す。また、実施例2の樹脂組成物の仕込み時の配合割合及び物性評価を行った結果も表3に併せて示す。
【0102】
(比較例5〜6)
樹脂組成物の製造において、SEBS−1に変えて、EMMA(比較例5):エチレン−メチルメタアクリレート共重合体(住友化学株式会社製、「アクリフトWK307」)、TPEE(比較例6):ポリエステル−ポリエーテル共重合体(三菱化学株式会社製、「プリマロイA1600N」)をそれぞれ用いたこと以外は、実施例2と同様にして各物性測定用試験片をそれぞれ得た。得られた物性測定用試験片を用いて樹脂組成物の物性評価を行った結果を各樹脂組成物の仕込み時の配合割合と共にそれぞれ表3に示す。
【0103】
【表3】
【0104】
(実施例7〜9)
樹脂組成物の製造において、SEBS−1に変えて、SEBS−2又はEBRをそれぞれ用い、CFに変えて、GF−1(実施例7、8):ガラス繊維(日本電気硝子製、「T―120H」、平均アスペクト比:200〜400)又はGF−2(実施例9):ガラス繊維(日本電気硝子製、「T−262H」、平均アスペクト比:200〜400)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして各物性測定用試験片をそれぞれ得た。得られた物性測定用試験片を用いて樹脂組成物の物性評価を行った結果を各樹脂組成物の仕込み時の配合割合と共にそれぞれ表4に示す。
【0105】
(比較例7)
樹脂組成物の製造において、SEBS−1を用いず、CFに変えてGF−1を用い、各樹脂の仕込み時の配合割合をそれぞれ表4に示す配合割合としたこと以外は、実施例2と同様にして物性測定用試験片を得た。得られた物性測定用試験片を用いて樹脂組成物の物性評価を行った結果を樹脂組成物の仕込み時の配合割合と共にそれぞれ表4に示す。
【0106】
【表4】
【0107】
図2〜
図3に示した結果から明らかなように、本発明の樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(PA11)からなる連続相A(10)と、連続相A内に分散されたポリオレフィン樹脂(PP)からなる分散相a(20)と、分散相a内に分散されたポリアミド樹脂(PA11)からなる微分散相a
1’(31)と、分散相a内に分散された未変性エラストマー(SEBS−1)からなる微分散相a
2’(32)とを備え、変性エラストマー(m−EBR)の少なくとも一部が、連続相A内、微分散相a
1’内(42)、連続相Aと分散相aとの界面、及び分散相aと微分散相a
1’との界面に存在する構造を有していることが確認された。また、連続相A内に分散された未変性エラストマーからなる分散相b(21)が存在することも確認された。さらに、本発明の樹脂組成物においては、最大直径が10μm以上である分散相aの断面積の合計が全ての分散相aの断面積の合計に対して25%以上であることが確認された。
【0108】
また、表1〜表4に示した結果から明らかなように、上記の構造を有する本発明の樹脂組成物は、優れた剛性を発揮すると共に、著しく優れた耐衝撃性をも発揮することが確認された。さらに、本発明の樹脂組成物は、フィラーを添加しても、優れた耐衝撃性を維持できることが確認された。