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特開2017-227312表面処理用治具、及び車輪用軸受装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-227312(P2017-227312A)
(43)【公開日】2017年12月28日
(54)【発明の名称】表面処理用治具、及び車輪用軸受装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/64 20060101AFI20171201BHJP
   F16C 43/04 20060101ALI20171201BHJP
   F16C 19/18 20060101ALI20171201BHJP
   B60B 35/02 20060101ALN20171201BHJP
【FI】
   F16C33/64
   F16C43/04
   F16C19/18
   B60B35/02 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-125567(P2016-125567)
(22)【出願日】2016年6月24日
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デーアス ベーバリ
【テーマコード(参考)】
3J117
3J701
【Fターム(参考)】
3J117HA02
3J117HA04
3J117HA10
3J701AA03
3J701AA32
3J701AA43
3J701AA54
3J701AA62
3J701BA73
3J701BA77
3J701DA05
3J701FA08
3J701FA44
3J701GA03
(57)【要約】
【課題】本発明によれば、表面処理に要する時間を短縮し、効率よく表面処理を行うことができる表面処理用治具、及び車輪用軸受装置の製造方法を提供する。
【解決手段】表面処理用治具20は、車輪用軸受装置を構成する外輪11とハブ軸12とに表面処理をする際に用いられ、車輪用軸受装置を組み立てたときと同様の相対的な配置で外輪11とハブ軸12とを位置付ける治具部材21を備えている。車輪用軸受装置10の製造方法は、表面処理用治具20を用いて、車輪用軸受装置を組み立てたときと同様の相対的な配置で外輪11とハブ軸12とを位置付ける工程と、表面処理用治具によって前記配置に位置付けられた外輪11及びハブ軸12に皮膜を形成する皮膜形成工程とを含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪用軸受装置の外輪とハブ軸とを表面処理する際に用いられ、車輪用軸受装置を組み立てたときと同様の相対的な配置で前記外輪と前記ハブ軸とを位置付ける治具部材を備えている、表面処理用治具。
【請求項2】
前記治具部材が、前記外輪と前記ハブ軸との径方向の間に挿入される、請求項1に記載の表面処理用治具。
【請求項3】
前記治具部材が、前記外輪及び前記ハブ軸、或いは前記外輪又は前記ハブ軸に形成された、前記車輪用軸受装置の転動体が転動する軌道面、シール部材を嵌合させるシール嵌合面、及び前記シール部材が摺接するシール面の少なくとも一つを被覆する被覆面を有している、請求項2に記載の表面処理用治具。
【請求項4】
前記治具部材が、中空形状に形成され、内部に気体が導入されることによって膨張し、気体が排出されることによって収縮するように構成されている、請求項2又は3に記載の表面処理用治具。
【請求項5】
前記外輪と前記ハブ軸とを接続する導体からなる導電部材をさらに備えている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の表面処理用治具。
【請求項6】
車輪用軸受装置の外輪とハブ軸とに皮膜を形成する表面処理工程を含む、車輪用軸受装置の製造方法であって、
前記表面処理工程は、
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載された表面処理用治具を用いて、車輪用軸受装置を組み立てたときと同様の相対的な配置で前記外輪と前記ハブ軸とを位置付ける工程と、
前記表面処理用治具によって前記配置に位置付けられた前記外輪及び前記ハブ軸に皮膜を形成する工程と、を含むことを特徴とする、車輪用軸受装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理用治具、及び車輪用軸受装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両において、車輪を回転自在に支持するために車輪用軸受装置(ハブユニット)が用いられている。車輪用軸受装置は、車体側の懸架装置に固定される外輪と、車輪が取り付けられるハブ軸と、これら外輪とハブ軸との間に設けられている転動体とを備えている。車輪用軸受装置は、路面に近い位置に配置され、泥水に晒されるような過酷な環境で使用されるため、通常、防食のためにメッキ等の表面処理が施されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−239115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
メッキ等の表面処理は、脱脂、水洗等の前処理工程、被処理物に皮膜を形成する皮膜形成工程、乾燥等の後処理工程など、多数の工程が含まれる。特許文献1に記載の車輪用軸受装置は、外輪に対して表面処理を行い、同様に、ハブ軸に対しても個別に表面処理を行っているため、表面処理に要する時間が非常に長くなる。そのため、製造工程のうち表面処理の占める割合が大きくなっており、表面処理に要する時間を削減することが求められている。
【0005】
一方、外輪及びハブ軸には、転動体の軌道面、シール部材を嵌合させるシール嵌合面、シール部材のリップ部が当接するシール面等が設けられているが、従来は、外輪及びハブ軸の全体に対して表面処理が行われるため、軌道面、シール嵌合面、及びシール面(以下、軌道面等ともいう)にも皮膜が形成される。しかし、軌道面等は、所定の寸法精度を満たすために表面処理後に研削による機械加工が必要であるので、軌道面等に対する表面処理は不要な処理となり、メッキ液等の皮膜剤を無駄に消費することにもなる。
【0006】
本発明は、表面処理に要する時間を削減し、製造コストの低減を図ることができる表面処理用治具、及び車輪用軸受装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の表面処理用治具は、車輪用軸受装置の外輪とハブ軸とを表面処理する際に用いられ、車輪用軸受装置を組み立てたときと同様の相対的な配置で前記外輪と前記ハブ軸とを位置付ける治具部材を備えているものである。
このような表面処理用治具を用いて表面処理を行うことによって、外輪とハブ軸とを一体にした状態で同時に表面処理を行うことができる。そのため、表面処理に要する処理時間を削減することができ、製造コストの低減を図ることができる。
【0008】
(2)前記治具部材は、前記外輪と前記ハブ軸との径方向の間に挿入されることが好ましい。
このような構成によって、外部に露出する外輪及びハブ軸の表面に対して、表面処理用治具が障害となることなく好適に表面処理を行うことができる。また、外部に露出する外輪及びハブ軸の表面に対して、好適な箇所だけに表面処理を行うことができる。
【0009】
(3)前記治具部材は、前記外輪及び前記ハブ軸、或いは前記外輪又は前記ハブ軸に形成された、前記車輪用軸受装置の転動体が転動する軌道面、シール部材を嵌合させるシール嵌合面、前記シール部材が摺接するシール面の少なくとも一つを被覆する被覆面を有していることが好ましい。
このような構成によって、表面処理後に研削のような機械加工が必要な部分に対して皮膜が形成されないようにすることができ、不要な皮膜の形成及び皮膜剤の無駄な消費を抑制することができる。
【0010】
(4)前記治具部材は、中空形状に形成され、内部に気体を導入することによって膨張し、気体を排出することによって収縮するように構成されていてもよい。
このような構成によって、外輪とハブ軸との間に治具部材を挿入する際には治具部材を収縮させ、外輪とハブ軸とを所定の相対的な配置に位置付ける際には治具部材を膨張させることで、これらの各作業を容易に行うことができる。また、治具部材を膨張させることで、外輪とハブ軸とに治具部材を圧接することができ、外輪とハブ軸とを強固に連結することができる。
【0011】
(5)前記連結用治具は、前記外輪と前記ハブ軸とを接続する導体からなる導電部材をさらに備えていることが好ましい。
このような構成によって、電気メッキ等の電気エネルギーを利用した表面処理を行う場合に、外輪及びハブ軸の一方に電流を流すことによって他方にも電流を流すことができ、外輪及びハブ軸の双方に対して好適に皮膜を形成することができる。
【0012】
(6)本発明は、車輪用軸受装置の外輪とハブ軸とに皮膜を形成する表面処理工程を含む、車輪用軸受装置の製造方法であって、
上記(1)〜(5)のいずれか1つに記載された表面処理用治具を用いて、車輪用軸受装置を組み立てたときと同様の相対的な配置で前記外輪と前記ハブ軸とを位置付ける工程と、
前記表面処理用治具によって前記配置に位置付けられた前記外輪及び前記ハブ軸に皮膜を形成する工程と、を含むことを特徴とする。
このような製造方法により、表面処理に要する工程数、処理時間を削減することができ、製造コストの低減を図ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、表面処理に要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】車輪用軸受装置を示す断面図である。
図2】第1の実施形態に係る表面処理用治具を示す断面図である。
図3】第2の実施形態に係る表面処理用治具を示す断面図である。
図4】第3の実施形態に係る表面処理用治具を示す断面図である。
図5】表面処理工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、車輪用軸受装置を示す断面図である。なお、図1は、一例として従動輪用の軸受装置を示している。
車輪用軸受装置(ハブユニット)10は、例えば自動車の車体側の懸架装置に取り付けられ、車輪を回転自在に支持するものである。車輪用軸受装置10は、外輪11と、ハブ軸12と、内輪部材67と、転動体13と、保持器14と、シール15,16と、を備えている。なお、以下の説明において、図1の右側を車両インナ側(車体側)ともいい、図1の左側を車両アウタ側(車輪側)ともいう。
【0016】
外輪11は、円筒状の部材であり、例えば機械構造用炭素鋼により製造されている。外輪11は、円筒形状である外輪本体61と、この外輪本体61の外周面から径方向外側に延びるフランジ部62とを有している。フランジ部62は、車体側部材であるナックル63に固定され、これにより外輪11を含む車輪用軸受装置10全体がナックル63に装着される。
外輪11の内周面には、車両アウタ側の外輪軌道面11aと、車両インナ側の外輪軌道面11bとが形成されている。
【0017】
ハブ軸12は、軸本体部65と、フランジ部66とを有している。これらは、例えば機械構造用炭素鋼により製造されている。軸本体部65は軸方向に長い軸部材である。軸本体部65の車両インナ側には小径部65bが形成され、車両アウタ側には、小径部65bよりも外径が大きい大径部65aが形成されている。フランジ部66は、軸本体部65の車両アウタ側から径方向外側に延びており、円環形状に形成されている。フランジ部66には、図外の車輪及びブレーキロータが取り付けられる。
【0018】
内輪部材67は、環状の部材であり、軸本体部65の小径部65bに嵌合されている。また、軸本体部65の車両インナ側の端部には、径方向外側に塑性変形されたカシメ部65cが設けられており、このカシメ部65cによって、小径部65bに嵌合された内輪部材67が抜け止めされている。
【0019】
大径部65aの車両アウタ側の外周面と、内輪部材67の外周面とには、それぞれ内輪軌道面12a,67aが形成されている。
車両アウタ側の外輪軌道面11aと内輪軌道面12aとは径方向に対向し、車両インナ側の外輪軌道面11bと内輪軌道面67aとは径方向に対向しており、車両アウタ側及びインナ側それぞれの軌道面11a,12a、11b,67a間に転動体13である玉が配置されている。
【0020】
転動体(玉)13は軸方向に間隔をあけて二列に設けられており、各列の転動体(玉)13が、それぞれ環状の保持器14によって保持されている。外輪11とハブ軸12との間に転動体13が設けられることで、外輪11とハブ軸12とは同心状に配置される。そして、外輪11とハブ軸12との径方向の間には環状空間Sが形成されている。環状空間Sにおいて二列の転動体13が配置されている領域が、軸受内部となる。
【0021】
シール15,16は、外輪11の内周面と、ハブ軸12の軸本体部65の外周面との間の環状空間Sを軸方向両側から密封し、環状空間Sに対する泥水等の浸入を防止するために設けられている。シール15,16は、外輪11の軸方向両端部における内周面(シール嵌合面11c)に取り付けられたシール部材15a、16aを備える。車両アウタ側のシール部材15aは、軸本体部65とフランジ部66との境界に形成されたシール面12cに摺接する。車両インナ側のシール部材16aは、内輪部材67の外周面に嵌合されたスリンガ16bに摺接する。
【0022】
車輪用軸受装置10は、路面に近い位置に配置されるため、泥水等に晒されやすく、錆等が発生しやすい。そのため、車輪用軸受装置10の外輪11及びハブ軸12には、防錆(防食)のための表面処理が施されている。例えば、外輪11及びハブ軸12には、メッキ(電気メッキ、溶融メッキ、無電解メッキ、蒸着メッキ等)、塗装(電着塗装等)、溶射、流動浸漬等の表面処理が施されている。
【0023】
図5は、表面処理工程の一例を示している。この例では、表面処理が行われる複数の被処理物Wが、複数の吊り下げ具71を有するラック70に吊り下げられ、そのラック70が表面処理装置72に投入される。その後、脱脂や水洗等の前処理工程、メッキ等の皮膜を形成する皮膜形成工程、水洗、乾燥等の後処理工程が行われた後、ラック70が表面処理装置72から排出される。
【0024】
図1に示すように、外輪11及びハブ軸12に形成された軌道面11a,11b,12aは、所定の寸法精度が要求されるため、研削による機械加工が施された機械加工面とされている。また、外輪11の車両アウタ側及び車両インナ側の端部に形成されたシール嵌合面11cは、シール部材15a,16aを高精度で嵌合させるために研削による機械加工が施された機械加工面とされている。さらに、ハブ軸12に形成されたシール面12cも、研削による機械加工が施された機械加工面とされている。
【0025】
次に、車輪用軸受装置10の外輪11及びハブ軸12に対して表面処理を行う方法について説明する。外輪11及びハブ軸12は、互いに一体とされた状態で表面処理が行われる。具体的には、外輪11及びハブ軸12は、表面処理用治具を用いることによって所定の相対的な配置に位置付けられる。
図2は、第1の実施形態に係る表面処理用治具を示す断面図である。なお、図2においては、図1の車両アウタ側に相当する側を軸方向一方側、車両インナ側に相当する側を軸方向他方側としている。
【0026】
表面処理用治具20は、外輪11及びハブ軸12を、図1に示す組立状態と同様の相対的な配置で位置付ける。表面処理用治具20は、ゴム等の弾性変形可能な材料により形成された治具部材21からなる。治具部材21は、略円筒形状に形成された胴部22と、胴部22の軸方向一方側の端部に設けられ、円環状に形成された円環部23とを有している。
【0027】
胴部22は、ハブ軸12における大径部65aの外径と同じかやや大きい内径を有している。また、胴部22は、外輪11の内径(2つの外輪軌道面11a,11bの間の内径)と同じかやや小さい外径を有している。そして、胴部22は、外輪11とハブ軸12との径方向の間に配置される。胴部22の軸方向他方側の端部は、外輪11及びハブ軸12よりも軸方向他方側へ延びている。また、胴部22の軸方向他方側の端部は、略半球状に形成されるとともに、周方向4箇所に窓22aが形成されている。この窓22aは、吊り下げ具71(図5参照)に引っ掛けるために用いたり、外輪11とハブ軸12とを接続する導電部材を貫通させたりするために用いることができる。なお、導電部材は、電気メッキ等の電気エネルギーを利用した表面処理を行う際に外輪11とハブ軸12とを電気的に接続するために用いられ、外輪11及びハブ軸12において表面処理が不要な部分(軌道11a等)であって窓22aに可及的に近い位置に接続することができる。
【0028】
円環部23は、胴部22の軸方向一端部に一体に設けられている。円環部23は、断面形状が円形状に形成されている。円環部23の断面における円の直径は、転動体13としての玉の直径と同じかやや大きい寸法とされている。そして、円環部23は、外輪11の車両アウタ側の外輪軌道面11aと、ハブ軸12の内輪軌道面12aとの間に配置されている。また、円環部23は、その弾性力によって外輪11及びハブ軸12に密着し、圧接される。また、胴部22の内周面とハブ軸12の軸本体部65との間にくさび等を挿入してもよく、これによって、胴部22からハブ軸12の軸本体部65が離脱しないように密着力を増加させることができる。
【0029】
治具部材21の円環部23は、外輪11の外輪軌道面11a及びハブ軸12の内輪軌道面12aに密着し、外輪軌道面11a及び内輪軌道面12aを覆っているので、表面処理の際に、各軌道面11a,12aには皮膜が形成されないようになっている。つまり、治具部材21の円環部23の外面は、各軌道面11a,12aを覆ってマスキングする被覆面として機能する。各軌道面11a,12aは、表面処理後に研削等の機械加工によって表面が仕上げられるため、仮に皮膜が形成されたとしても除去されることになる。したがって、本実施形態のように、表面処理の段階で各軌道面11a,12aに皮膜を形成しないようにすることで、メッキ液等の皮膜剤を無駄に消費することがなくなり、機械加工によって不要な皮膜を除去する必要もない。
【0030】
また、外輪11とハブ軸12とが同時に表面処理されるため、両者を個別に表面処理する場合に比べて表面処理に要する工程数を少なくし、サイクルタイムを削減することができる。例えば、図5に示したように、複数の被処理物Wをラック70に吊り下げて表面処理を行う場合、ラック70に吊り下げられる被処理物Wの個数は予め定められているため、外輪11とハブ軸12とを一体とすることによって1つの吊り下げ具71に実質的に2個の被処理物Wを吊り下げることができる。これにより、サイクルタイムを約半分にすることができ、表面処理に要する時間を大幅に短縮して、車輪用軸受装置の製造コストの低減を図ることができる。
【0031】
外輪11及びハブ軸12の表面処理が終了した後、外輪11及びハブ軸12から表面処理用治具20が取り外され、両者が分解される。その後、外輪軌道面11a,11b、内輪軌道面12a、シール嵌合面11c、シール面12c等に対して研削による機械加工が行われる。そして、外輪11及びハブ軸12をそれぞれ完成させた後、これらに転動体13,保持器14,内輪部材67等が組み付けられ、カシメ部65cによって内輪部材67が固定されることによって、図1に示すような車輪用軸受装置10が製造される。
【0032】
なお、本実施形態において、治具部材21の胴部22は、外輪11の内周面及びハブ軸12の外周面に密着し、弾性力によってこれらに圧接されてもよい。この場合、治具本体21によって外輪11及びハブ軸12を強固に連結することができる。
【0033】
[第2の実施形態]
図3は、第2の実施形態に係る表面処理用治具を示す断面図である。なお、図3は、駆動輪用の軸受装置の外輪11及びハブ軸12を表面処理用治具で連結する例を示している。
本実施形態の表面処理用治具20は、第1の治具部材41と第2の治具部材42との2部材で構成されている。第1の治具部材41は、ゴム等の弾性材料によって中空形状に形成されている。また、第1の治具部材41には、空気(気体)の注入口41aが設けられている。第1の治具部材41の内部43には、注入口41aを介して空気の導入と排出とを行うことができる。そして、空気を導入することによって第1の治具部材41を膨張させ、空気を排出することによって第1の治具部材41を収縮させることができる。
【0034】
膨張された第1の治具部材41は、外輪11の内周面のうち、外輪軌道面11a,11b、及び、軸方向他方側のシール嵌合面11cに密着し、圧接されている。また、第1の治具部材41は、ハブ軸12の内輪軌道面12a、大径部65aの外周面、及び小径部65bの外周面に密着し、圧接されている。
【0035】
第1の治具部材41は、収縮させた状態で外輪11とハブ軸12との間に挿入される。そして、挿入後に膨張させることによって、外輪11及びハブ軸12に密着し、圧接される。これにより、第1の治具部材41によって外輪11及びハブ軸12が連結される。
また、第1の治具部材41の外面は、外輪11における外輪軌道面11a,11b及びシール嵌合面11c、ハブ軸12における内輪軌道面11aを覆ってマスキングする被覆面を構成している。
【0036】
第2の治具部材42は、ゴム等の弾性材料により形成され、外輪11のシール嵌合面11cと、ハブ軸12のシール面12cとの間に挿入され、各面11c,12cに密着し、圧接される。したがって、第2の治具部材42によっても、外輪11とハブ軸12とが連結される。また、第2の治具部材42の外面は、シール嵌合面11c及びシール面12cを覆ってマスキングする被覆面を構成している。
【0037】
本実施形態の表面処理用治具20は、第1の治具部材41が膨張・収縮するため、外輪11とハブ軸12との間への第1の治具部材41の挿入を容易に行うことができ、また、第1の治具部材41を外輪11とハブ軸12とに強く密着させて外輪11とハブ軸12とを強固に連結することができる。
また、第1の治具部材41及び第2の治具部材42は、外輪軌道面11a,11b、内輪軌道面12a、シール嵌合面11c、及びシール面12cに対して表面処理の皮膜が形成されるのを防止している。したがって、皮膜剤が無駄に消費されることがなく、これらの各面に形成された不要な皮膜を機械加工によって除去する必要もない。
【0038】
また、本実施形態の表面処理用治具20を用いた場合、外輪11の内周面の略全体、及びハブ軸12の軸本体部65の外周面の略全体が、表面処理用治具20によって覆われるため、軌道面11a,11b,12a、シール嵌合面11c、シール面12c等に対して研削等の機械加工を行った後に表面処理を行うことも可能となる。研削等の機械加工は、被加工物をシュー等の支持体によって支持した状態で行われるため、当該支持体が皮膜に接触すると、皮膜の損傷や剥がれの原因となる。本実施形態では、機械加工を行った後に表面処理を行うことも可能となるので、このような問題を解消することが可能となる。
【0039】
なお、第2の治具部材42は、例えば図1に示すシール15と同様の形態に形成され、外輪11とハブ軸12との間への皮膜剤の浸入を阻止する構成であってもよい。
【0040】
[第3の実施形態]
図4は、第3の実施形態に係る表面処理用治具20を示す断面図である。
本実施形態の表面処理用治具20は、ゴム等の弾性材料により形成された第1の治具部材51と第2の治具部材52とを有している。第1の治具部材51は、円環状に形成され、断面が略長方形状に形成されている。そして、第1の治具部材51は、外輪11の軸方向他方側のシール嵌合面11cと、ハブ軸12の軸本体部65における小径部65bの軸方向他方側の外周面との間に配置され、これらの面に密着している。
【0041】
第2の治具部材52は、第2の実施形態における第2の治具部材42と同様の構成とされており、外輪11の軸方向一方側のシール嵌合面11cと、ハブ軸12のシール面12cとの間に配置され、これらの面に密着し、圧接される。そして、外輪11とハブ軸12とは、第1及び第2の治具部材51,52によって互いに連結されている。また、第1及び第2の治具部材51,52の軸方向の間は、空洞とされているが、第1及び第2の治具部材51,52によって外輪11とハブ軸12との間が密封されているため、当該間への皮膜液の浸入は阻止される。
【0042】
また、本実施形態の表面処理用治具20は、電気エネルギーを利用した表面処理、例えば電気メッキを行うために、第1の治具部材51と第2の治具部材52との間の環状空間に、導電部材53が配置されている。この導電部材53は、鋼板等の導体からなり、円環状に形成されている。そして、導電部材53の外周面が外輪11の内周面に接触し、内周面がハブ軸12の外周面に接触している。したがって、外輪11とハブ軸12とが電気的に接続されている。そのため、外輪11又はハブ軸12の一方に電流を流すことによって他方にも電流が流れ、外輪11及びハブ軸12を電極として表面処理を行うことができる。なお、本実施形態の導電部材53は、例えば、第1及び第2の実施形態において電気メッキ等を行う場合に適用することができる。
【0043】
なお、本実施形態において、第1の治具部材51と第2の軸部材52との間には、例えば、第2の実施形態で示したような膨張・収縮が可能な治具部材41がさらに挿入されていてもよい。
【0044】
以上のとおり開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。つまり、本発明の表面処理用治具及び車輪用軸受装置の製造方法は、上記に説明した形態に限らず本発明の範囲内において適宜変更することができる。
例えば、図1に示す形態では、転動体13を玉とした場合について説明したが、円すいころ等であってもよい。
【符号の説明】
【0045】
10:車輪用軸受装置、11:外輪、11a:外輪軌道面、11b:外輪軌道面、11c:シール嵌合面、12:ハブ軸、12a:内輪軌道面、12c:シール面、13:転動体、15a:シール部材、16a:シール部材、20:表面処理用治具、21:治具部材、41:第1の治具部材、42:第2の治具部材、51:第1の治具部材、52:第2の治具部材、53:導電部材
図1
図2
図3
図4
図5