特開2017-226846(P2017-226846A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2017-226846樹脂前駆体及びそれを含有する樹脂組成物、樹脂フィルム及びその製造方法、並びに、積層体及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-226846(P2017-226846A)
(43)【公開日】2017年12月28日
(54)【発明の名称】樹脂前駆体及びそれを含有する樹脂組成物、樹脂フィルム及びその製造方法、並びに、積層体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/10 20060101AFI20171201BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20171201BHJP
【FI】
   C08G73/10
   B32B27/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】30
【出願形態】OL
【全頁数】55
(21)【出願番号】特願2017-138490(P2017-138490)
(22)【出願日】2017年7月14日
(62)【分割の表示】特願2015-506774(P2015-506774)の分割
【原出願日】2014年3月17日
(31)【優先権主張番号】特願2013-55555(P2013-55555)
(32)【優先日】2013年3月18日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】金田 隆行
(72)【発明者】
【氏名】加藤 聡
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 康史
【テーマコード(参考)】
4F100
4J043
【Fターム(参考)】
4F100AG00A
4F100AK49B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100EH46
4F100EJ42
4F100EJ60
4F100GB41
4J043QB26
4J043RA34
4J043SA06
4J043SA85
4J043SB03
4J043TA22
4J043TB01
4J043UA032
4J043UA042
4J043UA122
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4J043UA132
4J043UA141
4J043UA151
4J043UA262
4J043UB012
4J043UB021
4J043UB051
4J043UB052
4J043UB121
4J043UB122
4J043UB131
4J043UB141
4J043UB301
4J043UB302
4J043UB402
4J043ZA11
4J043ZA31
4J043ZA34
4J043ZA51
4J043ZA52
4J043ZB11
4J043ZB21
4J043ZB23
4J043ZB47
4J043ZB50
(57)【要約】      (修正有)
【課題】特殊な溶媒の組み合わせを必要とすることなく透明な樹脂硬化物を与えることができ、かつ、無機膜との間に発生する残留応力が低く、耐薬品性に優れ、キュア工程時の酸素濃度によるYI値及び全光線透過率への影響が小さい樹脂硬化物を与えることができる樹脂前駆体の提供。
【解決手段】アミノ基及びアミノ基反応性基を含む重合成分を重合させて得られる樹脂前駆体であって、該重合成分が、アミノ基及びアミノ基反応性基から選択される基を2つ以上有する多価化合物を含み、該多価化合物がケイ素基含有化合物を含み、該多価化合物が、式(1)で表されるジアミンを含み、該樹脂前駆体が特定のシロキサン構造を有し、該ケイ素基含有化合物の量が該多価化合物の総質量基準で6質量%〜25質量%である、樹脂前駆体。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ基及びアミノ基反応性基を含む重合成分を重合させて得られる樹脂前駆体であって、
前記重合成分が、アミノ基及びアミノ基反応性基から選択される基を2つ以上有する多価化合物を含み、
前記多価化合物がケイ素基含有化合物を含み、
前記多価化合物が、下記式(1):
【化1】
で表されるジアミンを含み、
前記樹脂前駆体が、下記一般式(2):
【化2】
{式中、複数存在するR3及びR4は、それぞれ独立に、炭素数1〜20の一価の有機基であり、そしてhは、3〜200の整数である。}で表される構造を有し、
前記ケイ素基含有化合物の量が前記多価化合物の総質量基準で6質量%〜25質量%である、
前記樹脂前駆体。
【請求項2】
前記アミノ基反応性基が、カルボキシル基、置換カルボキシル基及び酸無水物基からなる群から選択される1つ以上を含む、請求項1に記載の樹脂前駆体。
【請求項3】
前記ケイ素基含有化合物が、下記一般式(3):
【化3】
{式中、複数存在するR2は、それぞれ独立に、単結合又は炭素数1〜20の二価の有機基であり、R3及びR4は、それぞれ独立に、炭素数1〜20の一価の有機基であり、複数存在してもよいR5は、それぞれ独立に、炭素数1〜20の一価の有機基であり、L1、L2、及びL3は、それぞれ独立に、アミノ基、イソシアネート基、カルボキシル基、酸無水物基、酸エステル基、酸ハライド基、ヒドロキシ基、エポキシ基、又はメルカプト基であり、jは、3〜200の整数であり、kは、0〜197の整数である。}で表されるシリコーン化合物を含む、請求項1又は2に記載の樹脂前駆体。
【請求項4】
前記一般式(3)において、L1及びL2が、それぞれ独立に、アミノ基又は酸無水物基であり、そしてkが0である、請求項3に記載の樹脂前駆体。
【請求項5】
前記一般式(3)において、L1及びL2が共にアミノ基である、請求項4に記載の樹脂前駆体。
【請求項6】
前記樹脂前駆体が、ユニット1及びユニット2を含有し、
該ユニット1が、少なくとも下記一般式(4);
【化4】
{式中、複数存在するR1は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素、又は一価の芳香族基であり、複数存在してもよいX1は、それぞれ独立に、炭素数4〜32の四価の有機基であり、そしてnは、1〜100の整数である。}で表される構造を有し、
該ユニット2が、下記一般式(5):
【化5】
{式中、複数存在するR1は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素、又は一価の芳香族基であり、複数存在するR2は、それぞれ独立に、炭素数3〜20の二価の脂肪族炭化水素、又は二価の芳香族基であり、R3及びR4は、それぞれ独立に、炭素数1〜20の一価の有機基であり、複数存在してもよいX2は、それぞれ独立に、炭素数4〜32の四価の有機基であり、lは、3〜50の整数であり、そしてmは、1〜100の整数である。}で表される構造、又は、下記一般式(6):
【化6】
{式中、複数存在するR1は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素、又は一価の芳香族基であり、複数存在するR3及びR4は、それぞれ独立に、炭素数1〜20の一価の有機基であり、複数存在するR8は、それぞれ独立に、炭素数3〜20の三価の脂肪族炭化水素、又は三価の芳香族基であり、pは、1〜100の整数であり、そしてqは3〜50の整数である。}で表される構造、又は上記一般式(5)で表される構造と上記一般式(6)で表される構造の両者、を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂前駆体。
【請求項7】
前記ユニット1及び前記ユニット2の合計量が、前記樹脂前駆体の総質量基準で30質量%以上である、請求項6に記載の樹脂前駆体。
【請求項8】
前記樹脂前駆体が、下記一般式(7):
【化7】
{式中、複数存在するR1は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素、又は一価の芳香族基であり、複数存在してもよいX3は、それぞれ独立に、炭素数4〜32の二価の有機基であり、複数存在してもよいX4は、それぞれ独立に、炭素数4〜32の四価の有機基であり、そしてtは1〜100の整数である。}で表される構造を有するユニット3を更に含有する、請求項6又は7に記載の樹脂前駆体。
【請求項9】
前記一般式(7)において、X3が、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンからアミノ基を除いた構造である残基である、請求項8に記載の樹脂前駆体。
【請求項10】
前記ユニット1及び前記ユニット2が、
ピロメリット酸二無水物(PMDA)及びビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)からなる群より選ばれる1つ以上に由来する部位と、
4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物(CHDA)、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)、4,4’−ビフェニルビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)(TAHQ)、及び9,9’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物(BPAF)からなる群より選ばれる1つ以上に由来する部位と
の組み合わせである部位を、前記ユニット1及び前記ユニット2の酸二無水物由来部位の総量基準で60モル%以上の量で含む、請求項6〜9のいずれか1項に記載の樹脂前駆体。
【請求項11】
前記R3及び前記R4が、それぞれ独立に、炭素数1〜3の一価の脂肪族炭化水素基、又は炭素数6〜10の一価の芳香族炭化水素基である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の樹脂前駆体。
【請求項12】
前記R3及び前記R4の少なくとも一部がフェニル基である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の樹脂前駆体。
【請求項13】
前記樹脂前駆体を不活性雰囲気下300〜500℃の条件で加熱硬化させて得られる樹脂が、−150℃〜0℃の領域の少なくとも1つのガラス転移温度及び150℃〜380℃の領域の少なくとも1つのガラス転移温度を有し、かつ0℃より大きく150℃より小さい領域においてガラス転移温度を有さない、請求項1〜12のいずれか1項に記載の樹脂前駆体。
【請求項14】
ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)由来の部位を、前記樹脂前駆体の酸二無水物由来部位の総量基準で20モル%以上含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載の樹脂前駆体。
【請求項15】
一部がイミド化されている、請求項1〜14のいずれか1項に記載の樹脂前駆体。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の樹脂前駆体と、下記一般式(8):
【化8】
{式中、複数存在してもよいX3は、それぞれ独立に、炭素数4〜32の四価の有機基であり、複数存在するR1は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素、又は一価の芳香族基であり、そしてrは、1〜100の整数である。}で表される構造を有する樹脂前駆体とを含む、前駆体混合物。
【請求項17】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の樹脂前駆体、又は請求項16に記載の前駆体混合物を含む、フレキシブルデバイス材料。
【請求項18】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の樹脂前駆体の硬化物又は請求項16に記載の前駆体混合物の硬化物である、樹脂フィルム。
【請求項19】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の樹脂前駆体又は請求項16に記載の前駆体混合物と、溶媒と、を含有する、樹脂組成物。
【請求項20】
前記樹脂組成物を支持体の表面に展開した後、前記樹脂組成物を窒素雰囲気下300℃〜500℃で加熱することによって前記樹脂組成物に含まれる前記樹脂前駆体をイミド化して得られる樹脂が示す20μm膜厚での黄色度が7以下である、請求項19に記載の樹脂組成物。
【請求項21】
前記樹脂組成物を支持体の表面に展開した後、前記樹脂組成物を窒素雰囲気下300℃〜500℃で加熱することによって前記樹脂組成物に含まれる前記樹脂前駆体をイミド化して得られる樹脂が示す10μm膜厚での残留応力が25MPa以下である、請求項19又は20に記載の樹脂組成物。
【請求項22】
請求項19〜21のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物である、樹脂フィルム。
【請求項23】
請求項19〜21のいずれか1項に記載の樹脂組成物を支持体の表面上に展開する工程と、
前記支持体及び前記樹脂組成物を加熱して前記樹脂組成物に含まれる前記樹脂前駆体をイミド化して樹脂フィルムを形成する工程と、
前記樹脂フィルムを前記支持体から剥離する工程と、
を含む、樹脂フィルムの製造方法。
【請求項24】
支持体と、前記支持体の表面上に形成された、請求項19〜21のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物である樹脂膜とを含む、積層体。
【請求項25】
支持体の表面上に、請求項19〜21のいずれか1項に記載の樹脂組成物を展開する工程と、
前記支持体及び前記樹脂組成物を加熱して前記樹脂組成物に含まれる前記樹脂前駆体をイミド化して樹脂膜を形成し、これにより前記支持体及び前記樹脂膜を含む積層体を得る工程と、
を含む、積層体の製造方法。
【請求項26】
ディスプレイ基板の製造に用いられるポリイミド樹脂膜であって、厚み20μmにおけるRthが20〜90nmである、ポリイミド樹脂膜。
【請求項27】
支持体の表面上にポリイミド前駆体を含む樹脂組成物を展開する工程と、
前記支持体及び前記樹脂組成物を加熱してポリイミド前駆体をイミド化して、請求項26に記載のポリイミド樹脂膜を形成する工程と、
前記ポリイミド樹脂膜上に素子を形成する工程と、
前記素子が形成された前記ポリイミド樹脂膜を前記支持体から剥離する工程と
を含む、ディスプレイ基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、フレキシブルデバイスのための基板に用いられる、樹脂前駆体及びそれを含有する樹脂組成物、樹脂フィルム及びその製造方法、並びに、積層体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、高耐熱性が要求される用途には、樹脂フィルムとしてポリイミド(PI)樹脂のフィルムが用いられる。一般的なポリイミド樹脂は、芳香族二無水物と芳香族ジアミンとを溶液重合し、ポリイミド前駆体を製造した後、高温で閉環脱水させ、熱イミド化して、又は、触媒を用いて化学イミド化して、製造される高耐熱樹脂である。
【0003】
ポリイミド樹脂は、不溶、不融の超耐熱性樹脂であり、耐熱酸化性、耐熱特性、耐放射線性、耐低温性、耐薬品性等に優れた特性を有している。このため、ポリイミド樹脂は、絶縁コーティング剤、絶縁膜、半導体、TFT−LCDの電極保護膜等の電子材料を含む広範囲な分野で用いられ、最近は、液晶配向膜のようなディスプレイ材料の分野で従来使用されていたガラス基板に代わり、その軽さ、柔軟性を利用した無色透明フレキシブル基板への採用も検討されている。
【0004】
しかしながら、一般的なポリイミド樹脂は、高い芳香環密度により、茶色又は黄色に着色し、可視光線領域での透過率が低く、透明性が要求される分野に用いることは困難であった。
【0005】
このようなポリイミドの透明性を向上する課題に対して、例えば非特許文献1には、特定の構造を含む酸二無水物と特定の構造を含むジアミンを用いることで、透過率及び色相の透明度を向上させたポリイミドが記載されている。更に、特許文献1〜4には、4,4−ビス(ジアミノジフェニル)スルホン(以下、4,4−DASとも記す)や3,3−ビス(ジアミノジフェニル)スルホン(以下、3,3−DASとも記す)と特定の構造を含む酸二無水物を用いることで、透過率及び色相の透明度を向上させたポリイミドが記載されている。
【0006】
また、以下の特許文献6の実施例9,10には、特定の芳香族テトラカルボン酸二無水物と脂環式ジアミン、ケイ素含有ジアミンを共重合することにより、高Tg、透明性、高密着性、低そり性を発現するポリイミドを生成しうるポリイミド前駆体が記載されている。
さらに、以下の特許文献7の実施例3及び、特許文献8の実施例3には、芳香族テトラカルボン酸二無水物、ビス(ジアミノジフェニル)スルホン及びケイ素含有ジアミンを共重合したポリイミド前駆体を、半導体保護用樹脂及び感光性樹脂組成物として用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭61−141732号公報
【特許文献2】特開平06−271670号公報
【特許文献3】特開平09−040774号公報
【特許文献4】特開2000−313804号公報
【特許文献5】国際公開第2012/118020号パンフレット
【特許文献6】国際公開第2011/122198号パンフレット
【特許文献7】国際公開第1991/010699号パンフレット
【特許文献8】特開平4−224823号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】最新ポリイミド(基礎と応用),日本ポリイミド研究会編,P152
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、公知の透明ポリイミドの物性特性は、例えば、半導体絶縁膜、TFT−LCD絶縁膜、電極保護膜、タッチパネル用ITO電極基板及びフレキシブルディスプレイ用耐熱性無色透明基板として用いるのに十分ではなかった。
【0010】
例えば、フレキシブルディスプレイ用無色透明基板にポリイミド樹脂を用いる際には、サポートガラス(以下、支持体とも言う)上にポリイミド膜を形成し、そのポリイミド膜上に、通常、TFT素子を作製するために、無機膜を形成することがある。ポリイミドの線膨張係数(以下、CTEとも記す)が高い場合、無機膜又はサポートガラスとポリイミド膜とのCTEのミスマッチにより、ポリイミド膜と無機膜との間に残留応力が発生し、結果として、サポートガラスが反ってしまったり、TFT素子の性能が低下してしまったりするという問題がある。このため、サポートガラスの反りを改良するために、ポリイミドの残留応力を低くするという課題がある。特許文献1〜4に記載のポリイミドでは、残留応力が高く、フレキシブルディスプレイ用無色透明基板に適用した場合、サポートガラスが反ってしまう課題があった。
【0011】
また、ポリイミド膜を作製するためには、例えばガラス基板の上に、ポリイミド前駆体を塗布し、該ポリイミド前駆体が塗布されたガラス基板を窒素ガスが導入されたオーブン炉に投入し、250℃〜400℃に加熱をすること(以下、キュア工程とも記す)が一般的に必要である。特許文献1〜4や非特許文献1に記載の透過率及び色相の、透明度を向上させたポリイミドにおいては、キュアの際のオーブン炉内の酸素濃度が高い場合、具体的には酸素濃度が100ppm以上である場合、YI値が上がったり、全光線透過率が下がったりするといった、酸素濃度依存性の課題があった。
【0012】
更に、フレキシブルディスプレイ用無色透明基板にポリイミド樹脂を用いる際には、ポリイミド膜の上部には、通常、フォトレジストを用いたフォトリソグラフィ工程によりTFT素子が作製される。フレキシブルディスプレイ用無色透明基板に用いられるポリイミド膜(以下、ポリイミド基板とも記す)は、この工程に含まれるフォトレジストを剥離する工程で使われる、フォトレジスト剥離液等の薬剤に曝されるために、これらの薬剤に耐薬品性を持つ必要がある。特許文献1に記載されたような、4,4−DASや3,3−DASと特定の構造を含む酸二無水物からなるポリイミドにおいては、フォトレジスト剥離工程時に、ポリイミド基板に微少なクラックが入ることでポリイミド基板が白濁し、全光線透過率が低下する現象が発生する等、耐薬品性の点で課題があった。
【0013】
特許文献5には、ポリイミドのガラス転移温度やヤング率を維持したまま、残留応力を低減する目的で柔軟なケイ素含有ジアミンをブロック共重合で導入することが記載されている。しかし、特許文献5の比較例4に記載のように、ケイ素含有ジアミンをブロックで共重合すると、特殊な溶媒の組み合わせを使用してポリイミド前駆体を溶解させない限り、シリコーン部分の相分離が進み、屈折率がそれぞれ異なる海島構造において、島部分の構造が大きくなることにより、膜が白濁し、全光線透過率が低下する。また、沸点の低い特殊な溶媒の組み合わせを利用する場合、ポリイミド前駆体溶液を基板に塗布した後に、室温で数時間放置をすると、ヘイズが発生し、塗膜が白濁する場合があり、放置時間を管理する必要があった。このように、ケイ素含有ジアミンをブロック共重合したポリイミドによって透明な熱硬化膜を作製するには、特殊な溶媒の組み合わせを使用して前駆体を溶解させた上、前駆体溶液を塗布した後の放置時間を管理することが必要であるという課題があった。
【0014】
また、特許文献6の実施例9、10には、芳香族テトラカルボン酸二無水物、脂環式ジアミン及びシリコーンジアミンを共重合して得られるポリイミド前駆体、及びそれから得られるポリイミドについて記載されている。しかし本発明者らが確認したところ、このポリアミドにおいては黄色度が高く、全光線透過率が低く、さらに黄色度及び透過率がポリイミド硬化時の酸素濃度により影響を受けやすいという課題があった(本願明細書比較例25参照)。
【0015】
そして、特許文献7、8には、(ジアミノジフェニル)スルホン、芳香族テトラカルボン酸二無水物、及びシリコーンジアミンを共重合して得られるポリイミド前駆体、及びそれから得られるポリイミドについて記載されている。しかし本発明者らが確認したところ、ポリイミド前駆体を合成する際に使用するケイ素基含有モノマー、多価カルボン誘導体、及びジアミン化合物の総質量に対する、ケイ素基含モノマーの質量割合が、特許文献7については少ないため、得られるポリイミドの残留応力が大きく、ディスプレイのプロセス上不適切であり、一方特許文献8については多いため、得られるポリイミドが白濁し、透明ディスプレイに用いるには不適切であるという課題があった(本願明細書比較例23,24参照)。
【0016】
本発明は、上記説明した問題点に鑑みてなされたものであり、特殊な溶媒の組み合わせを必要とすることなく透明な樹脂硬化物を与えることができ、かつ、無機膜との間に発生する残留応力が低く、耐薬品性に優れ、キュア工程時の酸素濃度によるYI値及び全光線透過率への影響が小さい樹脂硬化物を与えることができる、樹脂前駆体を提供することを目的とする。本発明はまた、該樹脂前駆体を含有する樹脂組成物、該樹脂組成物を硬化させた樹脂フィルム及びその製造方法、並びに、積層体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定構造の耐熱性樹脂前駆体が、特殊な溶媒の組み合わせを必要とすることなく透明な樹脂硬化物を形成でき、またそのような樹脂硬化物は、無機膜との間に発生する残留応力が低く、耐薬品性に優れ、キュア工程時の酸素濃度によるYI値や全光線透過率への影響が小さい樹脂硬化物であることを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。すなわち、本発明は、以下の通りである。
【0018】
[1] アミノ基及びアミノ基反応性基を含む重合成分を重合させて得られる樹脂前駆体であって、
該重合成分が、アミノ基及びアミノ基反応性基から選択される基を2つ以上有する多価化合物を含み、
該多価化合物がケイ素基含有化合物を含み、
該多価化合物が、下記式(1):
【化1】
で表されるジアミンを含み、
該樹脂前駆体が、下記一般式(2):
【化2】
{式中、複数存在するR3及びR4は、それぞれ独立に、炭素数1〜20の一価の有機基であり、そしてhは、3〜200の整数である。}で表される構造を有し、
該ケイ素基含有化合物の量が該多価化合物の総質量基準で6質量%〜25質量%である、
該樹脂前駆体。
[2] 該アミノ基反応性基が、カルボキシル基、置換カルボキシル基及び酸無水物基からなる群から選択される1つ以上を含む、[1]に記載の樹脂前駆体。
[3] 該ケイ素基含有化合物が、下記一般式(3):
【化3】
{式中、複数存在するR2は、それぞれ独立に、単結合又は炭素数1〜20の二価の有機基であり、R3及びR4は、それぞれ独立に、炭素数1〜20の一価の有機基であり、複数存在してもよいR5は、それぞれ独立に、炭素数1〜20の一価の有機基であり、L1、L2、及びL3は、それぞれ独立に、アミノ基、イソシアネート基、カルボキシル基、酸無水物基、酸エステル基、酸ハライド基、ヒドロキシ基、エポキシ基、又はメルカプト基であり、jは、3〜200の整数であり、kは、0〜197の整数である。}で表されるシリコーン化合物を含む、[1]又は[2]に記載の樹脂前駆体。
[4] 該一般式(3)において、L1及びL2が、それぞれ独立に、アミノ基又は酸無水物基であり、そしてkが0である、[3]に記載の樹脂前駆体。
[5] 該一般式(3)において、L1及びL2が共にアミノ基である、[4]に記載の樹脂前駆体。
[6] 該樹脂前駆体が、ユニット1及びユニット2を含有し、
該ユニット1が、少なくとも下記一般式(4);
【化4】
{式中、複数存在するR1は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素、又は一価の芳香族基であり、複数存在してもよいX1は、それぞれ独立に、炭素数4〜32の四価の有機基であり、そしてnは、1〜100の整数である。}
で表される構造を有し、
該ユニット2が、下記一般式(5):
【化5】
{式中、複数存在するR1は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素、又は一価の芳香族基であり、複数存在するR2は、それぞれ独立に、炭素数3〜20の二価の脂肪族炭化水素、又は二価の芳香族基であり、R3及びR4は、それぞれ独立に、炭素数1〜20の一価の有機基であり、複数存在してもよいX2は、それぞれ独立に、炭素数4〜32の四価の有機基であり、lは、3〜50の整数であり、そしてmは、1〜100の整数である。}で表される構造、又は、下記一般式(6):
【化6】
{式中、複数存在するR1は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素、又は一価の芳香族基であり、複数存在するR3及びR4は、それぞれ独立に、炭素数1〜20の一価の有機基であり、複数存在するR8は、それぞれ独立に、炭素数3〜20の三価の脂肪族炭化水素、又は三価の芳香族基であり、pは、1〜100の整数であり、そしてqは3〜50の整数である。}で表される構造、又は上記一般式(5)で表される構造と上記一般式(6)で表される構造の両者、を有する、[1]〜[5]のいずれか1項に記載の樹脂前駆体。
[7] 該ユニット1及び該ユニット2の合計量が、該樹脂前駆体の総質量基準で30質量%以上である、[6]に記載の樹脂前駆体。
[8] 該樹脂前駆体が、下記一般式(7):
【化7】
{式中、複数存在するR1は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素、又は一価の芳香族基であり、複数存在してもよいX3は、それぞれ独立に、炭素数4〜32の二価の有機基であり、複数存在してもよいX4は、それぞれ独立に、炭素数4〜32の四価の有機基であり、そしてtは1〜100の整数である。}で表される構造を有するユニット3を更に含有する、[6]又は[7]に記載の樹脂前駆体。
[9] 該一般式(7)において、X3が、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンからアミノ基を除いた構造である残基である、[8]に記載の樹脂前駆体。
[10] 該ユニット1及び該ユニット2が、
ピロメリット酸二無水物(PMDA)及びビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)からなる群より選ばれる1つ以上に由来する部位と、
4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物(CHDA)、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)、4,4’−ビフェニルビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)(TAHQ)、及び9,9’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物(BPAF)からなる群より選ばれる1つ以上に由来する部位と
の組み合わせである部位を、該ユニット1及び該ユニット2の酸二無水物由来部位の総量基準で60モル%以上の量で含む、[6]〜[9]のいずれか1項に記載の樹脂前駆体。
[11] 該R3及び該R4が、それぞれ独立に、炭素数1〜3の一価の脂肪族炭化水素基、又は炭素数6〜10の一価の芳香族炭化水素基である、[1]〜[10]のいずれか1項に記載の樹脂前駆体。
[12] 該R3及び該R4の少なくとも一部がフェニル基である、[1]〜[11]のいずれか1項に記載の樹脂前駆体。
[13] 該樹脂前駆体を不活性雰囲気下300〜500℃の条件で加熱硬化させて得られる樹脂が、−150℃〜0℃の領域の少なくとも1つのガラス転移温度及び150℃〜380℃の領域の少なくとも1つのガラス転移温度を有し、かつ0℃より大きく150℃より小さい領域においてガラス転移温度を有さない、[1]〜[12]のいずれか1項に記載の樹脂前駆体。
[14] ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)由来の部位を、該樹脂前駆体の酸二無水物由来部位の総量基準で20モル%以上含む、[1]〜[13]のいずれか1項に記載の樹脂前駆体。
[15] 一部がイミド化されている、[1]〜[14]のいずれか1項に記載の樹脂前駆体。
[16] [1]〜[15]のいずれか1項に記載の樹脂前駆体と、下記一般式(8):
【化8】
{式中、複数存在してもよいX3は、それぞれ独立に、炭素数4〜32の四価の有機基であり、複数存在するR1は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素、又は一価の芳香族基であり、そしてrは、1〜100の整数である。}で表される構造を有する樹脂前駆体とを含む、前駆体混合物。
[17] [1]〜[15]のいずれか1項に記載の樹脂前駆体、又は[16]に記載の前駆体混合物を含む、フレキシブルデバイス材料。
[18] [1]〜[15]のいずれか1項に記載の樹脂前駆体の硬化物又は[16]に記載の前駆体混合物の硬化物である、樹脂フィルム。
[19] [1]〜[15]のいずれか1項に記載の樹脂前駆体又は[16]に記載の前駆体混合物と、溶媒と、を含有する、樹脂組成物。
[20] 該樹脂組成物を支持体の表面に展開した後、該樹脂組成物を窒素雰囲気下300℃〜500℃で加熱することによって該樹脂組成物に含まれる該樹脂前駆体をイミド化して得られる樹脂が示す20μm膜厚での黄色度が7以下である、[19]に記載の樹脂組成物。
[21] 該樹脂組成物を支持体の表面に展開した後、該樹脂組成物を窒素雰囲気下300℃〜500℃で加熱することによって該樹脂組成物に含まれる該樹脂前駆体をイミド化して得られる樹脂が示す10μm膜厚での残留応力が25MPa以下である、[19]又は[20]に記載の樹脂組成物。
[22] [19]〜[21]のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物である、樹脂フィルム。
[23] [19]〜[21]のいずれか1項に記載の樹脂組成物を支持体の表面上に展開する工程と、
該支持体及び該樹脂組成物を加熱して該樹脂組成物に含まれる該樹脂前駆体をイミド化して樹脂フィルムを形成する工程と、
該樹脂フィルムを該支持体から剥離する工程と、
を含む、樹脂フィルムの製造方法。
[24] 支持体と、該支持体の表面上に形成された、[19]〜[21]のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物である樹脂膜とを含む、積層体。
[25] 支持体の表面上に、[19]〜[21]のいずれか1項に記載の樹脂組成物を展開する工程と、
該支持体及び該樹脂組成物を加熱して該樹脂組成物に含まれる該樹脂前駆体をイミド化して樹脂膜を形成し、これにより該支持体及び該樹脂膜を含む積層体を得る工程と、
を含む、積層体の製造方法。
[26] ディスプレイ基板の製造に用いられるポリイミド樹脂膜であって、厚み20μmにおけるRthが20〜90nmである、ポリイミド樹脂膜。
[27] 支持体の表面上にポリイミド前駆体を含む樹脂組成物を展開する工程と、
該支持体及び該樹脂組成物を加熱してポリイミド前駆体をイミド化して、[26]に記載のポリイミド樹脂膜を形成する工程と、
該ポリイミド樹脂膜上に素子を形成する工程と、
該素子が形成された該ポリイミド樹脂膜を該支持体から剥離する工程と
を含む、ディスプレイ基板の製造方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、特殊な溶媒の組み合わせを必要とすることなく透明な樹脂硬化物を与えることができ、かつ、無機膜との間に発生する残留応力が低く、耐薬品性に優れ、キュア工程時の酸素濃度によるYI値及び全光線透過率への影響が小さい樹脂硬化物を与えることができる、樹脂前駆体が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の例示の実施の形態(以下、「実施の形態」と略記する。)について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。なお、本開示の式中の構造単位の繰り返し数は、特記がない限り、樹脂前駆体全体において当該構造単位が含まれ得る数を意図するに過ぎず、従って、ブロック構造等の特定の結合様式を意図するものではないことに留意すべきである。また、本開示で記載する特性値は、特記がない限り、[実施例]の項において記載する方法又はこれと同等であることが当業者に理解される方法で測定される値であることを意図する。
【0021】
<樹脂前駆体>
本発明の実施の形態に係る樹脂前駆体は、
アミノ基及びアミノ基反応性基を含む重合成分を重合させて得られる樹脂前駆体であって、
該重合成分が、アミノ基及びアミノ基反応性基から選択される基を2つ以上有する多価化合物を含み、
該多価化合物がケイ素基含有化合物を含み、
該多価化合物が、下記式(1):
【化9】
で表されるジアミンを含み、
該樹脂前駆体が、下記一般式(2):
【化10】
{式中、複数存在するR3及びR4は、それぞれ独立に、炭素数1〜20の一価の有機基であり、そしてhは、3〜200の整数である。}で表される構造を有し、
該ケイ素基含有化合物の量が該多価化合物の総質量基準で6質量%〜25質量%である、
該樹脂前駆体を提供する。
【0022】
重合成分は、アミノ基及びアミノ基反応性基を含む。重合成分は、アミノ基及びアミノ基反応性基から選択される基を2つ以上有する多価化合物を含む。例えば、重合成分は、アミノ基を有する多価化合物と、アミノ基反応性基を有する多価化合物との混合物であっよく、又は、アミノ基及びアミノ基反応性基の両者を含む多価化合物を含んでよく、又はこれらの組合せであってよい。
本開示で、アミノ基反応性基とは、アミノ基に対する反応性を有する基を意図する。アミノ基反応性基としては、例えば、酸基(例えばカルボキシル基、酸無水物基、及び置換カルボキシル基(例えば酸エステル基、酸ハライド基等)等)、ヒドロキシ基、エポキシ基、及びメルカプト基が挙げられる。 酸基を含む化合物としては、例えば、ジカルボン酸、トリカルボン酸、テトラカルボン酸、及び、これらカルボン酸の、酸二無水物、酸エステル化物、酸クロライド等が挙げられる。従って、本実施の形態の樹脂前駆体は、ポリイミド前駆体であることができる。典型的な態様において、アミノ基反応性基は、カルボキシル基、置換カルボキシル基及び酸無水物基からなる群から選択される1つ以上を含む。好ましい態様において、アミノ基反応性基は、カルボキシル基、置換カルボキシル基及び酸無水物基からなる群から選択される1つ以上である。
【0023】
多価化合物は、少なくとも、一般式(1)で表されるジアミンを含む。一般式(1)で表される化合物は、例えば、4,4−(ジアミノジフェニル)スルホン(以下、4,4−DASとも記す)、3,4−(ジアミノジフェニル)スルホン(以下、3,4−DASとも記す)、及び3,3−(ジアミノジフェニル)スルホン(以下、3,3−DASとも記す)からなる群から選ばれる1つ以上であることができる。
【0024】
多価化合物のうち少なくとも1つはケイ素基含有化合物である。一般式(2)で表される構造は、ケイ素基含有化合物に由来する。ケイ素基含有化合物の量は、多価化合物の質量基準で、6質量%〜25質量%(以下、この質量分率をケイ素基含有モノマー濃度とも言う)である。ケイ素基含有モノマー濃度は、6質量%以上であることが、樹脂膜と無機膜との間に発生する応力の低下効果や黄色度の低下効果を充分に得る観点から有利であり、7質量%以上であることが好ましく、8質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましい。一方ケイ素基含有モノマー濃度は25質量%以下であることが、得られるポリイミドが白濁することなく、透明性向上、黄色度低下の観点及び、良好な耐熱性を得る観点から有利であり、22質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましい。耐薬品性、YI値、全光線透過率、複屈折率、残留応力及び光学特性の酸素依存性を全て良好とする観点から、ケイ素基含有モノマー濃度は10質量%以上20質量%以下であることが特に好ましい。
【0025】
一般式(2)において、複数存在するR3及びR4は、それぞれ独立に、炭素数1〜20の一価の有機基である。炭素数1〜20の一価の有機基としては、炭素数1〜20の一価の炭化水素基、炭素数1〜20のアミノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、エポキシ基等を挙げることができる。
【0026】
該炭素数1〜20の一価の炭化水素基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基等が挙げられる。該炭素数1〜20のアルキル基としては、耐熱性と残留応力の観点から炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。該炭素数3〜20のシクロアルキル基としては、上記観点から炭素数3〜10のシクロアルキル基が好ましく、具体的には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。該炭素数6〜20のアリール基としては、上記観点から炭素数6〜12のアリール基が好ましく、具体的には、フェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0027】
該炭素数1〜20のアミノ基としては、アミノ基、置換したアミノ基(たとえば、ビス(トリアルキルシリル)アミノ基)等が挙げられる。
【0028】
該炭素数1〜20の一価のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、フェノキシ基、プロペニルオキシ基及びシクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0029】
一般式(2)において、複数存在するR3及びR4は、それぞれ独立に、炭素数1〜3の一価の脂肪族炭化水素基、又は炭素数6〜10の一価の芳香族炭化水素基であることが、得られるポリイミド膜が高耐熱性と低残留応力とを兼ね備える観点から好ましい。この観点で、炭素数1〜3の一価の脂肪族炭化水素は、好ましくはメチル基であり、炭素数6〜10の芳香族基は、好ましくはフェニル基である。
【0030】
一般式(2)中のhは、3〜200の整数であり、好ましくは10〜200の整数、より好ましくは20〜150の整数、さらに好ましくは30〜100の整数、特に好ましくは35〜80の整数である。hが2以下であると、本開示の樹脂前駆体から得られるポリイミドの残留応力が悪化する(すなわち大きくなる)場合があり、hが200を超えると、樹脂前駆体と溶媒とを含むワニスを調製した際に、該ワニスが白濁したり、ポリイミドの機械強度が低下する等の問題が生じる場合がある。
【0031】
本実施の形態の樹脂前駆体においては、ケイ素基含有化合物が、下記一般式(3):
【0032】
【化11】
{式中、複数存在するR2は、それぞれ独立に、単結合又は炭素数1〜20の二価の有機基であり、R3及びR4は、それぞれ独立に、炭素数1〜20の一価の有機基であり、複数存在してもよいR5は、それぞれ独立に、炭素数1〜20の一価の有機基であり、L1、L2、及びL3は、それぞれ独立に、アミノ基、イソシアネート基、カルボキシル基、酸無水物基、酸エステル基、酸ハライド基、ヒドロキシ基、エポキシ基、又はメルカプト基であり、jは、3〜200の整数であり、kは、0〜197の整数である。}で表されるシリコーン化合物を含むことが好ましい。好ましい態様において、ケイ素基含有化合物は、一般式(3)で表されるシリコーン化合物である。
【0033】
2における炭素数1〜20の二価の有機基としては、メチレン基、炭素数2〜20のアルキレン基、炭素数3〜20のシクロアルキレン基、炭素数6〜20のアリーレン基等が挙げられる。該炭素数2〜20のアルキレン基としては、耐熱性、残留応力、コストの観点から炭素数2〜10のアルキレン基が好ましく、ジメチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられる。該炭素数3〜20のシクロアルキレン基としては、上記観点から炭素数3〜10のシクロアルキレン基が好ましく、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基等が挙げられる。その中でも上記観点から炭素数3〜20の二価の脂肪族炭化水素が好ましい。該炭素数6〜20のアリーレン基としては、上記観点から炭素数3〜20の芳香族基が好ましく、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられる。
【0034】
一般式(3)において、R3及びR4は一般式(2)中のR3及びR4と同義であり、好ましい態様は一般式(2)について前述したとおりである。またR5は、炭素数1〜20の一価の有機基、すなわちR3及びR4と同義であり、好ましい態様はR3及びR4と同様である。
【0035】
一般式(3)において、L1、L2、及びL3は、それぞれ独立に、アミノ基、イソシアネート基、カルボキシル基、酸無水物基、酸エステル基、酸ハライド基、ヒドロキシ基、エポキシ基、又はメルカプト基である。
【0036】
アミノ基は、置換されてもよく、例えばビス(トリアルキルシリル)アミノ基等が挙げられる。L1、L2、及びL3がアミノ基である、一般式(3)で表される化合物の具体例としては、両末端アミノ変性メチルフェニルシリコーン(例えば信越化学社製の、X22−1660B−3(数平均分子量4,400)及びX22−9409(数平均分子量1,300))、両末端アミノ変性ジメチルシリコーン(例えば信越化学社製の、X22−161A(数平均分子量1,600)、X22−161B(数平均分子量3,000)及びKF8012(数平均分子量4,400);東レダウコーニング製のBY16−835U(数平均分子量900);並びにチッソ社製のサイラプレーンFM3311(数平均分子量1000))等が挙げられる。
1、L2、及びL3がイソシアネート基である化合物の具体例としては、前記、両末端アミノ変性シリコーンとホスゲン化合物を反応して得られるイソシアネート変性シリコーン等が挙げられる。
【0037】
1、L2、及びL3がカルボキシル基である化合物の具体例としては、例えば信越化学社の、X22−162C(数平均分子量4,600)、東レダウコーニング製のBY16−880(数平均分子量6,600)等が挙げられる。
【0038】
1、L2、及びL3が酸無水物基である化合物の具体例としては、下記式群:
【0039】
【化12】
で表される基の少なくとも1つを有するアシル化合物等が挙げられる。
【0040】
1、L2、及びL3が酸無水物基である化合物の具体例としては、X22−168AS(信越化学製、数平均分子量1,000)、X22−168A(信越化学製、数平均分子量2,000)、X22−168B(信越化学製、数平均分子量3,200)、X22−168−P5−8(信越化学製、数平均分子量4,200)、DMS−Z21(ゲレスト社製、数平均分子量600〜800)等が挙げられる。
【0041】
1、L2、及びL3が酸エステル基である化合物の具体例としては、前記、L1、L2、及びL3がカルボキシル基又は酸無水物基である化合物とアルコールを反応させて得られる化合物等、が挙げられる。
【0042】
1、L2、及びL3が酸ハライド基である化合物の具体例としては、カルボン酸塩化物、カルボン酸フッ化物、カルボン酸臭化物、カルボン酸ヨウ化物、等が挙げられる。
【0043】
1、L2、及びL3がヒドロキシ基である化合物の具体例としては、KF−6000(信越化学製、数平均分子量900)、KF-6001(信越化学製、数平均分子量1,800)、KF−6002(信越化学製、数平均分子量3,200)、KF−6003(信越化学製、数平均分子量5,000)等が挙げられる。ヒドロキシ基を有する化合物は、カルボキシル基又は酸無水物基を有する化合物と反応すると考えられる。
【0044】
1、L2、及びL3がエポキシ基である化合物の具体例としては、両末端エポキシタイプである、X22−163(信越化学製、数平均分子量400)、KF-105(信越化学製、数平均分子量980)、X22−163A(信越化学製、数平均分子量2,000)、X22−163B(信越化学製、数平均分子量3,500)、X22−163C(信越化学製、数平均分子量5,400);両末端脂環式エポキシタイプである、X22−169AS(信越化学製、数平均分子量1,000)、X22−169B(信越化学製、数平均分子量3,400);側鎖両末端エポキシタイプである、X22−9002(信越化学製、官能基当量5,000g/mol);等が挙げられる。エポキシ基を有する化合物は、ジアミンと反応すると考えられる。
【0045】
1、L2、及びL3がメルカプト基である化合物の具体例としては、X22−167B(信越化学製、数平均分子量3,400)、X22−167C(信越化学製、数平均分子量4,600)等が挙げられる。メルカプト基を有する化合物は、カルボキシル基又は酸無水物基を有する化合物と反応すると考えられる。
【0046】
1、L2、及びL3は、樹脂前駆体の分子量向上の観点、又は得られるポリイミドの耐熱性の観点から、それぞれ独立に、アミノ基又は酸無水物基であることが好ましく、さらに樹脂前駆体と溶媒とを含むワニスの白濁回避の観点、又はコストの観点から、それぞれ独立に、アミノ基であることがより好ましい。
又は、樹脂前駆体と溶媒とを含むワニスの白濁回避の観点、又はコストの観点から、L1及びL2が、それぞれ独立に、アミノ基又は酸無水物基であり、そしてkが0であることが好ましい。この場合、L1及びL2が共にアミノ基であることがより好ましい。
【0047】
一般式(3)において、jの好ましい態様は、一般式(2)においてhについて前述したものと同様である。一般式(3)において、kは、0〜197の整数であり、好ましくは0〜100、さらに好ましくは0〜50、特に好ましくは0〜25である。kが197を超えると、樹脂前駆体と溶媒とを含むワニスを調製した際に、該ワニスが白濁する、等の問題が生じる場合がある。kが0である場合、樹脂前駆体の分子量向上の観点、又は得られるポリイミドの耐熱性の観点から好ましい。kが0である場合、樹脂前駆体の分子量向上の観点、又は得られるポリイミドの耐熱性の観点から、jが3〜200であることは有利である。
【0048】
好ましい態様において、本開示の各式において、R3及びR4は、残留応力、コストの観点から、それぞれ独立に、炭素数1〜3の一価の脂肪族炭化水素基、又は炭素数6〜10の一価の芳香族炭化水素基である。又は、本開示の各式において、R3及びR4の一部は、耐熱性、残留応力の観点から、フェニル基であることが好ましい。
【0049】
好ましい態様において、多価化合物は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを含む。好ましい態様において、多価化合物は、テトラカルボン酸二無水物、ジカルボン酸、及びジアミンを含む。
【0050】
<テトラカルボン酸二無水物>
重合原料に含まれる多価化合物の例としてのテトラカルボン酸二無水物としては、具体的には、炭素数が8〜36の芳香族テトラカルボン酸二無水物、及び、炭素数が6〜36の脂環式テトラカルボン酸二無水物から選択される化合物が、YI値の低減と全光線透過率の観点から好ましい。
【0051】
さらに具体的には、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(以下、6FDAとも記す)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−シクロヘキセン−1,2ジカルボン酸無水物、ピロメリット酸二無水物(以下、PMDAとも記す)、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(以下、BTDAとも記す)、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下、BPDAととも記す)、3,3’,4,4’―ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(以下、DSDAとも記す)、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、メチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,1−エチリデン−4,4’−ジフタル酸二無水物、2,2−プロピリデン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,2−エチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,3−トリメチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,4−テトラメチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,5−ペンタメチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(以下、ODPAとも記す)、チオ−4,4’−ジフタル酸二無水物、スルホニル−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ベンゼン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,3−ビス[2−(3,4−ジカルボキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン二無水物、1,4−ビス[2−(3,4−ジカルボキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン二無水物、ビス[3−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]メタン二無水物、ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]メタン二無水物、2,2−ビス[3−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物(以下、BPADAとも記す)、ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジメチルシラン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(以下、CBDAとも記す)、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物(以下、CHDAと記す)、3,3’,4,4’−ビシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物、カルボニル−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、メチレン−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、1,2−エチレン−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、1,1−エチリデン−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、2,2−プロピリデン−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、オキシ−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、チオ−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、スルホニル−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、ビシクロ[2,2,2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、rel−[1S,5R,6R]−3−オキサビシクロ[3,2,1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物、エチレングリコール−ビス−(3,4−ジカルボン酸無水物フェニル)エーテル、4,4’−ビフェニルビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)(以下TAHQともいう)、9,9’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物(以下、BPAFともいう。)等が挙げられる。
【0052】
その中でも、BTDA及びPMDAが、CTEの低減、耐薬品性の向上、ガラス転移温度(Tg)向上及び機械伸度向上の観点で好ましい。また、6FDA、ODPA及びBPADAが、黄色度の低下、複屈折率の低下及び機械伸度向上の観点で好ましい。また、BPDAが、残留応力の低減、黄色度の低下、複屈折率の低下、耐薬品性の向上、Tg向上及び機械伸度向上の観点で好ましい。また、CHDAが、残留応力の低減及び黄色度の低下の観点で好ましい。これらの中でも、高耐薬品性、高Tg及び低CTEを発現する強直構造のBPDAと、黄色度及び複屈折率が低い、6FDA、ODPA、及びCHDAからなる群から選ばれるテトラカルボン酸二無水物と、を組み合わせて使用することが、高耐薬品性、残留応力低下、黄色度低下、複屈折率の低下、及び、全光線透過率の向上の観点から好ましい。
【0053】
中でも、上記効果に加えて、高伸度、耐薬品性の向上、及び、高ヤング率の観点から、BPDAに由来する部位が全酸二無水物由来の部位の20モル%以上であることが好ましく、50モル%以上であることがより好ましく、80モル%以上であることがさらに好ましく、100%であってもよい。
【0054】
<ジカルボン酸>
また、本実施の形態における樹脂前駆体は、性能を損なわない範囲で、上述のテトラカルボン酸二無水物に加えて、機械伸度の向上や、ガラス転移温度の向上、黄色度の低減といった性能を調整する目的で、ジカルボン酸を共重合させることによりポリアミド成分を導入することで、熱硬化膜をポリアミドイミドとすることもできる。そのようなジカルボン酸として、芳香環を有するジカルボン酸及び脂環式ジカルボン酸が挙げられ、特に、YI値の低減と全光線透過率の観点から、炭素数が8〜36の芳香族ジカルボン酸、及び炭素数が6〜34の脂環式ジカルボン酸からなる群から選択される少なくとも1つの化合物が好ましい。具体的には、イソフタル酸、テレフタル酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、3,4’−ビフェニルジカルボン酸、3,3’−ビフェニルジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−スルホニルビス安息香酸、3,4’−スルホニルビス安息香酸、3,3’−スルホニルビス安息香酸、4,4’−オキシビス安息香酸、3,4’−オキシビス安息香酸、3,3’−オキシビス安息香酸、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−カルボキシフェニル)プロパン、2,2’−ジメチル−4,4’−ビフェニルジカルボン酸、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニルジカルボン酸、2,2’−ジメチル−3,3’−ビフェニルジカルボン酸、9,9−ビス(4−(4−カルボキシフェノキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(3−カルボキシフェノキシ)フェニル)フルオレン、4,4’−ビス(4−カルボキシフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−カルボキシフェノキシ)ビフェニル、3,4’−ビス(4−カルボキシフェノキシ)ビフェニル、3,4’−ビス(3−カルボキシフェノキシ)ビフェニル、3,3’−ビス(4−カルボキシフェノキシ)ビフェニル、3,3’−ビス(3―カルボキシフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−カルボキシフェノキシ)−p−ターフェニル、4,4’−ビス(4−カルボキシフェノキシ)−m−ターフェニル、3,4’−ビス(4−カルボキシフェノキシ)−p−ターフェニル、3,3’−ビス(4−カルボキシフェノキシ)−p−ターフェニル、3,4’−ビス(4−カルボキシフェノキシ)−m−ターフェニル、3,3’−ビス(4−カルボキシフェノキシ)−m−ターフェニル、4,4’−ビス(3−カルボキシフェノキシ)−p−ターフェニル、4,4’−ビス(3−カルボキシフェノキシ)−m−ターフェニル、3,4’−ビス(3−カルボキシフェノキシ)−p−ターフェニル、3,3’−ビス(3−カルボキシフェノキシ)−p−ターフェニル、3,4’−ビス(3−カルボキシフェノキシ)−m−ターフェニル、3,3’−ビス(3−カルボキシフェノキシ)−m−ターフェニル、1,1−シクロブタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4,4’−ベンゾフェノンジカルボン酸、1,3−フェニレン二酢酸、1,4−フェニレン二酢酸、及び、国際公開第2005/068535号パンフレットに記載の5−アミノイソフタル酸誘導体等が挙げられる。これらジカルボン酸をポリマーに実際に共重合させる場合には、塩化チオニル等から誘導される酸クロリド体や活性エステル体の形で使用してもよい。
【0055】
これらの中でも、テレフタル酸がYI値の低減、Tgの向上の観点から特に好ましい。ジカルボン酸をテトラカルボン酸の代わりに使用する場合は、ジカルボン酸とテトラカルボン酸とを合わせた全体のモル数に対して、ジカルボン酸が50モル%以下であることが、耐薬品性の観点から好ましい。
【0056】
<ジアミン>
重合成分に含まれるジアミンは、一般式(1)で表されるジアミンを含む。一般式(1)で表されるジアミンは例えば後述のユニット1のジアミン由来部位を構成できる。樹脂前駆体において、一般式(1)で表されるジアミンに由来する部位は、ポリイミドフィルムの好適な黄色度、低複屈折、全光線透過率の向上、無機膜との間に生じる残留応力の低下、高Tg及び高破断強度を得る観点から、全ジアミン由来部位の20モル%以上であることが好ましく、50モル%以上であることがより好ましく、80モル%以上であることがさらに好ましい。
【0057】
また、ジアミンは、ケイ素数2〜100の二価のケイ素含有基を有するジアミン(以下、単にケイ素含有ジアミンとも記す)を含むことができる。ケイ素含有ジアミンとしては、例えば、下記一般式(9):
【0058】
【化13】
{式中、複数存在するR2は、それぞれ独立に、炭素数3〜20の二価の脂肪族炭化水素、又は二価の芳香族基であり、R3及びR4は、それぞれ独立に、炭素数1〜20の一価の有機基であり、lは、3〜50の整数である。}で表されるジアミノ(ポリ)シロキサンが好適である。このようなジアミンは例えば後述のユニット2を構成できる。
【0059】
上記一般式(9)中のR2の好ましい構造として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基及びフェニレン基等を挙げることができる。また、上記一般式(9)中のR3及びR4についての好適な例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基及びフェニル基等を挙げることができ、特に少なくとも一部がフェニル基であることが特に好ましい。
【0060】
上記一般式(9)で表される化合物としては、具体的には、両末端アミン変性メチルフェニルシリコーンオイル(信越化学社製:X22−1660B−3(数平均分子量4400)、X22−9409(数平均分子量1300))、両末端アミノ変性ジメチルシリコーン(信越化学社製:X22−161A(数平均分子量1600)、X22−161B(数平均分子量3000)、KF8021(数平均分子量4400)、東レダウコーニング製:BY16−835U(数平均分子量900)チッソ社製:サイラプレーンFM3311(数平均分子量1000))等が挙がられる。これらの中で、両末端アミン変性メチルフェニルシリコーンオイルが、耐薬品性向上及びTgの向上の観点から特に好ましい。
【0061】
加えて、ジアミンは、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(以下、TFMBとも記す)、4,4’−(又は3,4’−、3,3’−、2,4’−)ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−(又は3,3’−)ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−(又は3,3’−)ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ベンゾフェノンジアミン、3,3’−ベンゾフェノンジアミン、4,4’−ジ(4−アミノフェノキシ)フェニルスルフォン、4,4’−ジ(3−アミノフェノキシ)フェニルスルフォン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス{4−(4−アミノフェノキシ)フェニル}プロパン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2’,6,6’−テトラメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’,6,6’−テトラトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、ビス{(4−アミノフェニル)−2−プロピル}1,4−ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)フルオレン、3,3’−ジメチルベンチジン、3,3’−ジメトキシベンチジン及び3,5−ジアミノ安息香酸等、2,6−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリジン、ビス(4−アミノフェニル−2−プロピル)−1,4−ベンゼン、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(3,3’−TFDB)、2,2’−ビス[3(3−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(3−BDAF)、2,2’−ビス[4(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(4−BDAF)、2,2’−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(3,3’−6F)、並びに、2,2’−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(4,4’−6F)からなる群から選ばれる1種以上を含んでもよい。これらジアミンは後述のユニット3のジアミン由来部位を構成できる。これらの中でも、1,4−シクロヘキサンジアミン、及びTFMBが、黄色度の低下、CTEの低下、YI値の低減の観点から最も好ましい。
【0062】
樹脂前駆体は、より好ましくは、以下のユニット1及びユニット2を含む。
ユニット1は、少なくとも下記一般式(4);
【化14】
{式中、複数存在するR1は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素、又は一価の芳香族基であり、複数存在してもよいX1は、それぞれ独立に、炭素数4〜32の四価の有機基であり、そしてnは、1〜100の整数である。}
で表される構造を有し、
該ユニット2は、下記一般式(5):
【化15】
{式中、複数存在するR1は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素、又は一価の芳香族基であり、複数存在するR2は、それぞれ独立に、炭素数3〜20の二価の脂肪族炭化水素、又は二価の芳香族基であり、R3及びR4は、それぞれ独立に、炭素数1〜20の一価の有機基であり、複数存在してもよいX2は、それぞれ独立に、炭素数4〜32の四価の有機基であり、lは、3〜50の整数であり、そしてmは、1〜100の整数である。}で表される構造、又は、下記一般式(6):
【化16】
{式中、複数存在するR1は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素、又は一価の芳香族基であり、複数存在するR3及びR4は、それぞれ独立に、炭素数1〜20の一価の有機基であり、複数存在するR8は、それぞれ独立に、炭素数3〜20の三価の脂肪族炭化水素、又は三価の芳香族基であり、pは、1〜100の整数であり、そしてqは3〜50の整数である。}で表される構造、又は上記一般式(5)で表される構造と上記一般式(6)で表される構造の両者、を有する。
【0063】
一般式(4)及び(6)において、ジアミン由来部位は、例えば4,4−(ジアミノジフェニル)スルホン、3,4−(ジアミノジフェニル)スルホン、及び3,3−(ジアミノジフェニル)スルホンからなる群から選ばれる一つ以上のジアミンに由来することができる。一般式(4)及び(5)において、酸無水物由来部位は、それぞれ、四価の有機基X1(X1は上記定義の通り)を有する酸二無水物、及び四価の有機基X2(X2は上記定義の通り)を有する酸二無水物、に由来する。一般式(5)で表される構造におけるジアミン由来部位は、一般式(9)で表されるジアミノ(ポリ)シロキサンに由来する。
【0064】
ユニット1及びユニット2は、耐熱性、YI値の低減と全光線透過率の観点から、
ピロメリット酸二無水物(PMDA)及びビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)からなる群より選ばれる1つ以上に由来する部位と、
4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物(CHDA)、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)、4,4’−ビフェニルビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)(TAHQ)、及び9,9’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物(BPAF)からなる群より選ばれる1つ以上に由来する部位と
の組み合わせである部位を、ユニット1及びユニット2の酸二無水物由来部位の総量基準で、好ましくは60モル%以上、より好ましくは65モル%以上、更に好ましくは70モル%以上の量での量で含む。
【0065】
本実施の形態に係る樹脂前駆体においては、ユニット1及びユニット2の合計質量が、樹脂前駆体の総質量基準で、30質量%以上であることが、YI値の低減、複屈折率の低減、Tgの向上の観点から好ましく、更に、70質量%以上が、複屈折率の低減の観点から好ましい。最も好ましくは100質量%である。
【0066】
また、本実施の形態に係る樹脂前駆体は、必要に応じて、性能を損なわない範囲で、下記一般式(7):
【化17】
{式中、複数存在するR1は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素、又は一価の芳香族基であり、複数存在してもよいX3は、それぞれ独立に、炭素数4〜32の二価の有機基であり、複数存在してもよいX4は、それぞれ独立に、炭素数4〜32の四価の有機基であり、そしてtは1〜100の整数である。}で表される構造を有するユニット3を更に含有してもよい。
【0067】
ユニット3は、ジアミン由来部位が、4,4−DAS、3,4−DAS、3,3−DAS、及びケイ素含有ジアミンからなる群から選ばれる化合物以外のジアミンに由来する部位であるような構造である。
【0068】
ユニット3において、R1は、好ましくは水素原子であり。またX3は、耐熱性、YI値の低減と全光線透過率の観点から、好ましくは二価の芳香族基又は脂環式基である。またX4は、耐熱性、YI値の低減と全光線透過率の観点から、好ましくは二価の芳香族基又は脂環式基である。中でも、X3は、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンからアミノ基を除いた構造である残基であることが好ましい。有機基X1、X2及びX4は、互いに、同一でもよく、異なっていてもよい。
【0069】
本実施の形態に係る樹脂前駆体におけるユニット3の質量割合は、全樹脂構造中の80質量%以下、好ましくは70質量%以下であることが、YI値と全光線透過率の酸素依存性の低下の観点から好ましい。
【0070】
本実施の形態に係る樹脂前駆体は、該樹脂前駆体を不活性雰囲気下(例えば窒素又はアルゴンの雰囲気下)300〜500℃で加熱硬化させて得られる樹脂、又は該樹脂前駆体を不活性雰囲気下で350℃で加熱硬化させて得られる樹脂が、−150℃〜0℃の領域の少なくとも1つのガラス転移温度及び150℃〜380℃の領域の少なくとも1つのガラス転移温度を有し、かつ0℃より大きく150℃より小さい領域においてガラス転移温度を有さないことが好ましい。−150℃〜0℃の領域と、150℃〜380℃の領域とにガラス転移温度が存在することは、残留応力と、全光線透過率とのバランスを良好にする観点で好ましい。耐熱性の観点から、150℃〜380℃の領域にあるガラス転移温度は、200〜380℃の領域にあることがより好ましく、250〜380℃の領域にあることがさらに好ましい。樹脂前駆体が、後述のブロック1及びブロック2を有することは、このような樹脂前駆体の形成において有利である。
【0071】
本実施の形態に係る樹脂前駆体は、ユニット1を主とするブロック1、及びユニット2を主とするブロック2で構成されることが、耐熱性を向上する観点から好ましい。更に、樹脂前駆体は、前述のユニット3をブロック1に含んでいてもよい。これらのブロックは高分子鎖の中で交互でも順列に結合していてもよい。
【0072】
上述のブロック1は、本実施の形態の樹脂前駆体を加熱硬化させて得られるポリイミドにおいて、150〜380℃の範囲にTgを発現させるのに寄与する。従って、ブロック1は、上述のユニット1の繰り返しのみからなるブロックであることが好ましいが、目的とするTgを発現させることができる範囲において、該ユニット1以外のユニット3を含むことを排除しない。
【0073】
同様に、上述のブロック2は、本実施の形態の樹脂前駆体を加熱硬化させて得られるポリイミドにおいて、−150〜0℃の範囲にTgを発現させるのに寄与する。従って、ブロック2は、上述のユニット2の繰り返しのみからなるブロックであることが好ましいが、目的とするTgを発現させることができる範囲において、該ユニット2以外のユニットを含むことを排除しない。
【0074】
ブロック1及びブロック2を有する樹脂前駆体において、ブロック1におけるユニット1及びユニット3の繰り返し数の和は、平均で、2〜500が好ましく、5〜300がより好ましく、10〜200が最も好ましい。また、ブロック2におけるユニット2の繰り返し数は、1分子あたりの平均で、1.1〜300が好ましく、1.1〜200がより好ましく、1.2〜100が最も好ましい。ブロック1におけるユニット1及びユニット3の繰り返し数の和が500以下で、かつ、ブロック2におけるユニット2の繰り返し数が300以下であることにより、該樹脂前駆体の溶媒に対する溶解性が良好となり好ましい。
【0075】
ブロック1におけるユニット1及びユニット3の繰り返し数の和をブロック2におけるユニット2の繰り返し数で割った値で定義される比(以下、ユニット比とも記す)は、使用する原料の種類や分子量にもよるが、0.5〜100であることが好ましく、10〜50であることがより好ましい。前述のように、ブロック1及びブロック2を有する樹脂前駆体の硬化物であるポリイミドは、ブロック1に由来するガラス転移温度を150℃から380℃の領域Aに有し、ブロック2に由来するガラス転移温度を−150℃から0℃の領域Bに有し、該領域Aと該領域Bとの間の領域Cにはガラス転移温度を有さないという利点を有することができる。上述のユニット比の値が0.5以上である場合、硬化後のポリイミド樹脂の耐熱性が充分なものとなり好ましい。また100以下である場合、残留応力を低くすることができ好ましい。
【0076】
一方、重合成分におけるケイ素基含有化合物として、高分子量シリコーン化合物(具体的には、平均分子量3000以上のシリコーン化合物)を用いる場合、上記のようなブロック共重合体を形成しなくても、得られるポリイミドが高いガラス転移温度を維持しつつ、無機膜との低い残留応力を発現しうる。高分子量のシリコーン化合物によれば、シリコーン単位自体が長鎖シロキサン構造をとっており、上記ブロック構造と同じ働きをすると考えられるからである。ここでシリコーン化合物が高分子量の場合、官能基濃度が低下するため、仕込みモル数が少なくても、上記高ガラス転移温度と低残留応力を発現しうる。
【0077】
例えば、高分子量シリコーン化合物がジアミンである場合には、樹脂前駆体は、(ジアミノジフェニル)スルホン由来の一般式(4)のユニット1とシリコーンジアミン由来の一般式(5)のユニット2との共重合体に加え、単独の(すなわちユニット2が共重合していない)ユニット1のポリイミド前駆体が存在するようなポリイミド前駆体混合物、すなわち、ブレンド物が生成する。
【0078】
従って、本開示は、上述した本実施の形態の樹脂前駆体と、追加の樹脂前駆体(例えば上記のユニット1単独のポリイミド前駆体)とを含む前駆体混合物もまた包含する。ここで、該ユニット1単独のポリイミド前駆体の具体例としては、下記一般式(8):
【0079】
【化18】
{式中、複数存在してもよいX3は、それぞれ独立に、炭素数4〜32の四価の有機基であり、複数存在するR1は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素基、又は一価の芳香族基であり、そしてrは、1〜100の整数である。}で表される構造を有する樹脂前駆体が挙げられる。
【0080】
一方、高分子量シリコーン化合物がジアミン以外である場合の例は、例えば、一般式(3)においてL1、L2、及びL3が、それぞれ独立に、酸無水物基、カルボキシル基、酸エステル基、酸ハライド基、ヒドロキシ基、エポキシ基、又はメルカプト基であるようなシリコーン化合物である。
【0081】
本実施の形態に係る樹脂前駆体において重合成分が高分子量シリコーン化合物を含む場合、該樹脂前駆体の硬化物であるポリイミドは、150℃〜380℃の領域におけるガラス転移温度を高く維持したままで、無機膜との間の残留応力を著しく低減できるという特異な特性を達成しうる。
【0082】
本実施の形態に係る樹脂前駆体の数平均分子量は、3000〜1000000であることが好ましく、より好ましくは5000〜500000、さらに好ましくは7000〜300000、特に好ましくは10000〜250000である。該分子量が3000以上であることが、耐熱性や強度(例えば強伸度)を良好に得る観点で好ましく、1000000以下であることが、溶媒への溶解性を良好に得る観点、塗工等の加工の際に所望する膜厚にて滲み無く塗工できる観点で好ましい。高い機械伸度を得る観点からは、分子量は50000以上であることが好ましい。本開示で、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィを用い、標準ポリスチレン換算にて求められる値である。
【0083】
好ましい態様において、樹脂前駆体は、一部イミド化されていてもよい。
【0084】
本実施の形態の樹脂前駆体は、無色透明ポリイミド基板上にTFT素子装置を備えたディスプレイ製造工程に耐えうる耐熱性として高温側のガラス転移温度が150℃〜380℃を有し、かつ、無機膜との間の残留応力が10μm膜厚で25MPa以下であるようなポリイミド樹脂を形成しうる。また、より好適な態様においては、樹脂前駆体は、ガラス転移温度が240℃〜380℃で無機膜との間の残留応力が10μm膜厚で20MPa以下であるようなポリイミド樹脂を形成しうる。ポリイミド樹脂において、−150〜0℃にガラス転移温度が存在する場合、この温度は室温以下であるために、実際のディスプレイ製造工程で必要とされる耐熱性には影響を与えない。
【0085】
また、好ましい態様において、樹脂前駆体は以下の特性を有する。
樹脂前駆体を溶媒(たとえば、N−メチル−2−ピロリドン)に溶解して得られる溶液を支持体の表面に展開した後、該溶液を窒素雰囲気下300〜500℃(例えば350℃)で加熱(例えば1時間)することによって該樹脂前駆体をイミド化して得られる樹脂において、20μm膜厚での黄色度が7以下である。
樹脂前駆体を溶媒(たとえば、N−メチル−2−ピロリドン)に溶解して得られる溶液を支持体の表面に展開した後、該溶液を窒素雰囲気下300〜500℃(例えば350℃)で加熱(例えば1時間)することによって該樹脂前駆体をイミド化して得られる樹脂において、10μm膜厚での残留応力が25MPa以下である。
【0086】
<樹脂前駆体の製造>
次に本実施の形態に係る樹脂前駆体の合成方法に関して説明する。例えば、本実施の形態に係る樹脂前駆体が前述のブロック1及びブロック2のような2つのブロックから構成されている場合、各ブロックに対応するポリイミド前駆体を別々に調製しておき、その後で両者を混合し、縮合反応に付すことにより、本実施の形態に係る樹脂前駆体を得ることができる。ここで両ブロックを縮合反応に付すことができるように、片方のブロックのポリイミド前駆体の末端基をカルボン酸にした場合には、他方のブロックのポリイミド前駆体の末端基はアミノ基になるようにする等、それぞれ原料のモル比、例えばテトラカルボン酸二無水物及びジアミンのモル比を調節する。この方法では、より好ましい完全なブロック性を有するポリイミド前駆体を合成することができる。
【0087】
一方、重合原料であるテトラカルボン酸二無水物がブロック1とブロック2との間で共通であり、ブロック1の原料として芳香族ジアミンを使い、ブロック2の原料として反応性が高いケイ素含有ジアミンを用いる場合には、両ジアミンの反応性差を利用した合成法が可能になる場合がある。例えば、あらかじめ調製したテトラカルボン酸ニ無水物に、芳香族ジアミンとケイ素含有ジアミンとを同時に加え、縮合反応に付すことによりある程度のブロック性を有するポリイミド前駆体を製造することができる。この方法では、完全なブロック性を有するブロック性ポリイミド前駆体を合成することはできないが、ブロック性を有するポリイミド前駆体を合成することができる。ここでブロック性を有するとは、加熱硬化後のポリイミド樹脂において、各ブロックに対応するガラス転移温度が観測されること、例えば、ポリイミド樹脂が、前述した領域Aと領域Bのそれぞれに4,4−(ジアミノジフェニル)スルホン、3,4−(ジアミノジフェニル)スルホン及び3,3−(ジアミノジフェニル)スルホンからなる群から選ばれる1つ以上とテトラカルボン酸無水物の重縮合体に由来するブロック1のガラス転移温度と、ケイ素含有ジアミンとテトラカルボン酸無水物との重縮合体に由来するブロック2のガラス転移温度とを、それぞれ示すことをいう。
【0088】
上述のように、本実施の形態に係る樹脂前駆体は、該樹脂前駆体を加熱硬化させて得られるポリイミド樹脂が、高温側の領域Aと低温側の領域Bとにそれぞれガラス転移温度が認められる程度のブロック性を有することが有利であるが、この利点は、ポリイミド樹脂が完全なブロック性を有さなくても得ることが可能である。また、ブロック1及び2を有する樹脂前駆体による前述の利点は、該領域Aと該領域Bとの間の領域Cにガラス転移温度が認められなければ、ブロック1及びブロック2以外のユニットを含有していても得ることが可能である。
【0089】
また、上述のようなポリアミド酸に、N,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール又はN,N−ジメチルホルムアミドジエチルアセタールを加えて加熱することで、カルボン酸の一部、又は全部をエステル化することにより、樹脂前駆体と溶媒とを含む溶液の、室温保管時の粘度安定性を向上することもできる。これらエステル変性ポリアミド酸は、他に、上述のテトラカルボン酸無水物を予め酸無水物基に対して1当量の1価のアルコールと反応させた後、塩化チオニルやジシクロヘキシルカルボジイミド等の脱水縮合剤と反応させた後、ジアミンと縮合反応させることでも得ることができる。
【0090】
<樹脂組成物>
本発明の別の態様は、前述した樹脂前駆体又は前駆体混合物と、溶媒とを含有する、樹脂組成物を提供する。樹脂組成物は、典型的にはワニスである。
【0091】
より好ましい態様としては、樹脂組成物は、カルボン酸成分及びジアミン成分を、溶媒、例えば有機溶媒に溶解して反応させ、樹脂前駆体の一態様であるポリアミド酸及び溶媒を含有するポリアミド酸溶液として製造することができる。ここで、反応時の条件は、特に限定されないが、例えば、反応温度は−20〜150℃、反応時間は2〜48時間である。ケイ素基含有化合物の反応を十分に進めるために、120℃で30分程度の加熱が好ましい。また、反応時、アルゴンや窒素等の不活性雰囲気であることが好ましい。
【0092】
また、溶媒は、ポリアミド酸を溶解する溶媒であれば、特に限定されない。公知の反応溶媒として、ジメチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)、m−クレゾール、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、ジエチルアセテート、エクアミドM100(商品名:出光興産社製)及びエクアミドB100(商品名:出光興産社製)から選ばれる1種以上の極性溶媒が有用である。このうち、好ましくは、NMP、DMAc、エクアミドM100及びエクアミドB100である。その他、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルムのような低沸点溶液、又は、γ−ブチロラクトンのような低吸収性溶媒を用いてもよい。
【0093】
また、本発明の樹脂組成物においては、得られるポリイミドがTFT等の素子を形成する際に、支持体と十分な密着性とを与えるために、樹脂前駆体100質量%に対してアルコキシシラン化合物を0.01〜2質量%を含有するような組成が好ましい。
【0094】
樹脂前駆体100質量%に対して、アルコキシシラン化合物の含有量が0.01質量%以上であることで、支持体との良好な密着性を得ることができ、またアルコキシシラン化合物の含有量が2質量%以下であることが、樹脂組成物の保存安定性の観点から好ましい。アルコキシシラン化合物の含有量は、樹脂前駆体に対して、0.02〜2質量%であることがより好ましく、0.05〜1質量%であることがさらに好ましく、0.05〜0.5質量%であることがさらに好ましく、0.1〜0.5質量%であることが特に好ましい。
【0095】
アルコキシシラン化合物としては、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリプロポキシシラン、γ−アミノプロピルトリブトキシシラン、γ−アミノエチルトリエトキシシラン、γ−アミノエチルトリメトキシシラン、γ−アミノエチルトリプロポキシシラン、γ−アミノエチルトリブトキシシラン、γ−アミノブチルトリエトキシシラン、γ−アミノブチルトリメトキシシラン、γ−アミノブチルトリプロポキシシラン、γ−アミノブチルトリブトキシシラン、等が挙げられ、また、これらは2種以上を併用して用いてもよい。
【0096】
上述のワニスを作製した後、溶液を130〜200℃で5分〜2時間加熱することで、ポリマーが析出を起こさない程度にポリマーの一部を脱水イミド化してもよい。温度と時間とのコントロールにより、イミド化率は制御することができる。部分イミド化をすることで、樹脂前駆体溶液の室温保管時の粘度安定性を向上することができる。イミド化率の範囲としては、5%〜70%が溶液への樹脂前駆体の溶解性と溶液の保存安定性との観点から好ましい。
【0097】
また、好ましい態様において、樹脂組成物は以下の特性を有する。
樹脂組成物を支持体の表面に展開した後、該樹脂組成物を窒素雰囲気下300℃〜500℃で加熱することによって(又は窒素雰囲気下350℃で加熱することによって)樹脂組成物に含まれる樹脂前駆体をイミド化して得られる樹脂が示す20μm膜厚での黄色度が7以下である。
樹脂組成物を支持体の表面に展開した後、該樹脂組成物を窒素雰囲気下300℃〜500℃で加熱することによって(又は窒素雰囲気下350℃で加熱することによって)樹脂組成物に含まれる樹脂前駆体をイミド化して得られる樹脂が示す10μm膜厚での残留応力が25MPa以下である。
【0098】
<樹脂フィルム>
本発明の別の態様は、前述の樹脂前駆体の硬化物、又は前述の前駆体混合物の硬化物、又は前述の樹脂組成物の硬化物である樹脂フィルムを提供する。
また、本発明の別の態様は、前述の樹脂組成物を支持体の表面上に展開する工程と、
該支持体及び該樹脂組成物を加熱して該樹脂組成物に含まれる樹脂前駆体をイミド化して樹脂フィルムを形成する工程と、
該樹脂フィルムを該支持体から剥離する工程と、
を含む、樹脂フィルムの製造方法を提供する。
【0099】
樹脂フィルムの製造方法の好ましい態様においては、樹脂組成物として、酸二無水物成分及びジアミン成分を有機溶媒中に溶解して反応させて得られるポリアミド酸溶液を用いることができる。
【0100】
ここで、支持体は、例えば、無アルカリガラス基板等のガラス基板のような無機基板であるが、特に限定されるものではない。
【0101】
より具体的には、上述の樹脂組成物を、無機基板の主面上に形成された接着層上に展開及び乾燥し、不活性雰囲気下で300〜500℃の温度にて硬化して、樹脂フィルムを形成することができる。最後に、樹脂フィルムを支持体から剥離する。
【0102】
ここで、展開方法としては、例えば、スピンコート、スリットコート及びブレードコートの公知の塗工方法が挙げられる。また、熱処理は、ポリアミド酸溶液を接着層上に展開した後に、主として脱溶媒を目的として300℃以下の温度で1分間〜300分間熱処理し、さらに窒素等の不活性雰囲気下で300℃〜550℃の温度で1分間〜300分間熱処理して樹脂前駆体をポリイミド化させる。従来の無色透明性ポリイミドフィルムを作製する場合には、YI値の低減と全光線透過率の観点から、オーブン内の酸素濃度を100ppm以下に管理する必要があるが、本実施の形態における樹脂前駆体によれば、500ppm以下の管理で十分である。YI値の低減、及び全光線透過率の向上の観点から、酸素濃度は、1000ppm以下であることが望ましい。
【0103】
また、本実施の形態に係る樹脂フィルムの厚さは、特に限定されず、10〜200μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは10〜50μmである。
【0104】
本実施の形態に係る樹脂フィルムは、20μm膜厚での黄色度が7以下であることが好ましい。また、10μm膜厚で残留応力が25MPa以下であることが好ましい。特に、20μm膜厚での黄色度が7以下であり、かつ、10μm膜厚で残留応力が25MPa以下であることがさらに好ましい。このような特性は、例えば、本開示の樹脂前駆体を、窒素雰囲気下、300℃〜500℃、より特別には350℃でイミド化することにより良好に実現される。
【0105】
<積層体>
本発明の別の態様は、支持体と、該支持体の表面上に形成された、前述の樹脂組成物の硬化物である樹脂膜とを含む、積層体を提供する。
また本発明の別の態様は、支持体の表面上に、前述の樹脂組成物を展開する工程と、
該支持体及び該樹脂組成物を加熱して該樹脂組成物に含まれる該樹脂前駆体をイミド化して樹脂膜を形成し、これにより該支持体及び該樹脂膜を含む積層体を得る工程と、
を含む、積層体の製造方法を提供する。
このような積層体は、例えば、前述の樹脂フィルムの製造方法と同様に形成した樹脂フィルムを、支持体から剥離しないことによって製造できる。
【0106】
この積層体は、例えば、フレキシブルデバイスの製造に用いられる。より具体的には、ポリイミド膜の上に半導体デバイスを形成し、その後、支持体を剥離してポリイミド膜からなるフレキシブル透明基板を具備するフレキシブルデバイスを得ることができる。
従って、本発明の別の態様は、前述の樹脂前駆体、又は前述の前駆体混合物を含む、フレキシブルデバイス材料を提供する。
【0107】
以上説明したように、本実施の形態に係る樹脂前駆体は、特定構造を有することにより、特殊な溶媒の組み合わせを必要とせずに、白濁しない樹脂フィルムを形成できる。また得られた樹脂フィルムの黄色度(YI値)と全光線透過率とが、キュア時の酸素濃度に依存することが少ない。また、樹脂フィルムと無機膜との間に発生する残留応力が低く、TFT作製工程に耐えうる実用的なガラス転移温度を有し、機械物性に優れ、フォトリソグラフィ工程に耐えうる耐薬品性がある。従って該樹脂前駆体は、フレキシブルディスプレイの透明基板における使用に適している。
【0108】
さらに詳細に説明すると、フレキシブルディスプレイを形成する場合、ガラス基板を支持体として用いてその上にフレキシブル基板を形成し、その上にTFT等の形成を行う。TFTを基板上に形成する工程は、典型的には、150〜650℃の広い範囲の温度で実施されるが、実際に所望する性能具現のためには、主に250℃〜350℃付近で、無機物材料を用いて、TFT−IGZO(InGaZnO)酸化物半導体又はTFT(a−Si−TFT、poly−Si−TFT)を形成する。
【0109】
この際、フレキシブル基板とポリイミド膜とに生じる残留応力が高ければ、高温のTFT工程で膨張した後、常温冷却時に収縮する際、ガラス基板の反りや破損、フレキシブル基板のガラス基板からの剥離等の問題が生じる。一般的に、ガラス基板の熱膨張係数は樹脂に比較して小さいため、フレキシブル基板との間に残留応力が発生する。本実施の形態に係る樹脂フィルムは、この点を考慮して、フィルムの厚さ10μmを基準として、樹脂フィルムとガラスとの間に生じる残留応力が25MPa以下であることが好ましい。
【0110】
また、本実施の形態に係る樹脂フィルムは、フィルムの厚さ20μmを基準として、黄色度が7以下であり、かつ、フィルムの厚さ20μmを基準として、紫外分光光度計で透過率を測定した場合、550nmでの透過率が85%以上であることが好ましい。また、熱硬化フィルムを作製する際に使用するオーブン内の酸素濃度依存性が少ない方が、安定的にYI値の低い樹脂フィルムを得るのに有利であり、500ppm以下の酸素濃度で、熱硬化フィルムのYI値が安定していることが好ましい。
【0111】
また、本実施の形態に係る樹脂フィルムは、フレキシブル基板を取り扱う際に破断強度に優れることにより、歩留まりを向上させる観点から、フィルムの厚さ20μmを基準として、機械伸度が30%以上であることがより好ましい。
【0112】
また、本実施の形態に係る樹脂フィルムは、TFT素子を作製する温度で樹脂基板の軟化が生じないために、ガラス転移温度は、250℃以上であることが好ましい。
【0113】
また、本実施の形態に係る樹脂フィルムは、TFT素子を作製する際に使用するフォトリソグラフィ工程における、フォトレジスト剥離液に耐えうる耐薬品性を具備することが好ましい。
【0114】
また、フレキシブルディスプレイの光取り出し方式には、TFT素子の表面側から光を取り出すトップ・エミッション方式と裏面側から光を取り出すボトム・エミッション方式の2種類がある。トップ・エミッション方式では、TFT素子が邪魔にならないため、開口率を上げやすいという特徴があり、ボトム・エミッション方式は位置合わせが容易で製造しやすいといった特徴がある。TFT素子が透明であればボトム・エミッション方式においても、開口率を向上することが可能となるため、大型有機ELフレキシブルディスプレイには製造が容易なボトム・エミッション方式が採用されることが期待されている。ボトム・エミッション方式に使用する無色透明樹脂基板に樹脂基板を用いる際には、視認する側に樹脂基板が来るため、光学的な等方性、つまり複屈折率に由来する厚み方向のレタデーション(Rth)が低いことが、画質の向上の観点から求められる。また、トップ・エミッション方式に使用する場合には、Rthが低いことは求められないが、両方式に共通に使えるという観点から、Rthが低い材料が好ましいとされている。具体的には、フィルムの厚さ20μmを基準として、200nm以下が好ましく、より好ましくは90nm以下が好ましく、更に好ましくは80nm以下が好ましく、特に好ましくは、50nm以下である。Rthが100nm以下、更に90nm以下であれば、トップ・エミッション型のフレキシブルディスプレイ用透明基板だけでなく、ボトム・エミッション型のフレキシブルディスプレイ用透明基板やタッチパネル用電極基板に適用する為の性能を満足している。
【0115】
本発明の別の態様は、ディスプレイ基板の製造に用いられるポリイミド樹脂膜であって、厚み20μmにおけるRthが20〜90nmである、ポリイミド樹脂膜を提供する。
また本発明の別の態様は、支持体の表面上にポリイミド前駆体を含む樹脂組成物を展開する工程と、
該支持体及び該樹脂組成物を加熱してポリイミド前駆体をイミド化して、前述のポリイミド樹脂膜を形成する工程と、
該ポリイミド樹脂膜上に素子を形成する工程と、
該素子が形成された該ポリイミド樹脂膜を該支持体から剥離する工程と
を含む、ディスプレイ基板の製造方法を提供する。
【0116】
上記物性を満たす本実施の形態に係る樹脂フィルムは、既存のポリイミドフィルムが有する黄色により使用が制限された用途、特にフレキシブルディスプレイ用無色透明基板として好適に使用される。さらには、例えば、保護膜又はTFT−LCD等での散光シート及び塗膜(例えば、TFT−LCDのインターレイヤー、ゲイト絶縁膜、及び液晶配向膜)、タッチパネル用ITO基板、スマートフォン用カバーガラス代替樹脂基板等の無色透明性かつ、低複屈折が要求される分野でも使用可能である。液晶配向膜として本実施の形態に係るポリイミドを適用するとき、開口率の増加に寄与し、高コントラスト比のTFT−LCDの製造が可能である。
【0117】
本実施の形態に係る樹脂前駆体を用いて製造される樹脂フィルム及び積層体は、例えば、半導体絶縁膜、TFT−LCD絶縁膜、電極保護膜、及び、フレキシブルデバイスの製造に、特に基板として好適に利用することができる。ここで、フレキシブルデバイスとは、例えば、フレキシブルディスプレイ、フレキシブル太陽電池、フレキシブルタッチパネル電極基板、フレキシブル照明、及び、フレキシブルバッテリーを挙げることができる。
【実施例】
【0118】
以下、本発明について、実施例に基づきさらに詳述するが、これらは説明のために記述されるものであって、本発明の範囲が下記実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例における各種評価は次の通り行った。
【0119】
(重量平均分子量の測定)
重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて、下記の条件により測定した。溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド(和光純薬工業社製、高速液体クロマトグラフ用)を用い、測定前に24.8mmol/Lの臭化リチウム一水和物(和光純薬工業社製、純度99.5%)及び63.2mmol/Lのリン酸(和光純薬工業社製、高速液体クロマトグラフ用)を加えたものを使用した。また、重量平均分子量を算出するための検量線は、スタンダードポリスチレン(東ソー社製)を用いて作成した。
【0120】
カラム:Shodex KD−806M(昭和電工社製)
流速:1.0mL/分
カラム温度:40℃
ポンプ:PU−2080Plus(JASCO社製)
検出器:RI−2031Plus(RI:示差屈折計、JASCO社製)
UV‐2075Plus(UV−VIS:紫外可視吸光計、JASCO社製)
【0121】
(ケイ素基含有モノマー濃度)
ケイ素基含有モノマー濃度は、樹脂前駆体を合成する際に使用する、ケイ素基含有モノマー、多価カルボン酸又はその誘導体、ジアミン化合物、それぞれの質量を用いて、下記式から算出した。
ケイ素基含有モノマー濃度(%)=ケイ素基含有モノマー質量/
(ケイ素基含有モノマー質量+多価カルボン酸又はその誘導体の質量+ジアミン化合物質量)×100
【0122】
(積層体及び単離フィルムの作製)
樹脂組成物をバーコーターで無アルカリガラス基板(厚さ0.7mm)に塗工し、室温で5分間〜10分間レベリングを行い、縦型キュアオーブン(光洋リンドバーグ社製、型式名VF−2000B)にて140℃にて60分間加熱し、さらに窒素雰囲気下で350℃にて60分間加熱し積層体を作製した。この際、熱風オーブン内の酸素濃度を、50ppm、100ppm、500ppmにそれぞれ調整し、YI値及び全光線透過率の酸素濃度依存性を調べた。積層体の樹脂組成物の膜厚は、20μmとした。350℃キュア(硬化処理)した後、積層体を室温に24時間静置し、樹脂フィルムをガラスから剥離し、フィルムを単離した。以下の黄色度、全光線透過率以外の評価は、熱風オーブン内の酸素濃度を100ppmに調整をして、350℃で60分間、キュアを行った樹脂フィルムをサンプルとして用いた。
【0123】
(引張伸度の評価)
350℃でキュアした、サンプル長5×50mm、厚み20μmの樹脂フィルムを引張り試験機(株式会社エーアンドディ製:RTG−1210)を用いて、速度100mm/minで引張り、引張伸度を測定した。
【0124】
(黄色度、全光線透過率及びそのキュア時酸素濃度依存性)
オーブン内の酸素濃度をそれぞれ50ppm、100ppm、500ppmにそれぞれ調整し、350℃でキュアした、厚み20μmの樹脂フィルムを、日本電色工業(株)製(Spectrophotometer:SE600)にてD65光源を用い、黄色度(YI値)及び全光線透過率を測定した。
【0125】
(厚み方向レタデーション(Rth)の評価)
350℃でキュアした、厚み20μmの樹脂フィルムを、位相差複屈折測定装置(王子計測機器社製、KOBRA−WR)を用いて測定した。測定光の波長は589nmとした。
【0126】
(ガラス転移温度、線膨張係数の評価)
室温領域以上におけるガラス転移温度(Tg(1)と呼ぶ)及び線膨張係数(CTE)の測定に関しては、350℃でキュアした、サンプル長5×50mm、厚み20μmの樹脂フィルムを、島津製作所製熱機械分析装置(TMA−50)を用いて、熱機械分析により、荷重5g、昇温速度10℃/分、窒素雰囲気下(流量20ml/分)、温度50〜450℃の範囲における試験片伸びの測定を行い、その変曲点をガラス転移温度として求め、100〜250℃の耐熱性樹脂フィルムのCTEを求めた。
【0127】
室温領域以下におけるガラス転移温度(Tg(2)と呼ぶ)の測定に関しては上記の方法では不可能であるため、上記の樹脂フィルムを−150℃〜400℃の範囲で動的粘弾性測定装置(オリエンテック社製、RHEOVIBRON MODEL RHEO‐1021)によりEプライムの室温以下の温度領域での変曲点を測定し、その変曲点を低温でのガラス転移温度として求めた。
【0128】
(残留応力の評価)
残留応力測定装置(テンコール社製、型式名FLX−2320)を用いて、予め「反り量」を測定しておいた、厚み625μm±25μmの6インチシリコンウェハ上に、樹脂組成物をバーコーターにより塗布し、140℃にて60分間プリベークした後、縦型キュア炉(光洋リンドバーグ社製、型式名VF−2000B)を用いて、窒素雰囲気下、350℃1時間の加熱硬化処理を施し、硬化後膜厚10μmの樹脂膜のついたシリコンウェハを作製した。このウェハの反り量を前述の残留応力測定装置を用いて測定し、シリコンウェハと樹脂膜の間に生じた残留応力を評価した。
【0129】
(耐薬品性試験の評価)
350℃でキュアした、厚み20μmの樹脂フィルム片を室温のNMP層に浸し、10分ごとに引き上げ、イオン交換水で洗浄した後、フィルム表面を顕微鏡で観察し、熱硬化膜の表面にクラックが入る時間の評価を10分刻みで300分まで行った。
【0130】
[実施例1]
オイルバスを備えた撹拌棒付き3Lセパラブルフラスコに、窒素ガスを導入しながら、NMP1000gを加え、3,3−(ジアミノジフェニル)スルホン(ジアミン1と規定する)を232.4g撹拌しながら加え、続いてピロメリット酸二無水物(テトラカルボン酸無水物1と規定する)を218.12g加えて、室温で30分撹拌した。これを50℃に昇温し、12時間撹拌した後、両末端アミン変性メチルフェニルシリコーンオイル(信越化学社製:X22−1660B−3(数平均分子量4400))(ケイ素基含有ジアミンと規定する)105.6gをNMP298gに溶解し、滴下漏斗を使用して滴下して加えた。80℃に昇温し、1時間撹拌した後、オイルバスを外して室温に戻し、透明なポリアミド酸のNMP溶液(以下、ワニスとも記す)を得た。ここでの組成及び得られたポリアミド酸の重量平均分子量(Mw)を表1に示す。また、350℃キュアしたフィルムの試験結果を表4に示す。
【0131】
[実施例2〜33、49〜58]
実施例1と同様にして、ジアミン1、テトラカルボン酸無水物1、ケイ素基含有ジアミンの種類、及びそれらの添加質量をそれぞれ表1に記したものに変えて、実施例1と同様の操作を行ってワニスを得た。また、表1及び表2に示すNMP添加量は、最終的にワニスに含まれるNMPの総量を示し、ケイ素基含有ジアミンを希釈する298gのNMPを含んだ質量である。ここでの組成及び得られたポリアミド酸の重量平均分子量(Mw)をそれぞれ表1、表2、表7に示す。また、350℃キュアしたフィルムの試験結果をそれぞれ表4、表5、表8に示す。以下に表1〜表6に記載した略式化合物名の正式な化合物名称を記す。
3,3−DAS:3,3−(ジアミノジフェニル)スルホン
4,4−DAS:4,4−(ジアミノジフェニル)スルホン
3,4−DAS:3,4−(ジアミノジフェニル)スルホン
PMDA :ピロメリット酸二無水物
ODPA :4,4’−オキシジフタル酸二無水物
6FDA:4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物
BPDA :3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
CHDA :シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物
DSDA :3,3’,4,4’―ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物
BPADA :2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物
BPAF :9,9’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物
TAHQ :4,4’−ビフェニルビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)
BTDA :3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
TPE−R :1,3−ビス(4−アミノフェノキシ) ベンゼン
CBDA :1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
FM3311:両末端アミン変性ジメチルシリコーンオイル(チッソ社製 サイラプレーンFM3311(数平均分子量1000))
TFMB:2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン
TACl:無水トリメリット酸クロリド
【0132】
[実施例34]
オイルバスを備えた撹拌棒付き3Lセパラブルフラスコに、窒素ガスを導入し、NMP1274gを加え、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(以下、ODPAと記す)(テトラカルボン酸無水物1と規定する)を加え、撹拌しながら両末端アミン変性メチルフェニルシリコーンオイル(信越化学社製:X22−1660B−3(数平均分子量4400))(ケイ素基含有ジアミンと規定する)105.6gをNMP298gに溶解したものを滴下漏斗を使用して滴下した。室温で1時間撹拌後、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(以下、TFMBと記す)(ジアミン2と規定する)149.9gを撹拌しながら加え、引き続き、3,3−DASを116.2g撹拌しながら加え、室温で1時間撹拌した。引き続き、50℃に加温して、BPDA(テトラカルボン酸無水物2と規定する)を147.1g加えて12時間撹拌した。これを80℃に昇温し、4時間撹拌した後、オイルバスを外して室温に戻し、透明なポリアミド酸のNMP溶液(以下、ワニスとも記す)を得た。ここでの組成及び得られたポリアミド酸の重量平均分子量(Mw)を表2に示す。また、350℃キュアしたフィルムの試験結果を表5に示す。
【0133】
[実施例35、39、40、44、45]
実施例34と同様にして、ジアミン1、ジアミン2、テトラカルボン酸無水物1、テトラカルボン酸無水物2の種類、及びそれらの添加質量をそれぞれ表2に記したものに変えて、実施例34と同様の操作を行ってワニスを得た。また、表2に示すNMP添加量は、最終的にワニスに含まれるNMPの総量を示し、ケイ素基含有ジアミンを希釈する298gのNMPを含んだ質量である。ここでの組成及び得られたポリアミド酸の重量平均分子量(Mw)をそれぞれ表2に示す。また、350℃キュアしたフィルムの試験結果をそれぞれ表5に示す。
【0134】
[実施例36]
オイルバスを備えた撹拌棒付き3Lセパラブルフラスコに、窒素ガスを導入しながら、N−メチルピロリドン(以下、NMPと記す)1196gを加え、3,3−(ジアミノジフェニル)スルホン(ジアミン1と規定する)を232.4g撹拌しながら加え、50℃に加温した後、BPDA(テトラカルボン酸無水物1と規定する)を147.1g加えて30分撹拌した。続いてODPA(テトラカルボン酸無水物2と規定する)を155.1g加えて8時間撹拌した後、両末端アミン変性メチルフェニルシリコーンオイル(信越化学社製:X22−1660B−3(数平均分子量4400))(ケイ素基含有ジアミンと規定する)105.6gをNMP298gに溶解し、滴下漏斗を使用して滴下して加えた。80℃に昇温し、1時間撹拌した後、オイルバスを外して室温に戻し、透明なポリアミド酸のNMP溶液(以下、ワニスとも記す)を得た。ここでの組成及び得られたポリアミド酸の重量平均分子量(Mw)を表2に示す。また、350℃キュアしたフィルムの試験結果を表5に示す。
【0135】
[実施例37、42、43、46、47]
実施例36と同様にして、ジアミン1、テトラカルボン酸無水物1、テトラカルボン酸無水物2の種類、及びそれらの添加質量をそれぞれ表2に記したものに変えて、実施例36と同様の操作を行ってワニスを得た。また、表2に示すNMP添加量は、最終的にワニスに含まれるNMPの総量を示し、ケイ素基含有ジアミンを希釈する298gのNMPを含んだ質量である。ここでの組成及び得られたポリアミド酸の重量平均分子量(Mw)をそれぞれ表2に示す。また、350℃キュアしたフィルムの試験結果をそれぞれ表5に示す。
【0136】
[実施例38]
オイルバスを備えた撹拌棒付き3Lセパラブルフラスコに、窒素ガスを導入しながら、NMP1200gを加え、3,3−(ジアミノジフェニル)スルホン(ジアミン1と規定する)を232.4g撹拌しながら加え、50℃に加温した後、テレフタル酸クロリド40.6g(その他モノマー成分と規定する)をγブチロラクトン200gに溶解した後、滴下して加えて30分撹拌した。続いてBPDA(テトラカルボン酸無水物1と規定する)を235.4g加えて8時間撹拌した後、両末端アミン変性メチルフェニルシリコーンオイル(信越化学社製:X22−1660B−3(数平均分子量4400))(ケイ素基含有ジアミンと規定する)105.6gをNMP298gに溶解し、滴下漏斗を使用して滴下して加えた。80℃に昇温し、1時間撹拌した後、オイルバスを外して室温に戻し、透明なポリアミド酸の溶液を得た。これに、NMPを1000g加えて希釈した後に、イオン交換水10Lに滴下しながら投入し、ポリアミドイミド前駆体の粉体を析出した後、ブフナー漏斗にて紛体を濾別した。この紛体を40℃で48時間真空乾燥した。こうして得られた紛体に1403gのNMPを加えて、ポリアミドイミド前駆体のNMP溶液を得た。ここでの組成及び得られたポリアミドイミド前駆体の重量平均分子量(Mw)を表2に示す。また、350℃キュアしたフィルムの試験結果を表5に示す。
【0137】
[実施例43,48]
実施例38と同様にして、ジアミン1、テトラカルボン酸無水物1、その他モノマー成分の種類、及びそれらの添加質量をそれぞれ表2に記したものに変えて、実施例38と同様の操作を行ってワニスを得た。また、表2に示すNMP添加量は、最終的にワニスに含まれるNMPの総量を示す。ここでの組成及び得られたポリアミドイミド前駆体の重量平均分子量(Mw)をそれぞれ表2に示す。また、350℃キュアしたフィルムの試験結果をそれぞれ表5に示す。
【0138】
[実施例59]
オイルバスを備えた撹拌棒付き3Lセパラブルフラスコに、窒素ガスを導入しながら、NMP1000gを加え、3,3−(ジアミノジフェニル)スルホン(ジアミン1と規定する)を248.30g撹拌しながら加え、続いてBPDA(テトラカルボン酸無水物1と規定する)を275.13g加えて、室温で30分撹拌した。これを50℃に昇温し、12時間撹拌した後、両末端酸無水物変性メチルフェニルシリコーンオイル(信越化学社製:X22−168−P5−B(数平均分子量4200))104.58gをNMP298gに溶解し、滴下漏斗を使用して滴下して加えた。80℃に昇温し、1時間撹拌した後、オイルバスを外して室温に戻し、透明なポリアミド酸のNMP溶液(以下、ワニスとも記す)を得た。ここでの組成及び得られたポリアミド酸の重量平均分子量(Mw)を表7に示す。また、350℃キュアしたフィルムの試験結果を表8に示す。
【0139】
[実施例60〜66]
実施例59と同様にして、ジアミン1、テトラカルボン酸無水物1、ケイ素基含有ジアミンの種類、及びそれらの添加質量をそれぞれ表1に記したものに変えて、実施例1と同様の操作を行ってワニスを得た。また、表1及び表2に示すNMP添加量は、最終的にワニスに含まれるNMPの総量を示し、ケイ素基含有ジアミンを希釈する298gのNMPを含んだ質量である。ここでの組成及び得られたポリアミド酸の重量平均分子量(Mw)をそれぞれ表7に示す。また、350℃キュアしたフィルムの試験結果をそれぞれ表8に示す。
【0140】
[比較例1]
オイルバスを備えた撹拌棒付き3Lセパラブルフラスコに、窒素ガスを導入しながら、NMP1065gを加え、3,3−(ジアミノジフェニル)スルホン(ジアミン1と規定する)を248.3g撹拌しながら加え、続いてピロメリット酸二無水物(テトラカルボン酸無水物1と規定する)を218.12g加えて、室温で30分撹拌した。これを50℃に昇温し、12時間撹拌した後、オイルバスを外して室温に戻し、透明なポリアミド酸のNMP溶液(以下、ワニスとも記す)を得た。ここでの組成及び得られたポリアミド酸の重量平均分子量(Mw)を表3に示す。また、350℃キュアしたフィルムの試験結果を表6に示す。
【0141】
[比較例2〜21]
比較例1と同様にして、ジアミン1、テトラカルボン酸無水物1の種類、及びそれらの添加質量をそれぞれ表3に記したものに変えて、比較例1と同様の操作を行ってワニスを得た。ここでの組成及び得られたポリアミド酸の重量平均分子量(Mw)をそれぞれ表3に示す。また、350℃キュアしたフィルムの試験結果をそれぞれ表6に示す。
【0142】
[比較例22]
オイルバスを備えた撹拌棒付き3Lセパラブルフラスコに、窒素ガスを導入し、NMP1332gを加え、TFMB(ジアミン2と規定する)299.8gを撹拌しながら加え、BPDA294.2g(テトラカルボン酸無水物1と規定する)を加え、50℃に加温して、12時間撹拌した。これに、両末端アミン変性メチルフェニルシリコーンオイル(信越化学社製:X22−1660B−3(数平均分子量4400))(ケイ素基含有ジアミンと規定する)105.6gをNMP298gに溶解したものを滴下漏斗を使用して滴下した。滴下終了後、これを80℃に昇温し、1時間撹拌した後、オイルバスを外して室温に戻し、若干濁りのある不透明なポリアミド酸のNMP溶液(以下、ワニスとも記す)を得た。ここでの組成及び得られたポリアミド酸の重量平均分子量(Mw)を表3に示す。また、350℃キュアしたフィルムの試験結果を表6に示す。
【0143】
[比較例23]
ピロメリット酸無水物(PMDA)4. 3 6g (0.02モル)とBTDA25.78gをN-メチルー2-ピロリドン(NMP)240g に分散させ、ω‐ω′‐ビス‐(3‐アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン(平均分子量480)2.4gをジエチレングリコールジメチルエーテル(Dig)50g に溶解させて得られた溶液を少量ずつ滴下し、1時間撹拝して反応させた。このように、ジアミノシロキサンとテトラカルボン酸二無水物を反応させた後、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ) ベンゼン(TPE−R)14.62g (0.05モル)、次いでさらに3,3DAS11.17gを少量ずつ粉体で添加した。
【0144】
[比較例24]
撹拌装置、滴下漏斗、温度計、コンデンサー及び窒素置換装置を付した1リットルのフラスコを冷水中に固定した。フラスコ内に窒素ガスにより置換した後、脱水精製したN‐メチル‐2‐ピロリドン(以下NMPと略記する)の500g、3,3′4,4′‐ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)の25.11g(0.0779モル)、3,3′‐ジアミノジフェニルスルホン(3,3−DAS)の15.48g(0.0623モル)及びω‐ω′‐ビス‐(3‐アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン(分子量960)の14.96g(0.0159モル)を混合し、常法に従ってポリアミド酸溶液を得た。
【0145】
[比較例25]
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を取り付けた300mLの4つ口フラスコにジアミン化合物として1,4−ジアミノシクロヘキサン2.87g(25.1mmol)と両末端アミノ変性メチルフェニルシリコーン(X22−1660B−3)3.42g(0.8mmol)とを添加した。次いで、フラスコ内を窒素置換した後、N,N−ジメチルアセトアミド58mlを加え均一になるまで攪拌した。得られた溶液に多価カルボン酸誘導体としてジフェニル−3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物(BPDA)8.71g(25.9mmol)を室温で加え、そのままの温度で24時間攪拌を続けて、組成物(ポリアミック酸溶液)を得た。
【0146】
[比較例26]
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を取り付けた300mLの4つ口フラスコに(B)成分として4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル(以下「TFMB」ともいう。)7.85g(24.5mmol)と両末端アミノ変性メチルフェニルシリコーン(X22−9409)2.03g(1.6mmol)とを添加した。次いで、フラスコ内を窒素置換した後、N,N−ジメチルアセトアミド58mlを加え均一になるまで攪拌した。得られた溶液に(A)成分として1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(以下「CBDA」ともいう。)5.12g(26.1mmol)を室温で加え、そのままの温度で24時間攪拌を続けて、組成物(ポリアミック酸溶液)を得た。
【0147】
【表1】
【0148】
【表2】
【0149】
【表3】
【0150】
【表4】
【0151】
【表5】
【0152】
【表6】
【0153】
【表7】
【0154】
【表8】
【0155】
なお、表4〜6、表8に示すYI値及び全光線透過率は、オーブン内の酸素濃度をそれぞれ50ppm、100ppm、500ppmにそれぞれ調整したときの結果(50ppm/100ppm/500ppm)を示している。
【0156】
表4、5、8に示すように、実施例1〜66は、膜物性において、以下の条件を同時に満たすことが確認された。
【0157】
(1)残留応力が25MPa以下
(2)黄色度が7以下であり、酸素濃度による影響が少ない
(3)室温温度以上の温度領域におけるガラス転移温度が250℃以上
(4)全光線透過率が88%以上であり、酸素濃度による影響が少ない
(5)引張伸度30%以上
(6)NMP耐薬品性試験30分以上
(7)NMP単独でワニスを作製しても、熱硬化膜が白濁することがないので全光線透過率が高い
【0158】
これらは、トップ・エミッション型のフレキシブルディスプレイ用透明基板に適用する為の性能を満足している。
【0159】
実施例1〜33、36、37、41、42、46、47、53〜66は、複屈折に由来する膜厚方向のレタデーションRthが100nm以下(20〜90nm)であり、トップ・エミッション型のフレキシブルディスプレイ用透明基板だけでなく、ボトム・エミッション型のフレキシブルディスプレイ用透明基板やタッチパネル用電極基板に適用する為の性能を満足している。また、厚さ方向のレタデーションRthは、共重合モノマーとして、ケイ素基含有モノマーを使用していないポリイミド(比較例1〜22)とケイ素基含有モノマーを使用しているポリイミド(実施例1〜33)を比較すると、ケイ素基含有モノマーを使用しているポリイミドの方が、Rthが小さく、ケイ素基含有モノマーがポリイミドのRth低下に寄与していることが分かる。
【0160】
これに対して、比較例1〜26は、残留応力、耐薬品性、引っ張り伸度が低く、YI値や全光線透過率がキュア時の酸素濃度に影響を受けて、悪化する。
【0161】
この結果から、本発明に係る樹脂前駆体から得られる樹脂は、無色透明であると共に、無機膜との間に発生する残留応力が低く、さらに耐薬品性に優れ、キュア時の酸素濃度によるYI値や全光線透過率への影響が小さい樹脂フィルムであることが確認された。
【0162】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0163】
本発明は、例えば、半導体絶縁膜、TFT−LCD絶縁膜、電極保護膜、フレキシブルディスプレイの製造、タッチパネルITO電極用基板に、特に基板として好適に利用することができる。
【手続補正書】
【提出日】2017年7月14日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ基及びアミノ基反応性基を含む重合成分を重合させて得られる樹脂前駆体であって、
前記重合成分が、アミノ基及びアミノ基反応性基から選択される基を2つ以上有する多
価化合物を含み、
前記多価化合物がケイ素基含有化合物を含み、
前記多価化合物がテトラカルボン酸二無水物を含み、
前記多価化合物が、下記式(1):
【化1】
で表されるジアミンを含み、
前記樹脂前駆体が、下記一般式(2):
【化2】
{式中、複数存在するR3及びR4は、それぞれ独立に、炭素数1〜20の一価の有機基で
あり、そしてhは、3〜200の整数である。}で表される構造を有し、
前記ケイ素基含有化合物の量が前記多価化合物の総質量基準で6質量%〜25質量%で
り、
前記テトラカルボン酸は、
4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−シクロヘキセン−1,2ジカルボン酸無水物、ピロメリット酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’―ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、メチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,1−エチリデン−4,4’−ジフタル酸二無水物、2,2−プロピリデン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,2−エチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,3−トリメチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,4−テトラメチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,5−ペンタメチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、チオ−4,4’−ジフタル酸二無水物、スルホニル−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ベンゼン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,3−ビス[2−(3,4−ジカルボキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン二無水物、1,4−ビス[2−(3,4−ジカルボキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン二無水物、ビス[3−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]メタン二無水物、ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]メタン二無水物、2,2−ビス[3−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジメチルシラン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物、カルボニル−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、メチレン−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、1,2−エチレン−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、1,1−エチリデン−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、2,2−プロピリデン−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、オキシ−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、チオ−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、スルホニル−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、ビシクロ[2,2,2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、rel−[1S,5R,6R]−3−オキサビシクロ[3,2,1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物、エチレングリコール−ビス−(3,4−ジカルボン酸無水物フェニル)エーテル、4,4’−ビフェニルビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)9,9’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物
からなる群から選択される少なくとも1つの化合物であり、
前記樹脂前駆体は、
式(I)で表されるジアミン(a1)、式(II)で表されるジアミン(a2)、及び
酸二無水物(a3)を重縮合してなるポリアミド酸(A)、並びに水酸基を有する有機溶
媒(B)を含有するポリアミド酸組成物:
【化3】
{式(I)中、R1は炭素数1〜5のアルキレンであり、R2は炭素数1〜5のアルキル
であり、nは1〜150の整数である。}
【化4】
{式(II)中、X、Y1及びY2はそれぞれ独立して単結合、−O−、−SO2−、−C
(Me)2−、又は−C(CF32−であり、m及びnはそれぞれ独立して0又は1で
ある。}を除く、樹脂前駆体。
【請求項2】
前記テトラカルボン酸は、
ピロメリット酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’―ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、9,9’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物、及び4,4’−ビフェニルビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)からなる群から選択される少なくとも1つの化合物である、請求項1に記載の樹脂前駆体。
【請求項3】
前記テトラカルボン酸は、
1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、
2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、
メチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、
1,1−エチリデン−4,4’−ジフタル酸二無水物、
2,2−プロピリデン−4,4’−ジフタル酸二無水物、
チオ−4,4’−ジフタル酸二無水物、
スルホニル−4,4’−ジフタル酸二無水物、
1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ベンゼン二無水物、
1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、
1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、
1,3−ビス[2−(3,4−ジカルボキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン二無水物、
1,4−ビス[2−(3,4−ジカルボキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン二無水物、
ビス[3−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]メタン二無水物、
ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]メタン二無水物、
2,2−ビス[3−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、
ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジメチルシラン二無水物、
1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン二無水物、
シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、
シクロヘキサン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、
3,3’,4,4’−ビシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物、
からなる群から選択される少なくとも1つの化合物である、請求項1に記載の樹脂前駆体。
【請求項4】
前記ケイ素基含有化合物が、下記一般式(3):
【化5】
{式中、複数存在するR2は、それぞれ独立に、単結合又は炭素数1〜20の二価の有機基であり、R3及びR4は、それぞれ独立に、炭素数1〜20の一価の有機基であり、複数存在してもよいR5は、それぞれ独立に、炭素数1〜20の一価の有機基であり、L1、L2、及びL3は、それぞれ独立に、アミノ基、イソシアネート基、カルボキシル基、酸無水物基、酸エステル基、酸ハライド基、ヒドロキシ基、エポキシ基、又はメルカプト基であり、jは、3〜200の整数であり、kは、0〜197の整数である。}で表されるシリコーン化合物を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂前駆体。
【請求項5】
前記一般式(3)において、L1及びL2が、それぞれ独立に、アミノ基又は酸無水物基であり、そしてkが0である、請求項に記載の樹脂前駆体。
【請求項6】
前記一般式(3)において、L1及びL2が共にアミノ基である、請求項に記載の樹脂前駆体。
【請求項7】
前記樹脂前駆体が、ユニット1及びユニット2を含有し、
該ユニット1が、少なくとも下記一般式(4);
【化6】
{式中、複数存在するR1は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素、又は一価の芳香族基であり、複数存在してもよいX1は、それぞれ独立に、炭素数4〜32の四価の有機基であり、そしてnは、1〜100の整数である。}で表される構造を有し、
該ユニット2が、下記一般式(5):
【化7】
{式中、複数存在するR1は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素、又は一価の芳香族基であり、複数存在するR2は、それぞれ独立に、炭素数3〜20の二価の脂肪族炭化水素、又は二価の芳香族基であり、R3及びR4は、それぞれ独立に、炭素数1〜20の一価の有機基であり、複数存在してもよいX2は、それぞれ独立に、炭素数4〜32の四価の有機基であり、lは、3〜50の整数であり、そしてmは、1〜100の整数である。}で表される構造、又は、下記一般式(6):
【化8】
{式中、複数存在するR1は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素、又は一価の芳香族基であり、複数存在するR3及びR4は、それぞれ独立に、炭素数1〜20の一価の有機基であり、複数存在するR8は、それぞれ独立に、炭素数3〜20の三価の脂肪族炭化水素、又は三価の芳香族基であり、pは、1〜100の整数であり、そしてqは3〜50の整数である。}で表される構造、又は上記一般式(5)で表される構造と上記一般式(6)で表される構造の両者、を有する、請求項1〜のいずれか1項に記載の樹脂前駆体。
【請求項8】
前記ユニット1及び前記ユニット2の合計量が、前記樹脂前駆体の総質量基準で30質量%以上である、請求項に記載の樹脂前駆体。
【請求項9】
前記樹脂前駆体が、下記一般式(7):
【化9】
{式中、複数存在するR1は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素、又は一価の芳香族基であり、複数存在してもよいX3は、それぞれ独立に、炭素数4〜32の二価の有機基であり、複数存在してもよいX4は、それぞれ独立に、炭素数4〜32の四価の有機基であり、そしてtは1〜100の整数である。}で表される構造を有するユニット3を更に含有する、請求項又はに記載の樹脂前駆体。
【請求項10】
前記一般式(7)において、X3が、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンからアミノ基を除いた構造である残基である、請求項に記載の樹脂前駆体。
【請求項11】
前記ユニット1及び前記ユニット2が、
ピロメリット酸二無水物(PMDA)及びビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)からなる群より選ばれる1つ以上に由来する部位と、
4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物(CHDA)、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)、4,4’−ビフェニルビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)(TAHQ)、及び9,9’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物(BPAF)からなる群より選ばれる1つ以上に由来する部位と
の組み合わせである部位を、前記ユニット1及び前記ユニット2の酸二無水物由来部位の総量基準で60モル%以上の量で含む、請求項10のいずれか1項に記載の樹脂前駆体。
【請求項12】
前記R3及び前記R4が、それぞれ独立に、炭素数1〜3の一価の脂肪族炭化水素基、又は炭素数6〜10の一価の芳香族炭化水素基である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の樹脂前駆体。
【請求項13】
前記R3及び前記R4の少なくとも一部がフェニル基である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の樹脂前駆体。
【請求項14】
前記樹脂前駆体を不活性雰囲気下300〜500℃の条件で加熱硬化させて得られる樹脂が、−150℃〜0℃の領域の少なくとも1つのガラス転移温度及び150℃〜380℃の領域の少なくとも1つのガラス転移温度を有し、かつ0℃より大きく150℃より小さい領域においてガラス転移温度を有さない、請求項1〜13のいずれか1項に記載の樹脂前駆体。
【請求項15】
ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)由来の部位を、前記樹脂前駆体の酸二無水物由来部位の総量基準で20モル%以上含む、請求項1〜14のいずれか1項に記載の樹脂前駆体。
【請求項16】
一部がイミド化されている、請求項1〜15のいずれか1項に記載の樹脂前駆体。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか1項に記載の樹脂前駆体と、下記一般式(8):
【化10】
{式中、複数存在してもよいX3は、それぞれ独立に、炭素数4〜32の四価の有機基であり、複数存在するR1は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素、又は一価の芳香族基であり、そしてrは、1〜100の整数である。}で表される構造を有する樹脂前駆体とを含む、前駆体混合物。
【請求項18】
請求項1〜16のいずれか1項に記載の樹脂前駆体、又は請求項17に記載の前駆体混合物を含む、フレキシブルデバイス材料。
【請求項19】
請求項1〜16のいずれか1項に記載の樹脂前駆体からポリイミドフィルムを形成する工程を含む、フレキシブルデバイスの製造方法。
【請求項20】
前記ポリイミドフィルム上に半導体デバイスを設ける工程を更に含む、請求項19に記載のフレキシブルデバイスの製造方法。
【請求項21】
請求項1〜16のいずれか1項に記載の樹脂前駆体の硬化物又は請求項17に記載の前駆体混合物の硬化物である、樹脂フィルム。
【請求項22】
請求項1〜16のいずれか1項に記載の樹脂前駆体又は請求項17に記載の前駆体混合物と、溶媒と、を含有する、樹脂組成物。
【請求項23】
前記樹脂組成物を支持体の表面に展開した後、前記樹脂組成物を窒素雰囲気下300℃〜500℃で加熱することによって前記樹脂組成物に含まれる前記樹脂前駆体をイミド化して得られる樹脂が示す20μm膜厚での黄色度が7以下である、請求項22に記載の樹脂組成物。
【請求項24】
前記樹脂組成物を支持体の表面に展開した後、前記樹脂組成物を窒素雰囲気下300℃〜500℃で加熱することによって前記樹脂組成物に含まれる前記樹脂前駆体をイミド化して得られる樹脂が示す10μm膜厚での残留応力が25MPa以下である、請求項22又は23に記載の樹脂組成物。
【請求項25】
請求項2224のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物である、樹脂フィルム。
【請求項26】
請求項2224のいずれか1項に記載の樹脂組成物を支持体の表面上に展開する工程と、
前記支持体及び前記樹脂組成物を加熱して前記樹脂組成物に含まれる前記樹脂前駆体をイミド化して樹脂フィルムを形成する工程と、
前記樹脂フィルムを前記支持体から剥離する工程と、
を含む、樹脂フィルムの製造方法。
【請求項27】
支持体と、前記支持体の表面上に形成された、請求項2224のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物である樹脂膜とを含む、積層体。
【請求項28】
支持体の表面上に、請求項2224のいずれか1項に記載の樹脂組成物を展開する工程と、
前記支持体及び前記樹脂組成物を加熱して前記樹脂組成物に含まれる前記樹脂前駆体をイミド化して樹脂膜を形成し、これにより前記支持体及び前記樹脂膜を含む積層体を得る工程と、
を含む、積層体の製造方法。
【請求項29】
ディスプレイ基板の製造に用いられるポリイミド樹脂膜であって、厚み20μmにおけるRthが20〜90nmである、ポリイミド樹脂膜。
【請求項30】
支持体の表面上にポリイミド前駆体を含む樹脂組成物を展開する工程と、
前記支持体及び前記樹脂組成物を加熱してポリイミド前駆体をイミド化して、請求項29に記載のポリイミド樹脂膜を形成する工程と、
前記ポリイミド樹脂膜上に素子を形成する工程と、
前記素子が形成された前記ポリイミド樹脂膜を前記支持体から剥離する工程と
を含む、ディスプレイ基板の製造方法。