特開2017-227286(P2017-227286A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-227286(P2017-227286A)
(43)【公開日】2017年12月28日
(54)【発明の名称】車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/02 20060101AFI20171201BHJP
【FI】
   F16H61/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-124774(P2016-124774)
(22)【出願日】2016年6月23日
(71)【出願人】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】井上 智裕
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】吉野 潤
【テーマコード(参考)】
3J552
【Fターム(参考)】
3J552MA02
3J552MA12
3J552NA01
3J552NB01
3J552PA47
3J552PA59
3J552RA21
3J552RB06
3J552RB12
3J552RC02
3J552SB03
3J552SB09
3J552SB10
3J552VA66Z
3J552VB01W
3J552VD01Z
3J552VD11Z
(57)【要約】
【課題】ニュートラル走行制御により惰性走行距離をより一層延ばすことができるようにして車両の燃費を向上させることができるようにする。
【解決手段】入力軸30Aを含む入力回転メンバM1と、出力軸30Bを含む出力回転メンバM2と、入力回転メンバM1と出力回転メンバM2との間に装備された複数の中間回転メンバM3〜M8とを有する有段変速機を備えた車両の制御装置であって、車両の走行中に入力回転メンバM1と出力回転メンバM2との間を動力遮断状態とするニュートラル走行制御を実施するときに、出力回転メンバM2と中間回転メンバM3〜M8の少なくとも何れかとを動力伝達状態とするニュートラルパターンを選択する制御部を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力軸を含む入力回転メンバと、出力軸を含む出力回転メンバと、前記入力回転メンバと前記出力回転メンバとの間に装備された複数の中間回転メンバとを有する有段変速機を備えた車両の制御装置であって、
前記車両の走行中に前記入力回転メンバと前記出力回転メンバとの間を動力遮断状態とするニュートラル走行制御を実施するときに、前記出力回転メンバと前記中間回転メンバの少なくとも何れかとを動力伝達状態とするニュートラルパターンを選択する制御部を有することを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記制御部は、前記ニュートラル走行制御中に、前記出力回転メンバと複数の前記中間回転メンバとを動力伝達状態とするニュートラルパターンを選択することを特徴とする車両の制御装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
前記制御部は、前記ニュートラル走行制御中に車速が所定車速未満の場合は前記ニュートラルパターンを1つのパターンに固定することを特徴とする車両の制御装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記1つのパターンは、前記所定車速未満全域で前記有段変速機の許容限度回転速度を超えないパターンのうち、出力軸トルクが最も高くなるパターンであることを特徴とする車両の制御装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか1項において、
前記制御部は、前記ニュートラル走行制御中に車速が前記所定車速以上の場合は許容限度回転速度が高くなるパターンを選択することを特徴とする車両の制御装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項において、
前記制御部は、前記ニュートラル走行制御中に前記有段変速機が有する締結要素を複数締結することにより、前記出力回転メンバと前記中間回転メンバとを動力伝達状態とすることを特徴とする車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニュートラル走行制御を行なう車両の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動変速機をニュートラル(動力遮断状態)として走行するニュートラル走行制御が知られている。この制御によれば、車両の惰性走行時に、変速機をニュートラル状態にすることにより、エンジンと駆動輪との動力伝達が遮断されエンジンブレーキ(駆動源の負荷)が作用しなくなるので、走行速度の低下を抑制して燃費を向上させることができる(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このニュートラル走行制御は、(A)前進レンジが選択されていること、(B)車速が設定車速以上(中〜高車速)であること、(C)アクセルがオフであること、(D)ブレーキがオフであること、の各条件を含む制御条件が成立すると実施する。
【0004】
また、ニュートラル走行制御は、エンジンを停止させてニュートラル走行するセーリングストップ制御と、エンジンを停止させずにニュートラル走行するセーリング制御とに分けることができる。
【0005】
なお、特許文献1(段落0024)には、セーリングストップ制御時には自動変速機の締結要素を全て解放することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−213557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、ニュートラル走行制御により燃費を向上させるには、走行速度の低下をさらに抑制して惰性走行距離をできるだけ延ばすことが有効である。
【0008】
本発明はこのような観点から創案されたもので、ニュートラル走行制御による惰性走行距離をより一層延ばすことができるようにして車両の燃費を向上させることができるようにした車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記目的を達成するために、本発明の車両の制御装置は、入力軸を含む入力回転メンバと、出力軸を含む出力回転メンバと、前記入力回転メンバと前記出力回転メンバとの間に装備された複数の中間回転メンバとを有する有段変速機を備えた車両の制御装置であって、前記車両の走行中に前記入力回転メンバと前記出力回転メンバとの間を動力遮断状態とするニュートラル走行制御を実施するときに、前記出力回転メンバと前記中間回転メンバの少なくとも何れかとを動力伝達状態とするニュートラルパターンを選択する制御部を有することを特徴としている。
【0010】
(2)前記制御部は、前記ニュートラル走行制御中に、前記出力回転メンバと複数の前記中間回転メンバとを動力伝達状態とするニュートラルパターンを選択することが好ましい。
【0011】
(3)前記制御部は、前記ニュートラル走行制御中に車速が所定車速未満の場合は前記ニュートラルパターンを1つのパターンに固定することが好ましい。
【0012】
(4)前記1つのパターンは、前記所定車速未満全域で前記有段変速機の許容限度回転速度を超えないパターンのうち、出力軸トルクが最も高くなるパターンであることが好ましい。
【0013】
(5)前記制御部は、前記ニュートラル走行制御中に車速が前記所定車速以上の場合は許容限度回転速度が高くなるパターンを選択することが好ましい。
【0014】
(6)前記制御部は、前記ニュートラル走行制御中に前記有段変速機が有する締結要素を複数締結することにより、前記出力回転メンバと前記中間回転メンバとを動力伝達状態とすることが好ましい。
【0015】
前記有段変速機は、入力軸と、出力軸と、共線図上での並び順に第1要素、第2要素、第3要素を有する第1遊星歯車機構と、共線図上での並び順に第4要素、第5要素、第6要素を有する第2遊星歯車機構と、共線図上での並び順に第7要素、第8要素、第9要素を有する第3遊星歯車機構と、共線図上での並び順に第10要素、第11要素、第12要素を有する第4遊星歯車機構と、第1乃至第6摩擦締結要素と、を有し、前記入力軸、前記第1要素、前記第11要素、及び前記第1摩擦締結要素の一方のメンバから構成される第1回転メンバと、前記出力軸、前記第8要素、及び前記第2摩擦締結要素の一方のメンバから構成される第2回転メンバと、前記第6要素、前記第7要素、前記第10要素、及び前記第3摩擦締結要素の一方のメンバから構成される第3回転メンバと、前記第3要素及び前記第5要素から構成される第4回転メンバと、前記第4要素及び前記第4摩擦締結要素の一方のメンバから構成される第5回転メンバと、前記第9要素及び前記第5摩擦締結要素の一方のメンバから構成される第6回転メンバと、前記第12要素及び前記第2摩擦締結要素の他方のメンバから構成される第7回転メンバと、前記第2要素、前記第1摩擦締結要素の他方のメンバ、前記第3摩擦締結要素の他方のメンバ、及び前記第6摩擦締結要素の一方のメンバから構成される第8回転メンバと、を有し、前記第4摩擦締結要素の他方のメンバ、前記第5摩擦締結要素の他方のメンバ、及び前記第6摩擦締結要素の他方のメンバがそれぞれ固定されていることも好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、中間回転メンバのイナーシャが出力回転メンバのイナーシャに加わり出力軸に作用するイナーシャが増大するので、出力軸トルク(出力軸に加わる慣性力)が増して惰性走行距離を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る車両の有段変速機を含むパワートレーンをその制御系と共に示す全体システム構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係る有段変速機の構成を示すスケルトン図である。
図3】本発明の一実施形態に係る有段変速機の変速段ごとの各摩擦係合要素の締結表である。
図4】本発明の一実施形態に係る有段変速機のニュートラルパターンを示す各摩擦係合要素の締結表である。
図5】本発明の一実施形態に係る有段変速機の各ニュートラルパターンにおけるイナーシャトルクと回転要素の限界回転速度を出力回転に対応させて示すグラフである。
図6】上記イナーシャトルクの演算に関するクラッチ間の摩擦係数を説明するグラフである。
図7】本発明の一実施形態に係る有段変速機のニュートラルパターンにおける摩擦係合要素の締結状態を示すスケルトン図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。以下の実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができるとともに、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることが可能である。
【0019】
[1.全体システム構成]
図1に示すように、本実施形態に係る車両のパワートレーンは、エンジン1と、ロックアップクラッチ付きトルクコンバータ2及び有段式の自動変速機構3からなる自動変速機(有段変速機)4と、この自動変速機4の出力軸と駆動輪6との間に設けられた差動機構5aを含む動力伝達機構5と、を備えている。
【0020】
自動変速機構3は、ロックアップクラッチ(図示略)を備えたトルクコンバータ2を介してエンジン1と接続され、種々の摩擦係合要素(クラッチ又はブレーキ)を備え、これらの摩擦係合要素を締結又は解放することにより各変速段が達成される。
【0021】
種々の摩擦係合要素の締結又は解放やトルクコンバータ2のロックアップクラッチの係合状態は、コントロールバルブユニット(CVユニット)7に設けられた所要のソレノイドバルブを制御して油の供給状態を切り替えることによって行なう。
【0022】
また、エンジン1の停止中に摩擦係合要素を作動させることに備えて、CVユニット7に供給される作動油を発生させるオイルポンプ(図示せず)は、電動モータ(図示せず)で駆動可能に構成されている。
【0023】
このようなCVユニット7を制御するために、自動変速機コントローラ(変速機制御手段)10が設けられ、また、エンジン1を制御するために、エンジンコントローラ100が設けられている。自動変速機コントローラ10では種々のセンサ類11〜14からの情報に基づいてCVユニット7を制御する。なお、自動変速機コントローラ10とエンジンコントローラ100とは、互いに情報伝達できるように接続されており、自動変速機構3とエンジン1とを連携して制御できるようになっている。
【0024】
[2.自動変速機の構成]
図2に示すように、自動変速機構3は、第1プラネタリギヤ機構(PG1)31,第2プラネタリギヤ機構(PG2)32,第3プラネタリギヤ機構(PG3)33,第4プラネタリギヤ機構(PG4)34の4つのプラネタリギヤ機構(遊星歯車機構)が、同軸上に直列に配置されている。なお、各プラネタリギヤ機構31〜34は、サンギヤ31S〜34S,キャリア31C〜34C,リングギヤ31R〜34Rを備えて構成される。
【0025】
さらに、各プラネタリギヤ機構の要素を断続または固定する第1クラッチ(第1摩擦係合要素)K81,第2クラッチ(第2摩擦係合要素)K27,第3クラッチ(第3摩擦係合要素)K38の3つのクラッチK27,K38,K81と、第1ブレーキ(第4摩擦係合要素)B05,第2ブレーキ(第5摩擦係合要素)B06,第3ブレーキ(第6摩擦係合要素)B08の3つのブレーキB05,B06,B08とを備えている。これらの摩擦係合要素(クラッチ又はブレーキ)を選択的に断続または固定することにより、第1速〜第9速の前進9段及び後退段の変速段が達成される。
【0026】
つまり、第1プラネタリギヤ機構31は、サンギヤ(第1要素)31S,キャリア(第2要素)31C,リングギヤ(第3要素)31Rを有して構成される。
第2プラネタリギヤ機構32は、サンギヤ(第4要素)32S,キャリア(第5要素)32C,リングギヤ(第6要素)32Rを備えて構成される。
第3プラネタリギヤ機構33は、サンギヤ(第7要素)33S,キャリア(第8要素)33C,リングギヤ(第9要素)33Rを備えて構成される。
第4プラネタリギヤ機構34は、サンギヤ(第10要素)34S,キャリア(第11要素)34C,リングギヤ(第12要素)34Rを備えて構成される。
【0027】
自動変速機構3は、トルクコンバータ2を介してエンジン1から回転が入力される入力軸30Aと、動力伝達機構5を介して駆動輪へ回転を出力する出力軸30Bと、プラネタリギヤ機構31〜34の特定の要素間を連結する中間軸30C,30Dとを備えている。各プラネタリギヤ機構31〜34の所要の要素が選択的に組み合わされることにより、所要の動力伝達経路が構成され対応する変速段が達成される。
【0028】
つまり、自動変速機構3の入力軸30Aには、第1プラネタリギヤ機構31のサンギヤ31S及び第4プラネタリギヤ機構34のキャリア34Cが直接結合されている。したがって、第1プラネタリギヤ機構31のサンギヤ31S及び第4プラネタリギヤ機構34のキャリア34Cは、入力軸30Aと常に一体回転する。また、自動変速機構3の入力軸30Aには、第1クラッチK81を介して第1プラネタリギヤ機構31のキャリア31Cが結合されている。
【0029】
自動変速機構3の出力軸30Bには、第3プラネタリギヤ機構33のキャリア33Cが直接結合されている。したがって、第3プラネタリギヤ機構33のキャリア33Cは、出力軸30Bと常に一体回転する。また、自動変速機構3の出力軸30Bには、第2クラッチK27を介して第4プラネタリギヤ機構34のリングギヤ34Rが結合されている。
【0030】
第1プラネタリギヤ機構31のリングギヤ31R及び第2プラネタリギヤ機構32のキャリア32Cは何れも中間軸30Cに直接結合されている。したがって、第1プラネタリギヤ機構31のリングギヤ31Rと第2プラネタリギヤ機構32のキャリア32Cとは常に一体回転する。
【0031】
第2プラネタリギヤ機構32のリングギヤ32R,第3プラネタリギヤ機構33のサンギヤ33S及び第4プラネタリギヤ機構34のサンギヤ34Sは何れも中間軸30Dに直接結合されている。したがって、第1プラネタリギヤ機構31のリングギヤ32Rと第3プラネタリギヤ機構33のサンギヤ33Sと第4プラネタリギヤ機構34のサンギヤ34Sとは常に一体回転する。
【0032】
第1プラネタリギヤ機構31のキャリア31Cは、第3クラッチK38を介して中間軸30Dに結合されている。さらに、第1プラネタリギヤ機構31のキャリア31Cは、第3ブレーキB08を介してトランスミッションケース3Aに結合されている。また、第2プラネタリギヤ機構32のサンギヤ32Sは第1ブレーキB05を介して、第3プラネタリギヤ機構33のリングギヤ33Rは第2ブレーキB06を介して、それぞれトランスミッションケース3Aに結合されている。
【0033】
このように構成された自動変速機構3においては、第2クラッチK27,第1クラッチK81,第3クラッチK38,第1ブレーキB05,第2ブレーキB06,第3ブレーキB08といった各摩擦係合要素の締結の組み合わせによって、第1速〜第9速の前進9段及び後退段の内の何れかの変速段が達成される。
【0034】
図3は自動変速機構3について変速段ごとの各摩擦係合要素の締結状態を示す締結表である。図3において、○印は当該摩擦係合要素が締結状態となることを示し、空欄は当該摩擦係合要素が解放状態となることを示す。段数の1〜9は前進第1速〜第9速を示し、段数のRevは後退段を示す。なお、各変速段については、「第n速」又は単に「n速」とも称する。
【0035】
図3に示すように、第1速を達成するには、第1ブレーキB05,第2ブレーキB06,第3クラッチK38を締結し、他の摩擦係合要素は解放する。第2速を達成するには、第2ブレーキB06,第1クラッチK81,第3クラッチK38を締結し、他の摩擦係合要素は解放する。第3速を達成するには、第1ブレーキB05,第2ブレーキB06,第1クラッチK81を締結し、他の摩擦係合要素は解放する。
【0036】
第4速を達成するには、第1ブレーキB05,第2ブレーキB06,第2クラッチK27を締結し、他の摩擦係合要素は解放する。第5速を達成するには、第1ブレーキB05,第1クラッチK81,第2クラッチK27を締結し、他の摩擦係合要素は解放する。第6速を達成するには、第1クラッチK81,第2クラッチK27,第3クラッチK38を締結し、他の摩擦係合要素は解放する。
【0037】
また、第7速を達成するには、第1ブレーキB05,第2クラッチK27,第3クラッチK38を締結し、他の摩擦係合要素は解放する。第8速を達成するには、第3ブレーキB08,第2クラッチK27,第3クラッチK38を締結し、他の摩擦係合要素は解放する。第9速を達成するには、第1ブレーキB05,第3ブレーキB08,第2クラッチK27を締結し、他の摩擦係合要素は解放する。後退段を達成するには、第1ブレーキB05,第2ブレーキB06,第3ブレーキB08を締結し、他の摩擦係合要素は解放する。
【0038】
[3.自動変速機の制御]
このような自動変速機構3の各摩擦係合要素の締結や解放による変速制御は自動変速機コントローラ10によって車両の状態(自動変速機の選択レンジ,車速VSP及びアクセル開度APOの状態)に応じて図示しない変速線図(変速マップ)に基づいて行なわれる。なお、図1に示すように、自動変速機コントローラ10には、インヒビタスイッチ11,車速センサ12,アクセル開度センサ13,ブレーキスイッチ14等からの各情報が入力される
【0039】
本自動変速機コントローラ10は、上記の変速制御を行なう変速制御部(変速制御手段)10Aに加えて、ニュートラル走行制御部(制御部)10Bを備えている。
ニュートラル走行制御部10Bでは、車両の走行中にセンサ類11〜14からの情報に基づいて所定条件が成立したかを判定し、所定条件が成立したら、自動変速機4をニュートラル状態にして惰性走行するニュートラル走行制御(惰性走行制御とも言う)を実施する。
【0040】
[3.1.ニュートラル走行制御]
このニュートラル走行制御は、高速道路走行をはじめとした車両の中高速走行時における惰性走行中の燃費向上を目的としており、ニュートラル走行制御の実施条件には、車両の走行状態に関する条件として以下の条件(A)〜(D)が設定される。
(A)前進レンジが選択されていること
(B)車速が設定車速以上(中〜高車速)であること
(C)アクセルがオフであること
(D)ブレーキがオフであること、
【0041】
条件(A),(B)は、車両が中高速走行状態であることに関する条件である。
条件(C),(D)は、車両が惰性走行状態であることに関する条件である。
【0042】
これらの条件(A)〜(D)はAND条件であり、条件(A)〜(D)が何れも成立した状態が所定時間(例えば、2秒)継続するとニュートラル走行制御の実施条件が成立する。
【0043】
なお、このニュートラル走行制御では、通常、自動変速機4をニュートラル状態にすると共に駆動源を停止する。ここでは、エンジン1の燃料噴射を停止してエンジン1を停止させて、自動変速機4をニュートラル状態にする(これを、セーリングストップ制御とも言う)。
【0044】
自動変速機構3をニュートラル状態にすることにより、例えばエンジン1が作動していてもいわゆるエンジンブレーキが生じなくなるため、車両の減速が抑えられて惰性走行距離が延長され、燃費向上効果を得られるが、このとき、エンジン1等の駆動源を停止することにより、さらなる燃費向上効果を得られる。
【0045】
ただし、車両の駆動源を車両の走行以外にも用いている場合などでは、このニュートラル走行制御において、駆動源を停止させずに自動変速機4をニュートラル状態にする制御のみを行なう(これを、セーリング制御とも言う)場合もある。
【0046】
このようにニュートラル走行制御では、自動変速機4の自動変速機構3をニュートラル状態にするが、本制御装置では、単に自動変速機構3をニュートラル状態にするだけではなく、自動変速機構3のイナーシャを利用して惰性走行時の速度低下を抑えて走行距離を延ばすことができるようにしている。
【0047】
つまり、自動変速機構3をニュートラル状態にする場合、自動変速機構3の全ての摩擦係合要素を解放せずに、一部の摩擦係合要素を締結させたままにしても実現することができる。
【0048】
惰性走行時において、出力軸30Bと一体回転する回転系のイナーシャが大きいほど、車両の速度低下を抑えることができ、車両の走行距離を延ばすことができる。
【0049】
本実施形態の場合、上記のように、第1クラッチ(第1摩擦係合要素)K81,第2クラッチ(第2摩擦係合要素)K27,第3クラッチ(第3摩擦係合要素)K38,第1ブレーキ(第4摩擦係合要素)B05,第2ブレーキ(第5摩擦係合要素)B06,第3ブレーキ(第6摩擦係合要素)B08の6つの摩擦係合要素を備え、これらの摩擦係合要素のうちの3つを締結し残りを解放することによって各変速段を達成する。
【0050】
図2に示すように、自動変速機構3は、各摩擦係合要素の全てを解放すると、入力回転メンバ(第1回転メンバ)M1と、出力回転メンバ(第2回転メンバ)M2と、第1中間回転メンバ(第3回転メンバ)M3と、第2中間回転メンバ(第4回転メンバ)M4と、第3中間回転メンバ(第5回転メンバ)M5と、第4中間回転メンバ(第6回転メンバ)M6と、第5中間回転メンバ(第7回転メンバ)M7と、第6中間回転メンバ(第8回転メンバ)M8と、の各回転メンバに分けることができる。なお、回転メンバとは、常時同一回転で連れ回る1以上の回転要素を含むグループを言う。
【0051】
このうち、入力回転メンバ(第1回転メンバ)M1は、入力軸30Aと、サンギヤ31Sと、キャリア34Cと、第1クラッチK81の一方の要素(摩擦係合要素の互いに係合する各要素については、メンバとも言う)とを含んで構成される。
出力回転メンバ(第2回転メンバ)M2は、出力軸30Bと、キャリア33Cと、第2クラッチK27の一方の要素とを含んで構成される。
【0052】
第1中間回転メンバ(第3回転メンバ)M3は、中間軸30Dと、リングギヤ32Rと、サンギヤ33Sと、サンギヤ34Sと、第3クラッチK38の一方の要素とを含んで構成される。
第2中間回転メンバ(第4回転メンバ)M4は、中間軸30Cと、リングギヤ31Rと、キャリア32Cとを含んで構成される。
【0053】
第3中間回転メンバ(第4回転メンバ)M5は、サンギヤ32Sと、第1ブレーキB05の一方の要素(回転側要素)とを含んで構成される。
第4中間回転メンバ(第8回転メンバ)M6は、リングギヤ33Rと、第2ブレーキB06の一方の要素(回転側要素)とを含んで構成される。
【0054】
第5中間回転メンバ(第7回転メンバ)M7は、リングギヤ34Rと、第2クラッチK27の他方の要素とを含んで構成される。
第6中間回転メンバ(第8回転メンバ)M8は、キャリア31Cと、第1クラッチK81の他方の要素と、第3クラッチK38の他方の要素と、第3ブレーキB08の一方の要素(回転側要素)とを含んで構成される。
【0055】
なお、第1ブレーキB05の他方の要素、第2ブレーキB06の他方の要素、第3ブレーキB08の他方の要素は、いずれもトランスミッションケース3Aに固定される固定要素である。
【0056】
自動変速機構3の全ての摩擦係合要素を何れも解放すると、出力回転メンバM2は他の回転メンバに対して独立して回転するので、出力回転メンバM2自体のイナーシャのみが走行速度の低下抑制に寄与する。
【0057】
入力回転メンバM1と出力回転メンバM2との動力伝達を遮断して自動変速機構3をニュートラル状態にしつつ、中間回転メンバM3〜M8の少なくとも何れを出力回転メンバM2と動力伝達状態とすれば、出力回転メンバM2と動力伝達状態となる中間回転メンバのイナーシャも走行速度の低下抑制に寄与し、車速低下を一層抑制できる。
【0058】
そこで、ニュートラル走行制御部10Bは、ニュートラル走行制御を実施するときに、出力回転メンバM2と中間回転メンバM3〜M8の少なくとも何れかとを動力伝達状態とするニュートラルパターン(ニュートラル締結パターン)を選択する。
【0059】
[3.1.1.ニュートラルパターン]
図4に示すパターン1〜13のように、6つの摩擦係合要素のうちの2つのみを締結し残りを解放することによって、自動変速機構3をニュートラル状態にし、且つ、出力軸30Bと一体回転する回転系のイナーシャを増大できるニュートラルパターンが達成される。
【0060】
このように、変速機構をニュートラル状態にし、且つ、出力軸30Bと一体回転する回転系のイナーシャを増大できるニュートラルパターンは、変速機構の構成(スケルトン)に応じて、そのプラネタリギヤ機構の共線図から特定することができる。
【0061】
つまり、入力軸回転速度に対して出力軸回転速度(出力軸回転数)Noutが一意的に決まるかどうかを、共線図を用いて判定することができ、この判定から、自動変速機構3がニュートラルとなるかどうかを判定することができる。
【0062】
本実施形態の自動変速機構3の構成(スケルトン)の場合、6つの摩擦係合要素のうちの2つのみを締結し残りを解放するパターンは、(=15パターン)となるが、15パターンのうち、インターロック状態となるパターンが二つあるため、図4に示すように、自動変速機構3がニュートラルとなるのがパターン1〜13の13パターンとなる。
【0063】
なお、自動変速機構3の回転要素のイナーシャをより有効に利用する観点からは、6つの摩擦係合要素のうちの2つのみを締結し残りを解放することが有効であるが、6つの摩擦係合要素のうちの1つのみを締結し残りを解放することでも自動変速機構3の回転要素のイナーシャを有効に利用することはできる。
【0064】
図4に示すように、パターン1は、第1クラッチK81と第1ブレーキB05のみを締結するパターンであり、パターン2は、第1クラッチK81と第3クラッチK38のみを締結するパターンであり、パターン3は、第1クラッチK81と第2クラッチK27のみを締結するパターンであり、パターン4は、第1クラッチK81と第2ブレーキB06のみを締結するパターンである。
【0065】
パターン5は、第1ブレーキB05と第3ブレーキB08のみを締結するパターンであり、パターン6は、第1ブレーキB05と第3クラッチK38のみを締結するパターンであり、パターン7は、第1ブレーキB05と第2クラッチK27のみを締結するパターンであり、パターン8は、第1ブレーキB05と第2ブレーキB06のみを締結するパターンである。
【0066】
パターン9は、第3ブレーキB08と第3クラッチK38のみを締結するパターンであり、パターン10は、第3ブレーキB08と第2クラッチK27のみを締結するパターンであり、パターン11は、第3ブレーキB08と第2ブレーキB06のみを締結するパターンである。
【0067】
パターン12は、第3クラッチK38と第2クラッチK27のみを締結するパターンであり、パターン13は、第3クラッチK38と第2ブレーキB06のみを締結するパターンである。
【0068】
これらのパターン1〜13は、それぞれ出力軸30Bと一体回転する回転メンバが異なるため、そのイナーシャの大きさも異なる。そこで、車速に対する各パターン1〜13でのイナーシャの大きさを検討する。
【0069】
図5は各ニュートラルパターン(パターン1〜13)における出力軸トルク(出力軸30Bのトルク)Toutを、車速Vspに比例する出力回転数Noに対応させて示すグラフである。このグラフの導出について説明する。なお、出力軸トルクToutはイナーシャに応じる。
【0070】
パターン1〜13の各ニュートラルパターン毎に、車速Vsp(出力回転数No)毎の各回転メンバM1〜M8の回転速度ωを各プラネタリギヤ機構の共線図の関係から導出する。
【0071】
例えば、本実施形態の図2に示すスケルトンの場合におけるパターン1であれば、下記の表1のようになる。これをパターン2〜13に対しても作成する。
【表1】
【0072】
各回転メンバM1〜M8の回転速度ωに基づき、所定のニュートラルパターン且つ所定車速での各摩擦締結要素の差回転Δωを導出する。
【0073】
さらに、上記差回転Δωに基づき、所定のニュートラルパターン且つ所定車速での解放中の各摩擦締結要素の引き摺りトルクTclを導出する。
【0074】
ここで、引き摺りトルクTclの導出について説明する。
各摩擦締結要素の引き摺りトルクTclは、図6に示すように、ディスク間の差回転数Δωに応じて決まる。
【0075】
つまり、差回転数Δωが小さい領域では油のみの摩擦係数μoilに応じた引き摺りトルクTclとなり、差回転数Δωが大きくなると油と空気との二層流の摩擦係数μoil・airに応じた引き摺りトルクTclとなり、差回転数Δωが更に大きくなると空気のみの摩擦係数μairに応じた引き摺りトルクTclとなる。
【0076】
ここで、この引き摺りトルクTclを考慮して、トルクの釣り合いの式(イナーシャ×角加速度=出力軸トルクTout)により各回転メンバM1〜M8における運動方程式を立てると、一般式は以下の式(a)のようになり、各回転メンバM1〜M8の個別の式は以下の式(a1)〜(a8)のようになる。
【0077】
【数1】
【0078】
なお、IMiは各回転メンバM1〜M8のイナーシャ、ωMi´は各回転メンバM1〜M8の角加速度、ΣTMiEは各回転メンバM1〜M8の各回転要素の回転トルクの合計、ΣTは解放中の摩擦締結要素の引き摺りトルクTclによる損失合計、ΣTetcは変速機構への入力トルクや車両の走行抵抗等のその他のトルクである。また、+−の符号は、出力軸30Bへ加わるトルクを+、逆方向のトルクを−としている。ただし、もし+−が逆である場合は計算結果として−の値が算出されるだけなので支障はない。
【0079】
【数2】
【0080】
式(a1)は第1回転メンバM1に関し、式(a2)は第2回転メンバM2に関し、式(a3)は第3回転メンバM3に関し、式(a4)は第4回転メンバM4に関し、式(a5)は第5回転メンバM5に関し、式(a6)は第6回転メンバM6に関し、式(a7)は第7回転メンバM7に関し、式(a8)は第8回転メンバM8に関している。
【0081】
式(a1)〜(a8)において、Tk81は第1クラッチK81のトルクを、Tk27は第2クラッチK27のトルクを、Tk38は第3クラッチK38のトルクをそれぞれ示す。Tb05は第1ブレーキB05のトルクを、Tb06は第2ブレーキB06のトルクを、Tb08は第3ブレーキB08のトルクをそれぞれ示す。Ttは変速機構への入力トルクを、Tsは車両の走行抵抗をそれぞれ示す。
【0082】
また、T1は第1プラネタリギヤ機構(PG1)31のリングギヤ31Rのトルクを、T2は第2プラネタリギヤ機構(PG2)32のリングギヤ32Rのトルクを、T3は第3プラネタリギヤ機構(PG3)33のリングギヤ33Rのトルクを、T4は第4プラネタリギヤ機構(PG4)34のリングギヤ34Rのトルクをそれぞれ示す。
T1〜T4に乗算されるa1〜a4,b1〜b4は設計値として与えられる係数である。
【0083】
また、各プラネタリギヤ機構の共線図から次式(b)が求まる。
【数3】
また、上式(b)を時間微分すると次式(c)となる。
【数4】
【0084】
ここで、第1プラネタリギヤ機構(PG1)31において、上式(c)を立てると、次式(c1)となり、第2プラネタリギヤ機構(PG2)32において、上式(c)を立てると、次式(c2)となり、第3プラネタリギヤ機構(PG3)33において、上式(c)を立てると、次式(c3)となり、第4プラネタリギヤ機構(PG4)34において、上式(c)を立てると、次式(c4)となる。
【0085】
【数5】
【0086】
式(c1)〜(c4)において、ωM1´は第1回転メンバM1の角加速度を、ωM2´は第2回転メンバM2の角加速度を、ωM3´は第3回転メンバM3の角加速度を、ωM4´は第4回転メンバM4の角加速度を、ωM5´は第5回転メンバM5の角加速度を、ωM6´は第6回転メンバM6の角加速度を、ωM7´は第7回転メンバM7の角加速度を、ωM8´は第8回転メンバM8の角加速度をそれぞれ示す。
【0087】
上記の方程式(a1)〜(a8)及び(c1)〜(c4)を解くことにより、所定のニュートラルパターン且つ所定車速Vspでの出力軸トルクToutを算出することができる。
このように、各ニュートラルパターンで、各車速Vsp毎の出力軸トルクToutが算出できるので図5に示すグラフを作成することができる。
【0088】
さらに、設計値から計算的に又は実験的に、各回転メンバM1〜M8の許容限度回転速度(回転が許容される最大回転速度)を決定できるので、角速度ωがこの許容限度回転速度を超えている車速(出力回転数)Noについてはグラフにプロットしないようにする。
これにより、許容限度回転速度を考慮した出力軸トルクToutのグラフを導出することができる。
【0089】
[3.1.2.ニュートラルパターンの選択]
図5に示すように、例えばパターン13は、出力軸トルクToutは大きいが、許容限度回転速度となる出力回転数(図5中にL1〜L6で示す、以下、許容限度回転数とも言う)Nolimが図5にL2で示すように低い。許容限度回転数Nolimが低い場合は、車速が低くなければ過回転を生じるためニュートラルパターンとして採用することができない。
【0090】
これに対して、例えばパターン8は、出力軸トルクToutはあまり大きくはないが、許容限度回転数Nolimが高い。したがって、パターン8は、高車速域でも過回転を生じることなく、回転メンバのイナーシャを車速維持に利用することができる。
【0091】
ただし、図5には車速Vspが所定車速未満の通常の高速領域までを示しており、所定車速以上の超高速領域については省略している。この車速Vspが所定車速以上の超高速領域においては、パターン8では過回転を生じる。これに対して、例えばパターン7は、出力軸トルクToutはパターン8よりも低いが、許容限度回転数Nolimがパターン8よりも高く、超高速領域でも過回転を生じることがない。
【0092】
そこで、本実施形態では、車速Vspが所定車速未満の場合は、ニュートラルパターンとして、この高車速域でも過回転を生じることがないパターン8を1つだけ採用することとしている。このように、ニュートラルパターンを1つに固定するのは、ニュートラルパターンの変更を行わないことにより、ニュートラルパターン変更時に発生するエネルギー損失の影響をなくすためである。
【0093】
パターン8は、所定車速未満の全車速域で変速機の許容限度回転速度を超えないパターンのうち、出力軸トルクが最も高くなるパターンである。複数の中間回転メンバを出力回転メンバM2と連れ回りさせるパターンは、出力軸トルクが大きくなるので、出力軸トルクが最も高くなるパターンは、通常この複数の中間回転メンバを出力回転メンバM2と連れ回りさせるパターンとなる。
【0094】
つまり、パターン8の場合、第1ブレーキB05と第2ブレーキB06との2つを締結するため、出力回転メンバ(第2回転メンバ)M2と一緒に、比較的質量のある第3中間回転メンバ(第3回転メンバ)M3及び第4中間回転メンバ(第4回転メンバ)M4の複数の回転メンバが連れ回るため、回転メンバM3,M4のイナーシャが車速維持に寄与することになり、比較的高い出力軸トルクToutとなる。
【0095】
一方、車速Vspが所定車速以上の場合は、有段変速機の保護のため、例えばパターン7のように許容限度回転数Nolimが高くなるパターンを選択する。つまり、車速Vspが所定車速以上になったら、出力軸トルクToutは低くなっても許容限度回転速度の高いパターンを選択する。また、車速Vspが更に高速になったら、出力軸トルクToutは低くなってもより許容限度回転速度の高いパターンを選択する。選択するパターンは、許容限度回転速度よりも高いパターンであれば、ニュートラルパターンであっても、前進走行用のパターンであっても良い。また、ニュートラルパターンを選択する場合は、例えば、締結要素を全て解放するニュートラルパターン、締結要素を1つ締結するニュートラルパターン、締結要素を2つ締結するニュートラルパターン等を選択することができる。
【0096】
[4.作用及び効果]
本実施形態に係る車両の制御装置によれば、ニュートラル走行制御部10Bは、車両の走行中に入力回転メンバM1と出力回転メンバM2との間を動力遮断状態とするニュートラル走行制御を実施するときに、出力回転メンバM2と中間回転メンバM3〜M8の少なくとも何れかとを動力伝達状態とするニュートラルパターンを選択するので、中間回転メンバのイナーシャが出力回転メンバM2のイナーシャに加わり出力軸30Bに作用するイナーシャが増大するので、出力軸トルク(出力軸30Bにかかる慣性力)Toutが増して惰性走行距離を延ばすことができ、燃費向上に寄与する。
【0097】
また、本実施形態では、車速Vspが所定車速未満の場合は、ニュートラルパターンとして、この高車速域でも過回転を生じることがないパターン8を1つだけ採用し、ニュートラルパターンの変更を行わないので、ニュートラルパターン変更時に発生するエネルギー損失の影響をなくすことができる。
【0098】
また、このとき選択するパターン8は、所定車速未満の全車速域で変速機の許容限度回転速度を超えないパターンのうち、出力軸トルクが最も高くなるパターンであるので、出力軸トルクToutをより増大させることで惰性走行距離をより延ばすことができる。
【0099】
特に、パターン8のように、複数の中間回転メンバを出力回転メンバM2と連れ回りさせるパターンは、出力軸トルクToutを増大させるうえで有効であり、惰性走行距離を延ばし易い。つまり、出力回転メンバM2と連れ回りさせる回転メンバの数を増やすことにより、出力軸30Bに加わるイナーシャを増大させて惰性走行距離をより延ばすことができる。
【0100】
一方、車速Vspが所定車速以上の場合は、ニュートラルパターンとして、許容限度回転数Nolimが高くなるパターンを車速に応じて選択するので、高速走行域でも、変速機の過回転を防止して変速機を保護しながら、出力軸トルクToutを増大させ、惰性走行距離を延ばすことができる。
【0101】
また、本実施形態のように、出力軸トルクToutを、イナーシャだけでなくトルク損失(引き摺りトルクTclによるロス(フリクションロス))や、走行抵抗、メカロス等も考慮して算出し、これに基づいてニュートラルパターンを採用することで、惰性走行距離を最も長くしうる組み合わせを選択することができ、惰性走行距離をより延ばすことができる。
【0102】
なお、本実施形態に係る自動変速機のスケルトンの場合、図7に示すように、第2ブレーキB06を締結すると、太線で示すように第3回転メンバM3が出力回転メンバ(第2回転メンバ)M2と一体回転し、比較的イナーシャの大きい第3回転メンバM3のイナーシャを用いることができ有効である。このため、第2ブレーキB06を締結すると共に、他の摩擦係合要素を更に締結して、回転メンバのイナーシャを有効に用いることが一層有効である。
【0103】
[5.その他]
以上、実施形態を説明したが、上記実施形態は本発明の実施の態様の一例であり、例えば、有段の自動変速機のスケルトンは図2に示すものに限定されない。
【0104】
また、上記実施形態では、ニュートラルパターンとして、複数の摩擦係合要素のうちの2つのみを締結し残りを解放するパターンを採用し、出力回転メンバM2と連れ回りさせる回転メンバの数を増やすようにしているが、例えば複数の摩擦係合要素のうちの1つのみを締結し残りを解放するパターンを採用してもよく、自動変速機のスケルトンによっては、複数の摩擦係合要素のうちの締結する数を1つ又は2つ以外にしてもよい。
【符号の説明】
【0105】
1 エンジン
2 トルクコンバータ
3 有段の自動変速機構
4 自動変速機(有段変速機)
5 動力伝達機構
5a 差動機構
6 駆動輪
7 油圧回路ユニット
10 自動変速機コントローラ(変速機制御手段)
10A 変速制御部(変速制御手段)
10B ニュートラル走行制御部(制御部)
11 インヒビタスイッチ
12 車速開度センサ
13 アクセル開度センサ
14 ブレーキスイッチ
100 エンジンコントローラ(エンジン制御手段)
31 第1プラネタリギヤ機構(PG1)
32 第2プラネタリギヤ機構(PG2)
33 第3プラネタリギヤ機構(PG3)
34 第4プラネタリギヤ機構(PG4)
31S〜34S サンギヤ
31C〜34C キャリア
31R〜34R リングギヤ
M1 入力回転メンバ(第1回転メンバ)
M2 出力回転メンバ(第2回転メンバ)
M3 第1中間回転メンバ(第3回転メンバ)
M4 第2中間回転メンバ(第4回転メンバ)
M5 第3中間回転メンバ(第5回転メンバ)
M6 第4中間回転メンバ(第6回転メンバ)
M7 第5中間回転メンバ(第7回転メンバ)
M8 第6中間回転メンバ(第8回転メンバ)
K81 第1クラッチ(第1摩擦係合要素)
K27 第2クラッチ(第2摩擦係合要素)
K38 第3クラッチ(第3摩擦係合要素)
B05 第1ブレーキ(第4摩擦係合要素)
B06 第2ブレーキ(第5摩擦係合要素)
B08 第3ブレーキ(第6摩擦係合要素)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7