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特開2017-226770電子材料用ガラス基板洗浄剤及び電子材料用ガラス基板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-226770(P2017-226770A)
(43)【公開日】2017年12月28日
(54)【発明の名称】電子材料用ガラス基板洗浄剤及び電子材料用ガラス基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C11D 7/32 20060101AFI20171201BHJP
   C11D 7/04 20060101ALI20171201BHJP
   C11D 3/30 20060101ALI20171201BHJP
   C11D 3/04 20060101ALI20171201BHJP
   G11B 5/84 20060101ALI20171201BHJP
   B08B 3/08 20060101ALI20171201BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20171201BHJP
   C03C 23/00 20060101ALI20171201BHJP
【FI】
   C11D7/32
   C11D7/04
   C11D3/30
   C11D3/04
   G11B5/84 A
   B08B3/08 Z
   H01L21/304 647A
   C03C23/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-124059(P2016-124059)
(22)【出願日】2016年6月23日
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 祥平
(72)【発明者】
【氏名】磯村 省吾
【テーマコード(参考)】
3B201
4G059
4H003
5D112
5F157
【Fターム(参考)】
3B201AA01
3B201BB92
4G059AA08
4G059AB13
4G059AC03
4G059AC18
4G059AC30
4H003BA12
4H003DA15
4H003DB01
4H003EA10
4H003EA21
4H003EB08
4H003EB19
4H003EB24
4H003EB30
4H003ED02
4H003FA04
4H003FA07
4H003FA28
5D112AA02
5D112AA24
5D112BA03
5D112BA09
5D112GA08
5D112GA09
5D112GA30
5F157AA70
5F157BC54
5F157BD02
5F157BD03
5F157BE12
5F157BE32
5F157BF37
(57)【要約】
【課題】砥粒や研磨屑に対する洗浄性が非常に高く、かつ、洗浄後の基板の表面荒れが少ない磁気ディスク基板用洗浄剤を提供する。
【解決手段】有機アルカリ(A)、無機アルカリ(B)、キレート剤(C)及び水を含有する電子材料用ガラス基板洗浄剤であって、有機アルカリ(A)が、下記一般式(1)で表される化合物であって、電子材料用ガラス基板洗浄剤が、下記数式(1)〜(4)を満たすことを特徴とする電子材料用ガラス基板洗浄剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機アルカリ(A)、無機アルカリ(B)、キレート剤(C)及び水を含有する電子材料用ガラス基板洗浄剤であって、有機アルカリ(A)が、下記一般式(1)で表される化合物であって、電子材料用ガラス基板洗浄剤が、下記数式(1)〜(4)を満たすことを特徴とする電子材料用ガラス基板洗浄剤。
【化1】
[式中、R〜Rは、それぞれ独立に炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルキレン基 又は炭素数1〜20のアリール基であり、Xは、陰イオン基である。]
[pH]≦0.020×[Si]+12.736 (1)
[pH]≦0.109×[Si]+11.047 (2)
[pH]≧−0.060×[Si]+11.455 (3)
[pH]≧0.023×[Si]+8.416 (4)
ただし、 [Si](ppb)は、単位時間あたりに磁気ディスク基板1枚から溶出するSiイオン量 を表す 。[pH]は、25℃における電子材料用ガラス基板洗浄剤のpHを表す。
【請求項2】
電子材料用ガラス基板洗浄剤中の有機アルカリ(A)、無機アルカリ(B)及びキレート剤(C)の含有率が下記数式(5)〜(8)を満たすことを特徴とする請求項1に記載の電子材料用ガラス基板洗浄剤。
(A) ≦−2.1×(B) +1.3 (5)
(A)≧−0.5×(B)+0.3 (6)
(A)≧0.8×(B)−0.3 (7)
0.0<(C) ≦0.7 (8)
【請求項3】
さらに界面活性剤(D)を含む請求項1又は2に記載の電子材料用ガラス基板洗浄剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか記載の電子材料用ガラス基板洗浄剤を用いる電子材料用ガラス基板の製造方法。









【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子材料用ガラス基板洗浄剤、及び電子材料用ガラス基板の製造方法に関する。
さらに詳しくは、磁気ディスク基板の製造において、その表面の研磨の後の砥粒、研磨屑の除去に好適かつ、表面荒れが少ない洗浄剤、及び該洗浄剤を使用した電子材料用ガラス基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子材料、とりわけ磁気ディスクは、年々小型化、高容量化の一途をたどっており、磁気ヘッドの浮上量もますます小さくなってきている。そのため、電子材料用ガラス基板の製造工程で、砥粒や研磨屑等の残留のない基板が求められている。また、表面精度の向上(表面粗さ、微少うねり、スクラッチ、ピット等の低減)も求められている。
【0003】
電子材料用ガラス基板製造工程には、平坦化した基板を作成する工程であるサブストレート工程(1)と、磁性層を基板にスパッタする工程であるメディア工程(2)を含む。
このうち、サブストレート工程(1)では、基板の平坦化のために砥粒を含むスラリーによる研磨を行い、その後、スラリー及び発生した研磨屑等のパーティクルをリンスして洗い流し、さらに、リンスで取り除けなかったパーティクルを後工程の洗浄工程で洗浄して完全に除去する。
【0004】
ところで、磁気ディスクの近年の高記録密度化につれて、2段階以上の研磨プロセスを用いた検討がなされてきている。すなわち、1段階目の研磨においては基板表面の比較的大きなうねり、大きなピット及びその他の表面欠陥を除去することが主たる目的で研磨がなされ、2段階目の研磨により、目的の表面粗さとしながら、細かなスクラッチ、ピットを除去する方式を採っている。
1段階目の研磨で得られた基板の表面に、その研磨工程で使用した砥粒や研磨屑が残留していると、それらの大部分は2段階目の研磨工程において除去されるが、取りきれずに残留してしまったものは欠陥となる。
また、1段階目の残留砥粒や研磨屑は、2段階目の研磨工程中にスクラッチの原因になり悪影響をおよぼす。
これらの問題点を解決するには、各段階で行われる研磨工程終了時に砥粒や研磨屑が除去されていること、また2段階目の研磨工程前の基板にそのような残留物が付着されていないことが必要であり、このような残留物除去のために、高性能な洗浄剤が必要となってきている。
【0005】
一方、メディア工程(2)では、基板上に磁性層を均一にスパッタリングするために、適宜受入れ洗浄が行われる。この受入れ洗浄においても、洗浄工程で使用される薬剤(スラリー、洗剤等)や、洗浄工程で発生するパーティクルの除去が十分でないという問題があり、高い洗浄性が必要となってきている。
【0006】
従来、これら目的のために、pHが高いアルカリ性洗浄剤が提案されている。例えば、無機アルカリ、アルドン酸を含有してpHが10以上の洗浄剤を用いてコロイダルシリカの除去性を向上させる方法(特許文献1)が提案されている。
【0007】
しかしながら、上記の特許文献1の洗浄剤では、一定の洗浄力を有するが、対象となるガラス基板の表面の表面粗さが洗浄後に増加する。磁気ディスクの高記録密度化のため、表面精度を向上する(例えば表面荒れを抑える)ことが今後ますます求められることが予想されるが、これらの洗浄剤では、洗浄後の表面荒れが大きく高記録密度化が困難である。
また、ホスホン酸系キレート剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤を特定の濃度比で配合し、2%に純水で希釈した際の25℃におけるpHが5以下の洗浄剤を用いて酸化セリウムやコロイダルシリカを洗浄する方法(特許文献2)も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−086563号公報
【特許文献2】特開2012−219186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献2の洗浄剤では、表面荒れを抑えることに一定の効果はあるが、洗浄力が弱く、近年の洗浄に求められるレベルには不十分である。
そこで、砥粒や研磨屑に対する洗浄性が非常に高く、かつ、洗浄後の基板の表面荒れが少ない電子材料用ガラス基板洗浄剤、及び電子材料用ガラス基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、有機アルカリ(A)、無機アルカリ(B)、キレート剤(C)及び水を含有する電子材料用ガラス基板洗浄剤であって、有機アルカリ(A)が、下記一般式(1)で表される化合物であって、電子材料用ガラス基板洗浄剤が、下記数式(1)〜(4)を満たすことを特徴とする電子材料用ガラス基板洗浄剤。
【化1】
[式中、R〜Rは、それぞれ独立に炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルキレン基 又は炭素数1〜20のアリール基であり、Xは、陰イオン基である。]
[pH]≦0.020×[Si]+12.736 (1)
[pH]≦0.109×[Si]+11.047 (2)
[pH]≧−0.060×[Si]+11.455 (3)
[pH]≧0.023×[Si]+8.416 (4)
ただし、 [Si](ppb)は、単位時間あたりに磁気ディスク基板1枚から溶出するSiイオン量 を表す 。[pH]は、25℃における電子材料用ガラス基板洗浄剤のpHを表す。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電子材料用ガラス基板洗浄剤及び電子材料用ガラス基板の製造方法は、電子材料用ガラス基板の製造工程において問題となる微細な砥粒や研磨屑に対する洗浄性に優れ、かつ洗浄後の基板の表面荒れが少ない。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の電子材料用ガラス基板洗浄剤は、有機アルカリ(A)、無機アルカリ(B)、キレート剤(C)及び水を含有する。
【0013】
本発明において、電子材料用ガラス基板とは、磁気ディスク用ガラス基板、フラットパネルディスプレイ用ガラス基板、フォトマスク用ガラス基板、光学レンズ、薄膜太陽電池用ガラス基板又は半導体基板が挙げられ、表面精度の悪化を抑える観点で好ましくはハードディスク用ガラス基板である。
【0014】
本発明における有機アルカリ(A)は、一般式(1)で表される化合物である。
一般式(1)におけるR〜Rは、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルキレン基又は炭素数1〜20のアリール基であり、更に詳しくはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、メチリデン基、エチリデン基、プロピリデン基、ブチリデン基、ペンチリデン基、ヘキシリデン基、ヘプチリデン基、オクチリデン基、ノニリデン基、デシリデン基、ウンデシリデン基、ドデシリデン基、トリデシリデン基、テトラデシリデン基、ペンタデシリデン基、ヘキサデシリデン基、ヘプタデシリデン基、オクタデシリデン基、ノナデシリデン基、エイコシリデン基、ベンジル基等が挙げられ、微細な砥粒や研磨屑に対する洗浄性に優れ、かつ洗浄後の基板の表面荒れの観点から、好ましくはメチル基、エチル基である。
【0015】
一般式(1)におけるXは陰イオン基であり、フルオリド、クロリド、ブロミド、ヨージド、ヒドロキシド、スルファート、アセタート、硫酸水素、ボロヒドリド、ポリハライド等が挙げられ、微細な砥粒や研磨屑に対する洗浄性に優れ、かつ洗浄後の基板の表面荒れの観点から、好ましくはヒドロキシドである。
【0016】
一般式(1)で表される化合物の具体例としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(以下、TMAHと略記)、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムヨージド、テトラメチルアンモニウムボロヒドリド、テトラメチルアンモニウムフルオリド、ジクロロよう素酸テトラメチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウムテトラフルオロボラート、テトラメチルアンモニウムヘキサフルオロホスファート、エチルトリメチルアンモニウムヨージド、過塩素酸テトラメチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウムスルファート、トリエチルメチルアンモニウムクロリド、トリメチルビニルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムアセタート、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(以下、TEAHと略記)、テトラメチルアンモニウム硫酸水素塩、トリメチルプロピルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムヨージド、テトラエチルアンモニウムボロヒドリド、ヘキシルトリメチルアンモニウムブロミド、デシルトリメチルアンモニウムクロリド、デシルトリメチルアンモニウムブロミド、n-オクチルトリメチルアンモニウムブロミド、n-オクチルトリメチルアンモニウムクロリド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルノニルアンモニウムブロミド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、エチルトリプロピルアンモニウムヨージド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、テトラプロピルアンモニウムヨージド、テトラプロピルアンモニウムブロミド、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド、トリメチルテトラデシルアンモニウムクロリド、ジデシルジメチルアンモニウムブロミド、ジメチルジオクチルアンモニウムブロミド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ヘキシルジメチルオクチルアンモニウムブロミド、ヘプタデシルトリメチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(以下、TBAHと略記)、トリメチルステアリルアンモニウムクロリド、トリメチルステアリルアンモニウムブロミド、ジラウリルジメチルアンモニウムブロミド、ジドデシルジメチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムヨージド、テトラブチルアンモニウムフルオリド、テトラアミルアンモニウムヨージド、テトラアミルアンモニウムフルオリド、テトラアミルアンモニウムクロリド、テトラアミルアンモニウムヒドロキシド、テトラアミルアンモニウムブロミド、テトラヘキシルアンモニウムヒドロキシド、テトラヘキシルアンモニウムクロリド、テトラヘキシルアンモニウムブロミド、テトラヘキシルアンモニウムヨージド、テトラヘプチルアンモニウムヒドロキシド、テトラヘプチルアンモニウムクロリド、テトラヘプチルアンモニウムブロミド、テトラヘプチルアンモニウムヨージド、テトラヘプチルアンモニウムフルオリド、テトラペンチルアンモニウムヒドロキシド、テトラペンチルアンモニウムクロリド、テトラペンチルアンモニウムブロミド、テトラペンチルアンモニウムヨージド、テトラペンチルアンモニウムフルオリド、テトラヘキシルアンモニウムヒドロキシド、テトラヘキシルアンモニウムクロリド、テトラヘキシルアンモニウムブロミド、テトラヘキシルアンモニウムヨージド、テトラヘキシルアンモニウムフルオリド、テトラヘプチルアンモニウムヒドロキシド、テトラヘプチルアンモニウムクロリド、テトラヘプチルアンモニウムブロミド、テトラヘプチルアンモニウムヨージド、テトラヘプチルアンモニウムフルオリド、テトラオクチルアンモニウムヒドロキシド、テトラオクチルアンモニウムクロリド、テトラオクチルアンモニウムブロミド、テトラオクチルアンモニウムヨージド、テトラオクチルアンモニウムフルオリド等が挙げられる。
【0017】
本発明における有機アルカリ(A)として、電子材料用ガラス基板洗浄剤の洗浄性及び電子材料用ガラス基板の表面粗さの観点から、TMAH、TEAH及びTBAHが好ましい。
【0018】
本発明における無機アルカリ(B)としては、水酸化カリウム及び水酸化ナトリウム等が挙げられる。
【0019】
これらのうち、電子材料用ガラス基板洗浄剤の洗浄性の観点で好ましくは水酸化カリウムである。
【0020】
本発明におけるキレート剤(C)としては、カルボキシル基及び/又はカルボキシレート基を分子内に含有するキレート剤(C−1)、ホスホン酸(塩)基又はリン酸(塩)基を分子内に含有するキレート剤(C−2)及びその他のキレート剤(C−3)等が挙げられる。
【0021】
カルボキシル基及び/又はカルボキシレート基を分子内に含有するキレート剤(C−1)としては、水酸基を有するヒドロキシカルボン酸及び/又はその塩(C−11)と水酸基を有しないカルボン酸及び/又はその塩(C−12)がある。ヒドロキシカルボン酸及び/又はその塩(C−11)としては、クエン酸(塩)、乳酸(塩)、没食子酸(塩)酒石酸(塩)等が挙げられる。水酸基を有しないカルボン酸及び/又はその塩(C−12)としては、エチレンジアミンテトラ酢酸(以下、EDTAと略記)(塩)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(以下、DTPAと略記)(塩)、ヒドロキシエチル−イミノ二酢酸(以下、HIDAと略記)(塩)、1,2−ジアミノシクロヘキサンテトラ酢酸(以下、DCTAと略記)(塩)、トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸(以下、TTHAと略記)(塩)、ニトリロ三酢酸(以下、NTAと略記)(塩)、β−アラニンジ酢酸(塩)、アスパラギン酸ジ酢酸(塩)、メチルグリシンジ酢酸(塩)、イミノジコハク酸(塩)、セリンジ酢酸(塩)、アスパラギン酸(塩)及びグルタミン酸(塩)、ピロメリット酸(塩)、ベンゾポリカルボン酸(塩)、シクロペンタンテトラカルボン酸(塩)等、カルボキシメチルオキシサクシネート、オキシジサクシネート、マレイン酸誘導体、シュウ酸(塩)、マロン酸(塩)、コハク酸(塩)、グルタル酸(塩)、アジピン酸(塩)等が挙げられる。
【0022】
ホスホン酸(塩)基又はリン酸(塩)基を分子内に含有するキレート剤(C−2)としては、メチルジホスホン酸(塩)、アミノトリ(メチレンホスホン酸)(塩)、1−ヒドロキシエチリデン−1、1−ジホスホン酸(塩)(以下、HEDPと略記)、ニトリロトリスメチレンホスホン酸(塩)(以下、NTMPと略記)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(塩)、ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(塩)、プロピレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(塩)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(塩)、トリエチレンテトラミンヘキサ(メチレンホスホン酸)(塩)、トリアミノトリエチルアミンヘキサ(メチレンホスホン酸)(塩)、トランス−1、2−シクロヘキサンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(塩)、グリコールエーテルジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(塩)及びテトラエチレンペンタミンヘプタ(メチレンホスホン酸)(塩)、メタリン酸(塩)、ピロリン酸(塩)、トリポリリン酸(塩)及びヘキサメタリン酸(塩)等が挙げられる。
【0023】
その他のキレート剤(C−3)としては、N,N’−ビス(サリチリデン)−1,2−エタンジアミン、N,N’−ビス(サリチリデン)−1,2−プロパンジアミン、N,N’−ビス(サリチリデン)−1,3−プロパンジアミン及びN,N’−ビス(サリチリデン)−1,4−ブタンジアミン等が挙げられる。
【0024】
本発明におけるキレート剤(C)のうちで、電子材料用ガラス基板洗浄剤の洗浄性向上の観点から好ましいのは、カルボキシル基及び/又はカルボキシレート基を分子内に含有するキレート剤(C−1)及びホスホン酸(塩)基又はリン酸(塩)基を分子内に含有するキレート剤(C−2)であり、更に好ましいのは、酒石酸、クエン酸(塩)、EDTA(塩)、DTPA(塩)、HIDA(塩)、NTA(塩)、NTMP(塩)、HEDP(塩)、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(塩)、ピロリン酸(塩)等である。特に好ましいのは、HEDP(塩)、NTMP(塩)、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(塩)、クエン酸(塩)、DTPA(塩)、及びHIDA(塩)である。
【0025】
本発明における水は、超純水、イオン交換水、RO水及び蒸留水等が挙げられ、清浄度の観点から超純水が好ましい。
【0026】
本発明の電子材料用ガラス基板洗浄剤は、下記数式(1)〜(4)を満たす。下記数式(1)〜(4)を満たさない場合、電子材料用ガラス基板洗浄剤の洗浄性が低く、洗浄後の電子材料の表面が粗い。
[pH]≦0.020×[Si]+12.736 (1)
[pH]≦0.109×[Si]+11.047 (2)
[pH]≧−0.060×[Si]+11.455 (3)
[pH]≧0.023×[Si]+8.416 (4)
ただし、洗浄液として使用される場合の有効成分濃度において、[Si](ppb)は、単位時間あたりに磁気ディスク基板1枚から溶出するSiイオン量を表す。[pH]は、25℃における磁気ディスク基板用洗浄剤のpHを表す。
【0027】
本発明の電子材料用ガラス基板洗浄剤において数式(1)〜(4)を満たすように有機アルカリ(A)、無機アルカリ(B)、キレート剤(C)を調整した洗浄剤で基板を洗浄することで、pHとSiイオン量が高く(良洗浄性)、Raを抑えた基板を製造することができる。
【0028】
本発明の電子材料用ガラス基板洗浄剤が数式(1)〜(4)を満たすには、調整方法として、電子材料用ガラス基板洗浄剤中において有機アルカリ(A)、無機アルカリ(B)及びキレート剤(C)の含有率が下記数式(5)〜(8)を満たすように調整することが好ましい。
(A)≦−2.1×(B)+1.3 (5)
(A)≧−0.5×(B)+0.3 (6)
(A)≧0.8×(B)−0.3 (7)
0.0<(C)≦0.7 (8)
【0029】
本発明の電子材料用ガラス基板洗浄剤におけるSiイオン溶出量試験は下記のように測定できる。
<Siイオン溶出量試験>
2.5インチのハードディスク用ガラス基板1枚を3重量%に希釈した洗浄剤水溶液に浸漬し、以下条件で試験をおこなった。
液量:100g
温度:25℃
浸漬時間:24時間
試験後基板を取り出し、試験液を得た。ICP発光分析装置(Varian社製、730−ES)用いてSiの発光強度を測定して、試験液中のSi濃度を定量した。
【0030】
本発明における25℃における3重量%に希釈した洗浄剤水溶液のpHは、好ましくは9.0〜14.0であり、有機異物残渣低減の観点から、さらに好ましくは10.0〜14.0であり、特に好ましくは11.0〜13.0である。なお、pHは、pHメーター(株式会社堀場製作所製、F−71)を用いて測定温度25℃で測定される。
【0031】
本発明の磁気ディスク基板用洗浄剤には、洗浄性を向上させるために、洗浄対象に合わせて、界面活性剤(D)及び防錆剤(E)等を適宜配合することができる。
【0032】
界面活性剤(D)としては、ノニオン性界面活性剤(D−1)、アニオン性界面活性剤(D−2)及び両性界面活性剤(D−3)等が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤(D−1)としては、としては、アルキレンオキサイド付加型非イオン性界面活性剤(D−1a)及び多価アルコール型非イオン界面活性剤(D−1b)及び1価のアルキルアミンのアルキレンオキサイド付加物(D−1c)等が挙げられる。
【0033】
(D−1a)としては、高級アルコール(炭素数8〜18)アルキレン(炭素数2〜4)オキサイド(活性水素1個当たりの付加モル数1〜30)付加物、アルキル(炭素数1〜12)フェノールエチレンオキサイド(活性水素1個当たりの付加モル数1〜30)付加物、脂肪酸(炭素数8〜18)エチレンオキサイド(活性水素1個当たりの付加モル数1〜30)付加物、脂肪族アミン(炭素数6〜24)のアルキレンオキサイド付加物(活性水素1個当たりの付加モル数1〜30)、ポリプロピレングリコール(分子量200〜4000)エチレンオキサイド(活性水素1個当たりの付加モル数1〜50)付加物、及びポリオキシエチレン(活性水素1個当たりの付加モル数1〜30)アルキル(炭素数1〜20)アリルエーテル、ソルビタンモノラウレートエチレンオキサイド(付加モル数1〜30)付加物、ソルビタンモノオレートエチレンオキサイド(付加モル数1〜30)付加物等の多価(2〜8価又はそれ以上)アルコール(炭素数2〜30)の脂肪酸(炭素数8〜24)エステルエチレンオキサイド付加物(活性水素1個あたりの付加モル数1〜30)等が挙げられる。
【0034】
(D−1b)としては、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレート等の多価(2〜8価又はそれ以上)アルコール(炭素数2〜30)の脂肪酸(炭素数8〜24)エステル、ラウリン酸モノエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド等の脂肪酸アルカノールアミド等が挙げられる。
【0035】
(D−1c)としては、炭素数8〜24の脂肪族アミンのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。脂肪族アミンとしては第一級アミン又は第二級アミンが挙げられる。原料の脂肪族アミンは、直鎖、分岐鎖又は環状でもよく、飽和又は不飽和結合をもっていてもよい。
【0036】
アニオン性界面活性剤(D−2)としては、高分子型アニオン性界面活性剤(D−2a)及び低分子型アニオン性界面活性剤(D−2b)が挙げられる。
【0037】
高分子型アニオン性界面活性剤(D−2a)としては、スルホン酸(塩)基、硫酸エステル(塩)基、リン酸エステル(塩)基、ホスホン酸(塩)基及びカルボン酸(塩)基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有し、1,000〜800,000のMwを有する高分子型アニオン性界面活性剤が挙げられる。高分子型アニオン性界面活性剤は、通常、1分子中に少なくとも2個以上の繰り返し単位を有する。(D−2a)の具体例としては、以下の(D−2a−1)〜(D−2a−5)等が挙げられる。
【0038】
(D−2a−1)スルホン酸(塩)基を有する高分子型アニオン性界面活性剤:
ポリスチレンスルホン酸、スチレン/スチレンスルホン酸共重合体、ポリ{2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸}、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸/スチレン共重合体、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸/アクリルアミド共重合体、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸/(メタ)アクリル酸共重合体、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸/(メタ)アクリル酸/アクリルアミド共重合体、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸/スチレン/アクリルアミド共重合体、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸/スチレン/(メタ)アクリル酸共重合体、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メチルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ジメチルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、アントラセンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物及びアニリンスルホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物等;
【0039】
(D−2a−2)硫酸エステル(塩)基を有する高分子型アニオン性界面活性剤:
ポリ{2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート硫酸エステル}、2−ヒドロキシエチルアクリレート/2−ヒドロキシエチルアクリレート硫酸エステル共重合体及び2−ヒドロキシエチルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート硫酸エステル共重合体、ポリ{2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート}の硫酸エステル化物、ポリ{(メタ)アクリロイルオキシポリオキシアルキレン硫酸エステル}、(メタ)アクリロイルオキシポリオキシアルキレン硫酸エステル/アクリル酸共重合体及びセルロース、メチルセルロース又はエチルセルロースの硫酸エステル化物等;
【0040】
(D−2a−3)リン酸エステル(塩)基を有する高分子型アニオン性界面活性剤:
ポリ{2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートリン酸エステル}、2−ヒドロキシエチルアクリレート/2−ヒドロキシエチルアクリレートリン酸エステル共重合体及び2−ヒドロキシエチルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレートリン酸エステル共重合体、ポリ{2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート}のリン酸エステル化物、ポリ{(メタ)アクリロイルオキシポリオキシアルキレンリン酸エステル}、(メタ)アクリロイルオキシポリオキシアルキレンリン酸エステル/アクリル酸共重合体及びセルロース、メチルセルロース又はエチルセルロースのリン酸エステル化物等;
【0041】
(D−2a−4)ホスホン酸(塩)基を有する高分子型アニオン性界面活性剤:
ポリ{(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェート}、2−ヒドロキシエチルアクリレート/アクリロイルオキシエチルホスフェート共重合体及び2−ヒドロキシエチルメタクリレート/メタクリロイルオキシエチルホスフェート共重合体、ナフタレンホスホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メチルナフタレンホスホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ジメチルナフタレンホスホン酸ホルムアルデヒド縮合物、アントラセンホスホン酸ホルムアルデヒド縮合物及びアニリンホスホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物等;
【0042】
(D−2a−4)カルボン酸(塩)基を有する高分子型アニオン性界面活性剤:
ポリ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸−マレイン酸共重合体、(メタ)アクリル酸−イタコン酸共重合体、(メタ)アクリル酸−フマル酸共重合体、(メタ)アクリル酸/酢酸ビニル共重合体及び2−ヒドロキシエチルメタクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体、ポリ{2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート}のカルボキシメチル化物、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、安息香酸ホルムアルデヒド縮合物及び安息香酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物等。
【0043】
(D−2a)のMwは、パーティクルの再付着防止性及び低泡性の観点等から、1,000〜800,000が好ましく、更に好ましくは1,200〜400,000、特に好ましくは1,500〜80,000、最も好ましくは2,000〜40,000である。
【0044】
低分子型アニオン性界面活性剤(D−2b)としては、低分子型スルホン酸系界面活性剤(D−2b−1)、低分子型硫酸エステル系界面活性剤(D−2b−2)、低分子型脂肪酸系界面活性剤(D−2b−3)及び低分子型リン酸エステル系界面活性剤(D−2b−4)等の分子量(Mw又は構造に基づく計算値の分子量)が1,000未満のアニオン性界面活性剤が挙げられる。
アニオン性界面活性剤のうちのスルホン酸系界面活性剤(D−2b−1)としては、炭素数6〜24のアルコールのスルホコハク酸(モノ、ジ)エステル(塩)、炭素数8〜24のα−オレフィンのスルホン酸化物(塩)、炭素数8〜14のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸(塩)、石油スルホネート(塩)、トルエンスルホン酸(塩)、キシレンスルホン酸(塩)及びクメンスルホン酸(塩)等が挙げられる。(D−2b−1)の具体例としては、ジオクチルスルホコハク酸(塩)、パラトルエンスルホン酸(塩)、オルトトルエンスルホン酸(塩)、メタキシレンスルホン酸(塩)及びパラキシレンスルホン酸(塩)等が挙げられる。
【0045】
低分子型硫酸エステル系界面活性剤(D−2b−2)としては、炭素数8〜18の脂肪族アルコールの硫酸エステル(塩)、炭素数8〜18の脂肪族アルコールのエチレンオキサイド1〜10モル付加物の硫酸エステル(塩)、硫酸化油(塩)、硫酸化脂肪酸エステル(塩)及び硫酸化オレフィン(塩)等が挙げられる。(D−2b−2)の具体例としては、2−エチルヘキサノール硫酸エステル(塩)、オクタノール硫酸エステル(塩)、1,10−デカンジオールジ硫酸エステル(塩)及びラウリルアルコールのエチレンオキサイド(5モル)付加物のジ硫酸エステル(塩)等が挙げられる。
【0046】
低分子型脂肪酸系界面活性剤(D−2b−3)としては、炭素数8〜18の脂肪酸(塩)及び炭素数8〜18の脂肪族アルコールのエーテルカルボン酸(塩)等が挙げられる。(A−2b−3)の具体例としては、n−オクタン酸(塩)、2−エチルヘキサン酸(塩)、n−ノナン酸(塩)、イソノナン酸(塩)、オレイン酸(塩)及びステアリン酸(塩)等が挙げられる。
【0047】
低分子型リン酸エステル系界面活性剤(D−2b−4)としては、炭素数8〜24の高級アルコールのリン酸(モノ、ジ)エステル(塩)及び炭素数8〜24の高級アルコールのアルキレンオキサイド付加物のリン酸(モノ、ジ)エステル(塩)等が挙げられる。(D−2b−4)の具体例としては、ラウリルアルコールモノリン酸エステル(塩)、ラウリルアルコールのエチレンオキサイド(5モル)付加物のリン酸モノエステル(塩)及びオクチルアルコールジリン酸エステル(塩)等が挙げられる。
【0048】
(D−2)が塩を形成する場合の対イオンとしては特に限定無いが、通常、アルカリ金属(ナトリウム及びカリウム)塩、アンモニウム塩、1級アミン(メチルアミン、エチルアミン及びブチルアミン等のアルキルアミン、モノエタノールアミン並びにグアニジン等)塩、2級アミン(ジメチルアミン、ジエチルアミン及びジブチルアミン等のジアルキルアミン並びにジエタノールアミン等)塩、3級アミン{トリメチルアミン、トリエチルアミン及びトリブチルアミン等のトリアルキルアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン並びに、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン(DBN)又は1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1Hイミダゾール、2−メチル−1H−イミダゾール、2−エチル−1H−イミダゾール、4,5−ジヒドロ−1Hイミダゾール、2−メチル−4,5−ジヒドロ−1Hイミダゾール、1,4,5,6−テトラヒドロ−ピリミジン、1,6(4)−ジヒドロピリミジン等}塩及び第4級アンモニウム塩(テトラアルキルアンモニウム等)塩である。これらの中で、基板への金属汚染の観点から、好ましいのはアンモニウム塩、1級アミン塩、2級アミン塩、3級アミン塩及び第4級アンモニウム塩であり、特に好ましいのは3級アミン塩及び第4級アンモニウム塩であり、最も好ましいのはDBU、DBN、DABCO、N−メチルジエタノールアミン、1H−イミダゾール、2−メチル−1H−イミダゾール及び2−エチル−1H−イミダゾールの塩である。
【0049】
アニオン性界面活性剤(D−2)のうち好ましいのは、パーティクルの再付着防止性の観点から高分子型アニオン性界面活性剤(D−2a)、低分子型スルホン酸系界面活性剤(C−2b−1)、低分子型硫酸エステル系界面活性剤(D−2b−2)及び低分子型脂肪酸系界面活性剤(C−1b−3)であり、更に好ましいのは(D−2a)、(D−2b−1)及び(D−2b−2)、特に好ましいのはポリアクリル酸(塩)、ポリスチレンスルホン酸(塩)、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物の塩、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸/アクリル酸共重合体の塩,メタクリロイルオキシポリオキシアルキレン硫酸エステル/アクリル酸共重合体の塩、オクチルベンゼンスルホン酸(塩)、パラトルエンスルホン酸(塩)、メタキシレンスルホン酸(塩)及び2−エチルヘキサノール硫酸エステル(塩)である。
(D−2)は単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0050】
両性界面活性剤(D−3)としては;ベタイン型両性界面活性剤(D−3a){例えば、アルキル(炭素数1〜30)ジメチルベタイン、アルキル(炭素数1〜30)アミドアルキル(炭素数1〜4)ジメチルベタイン、アルキル(炭素数1〜30)ジヒドロキシアルキル(炭素数1〜30)ベタイン、スルフォベタイン型等};アミノ酸型両性界面活性剤(C−3b){例えば、アラニン型[アルキル(炭素数1〜30)アミノプロピオン酸型、アルキル(炭素数1〜30)イミノジプロピオン酸型等]、グリシン型[アルキル(炭素数1〜30)アミノ酢酸型等]};及びアミノスルホン酸塩型両性界面活性剤(D−3c){例えば、アルキル(炭素数1〜30)タウリン型両性界面活性剤等};等が挙げられる。
【0051】
これらの界面活性剤(D)のうち、パーティクルの再付着防止の観点で、高分子アニオン性界面活性剤を配合することが好ましい。
また、クーラント等の有機物汚れに対する洗浄性の観点で、ノニオン性界面活性剤を配合する方が好ましい。
【0052】
界面活性剤(D)の含有率は、洗浄性の観点から磁気ディスク基板用洗浄剤の重量に基づき好ましくは0.01〜20重量%であり、更に好ましくは0.1〜10重量%である。
【0053】
本発明の別の実施態様は、上記の電子材料用ガラス基板洗浄剤を用いて、電子材料用ガラス基板を洗浄する工程を含む磁気ディスク基板の製造方法であり、洗浄性および表面荒れの観点からハードディスク用ガラス基板の製造方法に特に適している。
【実施例】
【0054】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0055】
[製造例1]ポリアクリル酸DBU塩の合成
温調及び攪拌が可能な反応容器にイソプロピルアルコール300部及び超純水100重量部を仕込み、窒素置換後、75℃に昇温した。撹拌下で、アクリル酸の75重量%水溶液407重量部及びジメチル2,2’−アゾビスイソブチレートの15重量%イソプロピルアルコール溶液95重量部を3.5時間かけてそれぞれ同時に滴下した。滴下終了後、75℃で5時間撹拌した後、系内が固化しないように超純水を間欠的に投入し、イソプロピルアルコールが検出できなくなるまで水とイソプロピルアルコールの混合物を留去した。得られたポリアクリル酸水溶液をジアザビシクロウンデセン(DBU)(450重量部)でpHが7になるまで中和し、超純水で濃度調整することにより、アニオン性界面活性剤であるポリアクリル酸DBU塩の40重量%水溶液を得た。尚、合成したポリアクリル酸DBU塩の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと略記。)によって、ポリエチレンオキサイドを標準物質として40℃で測定され、たとえば、装置本体:東ソー(株)製HLC−8120、カラム:東ソー(株)製TSKgel G5000 PWXL、G3000 PW XL、検出器:装置本体内蔵の示差屈折計検出器、溶離液:0.2M無水硫酸ナトリウム、10%アセトニトリル緩衝液、溶離液流量:0.8ml/分、カラム温度:40℃、試料:1.0重量%の溶離液溶液、注入量:100μl、標準物質:東ソー(株)製TSK SE−30、SE−15、SE−8、SE−5の条件により測定した。
GPC法による重量平均分子量(Mw)は10,000であった。
【0056】
実施例1〜9及び比較例1〜6
表1に記載の組成となるように、各成分を配合し、25℃、マグネチックスターラーで40rpm、20分間攪拌して、本発明の洗浄剤及び比較のための洗浄剤を得た。
上記洗浄剤をさらに超純水で3重量%に希釈して、性能試験用のサンプル液を作成した。
【0057】
洗浄剤の洗浄性及び表面荒れの各種性能評価試験は下記の方法で行った。
尚、本評価は大気からの汚染を防ぐため、クラス1,000(FED−STD−209D、米国連邦規格、1988年)のクリーンルーム内で実施した。
【0058】
<洗浄性試験>
研磨剤として市販のコロイダルシリカ(フジミインコーポレイテッド製「COMPOL20」、粒径約20nm)を用いて2.5インチのハードディスク用ガラス基板を以下条件で研磨した。
研磨装置:ナノファクター社製「NFD−4BL」
スラリー供給速度:50mL/分
荷重:30g重/cm
回転数:定盤30rpm、ギア20rpm
研磨時間:10分間
【0059】
基板を研磨し超純水で1分間リンスした後、研磨装置から基板を取り出し、上記のサンプル液を張った超音波洗浄機(出力:200kHz)に浸漬し、25℃で10分間洗浄した。洗浄後の基板を洗浄機から取り出し、1分間流水で基板を洗い流し、窒素ガスで基板を乾燥し評価用基板を得た。
ハードディスク用ガラス基板表面に光を当て、約10μm以上の異物があればそれに当たった反射光を増幅して検出する表面検査装置(ビジョンサイテック社製「Micro−Max VMX−7100」)で観察し、画像解析ソフト「Sigmascan」を用いて基板上の1cm四方に付着している砥粒等のパーティクルの個数を数えた。
なお、ブランクとして超純水での洗浄も実施した。その際の洗浄後の基板上に付着しているパーティクルの個数は840個であった。
洗浄性試験は以下の評価基準で評価し、評価結果を表1に示した。
【0060】
[洗浄性試験の評価基準]
5:洗浄後基板上に付着しているパーティクルの個数がブランクの10%未満
3:洗浄後基板上に付着しているパーティクルの個数がブランクの10%以上50%未満
1:洗浄後基板上に付着しているパーティクルの個数がブランクの50%以上
【0061】
<表面荒れ>
洗浄性試験で使用したハードディスク用ガラス基板を用いて、原子間力顕微鏡(エスアイアイナノテクノロジー製、E−sweep)で下記の条件で表面粗さを測定した。
測定モード:DFM(タッピングモード)
スキャンエリア:10μm×10μm
走査線数:256本(Y方向スキャン)
補正:X、Y方向のフラット補正あり
評価結果を表1に示した。
【0062】
表1より、実施例1〜9の洗浄液は、ガラス基板上に付着するパーティクルの残存が少なく、洗浄性能が高いことがわかる。また、洗浄後の表面荒れが少ないこともわかる。一方で比較例1,2の洗浄液は洗浄性に一定の性能を有するが、洗浄後に基板表面が大きく荒れる。また、比較例3,4の洗浄液は、表面荒れが比較例1,2の洗浄液と比較して抑えられるものの、洗浄性能が低い。[pH],[Si]が数式(1)〜(4)を満たさない比較例4〜6の洗浄液は、洗浄性と表面精度の両立ができていない。
【0063】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の電子材料用ガラス基板洗浄剤は、パーティクルの基板に対する洗浄性を従来の洗浄剤より大幅に向上することができる。また、洗浄後の基板の表面荒れが小さい。そのため、高記録密度化が進んでいるハードディスク基板用洗浄剤として使用することができる。