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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-226898(P2017-226898A)
(43)【公開日】2017年12月28日
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/40 20060101AFI20171201BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20171201BHJP
【FI】
   C23C16/40
   C23C16/455
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-125285(P2016-125285)
(22)【出願日】2016年6月24日
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100095957
【弁理士】
【氏名又は名称】亀谷 美明
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(72)【発明者】
【氏名】岩下 伸也
(72)【発明者】
【氏名】野呂 尚孝
(72)【発明者】
【氏名】金子 都
【テーマコード(参考)】
4K030
【Fターム(参考)】
4K030AA03
4K030AA14
4K030BA46
4K030BB03
4K030CA12
4K030FA10
4K030HA01
4K030JA06
4K030JA10
4K030JA11
4K030LA15
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ラフネスの小さい良好な結晶性を有するTiOの成膜方法の提供。
【解決手段】熱ALD法によりTiO膜を成膜する成膜方法であって、基板上にTiClを吸着させる吸着工程と、反応ガスを用いて前記吸着工程において吸着したTiClを酸化させTiO膜を基板上に定着させる酸化工程と、を有し、前記酸化工程は、アモルファスTiO膜の結晶化が2次元結晶構造となる条件で実施されることを特徴とする成膜方法。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱ALD法によりTiO膜を成膜する成膜方法であって、
基板上にTiClを吸着させる吸着工程と、
反応ガスを用いて前記吸着工程において吸着したTiClを酸化させTiO膜を基板上に定着させる酸化工程と、を有し、
前記酸化工程は、アモルファスTiO膜の結晶化が2次元結晶構造となる条件で実施されることを特徴とする、成膜方法。
【請求項2】
前記反応ガスはOガスであり、
前記酸化工程は、プロセス温度が200℃超280℃以下、Oガス濃度が200g/Nm3以上、酸化時間が10s以上、の条件下で実施されることを特徴とする、請求項1に記載の成膜方法。
【請求項3】
前記Oガスは、Oガスに対しオゾナイザーを用いた高周波放電によって得られ、
当該Oガスの流量は1000sccmに制御されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の成膜方法。
【請求項4】
前記反応ガスはHOガスであり、
前記酸化工程は、プロセス温度が200℃超280℃以下、HOガス流量の総量12.5cc以上、酸化時間10s以上、の条件下で実施されることを特徴とする、請求項1に記載の成膜方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱ALD処理によりTiO膜を成膜する成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体デバイスなどの製造プロセスにおいては、基板としての半導体ウェハ(以下、単に「ウェハ」とも記載する)に対してイオン注入処理、エッチング処理、成膜処理などの各種処理が行われる。ウェハに対して成膜を行う手法としては、いわゆるALD(Atomic Layer Deposition)と呼ばれる処理(以下、単にALD処理とも記載する)が用いられることがある。ALD処理では、例えば真空に排気された処理容器内に原料ガスを供給し、ウェハ表面に原料ガスを吸着させる。その後、還元反応などを用い原料ガスの一部をウェハ表面に定着させて成膜を行う。そのため、例えば凹凸状のパターンを有するウェハであっても、その全面に均一な膜厚で成膜を行うことができる。なお、ALD処理により成膜を行うにあたっては、例えば600℃程度の高温でウェハが熱処理される。
【0003】
ALD処理によって成膜される膜としては、ウェハに対してハードマスクとして用いられるTiO膜(酸化チタン膜)が知られている。ハードマスクに用いられるTiO膜は、結晶粒界が無く、ラフネス(粗度)が小さく、且つ、段差被覆性が良いことが望ましいため、通常はPEALD処理(プラズマエンハンスドALD処理)を用いた低温プロセスによって成膜されるアモルファス膜が用いられることが多い。
【0004】
一方で、半導体ウェハに対するハードマスク用の膜に要求されるウェットエッチング耐性の向上のためにはプロセス温度の高温化が望ましいと考えられるが、高温化に伴い、TiO膜の結晶化や、それに伴うラフネスの増大が懸念される。即ち、高温領域で成膜したTiO膜は結晶粒界が多数存在するためにラフネスが小さな膜は得られず、当該膜のハードマスクへの応用は困難であると考えられている。
【0005】
そこで、例えば特許文献1や非特許文献1には、プロセス温度を高温化させることなくTiO膜のアモルファス膜形成を行い、アニール処理による結晶化を経て最終的なTiO膜の成膜を行う技術が開示されている。このような技術によれば、従来、低温での形成が困難であったルチル結晶構造を有するTiO膜を成膜することが可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−248813号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「Characterization of low temperature deposited atomic layerdeposition TiO2 for MEMS applications」YujianHuang,Gregory Pandraud,and Pasqualina M.Sarro J.Vac.Sci.Technol.A31(2013)01A148
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1や非特許文献1に記載の技術では、TiO膜をアモルファス膜として形成し、その後、高温(およそ、400℃以上)でアニール処理を行うことで最終的なTiO2膜を成膜している。そのため、成膜プロセスとして2段階プロセスを必要とし、工程の煩雑化が問題として挙げられる。
【0009】
また、一方で、TiO膜の成膜プロセスを低温プロセスのみで行った場合には、アモルファス膜のままとなり、ハードマスクへの応用に鑑みるとエッチング耐性が不十分である懸念がある。更に、近年、半導体の微細化に伴い浅接合化が進み、微細加工を含む薄膜の形成が求められており、高温でのアニール処理は半導体素子への悪影響が懸念され、高温でプロセスを必要としない成膜技術が望まれている。
【0010】
このような事情に鑑み、本発明の目的は、TiO膜の成膜において低温プロセスの条件を好適に制御することで、アナターゼ結晶の成長を2次元結晶成長とし、横方向への結晶化を促進させ、ラフネスの小さい良好な結晶性を有するTiO膜を得ることが可能なTiO膜の成膜方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するため、本発明によれば、熱ALD法によりTiO膜を成膜する成膜方法であって、基板上にTiClを吸着させる吸着工程と、反応ガスを用いて前記吸着工程において吸着したTiClを酸化させTiO膜を基板上に定着させる酸化工程と、を有し、前記酸化工程は、アモルファスTiO膜の結晶化が2次元結晶構造となる条件で実施されることを特徴とする、成膜方法が提供される。
【0012】
前記反応ガスはOガスであり、前記酸化工程は、プロセス温度が200℃超280℃以下、Oガス濃度が200g/Nm3以上、酸化時間が10s以上、の条件下で実施されても良い。
【0013】
前記Oガスは、Oガスに対しオゾナイザーを用いた高周波放電によって得られ、
当該Oガスの流量は1000sccmに制御されても良い。
【0014】
前記反応ガスはHOガスであり、前記酸化工程は、プロセス温度が200℃超280℃以下、HOガス流量の総量12.5cc以上、酸化時間10s以上、の条件下で実施されても良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、TiO膜の成膜において低温プロセスの条件を好適に制御することで、アナターゼ結晶の成長を2次元結晶成長とし、横方向への結晶化を促進させ、ラフネスの小さい良好な結晶性を有するTiO膜を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施の形態にかかる基板処理装置の構成の概略を示す縦断面図である。
図2】ウェハ上へのTiO膜の成膜処理の概要を示す概略説明図である。
図3】熱ALD処理によって各条件(a)〜(c)によって成膜したTiO膜をAFMで観察した拡大写真である。
図4】本実施の形態に係る熱ALD処理によるTiO膜の成膜処理方法での、プロセス温度(上限値)に関する説明図である。
図5】本実施の形態に係る熱ALD処理によるTiO膜の成膜処理方法での、プロセス温度(下限値)に関する説明図である。
図6】本実施の形態に係る熱ALD処理によるTiO膜の成膜処理方法での酸化ガス濃度および酸化時間に関する説明図である。
図7】本実施の形態で説明した好適な条件下において成膜を行ったTiO膜と、本発明の範囲外の条件下において成膜を行ったTiO膜のそれぞれについて面方向の結晶性測定をXRDによって行った結果を示すピークグラフである。
図8】酸化ガスとしてHOガスを用いた場合に、各条件(a)〜(c)によって成膜した場合のTiO膜をAFMで観察した拡大写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施形態の一例について説明する。本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。なお、本実施の形態では、基板処理装置として、熱ALD処理を用いて基板を処理する基板処理装置1を記載し、当該基板処理装置1によりウェハW上にTiO膜を形成するものとして説明する。
【0018】
図1は、本実施の形態にかかる基板処理装置1を概略的に示した縦断面図である。基板処理装置1は、有底で上方が開口した略円筒状の処理容器10と、処理容器10内に設けられた、ウェハWを載置する載置台11と、を有している。処理容器10は、接地線12により電気的に接続されて接地されている。
【0019】
載置台11は、例えば窒化アルミ(AlN)等のセラミックスにより形成され、載置台11の下面は、導電性材料により形成された支持部材13により支持されている。支持部材13の下端は、処理容器10の底面により支持され、且つ電気的に接続されている。そのため、載置台11は処理容器10を介して接地されている。
【0020】
載置台11には、電気ヒータ20が内蔵されており、載置台11に載置されるウェハWを所定の温度に加熱することができる。また、載置台11には、ウェハWの外周部を押圧して載置台11上に固定するクランプリング(図示せず)や、処理容器10の外部に設けられた図示しない搬送機構との間でウェハWを受け渡すための昇降ピン(図示せず)が設けられている。
【0021】
載置台11の上方であって処理容器10の内側面には、略円盤状に形成されたシャワープレート30が当該載置台11に対向して平行に設けられている。換言すれば、シャワープレート30は、載置台11上に載置されたウェハWに対向して配置されている。
また、シャワープレート30には、当該シャワープレート30を厚み方向に貫通する複数のガス供給孔30aが形成されている。また、シャワープレート30の外周縁部全周には、上方に突出する突出部30bが形成されている。即ち、シャワープレート30は、有底で上部が開口した略円筒形状を有している。シャワープレート30は、この突出部30bの外側面が処理容器10の内側面と所定の距離だけ離間するように、処理容器10の内径よりも小さく、且つ、シャワープレート30における載置台11と対向する面が、例えば平面視において載置台11上のウェハWの全面を覆うように、ウェハWよりも大きな径を有している。突出部30bの上端面には、略円盤状の蓋体31が接続され、当該蓋体31とシャワープレート30とで囲まれた空間によりガス拡散室32が形成されている。なお、蓋体31とシャワープレート30とは、一体に構成されていてもよい。
【0022】
蓋体31上面の外周部には、当該蓋体31の外方に向けて突出する係止部31aが形成されている。係止部31aの下面は、処理容器10の上端部に支持された、円環状の支持部材33により保持されている。また、蓋体31の上面には、電気ヒータ34が設けられている。この電気ヒータ34により、蓋体31及び当該蓋体31に接続されたシャワープレート30を所定の温度に加熱することができる。
【0023】
ガス拡散室32には、蓋体31を貫通してガス供給管50が接続されている。ガス供給管50には、図1に示すように処理ガス供給源51が接続されている。処理ガス供給源51から供給された処理ガスは、ガス供給管50を介してガス拡散室32に供給される。ガス拡散室32に供給された処理ガスは、ガス供給孔30aを通じて処理容器10内に導入される。
【0024】
本実施の形態における処理ガス供給源51は、TiO膜の成膜用の原料ガス(Tiソース)としてのTiClガスを供給する原料ガス供給部52と、酸化ガスとして例えばO(オゾン)ガスを供給する酸化ガス供給部53と、パージガスとして希ガスを供給する希ガス供給部54を有している。希ガス供給部54から供給される希ガスとしては、例えばN(窒素)ガスが用いられる。また、処理ガス供給源51は、各ガス供給部52、53、54とガス拡散室32との間にそれぞれ設けられたバルブ55と、流量調整機構56を有している。ガス拡散室32に供給される各ガスの流量は、流量調整機構56によって制御される。
【0025】
処理容器10の底面には、処理容器10内を排気する排気機構70が排気管71を介して接続されている。排気管71には、排気機構70による排気量を調節する調節弁72が設けられている。したがって、排気機構70を駆動することにより、排気管71を介して処理容器10内の雰囲気を排気し、処理容器10内を所定の真空度まで減圧することができる。
【0026】
以上の基板処理装置1には、制御部100が設けられている。制御部100は、例えばコンピュータであり、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、電気ヒータ20、34や流量調整機構56、排気機構70及び調節弁72などの各機器を制御して、基板処理装置1を動作させるためのプログラムも格納されている。
【0027】
なお、上記のプログラムは、例えばコンピュータ読み取り可能なハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルデスク(MO)、メモリーカードなどのコンピュータに読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、その記憶媒体から制御部100にインストールされたものであってもよい。
【0028】
本実施の形態にかかる基板処理装置1は以上のように構成されている。次に、本実施の形態にかかる基板処理装置1における、ウェハW上へのTiO膜の成膜処理について説明する。図2はウェハW上へのTiO膜の成膜処理の概要を示す概略説明図である。
【0029】
成膜処理にあたっては、先ず、処理容器10内にウェハWが搬入され、載置台11上に載置されて保持される。
ウェハWが載置台11に保持されると、排気機構70により処理容器10内が排気され気密に保持される。それと共に処理ガス供給源51から、TiClガス、Oガス及びNガスがそれぞれ所定の流量で処理容器10内に供給される。酸化ガスとしてはOガスが用いられるが、当該Oガスは、処理容器10内のオゾナイザーに対してOガスを流し、このオゾナイザーによる高周波放電によって得られる。即ち、本発明及び本明細書におけるOフロー時間とは、実質的にはOフロー時間と同義である。
この際、TiClガスの流量は概ね5〜50sccm、Oガスの流量は概ね1000sccm、Nガスの流量は概ね1.5sccmとなるように各流量調整機構56が制御される。また、処理容器10内の圧力が、例えば65Pa〜1330Pa、本実施の形態では概ね666Paとなるように、調節弁72の開度が制御される。また、供給されるOガスの濃度は200g/Nm以上とすることが好ましい。
【0030】
それと共に、各電気ヒータ20、34等により、シャワープレート30を例えば400°以上に加熱及び維持し、載置台11上のウェハWを200℃以上280℃以下に加熱及び維持する。
【0031】
図2(a)に示すように、先ずTiClが処理容器10内に供給され、ウェハW表面に吸着する(吸着工程)。その後、図2(b)、(c)に示すように、Nガスのパージにより気相中のTiClを除去し、反応ガス(酸化ガス)としてのOガスを供給することで原子層1層分のTiO層を形成する(酸化工程)。そして、図3(d)に示すように、再度Nガスのパージを行うことで処理容器10内の反応ガス(酸化ガス)を除去する。このような一連の工程を繰り返し行うことで、ウェハW上にTiO膜が形成される。
なお、1枚のウェハWの処理が終了すると、処理容器10から当該ウェハWが搬出される。そして、処理容器10内に新たなウェハWが搬入され、この一連のウェハWの処理が繰り返し行われる。
【0032】
以上説明した、本実施の形態に係る基板処理装置1での熱ALD処理によるTiO膜の成膜処理では、ヒータ20の稼働により、載置台11上のウェハWを200℃以上280℃以下に加熱及び維持し、酸化ガスであるOの濃度は200g/Nm以上に制御される。また、上記酸化工程については比較的低温での酸化処理であり、Oのフロー時間で10s以上の条件下で行われる。
【0033】
本発明者らが鋭意検討した結果、上記条件でTiO膜の結晶性制御を行った場合、アナターゼTiOの結晶ピークが確認され、結晶の向きが横方向に揃ったいわゆる2次元結晶構造を有するTiO膜が成膜されることが知見された。そして、このような2次元結晶構造を有するTiO膜のラフネスは非常に低い値となり、ハードマスク等として用いるのに適した膜であることを見出した。以下、本知見について説明する。
【0034】
図3は、熱ALD処理によってTiO膜を成膜する場合に、各条件(a)〜(c)によって成膜した場合のTiO膜をAFM(原子間力顕微鏡)で観察した拡大写真である。なお、(a)の条件は250℃、O濃度200g/Nm、Oフロー時間1sであり、(b)の条件は250℃、O濃度200g/Nm、Oフロー時間15sであり、(c)の条件は400℃、O濃度200g/Nm、Oフロー時間1sである。また、TiO膜の膜厚は全て18nmである。
【0035】
図3(a)に示すように、低温での酸化時間が極めて短時間(例えば1s)である場合には、アモルファス中に結晶粒が散在するような結晶構造となり、ラフネスが大きな膜(例えば、RMSラフネス7.77m)が成膜される。
一方、図3(c)に示すように、酸化時間が短時間(例えば1s)、且つ、高温での酸化を行った場合には、膜の結晶化が進行し、上記図3(a)に示す低温の場合に比べ、ラフネスが小さく抑えられた膜(例えば、RMSラフネス0.96nm)が成膜される。但し、このように高温で処理を行ったTiO膜は、核形成密度が高く、各々の結晶核がランダムに成長し、且つ結晶粒界の多いアナターゼ結晶構造を有する膜となっている。
【0036】
ここで、図3(b)に示すように、低温での酸化時間が長時間(例えば15s)である場合には、アモルファス膜において横方向(2次元方向)への結晶成長が促進され、ラフネスの小さい膜(例えば、RMSラフネス0.85nm)が成膜される。このように低温で酸化時間を長時間とした場合、核形成密度は低く、面方向で結晶方向が揃い、上記図3(a)、(c)の場合に比べ結晶性の良好なTiO膜が成膜される。このような結晶性の良好な膜はエッチング時のハードマスク等として非常に有用である。
【0037】
図3に示したように、熱ALD処理によるTiO膜の成膜処理においては、プロセス温度及び酸化ガス(O)の供給条件を制御することにより、結晶性の異なる膜が成膜され、得られた膜のラフネスはそれぞれ大きく異なっていることが分かる。そこで本発明者らは、ラフネスが非常に低い値であり、エッチング耐性が高くハードマスク等として用いるのに適した、2次元結晶構造を有するTiO膜を成膜するための好適な条件(プロセス温度及び酸化ガスの供給条件)について更なる検討を行った。以下、本検討について説明する。
【0038】
(プロセス温度)
図4は、本実施の形態に係る熱ALD処理によるTiO膜の成膜処理方法での、プロセス温度(上限値)に関する説明図であり、各温度260℃〜400℃で成膜されたTiO膜の結晶の深さ方向のピーク強度をX線回折(XRD)によって測定したグラフである。なお、酸化時間は1sで成膜し、TiO膜の膜厚は全て18nmである。
図4に示すように、成膜温度が300℃以上ではアナターゼTiOの結晶ピークが顕著に現れているのに対し、成膜温度が280℃以下では当該ピークはほとんど現れていない。TiO膜における結晶方位ピーク高さは、膜の結晶化の進行度合を示している。即ち、プロセス温度によって膜の結晶化を制御することが可能であるが、高温で結晶化したTiO膜は核形成密度が高く、結晶粒界の多い膜となっている(図3(c)参照)。
【0039】
また、図5は、本実施の形態に係る熱ALD処理によるTiO膜の成膜処理方法での、プロセス温度(下限値)に関する説明図であり、200℃で成膜されたTiO膜の結晶性を深さ方向のX線回折(XRD)によって測定したグラフである。TiO膜の膜厚は全て18nmである。なお、図5には、酸化時間が短い場合(1s)と長い場合(10s)の両方のデータを記載している。
図5に示すように、成膜温度が200℃では、酸化時間の長短に依らず結晶ピークは現れていないことが分かる。即ち、成膜温度200℃では結晶成長(結晶核の形成)が行われず、アモルファス膜のままである。従って、アモルファス膜において結晶成長を好適に制御し、横方向(2次元方向)への結晶成長のみを促進させるためには、成膜温度を200℃超にすることが望ましいことが分かる。
【0040】
(酸化ガス供給条件)
図6は、本実施の形態に係る熱ALD処理によるTiO膜の成膜処理方法での酸化ガス濃度および酸化時間に関する説明図である。具体的には、酸化ガスとしてOガスを用い、Oガスの濃度を200g/Nm3として1s〜10sの酸化時間により成膜を行った場合と、Oガスの濃度を300g/Nm3として10sの酸化時間により成膜を行った場合の、成膜されたTiO膜の深さ方向のピーク強度をX線回折(XRD)によって測定したグラフである。TiO膜の膜厚は全て18nmである。
図6に示すように、Oガスの濃度が200g/Nm3、300g/Nm3のいずれの場合でもアナターゼTiOの結晶ピークが現れている。Oガスの濃度が150g/Nm3以下の場合、成膜速度が極めて小さく実用性が低い。以上のことから、TiO膜の結晶化制御を実現するには、Oガスの濃度を200g/Nm3以上にすることが望ましいことが分かる。
【0041】
また、本実施の形態に係る熱ALD処理によるTiO膜の成膜処理方法において、酸化ガスとして用いられるOは、Oを流し、オゾナイザーによる高周波放電によって得られる。即ち、本発明におけるOフロー時間とは、実質的にはOフロー時間と同義である。この時のO流量は1000sccmとすることが望ましい。なお、Oガスを流す際には、オゾナイザーによる放電状態の安定性を担保するために、1.5sccmのNを合わせて流すことが好ましい。
【0042】
また、本実施の形態に係る熱ALD処理によるTiO膜の成膜処理方法における酸化時間、即ちOフロー時間は10s以上とすることが望ましい。これは、図6に示すデータにおいて、アナターゼTiOの結晶ピークが顕著に現れているものがOフロー時間10sとした場合であることから、アモルファス膜において結晶成長を十分に発現させ、2次元結晶構造を有するTiO膜を成膜するためには、少なくとも10s程度の酸化時間をとることが必要であると考えられるからである。
【0043】
なお、Oフロー時間が長くなると、Tiソース(TiCl)酸化反応が進行し、2次元結晶構造を有するTiO膜の成膜が更に進行することから、Oフロー時間の上限値は特に設ける必要はないが、熱ALD処理のプロセス時間の長時間化は生産性の低下を招くため、酸化時間はできるだけ短くすることが望ましい。
【0044】
以上説明した各条件を満たすように熱ALD処理によるTiO膜の成膜処理を行うことで、結晶性制御が最適化され、結晶の向きが横方向に揃ったいわゆる2次元結晶構造を有するTiO膜が成膜される。このような結晶構造を有するTiO膜は、例えばRMSラフネス1nm以下といった非常に小さなラフネスを有する膜であり、半導体ウェハに対するハードマスク用の膜として非常に有用である。
【0045】
図7は、本実施の形態で説明した好適な条件下において成膜を行ったTiO膜と、本発明の範囲外の条件下において成膜を行ったTiO膜のそれぞれについて面方向の結晶性測定をXRDによって行った結果を示している。本発明の範囲内の条件としては、プロセス温度250℃、Oフロー時間(=実質Oフロー時間)15s、Oガスの濃度200g/Nm3とした。一方、本発明の範囲外の条件として、プロセス温度を400℃で成膜を行った。ここで、TiO膜の膜厚は全て18nmである。
【0046】
図7に示すように、本発明の範囲内の条件で成膜されたTiO膜では、アナターゼTiOにアサインされる結晶ピークのうち、(101)以外にも反応性の高い(即ち、ピークが出にくい)(112)や(105)のピークが確認され、TiO結晶が2次元的に成長することで、面方向の結晶方向が揃ったTiO膜が成膜できていることが分かる。
一方、本発明の範囲外の条件で成膜されたTiO膜では、アナターゼTiOの結晶ピークは現れているものの、結晶性が低く、面方向に結晶方向が揃っていないランダムな結晶膜であることが分かる。
【0047】
以上、本発明の実施の形態の一例を説明したが、本発明は図示の形態に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0048】
(本発明の他の実施の形態)
例えば、上記実施の形態においては、Tiソース(TiCl)の酸化を行う反応ガス(酸化ガス)としてOを挙げて説明したが、酸化ガスはこれに限られるものではない。具体的には、酸化ガスとしてHOガスを用いても良い。以下では、熱ALD処理によってTiO膜を成膜する場合に、酸化ガスとしてHOガスを用いる場合の最適なプロセス条件を本発明の他の実施の形態として説明する。
【0049】
先ず、プロセス温度に関しては、酸化ガスが異なっていても、成膜されるTiO膜の結晶構造に差異は無いことから、図4及び図5を参照して上記実施の形態で説明した理由に基づき、200℃超280℃以下とすることが望ましい。
また、酸化ガスとしてHOガスを用いた場合の供給条件としては、酸化工程における流量の総量12.5cc以上、且つ、フロー時間(酸化時間)10s以上とすることが望ましい。これは、アモルファス膜において結晶成長を十分に発現させ、2次元結晶構造を有するTiO膜を成膜するために必要な条件である。
【0050】
なお、HOガスのフロー時間が長くなると、Tiソース(TiCl)酸化反応が進行し、2次元結晶構造を有するTiO膜の成膜が更に進行することから、HOガスのフロー時間の上限値は特に設ける必要はないが、熱ALD処理のプロセス時間の長時間化は生産性の低下を招くため、酸化時間はできるだけ短くすることが望ましい。即ち、成膜速度等の生産性に鑑み、実用上として、酸化工程における流量の総量12.5cc以上とすることが望ましい。
また、HOガスの総流量に関しても、多い場合には酸化反応が進行し、2次元結晶構造を有するTiO膜の成膜が更に進行するのみであり、上限値については設ける必要はない。
【0051】
図8は、酸化ガスとしてHOガスを用いた場合に、各条件(a)〜(c)によって成膜した場合のTiO膜をAFM(原子間力顕微鏡)で観察した拡大写真である。なお、(a)の条件は250℃、HOガスのフロー時間1sであり、(b)の条件は250℃、HOガスのフロー時間10sであり、(c)の条件は400℃、HOガスのフロー時間1sである。ここで、TiO膜の膜厚は全て18nmである。
【0052】
図8(a)に示すように、低温での酸化時間が極めて短時間(例えば1s)である場合には、アモルファス中に結晶粒が散在するような結晶構造となり、ラフネスは小さいものの、結晶の向きが横方向に揃ったいわゆる2次元結晶構造をとるようなTiO膜は得られない。
一方、図8(c)に示すように、酸化時間が短時間(例えば1s)、且つ、高温での酸化を行った場合には、核形成密度が高く結晶粒界の多いアナターゼTiO膜となっている。
【0053】
ここで、図8(b)に示すように、低温での酸化時間が長時間(例えば10s)である場合には、核形成密度が低いため、アモルファス中の各々の結晶核が横方向(2次元方向)に成長し、図8(a)、(c)と比べて結晶性の良好なTiO膜が成膜される。このような結晶粒界の少ない結晶性の良好な膜はエッチング時のハードマスク等として非常に有用である。
【0054】
以上、図8を参照して説明したように、酸化ガスとしてHOガスを用いる場合、プロセス温度を200℃超280℃以下とし、且つ、HOガス流量の総量12.5cc以上、且つ、フロー時間(酸化時間)10s以上とすることで、結晶性が良好でありラフネスの小さいTiO膜が成膜されることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、熱ALD処理によりTiO膜を成膜する成膜方法に適用できる。
【符号の説明】
【0056】
1…基板処理装置
10…処理容器
11…載置台
12…接地線
13…支持部材
20…電気ヒータ
30…シャワープレート
31…蓋体
32…ガス拡散室
33…支持部材
50…ガス供給管
51…処理ガス供給源
52…原料ガス供給部
53…酸化ガス供給部
54…希ガス供給部
70…排気機構
100…制御部
W…ウェハ(被処理体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8