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特開2017-227487信号処理装置、信号処理方法及び信号受信装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-227487(P2017-227487A)
(43)【公開日】2017年12月28日
(54)【発明の名称】信号処理装置、信号処理方法及び信号受信装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/02 20060101AFI20171201BHJP
   G01S 3/46 20060101ALI20171201BHJP
   H01Q 21/06 20060101ALI20171201BHJP
【FI】
   G01S7/02 218
   G01S3/46
   H01Q21/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-122438(P2016-122438)
(22)【出願日】2016年6月21日
(71)【出願人】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095957
【弁理士】
【氏名又は名称】亀谷 美明
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100128587
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 一騎
(72)【発明者】
【氏名】飯田 幸生
(72)【発明者】
【氏名】川崎 研一
(72)【発明者】
【氏名】山岸 弘幸
【テーマコード(参考)】
5J021
5J070
【Fターム(参考)】
5J021AA05
5J021AA07
5J021EA04
5J021HA04
5J070AC13
5J070AD06
5J070AD09
5J070AE09
5J070AE10
5J070AF01
5J070AH31
5J070AH34
5J070AK22
5J070AK40
(57)【要約】
【課題】位相検出を可能にして、少ないアンテナ素子数で高い方位分解能を持たせることが可能な信号処理装置を提供する。
【解決手段】複数の受信アンテナからなる受信アレーアンテナが受信した受信信号の受信信号ベクトルと、前記受信信号ベクトルの転置ベクトルとを乗じて行列を生成する行列生成部と、前記行列に基づいて前記受信信号の少なくとも位相を推定する推定部と、を備える、信号処理装置が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の受信アンテナからなる受信アレーアンテナが受信した受信信号の受信信号ベクトルと、前記受信信号ベクトルの転置ベクトルとを乗じて行列を生成する行列生成部と、
前記行列に基づいて前記受信信号の少なくとも位相を推定する推定部と、
を備える、信号処理装置。
【請求項2】
前記行列に対する演算を行って第1のベクトルを生成する第1ベクトル生成部と、
前記第1のベクトルの各要素に対して所定の演算を行って第2のベクトルを生成する第2ベクトル生成部と、
をさらに備え、
前記推定部は、前記第2のベクトルを用いて前記受信信号の少なくとも位相を推定する、請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項3】
前記第1ベクトル生成部は、前記行列の要素を位相が対応する位置へ写像することによって前記第1のベクトルを生成する、請求項2に記載の信号処理装置。
【請求項4】
前記第2ベクトル生成部は、前記第1のベクトルの各要素の振幅に対応する値を平方根に変換して前記第2のベクトルを生成する、請求項2に記載の信号処理装置。
【請求項5】
前記推定部は、さらに、前記受信信号の到来方向及び強度を推定する、請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項6】
前記受信アレーアンテナは、素子数がL(Lは2以上の整数)で、素子間距離dで線形状に配置される、請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項7】
前記受信アレーアンテナは、素子数がL(Lは2以上の整数)で、素子間距離dで線形状に配置される第1の受信アレーアンテナと、前記第1の受信アレーアンテナの配置方向と同一の方向にL×d以下の距離を隔てて、素子数がM(Mは2以上の整数)で、素子間距離dで線形状に配置される第2の受信アレーアンテナと、を備える、請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項8】
複数の受信アンテナからなる受信アレーアンテナが受信した受信信号の受信信号ベクトルと、前記受信信号ベクトルの転置ベクトルとを乗じて行列を生成することと、
前記行列に基づいて前記受信信号の少なくとも位相を推定することと、
を含む、信号処理方法。
【請求項9】
所定の間隔で配置された複数の受信アンテナからなる受信アレーアンテナと、
前記受信アレーアンテナが受信した受信信号の受信信号ベクトルと、前記受信信号ベクトルの転置ベクトルとを乗じて行列を生成する行列生成部と、
前記行列に基づいて前記受信信号の少なくとも位相を推定する推定部と、
を備える、信号受信装置。
【請求項10】
前記受信アレーアンテナは、素子数がL(Lは2以上の整数)で、素子間距離dで線形状に配置される、請求項7に記載の信号受信装置。
【請求項11】
前記受信アレーアンテナは、素子数がL(Lは2以上の整数)で、素子間距離dで線形状に配置される第1の受信アレーアンテナと、前記第1の受信アレーアンテナの配置方向と同一の方向にL×d以下の距離を隔てて、素子数がM(Mは2以上の整数)で、素子間距離dで線形状に配置される第2の受信アレーアンテナと、を備える、請求項7に記載の信号受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、信号処理装置、信号処理方法及び信号受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
見守りや介護のプライバシー保護のために、カメラの代わりにレーダを用いることや、ジェスチャー入力によるユーザインターフェースにレーダを用いることが検討されている。これらの目的に供するレーダ装置は、ターゲットの呼吸や心拍、指先などで生じる微小な動きを検知する必要があるため、レーダエコー信号の位相変化を用いている。また、これらの目的に供するレーダ装置は、設置のしやすさの観点から小型であることが望ましく、さらに複数のターゲットを分離するために方位分解能を有している必要がある。
【0003】
レーダ装置の小型化には、アレーアンテナの素子数を減らして開口長を短くすることが有効である。開口長と方位分解能は比例関係にあるため、従来は特許文献1のようにレーダエコー信号のコピーを位相が連続するように結合して仮想的にアンテナの素子数を拡張すること、または非特許文献1のように、レーダエコー信号の相関行列からKhatri-Rao積を用いた拡張アレー処理を行って仮想的にアンテナの素子数を拡張すること等で開口長を補うことが行われてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−217884号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】W. K. Ma, T. H. Hsien, and C. Y. Chi,“DOA estimation of quasi-stationarysignals with less sensors than sources and unknown spatial noise covariance AKhatri-Rao subspace approach,”IEEE Trans. Signal Process., vol. 58, no. 4, pp.2168-2180, April 2010.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記事情に鑑みれば、特に小型のレーダ装置においては、従来の拡張アレー処理では不可能な位相検出を可能にして、少ないアンテナ素子数で高い方位分解能を持たせることが望ましい。
【0007】
そこで、本開示では、位相検出を可能にして、少ないアンテナ素子数で高い方位分解能を持たせることが可能な、新規かつ改良された信号処理装置、信号処理方法及び信号受信装置を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示によれば、複数の受信アンテナからなる受信アレーアンテナが受信した受信信号の受信信号ベクトルと、前記受信信号ベクトルの転置ベクトルとを乗じて行列を生成する行列生成部と、前記行列に基づいて前記受信信号の少なくとも位相を推定する推定部と、を備える、信号処理装置が提供される。
【0009】
また本開示によれば、複数の受信アンテナからなる受信アレーアンテナが受信した受信信号の受信信号ベクトルと、前記受信信号ベクトルの転置ベクトルとを乗じて行列を生成することと、前記行列に基づいて前記受信信号の少なくとも位相を推定することと、を含む、信号処理方法が提供される。
【0010】
また本開示によれば、所定の間隔で配置された複数の受信アンテナからなる受信アレーアンテナと、前記受信アレーアンテナが受信した受信信号の受信信号ベクトルと、前記受信信号ベクトルの転置ベクトルとを乗じて行列を生成する行列生成部と、前記行列に基づいて前記受信信号の少なくとも位相を推定する推定部と、を備える、信号受信装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように本開示によれば、位相検出を可能にして、少ないアンテナ素子数で高い方位分解能を持たせることが可能な、新規かつ改良された信号処理装置、信号処理方法及び信号受信装置を提供することが出来る。
【0012】
なお、上記の効果は必ずしも限定的なものではなく、上記の効果とともに、または上記の効果に代えて、本明細書に示されたいずれかの効果、または本明細書から把握され得る他の効果が奏されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の実施の形態の第1の実施例に係るレーダ装置の構成例を示す説明図である。
図2】レーダエコー信号sを複素平面上に示した説明図である。
図3】同実施の形態の第1の実施例に係るレーダ装置1の動作例を示す流れ図である。
図4】同実施の形態の第2の実施例に係るレーダ装置の構成例を示す説明図である。
図5】レーダ装置の使用例を示す説明図である。
図6】レーダ装置の使用例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0015】
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
1.本開示の実施の形態
1.1.概要
1.2.第1の実施例
1.3.第2の実施例
2.まとめ
【0016】
<1.本開示の実施の形態>
[1.1.概要]
本開示の実施の形態について詳細に説明する前に、本開示の実施の形態の概要について説明する。
【0017】
上述したように、見守りや介護のプライバシー保護のために、カメラの代わりにレーダを用いることや、ジェスチャー入力によるユーザインターフェースにレーダを用いることが検討されている。これらの目的に供するレーダ装置は、ターゲットの呼吸や心拍、指先などで生じる微小な動きを検知する必要があるため、レーダエコー信号の位相変化を用いている。また、これらの目的に供するレーダ装置は、設置のしやすさの観点から小型であることが望ましく、さらに複数のターゲットを分離するために方位分解能を有している必要がある。
【0018】
レーダ装置の小型化には、アレーアンテナの素子数を減らして開口長を短くすることが有効である。開口長と方位分解能は比例関係にあるため、従来は特許文献1のようにレーダエコー信号のコピーを位相が連続するように結合して仮想的にアンテナの素子数を拡張すること、または非特許文献1のように、レーダエコー信号の相関行列からKhatri-Rao積を用いた拡張アレー処理を行って仮想的にアンテナの素子数を拡張すること等で開口長を補うことが行われてきた。
【0019】
しかし、特許文献1で開示されているようなレーダエコー信号のコピーを結合する方法は、結合の際に2つのデータの位相が一致するように合わせる必要があった。また非特許文献1で開示されているような受信信号の相関行列から拡張アレー処理を行う方法は、レーダエコー信号に含まれていた位相情報が完全に失われる。そのため、レーダエコー信号の位相変化からターゲットの微小な動きを検知する必要がある場合、例えば人間や動物の見守りや介護を目的とするレーダ装置には使用できない。
【0020】
従って、ターゲットの微小な動きを検知する必要がある、見守りや介護を目的とするレーダ装置については、位相検出を可能にしながらも、少ないアンテナ素子数で高い方位分解能を持たせられるようにすることが望ましい。
【0021】
そこで本件開示者は、上述した点に鑑み、特に小型のレーダ装置において、従来の拡張アレー処理では不可能な位相検出を可能にして、少ないアンテナ素子数で高い方位分解能を持たせることが可能な技術について鋭意検討を行った。その結果、本件開示者は、以下で説明するように、位相検出を可能にして、少ないアンテナ素子数で高い方位分解能を持たせることが可能となる技術を考案するに至った。
【0022】
以上、本開示の実施の形態の概要について説明した。続いて、本開示の実施の形態について詳細に説明する。
【0023】
[1.2.第1の実施例]
(レーダ装置の構成例)
まず、本開示の実施の形態の第1の実施形態について説明する。図1は、本開示の実施の形態の第1の実施例に係るレーダ装置の構成例を示す説明図である。以下、図1を用いて本開示の実施の形態の第1の実施例に係るレーダ装置の構成例について説明する。
【0024】
図1に示したように、本開示の実施の形態の第1の実施例に係るレーダ装置1は、受信アレーアンテナ10と、送信アンテナ20と、受信処理部30−1、30−2、30−3と、送信処理部40と、信号処理装置100と、を含んで構成される。
【0025】
送信アンテナ20は、送信処理部40が生成したレーダ信号を送信する。受信アンテナ10−1、10−2、10−3からなる受信アレーアンテナ10は、送信アンテナ20から送信されたレーダ信号がターゲットで反射して戻ってきたレーダエコー信号を受信する。受信アンテナ10−1、10−2、10−3は、受信したレーダエコー信号を、それぞれ受信処理部30−1、30−2、30−3へ出力する。本実施例では、受信アレーアンテナ10は、素子数が3であり、素子間距離dの等間隔で線形に配置されている。
【0026】
ここで、受信アレーアンテナ10のモードベクトルaRXを数式1に示す。
【0027】
【数1】
【0028】
数式1において、ψは、受信アレーアンテナ10の素子間距離dと、レーダ信号の波長λと、レーダエコー信号の到来角θと、で決まる値であり、具体的には下記の数式2で示される。通常、受信アレーアンテナ10の素子間距離dは、グレーティングローブの発生を抑圧するために、空間を1波長あたり2回サンプリングする0.5波長に設定される。
【0029】
【数2】
【0030】
受信処理部30−1、30−2、30−3は、受信アレーアンテナ10に到来したレーダエコー信号sに対して、所定の処理、例えば、増幅、周波数変換、周波数フィルタリングを行う。そして、受信処理部30−1、30−2、30−3は、受信アレーアンテナ10に到来したレーダエコー信号sをアナログデジタル変換したディジタル信号x1、x2、x3を要素とする受信信号ベクトルXを信号処理装置100に出力する。受信信号ベクトルXは、以下の数式3に示すようにレーダエコー信号sとモードベクトルaRXとの積で表すことができる。
【0031】
【数3】
【0032】
信号処理装置100は、二乗行列生成部110と、拡張アレー処理部120と、拡張データ生成部130と、方位検出部140と、を備える。
【0033】
(二乗行列生成部110)
二乗行列生成部110は、受信処理部30−1、30−2、30−3によって出力される受信信号ベクトルXに対する演算を行って所定の行列を生成する。本実施形態では、二乗行列生成部110は、受信信号ベクトルXと、Xの転置ベクトルとを乗算し、二乗行列SXXを生成する。二乗行列生成部110は、生成した二乗行列SXXを拡張アレー処理部120に出力する。
【0034】
二乗行列生成部110が生成する二乗行列SXXは、以下の数式4で示すような、レーダエコー信号sの二乗と、モードベクトルaRXと、モードベクトルaRXの転置との積になる。
【0035】
【数4】
【0036】
上記数式4のTは転置を意味する。この二乗行列SXXに含まれているモードベクトルaRXと、モードベクトルaRXの転置との積を、下記の数式5に示す。
【0037】
【数5】
【0038】
上記の数式5に示した二乗行列SXXに含まれている位相はe−2jφからe+2jφまで5種類の全てが欠けることなく連続して含まれていることがわかる。
【0039】
ここで既存の拡張アレー処理について説明する。既存の拡張アレー処理は、下記の数式6に示すように、受信信号ベクトルXと、Xの共役転置ベクトルとを乗算した相関行列RXXを使用していた。下記の数式6のHは共役転置を意味する.
【0040】
【数6】
【0041】
一方本実施形態では、二乗行列生成部110は、受信信号ベクトルXと、Xの転置ベクトルとを乗算し、二乗行列SXXを生成している。二乗行列SXXを生成する理由は以下の通りである。
【0042】
レーダエコー信号sを、下記の数式7および図2に示すように複素平面上で表す。
【0043】
【数7】
【0044】
二乗行列SXXに含まれる信号成分sは、下記の数式8および図2に示すように、元のレーダエコー信号sの倍角の位相を含むことがわかる。
【0045】
【数8】
【0046】
一方、上記数式6で示した、相関行列RXXに含まれる信号成分|s|は、下記の数式9および図2に示すように、I+Qとなる。すなわち、相関行列RXXに含まれる信号成分|s|は、位相情報が失われている。
【0047】
【数9】
【0048】
これが、本実施形態において二乗行列SXXを生成する理由である。すなわち、本実施形態に係る信号処理装置100は、既存の拡張アレー処理では失われてしまった位相情報を含んだ信号成分sを有する二乗行列SXXを生成することで、位相検出を可能とする。
【0049】
(拡張アレー処理部120)
拡張アレー処理部120は、二乗行列生成部110が生成した二乗行列SXXの要素を下記の数式10に示す拡張モードベクトルaEXと位相が一致する位置に写像して拡張ベクトルVKRを生成する。拡張アレー処理部120は、生成した拡張ベクトルVKRを拡張データ生成部130に出力する。
【0050】
【数10】
【0051】
二乗行列SXXの各要素は電力の次元であるので、位相が重複する要素を平均化して全ての要素を拡張ベクトルVKRに写像することができ。下記の数式11に二乗行列SXXの全ての要素を平均化して写像した拡張ベクトルVKRを示す。
【0052】
【数11】
【0053】
二乗行列SXXの全ての要素を平均化して拡張ベクトルVKRに写像する処理は、下記の数式12の行列演算に集約できる。数式12において、Uは変換行列であり、vecは行列の列ベクトルを縦に並べてベクトル化する関数である。
【0054】
【数12】
【0055】
(拡張データ生成部130)
拡張データ生成部130は、拡張アレー処理部120が生成した拡張ベクトルVKRの要素毎に振幅の平方根をとった拡張データベクトルXEXを生成する。拡張データ生成部130は、生成した拡張データベクトルXEXを方位検出部140に出力する。拡張データベクトルXEXは、下記の数式13により生成することが出来る。
【0056】
【数13】
【0057】
要素毎に振幅の平方根をとる理由は、二乗行列SXXの生成により、電圧の要素が電力となっており、拡張データベクトルXEXの次元を電力から電圧に変更するためである。また、位相はそのままにする理由は、拡張ベクトルVKRの要素が、レーダエコー信号の倍角の位相と、拡張モードベクトルの位相の両方を含むためである。
【0058】
(方位検出部140)
方位検出部140は、拡張データ生成部130が生成した拡張データベクトルXEXと、拡張モードベクトルaEXとを用いて、所定の方位推定アルゴリズムによりレーダエコー信号sの到来方向を推定する。方位推定アルゴリズムには、例えばビームフォーマー法、多重信号分離法(MUSIC、Multiple Signal Classification)等があるが、特定の方法に限定されるものではない。例えばビームフォーマー法を用いる場合、レーダエコー信号sの電圧スペクトルを評価する関数は下記の数式14で現される。
【0059】
【数14】
【0060】
式14のψは、数式2に示したように受信アレーアンテナ10の素子間距離dと、レーダ信号の波長λと、レーダエコー信号の到来角θと、で決まる値であるから、θを掃引して得られる波形のピーク値がレーダエコー信号sの電圧になる。この電圧は複素数であり、振幅からレーダエコー信号sの強度を、偏角からレーダエコー信号sの倍角の位相情報を得ることができる。
【0061】
本開示の実施の形態の第1の実施例に係るレーダ装置1は、図1に示したような構成を有することで、従来の拡張アレー処理では不可能な位相検出を可能にして、少ないアンテナ素子数で高い方位分解能を持たせることが可能となる。
【0062】
以上、本開示の実施の形態の第1の実施例に係るレーダ装置の構成例について説明した。続いて、本開示の実施の形態の第1の実施例に係るレーダ装置の動作例を説明する。
【0063】
(レーダ装置の動作例)
図3は、本開示の実施の形態の第1の実施例に係るレーダ装置1の動作例を示す流れ図である。以下、図3を用いて本開示の実施の形態の第1の実施例に係るレーダ装置1の動作例について説明する。
【0064】
レーダ装置1は、受信アレーアンテナ10でレーダエコー信号sを受信すると、受信処理部30−1、30−2、30−3で、受信アレーアンテナ10に到来したレーダエコー信号sに対して、所定の処理、例えば、増幅、周波数変換、周波数フィルタリングを行う。信号処理装置100は、受信処理部30−1、30−2、30−3からディジタル信号を受信する(ステップS101)。
【0065】
続いて信号処理装置100は、ディジタル信号からなる受信信号ベクトルから、二乗行列を生成する(ステップS102)。二乗行列の生成は、例えば二乗行列生成部110が実行しうる。
【0066】
二乗行列を生成すると、続いて信号処理装置100は、二乗行列から拡張ベクトルを生成する拡張アレー処理を実行する(ステップS103)。拡張ベクトルの生成は、例えば拡張アレー処理部120が実行しうる。
【0067】
拡張アレー処理を実行すると、続いて信号処理装置100は、拡張ベクトルの各要素の振幅の平方根をとり、拡張データベクトルを生成する(ステップS104)。拡張データベクトルの生成は、例えば拡張データ生成部130が実行しうる。
【0068】
拡張データベクトルを生成すると、続いて信号処理装置100は、拡張データベクトルを用いてレーダエコー信号の到来方向推定を行って位相と強度の情報を得る方位検出処理を行う(ステップS105)。方位検出処理は、例えば方位検出部140が実行しうる。
【0069】
本開示の実施の形態の第1の実施例に係るレーダ装置1は、図3に示したような一連の動作を実行することで、従来の拡張アレー処理では不可能な位相検出を可能にして、少ないアンテナ素子数で高い方位分解能を持たせることが可能となる。
【0070】
すなわち、本開示の実施の形態の第1の実施例によれば、レーダエコー信号を二乗した行列に拡張アレー処理を行ってアンテナの素子数を拡張することにより,レーダエコー信号の位相検出が可能であり、かつ高い方位分解能を持つレーダ装置1およびレーダ信号の処理方法を提供することが可能になる。
【0071】
[1.3.第2の実施例]
(レーダ装置の構成例)
続いて、本開示の実施の形態の第2の実施例に係るレーダ装置の構成例を説明する。図4は、本開示の実施の形態の第2の実施例に係るレーダ装置1の構成例を示す説明図である。以下、図4を用いて本開示の実施の形態の第2の実施例に係るレーダ装置1の構成例について説明する。
【0072】
図4に示したレーダ装置1は、受信アレーアンテナが送信アンテナを挟んで構成されている。図4に示したレーダ装置1は、受信アレーアンテナ10A、10Bと、送信アンテナ20と、信号処理装置100と、を含んで構成される。また信号処理装置100は、二乗行列生成部110と、拡張アレー処理部120と、拡張データ生成部130と、方位検出部140と、を備える。信号処理装置100は、図1に示したものと同じ構成を有するので詳細な説明は割愛する。
【0073】
受信アレーアンテナ10A、10Bは、それぞれ素子数がL(Lは2以上の自然数)、素子間距離がdの等間隔線形アレーアンテナである。図4に示したレーダ装置1において、受信アレーアンテナ10Aは受信アンテナ10−1、10−2を備え、受信アレーアンテナ10Bは受信アンテナ10−3、10−4を備える。すなわち素子数Lはいずれも2である。そして受信アレーアンテナ10A、10Bの間隔はL×d以下とする。なお、受信アレーアンテナ10A、10Bの素子数は同じでもよく、異なっていても良い。
【0074】
図4に示したレーダ装置1において、モードベクトルaRXを求めると以下の数式15の通りとなる。
【0075】
【数15】
【0076】
二乗行列SXXは数式16になり、二乗行列SXXに含まれているモードベクトルaRXとモードベクトルaRXの転置との積は、数式17になる。
【0077】
【数16】
【0078】
【数17】
【0079】
数式17を見ると、e−4jψからe+4jψまで9種類の位相の全てが欠けることなく連続して含まれており、受信アレーアンテナ10Aの右端と、受信アレーアンテナ10Bの左端の間隔をL×d以下に限定したことにより、数式17が、以下で示す数式18の拡張モードベクトルaEXの要素を全て含むことが担保されている。
【0080】
【数18】
【0081】
数式16に示した二乗行列SXXの全ての要素を平均化して写像した拡張ベクトルVKRを数式19に示す。
【0082】
【数19】
【0083】
また、数式16の二乗行列SXXから拡張ベクトルVKRに写像する処理を数式20に示す。
【0084】
【数20】
【0085】
信号処理装置100は、以下、拡張ベクトルVKRの要素毎に振幅の平方根をとった拡張データベクトルXEXを生成し、拡張データベクトルXEXと、拡張モードベクトルaEXとを用いて、所定の方位推定アルゴリズムによりレーダエコー信号sの到来方向を推定することが出来る。
【0086】
<2.まとめ>
以上説明したように、本開示の実施の形態によれば、特に小型のレーダ装置に用いられる信号処理装置100であって、従来の拡張アレー処理では不可能な位相検出を可能にして、少ないアンテナ素子数で高い方位分解能を持たせることが可能な信号処理装置100が提供される。また本開示の実施の形態によれば、アンテナ素子数で高い方位分解能を持たせることが可能な信号処理装置100を用いたレーダ装置1が提供される。
【0087】
本開示の実施の形態に係るレーダ装置1は、小型でありながら高い方位分解能と微小な動きを検知できるため、例えば見守りや、介護、ジェスチャー入力によるユーザインターフェースを目的とした小型レーダに使用することができる。例えば、図5に示したように、レーダ装置1は、人間h1や動物a1の見守りを目的とした使用が可能になる。また例えば、図6に示したように、レーダ装置1は、ユーザの指f1を用いたジェスチャー入力を検出することを目的とした使用が可能になる。
【0088】
もちろん、上述した使用形態は、本開示の実施の形態に係るレーダ装置1の使用形態の一例にすぎないことは言うまでも無く、
【0089】
本明細書の各装置が実行する処理における各ステップは、必ずしもシーケンス図またはフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はない。例えば、各装置が実行する処理における各ステップは、フローチャートとして記載した順序と異なる順序で処理されても、並列的に処理されてもよい。
【0090】
また、各装置に内蔵されるCPU、ROMおよびRAMなどのハードウェアを、上述した各装置の構成と同等の機能を発揮させるためのコンピュータプログラムも作成可能である。また、該コンピュータプログラムを記憶させた記憶媒体も提供されることが可能である。また、機能ブロック図で示したそれぞれの機能ブロックをハードウェアまたはハードウェア回路で構成することで、一連の処理をハードウェアまたはハードウェア回路で実現することもできる。
【0091】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示の技術的範囲はかかる例に限定されない。本開示の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0092】
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、または上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【0093】
なお、以下のような構成も本開示の技術的範囲に属する。
(1)
複数の受信アンテナからなる受信アレーアンテナが受信した受信信号の受信信号ベクトルと、前記受信信号ベクトルの転置ベクトルとを乗じて行列を生成する行列生成部と、
前記行列に基づいて前記受信信号の少なくとも位相を推定する推定部と、
を備える、信号処理装置。
(2)
前記行列に対する演算を行って第1のベクトルを生成する第1ベクトル生成部と、
前記第1のベクトルの各要素に対して所定の演算を行って第2のベクトルを生成する第2ベクトル生成部と、
をさらに備え、
前記推定部は、前記第2のベクトルを用いて前記受信信号の少なくとも位相を推定する、請求項1に記載の信号処理装置。
(3)
前記第1ベクトル生成部は、前記行列の要素を位相が対応する位置へ写像することによって前記第1のベクトルを生成する、請求項2に記載の信号処理装置。
(4)
前記第2ベクトル生成部は、前記第1のベクトルの各要素の振幅に対応する値を平方根に変換して前記第2のベクトルを生成する、請求項2に記載の信号処理装置。
(5)
前記推定部は、さらに、前記受信信号の到来方向及び強度を推定する、請求項1に記載の信号処理装置。
(6)
前記受信アレーアンテナは、素子数がL(Lは2以上の整数)で、素子間距離dで線形状に配置される、請求項1に記載の信号処理装置。
(7)
前記受信アレーアンテナは、素子数がL(Lは2以上の整数)で、素子間距離dで線形状に配置される第1の受信アレーアンテナと、前記第1の受信アレーアンテナの配置方向と同一の方向にL×d以下の距離を隔てて、素子数がM(Mは2以上の整数)で、素子間距離dで線形状に配置される第2の受信アレーアンテナと、を備える、請求項1に記載の信号処理装置。
(8)
複数の受信アンテナからなる受信アレーアンテナが受信した受信信号の受信信号ベクトルと、前記受信信号ベクトルの転置ベクトルとを乗じて行列を生成することと、
前記行列に基づいて前記受信信号の少なくとも位相を推定することと、
を含む、信号処理方法。
(9)
所定の間隔で配置された複数の受信アンテナからなる受信アレーアンテナと、
前記受信アレーアンテナが受信した受信信号の受信信号ベクトルと、前記受信信号ベクトルの転置ベクトルとを乗じて行列を生成する行列生成部と、
前記行列に基づいて前記受信信号の少なくとも位相を推定する推定部と、
を備える、信号受信装置。
(10)
前記受信アレーアンテナは、素子数がL(Lは2以上の整数)で、素子間距離dで線形状に配置される、請求項7に記載の信号受信装置。
(11)
前記受信アレーアンテナは、素子数がL(Lは2以上の整数)で、素子間距離dで線形状に配置される第1の受信アレーアンテナと、前記第1の受信アレーアンテナの配置方向と同一の方向にL×d以下の距離を隔てて、素子数がM(Mは2以上の整数)で、素子間距離dで線形状に配置される第2の受信アレーアンテナと、を備える、請求項7に記載の信号受信装置。
【符号の説明】
【0094】
1 :レーダ装置
10 :受信アレーアンテナ
10−1 :受信アンテナ
10−2 :受信アンテナ
10−3 :受信アレーアンテナ
10−4 :受信アレーアンテナ
10A :受信アレーアンテナ
10B :受信アレーアンテナ
20 :送信アンテナ
a1 :動物
f1 :指
h1 :人間
図1
図2
図3
図4
図5
図6