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特開2017-227129排ガス処理装置用の保持材の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-227129(P2017-227129A)
(43)【公開日】2017年12月28日
(54)【発明の名称】排ガス処理装置用の保持材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/28 20060101AFI20171201BHJP
   B01J 37/06 20060101ALI20171201BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20171201BHJP
   B01J 35/06 20060101ALI20171201BHJP
   D01F 9/08 20060101ALI20171201BHJP
【FI】
   F01N3/28 311P
   F01N3/28ZAB
   B01J37/06
   B01D53/94 300
   B01J35/06 Z
   D01F9/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-121601(P2016-121601)
(22)【出願日】2016年6月20日
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100105463
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100129861
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 滝治
(72)【発明者】
【氏名】森 連太郎
(72)【発明者】
【氏名】石井 仁士
(72)【発明者】
【氏名】岡部 隆彦
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 康隆
(72)【発明者】
【氏名】中村 知文
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G169
4L037
【Fターム(参考)】
3G091AA02
3G091AA17
3G091AB02
3G091AB03
3G091BA09
3G091BA10
3G091BA14
3G091BA15
3G091BA39
3G091CA03
3G091GA06
3G091GB06W
3G091GB07W
3G091GB17Z
3G091HA27
3G091HA29
4D148AB09
4D148BA03X
4D148BA10X
4D148BA41X
4D148BB06
4D148CA01
4G169AA01
4G169AA08
4G169BA01B
4G169BA13A
4G169BA13B
4G169CA03
4G169DA05
4G169EA03X
4G169EA03Y
4G169EB14X
4G169EC27
4G169FA03
4G169FB13
4G169FB27
4L037CS18
4L037PA43
4L037PS00
4L037UA14
(57)【要約】
【課題】排ガスの排気系統の配管内に配される排ガス処理体を保持する排ガス処理装置用の保持材の製造方法に関し、付着させる無機粒子等のナノ構造体を多くすることなく大きな反発力を得るとともに、面圧の低下が少ない保持材を得ることのできる、排ガス処理装置用の保持材の製造方法を提供する。
【解決手段】排ガスの排気系統の配管1内に配される排ガス処理体2を保持する排ガス処理装置10用の保持材3の製造方法であって、保持材3はセラミックス繊維のニードル処理されたフェルトであり、該セラミックス繊維のフェルトの内部に、平均繊維径が1nm〜10nm、平均長さが1000nm〜5000nmの無機ナノファイバーが分散したゾル溶液を含浸させるか、またはナノ構造体のゾルの前駆体である前駆体化合物溶液を含浸させ、その後に沸騰処理または酸処理をおこなうことにより、セラミックス繊維の表面にナノ構造体を修飾する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガスの排気系統の配管内に配される排ガス処理体を保持する排ガス処理装置用の保持材の製造方法であって、前記保持材はセラミックス繊維のニードル処理されたフェルトであり、該セラミックス繊維のフェルトの内部に、平均繊維径が1nm〜10nm、平均長さが1000nm〜5000nmの無機ナノファイバーが分散したゾル溶液を含浸させるか、またはナノ構造体のゾルの前駆体である前駆体化合物溶液を含浸させ、その後に沸騰処理または酸処理をおこなうことにより、セラミックス繊維の表面にナノ構造体を修飾する、排ガス処理装置用の保持材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガスの排気系統の配管内に配される排ガス処理体を保持する排ガス処理装置用の保持材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種産業界においては、環境影響負荷低減に向けた様々な取り組みが世界規模でおこなわれており、中でも、自動車産業においては、燃費性能に優れたガソリンエンジン車は勿論のこと、ハイブリッド車や電気自動車等のいわゆるエコカーの普及とそのさらなる性能向上に向けた開発が日々進められている。
【0003】
このようなエコカーの開発に加えて、エンジンから排出される排ガスを浄化する触媒コンバーターに関する研究も盛んに行われている。この触媒コンバーターを構成する排ガス浄化触媒には、酸化触媒や三元触媒、NOx吸蔵還元触媒などが含まれており、この排ガス浄化触媒において触媒活性を発現するのは、白金(Pt)やパラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)などの貴金属触媒であり、貴金属触媒はアルミナ(Al2O3)などの多孔質酸化物からなる担体に担持された状態で一般に用いられている。
【0004】
上記する触媒コンバーターは、車両エンジンとマフラーを繋ぐ排ガスの排気系統に配設される。エンジンはCOやNOx、未燃焼のHCやVOCなど、環境に有害な物質を排出することがあり、こうした有害物質を許容可能な物質に変換するべく、RhやPd、Ptのような貴金属触媒が担体に担持された触媒層が基材のセル壁面に配設されてなる触媒コンバーターに排ガスを通すことにより、COはCO2に転化され、NOxはN2とO2に転化され、HCは燃焼してCO2とH2Oが生成されることになる。このような触媒コンバーターの一般的な構成を概説すると、中空を有する配管(金属ケース)内に配された触媒コート層を有するハニカム構造の基材と、外管と基材の間に介層された耐熱性のマット(保持材)と、からなる構成を挙げることができる。
【0005】
上記する触媒コンバーターに関し、通常運転時の排ガスを浄化することに加えて、冷寒時には電気加熱によって昇温することで触媒を可及的速やかに活性化させて排ガスを浄化する電気加熱式触媒コンバーター(EHC: Electrically Heated Converter)が搭載されることがある。
【0006】
この電気加熱式触媒コンバーターは、排ガスの排気系統に配されたハニカム触媒にたとえば一対の電極を取り付け、これら一対の電極を電源を有する外部回路で繋いだ構成とし、電極に通電することでハニカム触媒を加熱し、ハニカム触媒の活性を高めてこれを通過する排ガスを無害化するものである。
【0007】
上記する電気加熱式触媒コンバーターの一般的な構成を概説すると、既述する一般的な触媒コンバーターと同様に、中空を有する配管(金属ケース)内に配された触媒コート層を有するハニカム構造で発熱性の基材と、外管と基材の間に介層された耐熱性かつ絶縁性のマット(保持材)と、該マットのない領域において基材の表面に取付けられるたとえば一対の電極と、該一対の電極を繋ぐ外部回路と、からなる構成を挙げることができる。
【0008】
たとえば、特許文献1には、触媒コンバーター用保持シール材の製造方法が開示されている。
【0009】
特許文献1によれば、三次元的に集合させたマット状のセラミックス繊維集合体に無機粒子懸濁溶液を供給して加熱成形することで、懸濁液中に含まれる無機粒子がセラミックス繊維の外表面に付着固定されて凹凸構造を形成し、このことにより、繊維集合体を構成する単繊維同士に滑りやズレが生じ難くなり、面圧の経時劣化が起こり難くなるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2011−231774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に開示の保持材によれば、排ガスの排気系統における加熱に伴う圧縮を繰り返し受けることによっても、加熱による面圧低下が少なく、処理構造体を安全に保持することができるとしている。
【0012】
しかしながら、特許文献1では無機粒子懸濁溶液を繊維集合体に供給しているので、無機粒子が繊維に均一に付着せず、そのため、繰り返しの圧縮力に対して保持材が所望の反発力を得るには多くの無機粒子付着量を必要とすることから、保持材の製作コストが嵩むといった課題を有している。
【0013】
本発明は上記する問題に鑑みてなされたものであり、排ガスの排気系統の配管内に配される排ガス処理体を保持する排ガス処理装置用の保持材の製造方法に関し、付着させる無機粒子等のナノ構造体を多くすることなく大きな反発力を得るとともに、面圧の低下が少ない保持材を得ることのできる、排ガス処理装置用の保持材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成すべく、本発明による排ガス処理装置用の保持材の製造方法は、排ガスの排気系統の配管内に配される排ガス処理体を保持する排ガス処理装置用の保持材の製造方法であって、前記保持材はセラミックス繊維のニードル処理されたフェルトであり、該セラミックス繊維のフェルトの内部に、平均繊維径が1nm〜10nm、平均長さが1000nm〜5000nmの無機ナノファイバーが分散したゾル溶液を含浸させるか、またはナノ構造体のゾルの前駆体である前駆体化合物溶液を含浸させ、その後に沸騰処理または酸処理をおこなうことにより、セラミックス繊維の表面にナノ構造体を修飾するものである。
【0015】
ここで、排ガス処理装置は、排ガス処理体と保持材から構成される。また、排ガス処理体とは、既述する触媒コンバーターの他にも、排ガス中の微粒子分をフィルターでろ過することによって除去するDPFも含む概念である。
【0016】
本発明の製造方法で製造される保持材はセラミックス繊維のフェルトから構成され、セラミックス繊維の表面において、直径または長径が10nm〜1000nmのナノ構造体が修飾されていることにより、相互に絡み合うセラミックス繊維間の摩擦力を大きくすることができ、この摩擦力の向上により、保持材が圧縮された際に大きな反発力を発揮できるものである。
【0017】
本発明の製造方法では、無機ナノファイバーのゾル溶液、またはナノ構造体の前駆体化合物溶液をセラミックス繊維の集合体に含浸させる。無機ナノファイバーはアスペクト比が大きいことから繊維同士の方向が揃いやすく、そのため、特許文献1に記載のように無機粒子を含浸・付着させるものに比べると、セラミックファイバーの周りに均一に付着し易い。また、ゾル状になる前の前駆体化合物溶液として含浸させると、液体状であることからこの場合もセラミックファイバーの周りに前駆体化合物が均一に付着し、加熱または酸処理等によってナノ構造体に変化させることで、ナノ構造体がセラミックファイバーの周りに均一に付着したフェルトが得られる。
【0018】
このように、いずれの場合もナノ構造体が均一に付着した排ガス処理装置用の保持材が得られる。すなわち、本発明の製造方法によれば、ナノ構造体の付着量を大きくすることなく、大きな反発力を発揮するとともに面圧の低下が少ない保持材を製造することができる。
【0019】
なお、保持材の反発力は、上記する摩擦力のほか、セラミックス繊維同士が曲げられて絡み合った状態から弾性変形にて戻ろうとする戻り力にも影響される。
【0020】
ここで、「セラミックス繊維」には、アルミナ繊維やシリカ繊維、アルミナとシリカの化合物であるムライト繊維などが包含される。
【0021】
また、「フェルト」とは、セラミックス繊維同士が絡み合い、緻密な構造となったシートやマットを意味している。
【0022】
さらに、「ナノ構造体」とは、ナノ粒子、ナノファイバー、ナノ粒塊、ナノ花弁状体などを含んでいる。一例として、繊維径が数nm、繊維長が3mmのアルミナナノファイバー、100nm以下もしくは100nm以上の大きさの鱗片上のナノ構造体や、表面が花弁状に変化した50nm程度のナノ構造体等を挙げることができる。これらは部分的に結晶構造がベーマイト(AlO(OH))構造を有す場合が多い。
【0023】
本発明者等によれば、直径または長径が数十nm〜数百nm具体的には10nm〜1000nm、好ましくは100nm〜500nmのナノ構造体で均一に修飾されているセラミックス繊維のフェルトからなる保持材は、このようなナノ構造体にて均一に修飾されていない特許文献1に開示されているようなフェルトからなる保持材に比して10%以上少ない繊維量にて、触媒コンバーター等の排ガス処理体を保持するのに必要な反発力が得られることが特定されている。
【発明の効果】
【0024】
以上の説明から理解できるように、本発明の排ガス処理装置用の保持材の製造方法によれば、セラミックス繊維のフェルトから構成され、セラミックス繊維の表面において直径または長径が数十nm〜数百nm、具体的には10nm〜1000nmのナノ構造体が均一に修飾された保持材を得ることができることにより、相互に絡み合うセラミックス繊維間の摩擦力を大きくすることができ、この摩擦力の向上により、付着させるナノ構造体の量を大きくすることなく、保持材が圧縮された際に大きな反発力を発揮し、面圧の低下が少ない保持材を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】配管内に排ガス処理装置が配設されている状態を説明した模式図である。
図2】保持材の実施例1のSEM写真図である。
図3】(a)、(b)ともに保持材の実施例2のSEM写真図である。
図4】保持材の実施例3のSEM写真図である。
図5】保持材の実施例4のSEM写真図である。
図6】(a)は試験片の切り出し方法を説明した図であり、(b)は引張試験の状況を説明した図である。
図7】引張試験結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明の排ガス処理装置用の保持材の製造方法の実施の形態を説明する。ここで、排ガス処理装置に用いられる排ガス処理体として触媒コンバーターを用いた場合を例示して説明する。なお、図示する触媒コンバーターは、好適には耐熱衝撃性に優れたコージェライトハニカム担体を有するものであるが、それ以外にも電気加熱式の触媒コンバーター(EHC:Electrically Heated Converter)であってもよい。また、排ガス処理体としては、図示する触媒コンバーター以外にもDPFであってもよい。
【0027】
(排ガスの排気系統)
まず、本発明の触媒コンバーターが介在する排ガスの排気系統を概説する。本発明の触媒コンバーターが適用される排ガスの排気系統は、エンジン、排ガス処理装置を構成する触媒コンバーター、三元触媒コンバーター、サブマフラーおよびメインマフラーが配されて相互に系統管で繋がれ、エンジンで生成された排ガスが系統管を介して各部を流通し、排気されるようになっている。次に、以下、排ガス処理装置、排ガス処理装置用の保持材とその製造方法の実施の形態を説明する。
【0028】
(排ガス処理装置、排ガス処理装置用の保持材とその製造方法の実施の形態)
図1は配管内に排ガス処理装置が配設されている状態を説明した模式図である。
【0029】
図1で示す排ガス処理装置10は、排ガス処理体である触媒コンバーター2と保持材3とから構成され、触媒コンバーター2は金属製の配管1の内部において保持材3を介して配設されている。
【0030】
触媒コンバーター2は、多数のセルを有する筒状の基材と、セルを構成するセル壁の表面に形成された触媒層とから大略構成されている。
【0031】
ここで、基材の素材としては、酸化マグネシウム、酸化アルミニウムおよび二酸化珪素の複合酸化物からなるコージェライトや炭化ケイ素等のセラミックス素材、メタル素材等のセラミックス素材以外の素材を挙げることができる。
【0032】
基材は、四角形や六角形、八角形等の多数の格子輪郭のセルを具備するハニカム構造体からなり、基材において排ガスの流れ方向上流側(Fr側)の端部のセル内に流入した排ガス(X方向)は、基材の内部を流通し、この流通過程で浄化され、基材において排ガスの流れ方向下流側(Rr側)の端部から浄化された排ガスが流出するようになっている(X方向)。
【0033】
触媒層は担体とこれに担持される貴金属触媒からなり、担体としては、アルミナ(Al2O3)やジルコニア(ZrO2)、セリア−ジルコニア系複合酸化担体(CeO2-ZrO2複合酸化物)などを挙げることができ、貴金属触媒としては、白金(Pt)やパラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)などを挙げることができる。
【0034】
たとえば、アルミナ(Al2O3)等の酸化物にパラジウム(Pd)やロジウム(Rh)、白金(Pt)等の白金族元素や白金族元素化合物、あるいはそれ以外の貴金属やその化合物をアルミナやセリアジルコニア系の複合酸化物(CeO2−ZrO2)に担持させ、これをアルミナゾルや水とともに調整してなるスラリーを基材骨格に対し、含浸法やイオン交換法、ゾルゲル法、ウォッシュコート法などを適用することにより、触媒層を形成することができる。
【0035】
また、触媒コンバーター2が電気加熱式の触媒コンバーターの場合、触媒コンバーター2は、基材の表面に配設された不図示の一対の電極部材、電極部材間を繋ぐ不図示のケーブルおよびケーブルの途中に介在する不図示の電源からなる外部回路からその全体が大略構成される。ここで、電極部材は、基材の表面に配設された表面電極膜と、表面電極膜の表面に配設された櫛歯状の配線と、櫛歯状の配線を構成して基材の周方向に延びる複数の配線を固定する配線固定層とから構成される。エンジン始動の際に電源をON制御すると、基材の中央に位置する一対の電極部材に通電され、基材の断面内の直径経路を流れるパスと、表面電極膜を介して基材の断面内を直線的に流れるパスが形成され、このように、電極部材を構成する表面電極膜の有する電流の拡散機能により、基材全体における可及的に均等な通電が図られ、等量電流の拡散と整流が図られるようになっている。
【0036】
また、保持材3はセラミックス繊維のフェルトから構成され、セラミックス繊維の表面において直径または長径が数十nm〜数百nm、具体的には10nm〜1000nmのナノ構造体が修飾されている。
【0037】
ここで、セラミックス繊維には、アルミナ繊維やシリカ繊維、アルミナとシリカの化合物であるムライト繊維などが包含される。また、フェルトとは、セラミックス繊維同士が絡み合い、緻密な構造となったシートやマットである。さらに、ナノ構造体とは、ナノ粒子、ナノファイバー、ナノ粒塊、ナノ花弁状体などを含んでいる。一例として、繊維径が4nm、繊維長が3000nm、結晶構造がベーマイト(AlO(OH))のアルミナナノファイバーや、100nm以下もしくは100nm以上の直径の大きさの鱗片上のナノ構造体や、表面が花弁状に変化した50nm程度のナノ構造体等を挙げることができる。これらは部分的に結晶構造がベーマイト(AlO(OH))構造を有す場合が多い。
【0038】
このように、保持材3がセラミックス繊維のフェルトから構成され、セラミックス繊維の表面において直径または長径が数十nm〜数百nm、具体的には10nm〜1000nmのナノ構造体が均一に修飾されていることにより、相互に絡み合うセラミックス繊維間の摩擦力を大きくすることができ、この摩擦力の向上により、保持材が圧縮された際に大きな反発力を発揮することができる。
【0039】
すなわち、図示する保持材3は、付着させるナノ構造体量を大きくすることなく、大きな反発力を発揮することのできる保持材である。なお、保持材3の反発力は、上記する摩擦力のほか、セラミックス繊維同士が曲げられて絡み合った状態から弾性変形にて戻ろうとする戻り力によっても発揮される。
【0040】
ここで、保持材3の製造方法を概説すると、まず、セラミックス繊維のフェルトの内部に、平均繊維径が1nm〜10nm、平均長さが1000nm〜5000nmの無機ナノファイバーが分散したゾル溶液を含浸させる、もしくは、ナノ構造体のゾルの前駆体である前駆体化合物溶液を含浸させる。次いで、ゾル溶液等が内部に含浸されたセラミックス繊維のフェルトを沸騰処理または酸処理することにより、セラミックス繊維の表面にナノ構造体が修飾された保持材3が製造される。
【0041】
(保持材の実施例)
本発明者等は、セラミックス繊維のニードル処理されたフェルトからなり、セラミックス繊維の表面に直径または長径が数十nm〜数百nm、具体的には10nm〜1000nmのナノ構造体が均一に修飾されている種々の保持材を製作した。図2は保持材の実施例1のSEM写真図であり、図3(a)、(b)はともに保持材の実施例2のSEM写真図であり、図4は保持材の実施例3のSEM写真図であり、図5は保持材の実施例4のSEM写真図である。
【0042】
まず、図2で示す実施例1の保持材は、ムライト繊維の表面に、平均繊維径が4nm、平均繊維長が3000nm、結晶構造がベーマイト(AlO(OH))のアルミナナノファイバーが修飾された保持材である。
【0043】
図示するように、ムライト繊維の表面にアルミナナノファイバーがマスクメロンの皺のように一様に添着していることが分かる。
【0044】
この保持材は、アルミナゾルF3000(川研ファインケミカル株式会社製)(ナノファイバーの繊維径4nm、繊維長約3000nm)を、メタノール溶媒中のゾル(固形分)濃度で1.0質量%のメタノール希釈液中に混合してニードル処理されたフェルトに含浸させ、ムライト繊維に塗布し、400℃で1時間焼成する方法によって製作した。
【0045】
次に、図3で示す実施例2の保持材は、ムライト繊維の表面にナノ構造体を修飾したものである。具体的には、図3(a)、(b)で示す保持材は、ゾルの前駆体化合物としてのアルミニウムキレート(ALCH:アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート) (川研ファインケミカル株式会社製)をセラミックス繊維にコート後、それぞれ160℃、180℃で沸騰処理し、セラミックス繊維にそれぞれ大きさ100nm以下、100nm以上のナノ構造体を修飾したものである。
【0046】
このように、製作時の沸騰水処理温度を変化させることにより、ナノ構造体の大きさを所望に調整できるが、いずれの場合も均一にムライト繊維に付着していることが分かる。
【0047】
次に、図4で示す実施例3の保持材は、ムライト繊維の表面に別の方法でナノ構造体を修飾したものである。この保持材は、ゾルの前駆体化合物溶液としてのアルミニウムセカンダリーブチレート(ASBD)(川研ファインケミカル株式会社製)のコート液をムライト繊維の表面に付着させ、沸騰水処理して製作した。
図4より、ASBDが50nm程度の花弁状に変化していることが分かる。
【0048】
次に、図5で示す実施例4の保持材は、ムライト繊維の表面にアルミナを修飾したものである。
【0049】
この保持材は、アルミナゾルF1000(川研ファインケミカル株式会社製)(ナノファイバーゾルの平均繊維径4nm、平均繊維長約1400nm)をムライト繊維の表面に付着させ、リン酸処理して生成した。
【0050】
図5より、直径または長径が100〜200nm程度の凹凸のアルミナが生成されていることが分かる。
【0051】
(引張試験とその結果)
本発明者等は、保持材を製作し、引張試験をおこなって保持材の引張強度を測定する実験をおこなった。ここで、図6(a)は試験片の切り出し方法を説明した図であり、図6(b)は引張試験の状況を説明した図である。
【0052】
表面にナノ構造体が修飾されているセラミックス繊維のフェルトからなる保持材(マット)を製作し、図6(a)で示すように試験片(TP:テストピース)を切り出した。平均直径が3〜15μm、平均長さが数百nmのムライト繊維に、TP1はアルミナゾルF3000を0.01質量%塗布したもの、TP2はアルミナゾルF3000を0.1質量%塗布したもの、TP3はアルミナゾルF3000を0.5質量%塗布したものである。
【0053】
また、比較例として、ムライト繊維のみでナノ構造体の修飾がないもの(比較例1)と、特許文献1に記載の無機粒子懸濁溶液をフェルトに含浸させ、無機粒子を1.0質量%付着させたもの(比較例2)の試験もおこなった。
【0054】
切り出された試験片を図6(b)で示すように引張試験機でチャックし、引張試験を実施した。なお、試験片は三種用意し(TP1〜TP3)、それらの引張試験の結果に加えて平均値を算定した。試験結果を図7に示す。
【0055】
図7において、ナノ構造体修飾なしの結果は、ナノ構造体を具備しない保持材(比較例1)を製作して引張試験をおこなった結果である。
【0056】
図7より、TP1〜TP3の引張り強度の平均値は67.2Nとなり、比較例1の60Nに対して10%以上も引張り強度が向上することが確認できた。
【0057】
これは、セラミックス繊維の表面において直径が数十nm〜数百nmのナノ構造体が修飾されていることにより、相互に絡み合うセラミックス繊維間の摩擦力が大きくなり、この摩擦力の向上によって保持材の引張り強度が向上したと考えられる。
【0058】
そして、この引張り強度の向上は、保持材が圧縮された際の反発力の向上にも繋がる。したがって、従来の保持材に比してナノ構造体の付着量を低減しながら、保持材が圧縮された際に要する反発力が得られることが分かる。
【0059】
また、無機粒子懸濁溶液の形でフェルトに含浸させた比較例2の65.4Nに対し、TP1〜TP3はナノ構造体の付着量が大幅に少ないにもかかわらず、同等以上の引張強度が得られており、保持材の材料コストの低減に大きく寄与している。
【0060】
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0061】
1…配管、2…触媒コンバーター(排ガス処理体)、3…保持材、10…排ガス処理装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7