特開2017-227238(P2017-227238A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-227238(P2017-227238A)
(43)【公開日】2017年12月28日
(54)【発明の名称】駆動力配分装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 48/22 20060101AFI20171201BHJP
   F16H 48/08 20060101ALI20171201BHJP
   F16H 48/32 20120101ALI20171201BHJP
【FI】
   F16H48/22
   F16H48/08
   F16H48/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-122450(P2016-122450)
(22)【出願日】2016年6月21日
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100071526
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128211
【弁理士】
【氏名又は名称】野見山 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100145171
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩行
(72)【発明者】
【氏名】細川 隆司
(72)【発明者】
【氏名】大野 峻
(72)【発明者】
【氏名】宅野 博
【テーマコード(参考)】
3J027
【Fターム(参考)】
3J027FA14
3J027FB01
3J027HA01
3J027HA03
3J027HB07
3J027HC13
3J027HC15
3J027HG03
(57)【要約】
【課題】差動歯車機構とクラッチ機構とを備えた車両用の駆動力配分装置において、差動歯車機構で発生する異音や振動を抑制することが可能な駆動力配分装置を提供する。
【解決手段】エンジン102の駆動力を左右の車輪に断続可能かつ差動を許容して配分することが可能な駆動力配分装置1は、デフケース40と、一対のサイドギヤ44及び複数のピニオンギヤ42を有する差動歯車機構4と、一対のサイドギヤ43のうち一方のサイドギヤ43と相対回転不能に連結された中間軸6と、中間軸6からの駆動力を一方の車輪に断続可能に伝達するクラッチ機構5とを備える。クラッチ機構5は、同軸上で相対回転可能に配置された第1回転部材51及び第2回転部材52と、第1回転部材51及び第2回転部材52の間に配置された複数のクラッチプレート531,532とを有し、クラッチ機構5の第1回転部材51と中間軸6とがスプライン嵌合より連結されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の駆動源の駆動力を左右の車輪に断続可能かつ差動を許容して配分することが可能な駆動力配分装置であって、
前記駆動力を受けて回転するケース部材と、
前記ケース部材に収容され、一対のサイドギヤ、及び前記一対のサイドギヤに噛み合いながら前記ケース部材と共に回転する複数のピニオンギヤを有する差動歯車機構と、
前記一対のサイドギヤのうち一方のサイドギヤと相対回転不能に連結された駆動力伝達部材と、
前記駆動力伝達部材からの駆動力を前記左右の車輪のうち一方の車輪に断続可能に伝達するクラッチ機構とを備え、
前記クラッチ機構は、同軸上で相対回転可能に配置された一対の回転部材と、前記一対の回転部材の間に配置された複数のクラッチプレートとを有し、
前記クラッチ機構の前記一対の回転部材のうち一方の回転部材と前記駆動力伝達部材とが、スプライン嵌合より連結された、
駆動力配分装置。
【請求項2】
前記駆動力伝達部材と前記一方の回転部材とは、これら両部材のうち一方の部材に設けられた複数の外歯と他方の部材に設けられた複数の内歯とが噛み合い、
前記複数の外歯と前記複数の内歯との間に周方向の隙間が形成されている、
請求項1に記載の駆動力配分装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の駆動源の駆動力を左右の車輪に断続可能かつ差動を許容して配分することが可能な車両用の駆動力配分装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一対のピニオンギヤ及びこれら一対のピニオンギヤとギヤ軸を直交させて噛み合う一対のサイドギヤからなる差動歯車機構と、一対のサイドギヤのうち一方のサイドギヤから出力された駆動力を左右の車輪のうち一方の車輪側に断続可能に伝達するクラッチとを備え、車両の駆動源の駆動力を左右の車輪に断続可能かつ差動を許容して配分する駆動力配分装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の駆動力配分装置は、デフケースに収容された差動歯車機構の一方のサイドギヤに中間軸が相対回転不能に連結され、この中間軸がクラッチドラムと一体に形成されている。クラッチドラムの内周面にはスプライン係合部が形成され、このスプライン係合部に複数のアウタクラッチプレートが相対回転不能に係合している。クラッチは、複数のアウタクラッチプレートと、複数のアウタクラッチプレートの間に交互に配置された複数のインナクラッチプレートとを有し、複数のインナクラッチプレートが中間軸と同軸配置されたインナシャフトにスプライン係合している。インナシャフトには、左後輪に駆動力を伝達するドライブシャフトが相対回転不能に連結される。
【0004】
また、特許文献1の図1には、駆動力配分装置が搭載された四輪駆動車の駆動力伝達系の構成が記載されている。この駆動力伝達系において、駆動力配分装置には、プロペラシャフトよりも駆動源側(前輪側)に配置された噛み合いクラッチを経て駆動源(エンジン)の駆動力が入力される。四輪駆動時には駆動力配分装置のクラッチ及び噛み合いクラッチが駆動力伝達可能な状態とされ、二輪駆動時にはこれら両クラッチによる駆動力伝達が遮断される。これにより、前輪にのみ駆動力が伝達される二輪駆動状態での走行時には、プロペラシャフトやデフケースの回転が停止した状態となり、プロペラシャフト及びデフケースの回転に伴って発生する回転抵抗(潤滑油の粘性抵抗など)が抑制され、燃費性能が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−129534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の駆動力伝達系の構成では、二輪駆動状態での走行時にデフケースの回転が停止した状態で左右の後輪が回転する。この際、差動歯車機構の右側のサイドギヤは右後輪と等速で同方向に回転する。一方、左後輪と中間軸とは駆動力配分装置のクラッチによって連結が遮断されているので、左側のサイドギヤは、右側のサイドギヤの回転力を一対のピニオンギヤを介して受け、右側のサイドギヤとは反対方向に回転する。
【0007】
この場合、左側のサイドギヤと一体に回転する中間軸は、複数のアウタクラッチプレートと共に回転するが、例えば製造時に発生した歪などによって中間軸の回転バランスが悪いと、特に高速走行時において中間軸にその回転速度に応じた周期的な振動が発生する。そして、この振動が左側のサイドギヤと一対のピニオンギヤとの噛み合いに影響を及ぼし、差動歯車装置において異音や振動が発生してしまうおそれがある。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、差動歯車機構とクラッチ機構とを備えた車両用の駆動力配分装置において、差動歯車機構で発生する異音や振動を抑制することが可能な駆動力配分装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の目的を達成するため、車両の駆動源の駆動力を左右の車輪に断続可能かつ差動を許容して配分することが可能な駆動力配分装置であって、前記駆動力を受けて回転するケース部材と、前記ケース部材に収容され、一対のサイドギヤ、及び前記一対のサイドギヤに噛み合いながら前記ケース部材と共に回転する複数のピニオンギヤを有する差動歯車機構と、前記一対のサイドギヤのうち一方のサイドギヤと相対回転不能に連結された駆動力伝達部材と、前記駆動力伝達部材からの駆動力を前記左右の車輪のうち一方の車輪に断続可能に伝達するクラッチ機構とを備え、前記クラッチ機構は、同軸上で相対回転可能に配置された一対の回転部材と、前記一対の回転部材の間に配置された複数のクラッチプレートとを有し、前記クラッチ機構の前記一対の回転部材のうち一方の回転部材と前記駆動力伝達部材とが、スプライン嵌合より連結された、駆動力配分装置を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る駆動力配分装置によれば、差動歯車機構で発生する異音や振動を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態に係る駆動力配分装置が搭載された四輪駆動車の構成例を示す構成図。
図2】駆動力配分装置の構成例を水平断面で示す断面図。
図3】駆動力配分装置の要部を垂直断面で示す断面図。
図4】(a)は、第1回転部材の連結部及び中間軸の第2スプライン嵌合部を軸方向に直交する断面で示す断面図である。(b)は、(a)の一部を拡大して示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施の形態]
本発明の実施の形態について、図1乃至図4を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する上での好適な具体例として示すものであり、技術的に好ましい種々の技術的事項を具体的に例示している部分もあるが、本発明の技術的範囲は、この具体的態様に限定されるものではない。
【0013】
図1は、本発明の実施の形態に係る駆動力配分装置が搭載された四輪駆動車の構成例を示す構成図である。
【0014】
四輪駆動車100は、走行用の駆動力を発生させる駆動源としてのエンジン102、トランスミッション103、左右一対の主駆動輪としての前輪104L,104R及び左右一対の補助駆動輪としての後輪105L,105Rと、エンジン102の駆動力を前輪104L,104R及び後輪105L,105Rに伝達可能な駆動力伝達系101と、制御装置13及び油圧ユニット14とを備えている。なお、本実施の形態において、各符号における「L」及び「R」は、車両の前進方向に対する左側及び右側の意味で使用している。
【0015】
この四輪駆動車100は、エンジン102の駆動力を前輪104L,104R及び後輪105L,105Rに伝達する四輪駆動状態と、エンジン102の駆動力を前輪104L,104Rのみに伝達する二輪駆動状態とを切り替え可能である。なお、本実施の形態では、駆動源として内燃機関であるエンジンを適用した場合について説明するが、これに限らず、エンジンとIPM(Interior Permanent Magnet Synchronous)モータ等の高出力電動モータとの組み合わせによって駆動源を構成してもよく、高出力電動モータのみによって駆動源を構成してもよい。
【0016】
駆動力伝達系101は、フロントディファレンシャル11と、駆動力の伝達を遮断可能な噛み合いクラッチ12と、プロペラシャフト108と、駆動力配分装置1と、前輪側のドライブシャフト106L,106Rと、後輪側のドライブシャフト107L,107Rとを有する。前輪104L,104Rには、エンジン102の駆動力が常に伝達される。後輪105L,105Rには、噛み合いクラッチ12、プロペラシャフト108、及び駆動力配分装置1を介してエンジン102の駆動力が伝達される。駆動力配分装置1は、エンジン102の駆動力を左右の後輪105L,105Rに断続可能かつ差動を許容して配分することが可能である。
【0017】
フロントディファレンシャル11は、一対の前輪側のドライブシャフト106L,106Rにそれぞれ連結された一対のサイドギヤ111、一対のサイドギヤ111にギヤ軸を直交させて噛合する一対のピニオンギヤ112、一対のピニオンギヤ112を支持するピニオンギヤ支持部材113、及びこれら一対のサイドギヤ111と一対のピニオンギヤ112とピニオンギヤ支持部材113を収容するフロントデフケース114を有している。
【0018】
噛み合いクラッチ12は、フロントデフケース114と一体に回転する第1回転部材121と、第1回転部材121と軸方向に並んで配置された第2回転部材122と、第1回転部材121と第2回転部材122とを相対回転不能に連結することが可能なスリーブ123とを有している。スリーブ123は、図略のアクチュエータにより、第1回転部材121及び第2回転部材122に噛み合う連結位置と、第2回転部材122にのみ噛み合う非連結位置との間を軸方向に移動する。スリーブ123が連結位置にあるとき、第1回転部材121と第2回転部材122とが相対回転不能に連結され、スリーブ123が非連結位置にあるとき、第1回転部材121と第2回転部材122とが相対回転自在となる。
【0019】
プロペラシャフト108は、エンジン102のトルクをフロントデフケース114から噛み合いクラッチ12を介して受け、駆動力配分装置1側に伝達する。プロペラシャフト108の前輪側端部にはピニオンギヤ108aが設けられており、このピニオンギヤ108aが、噛み合いクラッチ12の第2回転部材122に相対回転不能に連結されたリングギヤ108bに噛み合っている。
【0020】
エンジン102は、トランスミッション103、及びフロントディファレンシャル11を介して、一対の前輪側のドライブシャフト106L,106Rに駆動力を出力することにより、一対の前輪104L,104Rを駆動する。また、エンジン102は、トランスミッション103、噛み合いクラッチ12、プロペラシャフト108、及び駆動力配分装置1を介して駆動力を後輪側のドライブシャフト107L,107Rに駆動力を出力することにより、一対の後輪105L,105Rを駆動する。
【0021】
駆動力配分装置1は、プロペラシャフト108から入力される駆動力を後輪側のドライブシャフト107L,107Rに差動を許容して配分する。ドライブシャフト107Lは左後輪105Lに連結され、ドライブシャフト107Rは右後輪105Rに連結されている。
【0022】
油圧ユニット14は、制御装置13によって制御され、駆動力配分装置1に作動油を供給する。駆動力配分装置1は、この作動油の圧力によって作動し、プロペラシャフト108から後輪側のドライブシャフト107L,107Rへ駆動力を伝達する。制御装置13は、例えば前輪104L,104Rの平均回転速度と後輪105L,105Rの平均回転速度との差である差動回転速度が高いほど、また運転者によるアクセルペダルの踏み込み操作量が大きいほど、高い圧力の作動油が駆動力配分装置1に供給されるように、油圧ユニット14を制御する。
【0023】
(駆動力配分装置1の全体構成)
図2は、駆動力配分装置1の構成例を水平断面で示す断面図である。図3は、駆動力配分装置1の要部を垂直断面で示す断面図である。図2では、駆動力配分装置1の全体を、後輪側のドライブシャフト107L,107Rの一部と共に示している。図3では、図面上側が四輪駆動車100への搭載状態における鉛直方向の上側にあたり、図面下側が四輪駆動車100への搭載状態における鉛直方向の下側にあたる。
【0024】
駆動力配分装置1は、車体に支持される装置ケース2と、プロペラシャフト108が連結される連結部材31と、連結部材31と一体に回転するピニオンギヤシャフト32と、ピニオンギヤシャフト32からエンジン102の駆動力を受けて回転するケース部材としてのデフケース40と、デフケース40に入力された駆動力を一対のサイドギヤ43から差動を許容して出力する差動歯車機構4と、一方のサイドギヤ43から出力された駆動力を左後輪105Lに伝達するクラッチ機構5と、差動歯車機構4とクラッチ機構5との間に配置された駆動力伝達部材としての軸状の中間軸6とを備えている。
【0025】
差動歯車機構4は、デフケース40に支持されたピニオンシャフト41と、ピニオンシャフト41に軸支された一対のピニオンギヤ42と、一対のピニオンギヤ42にギヤ軸を直交させて噛合する一対のサイドギヤ43とを有している。一対のピニオンギヤ42は、一対のサイドギヤ43に噛み合いながらデフケース40と共に回転する。
【0026】
一対のピニオンギヤ42及び一対のサイドギヤ43は、傘歯車からなる。デフケース40は、差動歯車機構4を収容し、車幅方向の両端部が円錐ころ軸受71,72によって装置ケース2に回転可能に支持されている。中間軸6は、一対のサイドギヤ43のうち一方のサイドギヤ43と相対回転可能に連結されている。クラッチ機構5は、中間軸6からの駆動力を断続可能に左後輪105L側に伝達する。
【0027】
連結部材31とピニオンギヤシャフト32とは、ボルト301及び座金302によって結合されている。また、ピニオンギヤシャフト32は、軸部321とギヤ部322とを有し、軸部321が一対の円錐ころ軸受73,74によって回転可能に支持されている。ギヤ部322は、複数のボルト400によってデフケース40と一体に回転するように固定されたリングギヤ44に噛み合っている。
【0028】
クラッチ機構5は、ドライブシャフト107Lへの駆動力伝達経路において、中間軸6とドライブシャフト107Lとの間に配置されている。四輪駆動車100の直進時において、一方のサイドギヤ43から中間軸6及びクラッチ機構5を経てドライブシャフト107Lに伝達される駆動力が調節されると、差動歯車機構4の差動機能により、ドライブシャフト107Rにも、ドライブシャフト107Lに伝達される駆動力と同等の駆動力が伝達される。
【0029】
ドライブシャフト107L,107Rは、それぞれ中間シャフト90と、中間シャフト90の一端部に配置されたトリポード型等速ジョイント9と、中間シャフト90の他端部に配置された図略のボール型等速ジョイントとを有している。ボール型等速ジョイントは、後輪105L,105Rを支持する図略のハブユニットに連結される。
【0030】
トリポード型等速ジョイント9は、軸方向に延びる3本のローラ案内溝91aが内周面に形成された有底筒状のカップ部911及びカップ部911の底部から一体に突設された軸状のステム部912を有する外輪91と、中間シャフト90が相対回転不能に連結される環状のボス部921及びボス部921から径方向外方に延びるように立設された3本のトリポード軸部922を有するトリポード部材92と、それぞれのトリポード軸部922に回転可能に支持されてローラ案内溝91aを転動するローラ93とを有している。
【0031】
外輪91のカップ部911の開口は、蛇腹状のブーツ94によって覆われている。ステム部912には、駆動力配分装置1内への異物の侵入を抑制するデフレクタ95が嵌着されている。またステム部912の先端部には、複数のスプライン歯が形成されたスプライン嵌合部912aが設けられている。なお、図2では、ドライブシャフト107Rのトリポード型等速ジョイント9をその軸方向断面で示し、外輪91の内部に配置された3本のトリポード軸部922のうち1本のトリポード軸部922を示している。
【0032】
ドライブシャフト107Rのステム部912のスプライン嵌合部912aは、一対のサイドギヤ43のうち、中間軸6とは反対側の他方のサイドギヤ43にスプライン嵌合によって相対回転不能に連結されている。ドライブシャフト107Lのステム部912のスプライン嵌合部912aは、スプライン嵌合によって後述する第2回転部材52の連結部521に相対回転不能に連結されている。
【0033】
(クラッチ機構5の構成)
クラッチ機構5は、油圧ユニット14から供給される作動油の圧力によって動作する押圧部材としてのピストン50と、中間軸6と一体に回転する第1回転部材51と、ドライブシャフト107Lにおけるトリポード型等速ジョイント9の外輪91と一体に回転する第2回転部材52と、第1回転部材51と第2回転部材52との間に配置された摩擦クラッチ53と、ピストン50と摩擦クラッチ53との間に配置されたプレッシャプレート54及びスラストころ軸受55とを有している。第1回転部材51と第2回転部材52とは、同軸上で相対回転可能に配置されている。すなわち、第1回転部材51及び第2回転部材52ならびに中間軸6は、回転軸線Oを共有している。以下、回転軸線Oと平行な方向を軸方向という。なお、第1回転部材51と第2回転部材52が本発明の一対の回転部材に相当する。
【0034】
摩擦クラッチ53は、図3に示すように、第1回転部材51と共に回転する複数のインナクラッチプレート531と、第2回転部材52と共に回転する複数のアウタクラッチプレート532とからなる。インナクラッチプレート531とアウタクラッチプレート532との摩擦摺動は、潤滑油Lによって潤滑される。本実施の形態では、摩擦クラッチ53が、7枚のインナクラッチプレート531と、同じく7枚のアウタクラッチプレート532とを有し、これらのインナクラッチプレート531及びアウタクラッチプレート532が軸方向に沿って交互に配置されている。
【0035】
摩擦クラッチ53は、ピストン50の押圧力をプレッシャプレート54及びスラストころ軸受55を介して受けることにより、複数のインナクラッチプレート531と複数のアウタクラッチプレート532との間に摩擦力が発生し、この摩擦力によって第1回転部材51と第2回転部材52との間で駆動力を伝達する。ピストン50は、回転軸線Oを中心とする環状である。また、プレッシャプレート54とスラストころ軸受55との間には、潤滑油Lを掻き上げるための複数の羽根部561が形成された掻き上げ部材56の平板部562が配置されている。羽根部561は、平板部562から軸方向に突出している。
【0036】
第1回転部材51は、外周面に軸方向に沿って延びる複数のスプライン突起からなるスプライン係合部511aが形成された円筒状の円筒部511と、円筒部511よりも小径で、中間軸6がスプライン嵌合により連結される有底円筒状の連結部512と、円筒部511と連結部512とを接続する接続部513とを有している。第1回転部材51は、例えば鉄系の金属を鍛造及び切削して成形されている。
【0037】
接続部513は外周面がテーパ面によって形成された円錐状部513aと、円錐状部513aの大径側の端部から外方に張り出した鍔部513bとを有している。円錐状部513aの小径側の端部は連結部512と一体であり、鍔部513bの外周端部は円筒部511と一体である。円筒部511における鍔部513bとは反対側の端部には、軸方向に突出する複数の突起511bが形成されている。
【0038】
プレッシャプレート54には、円筒部511の突起511bを挿通させる挿通孔540が形成されている。これにより、プレッシャプレート54は、第1回転部材51と相対回転不能かつ軸方向移動可能である。プレッシャプレート54は、円筒部511よりも外周側に配置されて摩擦クラッチ53を押圧する押圧部541と、円筒部511の内側に配置された内壁部542とを有している。挿通孔540は、押圧部541と内壁部542との間に形成されている。また、掻き上げ部材56の平板部562は、その内周端部が第1回転部材51のスプライン係合部511aに係合している。
【0039】
プレッシャプレート54の内壁部542と、第1回転部材51の接続部513における鍔部513bとの間には、複数のコイルばね57が軸方向に圧縮された状態で配置されている。図2及び図3では、このうち1つのコイルばね57を図示している。複数のコイルばね57は、プレッシャプレート54をピストン50側に付勢している。
【0040】
第2回転部材52は、第1回転部材51と軸方向に並置されている。第2回転部材52は、図3に示すように、ドライブシャフト107Lにおけるトリポード型等速ジョイント9のステム部912が連結される連結部521と、連結部521の第1回転部材51側の端部から軸方向に突出するボス部522と、連結部521から外方に張り出した環状の壁部523と、壁部523の外周端部から軸方向に延びる円筒状の円筒部524とを一体に有している。
【0041】
連結部521には、ドライブシャフト107Lのステム部912が嵌合する嵌合穴520が形成され、ステム部912のスプライン嵌合部912aが嵌合穴520の内面に形成された図略のスプライン突起と相対回転不能に係合している。また、ステム部912は、スプライン嵌合部912aの外周面に嵌着されたスナップリング96により、嵌合穴520から抜け止めされている。
【0042】
摩擦クラッチ53は、第1回転部材51の円筒部511と、第2回転部材52の円筒部524との間に配置されている。インナクラッチプレート531には、その内周側の端部に第1回転部材51の円筒部511のスプライン係合部511aに係合する複数の突起531aが形成されている。これにより、インナクラッチプレート531は、第1回転部材51に対して軸方向移動可能かつ相対回転不能に連結されている。また、アウタクラッチプレート532には、その外周側の端部に第2回転部材52の円筒部524の内周面に形成されたスプライン係合部524aに係合する複数の突起532aが形成されている。これにより、アウタクラッチプレート532は、第2回転部材52に対して軸方向移動可能かつ相対回転不能に連結されている。
【0043】
第1回転部材51は、第2ケース部材22の中心部に形成された軸孔220に配置にされた玉軸受75によって支持されている。第2回転部材52は、連結部521と第1ケース部材21の内面との間に配置された玉軸受76によって支持されている。また、第1回転部材51の円錐状部513aの内周面と第2回転部材52のボス部522の外周面との間には、玉軸受77が配置されている。これらの玉軸受75〜77は、外側軌道面が内周面に形成された外輪と、内側軌道面が外周面に形成された内輪と、外側軌道面及び内側軌道面を転動する球状の転動体(玉)とを有して構成されている。
【0044】
また、第2回転部材52の壁部523と第1ケース部材21の内面との間には、スラストころ軸受78が配置されている。スラストころ軸受78は、ピストン50の押圧力による第2回転部材52の軸方向移動を規制している。
【0045】
(装置ケース2の構成)
装置ケース2は、クラッチ機構5を収容する収容室21aが形成された第1ケース部材21と、摩擦クラッチ53を潤滑する潤滑油Lを貯留する貯留室22aを形成する第2ケース部材22と、デフケース40等を収容する収容室23aが形成された第3のケース部材23と、収容室21aと貯留室22aとを区画する隔壁部材24とを有している。第1ケース部材21と第2ケース部材22、及び第2ケース部材22と第3のケース部材23とは、例えばボルト締結や溶接によって結合されている。図2及び図3では、第1ケース部材21と第2ケース部材22とを結合する複数のボルト201を図示している。
【0046】
装置ケース2において、第1ケース部材21の収容室21aと、第3のケース部材23の収容室23aとは、第2ケース部材22の軸孔220の内面に固定されたシール部材81によって区画されている。収容室21aには、摩擦クラッチ53の複数のインナクラッチプレート531と複数のアウタクラッチプレート532との摩擦摺動を潤滑するのに適した粘度の潤滑油Lが封入されている。第3のケース部材23の収容室23aには、ギヤの潤滑に適した粘度のデフオイル(図示せず)が封入されている。
【0047】
第1ケース部材21には、第2回転部材52を挿通させる挿通孔の内面にシール部材82が嵌着されている。第3のケース部材23には、ドライブシャフト107Rの外輪91のステム部912を挿通させる挿通孔の内面にシール部材83が嵌着され、連結部材31及びピニオンギヤシャフト32を挿通させる挿通孔の内面にシール部材84が嵌着されている。
【0048】
第2ケース部材22には、ピストン50に油圧を付与して摩擦クラッチ53側に移動させる作動油が供給される環状のシリンダ室22b、及びシリンダ室22bに作動油を供給する作動油供給孔22c(図2参照)が設けられている。
【0049】
貯留室22a及びシリンダ室22bは、回転軸線Oを中心として同心状に形成された円環状である。第2ケース部材22において、貯留室22aはシリンダ室22bよりも外周側に形成されている。貯留室22a及びシリンダ室22bは、共に第1ケース部材21の収容室21aに開口し、第3のケース部材23側に向かって回転軸線O方向に窪む凹部として形成されている。貯留室22aは、凹部の開口の一部が環状の隔壁部材24によって閉塞されている。隔壁部材24は、例えば溶接や加締めによって第2ケース部材22に固定されている。
【0050】
貯留室22aは、図3に示すように、その上端部において隔壁部材24の外周端部よりも上方に膨出し、この膨出した部分から掻き上げ部材56の羽根部561によって掻き上げられた潤滑油Lが導入される。また、第1ケース部材21の収容室21aの上端部にも、掻き上げられた潤滑油Lを貯留室22aに導くための切り欠きが設けられている。隔壁部材24の下端部には、貯留室22aに貯留された潤滑油Lを収容室21aに導出するための導出孔240が形成されている。
【0051】
掻き上げ部材56の回転によって収容室21a内の潤滑油Lが掻き上げられると、掻き上げられた潤滑油Lの一部が貯留室22aに導入される。貯留室22aには、第2回転部材52の回転速度が高いほど、多くの潤滑油Lが導入される。また、隔壁部材24の導出孔240からは、貯留室22aにおける油面の高さ(油面高)が高いほど、多くの潤滑油Lが収容室21aに導出される。
【0052】
このため、車速が上昇する加速時には貯留室22aに貯留される潤滑油Lが増大して収容室21a内の潤滑油Lが減少し、減速時には貯留室22aに貯留される潤滑油Lが減少して収容室21a内の潤滑油Lが増大する。このように、装置ケース2は、第1回転部材51の回転によって掻き上げられた潤滑油Lが貯留室22aに導入されると共に、貯留室22aに貯留された潤滑油Lが隔壁部材24の導出孔240から収容室21aに還流されるように構成されている。
【0053】
シリンダ室22bには、作動油供給孔22cを介して油圧ユニット14から作動油が供給される。ピストン50は、軸方向の一部がシリンダ室22b内に配置された状態で回転軸線O方向に進退移動可能であり、シリンダ室22bに供給される作動油の油圧によって収容室21a側に移動して摩擦クラッチ53を押圧する。また、ピストン50は、シリンダ室22bの作動油の圧力が低下すると、プレッシャプレート54を介して受けるコイルばね57の付勢力によってシリンダ室22bの奥側に移動し、摩擦クラッチ53から離間する。ピストン50の内周面及び外周面には、それぞれ周方向溝が形成され、これらの周方向溝にOリング85,86(図3参照)が保持されている。Oリング85,86は、ピストン50の進退移動に伴い、シリンダ室22bの内面を摺動する。
【0054】
(第1回転部材51と中間軸6との連結構造)
中間軸6は、円柱状の軸部60と、差動歯車機構4の一方のサイドギヤ43にスプライン嵌合する第1スプライン嵌合部61と、クラッチ機構5の第1回転部材51にスプライン嵌合する第2スプライン嵌合部62とを一体に有している。軸部60と第1スプライン嵌合部61及び第2スプライン嵌合部62とは軸方向に並び、第1スプライン嵌合部61は軸部60の差動歯車機構4側の端部に、第2スプライン嵌合部62は軸部60のクラッチ機構5側の端部に、それぞれ設けられている。軸部60の外周面には、デフオイルを流動させる格子状の油溝600(図3に示す)が形成されている。
【0055】
図4(a)は、第1回転部材51の連結部512及び中間軸6の第2スプライン嵌合部62を軸方向に直交する断面で示す断面図である。図4(b)は、図4(a)の一部を拡大して示す拡大図である。
【0056】
第1回転部材51の連結部512には、中間軸6の第2スプライン嵌合部62が嵌合する嵌合穴510が形成されている。嵌合穴510の内周面には、複数の内歯としての内周スプライン歯512aが形成されている。内周スプライン歯512aは、嵌合穴510の内周面の周方向に沿って等間隔に形成され、軸方向に延在している。
【0057】
また、中間軸6の第2スプライン嵌合部62の外周面には、複数(内周スプライン歯512aと同数)の外歯としての外周スプライン歯62aが形成されている。外周スプライン歯62aは、第2スプライン嵌合部62の外周面の周方向に沿って等間隔に形成され、軸方向に延在している。
【0058】
第1回転部材51と中間軸6とは、内周スプライン歯512aと外周スプライン歯62aとが互いに噛み合うことにより、相対回転可能かつ軸方向に相対移動可能に連結されている。内周スプライン歯512aの歯面512b、及び外周スプライン歯62aの歯面62bは、それぞれインボリュート曲線からなる。
【0059】
図4(a)及び(b)では、第1回転部材51と中間軸6とが同軸上に配置され、かつ周方向に隣り合う一対の内周スプライン歯512aの中央部に外周スプライン歯62aが位置している状態を示している。この状態では、内周スプライン歯512aの歯面512bと外周スプライン歯62aの歯面62bとの間に、周方向の隙間Sが形成されている。また、内周スプライン歯512aの歯先面512cと外周スプライン歯62aの歯底面62dとの間、及び外周スプライン歯62aの歯先面62cと内周スプライン歯512aの歯底面512dとの間には、それぞれ径方向の隙間S,Sが形成されている。
【0060】
すなわち、中間軸6の第2スプライン嵌合部62は、第1回転部材51の連結部512の嵌合穴510に隙間嵌めされており、例えば作業者の手作業によって容易に挿抜可能である。また、中間軸6の第2スプライン嵌合部62が第1回転部材51の連結部512に隙間嵌めされていることにより、第1回転部材51は、連結部512を揺動中心として、中間軸6に対して径方向に(図3に示す矢印Aのように)、所定の角度範囲(例えば±1〜3°以下の範囲)で揺動可能である。
【0061】
なお、中間軸6の第1スプライン嵌合部61は、第2スプライン嵌合部62よりも密に差動歯車機構4のサイドギヤ43にスプライン嵌合によって連結される。つまり、中間軸6の第1スプライン嵌合部61とサイドギヤ43との回転方向のガタは、中間軸6の第2スプライン嵌合部62と第1回転部材51との回転方向のガタよりも小さい。
【0062】
(本実施の形態に係る第1回転部材51と中間軸6との連結構造の作用及び効果)
次に、上記の第1回転部材51と中間軸6との連結構造の作用について説明する。前述のように、第1回転部材51は、鍛造や切削によって成形され、またスプライン係合部511a等には必要に応じて熱処理が施されるが、これらの加工時に歪みが発生し、回転アンバランスが生じる場合がある。この場合、四輪駆動車100が二輪駆動状態で走行すると、第1回転部材51に回転振れが生じる。
【0063】
ここで、仮に第1回転部材51と中間軸6とが例えば溶接やボルト締結によって結合されていると、第1回転部材51の回転振れによる振動が中間軸6に伝達され、さらに差動歯車機構4の一方のサイドギヤ43に伝達される。そして、このサイドギヤ43が振動することにより、一対のピニオンギヤ42との噛み合い姿勢が悪化して、噛み合い次数に応じた異音が発生し、四輪駆動車100の乗員に不快感や不安感を与えてしまうおそれがある。この異音は、四輪駆動車100の高速走行時ほど顕著になる。
【0064】
しかし、本実施の形態では、第1回転部材51と中間軸6とが相対回転不能かつ軸方向移動可能にスプライン嵌合されているので、第1回転部材51に回転振れが発生しても、その振動が中間軸6に伝達されにくい。つまり、第1回転部材51の連結部512と中間軸6の第2スプライン嵌合部62とのガタ(隙間S,S,S)により第1回転部材51の振動が吸収され、中間軸6に連結されるサイドギヤ43と一対のピニオンギヤ42との噛み合いが適切に行われる。これにより差動歯車機構4における異音や振動の発生が抑制される。
【0065】
なお、四輪駆動状態での走行時には、デフケース40に対する一対のサイドギヤ43の相対回転速度がゼロもしくは左右の後輪105L,105Rの差動回転速度に応じた小さな値となるので、サイドギヤ43とピニオンギヤ42との噛み合い状態の不整による異音は発生しない。つまり、本発明は、差動歯車機構の一方のサイドギヤと一方の車輪との間に駆動力を断続可能なクラッチ機構が配置された構成の駆動力配分装置に特有の課題を効果的に解決し得るものである。
【0066】
(付記)
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0067】
また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態では、摩擦クラッチ53を押圧する押圧部材が作動油の圧力によって動作するピストン50である場合について説明したが、これに限らず、例えば電動モータの出力トルクによって作動するカム機構のカム推力によって摩擦クラッチ53を押圧するようにしてもよい。この場合、例えばカム機構を構成するカム部材が摩擦クラッチ53を押圧する押圧部材となる。
【0068】
また、上記実施の形態では、第1回転部材51の連結部512に形成された嵌合穴510内に中間軸6の第2スプライン嵌合部62がスプライン嵌合する場合について説明したが、これとは逆に、中間軸6に形成された嵌合穴に第1回転部材51の一部が嵌入することにより、第1回転部材51と中間軸6とを連結してもよい。この場合、第1回転部材51に外周スプライン歯が形成され、中間軸6に複数の内周スプライン歯が形成される。
【符号の説明】
【0069】
1…駆動力配分装置 4…差動歯車機構
40…デフケース(ケース部材) 42…ピニオンギヤ
43…サイドギヤ 5…クラッチ機構
51…第1回転部材(回転部材) 512a…内周スプライン歯(内歯)
52…第2回転部材(回転部材) 531…インナクラッチプレート
532…アウタクラッチプレート 6…中間軸(駆動力伝達部材)
62…第2スプライン嵌合部 62a…外周スプライン歯(外歯)

図1
図2
図3
図4