特開2017-227200(P2017-227200A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2017-227200減速装置およびその減速装置を用いたバルブタイミング調整装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-227200(P2017-227200A)
(43)【公開日】2017年12月28日
(54)【発明の名称】減速装置およびその減速装置を用いたバルブタイミング調整装置
(51)【国際特許分類】
   F01L 1/352 20060101AFI20171201BHJP
   F01M 9/10 20060101ALI20171201BHJP
   F16H 1/28 20060101ALI20171201BHJP
【FI】
   F01L1/352
   F01M9/10 A
   F16H1/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-125727(P2016-125727)
(22)【出願日】2016年6月24日
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100093779
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】大坪 誠
(72)【発明者】
【氏名】大江 修平
(72)【発明者】
【氏名】錦織 正孝
(72)【発明者】
【氏名】戸田 翔大
(72)【発明者】
【氏名】中村 兼仁
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 聖彦
(72)【発明者】
【氏名】平野 将宏
(72)【発明者】
【氏名】國米 皓
(72)【発明者】
【氏名】多田 賢司
【テーマコード(参考)】
3G018
3G313
3J027
【Fターム(参考)】
3G018AB02
3G018AB17
3G018BA32
3G018CA13
3G018DA21
3G018DA68
3G018DA72
3G018DA83
3G018DA85
3G018FA01
3G018FA07
3G018GA23
3G313AA06
3G313AA17
3G313AB02
3G313BA01
3G313BB14
3G313BC23
3G313BD14
3G313BD38
3G313FA05
3J027FA50
3J027GA05
3J027GB03
3J027GC13
3J027GC22
3J027GD07
3J027GD14
3J027GE29
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で、低温環境下においても耐久性が向上する減速装置およびその減速装置を用いたバルブタイミング調整装置を提供する
【解決手段】減速装置は、駆動回転体20、従動回転体30、遊星回転体40、入力回転体60および与圧回転体80を備える。遊星回転体40は、第3斜歯411および第4斜歯421を外側に含む。第3斜歯411および第4斜歯421によって、駆動内歯車部21または従動内歯車部31に遊星回転体40が押し付けられる方向の力が作用し、付勢部材を設ける必要がなくなる。駆動回転体20は、潤滑液を排出可能で駆動内歯車部21または従動内歯車部31よりも径方向内側に第1排出孔85を有する。これにより、減速装置151が停止時、駆動回転体20の内壁と従動回転体30の外壁との間で潤滑液が残留し、減速装置151が再度作動した時、高粘度化した潤滑液による減速装置151の摩耗が抑制される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯スジがねじれている第1斜歯(211)を内側に含む駆動内歯車部(21、121)および前記駆動内歯車部に嵌合されるスプロケット部(22)を有し、回転可能な駆動回転体(20)と、
前記スプロケット部側で前記駆動回転体に収容され、第2斜歯(311)を内側に含む従動内歯車部(31)および前記スプロケット部側から潤滑液を導入可能な導入孔(32)を有し、回転可能な従動回転体(30、130)と、
前記駆動内歯車部に嵌合され第3斜歯(411)を外側に含む駆動側遊星外歯車部(41)および前記従動内歯車部に嵌合され第4斜歯(421)を外側に含む従動側遊星外歯車部(42)を有し、遊星運動可能な遊星回転体(40)と、
前記駆動側遊星外歯車部に嵌合され第5斜歯(611)を外側に含む入力外歯車部(61)を有し、回転したとき前記遊星回転体が遊星運動して、前記駆動回転体および前記従動回転体の相対回転位相を変更し、前記駆動回転体または前記従動回転体の回転を加減速する入力回転体(60)と、
前記従動側遊星外歯車部に嵌合され第6斜歯(811)を外側に含む与圧外歯車部(81)を有し、回転可能な与圧回転体(80)と、
を備え、
前記スプロケット部は、前記導入孔を経由して流れる潤滑液を排出可能な第1排出孔(85)を含み、
前記第1排出孔は、前記駆動内歯車部または前記従動内歯車部よりも前記駆動回転体の径方向内側に形成され、
前記第5斜歯が前記第3斜歯を軸方向に押し付ける方向の力(Fa1)または前記第6斜歯が前記第4斜歯を軸方向に押し付ける方向の力(Fa2)が作用したとき、前記駆動内歯車部または前記従動内歯車部に前記遊星回転体を押し付ける方向の力(Fr)が前記遊星回転体に作用する減速装置。
【請求項2】
前記駆動回転体が回転したとき、前記駆動内歯車部または前記従動内歯車部に前記導入孔を経由して流れた潤滑液が浸漬し、
前記駆動回転体が回転を停止したとき、前記駆動内歯車部または前記従動内歯車部に浸漬した潤滑液が前記第1排出孔を経由して排出され、
前記従動内歯車部よりも前記従動回転体の径方向外側で、前記駆動回転体の内壁(203)および前記従動回転体の外壁(301)で区画形成される空間の容積を空間容積(Vs)とし、
前記駆動回転体が回転を停止したとき、前記駆動回転体の内部に残留する潤滑液の体積を残留体積(Vr)とすると、
前記第1排出孔は、前記空間容積が前記残留体積よりも大きくなるように、開口する面積が設定されている請求項1に記載の減速装置。
【請求項3】
前記従動回転体(130)は、前記第1排出孔と連通可能な第2排出孔(86)をさらに有する請求項1または2に記載の減速装置。
【請求項4】
前記第1排出孔は、地方向に開口する請求項1から3のいずれか一項に記載の減速装置。
【請求項5】
内燃機関(1)のクランク軸(2)からのトルクの伝達によりカム軸(4、5)が開閉する吸気弁(8)または排気弁(9)のうち少なくとも一方のバルブタイミングを調整するバルブタイミング調整装置(10)であって、
歯スジがねじれている第1斜歯(211)を内側に含む駆動内歯車部(21、121)および前記駆動内歯車部に嵌合されるスプロケット部(22)を有し、回転可能な駆動回転体(20)と、
前記スプロケット部側で前記駆動回転体に収容され、第2斜歯(311)を内側に含む従動内歯車部(31)および前記スプロケット部側から潤滑液を導入可能な導入孔(32)を有し、回転可能な従動回転体(30、130)と、
前記駆動内歯車部に嵌合され第3斜歯(411)を外側に含む駆動側遊星外歯車部(41)および前記従動内歯車部に嵌合され第4斜歯(421)を外側に含む従動側遊星外歯車部(42)を有し、遊星運動可能な遊星回転体(40)と、
前記駆動側遊星外歯車部に嵌合され第5斜歯(611)を外側に含む入力外歯車部(61)を有し、回転したとき前記遊星回転体が遊星運動して、前記駆動回転体および前記従動回転体の相対回転位相を変更し、前記駆動回転体または前記従動回転体の回転を加減速する入力回転体(60)と、
前記従動側遊星外歯車部に嵌合され第6斜歯(811)を外側に含む与圧外歯車部(81)を有し、回転可能な与圧回転体(80)と、
を備え、
前記スプロケット部は、前記導入孔を経由して流れる潤滑液を排出可能な第1排出孔(85)を含み、
前記第1排出孔は、前記駆動内歯車部または前記従動内歯車部よりも前記駆動回転体の径方向内側に形成され、
前記第5斜歯が前記第3斜歯を軸方向に押し付ける方向の力(Fa1)または前記第6斜歯が前記第4斜歯を軸方向に押し付ける方向の力(Fa2)が作用したとき、前記駆動内歯車部または前記従動内歯車部に前記遊星回転体を押し付ける方向の力(Fr)が前記遊星回転体に作用する減速装置を用いたバルブタイミング調整装置。
【請求項6】
前記従動回転体(130)は、前記第1排出孔と連通可能な第2排出孔(86)をさらに有し、
前記内燃機関が停止したとき、前記第1排出孔および前記第2排出孔が連通し、
前記内燃機関が作動したとき、前記第2排出孔が前記駆動回転体に閉塞される請求項5に記載のバルブタイミング調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減速装置およびその減速装置を用いたバルブタイミング調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バルブタイミング調整装置等に用いられ、特許文献1、2の記載のように、遊星回転体、駆動回転体および従動回転体を備える減速装置がある。この減速装置は、遊星回転体が駆動回転体に対して遊星運動することによって、駆動回転体と従動回転体との相対回転位相を変更する。特許文献2の記載では、潤滑液が内部に導入され、回転体の噛合い部分を潤滑しつつ、排出孔を経由して潤滑液が排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−167173号公報
【特許文献2】米国特許6637389B2号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成では、駆動回転体および従動回転体の内歯に遊星回転体の外歯を押し付けるために、遊星回転体の径方向外側に遊星回転体を付勢する付勢部材が遊星回転体内部に設けられている。付勢部材を設けることによって、減速装置の構造が複雑になり、部品点数が増加し、コストが増加する。
【0005】
特許文献2の構成では、回転体が軸方向に貫通しており、潤滑液が軸方向に案内されるため、回転体の回転によって遠心力が作用する潤滑液は、排出孔から流出しにくい。このため、遊星回転体、駆動回転体または従動回転体との間に潤滑液が滞留しやすくなる。
ところで、低温環境下で減速装置が作動するとき、潤滑液が高粘度化し、滞留する潤滑液の流動抵抗が大きくなる。このため、回転体が回転するとき回転体の噛合い部の摩耗が増大する虞がある。
【0006】
特許文献2の構成に、歯当たりによる振動または騒音の抑制するために上記の付勢部材を設けて潤滑液による潤滑を行い、低温環境下で用いられる場合、滞留する潤滑液の流動抵抗に付勢部材による力が回転体に加わる。付勢部材による力が回転体に加わることによって、回転体の噛合い部の摩耗がさらに増大する虞がある。
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、簡易な構成で、低温環境下においても耐久性が向上する減速装置およびその減速装置を用いたバルブタイミング調整装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による減速装置は、駆動回転体(20)、従動回転体(30)、遊星回転体(40)、入力回転体(60)および与圧回転体(80)を備える。
駆動回転体は、駆動内歯車部(21)およびスプロケット部(22)を有し、回転可能である。
駆動内歯車部は、歯スジがねじれている第1斜歯(211)を内側に含む。
スプロケット部は、駆動内歯車部に嵌合される。
従動回転体は、スプロケット部側で駆動回転体に収容され、従動内歯車部(31)および導入孔(32)を有し、回転可能である。
従動内歯車部は、第2斜歯(311)を内側に含む。
導入孔は、スプロケット部側から潤滑液を導入可能である。
【0008】
遊星回転体は、駆動側遊星外歯車部(41)および従動側遊星外歯車部(42)を有し、遊星運動可能である。
駆動側遊星外歯車部は、駆動内歯車部に嵌合され第3斜歯(411)を外側に含む。
従動側遊星外歯車部は、従動内歯車部に嵌合され第4斜歯(421)を外側に含む。
入力回転体は、入力外歯車部(61)を有し、回転したとき遊星回転体が遊星運動して、駆動回転体および従動回転体の相対回転位相を変更し、駆動回転体または従動回転体の回転を加減速する。
入力外歯車部は、駆動側遊星外歯車部に嵌合され第5斜歯(611)を外側に含む。
【0009】
与圧回転体は、与圧外歯車部(81)を有し、回転可能である。
与圧外歯車部は、従動側遊星外歯車部に嵌合され第6斜歯(811)を外側に含む。
また、スプロケット部22は、第1排出孔(85)を含む。
第1排出孔(85)は、導入孔を経由して流れる潤滑液を排出可能であり、駆動内歯車部または従動内歯車部よりも駆動回転体の径方向内側に形成されている。
第5斜歯が第3斜歯を軸方向に押し付ける方向の力(Fa1)または第6斜歯が第4斜歯を軸方向に押し付ける方向の力(Fa2)が作用したとき、駆動内歯車部または従動内歯車部に遊星回転体が押し付けられる方向の力(Fr)が遊星回転体に作用する。
【0010】
第3斜歯および第4斜歯によって、第5斜歯が第3斜歯を軸方向に押し付ける方向の力または第6斜歯が第4斜歯を軸方向に押し付ける方向の力が駆動内歯車部または従動内歯車部に遊星回転体が押し付けられる方向の力に変換される。このため、駆動回転体および従動回転体に遊星回転体が径方向に直接押し付けられるため、付勢部材を設ける必要がなくなる。
【0011】
第1排出孔が駆動内歯車部または従動内歯車部よりも駆動回転体の径方向内側の位置に形成されているため、減速装置が停止時、排出されなかった潤滑液が駆動回転体の内壁と従動回転体の外壁との間で残留する。このため、減速装置が再度作動するとき、駆動内歯車部または従動内歯車部と、遊星回転体との間に、低温環境下で高粘度化した潤滑液が浸漬されず、駆動内歯車部、従動内歯車部または遊星回転体の摩耗が抑制される。
【0012】
減速装置の作動が進むに伴い、潤滑液の粘度が低下する。駆動内歯車部または従動内歯車部と、遊星回転体との間に、駆動回転体の遠心力によって低粘度化した潤滑液が浸漬され、駆動内歯車部、従動内歯車部または遊星回転体の摩耗が抑制される。
このように、低温環境下において、減速装置の耐久性が向上する。
【0013】
もう1つの発明は、内燃機関(1)のクランク軸(2)からのトルクの伝達によりカム軸(4、5)が開閉する吸気弁(8)または排気弁(9)のうち少なくとも一方のバルブタイミングを調整するバルブタイミング調整装置(10)である。また、上記減速装置を用いたバルブタイミング調整装置であって、上記減速装置と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態による減速装置が用いられるバルブタイミング調整装置の概略図。
図2】本発明の第1実施形態による減速装置の断面図。
図3図2のIII−III線断面図。
図4図2のIV−IV線断面図。
図5図2のV−V線断面図。
図6】本発明の第1実施形態による減速装置の力の作用を説明するための図。
図7図6のVII−VII線断面図。
図8】本発明の第1実施形態による減速装置の潤滑液の経路を説明するための図。
図9】本発明の第1実施形態による減速装置が停止したときの潤滑液の挙動を説明するための図。
図10】本発明の第1実施形態による減速装置が作動したときの潤滑液の挙動を説明するための図。
図11】本発明の第2実施形態による減速装置の断面図。
図12】本発明の第2実施形態による減速装置が用いられるバルブタイミング調整装置のクランク角と吸気バルブリフト量との関係を示す特性図。
図13】内燃機関が停止したときの本発明の第2実施形態による減速装置の第1排出孔および第2排出孔の挙動を説明するための図。
図14】内燃機関が作動したときの本発明の第2実施形態による減速装置の第1排出孔および第2排出孔の挙動を説明するための図。
図15】その他の実施形態による減速装置の径方向の断面図。
図16】その他の実施形態による減速装置の径方向の断面図。
図17】その他の実施形態による減速装置の径方向の断面図。
図18】その他の実施形態による減速装置の断面図。
図19】その他の実施形態による減速装置の径方向の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態による減速装置を図面に基づいて説明する。複数の実施形態の説明において、第1実施形態と実質的に同一の構成には、同一の符号を付して説明を省略する。また、「本実施形態」という場合、第1および第2実施形態を包括する。これらの実施形態の減速装置は、例えば、吸気弁および排気弁のうち少なくとも一方のバルブタイミングを調整する内燃機関のバルブタイミング調整装置に用いられる。
【0016】
本実施形態の減速装置151に用いられるバルブタイミング調整装置10について説明する。
図1に示すように、車両等に用いられる内燃機関1において、クランク歯車3と、減速装置151の駆動回転体20と、にチェーン7が巻き掛けられている。
クランク歯車3は、内燃機関1の駆動軸としてのクランク軸2に固定される。
減速装置151の駆動回転体20は、従動軸としてのカム軸4、5に固定される。
カム軸4、5は、減速装置151に潤滑液を供給可能となるように、流路11が形成されている。
チェーン7を介してクランク軸2からカム軸4、5にトルクTcが伝達される。一方のカム軸4は吸気弁8を駆動し、他方のカム軸5は排気弁9を駆動する。
【0017】
本実施形態のバルブタイミング調整装置10は、クランク軸2とカム軸4、5とを相対回転位相を変更することにより、吸気弁8または排気弁9の開閉タイミングを調整する。
本実施形態の減速装置151は、クランク軸2とカム軸4、5とを相対回転位相を変更するために用いられる。
【0018】
バルブタイミング調整装置10は、クランク軸2と一体に回転する駆動回転体20に対し、クランク軸2と同一の回転方向へカム軸4、5が相対回転することによって、吸気弁8または排気弁9のバルブタイミングを早くする。このように吸気弁8または排気弁9のバルブタイミングが早くなるようにカム軸4、5が相対回転することを「進角する」という。
【0019】
また、バルブタイミング調整装置10は、クランク軸2とは反対の回転方向へカム軸4、5が相対回転することによって、吸気弁8または排気弁9のバルブタイミングを遅くする。このように吸気弁8または排気弁9のバルブタイミングが遅くなるようにカム軸4、5が相対回転することを「遅角する」という。
【0020】
(第1実施形態)
図2に示すように、減速装置151は、駆動回転体20、従動回転体30、複数の遊星回転体40、入力回転体60、制御ユニット70および与圧回転体80を備える。
【0021】
駆動回転体20は、有底円筒状の駆動内歯車部21と有底円筒状のスプロケット部22とを同軸に組み合わせた容器状で、内部に空間が形成され、回転軸Oを中心に回転可能に形成されている。
また、駆動回転体20は、一方のカム軸4または他方のカム軸5と同軸に設けられている。
【0022】
駆動内歯車部21は、歯先円が歯底円から駆動回転体20の径方向内側に向かうように形成されており、第1斜歯211を含む。
第1斜歯211は、駆動内歯車部21の内周壁に形成されており、歯スジが一方向にねじれている。
【0023】
スプロケット部22は、駆動内歯車部21とねじ27によって嵌合されており、駆動内歯車部21とスプロケット部22とが結合されている。
スプロケット部22は、複数のスプロケット歯29および第1排出孔85を有する。
【0024】
複数のスプロケット歯29は、スプロケット部22の外周壁に設けられている。複数のスプロケット歯29にチェーン7が巻き掛けられ、クランク軸2から出力されるトルクTcがチェーン7を介してスプロケット部22に入力される。トルクTcが入力されるとき、駆動回転体20は、クランク軸2と連動して回転軸Oを中心に回転する。このとき、駆動回転体20の回転方向は、本実施形態では図1の時計方向である。
【0025】
第1排出孔85は、駆動回転体20の軸方向に開口しており、スプロケット部22の外壁221および内壁222が連通するように形成され、従動回転体30の導入孔32を経由して流れる潤滑液を排出可能な孔である。
潤滑液は、例えば、ギア油等の油が用いられる。
また、第1排出孔85は、駆動内歯車部21および従動内歯車部31の位置よりも駆動回転体20の径方向内側の位置に形成されている。
図3に示すように、第1排出孔85は、径方向の断面が円形形状で駆動回転体20の周方向に等間隔で4つ形成されている。
【0026】
図2に戻って、従動回転体30は、駆動回転体20と同軸にスプロケット部22側で駆動回転体20に大部分が収容され、有底円筒状に形成されており、スリーブボルト37が挿入される中心孔38を中央に有する。
また、従動回転体30は、スリーブボルト37とカム軸4、5とに挟まれて、一方のカム軸4または他方のカム軸5と連結固定されており、カム軸4、5と連動して回転軸Oを中心に回転可能である。
さらに、従動回転体30は、駆動回転体20に対して相対回転可能で、従動内歯車部31および導入孔32を有する。
【0027】
図4に示すように、従動内歯車部31は、歯先円が歯底円から従動回転体30の径方向内側に向かうように形成されており、第2斜歯311を含む。
第2斜歯311は、従動内歯車部31の内周壁に形成されており、第1斜歯211と同様に歯スジがねじれている。
【0028】
導入孔32は、スプロケット部22側から潤滑液を導入可能なように、従動回転体30の軸方向に流路11と連通している。
また、導入孔32は、従動内歯車部31の位置よりも従動回転体30の径方向内側の位置に形成され、第1排出孔85の位置よりも従動回転体30の径方向内側の位置に形成されている。
さらに、導入孔32は、従動回転体30の径方向内側から径方向外側に向かって流路11を経由する潤滑液が流れるように形成されている。
【0029】
遊星回転体40は、駆動内歯車部21側の駆動回転体20と従動回転体30とに接触可能に収容され、駆動内歯車部21と入力回転体60との間、および、スプロケット部22と与圧回転体80との間で、周方向に3つ設けられている。
遊星回転体40は、遊星運動可能に形成されており、遊星運動したとき、駆動回転体20と従動回転体30との相対回転位相を変更し、駆動回転体20または従動回転体30の回転を加減速する。
また、遊星回転体40は、駆動側遊星外歯車部41および従動側遊星外歯車部42を有する。
【0030】
駆動側遊星外歯車部41は、駆動内歯車部21と嵌合しており、歯先円が歯底円から遊星回転体40の径方向外側に向かうように形成されており、第3斜歯411を含む。
第3斜歯411は、駆動側遊星外歯車部41の外周壁に形成されており、第1斜歯211および第2斜歯311と同様に歯スジがねじれている。
【0031】
従動側遊星外歯車部42は、従動内歯車部31と嵌合しており、歯先円が歯底円から遊星回転体40の径方向外側に向かうように形成されており、第4斜歯421を含む。
第4斜歯421は、従動側遊星外歯車部42の外周壁に形成されており、第3斜歯411と同様に歯スジがねじれている。
【0032】
入力回転体60は、円筒状に形成され、駆動内歯車部21側の遊星回転体40に接触して回転可能に形成されており、入力回転体60が回転したとき、遊星回転体40が遊星運動する。
また、入力回転体60は、入力外歯車部61、延長部62およびモータ接続部63を有する。
【0033】
図5に示すように、入力外歯車部61は、駆動内歯車部21側に設けられ、駆動側遊星外歯車部41に嵌合されており、歯先円が歯底円から入力回転体60の径方向外側に向かうように形成されており、第5斜歯611を含む。
第5斜歯611は、入力外歯車部61の外周壁に形成されており、歯スジがねじれるように形成されており、第1斜歯211、第2斜歯311、第3斜歯411および第4斜歯421のねじれ方向とは反対方向にねじれている。
【0034】
延長部62は、駆動内歯車部21からスプロケット部22に向かう方向に延びており、外周壁が与圧回転体80の内周壁と嵌合している。入力回転体60と与圧回転体80とが軸方向に自在に相対変位し、かつ、相対回転を防止するように、延長部62の外壁には多数の溝が形成されている。
モータ接続部63は、制御ユニット70のモータ軸74が接続される溝である。
【0035】
図2に戻って、制御ユニット70は、電動モータ71と制御回路72とによって構成されている。
電動モータ71は、例えば、永久磁石式同期型の3相交流のモータで、従動回転体30および入力回転体60を挟んでカム軸4、5とは反対側に設けられており、モータケース73に収容され、モータ軸74を有する。
モータ軸74は、モータケース73によって正逆回転可能に支持されており、モータ接続部63を介して入力回転体60と接続されている。
【0036】
制御回路72は、マイコンを主体として構成されており、モータケース73の外部または内部に設けられている。制御回路72における処理は、ROM等の実体的なメモリ装置に予め記憶されたプログラムをCPUで実行することによるソフトウェア処理であってもよいし、専用の電子回路によるハードウェア処理であってもよい。
【0037】
制御回路72は、電動モータ71と接続され、内燃機関1の運転状態に応じて電動モータ71を制御する。制御された電動モータ71は、モータ軸74の周囲に回転磁界を発生し、回転磁界の方向に応じ、進角方向Xまたは遅角方向Yに回転トルクTmをモータ軸74から出力する。回転トルクTmが出力されたとき、入力回転体60が正逆回転する。
【0038】
与圧回転体80は、円筒状に形成され、延長部62を内側で収容し、スプロケット部22側の遊星回転体40に接触可能で、遊星回転体40とともに回転可能に形成されており、与圧外歯車部81を有する。
与圧外歯車部81は、スプロケット部22側に設けられ、従動側遊星外歯車部42に嵌合されており、歯先円が歯底円から与圧回転体80の径方向外側に向かうように形成されており、第6斜歯811を含む。
【0039】
第6斜歯811は、与圧外歯車部81の外周壁に形成されており、歯スジが第5斜歯611のねじれ方向と同一方向にねじれている。ねじれ方向は、例えば、歯車の中心軸を天地に向けて、正面から見て歯が右上がりであれば右ねじれとし、歯が左上がりであれば左ねじれとする。ここで、「同一」とは常識的な誤差範囲を含む。本明細書中では、「同一」は、同様に拡大解釈するものとする。
【0040】
図6および図7に示すように、入力回転体60は、遊星回転体40の軸方向の力Fa1を駆動側遊星外歯車部41に作用する。
また、与圧回転体80は、遊星回転体40の軸方向に作用する力Fa2を従動側遊星外歯車部42に作用する。
【0041】
力Fa1および力Fa2は、第5斜歯611から第6斜歯811までの軸方向の距離が変化する方向に作用する力である。また、力Fa1および力Fa2は、第3斜歯411および第4斜歯421によって、駆動内歯車部21または従動内歯車部31に遊星回転体40が押し付けられる方向の力Frに変換される。入力回転体60および与圧回転体80は、変換された力Frを遊星回転体40に作用する。
また、遊星回転体40は、従動回転体30の軸方向に作用する力Fsを従動回転体30に作用する。
【0042】
力Frは、遊星回転体40の径方向内側から径方向外側に向かう方向に作用する力である。
力Fsは、従動回転体30の軸方向に作用する力であり、カム軸4とスプロケット部22との間で伝達されるトルクの方向により作用する方向が反転する。また、力Fsは、従動回転体30の回転力が大きくなる方向に遊星回転体40が遊星運動したとき、駆動内歯車部21と従動内歯車部31とが引き合うような軸方向の力である。ここで、減速装置151における従動回転体30の回転力が大きくなる方向は、内燃機関1の回転方向とは反対である遅角方向Yである。
このような方向に力Frおよび力Fsが作用するように各斜歯211、311、411、421、611、811のねじれ方向が設定されている。
【0043】
(作用)
本実施形態の減速装置151の作用について説明する。
モータ軸74が駆動回転体20に対して相対回転しないとき、入力回転体60および与圧回転体80が遊星回転体40との噛合位置を保ち、遊星回転体40が駆動回転体20との噛合位置を保ちつつ、駆動回転体20と従動回転体30とともに回転する。
このとき、駆動回転体20と従動回転体30との間の相対回転位相が保持されるので、バルブタイミングが保持される。
【0044】
モータ軸74が駆動回転体20に対して進角方向Xに相対回転するとき、モータ軸74から進角方向Xに向かって回転トルクTmが発生する。このとき、入力回転体60が駆動回転体20に対して進角方向Xに相対回転し、駆動回転体20と遊星回転体40との噛合位置が変化しつつ、遊星回転体40が遊星運動する。遊星回転体40が遊星運動することによって、従動回転体30が駆動回転体20に対して進角方向Xに相対回転する。従動回転体30の回転速度が加速され、吸気弁8または排気弁9のバルブタイミングが早くなる。
【0045】
モータ軸74が駆動回転体20に対して遅角方向Yに相対回転するとき、モータ軸74から遅角方向Yに向かって回転トルクTmが発生する。このとき、入力回転体60が駆動回転体20に対して遅角方向Yに相対回転し、駆動回転体20と遊星回転体40との噛合位置が変化しつつ、遊星回転体40が遊星運動する。遊星回転体40が遊星運動することによって、従動回転体30が駆動回転体20に対して遅角方向Yに相対回転する。従動回転体30の回転速度が減速され、吸気弁8または排気弁9のバルブタイミングが遅くなる。
【0046】
このように、遊星回転体40と入力回転体60とが回転伝達可能に連結され、モータ軸74から回転トルクTmが出力されて入力回転体60が駆動回転体20に対して相対回転するとき、遊星回転体40が遊星運動する。遊星回転体40が遊星運動することによって、駆動回転体20と従動回転体30との相対回転位相が変更される。相対回転位相が変更されるとき、従動回転体30の回転速度が加減速され、吸気弁8または排気弁9のバルブタイミングが調整される。
【0047】
本実施形態の減速装置151の潤滑液の挙動を説明する。
図8に示すように、潤滑液の経路を破線で示す。
流路11を経由した潤滑液は、導入孔32を経由し、従動内歯車部31と遊星回転体40の外壁との間を経由し、従動回転体30と駆動内歯車部21との間を経由する。
従動回転体30と駆動内歯車部21との間を経由した潤滑液は、駆動回転体20の内壁203と従動回転体30の外壁301との間を経由し、従動回転体30とスプロケット部22の内壁222との間を経由し、第1排出孔85を経由して排出される。
【0048】
図9に示すように、内燃機関1が停止したとき、第1排出孔85を経由して排出されなかった潤滑液が駆動回転体20の内部に残留する。ここで、「内燃機関1が停止する」とは、車両がアイドリングストップするような走行中の一時停車に伴う内燃機関1の停止ではなく、運転者が意図して車両の使用を終了するときに伴う内燃機関1の停止である。
【0049】
図10に示すように、内燃機関1が始動直後、駆動回転体20が回転し、駆動回転体20の遠心力によって、駆動内歯車部21または従動内歯車部31の内周縁部に潤滑液が押し付けられる。遊星回転体40、駆動内歯車部21および従動内歯車部31が良好に潤滑される。図9および図10において、潤滑液の所在を明確にするため、潤滑液をドット柄で示す。
【0050】
内燃機関1が停止したときの駆動回転体20の内部に残留する潤滑液の体積を残留体積Vrとする。残留体積Vrは、例えば、減速装置151が停止したときの減速装置151の重量から潤滑液が導入される前の減速装置151を減算することによって求めることができる。
また、従動内歯車部31の位置よりも従動回転体30の径方向外側で、駆動回転体20の内壁203と従動回転体30の外壁301とで区画形成されている空間202の容積を空間容積Vsとする。
第1排出孔85は、空間容積Vsが残留体積Vrよりも大きくなるように、以下関係式(1)となるように、開口する面積が設定されている。
Vs>Vr ・・・(1)
【0051】
従来、バルブタイミング調整装置等に用いられ、特許文献1、2の記載のように、遊星回転体、駆動回転体および従動回転体を備える減速装置がある。この減速装置は、遊星回転体が駆動回転体に対して遊星運動することによって、駆動回転体と従動回転体との相対回転位相を変更する。特許文献2の記載では、潤滑液が内部に導入され、回転体の噛合い部分を潤滑しつつ、排出孔を経由して潤滑液が排出される。
【0052】
特許文献1の構成では、駆動回転体および従動回転体の内歯に遊星回転体の外歯を押し付けるために、遊星回転体の径方向外側に遊星回転体を付勢する付勢部材が遊星回転体内部に設けられている。付勢部材を設けることによって、減速装置の構造が複雑になり、部品点数が増加し、コストが増加する。
【0053】
特許文献2の構成では、回転体が軸方向に貫通しており、潤滑液が軸方向に案内されるため、回転体の回転によって遠心力が作用する潤滑液は、排出孔から流出しにくい。このため、遊星回転体、駆動回転体または従動回転体との間に潤滑液が滞留しやすくなる。
ところで、低温環境下で減速装置が作動するとき、潤滑液が高粘度化し、滞留する潤滑液の流動抵抗が大きくなる。このとき、回転体が回転するとき回転体の噛合い部の摩耗が増大する虞がある。
【0054】
特許文献2の構成に、歯当たりによる振動または騒音の抑制するために上記の付勢部材を設けて潤滑液による潤滑を行い、低温環境下で用いられる場合、滞留する潤滑液の流動抵抗に付勢部材による力が回転体に加わる。付勢部材による力が回転体に加わることによって、回転体の噛合い部の摩耗がさらに増大する虞がある。
そこで、本実施形態の減速装置151および減速装置151を用いたバルブタイミング調整装置10では、振動または騒音を抑制し、低温環境下においても耐久性が向上する。
【0055】
(効果)
[1]本実施形態の減速装置151では、第5斜歯611および第6斜歯811が設けられており、従動側遊星外歯車部42および駆動側遊星外歯車部41に力Fa1、Fa2が作用する。力Fa1、Fa2は第3斜歯411および第4斜歯421によって力Frに変換される。
【0056】
力Frは、例えば、以下関係式(2)のように表すことができる。Pは、力Fa1、Fa2の大きさである。α3は、第3斜歯411の歯車圧力角であり、第3斜歯411と第5斜歯611とが接触する面の共通接線と、遊星回転体40または入力回転体60の径方向に延びる半径線と、のなす角度である。また、α4は、第4斜歯421の歯車圧力角であり、第4斜歯421と第6斜歯811とが接触する面の共通接線と、遊星回転体40または与圧回転体80の径方向に延びる半径線と、のなす角度である。β3は、第3斜歯411のねじれ角であり、β4は、第4斜歯421のねじれ角であり、遊星回転体40の軸に対し第3斜歯411および第4斜歯421が傾斜する角度である。
Fr=(P×tanβ3)×tanα3+(P×tanβ4)×tanα4
・・・(2)
【0057】
力Frによって、駆動回転体20および従動回転体30に遊星回転体40が径方向に直接押し付けられるため、付勢部材を設ける必要がなくなる。
また、駆動内歯車部21または従動内歯車部31と遊星回転体40との隙間が小さくなり、駆動内歯車部21または従動内歯車部31と遊星回転体40との歯当たりによる振動または騒音が抑制される。
【0058】
[2]第1排出孔85は、駆動内歯車部21および従動内歯車部31よりも駆動回転体20の径方向内側の位置に形成されている。これにより、低温環境下で作動していた減速装置151が停止時、第1排出孔85を経由して排出されなかった潤滑液が遠心力により空間202に残留する。
【0059】
減速装置151が再度作動するとき、駆動内歯車部21または従動内歯車部31と、遊星回転体40と、の間に高粘度化した潤滑液が浸漬されず、駆動内歯車部21または従動内歯車部31と遊星回転体40との摩耗が抑制される。
減速装置151の作動が進むに伴い、潤滑液の粘度が低下する。駆動内歯車部21または従動内歯車部31と遊星回転体40との間に駆動回転体20の遠心力によって低粘度化した潤滑液が浸漬され、駆動内歯車部21、従動内歯車部31および遊星回転体40の摩耗が抑制される。
このように、低温環境下において、減速装置151および減速装置151を用いたバルブタイミング調整装置10の耐久性が向上する。
【0060】
[3]第1排出孔85の開口する面積が関係式(1)を満たすように設定されているため、低温環境下で作動していた減速装置151が停止時、潤滑液が空間202に確実に残留する。
【0061】
(第2実施形態)
第2実施形態の構成では、従動回転体に第2排出孔が設けられている点を除き、第1実施形態と同様である。
図11に示すように、第2実施形態の減速装置152の従動回転体130は、第2排出孔86を有する。
【0062】
第2排出孔86は、従動回転体130の周方向に等間隔で4つ形成され、径方向の断面が第1排出孔85と同一形状に形成されており、第1排出孔85と連通可能である。
また、第2排出孔86は、駆動回転体20の内壁222と軸方向に向き合う従動回転体130の外壁303と従動回転体130の内壁304とが連通するように形成されている。
【0063】
第1排出孔85および第2排出孔86は、駆動回転体20と従動回転体130との相対位相が特定の位相となるときに連通するように、駆動回転体20および従動回転体130に設けられている。ここで、特定の位相とは、内燃機関1が停止したときの駆動回転体20と従動回転体130との相対位相である。以下、特定の位相について、図12を参照して説明する。
【0064】
図12に示すように、バルブタイミング調整装置10が最も進角しているときの内燃機関1のクランク角と吸気弁8のリフト量との特性A1を一点鎖線で示す。また、バルブタイミング調整装置10が最も遅角しているときの内燃機関1のクランク角と吸気弁8のリフト量との特性A2を二点鎖線で示す。
内燃機関1は、図示はしないがクランク角センサが設けられており、クランク角は、上死点を基準としてクランク軸2の回転角をクランク角センサが検出した角度[度]である。
【0065】
特性A1、特性A2、特性B、特性C1および特性C2は、2次曲線で示される。
特性A1から特性A2までの位相の間で駆動回転体20と従動回転体130との相対位相を減速装置152は変更可能である。なお、吸気弁8のリフト量は、吸気弁8が開いてから運動方向に移動した距離を示す。また、吸気弁8に代替して、排気弁9のリフト量が用いられてもよい。図12において、TDCは上死点を示し、BDCは下死点を示す。
【0066】
減速装置152においての内燃機関1が停止したときの内燃機関1のクランク角と吸気弁8のリフト量との特性Bを実線で示す。特性Bから所定の位相γ分ずれた位相でのクランク角と吸気弁8のリフト量との特性C1および特性C2を破線で示す。内燃機関1が停止したときの位相および所定の位相γは、例えば、実験やシミュレーションを用いて算出される。
特定の位相である内燃機関1が停止したときは、特性C1から特性C2までの位相を含む。特性C1から特性C2の位相であるとき、第1排出孔85と第2排出孔86とが連通する。
【0067】
図13に示すように、内燃機関1が停止したとき、第1排出孔85および第2排出孔86は連通し、第1排出孔85および第2排出孔86を経由して潤滑液は排出される。
図14に示すように、内燃機関1が作動したとき、従動回転体130が駆動回転体20に対して進角方向Xまたは遅角方向Yに相対回転し、第1排出孔85および第2排出孔86は連通しないで、第2排出孔86は、駆動回転体20に閉塞される。このとき、潤滑液は駆動内歯車部21または従動内歯車部31と遊星回転体40との間で保持され、駆動回転体20、従動回転体130および遊星回転体40は潤滑される。
【0068】
(効果)
第2実施形態の減速装置152では、内燃機関1が停止したとき、第1排出孔85と第2排出孔86とが連通して潤滑液が排出され、内燃機関1が作動するとき第1排出孔85および第2排出孔86は連通しないで、減速装置152の内部で保持される。このため、第1実施形態の効果[2]と同様の効果が得られ、低温環境下での耐久性が向上する。
【0069】
(その他の実施形態)
(i)第1実施形態の思想を共有する他の実施形態を以下に示す。
図15に示すように、減速装置153の第1排出孔185は、駆動回転体20の径方向の断面が円形形状に限定されず、楕円形形状となるように形成されていてもよい。
図16に示すように、減速装置154の第1排出孔285は、駆動回転体20の径方向の断面が環状となるように形成されていてもよい。
図17に示すように、減速装置155の第1排出孔385は、駆動回転体20の周方向に等間隔で8つ形成されていてもよい。
第1排出孔は、駆動回転体の径方向の断面が多角形形状であってもよく、形状および数を問わず、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0070】
図18に示すように、減速装置156の駆動回転体20の軸方向と天地方向とが同一方向に設けられてもよく、第1排出孔485は、地方向に開口していることがよい。第1排出孔485が地方向に開口することによって、減速装置156が停止したとき重力によって潤滑液が地方向に移動し、第1排出孔485を経由して排出されやすくなる。このため、残留体積Vrを最小とすることができ、関係式(1)を満たす第1排出孔485の開口する面積が設定しやすくなる。
また、第2実施形態において、従動回転体の径方向と天地方向とが同一方向に設けられ、第2排出孔が従動回転体の地方向側に設けられることによっても、上記と同様の効果を奏する。
【0071】
(ii)第2実施形態の思想を共有する他の実施形態を以下に示す。
図19に示すように、減速装置157の第1排出孔585および第2排出孔186はスプロケット部22および従動回転体130の周方向に等間隔に8つ形成されていてもよい。
また、第2排出孔は、従動回転体の径方向の断面が楕円形形状、環状または多角形形状であってもよい。
第1排出孔および第2排出孔は、形状および数を問わず、第2実施形態と同様の効果を奏する。
以上、本発明はこのような実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の形態で実施することができる。
【符号の説明】
【0072】
1 ・・・内燃機関、
2 ・・・クランク軸、
4、5 ・・・カム軸、
8 ・・・吸気弁、
9 ・・・排気弁、
20 ・・・駆動回転体、
21、121 ・・・駆動内歯車部、 211 ・・・第1斜歯、
22 ・・・スプロケット部、
30、130 ・・・従動回転体、
31 ・・・従動内歯車部、 311 ・・・第2斜歯、
32 ・・・導入孔、
40 ・・・遊星回転体、
41 ・・・駆動側遊星外歯車部、 411 ・・・第3斜歯、
42 ・・・従動側遊星外歯車部、 421 ・・・第4斜歯、
60 ・・・入力回転体、
61 ・・・入力外歯車部、 611 ・・・第5斜歯、
80 ・・・与圧回転体、
81 ・・・与圧外歯車部、 811 ・・・第6斜歯、
85 ・・・排出孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19