(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-226767(P2017-226767A)
(43)【公開日】2017年12月28日
(54)【発明の名称】難燃性高流動高強度ガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 69/00 20060101AFI20171201BHJP
C08K 7/14 20060101ALI20171201BHJP
C08L 25/04 20060101ALI20171201BHJP
C08K 5/3492 20060101ALI20171201BHJP
C08J 5/00 20060101ALI20171201BHJP
【FI】
C08L69/00
C08K7/14
C08L25/04
C08K5/3492
C08J5/00CET
C08J5/00CEZ
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-124044(P2016-124044)
(22)【出願日】2016年6月23日
(71)【出願人】
【識別番号】396001175
【氏名又は名称】住化ポリカーボネート株式会社
(72)【発明者】
【氏名】四之宮 忠司
【テーマコード(参考)】
4F071
4J002
【Fターム(参考)】
4F071AA22
4F071AA50
4F071AB28
4F071AC12
4F071AD01
4F071AE07
4F071AF17Y
4F071AF47Y
4F071AH07
4F071AH16
4F071AH17
4F071BA01
4F071BB05
4F071BB06
4F071BC07
4F071BC10
4J002BC032
4J002CG011
4J002CG021
4J002CG031
4J002DL006
4J002EU187
4J002FA046
4J002FB096
4J002FD016
4J002FD070
4J002FD137
4J002GM00
4J002GQ00
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ポリカーボネート樹脂が本来備える優れた耐熱性や熱安定性を維持しつつ、難燃性や流動性、機械的強度、剛性を飛躍的に向上させることができる難燃性高流動ガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物の提供。
【解決手段】ポリカーボネート樹脂(A)37〜58.5重量%、ガラス繊維(B)38〜50重量%、重量平均分子量が1000〜18000であるポリスチレン樹脂(C)3〜10重量%及びメラミンシアヌレート(D)0.5〜3重量%を含有する、難燃高流動ガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物。ガラス繊維(B)の数平均繊維長が1〜8mmであることが好ましい樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂(A)37〜58.5重量%、ガラス繊維(B)38〜50重量%及び重量平均分子量が1000〜18000であるポリスチレン樹脂(C)3〜10重量%、メラミンシアヌレート(D)0.5〜3重量%を含有することを特徴とする、難燃高流動ガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項2】
前記樹脂組物に添加され溶融混和されるガラス繊維の数平均繊維長が1〜8mmである、請求項1記載の難燃高流動ガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項3】
前記樹脂組成物を成形してなる厚さ4mmの試験片を用いて、ISO 178に基づき測定した曲げ強度が210MPa以上であり、曲げ弾性率が11GPa以上であり、厚み1.5mmの試験片を用いたUL−94試験に準拠した難燃レベルにおいて、少なくともV−2を達成する、難燃高流動ガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3記載の難燃高流動ガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物を含む樹脂成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性や流動性、機械的強度、剛性に優れたガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物及びその樹脂組成物を成形してなる樹脂成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は優れた機械的強度、耐熱性、熱安定性等に優れた熱可塑性樹脂であることから、電気電子分野や自動車分野等広く工業的に利用されている。
【0003】
他方、近年、スマートフォン等の携帯端末は、その製品を持ち歩きすることから軽量化が要望されている。それら製品の筐体や電機電子部品の内部シャーシ等は更なる薄肉化を達成するため、より一層流動性や機械的強度、剛性に優れた成形材料が求められている。従来のポリカーボネート樹脂組成物は、流動性や機械的強度、剛性が不十分なことから、薄肉部を有する成形品する際に射出成形が困難、又、この組成物から得られた成形品へ外部力が印加された場合に、当該成形品が撓み、成形品内部に収納される電子部品が損傷するといった不具合を発生しやすいといった問題点があった。
【0004】
従来、ポリカーボネート樹脂組成物の流動性や機械的強度、剛性を向上させるためにポリカーボネート樹脂にスチレン系樹脂や無機充填剤を含有させる方法が複数知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0005】
例えば、特許文献1には、ポリカーボネート樹脂に数平均アスペクト比4〜10のガラス繊維50〜80重量部からなるガラス繊維強化樹脂成形品が提案されている。特許文献2には、特定の粘度平均分子量のポリカーボネート樹脂にL/D≧3の繊維状充填剤を50〜240重量部からなるガラス繊維強化ポリカーボネートが提案されている。しかしながら、これら特許文献1及び特許文献2は、いずれも流動性が改良出来ていない事から薄肉成形品が成形困難である、又、所望の曲げ強度、曲げ弾性率を達成できるものではない為に、流動性、さらなる剛性改良の余地があった。
【0006】
特許文献3にはポリカーボネート樹脂にスチレン系樹脂、ペンタエリスリトールと飽和脂肪酸カルボン酸とのエステル化物、及びフルオロオレフィン樹脂からなる熱可塑性樹脂組成物が提案されている。しかしながら、いずれも所望の曲げ弾性率を達成できるものではない為に、さらなる剛性改良の余地があった。
【0007】
加えて、近年では、安全上の要求を満たすため難燃性が要求されている。従来、芳香族ポリカーボネート樹脂の難燃性を向上させるために臭素化合物などのハロゲン系化合物を配合する方法が採用されている。
【0008】
しかしながら、臭素系化合物などのハロゲン系化合物を配合することから、燃焼時に当該ハロゲンを含むガスが発生する懸念もあり、環境面でも塩素、臭素等を含有しない難燃剤の使用が望まれている。又、ハロゲンを含まない難燃剤として、リン化合物を配合する方法が採用されている。しかしながら、リン化合物を配合する事によりポリカーボネート樹脂の耐熱性や機械的強度を低下させる事から、耐熱性や機械的強度を低下させない難燃剤の使用が望まれている。
【0009】
従来、上記したように、優れた流動性や機械的強度、剛性、及び難燃性をバランスよく発現するポリカーボネート樹脂組成物材料は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3041905号公報
【特許文献2】特許第2842965号公報
【特許文献3】特許第3662420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、前述の諸問題を解決した、すなわち、従来のガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物が発現出来なかった、ハロゲン系化合物を含有する事なく難燃性を有し、かつ優れた流動性や機械的強度、剛性を発現するガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物及びその樹脂組成物を成形してなる樹脂成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、ポリカーボネート樹脂に特定配合量の重量平均分子量が1000〜18000であるポリスチレン樹脂、ガラス繊維及びメラミンシアヌレートを配合することにより、驚くべきことに、難燃性と流動性に優れ、又、得られた成形品の剛性(曲げ強度及び曲げ弾性率)を著しく改善でき、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、 本発明は、ポリカーボネート樹脂(A)37〜58.5重量%、ガラス繊維(B)38〜50重量%及び重量平均分子量が1000〜18000であるポリスチレン樹脂(C)3〜10重量%、メラミンシアヌレート(D)0.5〜3重量%を含有することを特徴とする、難燃高流動ガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物及びそれを成形してなる樹脂成形品に関するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の難燃性高流動ガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂が本来備える優れた耐熱性や熱安定性を維持しつつ、流動性や機械的強度、剛性及び難燃性を飛躍的に向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は、以下に示す実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施することができる。
【0016】
本発明にて使用されるポリカーボネート樹脂(A)とは、種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法、又はジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネートなどの炭酸エステルとを反応させるエステル交換法によって得られる重合体であり、代表的なものとしては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)から製造されたポリカーボネート樹脂が挙げられる。
【0017】
上記ジヒドロキシジアリール化合物としては、ビスフェノールAの他に、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパンのようなビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンのようなビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルエーテルのようなジヒドロキシジアリールエーテル類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィドのようなジヒドロキシジアリールスルフィド類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホキシドのようなジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホンのようなジヒドロキシジアリールスルホン類が挙げられる。
【0018】
これらは単独又は2種類以上混合して使用されるが、これらの他に、ピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4′−ジヒドロキシジフェニル等を混合して使用してもよい。
【0019】
さらに、上記のジヒドロキシアリール化合物と以下に示すような3価以上のフェノール化合物を混合使用してもよい。3価以上のフェノールとしてはフロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプテン、2,4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゾール、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタン及び2,2−ビス−〔4,4−(4,4′−ジヒドロキシジフェニル)−シクロヘキシル〕−プロパンなどが挙げられる。
【0020】
ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量は、特に制限はないが、成形加工性、強度の面より通常10000〜100000、より好ましくは12000〜30000、さらに好ましくは14000〜26000の範囲である。又、係るポリカーボネート樹脂を製造するに際し、分子量調整剤、触媒等を必要に応じて使用することができる。
【0021】
ポリカーボネート樹脂(A)の配合量は、37〜58.5重量%である。58.5重量%を越えると流動性や曲げ強度、曲げ剛性に劣り、37重量%未満では外観に劣る成形品が発生する事があることから好ましくない。より好ましい配合量は、39〜54.5重量%、最も好ましくは45.5〜53.2重量%である。
【0022】
本発明にて使用されるガラス繊維(B)は通常熱可塑性樹脂に使用されているガラス繊維であれば、いずれも使用出来る。ガラス繊維に用いられるガラスは無アルカリガラス(Eガラス)が好ましい。ガラス繊維の直径は6μm以上のものが好ましく、最適範囲は6〜20μmである。更にガラス繊維の数平均繊維長は1〜8mmが好ましい。これらは従来公知の任意の方法に従い製造される。
【0023】
ガラス繊維(B)の直径が6〜20μmの範囲であれば、剛性に優れるため好ましい。又、数平均繊維長が1mm以下では機械的強度の改良が十分でなく、8mmを越えるポリカーボネート樹脂を製造する際、ポリカーボネート樹脂中へのガラス繊維の分散性に劣ることからガラス繊維が樹脂から脱落する等して生産性が低下しやすい。市販にて入手可能なガラス繊維としては、直径6μmのものや13μmのものがあり、これらの数平均長さは2〜6mmとなっている。
【0024】
ガラス繊維(B)は、ポリカーボネート樹脂との密着性を向上させる目的でアミノシラン、エポキシシラン等のシランカップリング剤などにより表面処理を行う事が出来る。又、ガラス繊維を取り扱う際、取り扱い性を向上させる目的でウレタンやエポキシ等の集束材などにより集束させることが出来る。
【0025】
ガラス繊維(B)の配合量は、38〜50重量%である。50重量%を越えると外観に劣る成形品が発生する事があることから好ましくない。又、38重量%未満では強度、剛性に劣るため好ましくない。より好ましい配合量は、40〜50重量%、最も好ましくは40〜45重量%である。
【0026】
本発明は、ポリカーボネート樹脂組成物からISO試験法に準じた試験片を成形して作成し、得られた試験片を用いてISO 178に基づき測定した際には、曲げ強度が210MPa以上であり、曲げ弾性率が11GPa以上の優れた剛性を得ることが出来、厚み1.5mmの試験片を用いたUL−94規格の難燃レベルにおいて、少なくともV−2を達成することを新規に知見したものである。
【0027】
重量平均分子量が1000〜18000であるポリスチレン樹脂(C)の配合量は3〜10重量%である。10重量部を超えると射出成形時、成形品の表層剥離が発生する可能性があるため好ましくない。3重量部以下では流動性に劣り、又、曲げ強度や曲げ弾性率に劣るため好ましくない。好ましくは5〜9重量%である。最も好ましくは6〜8重量%である。ポリスチレン樹脂の重量平均分子量は1000〜18000である。1000未満では押出機で混練りした際、ポリカーボネート樹脂との均一な溶融混練りが得られない事から困難である事から好ましくない。又、18000を超えると曲げ強度等機械的強度の向上が得られない事から好ましくない。好ましくは重量平均分子量が1000〜10000である。最も好ましくは1000〜4000である。
【0028】
商業的に入手可能なポリスチレン樹脂(C)としては、BASF社製JONCRYL ADF 1300があげられる。
【0029】
本発明にて使用されるメラミンシアヌレート(D)は、トリアジン化合物のメラミンとイソシアヌル酸の窒素系化合物でありハロゲン系化合物を含有しない。シアヌル酸メラミンともいう。メラミンシアヌレート(D)は、燃焼時において窒素系不活性分解物を生成することで雰囲気中の酸素濃度を希釈し難燃性を発現する窒素系難燃剤として機能する。
【0030】
本発明にて使用さえるメラミンシアヌレート(D)の配合量は、0.5〜3重量%である。3重量%を超えると機械的強度の低下が発生するため好ましくない。0.5重量%未満では難燃性に劣り好ましくない。好ましくは0.5〜2重量%である。最も好ましくは0.8〜1.5重量%である。
【0031】
商業的に入手可能なメラミンシアヌレート(D)としては、株式会社三和ケミカル社製AP−901、MPP−A、日産化学工業株式会社製MC−4000、MC−4500、MC−6000、PHOSMEL−200等の市販のメラミン系難燃剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
本発明の難燃性高流動ガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物において、上記の所定の重量平均長さのガラス繊維を残存させるためには、ポリカーボネート樹脂とポリスチレン樹脂を第一フィーダー(原料供給口)から押出機バレル内に供給し、樹脂を十分に溶融した後にガラス繊維を第二フィーダー(充填剤供給口)から押出機バレル内に供給した後、混練に用いるスクリューに一般的に入手可能なディスク(例えば、ニーディングディスク)等を適用し、公知の手法によりこのディスクをスクリュー構成として複数用いたり、ディスクの配置を適宜変えたりする等により調整して混練を行うことにより可能である。
【0033】
更に、本発明の効果を損なわない範囲で、本発明の高流動ポリカーボネート樹脂組成物に各種の樹脂、酸化防止剤、蛍光増白剤、顔料、染料、カーボンブラック、充填材、離型剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、ゴム、軟化材、展着剤(流動パラフィン、エポキシ化大豆油等)、難燃剤、有機金属塩等の添加剤、滴下防止用ポリテトラフルオロエチレン樹脂等を配合しても良い。
【0034】
各種の樹脂としては、例えば、ハイインパクトポリスチレン、ABS、AES、AAS、AS、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド樹脂等が挙げられ、これらは一種もしくは二種以上で併用してもよい。
【0035】
酸化防止剤としては、リン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤などが挙げられる。なかでも、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好適に使用され、例えば、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チオジエチレン−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートなどが挙げられる。とりわけ、下記構造式に示される化合物が好適に用いられる。該酸化防止剤としてはチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製Irganox1076などが挙げられる。
【実施例】
【0036】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。ただし本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲においては、任意に変更乃至改変して実施することができる。尚、特に断りのない限り、実施例中の「%」及び「部」は、それぞれ重量基準に基づく「重量%」及び「重量部」を示す。
【0037】
使用した原料の詳細は以下のとおりである。
ポリカーボネート樹脂(A):
ビスフェノールAとホスゲンから合成されたポリカーボネート樹脂
(住化スタイロンポリカーボネート社製 カリバー200−20、粘度平均分子量
19000、以下、「PC」と略記)
ガラス繊維(B):
Eガラス繊維
(オーウェンスコーニングジャパンCS03 MA FT737
繊維径13μm、繊維長3mm / 以下「GF」と略記)
ポリスチレン樹脂(C):
BASF社製JONCRYL ADF 1300
(重量平均分子量:2800、 以下「PS」と略記する。)
メラミンシアヌレート(D):
日産化学社製 MC−4500
(以下、MSと略記)
【0038】
(難燃性高流動ガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物ペレットの作成)
前述の各種配合成分を表1に示す配合比率にて、二軸押出機(東芝機械(株)製TEM−37SS)を用いて、溶融温度300℃にて混練し、難燃性高流動ガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物を得た。難燃性高流動ガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂はポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、メラミンシアヌレートを第一フィーダー(原料供給口)から押出機バレル内に供給し、樹脂を十分に溶融した後にガラス繊維を第二フィーダー(充填剤供給口)から押出機バレル内に供給した後、混練を行い、難燃性高流動ガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物ペレットを得た。
【0039】
(成形品の難燃性の評価)
上記で得られた各種樹脂組成物のペレットをそれぞれ120℃で4時間乾燥した後に、射出成形機(日本製鋼所J−100E−C5)を用いて設定温度300℃、射出圧力1600Kg/cm2にて難燃性評価用試験片(125×13×1.5mm)を作成した。
【0040】
得られた試験片を温度23℃湿度50%の恒温室の中で48時間放置し、アンダーライターズ・ラボラトリーズが定めているUL94試験(機器の部品用プラスチック材料の燃焼性試験)に準拠した難燃性の評価を行った。UL94Vとは、鉛直に保持した所定の試験片にバーナーの炎を10秒間接炎した後の残炎時間やドリップ性から難燃性を評価する方法であり、以下のクラスに分けられる。
V−0 V−1 V−2
各試料の残炎時間 10秒以下 30秒以下 30秒以下
5試料の全残炎時間 50秒以下 250秒以下 250秒以下
ドリップによる綿の着火 なし なし あり
*上記の条件に満たない物は“NR”と表示される。
上に示す残炎時間とは着火源を遠ざけた後の試験片が燃焼を続ける時間の長さであり、ドリップによる綿の着火とは試験片の下端から300mm下にある標識用の綿が試験片からの滴下(ドリップ)物によって着火されるかどうかによって決定される。
【0041】
(成形品の曲げ強度、曲げ弾性率の評価)
上記で得られた各種樹脂組成物のペレットをそれぞれ120℃で4時間乾燥した後に、射出成型機(日本製鋼所製J−100E−C5)を用いて設定温度300℃、射出圧力1600kg/cm2にてISO試験法に準じた厚み4mmの試験片を作成し、得られた試験片を用いてISO 178に準じ曲げ強度及び曲げ弾性率(剛性)を測定し、曲げ強度が210MPa以上、曲げ弾性率が11GPa以上を良好とした。
【0042】
(流動性の評価)
上記で得られた各種樹脂組成物のペレットをそれぞれ120℃で4時間乾燥した後に、射出成型機(日本製鋼所製J−100E−C5)を用いて設定温度300℃、射出圧力1600kg/cm2にてアルキメデススパイラル金型(巾10mm、厚み1mm)を用いて流動長を測定し、130mm以上を良好とした。
【0043】
(成形品の外観評価(表層剥離))
上記で得られた各種樹脂組成物のペレットをそれぞれ120℃で4時間乾燥した後に、射出成型機(日本製鋼所製J−100E−C5)を用いて設定温度320℃、射出圧力1600kg/cm2にて平板(90×50×2mm)を作成し、得られた平板について、ゲート近傍で表層剥離を目視にて観察し、表層剥離がないものを良好(○)、表層剥離が見られるものを不良(×)とした。
【0044】
(成形品の外観評価(ガラス繊維による表面粗))
上記で得られた各種樹脂組成物のペレットをそれぞれ120℃で4時間乾燥した後に、射出成型機(日本製鋼所製J−100E−C5)を用いて設定温度320℃、射出圧力1600kg/cm2にて平板(90×50×2mm)を作成し、得られた平板について、ガラス繊維による成形品表面粗について目視にて観察し、ガラス繊維による成形品表面粗がないものを良好(○)、成形品表面粗が見られるものを不良(×)とした。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
実施例1〜4に示すように、本発明の構成要件を満足するものについては、要求性能を満たしていた。
一方、比較例1及び2に示すように、本発明の構成要件を満足しないものについては、それぞれ次のとおり欠点を有していた。
比較例1は、メラミンシアヌレート(MS)の配合量が規定よりも多い場合で曲げ強度が不良となった。
比較例2は、メラミンシアヌレート(MS)が少ない場合で難燃性が不良となった。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の難燃性高流動ガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂が本来備える優れた耐熱性や熱安定性を維持しつつ、難燃性や流動性、機械的強度、剛性を飛躍的に向上させることができるものであり、その産業上の利用価値は極めて高い。例えば、電気機器や電子機器に使用される薄肉筐体や内部シャーシに用いる金属製品の代替品への使用が可能であり、製品の軽量化が出来る。又、このような樹脂組成物から得られた成形品へ外部力が印加された場合に、当該成形品が撓み、成形品内部に収納される電子部品へ損傷を及ぼすといった不具合の発生が可及的に抑えられる。