【解決手段】トレーラ(201)の車台(202)に取り付けられる一つの箱体(20)の内部に、ロウ付けエリア(30)と気密試験エリア(40)と仕上げエリア(50)とを、箱体(20)の第1側壁(21)に沿って一列に配置する。ロウ付けエリア(30)では、複数の部材をロウ付けによって接合して半製品を製作する作業が行われる。気密試験エリア(40)では、半製品の気密性の試験が行われる。仕上げエリア(50)では、半製品を断熱材で覆って配管部品を完成させる作業が行われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載された配管部品の製造方法を実施するための設備を、冷凍装置の据え付け現場に搬入し、現場において配管部品を製造することが考えられる。その際には、トレーラ等の車両に取り付けられるコンテナ等の箱体の内部空間に、ロウ付け作業と気密試験と断熱材で覆う作業とを行うための作業エリアを形成することが考えられる。しかし、比較的狭い箱体の内部空間において、作業性を損なわずにこれらのエリアをどのように配置すべきか、これまで検討されていなかった。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、配管部品を製造するための作業エリアを、作業性を損なうこと無く、一つの箱体の内部空間に適切に配置することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、冷凍装置を据え付けるために用いる配管部品の製造設備を対象とする。そして、車両(201,205)の車台(202)に設けられて内部空間が作業用の空間となる一つの箱体(20)と、上記箱体(20)の内部空間に形成され、複数の部材をロウ付けによって接合して半製品(101)を製作する作業を行うためのロウ付け作業台(31)が少なくとも設けられたロウ付けエリア(30)と、上記箱体(20)の内部空間に形成され、上記半製品(101)の気密性を試験するための気密試験作業台(41)が少なくとも設けられた気密試験エリア(40)と、上記箱体(20)の内部空間に形成され、上記半製品(101)を断熱材(104)で覆って上記配管部品(100)を完成させる作業を行うための仕上げ作業台(51)が少なくとも設けられた仕上げエリア(50)とを備え、上記箱体(20)の内部空間では、上記ロウ付けエリア(30)と上記気密試験エリア(40)と上記仕上げエリア(50)とが、上記箱体(20)の長手方向に沿った第1側壁(21)に沿って一列に配置されるものである。
【0008】
第1の発明では、箱体(20)の内部空間に、ロウ付けエリア(30)と気密試験エリア(40)と仕上げエリア(50)とが形成される。箱体(20)は、車両(201,205)の車台(202)に設けられて移動可能となっている。また、ロウ付けエリア(30)にはロウ付け作業台(31)が、気密試験エリア(40)には気密試験作業台(41)が、仕上げエリア(50)には仕上げ作業台(51)が、それぞれ設けられる。箱体(20)の内部空間において、ロウ付けエリア(30)と気密試験エリア(40)と仕上げエリア(50)とは、箱体(20)の一方の側壁である第1側壁(21)に沿って一列に配置される。このため、箱体(20)の内部空間では、箱体(20)の他方の側壁に沿って、配管部品(100)の製造作業を行う作業者の通路が確保される。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記箱体(20)は、後端に扉(24)が設けられ、上記箱体(20)の後端から前端に向かって順に、上記ロウ付けエリア(30)と上記気密試験エリア(40)と上記仕上げエリア(50)とが配置されるものである。
【0010】
第2の発明では、ロウ付け作業を行うためのロウ付けエリア(30)が、箱体(20)の後端寄りに配置される。ロウ付け作業では、ロウ材を融かすためにバーナーが用いられる。このため、ロウ付けエリア(30)の換気を充分に行う必要がある。一方、箱体(20)は、後端に扉(24)が設けられており、この扉(24)を開くと後端が開口する。そこで、この発明では、箱体(20)の外部から新鮮空気が流入しやすい箱体(20)の後端寄りに、ロウ付けエリア(30)を配置している。
【0011】
第3の発明は、上記第2の発明において、上記箱体(20)は、上記第1側壁(21)のうち上記仕上げエリア(50)に沿った部分に形成された、上記配管部品(100)を上記箱体(20)の外部へ搬出するための搬出口(60)を備えるものである。
【0012】
第3の発明では、箱体(20)の第1側壁(21)のうち上記仕上げエリア(50)に沿った部分に、搬出口(60)が形成される。箱体(20)の前端寄りに配置されたロウ付けエリア(30)において製作された半製品(101)は、箱体(20)の後端から前端へ向かって搬送され、箱体(20)の後端寄りに配置された仕上げエリア(50)において完成品である配管部品(100)となる。この仕上げエリア(50)において完成した配管部品(100)は、搬出口(60)から箱体(20)の外部へ搬出される。
【0013】
第4の発明は、上記第3の発明において、上記搬出口(60)は、上記仕上げ作業台(51)の上面に沿って延びる横長の開口であるものである。
【0014】
第4の発明では、搬出口(60)が仕上げ作業台(51)の上面に沿って形成される。このため、仕上げ作業台(51)の上で完成した配管部品(100)を作業者が奥へ押し出せば、配管部品(100)が搬出口(60)から箱体(20)の外部へ送り出される。
【0015】
第5の発明は、上記第3又は第4の発明において、上記搬出口(60)から上記箱体(20)の外部に亘って張り渡されて上記搬出口(60)から送り出された上記配管部品(100)を受け止めるシート状部材(62)を備えるものである。
【0016】
第5の発明では、搬出口(60)から箱体(20)の外部に亘ってシート状部材(62)が張り渡される。搬出口(60)から送り出された配管部品(100)は、シート状部材(62)によって受け止められ、シート状部材(62)の上を滑り落ちてゆく。
【0017】
第6の発明は、上記第1の発明において、上記箱体(20)の幅方向における上記ロウ付けエリア(30)の隣に配置され、上記半製品(101)を構成する部材であるパイプを曲げるためのパイプベンダー(71)を備えるものである。
【0018】
第6の発明では、箱体(20)の幅方向におけるロウ付けエリア(30)の隣に、パイプベンダー(71)が設けられる。作業者は、箱体(20)の長手方向へ移動すること無く、パイプベンダー(71)を用いてパイプを曲げる作業と、パイプベンダー(71)を用いて曲げたパイプ等の部材をロウ付けによって接合する作業とを行うことができる。
【0019】
第7の発明は、上記第1の発明において、上記気密試験作業台(41)には、気密試験の対象である上記半製品(101)を覆うことによって該半製品(101)を収容するための試験空間(47)を形成するカバー部材(45)が設けられる一方、上記箱体(20)の外部の空気を上記試験空間(47)へ供給する給気ファン(49)を備えるものである。
【0020】
第7の発明では、カバー部材(45)に囲われた試験空間(47)において、半製品(101)の気密試験が行われる。試験空間(47)には、給気ファン(49)によって箱体(20)の外部の空気が供給される。このため、気密試験に用いられる試験用ガスが試験空間(47)に漏れた場合でも、試験用ガスは試験空間(47)から速やかに排出され、試験空間(47)の雰囲気が外気と同等に保たれる。
【0021】
第8の発明は、上記第1の発明において、上記箱体(20)は、上記第1側壁(21)と対向する第2側壁(22)が開閉可能に構成されるものである。
【0022】
第8の発明の箱体(20)は、ロウ付けエリア(30)、気密試験エリア(40)、及び仕上げエリア(50)とは逆側に位置する第2側壁(22)が、開閉可能となっている。つまり、この発明の箱体(20)は、作業者の居る通路側の第2側壁(22)を開くことができる。第2側壁(22)が開いた状態では、この通路において作業者が配管部品(100)の製造作業を行う際に、半製品(101)や作業者の体などが第2側壁(22)にぶつからない。
【0023】
第9の発明は、上記第8の発明において、上記箱体(20)は、該箱体(20)の長手方向に延びる板状に形成され、上記第2側壁(22)が開いた状態で上記箱体(20)の底部から側方へ延びる通路形成部材(91)を備えるものである。
【0024】
第9の発明では、箱体(20)に通路形成部材(91)が設けられる。通路形成部材(91)は、箱体(20)の長手方向に延びる板状の部材である。第2側壁(22)が開いた状態において、通路形成部材(91)は、箱体(20)の底部から側方へ延びるように設置される。そして、この通路形成部材(91)は、箱体(20)の内部空間のうち第2側壁(22)に沿った部分と共に、作業者が移動や作業を行うための通路を形成する。
【発明の効果】
【0025】
本発明では、箱体(20)の内部空間において、ロウ付けエリア(30)と気密試験エリア(40)と仕上げエリア(50)とが箱体(20)の第1側壁(21)に沿って一列に配置され、その結果、箱体(20)の第1側壁(21)とは逆側の側壁に沿って作業者の通路が確保される。箱体(20)の内部空間において、配管部品(100)の製造作業を行う作業者は、箱体(20)の側壁に沿った真っ直ぐな通路を通って複数のエリア(30,40,50)の間を移動できる。このため、箱体(20)箱体(20)の内部空間における作業者の動線が簡素化される。従って、本発明によれば、作業性を損なうことなく、一つの箱体(20)の内部空間に、ロウ付けエリア(30)と気密試験エリア(40)と仕上げエリア(50)とを配置することができる。
【0026】
上記第2の発明では、ロウ付け作業を行うためのロウ付けエリア(30)が、箱体(20)の後端寄りに配置される。このため、ロウ付けエリア(30)の換気を充分に行うことができ、ロウ付けエリア(30)の酸素濃度の低下を確実に回避することができる。
【0027】
上記第3の発明では、箱体(20)の第1側壁(21)に搬出口(60)が形成される。そして、仕上げエリア(50)において完成した配管部品(100)は、搬出口(60)から箱体(20)の外部へ搬出される。このため、箱体(20)の後端から最も遠い仕上げエリア(50)において完成した配管部品(100)を、箱体(20)の前端から後端へ搬送することなく、搬出口(60)から箱体(20)の外部へ直接に搬出することができる。従って、この発明によれば、箱体(20)の内部空間における作業者の動線を一層簡素化でき、配管部品(100)の製造作業の作業性を高めることが可能となる。
【0028】
上記第4の発明では、搬出口(60)が仕上げ作業台(51)の上面に沿って形成される。このため、作業者は、仕上げ作業台(51)の上の配管部品(100)を奥へ押し出すだけで、配管部品(100)を搬出口(60)から箱体(20)の外部へ送り出すことができる。従って、この発明によれば、配管部品(100)の搬出作業を簡素化することができる。
【0029】
上記第5の発明では、搬出口(60)から送り出された配管部品(100)が、シート状部材(62)によって受け止められる。このため、搬出口(60)から送り出された配管部品(100)の破損を未然に防ぐことができる。
【0030】
上記第6の発明では、箱体(20)の幅方向におけるロウ付けエリア(30)の隣に、パイプベンダー(71)が設けられる。このため、パイプを曲げる作業とロウ付け作業とを行う作業者の移動距離を最小限に抑えることができる。
【0031】
上記第7の発明では、気密試験を行うための試験空間(47)の雰囲気を、外気と同等に保つことができる。このため、気密試験用のガスが試験対象の半製品(101)から漏洩した場合に、漏洩したガスを確実に検知することができ、気密性が確保されていない半製品(即ち、不良品)を確実に発見することが可能となる。
【0032】
第8の発明では、箱体(20)の第2側壁(22)が開閉可能となっている。第2側壁(22)が開いた状態では、箱体(20)内での作業中に半製品(101)や作業者の体などが第2側壁(22)にぶつからない。従って、この発明によれば、箱体(20)内における配管部品(100)の製造作業を円滑に行うことが可能となり、配管部品(100)の製造効率を向上させることが可能となる。
【0033】
第9の発明では、箱体(20)に設けられた通路形成部材(91)が、箱体(20)の内部空間のうち第2側壁(22)に沿った部分と共に、作業者が移動や作業を行うための通路を形成する。従って、この発明によれば、作業者が移動や作業を行うための通路を、箱体(20)の幅方向(長手方向と直行する方向)へ拡大することができ、配管部品(100)の製造作業を一層円滑化できる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施形態および変形例は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0036】
《実施形態1》
実施形態1について説明する。本実施形態の製造設備(10)は、冷凍装置の一種である空気調和機を据え付ける際に用いられる配管部品(100)を製造するための設備である。この製造設備(10)において製造された配管部品(100)は、例えば比較的大規模なビルや商業施設などに空気調和機を据え付ける際に、空気調和機を構成する室外ユニットと室内ユニットを接続するために用いられる。
【0037】
図1に示すように、本実施形態の製造設備(10)は、箱体(20)と、発電機(15)と、箱体(20)の内部空間を空気調和する空気調和機とを備えている。なお、製造設備(10)を構成する空気調和機の図示は省略する。
【0038】
本実施形態の製造設備(10)は、牽引車(200)によって牽引されるトレーラ(201)の車台(202)に搭載されている。トレーラ(201)の車台(202)において、発電機(15)は、箱体(20)の前方に配置されている。また、トレーラ(201)の車台(202)における箱体(20)の前方には、箱体(20)の内部空間を空気調和する空気調和機の室外ユニットが配置されている。
【0039】
−箱体の構造−
箱体(20)は、矩形の細長い箱状に形成されている。この箱体(20)としては、例えば海上輸送用のコンテナを用いることができる。箱体(20)の後端は、全面に亘って開口した後端開口(23)となっている。箱体(20)には、後端開口(23)を塞ぐために、両開きの一対の後部扉(24)が設けられている。つまり、箱体(20)は、その後端に後部扉(24)が設けられている。箱体(20)は、その後端から見て左側の側板が第1側壁(21)を、右側の側板が第2側壁(22)をそれぞれ構成している。また、箱体(20)の前端に位置する側板は、前端壁(25)を構成している。
【0040】
箱体(20)の後端部には、折りたたみ式の階段(16)が設置されている。本実施形態の製造設備(10)において配管部品(100)の製造を行う場合には、
図2に示すように、箱体(20)の後端から後方へ延びるように階段(16)が設置される。作業者は、この階段(16)を使って箱体(20)に出入りする。
【0041】
−箱体の内部構造−
図2及び
図3に示すように、箱体(20)の内部空間には、ロウ付けエリア(30)と、気密試験エリア(40)と、仕上げエリア(50)と、作業用通路(55)とが形成されている。作業用通路(55)には、後述するベンダーユニット(70)が配置されている。
【0042】
箱体(20)の内部空間では、箱体(20)の後端から前端へ向かって順に、ロウ付けエリア(30)と気密試験エリア(40)と仕上げエリア(50)とが、箱体(20)の第1側壁(21)に沿って一列に配置されている。また、箱体(20)の内部空間では、箱体(20)の第2側壁(22)に沿った残りの領域が、作業用通路(55)となっている。
【0043】
つまり、箱体(20)の内部空間は、箱体(20)の幅方向の中央部よりも第1側壁(21)寄りの領域が、ロウ付けエリア(30)と、気密試験エリア(40)と、仕上げエリア(50)とに区分されている。また、箱体(20)の内部空間は、箱体(20)の幅方向の中央部よりも第2側壁(22)寄りの領域が、箱体(20)の後端から前端に亘る作業用通路(55)となっている。
【0044】
〈ロウ付けエリア〉
図2及び
図3に示すように、ロウ付けエリア(30)は、箱体(20)の後端開口(23)に隣接している。ロウ付けエリア(30)には、ロウ付け作業台(31)が設置されている。ロウ付け作業台(31)の上では、複数の部材をロウ付けによって接合して半製品(101)を製造する作業が行われる。図示しないが、ロウ付けエリア(30)には、ロウ付け作業に必要なバーナーや燃料ガスのボンベ等も設置されている。
【0045】
ロウ付け作業台(31)は、長方形の板状に形成されている。
図4に示すように、ロウ付け作業台(31)は、一方の長辺が箱体(20)の第1側壁(21)に固定され、この第1側壁(21)に対して回動自在となっている。ロウ付け作業台(31)は、
図3及び
図4に実線で示す使用状態(概ね水平となった状態)と、
図4に二点鎖線で示す収納状態(概ね垂直となって第1側壁(21)に沿った状態)との間を移動可能となっている。
【0046】
箱体(20)の第1側壁(21)のうちロウ付けエリア(30)に面する部分には、ロウ付けエリア(30)と作業用通路(55)へ外気(即ち、箱体(20)の外部の空気)を供給するための給気ファン(32)が設けられている。
【0047】
ロウ付けエリア(30)で行われるロウ付け作業では、ロウ材を融かすためにバーナーが用いられる。バーナーで燃料ガスを燃焼させると、酸素が消費される。このため、ロウ付けエリア(30)の換気が不充分であると、ロウ付けエリア(30)の酸素濃度が低下するおそれがある。また、燃料ガスが漏洩した場合には、滞留した燃料ガスに引火するおそれがある。そこで、本実施形態の製造設備(10)では、ロウ付けエリア(30)の換気が充分に行われるように、ロウ付けエリア(30)が箱体(20)の後端開口(23)に隣接する位置に設けられている。
【0048】
〈ベンダーユニット〉
図2及び
図3に示すように、ベンダーユニット(70)は、作業用通路(55)のうちロウ付けエリア(30)に隣接する領域に設置されている。ベンダーユニット(70)は、半製品(101)を構成する銅管を曲げるためのパイプベンダー(71)と、パイプベンダー(71)を載せるための置き台(72)とを備えている。この置き台(72)には、キャスターが取り付けられている。従って、ベンダーユニット(70)は、移動可能となっている。
【0049】
〈気密試験エリア〉
図2及び
図3に示すように、気密試験エリア(40)は、ロウ付けエリア(30)の隣に配置されている。この気密試験エリア(40)は、箱体(20)の長手方向の中央部に位置している。気密試験エリア(40)には、気密試験の対象となる半製品(101)を置くための気密試験作業台(41)と、気密試験を行うための付属機器(48)とが配置されている。
【0050】
図6にも示すように、気密試験作業台(41)は、机状の作業台本体(42)と、カバー部材(45)とを備えている。作業台本体(42)は、長方形状の天板(43)と、天板(43)を支持する脚(44)とを有している。カバー部材(45)は、下面が開口した箱状に形成され、作業台本体(42)の天板(43)を覆うように配置される。気密試験作業台(41)では、作業台本体(42)の天板(43)とカバー部材(45)とによって囲われた試験空間(47)が形成されている。
【0051】
カバー部材(45)の上面部および前面部は、透明なポリカーボネイト板によって構成されている。カバー部材(45)の側面部および背面部は、多数の小孔が形成されたパンチング板によって構成されている。
図7に示すように、カバー部材(45)は、その前面寄りの部分が、残りの部分に対して回動自在なカバー扉(46)を構成している。
【0052】
付属機器(48)は、気密試験作業台(41)の横に配置されている。この付属機器(48)は、気密試験を行うために半製品(101)へ充填する試験用ガスのボンベや、半製品(101)に充填した試験用ガスの圧力を計測する圧力計等によって構成されている。なお、本実施形態では、試験用ガスとして、いわゆるフロンガスと窒素の混合ガスが用いられる。ただし、窒素と共に試験用ガスを構成するガスは、フロンガスには限定されない。
【0053】
箱体(20)の第1側壁(21)のうち気密試験エリア(40)に面する部分には、気密試験エリア(40)へ外気(即ち、箱体(20)の外部の空気)を供給するための給気ファン(49)が設けられている。
図6に示すように、この給気ファン(49)は、作業台本体(42)の天板(43)のすぐ上に配置され、気密試験作業台(41)の試験空間(47)へ外気を吹き出す。給気ファン(49)が試験空間(47)へ供給した外気は、カバー部材(45)の側面部および背面部を構成するパンチング板の小孔や、作業台本体(42)とカバー部材(45)の隙間などを通って、試験空間(47)の外部へ流出してゆく。
【0054】
〈仕上げエリア〉
図2及び
図3に示すように、仕上げエリア(50)は、箱体(20)の前端壁(25)寄りに配置されている。仕上げエリア(50)には、仕上げ作業台(51)が設置されている。仕上げ作業台(51)は、長方形の机状に形成され、その長辺が箱体(20)の第1側壁(21)に沿うように設置されている。仕上げ作業台(51)の上では、半製品(101)を断熱材(104)で覆って配管部品(100)を完成させる作業が行われる。図示しないが、仕上げエリア(50)には、断熱材(104)や、断熱材(104)を固定するための粘着テープなども設置されている。
【0055】
図2及び
図8に示すように、箱体(20)の第1側壁(21)のうち仕上げエリア(50)に面する部分には、配管部品(100)を箱体(20)の外部へ搬出するための搬出口(60)が形成されている。この搬出口(60)は、仕上げ作業台(51)の上面に沿って延びる細長い長方形状の開口である。箱体(20)の第1側壁(21)には、搬出口(60)を塞ぐための搬出用扉(61)が設けられている。搬出用扉(61)は、搬出口(60)よりも一回り大きな長方形板状の部材である。搬出用扉(61)は、その一方の長辺を軸に回動自在となっている。
【0056】
箱体(20)の第1側壁(21)のうち仕上げエリア(50)に面する部分には、仕上げエリア(50)と作業用通路(55)へ外気を供給するための給気ファン(52)が設けられている。
【0057】
−シート状部材、保持用フック、収納用フック−
図9及び
図10に示すように、本実施形態の製造設備(10)は、箱体(20)に取り付けられるシート状部材(62)を更に備えている。シート状部材(62)は、柔軟な長方形のシートである本体シート(63)と、本体シート(63)の各短辺に一本ずつ取り付けられた支持パイプ(64)とを備えている。支持パイプ(64)の長さは、本体シート(63)の短辺よりも長い。支持パイプ(64)の両端部は、本体シート(63)の縁から突出している。
【0058】
図8に示すように、箱体(20)の第1側壁(21)には、シート状部材(62)の支持パイプ(64)を保持するための一対の保持用フック(26)が取り付けられている。この保持用フック(26)は、搬出口(60)の両側に一つずつ配置されている。また、箱体(20)の第1側壁(21)には、シート状部材(62)を収納するための一対の収納用フック(27)が取り付けられている。この一対の収納用フック(27)は、搬出口(60)の上方に、互いに所定の間隔をおいて配置されている。
【0059】
図9に示すように、シート状部材(62)は、箱体(20)に形成された搬出口(60)から箱体(20)の外部の地面に置かれたパイプスタンド(65)に亘って張り渡される。シート状部材(62)の一方の支持パイプ(64)は、その両方の端部が、保持用フック(26)に引っ掛けられる。また、シート状部材(62)の他方の支持パイプ(64)は、パイプスタンド(65)に固定される。シート状部材(62)は、本体シート(63)の一部分がパイプスタンド(65)に固定された支持パイプ(64)よりも下に垂れ下がるように設置され、搬出口(60)から送り出された配管部品(100)を受け止める。
【0060】
なお、シート状部材(62)は、配管部品(100)の製造作業を行わないとき(例えば、作業者の休日や、トレーラ(201)の移動中)には、箱体(20)の内部に収納される。その際、シート状部材(62)は、一方の支持パイプ(64)に本体シート(63)を巻き付けた状態で、本体シート(63)を巻き付けた支持パイプ(64)の端部を収納用フック(27)に引っ掛けた状態で収納される。
【0061】
−配管部品の製造作業−
本実施形態の製造設備(10)において行われる配管部品(100)の製造作業について説明する。ここでは、配管部品(100)の製造作業を二名の作業者(151,152)が分担して行う場合を例に説明する。なお、
図3及び
図5に示すように、配管部品(100)の製造作業中には、箱体(20)の後部扉(24)が開いた状態に保持される。
【0062】
第1作業者(151)は、先ず準備工程を行う。この準備工程は、主に、作業用通路(55)のうちロウ付けエリア(30)に隣接する部分において行われる。準備工程を行うとき、第1作業者(151)は、ロウ付け作業台(31)を収納状態(
図4に二点鎖線で示す状態)とし、ベンダーユニット(70)を作業用通路(55)の幅方向の中央付近に配置する(
図5を参照)。
【0063】
準備工程は、半製品(101)を構成する管部材(102)を製作する工程である。準備工程において、第1作業者(151)は、銅管を所定の長さに切断し、切断した銅管を必要に応じて曲げる。その際、第1作業者(151)は、ベンダーユニット(70)のパイプベンダー(71)を用いて、銅管を曲げる。
【0064】
半製品(101)を構成する管部材(102)が幾つかできると、第1作業者(151)は、準備工程を終了してロウ付け工程を開始する。ロウ付け工程を行うとき、第1作業者(151)は、ロウ付け作業台(31)を使用状態(
図4に実線で示す状態)とし、ベンダーユニット(70)を第2側壁(22)寄りに配置する(
図3を参照)。
【0065】
ロウ付け工程において、第1作業者(151)は、準備工程において製作した管部材(102)と、予め準備された継手(103)とを組み合わせ、それらをロウ付けによって接合する。その結果、複数の部材を接合して一体化した半製品(101)が完成する。第1作業者(151)は、この作業をロウ付け作業台(31)の上で行う。この半製品(101)の一例を
図11に示す。
図11に示す半製品(101)は、二股の分岐管である。第1作業者(151)は、完成した半製品(101)を気密試験エリア(40)へと運ぶ。
【0066】
第2作業者(152)は、気密試験工程を行う。この気密試験工程において、第2作業者(152)は、ロウ付け工程において完成した半製品(101)の気密性を試験する。
【0067】
具体的に、第2作業者(152)は、先ず、カバー扉(46)を開いて半製品(101)を試験空間(47)に配置する。続いて、第2作業者(152)は、半製品(101)の端部に封止用のプラグやガス充填用のホースを接続してからカバー扉(46)を閉じ、半製品(101)に所定圧力の試験用ガスを充填する。半製品(101)への試験用ガスの充填が終了すると、第2作業者(152)は、カバー扉(46)を開き、フロンガスを検知可能なガス検知器を半製品(101)の表面に沿って移動させ、半製品(101)から試験用ガスが漏洩しているか否かを調べる。試験が終了すると、第2作業者(152)は、半製品(101)から試験用ガスを排出し、半製品(101)からプラグやホースなどを取り外す。第2作業者(152)は、試験用ガスが漏洩しなかった半製品(101)だけを仕上げエリア(50)へ運ぶ。
【0068】
次に、第2作業者(152)は、仕上げ工程を行う。この仕上げ工程において、第2作業者(152)は、気密試験に合格した半製品(101)(即ち、気密試験において試験用ガスが漏洩しなかった半製品(101))を断熱材(104)で覆う。その結果、例えば
図12に示すような配管部品(100)が完成する。
図12に示す配管部品(100)は、
図11に示す二股の分岐管を断熱材(104)で被覆したものである。また、仕上げ工程において、第2作業者(152)は、半製品(101)の端部に保護用のキャップを取り付ける。第2作業者(152)は、これらの作業を仕上げ作業台(51)の上で行う。
【0069】
第2作業者(152)は、完成させた配管部品(100)を、搬出口(60)から箱体(20)の外部へ送り出す。搬出口(60)は、仕上げ作業台(51)の上面に沿って開口している。このため、第2作業者は、仕上げ作業台(51)に載った配管部品(100)を奥側へ押し出すだけで、配管部品(100)を搬出口(60)から箱体(20)の外部へ送り出すことができる。搬出口(60)から送り出された配管部品(100)は、シート状部材(62)に受け止められ、本体シート(63)の上を滑り落ちてゆく。
【0070】
このように、本実施形態の製造設備(10)において行われる配管部品(100)の製造作業では、箱体(20)の後端寄りに配置されたロウ付けエリア(30)において完成した半製品(101)が、箱体(20)の後端から前端へ向かって運ばれ、箱体(20)の前端寄りに配置された仕上げエリア(50)において、完成品である配管部品(100)となる。そして、仕上げエリア(50)において完成した配管部品(100)は、搬出口(60)から箱体(20)の外部へ送り出される。
【0071】
−実施形態1の効果−
本実施形態の製造設備(10)では、箱体(20)の内部空間において、ロウ付けエリア(30)と気密試験エリア(40)と仕上げエリア(50)とが箱体(20)の第1側壁(21)に沿って一列に配置され、箱体(20)の第2側壁(22)に沿って作業用通路(55)が形成される。箱体(20)の内部空間において、配管部品(100)の製造作業を行う作業者(151,152)は、箱体(20)の第2側壁(22)に沿った真っ直ぐな作業用通路(55)を通って複数のエリア(30,40,50)の間を移動できる。このため、箱体(20)の内部空間における作業者(151,152)の動線が簡素化される。従って、本実施形態によれば、作業性を損なうことなく、一つの箱体(20)の内部空間に、ロウ付けエリア(30)と気密試験エリア(40)と仕上げエリア(50)とを配置することができる。
【0072】
また、本実施形態の製造設備(10)では、火を用いるロウ付け作業を行うためのロウ付けエリア(30)が、箱体(20)の後端寄りに配置される。このため、ロウ付けエリア(30)の換気を充分に行うことができ、ロウ付けエリア(30)の酸素濃度の低下を確実に回避することができる。
【0073】
また、本実施形態の製造設備(10)では、ロウ付けエリア(30)と気密試験エリア(40)と仕上げエリア(50)とが、箱体(20)の後端から前端へ向かって順に配置されている。このため、配管部品(100)の製造作業では、ロウ付けエリア(30)において完成した半製品(101)を、箱体(20)の後端から前端へ向かって一方向へ移動させながら、半製品(101)に対する試験や加工を行うことができる。従って、本実施形態の製造設備(10)によれば、配管部品(100)の製造作業を、複数の作業者(151,152)による流れ作業として行うことが可能となる。
【0074】
また、本実施形態の製造設備(10)では、箱体(20)の第1側壁(21)のうち仕上げエリア(50)に面する部分に搬出口(60)が形成される。そして、仕上げエリア(50)において完成した配管部品(100)は、搬出口(60)から箱体(20)の外部へ搬出される。このため、箱体(20)の後端開口(23)から最も遠い仕上げエリア(50)において完成した配管部品(100)を、箱体(20)の前端から後端へ搬送することなく、搬出口(60)から箱体(20)の外部へ直接に搬出することができる。従って、本実施形態によれば、箱体(20)の内部空間における作業者の動線を一層簡素化でき、配管部品(100)の製造作業の作業効率を高めることが可能となる。
【0075】
また、本実施形態の製造設備(10)では、搬出口(60)が仕上げ作業台(51)の上面に沿って形成される。このため、作業者は、仕上げ作業台(51)の上の配管部品(100)を奥へ押し出すだけで、配管部品(100)を搬出口(60)から箱体(20)の外部へ送り出すことができる。従って、本実施形態によれば、配管部品(100)の搬出作業を簡素化することができる。
【0076】
また、本実施形態の製造設備(10)では、搬出口(60)から送り出された配管部品(100)が、シート状部材(62)によって受け止められる。このため、搬出口(60)から送り出された配管部品(100)の破損を未然に防ぐことができる。
【0077】
また、本実施形態の製造設備(10)では、箱体(20)の幅方向におけるロウ付けエリア(30)の隣に、パイプベンダー(71)が設けられる。このため、パイプベンダー(71)を用いた準備工程とロウ付け工程とを行う第1作業者(151)の移動距離を最小限に抑えることができる。
【0078】
上述したように、気密試験が終了すると、第2作業者(152)が試験対象の半製品(101)からプラグやホースなどを取り外す。半製品(101)からプラグやホースなどが取り外されると、半製品(101)に残存していた試験用ガスが試験空間(47)へ流出する。そして、半製品(101)から流出した試験用ガスに含まれるフロンガスが試験空間(47)に残存している間は、次の半製品(101)の気密試験を行うことができない。
【0079】
これに対し、本実施形態の製造設備(10)では、給気ファン(49)によって試験空間(47)へ外気が常に供給されている。このため、半製品(101)から試験空間(47)へ流出した試験用ガスは、給気ファン(49)によって供給された外気によって押し出されて速やかに試験空間(47)から排出される。つまり、本実施形態の製造設備(10)では、気密試験を行うための試験空間(47)を、試験用ガスに含まれるフロンガスが存在しない状態に保つことができる。
【0080】
このため、気密試験用の試験用ガスが試験対象の半製品(101)から漏洩した場合に、漏洩した試験用ガスに含まれるフロンガスを確実に検知することができ、気密性が確保されていない半製品(101)(即ち、不良品)を確実に発見することが可能となる。また、半製品(101)の気密試験が終了した後に、速やかに次の半製品(101)の気密試験を開始することができ、一つの半製品(101)の気密試験に要する時間を短縮することができる。
【0081】
−実施形態1の変形例−
本実施形態の製造設備(10)では、箱体(20)がトレーラ(201)の車台(202)と別体に構成されているが、この箱体(20)はトレーラ(201)の車台(202)と一体に構成されていてもよい。
【0082】
また、本実施形態の製造設備(10)を構成する箱体(20)は、自走可能なトラックの車台(202)に搭載されてもよい。つまり、本実施形態の製造設備(10)を構成する箱体(20)を搭載する車両は、自走可能な車両(例えば、トラック)であってもよいし、自走不可能な車両(例えば、トレーラ)であってもよい。
【0083】
《実施形態2》
実施形態2について説明する。ここでは、本実施形態の製造設備(10)について、実施形態1の製造設備(10)と異なる点を説明する。
【0084】
−箱体の構造−
図13に示すように、本実施形態の製造設備(10)は、箱体(20)がバン型トラック(205)の車台(202)に設けられている。本実施形態の箱体(20)は、トラック(205)の車台(202)と一体化されている。
【0085】
図14及び
図15にも示すように、箱体(20)は、可動式の上部パネル(80)及び下部パネル(85)を備えている。上部パネル(80)及び下部パネル(85)は、箱体(20)の長手方向の概ね全長に亘って設けられた長い部材である。
【0086】
上部パネル(80)は、L字形に折れ曲がった板状に形成されている。この上部パネル(80)は、天板部(81)及び側板部(82)を備えている。
図15に示すように、天板部(81)は、概ね水平姿勢の長方形板状に形成されている。この天板部(81)は、箱体(20)の天板のうち第2側壁(22)側(
図15における右側)の概ね半分を構成する。また、
図15に示すように、側板部(82)は、天板部(81)の一方の長辺から下方へ延びる長方形板状に形成されている。この側板部(82)は、箱体(20)の第2側壁(22)の上部を構成する。上部パネル(80)は、側板部(82)とは逆側に位置する天板部(81)の長辺を中心軸として回動可能となっている。
【0087】
下部パネル(85)は、長方形板状に形成されている。
図15に示すように、下部パネル(85)は、箱体(20)の底部の側方の縁部から上方へ延びるように設置されている。下部パネル(85)は、箱体(20)の第2側壁(22)の下部を構成する。下部パネル(85)は、下方の長辺を中心軸として回動可能となっている。
【0088】
上述したように、本実施形態の箱体(20)は、上部パネル(80)と下部パネル(85)とが回動可能となっている。また、本実施形態の箱体(20)は、第2側壁(22)が上部パネル(80)の側板部(82)と下部パネル(85)とによって構成されている。そして、本実施形態の箱体(20)は、上部パネル(80)と下部パネル(85)とが回動することによって、第2側壁(22)が開閉可能となっている。
【0089】
実施形態1と同様に、箱体(20)の内部空間では、箱体(20)の後端から前端へ向かって順に、ロウ付けエリア(30)と気密試験エリア(40)と仕上げエリア(50)とが、箱体(20)の第1側壁(21)に沿って一列に配置されている。ただし、本実施形態の製造設備(10)では、ロウ付けエリア(30)の給気ファン(32)と、仕上げエリア(50)の給気ファン(52)とが省略されている。また、箱体(20)の内部空間は、第2側壁(22)側の領域が、作業用通路(55)となっている。
【0090】
−通路拡張ユニット−
図13〜15に示すように、本実施形態の箱体(20)には、通路拡張ユニット(90)が設けられている。この通路拡張ユニット(90)は、箱体(20)の内部空間と共に作業用通路(55)を形成するためのユニットである。通路拡張ユニット(90)は、通路形成部材である通路板(91)と、転落防止用の柵(92)と、複数(本実施形態では五本)の支持脚(93)と、第1階段(94a)と、第2階段(94b)とを備えている。
【0091】
通路板(91)は、長方形板状の部材である。通路板(91)の長辺の長さは、箱体(20)の内部空間の長さ(長手方向の長さ)と概ね等しい。通路板(91)は、箱体(20)の床面と概ね平行に配置されている。通路板(91)は、図外のガイドレールを介して箱体(20)の底部に取り付けられ、箱体(20)に対してスライド自在となっている。通路板(91)は、その全体が箱体(20)の内部に収納される収納位置(
図15に示す位置)と、その大部分が箱体(20)の側方へ突出する展開位置(
図14に示す位置)との間を移動できる。
【0092】
柵(92)は、通路板(91)からの作業者の転落を防止するための部材である。柵(92)は、通路板(91)の突端側の長辺に沿って、通路板(91)の上面に起立した姿勢で設けられる。また、柵(92)は、通路板(91)の長辺の概ね全長に亘って設けられている。この柵(92)は、通路板(91)に対して、着脱可能に取り付けられている。
【0093】
支持脚(93)は、地面と通路板(91)の間に設けられて通路板(91)を支持するための棒状の部材である。支持脚(93)は、通路板(91)の下面から下方へ延びるように設けられている。本実施形態の五本の支持脚(93)は、通路板(91)の突端側の長辺に沿って、概ね等間隔に配置されている。支持脚(93)は、通路板(91)に対して着脱可能となっている。
【0094】
第1階段(94a)は、箱体(20)の後端側に位置する通路板(91)の短辺に沿った部分に取り付けられている。一方、第2階段(94b)は、箱体(20)の前端側に位置する通路板(91)の短辺に沿った部分に取り付けられている。第1階段(94a)と第2階段(94b)のそれぞれは、通路板(91)の短辺に沿った部分に対して、回動可能に取り付けられている。なお、第1階段(94a)と第2階段(94b)のそれぞれは、通路板(91)の短辺に沿った部分に対して、着脱可能に取り付けられていてもよい。
【0095】
−稼働時の製造設備−
本実施形態の製造設備(10)において配管部品(100)が製造される稼働時の製造設備(10)の状態を説明する。
【0096】
図13及び
図14に示すように、稼働時の製造設備(10)では、箱体(20)の第2側壁(22)が開いた状態となる。具体的には、上部パネル(80)が上方へ回転移動して跳ね上がった状態となり、下部パネル(85)が下方へ回転移動して垂れ下がった状態となる。なお、箱体(20)の後端に設けられた後部扉(24)は、製造設備(10)の稼働時と休止時の両方において閉じている。
【0097】
また、稼働時の製造設備(10)では、通路拡張ユニット(90)が展開状態となる。つまり、通路板(91)が箱体(20)の側方へ突出した展開位置に位置し、通路板(91)に支持脚(93)が取り付けられ、第1階段(94a)及び第2階段(94b)の下端が地面に接する状態となる。この状態において、通路板(91)は、箱体(20)の内部空間のうち第2側壁(22)側の領域と共に、作業用通路(55)を形成する。また、この状態において、ベンダーユニット(70)は、通路板(91)のうちロウ付けエリア(30)の側方に位置する部分に配置される(
図13を参照)。
【0098】
−休止時の製造設備−
本実施形態の製造設備(10)において配管部品(100)の製造が行われない休止時の製造設備(10)の状態を説明する。例えば、作業者の休日やトラック(205)の移動中は、製造設備(10)が休止する。
【0099】
図15に示すように、休止時の製造設備(10)では、通路拡張ユニット(90)が収納状態となる。つまり、第1階段(94a)及び第2階段(94b)が通路板(91)の上に載った状態となり、支持脚(93)が通路板(91)から取り外され、通路板(91)が収納位置に位置する状態となる。この状態において、通路拡張ユニット(90)は、その全体が箱体(20)の内部空間に収納された状態となる。なお、
図15において図示は省略するが、通路板(91)から取り外された支持脚(93)も、箱体(20)の内部空間に収納される。
【0100】
また、休止時の製造設備(10)では、箱体(20)の第2側壁(22)が閉じた状態となる。具体的には、上部パネル(80)が下方へ回転移動すると共に、下部パネル(85)が上方へ回転移動し、上部パネル(80)の側板部(82)の下縁部と下部パネル(85)の上縁部とが接する。
【0101】
−実施形態2の効果−
本実施形態によれば、実施形態1によって得られる効果に加えて、下記の効果が得られる。
【0102】
本実施形態の箱体(20)は、第2側壁(22)が開閉可能となっている。第2側壁(22)が開いた状態では、箱体(20)内での作業中に半製品(101)や作業者の体などが第2側壁(22)にぶつからない。従って、本実施形態によれば、箱体(20)内における配管部品(100)の製造作業を円滑に行うことが可能となり、配管部品(100)の製造効率を向上させることが可能となる。
【0103】
また、箱体(20)の第2側壁(22)が開いた状態(
図13及び
図14に示す状態)では、箱体(20)の内部空間が充分に換気される。このため、箱体(20)の内部空間の酸素濃度の低下を回避しつつ、ロウ付けエリア(30)の給気ファン(32)と、仕上げエリア(50)の給気ファン(52)とを省略することができる。
【0104】
また、本実施形態では、通路形成ユニットの通路板(91)が、箱体(20)の内部空間のうち第2側壁(22)に沿った部分と共に作業用通路(55)を形成する。従って、本実施形態によれば、作業者が移動や作業を行うための作業用通路(55)を、箱体(20)の幅方向(長手方向と直行する方向)へ拡大することができ、配管部品(100)の製造作業を一層円滑化できる。
【0105】
−実施形態2の変形例−
上述したように、本実施形態の製造設備(10)では、箱体(20)の第2側壁(22)が開くことによって、ロウ付けエリア(30)の換気が確保される。従って、本実施形態の製造設備(10)では、箱体(20)の前端から後端へ向かって順に、ロウ付けエリア(30)と気密試験エリア(40)と仕上げエリア(50)とが一列に配置されていてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施形態および変形例は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0014】
《実施形態1》
実施形態1について説明する。本実施形態の製造設備(10)は、冷凍装置の一種である空気調和機を据え付ける際に用いられる配管部品(100)を製造するための設備である。この製造設備(10)において製造された配管部品(100)は、例えば比較的大規模なビルや商業施設などに空気調和機を据え付ける際に、空気調和機を構成する室外ユニットと室内ユニットを接続するために用いられる。
【0015】
図1に示すように、本実施形態の製造設備(10)は、箱体(20)と、発電機(15)と、箱体(20)の内部空間を空気調和する空気調和機とを備えている。なお、製造設備(10)を構成する空気調和機の図示は省略する。
【0016】
本実施形態の製造設備(10)は、牽引車(200)によって牽引されるトレーラ(201)の車台(202)に搭載されている。トレーラ(201)の車台(202)において、発電機(15)は、箱体(20)の前方に配置されている。また、トレーラ(201)の車台(202)における箱体(20)の前方には、箱体(20)の内部空間を空気調和する空気調和機の室外ユニットが配置されている。
【0017】
−箱体の構造−
箱体(20)は、矩形の細長い箱状に形成されている。この箱体(20)としては、例えば海上輸送用のコンテナを用いることができる。箱体(20)の後端は、全面に亘って開口した後端開口(23)となっている。箱体(20)には、後端開口(23)を塞ぐために、両開きの一対の後部扉(24)が設けられている。つまり、箱体(20)は、その後端に後部扉(24)が設けられている。箱体(20)は、その後端から見て左側の側板が第1側壁(21)を、右側の側板が第2側壁(22)をそれぞれ構成している。また、箱体(20)の前端に位置する側板は、前端壁(25)を構成している。
【0018】
箱体(20)の後端部には、折りたたみ式の階段(16)が設置されている。本実施形態の製造設備(10)において配管部品(100)の製造を行う場合には、
図2に示すように、箱体(20)の後端から後方へ延びるように階段(16)が設置される。作業者は、この階段(16)を使って箱体(20)に出入りする。
【0019】
−箱体の内部構造−
図2及び
図3に示すように、箱体(20)の内部空間には、ロウ付けエリア(30)と、気密試験エリア(40)と、仕上げエリア(50)と、作業用通路(55)とが形成されている。作業用通路(55)には、後述するベンダーユニット(70)が配置されている。
【0020】
箱体(20)の内部空間では、箱体(20)の後端から前端へ向かって順に、ロウ付けエリア(30)と気密試験エリア(40)と仕上げエリア(50)とが、箱体(20)の第1側壁(21)に沿って一列に配置されている。また、箱体(20)の内部空間では、箱体(20)の第2側壁(22)に沿った残りの領域が、作業用通路(55)となっている。
【0021】
つまり、箱体(20)の内部空間は、箱体(20)の幅方向の中央部よりも第1側壁(21)寄りの領域が、ロウ付けエリア(30)と、気密試験エリア(40)と、仕上げエリア(50)とに区分されている。また、箱体(20)の内部空間は、箱体(20)の幅方向の中央部よりも第2側壁(22)寄りの領域が、箱体(20)の後端から前端に亘る作業用通路(55)となっている。
【0022】
〈ロウ付けエリア〉
図2及び
図3に示すように、ロウ付けエリア(30)は、箱体(20)の後端開口(23)に隣接している。ロウ付けエリア(30)には、ロウ付け作業台(31)が設置されている。ロウ付け作業台(31)の上では、複数の部材をロウ付けによって接合して半製品(101)を製造する作業が行われる。図示しないが、ロウ付けエリア(30)には、ロウ付け作業に必要なバーナーや燃料ガスのボンベ等も設置されている。
【0023】
ロウ付け作業台(31)は、長方形の板状に形成されている。
図4に示すように、ロウ付け作業台(31)は、一方の長辺が箱体(20)の第1側壁(21)に固定され、この第1側壁(21)に対して回動自在となっている。ロウ付け作業台(31)は、
図3及び
図4に実線で示す使用状態(概ね水平となった状態)と、
図4に二点鎖線で示す収納状態(概ね垂直となって第1側壁(21)に沿った状態)との間を移動可能となっている。
【0024】
箱体(20)の第1側壁(21)のうちロウ付けエリア(30)に面する部分には、ロウ付けエリア(30)と作業用通路(55)へ外気(即ち、箱体(20)の外部の空気)を供給するための給気ファン(32)が設けられている。
【0025】
ロウ付けエリア(30)で行われるロウ付け作業では、ロウ材を融かすためにバーナーが用いられる。バーナーで燃料ガスを燃焼させると、酸素が消費される。このため、ロウ付けエリア(30)の換気が不充分であると、ロウ付けエリア(30)の酸素濃度が低下するおそれがある。また、燃料ガスが漏洩した場合には、滞留した燃料ガスに引火するおそれがある。そこで、本実施形態の製造設備(10)では、ロウ付けエリア(30)の換気が充分に行われるように、ロウ付けエリア(30)が箱体(20)の後端開口(23)に隣接する位置に設けられている。
【0026】
〈ベンダーユニット〉
図2及び
図3に示すように、ベンダーユニット(70)は、作業用通路(55)のうちロウ付けエリア(30)に隣接する領域に設置されている。ベンダーユニット(70)は、半製品(101)を構成する銅管を曲げるためのパイプベンダー(71)と、パイプベンダー(71)を載せるための置き台(72)とを備えている。この置き台(72)には、キャスターが取り付けられている。従って、ベンダーユニット(70)は、移動可能となっている。
【0027】
〈気密試験エリア〉
図2及び
図3に示すように、気密試験エリア(40)は、ロウ付けエリア(30)の隣に配置されている。この気密試験エリア(40)は、箱体(20)の長手方向の中央部に位置している。気密試験エリア(40)には、気密試験の対象となる半製品(101)を置くための気密試験作業台(41)と、気密試験を行うための付属機器(48)とが配置されている。
【0028】
図6にも示すように、気密試験作業台(41)は、机状の作業台本体(42)と、カバー部材(45)とを備えている。作業台本体(42)は、長方形状の天板(43)と、天板(43)を支持する脚(44)とを有している。カバー部材(45)は、下面が開口した箱状に形成され、作業台本体(42)の天板(43)を覆うように配置される。気密試験作業台(41)では、作業台本体(42)の天板(43)とカバー部材(45)とによって囲われた試験空間(47)が形成されている。
【0029】
カバー部材(45)の上面部および前面部は、透明なポリカーボネイト板によって構成されている。カバー部材(45)の側面部および背面部は、多数の小孔が形成されたパンチング板によって構成されている。
図7に示すように、カバー部材(45)は、その前面寄りの部分が、残りの部分に対して回動自在なカバー扉(46)を構成している。
【0030】
付属機器(48)は、気密試験作業台(41)の横に配置されている。この付属機器(48)は、気密試験を行うために半製品(101)へ充填する試験用ガスのボンベや、半製品(101)に充填した試験用ガスの圧力を計測する圧力計等によって構成されている。なお、本実施形態では、試験用ガスとして、いわゆるフロンガスと窒素の混合ガスが用いられる。ただし、窒素と共に試験用ガスを構成するガスは、フロンガスには限定されない。
【0031】
箱体(20)の第1側壁(21)のうち気密試験エリア(40)に面する部分には、気密試験エリア(40)へ外気(即ち、箱体(20)の外部の空気)を供給するための給気ファン(49)が設けられている。
図6に示すように、この給気ファン(49)は、作業台本体(42)の天板(43)のすぐ上に配置され、気密試験作業台(41)の試験空間(47)へ外気を吹き出す。給気ファン(49)が試験空間(47)へ供給した外気は、カバー部材(45)の側面部および背面部を構成するパンチング板の小孔や、作業台本体(42)とカバー部材(45)の隙間などを通って、試験空間(47)の外部へ流出してゆく。
【0032】
〈仕上げエリア〉
図2及び
図3に示すように、仕上げエリア(50)は、箱体(20)の前端壁(25)寄りに配置されている。仕上げエリア(50)には、仕上げ作業台(51)が設置されている。仕上げ作業台(51)は、長方形の机状に形成され、その長辺が箱体(20)の第1側壁(21)に沿うように設置されている。仕上げ作業台(51)の上では、半製品(101)を断熱材(104)で覆って配管部品(100)を完成させる作業が行われる。図示しないが、仕上げエリア(50)には、断熱材(104)や、断熱材(104)を固定するための粘着テープなども設置されている。
【0033】
図2及び
図8に示すように、箱体(20)の第1側壁(21)のうち仕上げエリア(50)に面する部分には、配管部品(100)を箱体(20)の外部へ搬出するための搬出口(60)が形成されている。この搬出口(60)は、仕上げ作業台(51)の上面に沿って延びる細長い長方形状の開口である。箱体(20)の第1側壁(21)には、搬出口(60)を塞ぐための搬出用扉(61)が設けられている。搬出用扉(61)は、搬出口(60)よりも一回り大きな長方形板状の部材である。搬出用扉(61)は、その一方の長辺を軸に回動自在となっている。
【0034】
箱体(20)の第1側壁(21)のうち仕上げエリア(50)に面する部分には、仕上げエリア(50)と作業用通路(55)へ外気を供給するための給気ファン(52)が設けられている。
【0035】
−シート状部材、保持用フック、収納用フック−
図9及び
図10に示すように、本実施形態の製造設備(10)は、箱体(20)に取り付けられるシート状部材(62)を更に備えている。シート状部材(62)は、柔軟な長方形のシートである本体シート(63)と、本体シート(63)の各短辺に一本ずつ取り付けられた支持パイプ(64)とを備えている。支持パイプ(64)の長さは、本体シート(63)の短辺よりも長い。支持パイプ(64)の両端部は、本体シート(63)の縁から突出している。
【0036】
図8に示すように、箱体(20)の第1側壁(21)には、シート状部材(62)の支持パイプ(64)を保持するための一対の保持用フック(26)が取り付けられている。この保持用フック(26)は、搬出口(60)の両側に一つずつ配置されている。また、箱体(20)の第1側壁(21)には、シート状部材(62)を収納するための一対の収納用フック(27)が取り付けられている。この一対の収納用フック(27)は、搬出口(60)の上方に、互いに所定の間隔をおいて配置されている。
【0037】
図9に示すように、シート状部材(62)は、箱体(20)に形成された搬出口(60)から箱体(20)の外部の地面に置かれたパイプスタンド(65)に亘って張り渡される。シート状部材(62)の一方の支持パイプ(64)は、その両方の端部が、保持用フック(26)に引っ掛けられる。また、シート状部材(62)の他方の支持パイプ(64)は、パイプスタンド(65)に固定される。シート状部材(62)は、本体シート(63)の一部分がパイプスタンド(65)に固定された支持パイプ(64)よりも下に垂れ下がるように設置され、搬出口(60)から送り出された配管部品(100)を受け止める。
【0038】
なお、シート状部材(62)は、配管部品(100)の製造作業を行わないとき(例えば、作業者の休日や、トレーラ(201)の移動中)には、箱体(20)の内部に収納される。その際、シート状部材(62)は、一方の支持パイプ(64)に本体シート(63)を巻き付けた状態で、本体シート(63)を巻き付けた支持パイプ(64)の端部を収納用フック(27)に引っ掛けた状態で収納される。
【0039】
−配管部品の製造作業−
本実施形態の製造設備(10)において行われる配管部品(100)の製造作業について説明する。ここでは、配管部品(100)の製造作業を二名の作業者(151,152)が分担して行う場合を例に説明する。なお、
図3及び
図5に示すように、配管部品(100)の製造作業中には、箱体(20)の後部扉(24)が開いた状態に保持される。
【0040】
第1作業者(151)は、先ず準備工程を行う。この準備工程は、主に、作業用通路(55)のうちロウ付けエリア(30)に隣接する部分において行われる。準備工程を行うとき、第1作業者(151)は、ロウ付け作業台(31)を収納状態(
図4に二点鎖線で示す状態)とし、ベンダーユニット(70)を作業用通路(55)の幅方向の中央付近に配置する(
図5を参照)。
【0041】
準備工程は、半製品(101)を構成する管部材(102)を製作する工程である。準備工程において、第1作業者(151)は、銅管を所定の長さに切断し、切断した銅管を必要に応じて曲げる。その際、第1作業者(151)は、ベンダーユニット(70)のパイプベンダー(71)を用いて、銅管を曲げる。
【0042】
半製品(101)を構成する管部材(102)が幾つかできると、第1作業者(151)は、準備工程を終了してロウ付け工程を開始する。ロウ付け工程を行うとき、第1作業者(151)は、ロウ付け作業台(31)を使用状態(
図4に実線で示す状態)とし、ベンダーユニット(70)を第2側壁(22)寄りに配置する(
図3を参照)。
【0043】
ロウ付け工程において、第1作業者(151)は、準備工程において製作した管部材(102)と、予め準備された継手(103)とを組み合わせ、それらをロウ付けによって接合する。その結果、複数の部材を接合して一体化した半製品(101)が完成する。第1作業者(151)は、この作業をロウ付け作業台(31)の上で行う。この半製品(101)の一例を
図11に示す。
図11に示す半製品(101)は、二股の分岐管である。第1作業者(151)は、完成した半製品(101)を気密試験エリア(40)へと運ぶ。
【0044】
第2作業者(152)は、気密試験工程を行う。この気密試験工程において、第2作業者(152)は、ロウ付け工程において完成した半製品(101)の気密性を試験する。
【0045】
具体的に、第2作業者(152)は、先ず、カバー扉(46)を開いて半製品(101)を試験空間(47)に配置する。続いて、第2作業者(152)は、半製品(101)の端部に封止用のプラグやガス充填用のホースを接続してからカバー扉(46)を閉じ、半製品(101)に所定圧力の試験用ガスを充填する。半製品(101)への試験用ガスの充填が終了すると、第2作業者(152)は、カバー扉(46)を開き、フロンガスを検知可能なガス検知器を半製品(101)の表面に沿って移動させ、半製品(101)から試験用ガスが漏洩しているか否かを調べる。試験が終了すると、第2作業者(152)は、半製品(101)から試験用ガスを排出し、半製品(101)からプラグやホースなどを取り外す。第2作業者(152)は、試験用ガスが漏洩しなかった半製品(101)だけを仕上げエリア(50)へ運ぶ。
【0046】
次に、第2作業者(152)は、仕上げ工程を行う。この仕上げ工程において、第2作業者(152)は、気密試験に合格した半製品(101)(即ち、気密試験において試験用ガスが漏洩しなかった半製品(101))を断熱材(104)で覆う。その結果、例えば
図12に示すような配管部品(100)が完成する。
図12に示す配管部品(100)は、
図11に示す二股の分岐管を断熱材(104)で被覆したものである。また、仕上げ工程において、第2作業者(152)は、半製品(101)の端部に保護用のキャップを取り付ける。第2作業者(152)は、これらの作業を仕上げ作業台(51)の上で行う。
【0047】
第2作業者(152)は、完成させた配管部品(100)を、搬出口(60)から箱体(20)の外部へ送り出す。搬出口(60)は、仕上げ作業台(51)の上面に沿って開口している。このため、第2作業者は、仕上げ作業台(51)に載った配管部品(100)を奥側へ押し出すだけで、配管部品(100)を搬出口(60)から箱体(20)の外部へ送り出すことができる。搬出口(60)から送り出された配管部品(100)は、シート状部材(62)に受け止められ、本体シート(63)の上を滑り落ちてゆく。
【0048】
このように、本実施形態の製造設備(10)において行われる配管部品(100)の製造作業では、箱体(20)の後端寄りに配置されたロウ付けエリア(30)において完成した半製品(101)が、箱体(20)の後端から前端へ向かって運ばれ、箱体(20)の前端寄りに配置された仕上げエリア(50)において、完成品である配管部品(100)となる。そして、仕上げエリア(50)において完成した配管部品(100)は、搬出口(60)から箱体(20)の外部へ送り出される。
【0049】
−実施形態1の効果−
本実施形態の製造設備(10)では、箱体(20)の内部空間において、ロウ付けエリア(30)と気密試験エリア(40)と仕上げエリア(50)とが箱体(20)の第1側壁(21)に沿って一列に配置され、箱体(20)の第2側壁(22)に沿って作業用通路(55)が形成される。箱体(20)の内部空間において、配管部品(100)の製造作業を行う作業者(151,152)は、箱体(20)の第2側壁(22)に沿った真っ直ぐな作業用通路(55)を通って複数のエリア(30,40,50)の間を移動できる。このため、箱体(20)の内部空間における作業者(151,152)の動線が簡素化される。従って、本実施形態によれば、作業性を損なうことなく、一つの箱体(20)の内部空間に、ロウ付けエリア(30)と気密試験エリア(40)と仕上げエリア(50)とを配置することができる。
【0050】
また、本実施形態の製造設備(10)では、火を用いるロウ付け作業を行うためのロウ付けエリア(30)が、箱体(20)の後端寄りに配置される。このため、ロウ付けエリア(30)の換気を充分に行うことができ、ロウ付けエリア(30)の酸素濃度の低下を確実に回避することができる。
【0051】
また、本実施形態の製造設備(10)では、ロウ付けエリア(30)と気密試験エリア(40)と仕上げエリア(50)とが、箱体(20)の後端から前端へ向かって順に配置されている。このため、配管部品(100)の製造作業では、ロウ付けエリア(30)において完成した半製品(101)を、箱体(20)の後端から前端へ向かって一方向へ移動させながら、半製品(101)に対する試験や加工を行うことができる。従って、本実施形態の製造設備(10)によれば、配管部品(100)の製造作業を、複数の作業者(151,152)による流れ作業として行うことが可能となる。
【0052】
また、本実施形態の製造設備(10)では、箱体(20)の第1側壁(21)のうち仕上げエリア(50)に面する部分に搬出口(60)が形成される。そして、仕上げエリア(50)において完成した配管部品(100)は、搬出口(60)から箱体(20)の外部へ搬出される。このため、箱体(20)の後端開口(23)から最も遠い仕上げエリア(50)において完成した配管部品(100)を、箱体(20)の前端から後端へ搬送することなく、搬出口(60)から箱体(20)の外部へ直接に搬出することができる。従って、本実施形態によれば、箱体(20)の内部空間における作業者の動線を一層簡素化でき、配管部品(100)の製造作業の作業効率を高めることが可能となる。
【0053】
また、本実施形態の製造設備(10)では、搬出口(60)が仕上げ作業台(51)の上面に沿って形成される。このため、作業者は、仕上げ作業台(51)の上の配管部品(100)を奥へ押し出すだけで、配管部品(100)を搬出口(60)から箱体(20)の外部へ送り出すことができる。従って、本実施形態によれば、配管部品(100)の搬出作業を簡素化することができる。
【0054】
また、本実施形態の製造設備(10)では、搬出口(60)から送り出された配管部品(100)が、シート状部材(62)によって受け止められる。このため、搬出口(60)から送り出された配管部品(100)の破損を未然に防ぐことができる。
【0055】
また、本実施形態の製造設備(10)では、箱体(20)の幅方向におけるロウ付けエリア(30)の隣に、パイプベンダー(71)が設けられる。このため、パイプベンダー(71)を用いた準備工程とロウ付け工程とを行う第1作業者(151)の移動距離を最小限に抑えることができる。
【0056】
上述したように、気密試験が終了すると、第2作業者(152)が試験対象の半製品(101)からプラグやホースなどを取り外す。半製品(101)からプラグやホースなどが取り外されると、半製品(101)に残存していた試験用ガスが試験空間(47)へ流出する。そして、半製品(101)から流出した試験用ガスに含まれるフロンガスが試験空間(47)に残存している間は、次の半製品(101)の気密試験を行うことができない。
【0057】
これに対し、本実施形態の製造設備(10)では、給気ファン(49)によって試験空間(47)へ外気が常に供給されている。このため、半製品(101)から試験空間(47)へ流出した試験用ガスは、給気ファン(49)によって供給された外気によって押し出されて速やかに試験空間(47)から排出される。つまり、本実施形態の製造設備(10)では、気密試験を行うための試験空間(47)を、試験用ガスに含まれるフロンガスが存在しない状態に保つことができる。
【0058】
このため、気密試験用の試験用ガスが試験対象の半製品(101)から漏洩した場合に、漏洩した試験用ガスに含まれるフロンガスを確実に検知することができ、気密性が確保されていない半製品(101)(即ち、不良品)を確実に発見することが可能となる。また、半製品(101)の気密試験が終了した後に、速やかに次の半製品(101)の気密試験を開始することができ、一つの半製品(101)の気密試験に要する時間を短縮することができる。
【0059】
−実施形態1の変形例−
本実施形態の製造設備(10)では、箱体(20)がトレーラ(201)の車台(202)と別体に構成されているが、この箱体(20)はトレーラ(201)の車台(202)と一体に構成されていてもよい。
【0060】
また、本実施形態の製造設備(10)を構成する箱体(20)は、自走可能なトラックの車台(202)に搭載されてもよい。つまり、本実施形態の製造設備(10)を構成する箱体(20)を搭載する車両は、自走可能な車両(例えば、トラック)であってもよいし、自走不可能な車両(例えば、トレーラ)であってもよい。
【0061】
《実施形態2》
実施形態2について説明する。ここでは、本実施形態の製造設備(10)について、実施形態1の製造設備(10)と異なる点を説明する。
【0062】
−箱体の構造−
図13に示すように、本実施形態の製造設備(10)は、箱体(20)がバン型トラック(205)の車台(202)に設けられている。本実施形態の箱体(20)は、トラック(205)の車台(202)と一体化されている。
【0063】
図14及び
図15にも示すように、箱体(20)は、可動式の上部パネル(80)及び下部パネル(85)を備えている。上部パネル(80)及び下部パネル(85)は、箱体(20)の長手方向の概ね全長に亘って設けられた長い部材である。
【0064】
上部パネル(80)は、L字形に折れ曲がった板状に形成されている。この上部パネル(80)は、天板部(81)及び側板部(82)を備えている。
図15に示すように、天板部(81)は、概ね水平姿勢の長方形板状に形成されている。この天板部(81)は、箱体(20)の天板のうち第2側壁(22)側(
図15における右側)の概ね半分を構成する。また、
図15に示すように、側板部(82)は、天板部(81)の一方の長辺から下方へ延びる長方形板状に形成されている。この側板部(82)は、箱体(20)の第2側壁(22)の上部を構成する。上部パネル(80)は、側板部(82)とは逆側に位置する天板部(81)の長辺を中心軸として回動可能となっている。
【0065】
下部パネル(85)は、長方形板状に形成されている。
図15に示すように、下部パネル(85)は、箱体(20)の底部の側方の縁部から上方へ延びるように設置されている。下部パネル(85)は、箱体(20)の第2側壁(22)の下部を構成する。下部パネル(85)は、下方の長辺を中心軸として回動可能となっている。
【0066】
上述したように、本実施形態の箱体(20)は、上部パネル(80)と下部パネル(85)とが回動可能となっている。また、本実施形態の箱体(20)は、第2側壁(22)が上部パネル(80)の側板部(82)と下部パネル(85)とによって構成されている。そして、本実施形態の箱体(20)は、上部パネル(80)と下部パネル(85)とが回動することによって、第2側壁(22)が開閉可能となっている。
【0067】
実施形態1と同様に、箱体(20)の内部空間では、箱体(20)の後端から前端へ向かって順に、ロウ付けエリア(30)と気密試験エリア(40)と仕上げエリア(50)とが、箱体(20)の第1側壁(21)に沿って一列に配置されている。ただし、本実施形態の製造設備(10)では、ロウ付けエリア(30)の給気ファン(32)と、仕上げエリア(50)の給気ファン(52)とが省略されている。また、箱体(20)の内部空間は、第2側壁(22)側の領域が、作業用通路(55)となっている。
【0068】
−通路拡張ユニット−
図13〜15に示すように、本実施形態の箱体(20)には、通路拡張ユニット(90)が設けられている。この通路拡張ユニット(90)は、箱体(20)の内部空間と共に作業用通路(55)を形成するためのユニットである。通路拡張ユニット(90)は、通路形成部材である通路板(91)と、転落防止用の柵(92)と、複数(本実施形態では五本)の支持脚(93)と、第1階段(94a)と、第2階段(94b)とを備えている。
【0069】
通路板(91)は、長方形板状の部材である。通路板(91)の長辺の長さは、箱体(20)の内部空間の長さ(長手方向の長さ)と概ね等しい。通路板(91)は、箱体(20)の床面と概ね平行に配置されている。通路板(91)は、図外のガイドレールを介して箱体(20)の底部に取り付けられ、箱体(20)に対してスライド自在となっている。通路板(91)は、その全体が箱体(20)の内部に収納される収納位置(
図15に示す位置)と、その大部分が箱体(20)の側方へ突出する展開位置(
図14に示す位置)との間を移動できる。
【0070】
柵(92)は、通路板(91)からの作業者の転落を防止するための部材である。柵(92)は、通路板(91)の突端側の長辺に沿って、通路板(91)の上面に起立した姿勢で設けられる。また、柵(92)は、通路板(91)の長辺の概ね全長に亘って設けられている。この柵(92)は、通路板(91)に対して、着脱可能に取り付けられている。
【0071】
支持脚(93)は、地面と通路板(91)の間に設けられて通路板(91)を支持するための棒状の部材である。支持脚(93)は、通路板(91)の下面から下方へ延びるように設けられている。本実施形態の五本の支持脚(93)は、通路板(91)の突端側の長辺に沿って、概ね等間隔に配置されている。支持脚(93)は、通路板(91)に対して着脱可能となっている。
【0072】
第1階段(94a)は、箱体(20)の後端側に位置する通路板(91)の短辺に沿った部分に取り付けられている。一方、第2階段(94b)は、箱体(20)の前端側に位置する通路板(91)の短辺に沿った部分に取り付けられている。第1階段(94a)と第2階段(94b)のそれぞれは、通路板(91)の短辺に沿った部分に対して、回動可能に取り付けられている。なお、第1階段(94a)と第2階段(94b)のそれぞれは、通路板(91)の短辺に沿った部分に対して、着脱可能に取り付けられていてもよい。
【0073】
−稼働時の製造設備−
本実施形態の製造設備(10)において配管部品(100)が製造される稼働時の製造設備(10)の状態を説明する。
【0074】
図13及び
図14に示すように、稼働時の製造設備(10)では、箱体(20)の第2側壁(22)が開いた状態となる。具体的には、上部パネル(80)が上方へ回転移動して跳ね上がった状態となり、下部パネル(85)が下方へ回転移動して垂れ下がった状態となる。なお、箱体(20)の後端に設けられた後部扉(24)は、製造設備(10)の稼働時と休止時の両方において閉じている。
【0075】
また、稼働時の製造設備(10)では、通路拡張ユニット(90)が展開状態となる。つまり、通路板(91)が箱体(20)の側方へ突出した展開位置に位置し、通路板(91)に支持脚(93)が取り付けられ、第1階段(94a)及び第2階段(94b)の下端が地面に接する状態となる。この状態において、通路板(91)は、箱体(20)の内部空間のうち第2側壁(22)側の領域と共に、作業用通路(55)を形成する。また、この状態において、ベンダーユニット(70)は、通路板(91)のうちロウ付けエリア(30)の側方に位置する部分に配置される(
図13を参照)。
【0076】
−休止時の製造設備−
本実施形態の製造設備(10)において配管部品(100)の製造が行われない休止時の製造設備(10)の状態を説明する。例えば、作業者の休日やトラック(205)の移動中は、製造設備(10)が休止する。
【0077】
図15に示すように、休止時の製造設備(10)では、通路拡張ユニット(90)が収納状態となる。つまり、第1階段(94a)及び第2階段(94b)が通路板(91)の上に載った状態となり、支持脚(93)が通路板(91)から取り外され、通路板(91)が収納位置に位置する状態となる。この状態において、通路拡張ユニット(90)は、その全体が箱体(20)の内部空間に収納された状態となる。なお、
図15において図示は省略するが、通路板(91)から取り外された支持脚(93)も、箱体(20)の内部空間に収納される。
【0078】
また、休止時の製造設備(10)では、箱体(20)の第2側壁(22)が閉じた状態となる。具体的には、上部パネル(80)が下方へ回転移動すると共に、下部パネル(85)が上方へ回転移動し、上部パネル(80)の側板部(82)の下縁部と下部パネル(85)の上縁部とが接する。
【0079】
−実施形態2の効果−
本実施形態によれば、実施形態1によって得られる効果に加えて、下記の効果が得られる。
【0080】
本実施形態の箱体(20)は、第2側壁(22)が開閉可能となっている。第2側壁(22)が開いた状態では、箱体(20)内での作業中に半製品(101)や作業者の体などが第2側壁(22)にぶつからない。従って、本実施形態によれば、箱体(20)内における配管部品(100)の製造作業を円滑に行うことが可能となり、配管部品(100)の製造効率を向上させることが可能となる。
【0081】
また、箱体(20)の第2側壁(22)が開いた状態(
図13及び
図14に示す状態)では、箱体(20)の内部空間が充分に換気される。このため、箱体(20)の内部空間の酸素濃度の低下を回避しつつ、ロウ付けエリア(30)の給気ファン(32)と、仕上げエリア(50)の給気ファン(52)とを省略することができる。
【0082】
また、本実施形態では、通路形成ユニットの通路板(91)が、箱体(20)の内部空間のうち第2側壁(22)に沿った部分と共に作業用通路(55)を形成する。従って、本実施形態によれば、作業者が移動や作業を行うための作業用通路(55)を、箱体(20)の幅方向(長手方向と直行する方向)へ拡大することができ、配管部品(100)の製造作業を一層円滑化できる。
【0083】
−実施形態2の変形例−
上述したように、本実施形態の製造設備(10)では、箱体(20)の第2側壁(22)が開くことによって、ロウ付けエリア(30)の換気が確保される。従って、本実施形態の製造設備(10)では、箱体(20)の前端から後端へ向かって順に、ロウ付けエリア(30)と気密試験エリア(40)と仕上げエリア(50)とが一列に配置されていてもよい。