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特開2017-226805自動車用エンジン冷却液組成物、自動車用エンジン濃縮冷却液組成物及び内燃機関の運転方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-226805(P2017-226805A)
(43)【公開日】2017年12月28日
(54)【発明の名称】自動車用エンジン冷却液組成物、自動車用エンジン濃縮冷却液組成物及び内燃機関の運転方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 5/10 20060101AFI20171201BHJP
   C09K 5/20 20060101ALI20171201BHJP
   F01P 11/14 20060101ALI20171201BHJP
【FI】
   C09K5/10 F
   C09K5/20
   F01P11/14 E
   F01P11/14 C
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-125972(P2016-125972)
(22)【出願日】2016年6月24日
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591125289
【氏名又は名称】日本ケミカル工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100101904
【弁理士】
【氏名又は名称】島村 直己
(74)【代理人】
【識別番号】100180932
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 洋子
(72)【発明者】
【氏名】児玉 康朗
(72)【発明者】
【氏名】八重田 一人
(72)【発明者】
【氏名】吉井 揚一郎
(72)【発明者】
【氏名】岸野 洋祐
(72)【発明者】
【氏名】中野 倫之
(72)【発明者】
【氏名】長澤 雅之
(72)【発明者】
【氏名】亀ノ上 翔吾
(57)【要約】      (修正有)
【課題】特定の動粘度を有し、接触するゴムの膨潤及び冷却液の変色を抑制することが可能な自動車用エンジン冷却液組成物の提供。
【解決手段】(A)粘度特性改良剤としての界面活性剤、(B)ゴム膨潤抑制剤、及び(C)基剤を含有する自動車用エンジン冷却液組成物であって、ゴム膨潤抑制剤(B)がp−ヒドロキシ、メトキシ或いはエトキシフェノール、又は3,5−ジヒドロキシ安息香酸、そのメチル或いはエチルエステルから選択される少なくとも1種であり、基剤が、一価アルコール、二価アルコール、三価アルコール又はグリコールモノアルキルエーテルから選ばれる少なくとも1種のアルコール類及び/又は水からなり、動粘度が、25℃で8.5mm/秒以上であり、ゴム膨潤抑制剤(B)の含有量が、冷却液組成物100質量部に対して、0.03〜0.9質量部である、冷却液組成物。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)粘度特性改良剤としての界面活性剤;
(B)ゴム膨潤抑制剤;及び
(C)基剤
を含有する自動車用エンジン冷却液組成物であって、
ゴム膨潤抑制剤(B)が下記式(1):
【化1】
[式中、Rは、水素、メチル基又はエチル基である]
で表される化合物、及び下記式(2):
【化2】
[式中、Rは、水素、メチル基又はエチル基である]
で表される化合物から選択される少なくとも1種であり、
基剤が、一価アルコール、二価アルコール、三価アルコール及びグリコールモノアルキルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種のアルコール類及び/又は水からなり、
動粘度が、25℃で8.5mm/秒以上であり、
ゴム膨潤抑制剤(B)の含有量が、冷却液組成物100質量部に対して、0.03質量部以上0.9質量部以下である、上記冷却液組成物。
【請求項2】
動粘度が、100℃で2.0mm/秒以下である、請求項1に記載の冷却液組成物。
【請求項3】
ゴム膨潤抑制剤(B)の含有量が、冷却液組成物100質量部に対して、0.05質量部以上0.5質量部以下である、請求項1又は2に記載の冷却液組成物。
【請求項4】
成分(A)の含有量が、冷却液組成物100質量部に対して、0.005質量部以上3質量部以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の冷却液組成物。
【請求項5】
更に防錆剤を含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の冷却液組成物。
【請求項6】
基剤(C)が有機溶剤を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の冷却液組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の冷却液組成物を得るための自動車用エンジン濃縮冷却液組成物であって、基剤を用いて2〜10質量倍に希釈されて用いられる、上記濃縮冷却液組成物。
【請求項8】
濃縮冷却液組成物100質量部に対して、下記成分:
(A)粘度特性改良剤としての界面活性剤;0.1〜99質量部;
(B)ゴム膨潤抑制剤:0.1〜5質量部;及び
(C’)溶剤:0〜99.8質量部
を含有する、請求項7に記載の濃縮冷却液組成物。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の冷却液組成物を冷却液として用いる、内燃機関の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用エンジン冷却液組成物、自動車用エンジン濃縮冷却液組成物及び内燃機関の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車エンジン等を冷却するための冷却液としては様々なものが知られており、その中でも水は冷却性能が最も高いためにエンジン用冷却液として多用されてきた。しかしながら、電解質等を含まないいわゆる純水は、摂氏0℃以下となると凍結し、体積が増大するため、エンジンやラジエーターに損傷を与えるおそれがあるという問題があった。そのため、純水のみでは使用せず、不凍性を目的としてエチレングリコール等のグリコール類をベースとし、これを必要な凍結温度を得るように水を用いて希釈し、必要によりエンジンやラジエーター等に使用される金属、ゴム及び樹脂等の劣化を保護するための各種添加剤を配合した冷却液組成物が使用されてきた。
【0003】
しかしながら、エチレングリコール等のグリコール類を使用した場合、特に低温において冷却液組成物の粘度が著しく上昇してしまうという問題があった。そこで、冷却液の粘度調整のために、粘度特性改良剤が配合され(特許文献1)、冷却液に粘度特性改良剤として界面活性剤を配合することにより適度に高粘度化してエンジンの早期暖機を促し、燃費向上を図る技術が行われてきた。一方、界面活性剤は自動車部品で使用しているゴムを膨潤させるという欠点を有するため、冷却液への浸漬環境下でのゴムの体積変化を抑制するために、酸化防止剤が配合されてきた。
【0004】
例えば、特許文献2には、脂肪族一塩基酸を含むゴム膨潤不凍液/冷却液組成物において、含硫アルコール又はフェノール系の酸化防止剤を配合することが記載されている。特許文献3には、グリコール成分の熱安定性を向上させるための添加剤として、ヒドロキシ安息香酸、イソクエン酸、アセチルサリチル酸等を配合することが記載されている。特許文献4には、グリコール類を主成分とし、脂肪族カルボン酸や芳香族カルボン酸を含む冷却液組成物において、没食子酸、没食子酸誘導体又はカテコール類を配合することにより、アルミニウム、アルミニウム合金の黒変を防止することが記載されている。特許文献5には、冷却液に酸化防止剤としてヒドロキシ化合物(カテコール)を配合することが記載されている。特許文献6には、塩化カルシウムブライン用冷却液にレゾルシン、フロログリシン等を配合することが記載されている。
【0005】
しかしながら、上記のような酸化防止剤を配合した冷却液は、ゴムの膨潤抑制に十分な効果がないか、若しくは冷却液が著しく変色するという問題を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5904278号公報
【特許文献2】特開2009−242663号公報
【特許文献3】WO2004/050785
【特許文献4】WO2005/054398
【特許文献5】GB961409
【特許文献6】特公平2−51988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、特定の動粘度を有し、接触するゴムの膨潤及び冷却液の変色を抑制することが可能な自動車用エンジン冷却液組成物を提供することを目的とする。また本発明は、このような自動車用エンジン冷却液組成物を得るための自動車用エンジン濃縮冷却液組成物を提供することも目的とする。
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、界面活性剤及び基剤を含有する冷却液組成物に、特定のゴム膨潤抑制剤を特定量で配合することにより、上記目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
[1](A)粘度特性改良剤としての界面活性剤;
(B)ゴム膨潤抑制剤;及び
(C)基剤
を含有する自動車用エンジン冷却液組成物であって、
ゴム膨潤抑制剤(B)が下記式(1):
【化1】
[式中、Rは、水素、メチル基又はエチル基である]
で表される化合物、及び下記式(2):
【化2】
[式中、Rは、水素、メチル基又はエチル基である]
で表される化合物から選択される少なくとも1種であり、
基剤が、一価アルコール、二価アルコール、三価アルコール及びグリコールモノアルキルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種のアルコール類及び/又は水からなり、
動粘度が、25℃で8.5mm/秒以上であり、
ゴム膨潤抑制剤(B)の含有量が、冷却液組成物100質量部に対して、0.03質量部以上0.9質量部以下である、上記冷却液組成物。
[2]動粘度が、100℃で2.0mm/秒以下である、上記[1]に記載の冷却液組成物。
[3]ゴム膨潤抑制剤(B)の含有量が、冷却液組成物100質量部に対して、0.05質量部以上0.5質量部以下である、上記[1]又は[2]に記載の冷却液組成物。
[4]成分(A)の含有量が、冷却液組成物100質量部に対して、0.005質量部以上3質量部以下である、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の冷却液組成物。
[5]更に防錆剤を含有する、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の冷却液組成物。
[6]基剤(C)が有機溶剤を含む、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の冷却液組成物。
[7]上記[1]〜[6]のいずれかに記載の冷却液組成物を得るための自動車用エンジン濃縮冷却液組成物であって、基剤を用いて2〜10質量倍に希釈されて用いられる、上記濃縮冷却液組成物。
[8]濃縮冷却液組成物100質量部に対して、下記成分:
(A)粘度特性改良剤としての界面活性剤;0.1〜99質量部;
(B)ゴム膨潤抑制剤:0.1〜5質量部;及び
(C’)溶剤:0〜99.8質量部
を含有する、上記[7]に記載の濃縮冷却液組成物。
[9]上記[1]〜[6]のいずれかに記載の冷却液組成物を冷却液として用いる、内燃機関の運転方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の自動車用エンジン冷却液組成物は特定の動粘度を有するため、内燃機関の燃費効果を向上させることができる。さらには、本発明の自動車用エンジン冷却液組成物によれば、冷却液の変色を抑制しつつ、自動車部品で用いられるゴムの膨潤を抑制することができる。また本発明の自動車用エンジン濃縮冷却液組成物によれば、このような自動車用エンジン冷却液組成物を希釈により得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、ゴム膨潤の推定メカニズムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の自動車用エンジン冷却液組成物(以下、本発明の冷却液組成物ともいう)は、粘度特性改良剤としての界面活性剤(A)、特定のゴム膨潤抑制剤(B)及び基剤(C)を含有することを特徴とする。本発明者らは、粘度特性改良剤としての界面活性剤及び基剤を含有する冷却液組成物に、特定のゴム膨潤抑制剤を組み合わせることにより、界面活性剤が適切に増粘効果を発揮することにより特定の動粘度を付与し、かつ接触するゴムの膨潤及び冷却液の変色を抑制することが可能となることを見出した。従来の公知の酸化防止剤、特にフェノール系の酸化防止剤を配合した冷却液は、ゴムの膨潤抑制に十分な効果がないか、又は著しい変色を伴うが、特定のゴム膨潤抑制剤(B)を配合した本発明の冷却液組成物はゴムの膨潤抑制・変色抑制の両方において優れている。また、本発明に係る粘度特性改良剤による適切な増粘効果に起因する特定の動粘度発現のメカニズムの詳細は定かではないが、以下のように考えられる。すなわち、冷却液中に粘度特性改良剤が存在することによって基剤と複合体を形成し、冷却液中にある種の構造体を形成し、温度変化によって構造体を変化させることができるため、冷却液の粘度特性を調整することができると考えられる。但し、これらのメカニズムに限定して解釈されなくてよい。
【0013】
理論に拘束されないが、本発明の冷却液組成物においては、ゴム膨潤抑制剤(B)は、界面活性剤によりゴム中に引き込まれた酸素による酸化劣化を抑制することにより、ゴムの膨潤を抑制することが可能となると考えられる。界面活性剤が配合された冷却液におけるゴム膨潤の推定メカニズムを図1に示す。先ず、冷却液に接触しているゴムに界面活性剤が浸透し(図1(a)及び(b))、界面活性剤の親水基が酸素を溶存した冷却液をゴム中に引き込みゴムが膨潤する(図1(c))。ゴム中に引き込まれた酸素がゴムを酸化劣化させ、分子鎖の切断や分子中への酸素原子の導入によりゴムの架橋密度が低下する(図1(d))。粗密となったゴム表層からさらに界面活性剤と酸素が溶存した冷却液が引き込まれて浸透し、ゴムが膨潤し(図1(e))、浸透した酸素はさらにゴムを酸化劣化させ、界面活性剤はさらに酸素が溶存した冷却液をゴム中に引き込み、ゴムの膨潤が大きくなっていく(図1(e))。
【0014】
ここで本明細書において、「ゴム」とは、自動車用エンジン、インバータ及びバッテリー並びにホース類等、自動車用エンジン冷却液が接触するものであり、具体的には、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)や、水素化ニトリルゴム(H−NBR)、ニトリルゴム(NBR)、フッ素ゴム(FKM)、シリコーンゴム(VMQ)等が挙げられる。本発明の冷却液組成物は、ゴム分子のポリマー主鎖に炭素−水素結合等の構造を有し、酸素が界面活性剤により取り込まれることにより分子鎖の切断や分子中への酸素原子の導入が起こりやすいゴムに対して特に所望の効果を奏することができる。
【0015】
ここで本明細書において、「低温」は例えば25℃を意味し、「高温」は例えば100℃を意味する。
【0016】
本発明の冷却液組成物に用いる界面活性剤(A)としては、通常粘度特性改良剤として冷却液組成物に使用でき、本発明の効果が得られるものであれば特に限定されず、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤及び両性界面活性剤のいずれであってもよい。界面活性剤(A)は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0017】
非イオン界面活性剤としては、具体的には、ポリアルキレングリコール鎖を有する化合物、グリセリン、ソルビトール、ショ糖等の多価アルコールと脂肪酸のエステル及び脂肪酸アルカノールアミド等を挙げることができるが、耐熱性及び水溶性の観点から、ポリアルキレングリコール鎖を有する化合物が好ましく、ポリエチレングリコール鎖を有する化合物がより好ましい。ポリエチレングリコール鎖を有する化合物としては、例えばポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンモノアルキルエーテル、ポリオキシエチレンジアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール多価アルコールエーテル、ポリエチレングリコールアルキルアミノエーテル、ポリエチレングリコールモノ脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールジ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及びポリオキシエチレン脂肪酸アミド等を挙げることができる。これらの中で、低配合量で25℃における動粘度上昇が高く、100℃における動粘度上昇が低い、ポリオキシエチレンモノアルキルエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリエチレングリコールジ脂肪酸エステル及びポリオキシエチレン脂肪酸アミドが好ましく、ポリオキシエチレンモノアルキルエーテルがより好ましい。
【0018】
上記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、下記式(3):
【化3】
[式中、Rは、直鎖状又は分岐鎖状の炭素原子数12以上かつ24以下のアルキル基又はアルケニル基であり、
は、エチレン基又はプロピレン基であり、
pは、ROの平均付加モル数を示し、0.5以上かつ20以下の数である]
で表される化合物であることが好ましい。
【0019】
上記Rについて、アルキル基又はアルケニル基は、直鎖状でも分岐鎖状であってもよいが、増粘効果の観点から、直鎖状であることが好ましい。アルキル基又はアルケニル基の炭素原子数は12以上かつ24以下のものが好ましく、16以上かつ22以下のものがより好ましく、20以上かつ22以下のものが更に好ましい。
【0020】
具体的には、ラウリル基、ミリスチル基、セチル基、マルガリル基、イソステアリル基、2−ヘプチルウンデシル基、ステアリル基、アラキジル基、ベヘニル基、リグノセリル基等のアルキル基;オレイル基等のアルケニル基が挙げられ、セチル基、ステアリル基、ベヘニル基が好ましく、ステアリル基及びベヘニル基がより好ましい。
【0021】
上記Rは、エチレン基又はプロピレン基が好ましく、増粘効果の観点から、エチレン基がより好ましい。
【0022】
上記pはROの平均付加モル数を示し、増粘効果の観点から、0.5以上かつ20以下の数が好ましく、1以上かつ15以下の数であることがより好ましく、2以上かつ11以下の数であることが更に好ましく、3以上かつ8以下の数であることがより更に好ましい。
【0023】
アニオン界面活性剤としては、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪酸塩、アルキルリン酸エステル塩及びポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩等を挙げることができ、低配合量で25℃における動粘度上昇が高く、100℃における動粘度上昇が低い、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩が好ましい。
【0024】
上記ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩は、下記式(4):
【化4】
[式中、
は、直鎖状又は分岐鎖状の炭素原子数16以上かつ24以下のアルキル基又はアルケニル基であり、
は、エチレン基又はプロピレン基であり、
qは、ROの平均付加モル数を示し、0.5以上かつ10以下の数であり、
Mは、陽イオン又は水素原子である。]
で表される化合物であることが好ましい。
【0025】
上記Rについて、アルキル基は、直鎖状でも分岐鎖状であってもよいが、増粘効果の観点から、直鎖状であることが好ましい。アルキル基及びアルケニル基の炭素原子数は16以上かつ24以下のものが好ましく、18以上かつ22以下のものがより好ましく、20以上かつ22以下のものが更に好ましい。
【0026】
具体的には、セチル基、マルガリル基、イソステアリル基、2−ヘプチルウンデシル基、ステアリル基、アラキジル基、ベヘニル基、リグノセリル基等のアルキル基;オレイル基等のアルケニル基が挙げられ、セチル基、ステアリル基、アラキジル基、ベヘニル基が好ましく、ベヘニル基がより好ましい。
【0027】
上記Rは、エチレン基又はプロピレン基であり、増粘効果の観点から、エチレン基が好ましい。
【0028】
上記qはROの平均付加モル数を示し、低温時及び高温時において特定の動粘度を有する観点から、0.5以上かつ10以下の数が好ましく、1以上かつ8以下の数であることがより好ましく、2以上かつ7以下の数であることが更に好ましく、3以上かつ6以下の数であることがより更に好ましい。
【0029】
上記Mは陽イオン又は水素原子であり、陽イオンが好ましく、陽イオンとしては、具体的には、アルカリ金属イオン及びアンモニウムイオン等が挙げられ、アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等を挙げることができ、ナトリウム又はカリウムが好ましい。
【0030】
カチオン界面活性剤としては、例えばアルキルアミン塩及び第四級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0031】
両性界面活性剤としては、例えばアルキルベタイン及びアルキルアミンオキサイド等が挙げられる。
【0032】
本発明の冷却液組成物に用いる界面活性剤(A)としては、通常粘度特性改良剤として冷却液組成物に使用でき、本発明の効果が得られるものであれば特に限定されないが、増粘効果の観点から、ノニオン界面活性剤又はアニオン界面活性剤が好ましく、アニオン界面活性剤がより好ましい。
【0033】
本発明の冷却液組成物は、アルカリ金属化合物(A’)を含有していてもよい。用いる界面活性剤(A)が、アニオン界面活性剤、特に式(4)で表されるアニオン界面活性剤である場合には、アルカリ金属化合物(A’)を含有することが好ましい。
【0034】
上記アルカリ金属化合物(A’)は、アルカリ金属塩及びアルカリ金属水酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、アルカリ金属塩は、界面活性剤(A)を除く。アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム、リチウム等が挙げられる。上記アルカリ金属塩としては、無機酸又は有機酸のアルカリ金属塩、トリアゾールやチアゾールのアルカリ金属塩等が挙げられる。上記無機酸のアルカリ金属塩としては、亜硝酸ナトリウム及び亜硝酸カリウム等の亜硝酸のアルカリ金属塩;硝酸ナトリウム及び硝酸カリウム等の硝酸のアルカリ金属塩;モリブデン酸ナトリウム及びモリブデン酸カリウム等のモリブテン酸のアルカリ金属塩;次亜塩素酸ナトリウム及び次亜塩素酸カリウム等の次亜塩素酸のアルカリ金属塩;硫酸ナトリウム及び硫酸カリウム等の硫酸のアルカリ金属塩;炭酸ナトリウム及び炭酸カリウム等の炭酸のアルカリ金属塩;塩化ナトリウム及び塩化カリウム等の塩酸のアルカリ金属塩;リン酸ナトリウム及びリン酸カリウム等のリン酸のアルカリ金属塩;ケイ酸ナトリウム及びケイ酸カリウム等のケイ酸のアルカリ金属塩;ホウ酸ナトリウム及びホウ酸カリウム等のホウ酸のアルカリ金属塩等が挙げられる。上記有機酸のアルカリ金属塩としては、安息香酸、p−トルイル酸、p−tertブチル安息香酸等の芳香族カルボン酸のアルカリ金属塩;アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、クエン酸等の脂肪族多価カルボン酸のアルカリ金属塩等が挙げられる。上記トリアゾールやチアゾールのアルカリ金属塩としては、ベンゾトリアゾールのアルカリ金属塩等が挙げられる。上述したアルカリ金属塩の中では、低温時及び高温時の冷却液組成物の動粘度を上記所定の範囲とする観点から、脂肪族多価カルボン酸のアルカリ金属塩が好ましく、セバシン酸ジカリウム塩がより好ましい。尚、防錆剤及び/又はpH調整剤等にアルカリ金属塩を用いる場合は、アルカリ金属塩として用いられたものとする。その場合、必ずしも別途アルカリ金属化合物を添加する必要はない。
【0035】
上記アルカリ金属水酸化物としては、特に限定されるものではないが、具体的には、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム等が挙げられる。上述したアルカリ金属水酸化物の中では、低温時及び高温時の冷却液組成物の動粘度を上記所定の範囲とする観点から、水酸化カリウムが好ましい。
【0036】
本発明の冷却液組成物における界面活性剤(A)の含有量は、低温時及び高温時の冷却液組成物の動粘度を上記所定の範囲とする観点から、後述する基剤を基準にして(100gに対して)、好ましくは0.01mmol以上、より好ましくは0.05mmol以上、更に好ましくは0.1mmol以上、更に好ましくは0.15mmol以上、更に好ましくは0.2mmol以上、更に好ましくは0.25mmol以上、更に好ましくは0.3mmol以上、更に好ましくは0.4mmol以上であり、冷却性を高める観点及び半固体化を抑制する観点から、好ましくは3mmol以下、より好ましくは2mmol以下、更に好ましくは1mmol以下であり、更に好ましくは0.8mmol以下であり、これらの観点から、0.01mmol以上3mmol以下であることが好ましく、0.05mmol以上3mmol以下であることがより好ましく、0.1mmol以上2mmol以下であることがより好ましく、0.2mmol以上1mmol以下であることが更に好ましく、0.25mmol以上0.8mmol以下であることが更に好ましく、0.3mmol以上0.8mmol以下であることが更に好ましく、0.4mmol以上0.8mmol以下であることが更に好ましい。尚、防錆剤及び/又はpH調整剤を用いる場合、界面活性剤(A)の含有量は、基剤と防錆剤及び/又はpH調整剤との合計量を基準にして(100gに対して)、上記の範囲とすることも好ましい。
【0037】
また、本発明の冷却液組成物100質量部中、上記界面活性剤(A)の含有量は、低温時及び高温時の冷却液組成物の動粘度を上記所定の範囲とする観点から好ましくは0.005質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上、更に好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.08質量部以上、更に好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは0.2質量部以上であり、冷却性を高める観点及び半固体化を抑制する観点から、好ましくは3質量部以下、より好ましくは1.8質量部以下、更に好ましくは1質量部以下、更に好ましくは0.6質量部以下であり、これらの観点から、好ましくは0.005〜3質量部、より好ましくは0.01〜1.8質量部、更に好ましくは0.08〜1質量部、更に好ましくは0.1〜0.6質量部、更に好ましくは0.2〜0.6質量部である。
【0038】
本発明の冷却液組成物における上記アルカリ金属化合物(A’)の含有量は、用いる界面活性剤(A)との組み合わせにおいて低温時及び高温時の冷却液組成物の動粘度を上記所定の範囲とする観点から、後述する基剤を基準にして(100gに対して)、好ましくは0.5mmol以上、より好ましくは1.0mmol以上、更に好ましくは1.5mmol以上であり、更に好ましくは3mmol以上、更に好ましくは5mmol以上であり、冷却性を高める観点及び析出を抑制する観点から、好ましくは90mmol以下、より好ましくは70mmol以下、更に好ましくは45mmol以下、更に好ましくは20mmol以下、更に好ましくは15mmol以下であり、これらの観点から、0.5mmol以上90mmol以下であることが好ましく、1mmol以上90mmol以下であることがより好ましく、1mmol以上70mmol以下であることが更に好ましく、1mmol以上45mmol以下であることが更に好ましく、1.5mmol以上20mmol以下であることが更に好ましく、3mmol以上20mmol以下であることが更に好ましく、5mmol以上15mmol以下であることが更に好ましい。尚、防錆剤及び/又はpH調整剤を用いる場合、アルカリ金属化合物の含有量は、基剤と防錆剤及び/又はpH調整剤との合計量を基準(100gに対して)として、上記の範囲とすることも好ましい。また、防錆剤及び/又はpH調整剤としてアルカリ金属化合物を用いる場合、当該防錆剤及び/又はpH調整剤をアルカリ金属化合物としてモル数を計算する。
【0039】
上記アルカリ金属化合物(A’)の含有量は、上記界面活性剤(A)としてC2245O−(CHCHO)−SONa又はC2245O−(CHCHO)−SOKと共に用いる場合には、後述する基剤を基準(100gに対して)として、1.0mmol以上90mmol以下であることが好ましく、1.0mmol以上45mmol以下であることがより好ましい。尚、アルカリ金属化合物の含有量は、アルカリ金属塩とアルカリ金属水酸化物と両方用いる場合は、合計モル数である。また、防錆剤及び/又はpH調整剤としてアルカリ金属化合物を用いる場合、当該防錆剤及び/又はpH調整剤をアルカリ金属化合物としてモル数を計算する。
【0040】
また、本発明の冷却液組成物における上記アルカリ金属化合物(A’)の含有量は、用いる界面活性剤(A)との組み合わせにおいて低温時及び高温時の冷却液組成物の動粘度を上記所定の範囲とする観点から、本発明の冷却液組成物100質量部中、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.02質量部以上、更に好ましくは0.03質量部以上、更に好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは0.25質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1質量部以上であり、冷却性を高める観点及び析出を抑制する観点から、好ましくは30質量部以下、より好ましくは21質量部以下、更に好ましくは20質量部以下、更に好ましくは10質量部以下、更に好ましくは7質量部以下、更に好ましくは5質量部以下であり、これらの観点から、アルカリ金属化合物の含有量は、好ましくは0.01〜30質量部、より好ましくは0.01〜20質量部、更に好ましくは0.02〜10質量部、更に好ましくは0.03〜10質量部、更に好ましくは0.05〜7質量部、更に好ましくは0.1〜7質量部、更に好ましくは0.5〜7質量部、更に好ましくは1〜7質量部、更に好ましくは1〜5質量部である。尚、防錆剤及び/又はpH調整剤にアルカリ金属化合物を用いる場合、当該防錆剤及び/又はpH調整剤をアルカリ金属化合物として含有量を計算する。
【0041】
本発明の冷却液組成物中、アルカリ金属イオンと界面活性剤(A)とのモル比(アルカリ金属イオン/界面活性剤)は、低温時及び高温時の冷却液組成物の動粘度を上記所定の範囲とする観点から、好ましくは1.5以上、好ましくは2.5以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは5以上、更に好ましくは10以上、更に好ましくは20以上、更に好ましくは30以上、更に好ましくは40以上であり、そして、同様の観点から、好ましくは3000以下、より好ましくは2500以下、更に好ましくは2000以下、更に好ましくは1500以下、更に好ましくは1100以下、更に好ましくは1000以下、更に好ましくは700以下、更に好ましくは500以下、更に好ましくは300以下、更に好ましくは200以下、更に好ましくは100以下、であり、これらの観点から、好ましくは1.5以上3000以下、より好ましくは2.5以上3000以下、更に好ましくは3以上2500以下、更に好ましくは5以上2000以下、更に好ましくは5以上1500以下、更に好ましくは10以上1000以下、更に好ましくは10以上700以下、更に好ましくは20以上500以下、更に好ましくは30以上300以下、更に好ましくは30以上200以下、更に好ましくは30以上100以下、更に好ましくは40以上100以下である。
【0042】
尚、アルカリ金属イオンのモル数は、アルカリ金属が複数種ある場合には、各アルカリ金属の合計モル数である。アルカリ金属イオンは、冷却液中の全アルカリ金属のイオンを意味し、上記アルカリ金属化合物由来のアルカリ金属イオンだけでなく、上記界面活性剤由来のアルカリ金属イオン、防錆剤及びpH調整剤のような他の任意成分由来のアルカリ金属イオンを含む。また、界面活性剤のモル数は、界面活性剤が混合物である場合には、該混合物の各成分の合計モル数である。
【0043】
本発明の冷却液組成物は、特定のゴム膨潤抑制剤(B)を含む。ゴム膨潤抑制剤(B)は、下記式(1):
【化5】
[式中、Rは、水素、メチル基又はエチル基である]
で表される化合物、及び下記式(2):
【化6】
[式中、Rは、水素、メチル基又はエチル基である]
で表される化合物から選択される少なくとも1種である。本発明の冷却液組成物は、粘度特性改良剤として界面活性剤(A)を含有するが、当該ゴム膨潤抑制剤を含むことにより、ゴムの膨潤及び冷却液の変色を抑制することができる。
【0044】
上記式(1)又は(2)で表される化合物によるゴムへの作用は、理論に拘束されないが、ゴムの酸化劣化はラジカル連鎖反応であり、ラジカル化したゴム分子に対し、自身がラジカル化することでゴム分子を還元すると考えられる。上記式(1)で表される化合物は、溶解性の観点から、Rはメチル基又はエチル基であることが好ましい。上記式(2)で表される化合物は、溶解性の観点から、Rはメチル基又はエチル基であることが好ましい。
【0045】
また、本発明の冷却液組成物における上記ゴム膨潤抑制剤(B)の含有量は、用いる界面活性剤(A)との組み合わせにおいてゴムの膨潤を抑制する観点から、本発明の冷却液組成物100質量部中、0.03質量部以上であり、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは0.15質量部以上、より更に好ましくは0.2質量部以上であり、冷却液の変色を抑制する観点から、0.9質量部以下であり、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.45質量部以下、更に好ましくは0.4質量部以下、より更に好ましくは0.35質量部以下であり、これらの観点から、0.03質量部以上0.9質量部以下であり、好ましくは0.05質量部以上0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以上0.45質量部以下、更に好ましくは0.15質量部以上0.4質量部以下、より更に好ましくは0.2質量部以上0.35質量部以下である。尚、後述する防錆剤等のその他の添加剤として式(1)及び/又は(2)で表される化合物を用いる場合、当該その他の添加剤をゴム膨潤抑制剤として含有量を計算する。
【0046】
本発明の冷却液組成物における上記ゴム膨潤抑制剤(B)の含有量は、用いる界面活性剤(A)との組み合わせにおいてゴムの膨潤を抑制する観点から、後述する基剤を基準にして(100gに対して)、好ましくは0.3mmol以上、より好ましくは0.6mmol以上、更に好ましくは0.8mmol以上、より更に好ましくは1.1mmol以上であり、冷却液の変色を抑制する観点から、好ましくは4.0mmol以下、より好ましくは3.6mmol以下、更に好ましくは3.2mmol以下、より更に好ましくは2.8mmol以下であり、これらの観点から、好ましくは0.3mmol以上4.0mmol以下、より好ましくは0.6mmol以上3.6mmol以下、更に好ましくは0.8mmol以上3.2mmol以下、より更に好ましくは1.1mmol以上2.8mmol以下である。尚、防錆剤及び/又はpH調整剤を用いる場合、ゴム膨潤抑制剤の含有量は、基剤と防錆剤及び/又はpH調整剤との合計量を基準(100gに対して)として、上記の範囲とすることも好ましい。また後述する防錆剤等のその他の添加剤として式(1)及び/又は(2)で表される化合物を用いる場合、当該その他の添加剤をゴム膨潤抑制剤としてモル数を計算する。
【0047】
上記ゴム膨潤抑制剤(B)の含有量は、上記界面活性剤(A)としてC2245O−(CHCHO)−SONa又はC2245O−(CHCHO)−SOKと共に用いる場合には、後述する基剤を基準(100gに対して)として、0.8mmol以上3.2mmol以下であることが好ましく、1.1mmol以上2.8mmol以下であることがより好ましい。尚、後述する防錆剤等のその他の添加剤として式(1)及び/又は(2)で表される化合物を用いる場合、当該その他の添加剤をゴム膨潤抑制剤としてモル数を計算する。
【0048】
本発明の冷却液組成物中、ゴム膨潤抑制剤(B)と界面活性剤(A)とのモル比(ゴム膨潤抑制剤/界面活性剤)は、ゴムの膨潤を抑制する観点から、好ましくは0.36以上、より好ましくは0.72以上、更に好ましくは0.96以上、より更に好ましくは1.3以上であり、冷却液の変色を抑制する観点から、好ましくは4.8以下、より好ましくは4.3以下、更に好ましくは3.8以下、より更に好ましくは3.3以下であり、これらの観点から、好ましくは0.36〜4.8、より好ましくは0.72〜4.3、更に好ましくは0.96〜3.8、より更に好ましくは1.3〜3.3である。尚、後述する防錆剤等のその他の添加剤として式(1)及び/又は(2)で表される化合物を用いる場合、当該その他の添加剤をゴム膨潤抑制剤として含有量を計算する。
【0049】
尚、ゴム膨潤抑制剤の含有量は、式(1)で表される化合物及び/又は式(2)で表される化合物が複数種ある場合には、各式(1)で表される化合物及び/又は式(2)で表される化合物の合計の含有量である。また、ゴム膨潤抑制剤のモル数は、式(1)で表される化合物及び/又は式(2)で表される化合物が複数種ある場合には、各式(1)で表される化合物及び/又は式(2)で表される化合物の合計モル数である。
【0050】
本発明の冷却液組成物に用いる基剤(C)としては、水及び有機溶剤が挙げられ、水単独、有機溶剤単独、水と有機溶剤との混合物として用いることができるが、不凍性を考慮し、水と有機溶剤との混合物を用いることが好ましい。本発明の冷却液組成物において、基剤(C)は主たる成分として含まれていることが好ましい。ここで、「主たる成分」とは、冷却液組成物のベースとなる成分であり、最も多く含まれている成分を示す。また、基剤(C)は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で添加剤等を配合して用いてもよい。本明細書において、本発明の冷却液組成物に含まれる当該成分は、後述するその他の添加剤として定義されるものとする。
【0051】
上記有機溶剤としては、通常冷却液組成物に使用でき、本発明の効果が得られるものであれば特に限定されないが、水性のものが好ましく、例えば、一価アルコール、二価アルコール、三価アルコール及びグリコールモノアルキルエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1種のアルコール類を挙げることができる。
【0052】
一価アルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノールの中から選ばれる1種又は2種以上の混合物からなるものを挙げることができる。
【0053】
二価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ヘキシレングリコールの中から選ばれる1種又は2種以上の混合物からなるものを挙げることができる。
【0054】
三価アルコールとしては、例えばグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、5−メチル−1,2,4−ヘプタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオールの中から選ばれる1種又は2種以上の混合物からなるものを挙げることができる。
【0055】
グリコールモノアルキルエーテルとしては、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテルの中から選ばれる1種又は2種以上の混合物からなるものを挙げることができる。
【0056】
上記有機溶剤の中でもエチレングリコール、プロピレングリコール及び1,3−プロパンジオールが、取り扱い性、価格、入手容易性の観点から好ましい。
【0057】
従って、基剤(C)は、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール及び水からなる群から選ばれる1種以上を含むことが好ましく、エチレングリコールと水とを含むことがより好ましい。また、基剤(C)は、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール及び水からなる群から選ばれる1種以上からなることが好ましく、エチレングリコールと水とからなることがより好ましい。上記基剤として用いる水としてはイオン交換水が更に好ましい。
【0058】
本発明の冷却液組成物100質量部中、基剤(C)の含有量は、冷却液として機能する観点から、好ましくは50質量部以上、より好ましくは75質量部以上、更に好ましくは80質量部以上、より更に好ましくは90質量部以上であり、本発明の冷却液組成物の各成分を配合する観点から、好ましくは99.92質量部以下であり、より好ましくは99.9質量部以下であり、更に好ましくは99.8質量部以下、より更に好ましくは99.7質量部以下であり、これらの観点から、50〜99.92質量部であることが好ましく、80〜99.9質量部であることがより好ましく、90〜99.9質量部であることが更に好ましく、90〜99.8質量部であることが更に好ましく、90〜99.7質量部であることがより更に好ましい。
【0059】
基剤(C)が水とアルコール類を含む場合、水とアルコール類の配合割合については不凍性・引火性を考慮し、任意に調整できる。基剤中の水とアルコール類の質量割合は、引火点を発生することを回避する観点から20:80〜90:10(水:アルコール類)であることが好ましく、40:60〜75:25であることがより好ましい。
【0060】
本発明の冷却液組成物は、低温時の冷却損失を抑制する観点から、25℃における動粘度が8.5mm/秒以上であり、ウォーターポンプへの負荷を回避し、内燃機関の燃費悪化を抑制する観点から、25℃における動粘度が3000mm/秒以下が好ましく、これらの観点から、好ましくは8.5〜3000mm/秒、より好ましくは9〜2000mm/秒、更に好ましくは50〜1000mm/秒である。
【0061】
本発明の冷却液組成物は、高温時の冷却能力が維持され、オーバーヒートを防ぐ観点から、100℃における動粘度が好ましくは2.0mm/秒以下であり、より好ましくは0.3〜2.0mm/秒、更に好ましくは0.4〜1.8mm/秒である。冷却液組成物の冷却能力は、例えばラジエータ熱透過率を測定することにより評価することができる。尚、水100%の冷却液の100℃における動粘度は0.3mm/秒である。
【0062】
本発明の冷却液においては、上記成分を含むことにより、動粘度を上記所定の範囲とすることが可能となる。25℃における動粘度を高くしたい場合には、界面活性剤(A)の含有量を増加させる方法、アルカリ金属化合物(A’)を用いる場合その含有量を調整する方法、基剤(C)がアルコール類を含む場合アルコール類の含有量を増加させる方法等により達成することができ、また100℃における動粘度を低くしたい場合には、界面活性剤(A)の含有量を減少させる方法、アルカリ金属化合物(A’)を用いる場合アルカリ金属化合物(A’)の含有量を調整する方法、基剤(C)がアルコール類を含む場合アルコール類の含有量を低下させる方法等により達成することができる。
【0063】
本発明の冷却組成物には、必要に応じて、上記成分(A)〜(C)以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の添加剤を配合することができる。
【0064】
例えば、本発明の冷却組成物には、エンジン冷却液経路に使用されている金属の腐食を効果的に抑制するため、少なくとも1種以上の防錆剤を本発明の効果を損なわない範囲で含ませることができる。防錆剤としては、リン酸及び/又はその塩、脂肪族カルボン酸及び/又はその塩、芳香族カルボン酸及び/又はその塩、トリアゾール類、チアゾール類、ケイ酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、ホウ酸塩、モリブテン酸塩、及びアミン塩のいずれか1種又は2種以上の混合物を挙げることができる。
【0065】
例えば、本発明の冷却組成物には、金属の腐食防止のため、少なくとも1種以上のpH調整剤を本発明の効果を損なわない範囲で含ませることができる。pH調整剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウムのいずれか1種又は2種以上の混合物を挙げることができる。
【0066】
本発明の冷却液組成物の25℃におけるpHは、好ましくは6以上、より好ましくは7以上であり、そして、好ましくは10以下、より好ましくは9以下である。
【0067】
また、本発明の冷却組成物には、例えば、着色剤、染料、分散剤又は苦味剤等を本発明の効果を損なわない範囲で適宜添加することができる。
【0068】
上記その他の添加剤の合計配合量は、組成物100質量部に対して、通常10質量部以下、好ましくは5質量部以下である。
【0069】
本発明において、冷却液組成物の製造方法は、本発明の効果が得られれば、特に限定されず、通常の冷却液組成物の製造方法を用いることができる。例えば、低温で均一に撹拌することで製造できる。本発明の冷却液組成物は、混合後、好ましくは60℃以上、より好ましくは80℃以上、そして、好ましくは100℃以下に、加熱し、必要に応じ攪拌し、溶解させた後、室温(20℃)まで、冷却することで得られるものであることがより好ましい。
【0070】
本発明は、自動車用エンジン濃縮冷却液組成物(以下、本発明の濃縮冷却液組成物ともいう)にも関する。本発明の濃縮冷却液組成物は、本発明の冷却液組成物の粘度特性改良剤としての界面活性剤(A)、ゴム膨潤抑制剤(B)、及び必要により溶剤(C’)を含有する組成物である。本発明の濃縮冷却液組成物は、基剤(C)を用いて、例えば2〜10質量倍に希釈して本発明の冷却液組成物を得るために用いることができる。上記溶剤(C’)は、水やグリコール類等の通常冷却液組成物に使用できる液体であり、具体例は、基剤(C)について説明した上述の記載を引用するものとする。また上記溶剤(C’)は、基剤(C)と同一であっても異なっていてもよい。本発明の濃縮冷却液組成物は、予め粘度特性改良剤としての界面活性剤(A)、ゴム膨潤抑制剤(B)、及び必要によりアルカリ金属化合物(A’)が濃縮されていた場合でも希釈後にゴムの膨潤を抑制することが可能であるため、エンジンに充填する直前に基剤(C)で希釈することで、上記冷却液組成物として使用することができる。また、本発明の濃縮冷却液組成物には、得られる冷却液組成物について本発明の効果を損なわない範囲で、その他の添加剤を配合することができる。当該その他の添加剤としては、本発明の冷却液組成物について説明した上述の記載を引用するものとする。また当該添加剤は、溶剤(C’)に配合して用いてもよい。
【0071】
本発明の濃縮冷却液組成物の一実施形態としては、上記濃縮冷却液組成物としては、濃縮冷却液組成物100質量部に対して、下記成分:
(A)粘度特性改良剤としての界面活性剤;0.1〜99質量部;
(B)ゴム膨潤抑制剤:0.1〜5質量部;及び
(C’)溶剤:0〜99.8質量部
を含有するものが挙げられる。
【0072】
本発明の濃縮冷却液組成物は、上記アルカリ金属化合物(A’)を含有していてもよい。本発明の濃縮冷却液組成物における上記アルカリ金属化合物(A’)の含有量は、濃縮冷却液組成物100質量部に対して、好ましくは1〜30質量部、より好ましくは5〜15質量部である。
【0073】
本発明の冷却液組成物は、一般に冷却液として用いることができ、内燃機関の冷却液として用いることが好ましい。よって、本発明は、本発明の冷却液組成物を冷却液として用いる、内燃機関の運転方法(以下、本発明の内燃機関の運転方法ともいう)にも関する。本発明の内燃機関の運転方法によれば、内燃機関の燃費効果が大きく向上させることが可能となる。尚、本発明の冷却液組成物は、電池スタック、燃料電池スタック等の冷却液にも用いることができる。
【0074】
以下、本発明について、実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下、処方中の数値は質量部を示す。
【実施例】
【0075】
[1.LLCの調製]
下記表1に示す処方の材料を添加し、撹拌・混合してLLCを作製した。表1中、防錆剤として小倉合成工業株式会社製のセバシン酸、pH調整剤として株式会社大阪ソーダ製の苛性カリを使用した。またゴム膨潤抑制剤として用いた化合物の構造を以下に示す。
【化7】
【0076】
【表1】
【0077】
[実施例1〜6及び比較例1〜11]
下記表2に記載のゴム膨潤抑制剤、界面活性剤(A)(粘度特性改良剤)としてポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩(式(4)のRが直鎖状の炭素数22のアルキル基、Rがエチレン基、qが4、Mがナトリウム)及び水を、表2−1及び表2−2に記載の配合量(質量部)でLLCに合計が100質量部となるように混合し、実施例1〜6の冷却液組成物及び比較例1〜11の冷却液組成物を作製した。ここで、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩は以下のように合成した。
【0078】
<ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩の合成方法>
外部ジャケットを有す薄膜式硫酸化反応器を使用し、炭素数22を主とする高級アルコール(花王株式会社製、商品名;カルコール220−80)のアルコールのエトキシレート(平均エチレンオキサイド付加モル数4.0)を5.0L/hの供給速度で薄膜状に流下するとともに、乾燥空気で希釈した三酸化硫黄ガス(三酸化硫黄ガス濃度:1.1容量%)を、反応器冷却温度40℃、供給速度130L/min(三酸化硫黄/エトキシレートのモル比:1.00)の条件で加えて硫酸化反応を行った。
【0079】
得られたポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸化物を2.5%水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム/ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルのモル比:1.10)で、ポリオキシエチレンエーテル硫酸ナトリウム塩の濃度が23%以上27%以下の水溶液になるように中和し、炭素数22(平均エチレンオキサイド付加モル数4.0)のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム塩を合成した。
【0080】
<評価試験>
得られた冷却液組成物について下記評価試験を行った。
<1.粘度特性への影響試験>
JIS K2283に基づき、25℃の動粘度を測定した。冷却液組成物の25℃における動粘度が、8.5mm/s以上である場合を良好であると評価した。
<2.ゴム体積変化率の測定>
冷却液の温度を120℃に設定し、H−NBRゴムの試験片を0.1MPaの酸素加圧下で1000時間浸漬し、浸漬後の試験片の体積変化率を測定した。体積変化率30%以下を良好とした。
<3.変色試験>
ネジ口瓶に冷却液100g当たりにEPDMゴム片10gを入れ、160℃で24時間加熱した。その後の液の色合いを目視にて観察した。
【0081】
結果を下記表2−1及び表2−2に示す。
【0082】
【表2-1】
【表2-2】
【0083】
表2−1及び表2−2より、式(1)で表される化合物(p−メトキシフェノール)及び/又は式(2)で表される化合物(3,5−ジヒドロキシ安息香酸メチル)を特定の量で含有する実施例1〜6の冷却液は、所望の動粘度を有し、かつゴムの膨潤及び冷却液の変色を抑制することができることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の冷却液組成物は、内燃機関、特には自動車用エンジン、インバータ及びバッテリー等の冷却に好適に使用される。
図1