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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-227411(P2017-227411A)
(43)【公開日】2017年12月28日
(54)【発明の名称】空調制御装置および方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/02 20060101AFI20171201BHJP
【FI】
   F24F11/02 S
   F24F11/02 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-125290(P2016-125290)
(22)【出願日】2016年6月24日
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】中島 寛
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AA20
3L260BA01
3L260BA41
3L260BA73
3L260CA03
3L260CA04
3L260EA07
3L260EA09
3L260HA06
(57)【要約】
【課題】皮膚温度に基づき空調制御する際に、複数の在室者が存在する場合でも良好な空調制御を実現する。
【解決手段】温度変化監視部14が、収集された皮膚温度の変化に対応する空調制御を開始する制御点Q1を検出し、空調制御部15が、予め設定した空調制御期間において、在室者のうち所定人数分に関する制御点Q1の検出に応じて、在室者の皮膚温度の変化傾向を緩和する方向への空調制御を開始するようにしたものである。より具体的には、空調制御部15が、皮膚温度の変化を示す傾きRが、予め設定された変化確認範囲Rc内から平坦確認範囲Rf内まで変化した時点を制御点Q1として検出する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の在室者から検出した皮膚温度に基づいて、空調空間の空調制御を行う空調制御装置であって、
前記在室者のそれぞれから検出した皮膚温度を逐次収集する皮膚温度収集部と、
前記在室者のそれぞれについて、収集された前記皮膚温度の変化を監視して、前記皮膚温度の変化に対応する空調制御を開始する制御点を検出する温度変化監視部と、
予め設定した空調制御期間において、前記在室者のうち所定人数分に関する前記制御点の検出に応じて、前記在室者の前記皮膚温度の変化傾向を緩和する方向への空調制御を開始する空調制御部と
を備えることを特徴とする空調制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の空調制御装置において、
前記温度変化監視部は、前記皮膚温度の変化を示す傾きが、予め設定された変化確認範囲内から平坦確認範囲内まで変化した時点を制御点として検出することを特徴とする空調制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の空調制御装置において、
前記温度変化監視部は、前記皮膚温度の変化を示す傾きが、一定の判定期間にわたりしきい値以上となった時点を制御点として検出することを特徴とする空調制御装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の空調制御装置において、
前記所定人数は、前記空調空間に存在する全在室者に対する所定人数比率により求められる人数からなることを特徴とする空調制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載の空調制御装置において、
前記空調制御部は、予め設定した空調制御期間において、前記在室者のうち最初の前記制御点の検出に応じて、所定の待機時間だけ経過した後、前記在室者の前記皮膚温度の変化傾向を緩和する方向への空調制御を開始することを特徴とする空調制御装置。
【請求項6】
複数の在室者から検出した皮膚温度に基づいて、空調空間の空調制御を行う空調制御装置で用いられる空調制御方法であって、
皮膚温度収集部が、前記在室者のそれぞれから検出した皮膚温度を逐次収集する皮膚温度収集ステップと、
温度変化監視部が、前記在室者のそれぞれについて、収集された前記皮膚温度の変化を監視して、前記皮膚温度の変化に対応する空調制御を開始する制御点として検出する温度変化監視ステップと、
空調制御部が、予め設定した空調制御期間において、前記在室者のうち所定人数分に関する前記制御点の検出に応じて、前記在室者の前記皮膚温度の変化傾向を緩和する方向への空調制御を開始する空調制御ステップと
を備えることを特徴とする空調制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、在室者の皮膚温度に基づいて空調空間の空調制御を行う空調制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
空調空間を空調制御する際、空調空間内に取り付けられた温度計で検出した室温に基づき、空調制御する手法が一般的である。しかしながら、温度計で検出できる室温は空調空間内の限れた位置における温度であるため、空調空間内に在室する在室者との位置関係や温度分布の偏りに起因して、空調制御により得られる空調環境が在室者の温冷感と一致しない場合があった。
【0003】
空調環境に対して人が感じる温冷感を示す指標としてPMV(predicted mean vote:平均予想温冷感申告)がある。このPMVは空調空間内に在室する在室者の実際の温冷感と高い相関性を有しているため、このPMVを精度よく特定できれば、最適な空調制御を実現することができる。しかしながら、このPMVの計算には、在室者の着衣量や活動量など、計測が難しいパラメータを要するため、PMVを精度よく特定することは難しい。
【0004】
一方、在室者の皮膚温度が、PMVと同様、実際の温冷感とある程度の相関性を有していることに着目し、従来、このような在室者の温冷感に適応した空調制御を実現する技術として、在室者に装着した皮膚温度センサで検出した在室者の皮膚温度に基づいて空調制御を行う技術が提案されている(例えば、特許文献1など参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2013/145544号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来技術では、皮膚温度と対応する温冷感に対して予め設定しておいた温度制御幅に基づいて、室温設定値を調整する空調制御を行っているものの、、空調環境内に複数の在室者がいた場合、どの在室者の皮膚温度に基づき空調制御すればよいのか特定することができない。
【0007】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、皮膚温度に基づき空調制御する際に、複数の在室者が存在する場合でも良好な空調制御を実現することができる空調制御技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために、本発明にかかる空調制御装置は、複数の在室者から検出した皮膚温度に基づいて、空調空間の空調制御を行う空調制御装置であって、前記在室者のそれぞれから検出した皮膚温度を逐次収集する皮膚温度収集部と、前記在室者のそれぞれについて、収集された前記皮膚温度の変化を監視して、前記皮膚温度の変化に対応する空調制御を開始する制御点を検出する温度変化監視部と、予め設定した空調制御期間において、前記在室者のうち所定人数分に関する前記制御点の検出に応じて、前記在室者の前記皮膚温度の変化傾向を緩和する方向への空調制御を開始する空調制御部とを備えている。
【0009】
また、本発明にかかる上記空調制御装置の一構成例は、前記温度変化監視部が、前記皮膚温度の変化を示す傾きが、予め設定された変化確認範囲内から平坦確認範囲内まで変化した時点を制御点として検出するようにしたものである。
【0010】
また、本発明にかかる上記空調制御装置の一構成例は、前記温度変化監視部が、前記皮膚温度の変化を示す傾きが、一定の判定期間にわたりしきい値以上となった時点を制御点として検出するようにしたものである。
【0011】
また、本発明にかかる上記空調制御装置の一構成例は、前記所定人数が、前記空調空間に存在する全在室者に対する所定人数比率により求められる人数からなるものである。
【0012】
また、本発明にかかる上記空調制御装置の一構成例は、前記空調制御部が、予め設定した空調制御期間において、前記在室者のうち最初の前記制御点の検出に応じて、所定の待機時間だけ経過した後、前記在室者の前記皮膚温度の変化傾向を緩和する方向への空調制御を開始するようにしたものである。
【0013】
また、本発明にかかる空調制御方法は、複数の在室者から検出した皮膚温度に基づいて、空調空間の空調制御を行う空調制御装置で用いられる空調制御方法であって、皮膚温度収集部が、前記在室者のそれぞれから検出した皮膚温度を逐次収集する皮膚温度収集ステップと、温度変化監視部が、前記在室者のそれぞれについて、収集された前記皮膚温度の変化を監視して、前記皮膚温度の変化に対応する空調制御を開始する制御点として検出する温度変化監視ステップと、空調制御部が、予め設定した空調制御期間において、前記在室者のうち所定人数分に関する前記制御点の検出に応じて、前記在室者の前記皮膚温度の変化傾向を緩和する方向への空調制御を開始する空調制御ステップとを備えている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、空調制御期間のうち、所定人数分の在室者について制御点に到達したことが検出された時点で、その在室者の皮膚温度の変化すなわち上昇/下降トレンドを緩和する方向への空調制御が開始されるため、室温変化に最も敏感な在室者に合わせて、他の在室者の皮膚温度の変化が早めに緩和されることになり、結果として、すべての在室者について暑い/寒いをガマンする期間を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1の実施の形態にかかる空調制御装置の構成を示すブロック図である。
図2】第1の実施の形態にかかる空調制御処理を示すフローチャートである。
図3】第1の実施の形態にかかる空調制御例(温度上昇時)を示すグラフである。
図4】第2の実施の形態にかかる空調制御処理を示すフローチャートである。
図5】第2の実施の形態にかかる空調制御例(温度上昇時)を示すグラフである。
図6】第3の実施の形態にかかる空調制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[発明の原理]
まず、本発明の原理について説明する。
複数の在室者が空調空間内に存在する場合、これら在室者に皮膚温度センサを装着すれば、在室者ごとに皮膚温度を検出して収集することができる。
ここで、空調制御の手法として、収集した皮膚温度に基づいて、空調空間の室温を制御する場合には、これら在室者の皮膚温度のばらつきに応じて、対応する温度制御幅も異なるため、目的設定温度もばらつくことになる。
【0017】
一方、空調制御の手法として、在室者の皮膚温度の変化に対応する空調制御を開始する制御点を検出し、この制御点の検出に応じて、皮膚温度の変化傾向を緩和する方向への空調制御を開始する場合、これら在室者の皮膚温度は室温に影響されて同じ方向に変化するため、空調制御の内容は、特定の在室者だけでなくこれら在室者に共通するものとなる。
【0018】
本発明は、このような皮膚温度の変化傾向に応じて空調制御を行う場合には、空調制御内容が複数の在室者間で共通となるという特徴に着目し、在室者のそれぞれについて、収集された皮膚温度の変化を監視して、皮膚温度の変化に対応する空調制御を開始する制御点として検出するとともに、予め設定した空調制御期間において、所定人数分の在室者について制御点が検出された時点で、その在室者の皮膚温度の変化傾向を緩和する方向への空調制御を開始するようにしたものである。これにより、複数の在室者が存在する場合でも、室温変化に敏感な在室者に合わせて、良好な空調制御を実現することができる。
【0019】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかる空調制御装置10について説明する。図1は、第1の実施の形態にかかる空調制御装置の構成を示すブロック図である。
【0020】
この空調制御装置10は、全体としてサーバ装置などの情報処理装置からなり、空調空間X内に存在する在室者から検出した皮膚温度に基づいて、空調空間Xの空調制御を行う機能を有している。
空調設備20は、通信回線Lを介して受信した空調制御装置10からの空調制御指示に応じて、空調空間Xの室温や湿度を調整する空気調和を行う機能を有している。
【0021】
皮膚温度センサSは、例えば腕時計型などの公知の皮膚温度センサからなり、在室者のそれぞれに装着されて、在室者の皮膚温度を検出し、空調空間Xに設置されているアクセスポイントAPへ無線送信する機能を有している。
アクセスポイントAPは、皮膚温度センサSから無線受信した皮膚温度を、通信回線Lを介して空調制御装置10へ中継転送する機能を有している。
【0022】
[空調制御装置]
次に、図1を参照して、本実施の形態にかかる空調制御装置10の構成について詳細に説明する。
空調制御装置10には、主な機能部として、通信I/F部11、皮膚温度DB12、皮膚温度収集部13、温度変化監視部14、および空調制御部15が設けられている。
【0023】
通信I/F部11は、通信回線Lを介してアクセスポイントAPや空調設備20とデータ通信を行う機能を有している。
皮膚温度DB12は、皮膚センサSから収集した皮膚温度を、在室者ごとに時系列で蓄積するデータベースである。
皮膚温度収集部13は、皮膚センサSで検出された皮膚温度を、アクセスポイントAPおよび通信回線Lを介して逐次収集し、皮膚温度DB12へ格納する機能を有している。
【0024】
温度変化監視部14は、在室者のそれぞれについて、皮膚温度収集部13により収集された皮膚温度の変化を監視する機能と、皮膚温度の変化を示す傾きRが、予め設定された変化確認範囲Rc内から平坦確認範囲Rf内まで変化した時点を制御点Q1として検出する機能とを有している。この際、変化確認範囲Rcとは、皮膚温度にある程度の変化が認められることを示す傾き範囲であり、平坦確認範囲Rfとは、皮膚温度にほとんど変化が認められないことを示す傾き範囲である。これら変化確認範囲Rcおよび平坦確認範囲Rfについては、過去の計測結果に基づき経験的に特定すればよい。
【0025】
空調制御部15は、予め設定した空調制御期間において、在室者のうち所定人数分に関する温度変化監視部14での制御点Q1の検出に応じて、空調設備20へ指示することにより、その在室者の皮膚温度の変化傾向を緩和する方向への空調制御を開始する機能とを有している。
【0026】
所定人数については、1以上の整数で予め設定されており、空調空間Xに存在する全在室者に対する所定人数比率により求められる人数を所定人数としてもよい。また、空調制御期間については、温度変化監視部14が、空調空間Xの室温や皮膚温度の変化方向に合わせて設定すればよい。例えば、室温の温度が上昇傾向から下降傾向に変化した時点や、下降傾向から上昇傾向に変化した時点で、新たな空調制御期間を設定すればよい。
【0027】
[第1の実施の形態の動作]
次に、図2を参照して、本実施の形態にかかる空調制御装置10の動作について説明する。図2は、第1の実施の形態にかかる空調制御処理を示すフローチャートである。
空調制御装置10は、一定の周期で図2の空調制御処理を実行する。
【0028】
まず、温度変化監視部14は、新たに収集した皮膚温度に基づいて皮膚温度の変化を示す新たな傾きRを計算し(ステップ100)、傾きRが予め設定されている変化確認範囲Rc内から予め設定されている平坦確認範囲Rf内まで変化したかどうか、すなわち、直前の傾きRが変化確認範囲Rc内であって、かつ、新たな傾きRが平坦確認範囲Rf内であるかどうか確認する(ステップ101)。
【0029】
ここで、傾きRが変化確認範囲Rc内から平坦確認範囲Rf内まで変化していない場合、すなわち、直前の傾きRが変化確認範囲Rc内ではない場合、あるいは、新たな傾きRが平坦確認範囲Rf内ではない場合(ステップ101:NO)、一連の空調制御処理を終了する。
【0030】
一方、傾きRが変化確認範囲Rc内から平坦確認範囲Rf内まで変化した場合、すなわち、直前の傾きRが変化確認範囲Rc内であって、かつ、新たな傾きRが平坦確認範囲Rf内である場合(ステップ101:YES)、温度変化監視部14は、皮膚温度が上昇傾向または下降傾向から横ばい傾向に変化した制御点Q1に到達したと判定する(ステップ102)。
これに応じて、空調制御部15は、予め設定されている空調制御期間のうち、温度変化監視部14で検出された制御点Q1への到達が所定人数分に達したが否か判定する(ステップ103)。
【0031】
ここで、制御点Q1への到達が所定人数分に達していない場合(ステップ103:NO)、一連の空調制御処理を終了する。
一方、制御点Q1への到達が所定人数分に達した場合(ステップ103:YES)、空調制御部15は、通信I/F部11から通信回線Lを介して空調設備20へ指示することにより、皮膚温度の変化傾向を緩和する方向への空調制御を開始し(ステップ104)、一連の空調制御処理を終了する。
【0032】
図3は、第1の実施の形態にかかる空調制御例(温度上昇時)を示すグラフである。
恒温恒湿環境において室温を徐々に上昇させる実験を行った結果、図3に示すように、恒温恒湿環境に存在する被験者の上着表面温度は室温に応じて上昇し、被験者が感じる温冷感も室温に応じて悪化することが確認された。温冷感は、被験者からの申告によるものとし、非常に暑い、暑い、暖かい、やや暖かい、どちらでもないという温冷感を1〜5の数値で表したものである。
【0033】
ここで、図3において、温冷感は、5から1に向けて一定の傾きで変化しているが、上着表面温度が33.0℃から34.0付近まで上昇傾向を示した後、ある程度の期間にわたりほぼ横ばい傾向を示し、その後再び上昇傾向を示している。この横ばい傾向区間は、温冷感が3〜5に上昇する期間に相当しており、皮膚での発汗や血流変化による温度調節作用によるものと考えられる。また、温度低下時にも、温度調節作用により皮膚での発汗減少や血流減少による発熱が抑制されて上着表面温度がほぼ横ばい傾向を示す区間がある。したがって、この横ばい傾向区間は、被験者の生体が暑さ/寒さをガマンするための反応をしている、いわゆるガマン期間に相当しているとみなすことも可能である。
【0034】
本実施の形態は、このようなガマン期間の存在に着目し、このガマン期間の先頭、すなわちガマン開始ポイントPに相当する制御点、あるいはガマン開始ポイントPに向かう途中の制御点を、上着表面温度の変化の傾きから検出し、この制御点の検出に応じて、上着表面温度の変化傾向を緩和する方向への空調制御を開始するようにしたものである。
【0035】
ここでは、より具体的な制御点の検出方法として、傾きRと、変化確認範囲Rcおよび平坦確認範囲Rfとを比較して制御点Q1かどうかを判定する例が示されている。
この場合、変化確認範囲(温度上昇時変化確認範囲)Rcは、傾きRが1.75以上となる傾き範囲に設定されており、平坦確認範囲Rfは、傾きRが0.25〜−0.25となる傾き範囲に設定されている。なお、これらRc,Rfの範囲は例であり、これに限定されるものではない。また、これら確認範囲の境界を示すしきい値に基づき判定してもよい。
【0036】
温度変化監視部14では、皮膚温度収集部13により収集された皮膚温度の傾きRが新たに計算され、直前の傾きRが変化確認範囲Rc内であって、かつ、新たな傾きRが平坦確認範囲Rf内である場合、制御点Q1に到達したものと判定されている。
なお、収集した皮膚温度にはノイズが含まれている場合があるため、皮膚温度の傾きRを計算する周期については、皮膚温度を収集するサンプリング周期より長くしてもよい。また、皮膚温度をローパスフィルタやノイズカットフィルタなどのフィルタ処理を適用した後、傾きRを計算してもよく、例えば移動平均などのように、時系列的に連続する複数の皮膚温度から統計処理して得られた代表皮膚温度から傾きRを算出してもよい。
【0037】
これにより、皮膚温度のグラフから推定されるガマン開始ポイントPと比較して、ほとんど遅れることなく制御点Q1を検出することができ、制御点Q1によりガマン開始ポイントPを精度よく推定されていることがわかる。したがって、この制御点Q1において、皮膚温度の上昇傾向を緩和する方向、ここでは現状の目標設定室温を低下させて冷房を強化する内容の空調指示が、空調制御部15から空調設備20に対して送信されることになり、結果として、制御点Q1以降に在室者が暑さをガマンするガマン期間の長さが低減されることになる。
【0038】
なお、図2図3では、空調空間Xの室温が上昇する場合を例として説明したが、これに限定されるものではない。空調空間Xの室温が低下する場合には、図3に示したように傾きRの負側領域にも変化確認範囲(温度低下時変化確認範囲)Rcを予め設定しておき、ステップ101において、温度変化監視部14が、傾きRが変化確認範囲Rc内から平坦確認範囲Rf内まで変化したかどうか、すなわち、直前の傾きRが変化確認範囲Rc内であって、かつ、新たな傾きRが平坦確認範囲Rf内であるかどうか確認すればよい。
【0039】
図3では、変化確認範囲(温度低下時変化確認範囲)Rcは、傾きRが−1.75以下となる傾き範囲に設定されているが、これに限定されるものではない。そして、傾きRが変化確認範囲Rc内から平坦確認範囲Rf内まで変化した場合に(ステップ101:YES)、皮膚温度が下降傾向から横ばい傾向に変化した制御点Q1に到達したと判定すればよい(ステップ102)。
【0040】
[第1の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、温度変化監視部14が、在室者のそれぞれについて、収集された皮膚温度の変化を監視して、皮膚温度の変化に対応する空調制御を開始する制御点を検出し、空調制御部15が、予め設定した空調制御期間において、在室者のうち所定人数分に関する制御点の検出に応じて、在室者の皮膚温度の変化傾向を緩和する方向への空調制御を開始するようにしたものである。より具体的には、空調制御部15が、皮膚温度の変化を示す傾きRが、予め設定された変化確認範囲Rc内から平坦確認範囲Rf内まで変化した時点を制御点Q1として検出するようにしたものである。
【0041】
前述したように、皮膚温度の変化は、在室者間において早い遅いの違いはあるものの、皮膚温度の上昇/下降というトレンド自体は、同一空調空間X内に存在する在室者間において同じ傾向を示すと考えられる。本実施の形態によれば、空調制御期間のうち、所定人数分の在室者について制御点Q1が検出された時点で、その在室者の皮膚温度の変化すなわち上昇/下降トレンドを緩和する方向への空調制御が開始されるため、室温変化に敏感な在室者に合わせて、他の在室者の皮膚温度の変化が早めに緩和されることになり、結果として、すべての在室者について暑い/寒いをガマンする期間を低減することが可能となる。
【0042】
また、本実施の形態によれば、実際に在室者が暑さ/寒さのガマンを開始するガマン開始ポイントPが制御点Q1として精度よく推定されて、制御点Q1から、皮膚温度の変化傾向を緩和する方向への空調制御が開始されることになる。したがって、在室者が実際に暑い/寒いを感じる前に適正な空調制御が早めに開始されるため、制御系に内在する遅れなどの理由により、室温が適正温度になるまで在室者が暑い/寒いをある程度ガマンするガマン期間を低減することが可能となる。また、在室者のガマン開始ポイントに基づき空調制御されるため、暖房しすぎあるいは冷房しすぎを回避することができ、結果としてこのような過剰な空調に使われていた無駄なエネルギーを削減することができる。
【0043】
また、ビル等の建物では、空調設定のための操作器が近くにない場合が多く、空調空間を不特定多数の人が利用することも多いため、空調設定しにくい傾向がある。このため、このようなビル等の建物では、操作器による設定よりも、在室者の皮膚温度による空調自動調整が望ましい。したがって、本実施の形態は、自動車や一般家庭のエアコンによる空調制御に比較して、ビル等の建物の空調制御に適用したほうが、より大きなメリットを得ることができる。
【0044】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態にかかる空調制御装置10について説明する。
本実施の形態では、温度変化監視部14において、皮膚温度の変化を示す傾きRが、一定の判定期間tsにわたり連続して、しきい値Rth以上となった時点を制御点Q2として検出する場合について説明する。
【0045】
[第2の実施の形態の動作]
次に、図4を参照して、本実施の形態にかかる空調制御装置10の動作について説明する。図4は、第2の実施の形態にかかる空調制御処理を示すフローチャートである。
空調制御装置10は、一定の周期で図4の空調制御処理を実行する。
【0046】
まず、温度変化監視部14は、新たに収集した皮膚温度に基づいて皮膚温度の変化の傾きRを計算し(ステップ200)、傾きRが一定の判定期間tsにわたり連続して、しきい値Rth以上となったかどうか判定する(ステップ201)。
ここで、傾きRが一定の判定期間tsにわたり連続して、しきい値Rth以上となっていない場合(ステップ201:NO)、一連の空調制御処理を終了する。
【0047】
一方、傾きRが一定の判定期間tsにわたり連続して、しきい値Rth以上となったことが確認された場合(ステップ201:YES)、温度変化監視部14は、皮膚温度が上昇傾向または下降傾向から横ばい傾向に変化するガマン開始ポイントPへ向かう制御点Q2に到達したと判定する(ステップ202)。
これに応じて、空調制御部15は、予め設定されている空調制御期間のうち、温度変化監視部14で検出された制御点Q1への到達が所定人数分に達したが否か判定する(ステップ203)。
【0048】
ここで、制御点Q1への到達が所定人数分に達していない場合(ステップ203:NO)、一連の空調制御処理を終了する。
一方、制御点Q1への到達が所定人数分に達した場合(ステップ203:YES)、空調制御部15は、通信I/F部11から通信回線Lを介して空調設備20へ指示することにより、皮膚温度の変化傾向を緩和する方向への空調制御を開始し(ステップ204)、一連の空調制御処理を終了する。
【0049】
図5は、第2の実施の形態にかかる空調制御例(温度上昇時)を示すグラフである。ここでは、傾きRの推移を判定期間tsとしきい値Rthで比較して制御点Q2かどうか判定する例が示されている。
この場合、温度変化監視部14では、皮膚温度収集部13により収集された皮膚温度の傾きRが新たに計算され、判定期間tsにわたって連続して、傾きRがしきい値Rth以上となった場合、制御点Q2に到達したものと判定されている。
【0050】
これにより、皮膚温度のグラフから推定されるガマン開始ポイントPと比較して、ガマン開始ポイントPの到来よりも前の時点が、制御点Q2により特定されていることがわかる。したがって、この制御点Q2において、皮膚温度の上昇傾向を緩和する方向、ここでは現状の目標設定室温を低下させて冷房を強化する内容の空調指示が、空調制御部15から空調設備20に対して送信されることになり、結果として、制御点Q2以降に在室者が暑さをガマンするガマン期間の長さが低減されることになる。
【0051】
[第2の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、温度変化監視部14が、収集された皮膚温度の変化を示す傾きRが、一定の判定期間tsにわたりしきい値Rth以上となった時点を制御点Q2として検出し、空調制御部15が、制御点Q2の検出に応じて、皮膚温度の変化傾向を緩和する方向への空調制御を開始するようにしたものである。
【0052】
これにより、実際に在室者が暑さ/寒さのガマンを開始するガマン開始ポイントPに向かう時点が制御点Q2により推定されて、制御点Q2から、皮膚温度の変化傾向を緩和する方向への空調制御が開始されることになる。したがって、在室者が実際に暑い/寒いを感じる前に適正な空調制御が早めに開始されるため、制御系に内在する遅れなどの理由により、室温が適正温度になるまで在室者が暑い/寒いをある程度ガマンするガマン期間を低減することが可能となる。
【0053】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態にかかる空調制御装置10について説明する。
第1(第2)の実施の形態では、在室者のうち所定人数分に関する制御点Q1(Q2)の検出に応じて、在室者の皮膚温度の変化傾向を緩和する方向への空調制御を開始するようにした場合を例として説明した。本実施の形態では、在室者のうち最初に制御点Q1(Q2)を検出した時点から、所定の待機期間だけ経過した後、在室者の皮膚温度の変化傾向を緩和する方向への空調制御を開始する場合について説明する。
【0054】
すなわち、本実施の形態において、空調制御部15は、予め設定した空調制御期間において、在室者のうち最初に制御点Q1(Q2)を検出した時点から、所定の待機期間Twだけ経過した後、在室者の皮膚温度の変化傾向を緩和する方向への空調制御を開始する機能を有している。この際、過去の計測結果に基づいて、最初に制御点を検出した時点から他の在室者の制御点Q1(Q2)の平均的な時点までの遅れ時間を求め、この遅れ時間を待機期間Twとして用いてもよい。
【0055】
[第3の実施の形態の動作]
次に、図6を参照して、本実施の形態にかかる空調制御装置10の動作について説明する。図6は、第3の実施の形態にかかる空調制御処理を示すフローチャートである。
空調制御装置10は、一定の周期で図6の空調制御処理を実行する。ここでは、第1の実施の形態への適用例として説明し、制御点Q1への到達判定は図2に準拠するものとし、ステップ100〜102については説明を省略する。なお、第2の実施の形態に適用する場合、制御点Q2への到達判定は図4に準拠するものとしてもよい。
【0056】
ステップ303において、空調制御部15が、予め設定されている空調制御期間のうち、温度変化監視部14で検出された制御点Q1への到達が最初であるか判定する(ステップ303)。
ここで、制御点Q1への到達が最初でない場合(ステップ303:NO)、一連の空調制御処理を終了する。
【0057】
一方、制御点Q1への到達が最初である場合(ステップ303:YES)、空調制御部15は、制御点Q1の到達確認から、所定の待機期間Twだけ経過した後、通信I/F部11から通信回線Lを介して空調設備20へ指示することにより、皮膚温度の変化傾向を緩和する方向への空調制御を開始し(ステップ304)、一連の空調制御処理を終了する。
【0058】
[第3の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、空調制御部15が、予め設定した空調制御期間において、在室者のうち最初に制御点Q1(Q2)を検出した時点から、所定の待機期間Twだけ経過した後、在室者の皮膚温度の変化傾向を緩和する方向への空調制御を開始するようにしたものである。
通常、暑さ/寒さに敏感な在室者が最初に制御点に到達してガマンを開始するが、その他の在室者は制御点Q1(Q2)に到達していないため、空調制御を開始する必要はないと考えられる。本実施の形態では、敏感な在室者が最初に制御点Q1(Q2)に到達してガマンを開始してから、待機時間Twだけ経過した後、空調制御を開始するようにしたので、敏感な在室者およびその他の在室者の双方にとって、ガマン期間を低減することができる。
【0059】
[実施の形態の拡張]
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。また、各実施形態については、矛盾しない範囲で任意に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0060】
10…空調制御装置、11…通信I/F部、12…皮膚温度DB、13…皮膚温度収集部、14…温度変化監視部、15…空調制御部、20…空調設備、S…皮膚温度センサ、AP…アクセスポイント、X…空調空間、L…通信回線、R…傾き、Rc…変化確認範囲、Rf…平坦確認範囲、ts…判定期間、Rth…しきい値、Q1,Q2…制御点、P…ガマン開始ポイント。
図1
図2
図3
図4
図5
図6