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特開2017-227492振動測定装置および異常診断システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-227492(P2017-227492A)
(43)【公開日】2017年12月28日
(54)【発明の名称】振動測定装置および異常診断システム
(51)【国際特許分類】
   G01M 13/04 20060101AFI20171201BHJP
【FI】
   G01M13/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-122540(P2016-122540)
(22)【出願日】2016年6月21日
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 浩義
【テーマコード(参考)】
2G024
【Fターム(参考)】
2G024AC01
2G024BA21
2G024BA27
2G024CA09
2G024CA13
2G024DA09
2G024FA04
2G024FA06
2G024FA15
(57)【要約】
【課題】コストを抑制しながら、従来よりも精度のよい異常診断を行なう。
【解決手段】本発明の一実施形態による振動測定装置は、軌道に沿って移動する対象物に固定されて対象物の振動を測定する。軌道に沿って、軌道上の第1測定点に向かって第1トリガ信号を送信するように構成された第1送信装置、および第1測定点とは異なる軌道上の第2測定点に向かって第2トリガ信号を送信するように構成された第2送信装置が配置される。振動測定装置は、振動センサと、受信部と、記憶部とを備える。振動センサは、対象物の振動データを測定するように構成されている。受信部は、第1トリガ信号および第2トリガ信号を受けるように構成されている。記憶部は、第1トリガ信号および第2トリガ信号の受信後に振動データと、対象物の移動速度を求めるのに必要な情報とを保存するように構成されている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道に沿って移動する対象物に固定されて前記対象物の振動を測定する振動測定装置であって、
前記軌道に沿って、前記軌道上の第1測定点に向かって第1トリガ信号を送信するように構成された第1送信装置、および前記第1測定点とは異なる前記軌道上の第2測定点に向かって第2トリガ信号を送信するように構成された第2送信装置が配置され、
前記振動測定装置は、
前記対象物の振動データを測定するように構成された振動センサと、
前記第1トリガ信号および前記第2トリガ信号を受けるように構成された受信部と、
前記第1トリガ信号および前記第2トリガ信号の受信後に前記振動データと、前記対象物の移動速度を求めるのに必要な情報とを保存するように構成された記憶部とを備える、振動測定装置。
【請求項2】
前記記憶部は、前記第1トリガ信号および前記第2トリガ信号を受信してから所定の時間経過後に測定された前記振動データを保存するように構成される、請求項1に記載の振動測定装置。
【請求項3】
前記記憶部に保存された測定データをワイヤレスで外部の装置に通信するように構成された通信部をさらに備える、請求項1に記載の振動測定装置。
【請求項4】
請求項3に記載の複数の振動測定装置と、
前記第1送信装置および前記第2送信装置と、
前記複数の振動測定装置各々からの前記測定データをワイヤレスで受信して、前記測定データを収集するデータ収集装置と、
前記データ収集装置から前記測定データを受信して、前記測定データを蓄積するデータ蓄積サーバと、
前記データ蓄積サーバから前記測定データをワイヤレスで受信し、前記測定データの周波数解析の結果が所定の閾値を超えているか否かを判定することにより前記測定データの異常判定を行なう解析装置とを備える、異常診断システム。
【請求項5】
前記データ収集装置は、前記軌道の近傍に設置されている、請求項4に記載の異常診断システム。
【請求項6】
前記解析装置には、前記第1測定点と前記第2測定点との距離が予め保存されている、請求項4に記載の異常診断システム。
【請求項7】
前記測定データは、前記振動測定装置の識別子を含む、請求項4に記載の異常診断システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鉄道車両における車軸軸受の異常診断に用いられる振動測定装置および異常診断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両において車軸軸受に異常が発生した場合、異常な振動が発生して乗客の快適性が損なわることがある。そのため、車軸軸受に異常が発生したまま走行を継続することは好ましくない。車軸軸受に異常が発生した場合には、車軸軸受の補修などの処置が必要となる。
【0003】
車軸軸受の補修には長時間を要する場合があるが、通常運転の長時間の停止には多大な損失が発生し得る。そのため、通常運転に備えて行なわれる保守点検において、異常の兆候を早期に発見するために、車軸軸受の異常診断を行なうことがある。
【0004】
車軸軸受の異常診断を精度よく行なうためには、振動データが測定された時点の鉄道車両の移動速度が必要である。鉄道車両の移動速度を取得する方法として、車軸軸受の回転速度から鉄道車両の移動速度を求める方法が知られている。たとえば、特開2006−77945号公報(特許文献1)には、車軸軸受に取り付けられた回転速度センサから車軸の回転速度信号を取得して車軸の異常診断を行なう異常診断装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−77945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特開2006−77945号公報(特許文献1)に開示されている異常診断装置によると、測定された振動が車軸軸受の異常に起因する振動なのか、あるいは鉄道車両がたとえばレールの継ぎ目あるいは分岐点(ポイント)を通過したときに生じた振動のような車軸軸受の異常とは無関係の振動なのかを区別できないという問題がある。
【0007】
また、特開2006−77945号公報(特許文献1)に開示されている異常診断装置においては、回転速度センサが車軸軸受毎に必要になるため、回転速度センサ自体のコストおよび取付の手間(コスト)がかかる。
【0008】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、コストを抑制しながら、車軸軸受の異常診断の精度を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態による振動測定装置は、軌道に沿って移動する対象物に固定されて対象物の振動を測定する。軌道に沿って、軌道上の第1測定点に向かって第1トリガ信号を送信する第1送信装置、および第1測定点とは異なる軌道上の第2測定点に向かって第2トリガ信号を送信する第2送信装置が配置される。振動測定装置は、振動センサと、受信部と、記憶部とを備える。振動センサは、対象物の振動データを測定するように構成されている。受信部は、第1トリガ信号および第2トリガ信号を受けるように構成されている。記憶部は、第1トリガ信号および第2トリガ信号の受信後に振動データと、対象物の移動速度を求めるのに必要な情報とを保存するように構成されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る振動測定装置は、第1測定点に向かって送信される第1トリガ信号、および第2測定点に向かって送信される第2トリガ信号の受信後に振動データを保存する。鉄道車両が、車軸軸受の異常とは無関係の振動が発生しにくい軌道上の点を通過する以前に第1測定点および第2測定点を設定することにより、振動測定装置は、車軸軸受の異常とは無関係の振動が発生しにくい軌道上の点で振動測定を行なうことが可能になる。その結果、本発明に係る振動測定装置によって測定される振動データに車軸軸受の異常とは無関係の振動が含まれ難くなるため、異常診断の精度を向上させることができる。
【0011】
また、本発明に係る振動測定装置は、第1測定点に向かって送信される第1トリガ信号、および第2測定点に向かって送信される第2トリガ信号の受信後に対象物の移動速度を求めるのに必要な情報を保存する。第1測定点と第2送信装置との間の距離を予め計測しておくことにより、第1測定点および第2測定点の間の対象物の移動速度を算出することができる。その結果、対象物の移動速度を取得するための回転速度センサが不要になるため、コストを抑制しながら異常診断の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態に係る振動測定装置が鉄道車両に固定されている様子を示す図である。
図2】一般的な車軸軸受の異常判定方法の流れを示すフローチャートである。
図3】送信装置が振動測定装置にトリガ信号を送信している様子を示す図である。
図4】実施の形態1に係る異常診断システムの機能構成を説明するための機能ブロック図である。
図5】実施の形態1に係る異常診断システムにおいて、レールの継ぎ目を避けて振動測定が行なわれる様子を示す図である。
図6】実施の形態1に係る振動測定装置の制御部によって行なわれる処理を説明するためのフローチャートである。
図7】実施の形態2に係る振動測定装置の機能構成を説明するための機能ブロック図である。
図8】実施の形態2に係る異常診断システムにおいて、振動測定装置からデータ収集装置へ測定データが送信される様子を示す図である。
図9】実施の形態2に係る異常診断システムの構成の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は原則として繰り返さない。
【0014】
[実施の形態1]
図1は、実施の形態に係る振動測定装置21が鉄道車両10に固定されている様子を示す図である。図1に示されるように、軸箱11は、車軸13に取り付けられる車軸軸受(不図示)を支持する。軸箱11は、振動測定装置21によって振動が測定される対象物である。車軸13の軸方向の両端部に車輪15がそれぞれ取り付けられる。車輪15が車軸軸受により回転自在に支持されることにより、鉄道車両10は平行に敷設された2本のレール40上を走行することができる。振動測定装置21は、軸箱11にボルト14によって締結されている。振動測定装置21は、ボルト14によって軸箱11に取り付けられていることにより、軸箱11からの取り外しが可能である。たとえば、振動測定装置21は、通常運転時には軸箱11から取り外され、保守点検時のテスト走行時に軸箱11に取り付けられる。
【0015】
ボルト14によって振動測定装置21が軸箱11に締結されていることにより、振動測定装置21と軸箱11との接触面において車軸軸受の異常とは無関係に発生する接触共振を軽減することができる。振動測定装置21は、軸箱11の鉛振動方向に沿うように直方向上側あるいは下側に固定されていることが望ましい。
【0016】
図2は、一般的な車軸軸受の異常判定方法の流れを示すフローチャートである。以下ではステップを単にSと記載する。図2に示されるように、S1において車軸軸受の振動データが測定される。続いてS2において、振動データの周波数解析が行なわれる。最後にS3において周波数解析のピーク値が所定の閾値を超えているか否かを判定することにより車軸軸受の異常判定が行なわれる。本発明は、S1において行なわれる振動測定についてのものである。以下では、本発明において特徴的な振動測定について説明する。
【0017】
鉄道車両において車軸軸受に異常が発生した場合、異常な振動が発生して乗客の快適性が損なわることがある。そのため、車軸軸受に異常が発生したまま走行を継続することは好ましくない。車軸軸受に異常が発生した場合には、車両の運転を停止して、車軸軸受の補修などの処置が必要となる。
【0018】
車軸軸受の補修には長時間を要する場合がある。通常運転の長時間の停止には多大な損失が発生し得る。そのため、たとえば通常運転に備えて行なわれる保守点検において、車軸軸受の異常診断が行なわれることがある。
【0019】
保守点検時に各軸箱に振動測定装置21をボルト14によって固定して振動を測定することにより、各車軸軸受の異常診断を行なうことができる。しかし、振動測定装置21によって測定された振動データには、車軸軸受の異常に起因する振動だけではなく、鉄道車両10がたとえばレールの継ぎ目または分岐点(ポイント)を通過したときに生じる振動のような車軸軸受の異常とは無関係の振動が含まれる場合がある。振動データに車軸軸受の異常とは無関係の振動が含まれると、異常診断の精度が低下してしまう。
【0020】
また、車軸軸受の異常診断を精度よく行なうためには、振動データが測定されたときの鉄道車両の移動速度が必要である。鉄道車両の移動速度を取得する方法として、車軸軸受に取り付けられた回転速度センサから車軸の回転速度信号を取得する方法が知られている。しかし、当該方法によると、回転速度センサが車軸軸受毎に必要になるため、回転速度センサのコストおよび取付の手間がかかる。
【0021】
そこで実施の形態1においては、レール40上の第1測定点に向かって送信される第1トリガ信号、およびレール40上の第2測定点に向かって送信される第2トリガ信号の受信後に振動データを保存する。鉄道車両10が、車軸軸受の異常とは無関係の振動が発生しにくい軌道上の点を通過する以前に第1測定点および第2測定点を設定することにより、振動測定装置21は、車軸軸受の異常とは無関係の振動が発生しにくい軌道上の点で振動測定を行なうことが可能になる。その結果、振動測定装置21によって測定される振動データに車軸軸受の異常とは無関係の振動が含まれ難くなるため、異常診断の精度を向上させることができる。
【0022】
また、実施の形態1においては、振動測定装置21は、第1測定点に向かって送信される第1トリガ信号、および第2測定点に向かって送信される第2トリガ信号の受信後に鉄道車両10の移動速度を求めるのに必要な情報として、第1トリガ信号の受信時刻および第2トリガ信号の受信時刻を保存する。第1測定点と第2送信装置との間の距離を予め計測しておくことにより、第1測定点および第2測定点の間の鉄道車両10の移動速度を算出することができる。その結果、鉄道車両10の移動速度を取得するための回転速度センサが不要になるため、コストを抑制しながら異常診断の精度を向上させることができる。
【0023】
図3は、送信装置31(32)が振動測定装置21にトリガ信号Trg1(Trg2)を送信している様子を示す図である。図3に示されるように振動測定装置21は、トリガ信号Trg1(Trg2)を受信する。送信装置31(32)は、たとえばレールの継ぎ目あるいは分岐点から鉄道車両の進行方向に沿って所定の距離だけ離れている場所に設置される。このような場所に送信装置31(32)を設置することにより、鉄道車両10がレールの継ぎ目あるいは分岐点を通過したときに発生する振動がほとんど減衰しているレール上の測定点における振動の測定が可能となる。当該所定の距離は、実機実験あるいはシミュレーションによって適宜算出することができる。
【0024】
トリガ信号としては、たとえば電波あるいは赤外線を用いることができる。電波は、たとえば300万メガヘルツ(3テラヘルツ)以下の周波数の電磁波である。赤外線は、たとえば波長が870nm〜1000nmの光である。
【0025】
トリガ信号として赤外線を用いる場合、太陽光などの外乱光が振動測定装置21の受信部に侵入しないようにするため、送信装置31および32の周辺(たとえば背面や両側面)に外乱光を遮蔽する遮光壁、遮光シート、あるいは遮断壁などを設けると良い。また、振動測定装置21のトリガ信号の受信孔を囲むように、外乱光を遮断するパイプを設けても良い。また、送信装置31および32のトリガ信号の出射部分、および振動測定装置21の受信部の結露や曇りを防止するため、雨水を通さず空気のみ通すことが可能な、多孔質フィルム等を貼り付けた通気口を各々に設けると良い。
【0026】
図4は、実施の形態1に係る異常診断システム100の機能構成を説明するための機能ブロック図である。図4に示されるように、異常診断システム100は、振動測定装置21と、送信装置31,32と、解析装置81とを備える。
【0027】
振動測定装置21は、制御部210と、受信部220と、振動センサ230と、記憶部240と、電源部250とを含む。これらは、プリント基板の片面または両面に電子部品を取り付けることにより実装される。プリント基板は、剛性の高いガラス入りエポキシ樹脂が望ましい。振動測定装置21は、図4に示される振動測定装置21の各構成を収容する一体構造の金属製ハウジングを備えるのが望ましい。金属製ハウジング内に振動測定装置21の各構成を収容することにより、鉄道車両10から発生する電磁波ノイズの侵入を防止することができる。金属製ハウジングは、鉄系金属であることが望ましい。
【0028】
受信部220は、トリガ信号を受信した場合、トリガ信号を受信したことを表す信号を制御部210へ出力する。
【0029】
振動センサ230は、振動を測定する対象物の振動データを表す信号を制御部210へ出力する。振動センサ230は、広範囲な周波数の振動を検出可能な圧電式の加速度センサであることが望ましい。
【0030】
記憶部240は、たとえばSDカードあるいはUSB(Universal Serial Bus)メモリのような着脱可能な不揮発性メモリ(不図示)を含む。記憶部240に保存されたデータは、当該不揮発性メモリによって取り出すことができる。記憶部240は、たとえば、不揮発性の半導体メモリであるフラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)または記憶装置であるHDD(Hard Disk Drive)を含んでもよい。
【0031】
電源部250は、不図示の電池の電力を制御部210、受信部220、振動センサ230、および記憶部240に供給する。電池としては、繰り返し充電が可能なニッケル水素乾電池を使用することができる。
【0032】
制御部210は、振動測定装置21を統合的に制御する。制御部210は、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサおよび揮発性メモリを含む。制御部210は、受信部220がトリガ信号Trg1を受信した場合、トリガ信号Trg1を受信した時刻を記憶部240に保存する。制御部210は、受信部220がトリガ信号Trg2を受信した場合、トリガ信号Trg2を受信した時刻を記憶部240に保存するとともに、振動センサ230が測定した振動データを記憶部240に保存する。具体的には、振動センサ230からのアナログ出力信号が演算増幅回路およびフィルタ回路(いずれも不図示)を介して制御部210に入力され、当該信号は制御部210においてA/D変換された後、記憶部240に保存される。制御部210は、通常スリープ状態とし、トリガ信号を受信した時点で起動するようにするのが省電力という点で望ましい。フィルタ回路は、軸受固有振動数を含めその前後の周波数を取り出すために、所定の通過帯域が設定されたバンドパスフィルタを構成する。フィルタ回路は、ハイパスフィルタおよびローパスフィルタの組み合せから構成されても良い。
【0033】
解析装置81は、たとえば異常診断ソフトウェアがインストールされたPC(Personal Computer)を含む。解析装置81には、振動測定装置21によって測定された振動データが保存された不揮発性メモリが装着される。解析装置81は、当該不揮発性メモリから振動データを読み込んでたとえば周波数解析を行なって、振動データの異常診断を行なう。
【0034】
周波数解析においては、車軸軸受(転がり軸受)の転がり面に異常な損傷が発生すると、当該異常に起因する振動が顕著となり、転動体の通過周期でピークが発生することを利用する。異常診断は、予め車軸軸受の損傷状態と異常振動波形のピークのレベルを調査しておき、当該調査結果と振動データの解析結果とを比較することにより行なうことができる。
【0035】
送信装置31は、レール40上の第1測定点に向かってトリガ信号Trg1を送信するように構成されている。送信装置32は、レール40上の第2測定点に向かってトリガ信号Trg2を送信するように構成されている。送信装置31および32は、レール40に沿って設置される。第1測定点と第2測定点との距離は予め測定されて解析装置81に保存されている。
【0036】
図5は、実施の形態1に係る異常診断システム100において、レール40の継ぎ目を避けて振動測定が行なわれる様子を示す図である。図5において測定点P1は、レール40の継ぎ目がある地点G1から、矢印M1で示される鉄道車両10の進行方向に所定の距離だけ離れている。送信装置31は、レール40上の測定点P1に向けてトリガ信号Trg1を送信する。送信装置32は、レール40上の測定点P2に向けてトリガ信号Trg2を送信する。測定点P1およびP2の間の距離は距離D1である。送信装置32は、測定点P1およびP2の間の距離に合わせて、送信装置31から鉄道車両10の進行方向に距離D1だけ離れている。
【0037】
図5(a)に示される各振動測定装置21は、鉄道車両10が進んでいくにつれて、順次地点G1を通過していく。その後、各振動測定装置21は、図5(b)に示されるように、測定点P1を通過するときに送信装置31からのトリガ信号Trg1を受信し、トリガ信号Trg1の受信時刻を記憶部240に保存する。その後、各振動測定装置21は、図5(c)に示されるように、測定点P2を通過するときに送信装置32からのトリガ信号Trg2を受信し、トリガ信号Trg2の受信時刻を記憶部240に保存する。各振動測定装置21は、トリガ信号Trg2を受信したことに応じて振動測定を開始し、振動データを記憶部240に保存する。
【0038】
実施の形態1において、振動測定装置21は、トリガ信号Trg2を受信したタイミングから一定時間の間に測定された振動データを保存する。各振動測定装置21において保存された振動データは、ほとんど同条件で測定されたものになる。そのため、各車軸軸受の振動データの比較を行なう場合に、測定条件をそろえるための補正を行なう必要がない。当該補正を要することなく車軸軸受の異常を示す振動データと正常な振動データとの差異が明確になる。その結果、異常診断の精度が向上し、車軸軸受の異常の発見が容易になる。
【0039】
また、実施の形態1においては、振動測定装置21が振動データとともにトリガ信号Trg1を受信した時刻およびトリガ信号Trg2を受信した時刻を記憶部240に保存する。また、送信装置31および32の間の距離が予め測定されて、解析装置81に保存されている。解析装置81は、送信装置31および32の間の距離、およびトリガ信号Trg1の受信時刻とトリガ信号Trg2の受信時刻との差から、測定点P1およびP2の間の鉄道車両10の移動速度を算出することができる。実施の形態1においては、鉄道車両10の移動速度を取得するのに回転速度センサが不要であるため、コストを抑制しながら異常診断のコストを向上させることができる。
【0040】
図6は、実施の形態1に係る振動測定装置21の制御部210によって行なわれる処理を説明するためのフローチャートである。図6に示される処理は、不図示のメインルーチンによって呼び出されて実行される。
【0041】
図6に示されるように、制御部210は、S201においてトリガ信号を受信したか否かを判定する。トリガ信号を受信した場合(S201においてYES)、制御部210は、S202においてトリガ信号を受信した時刻を記憶部240に保存し、処理をS203に進める。制御部210は、S203においてトリガ信号を受信したのが2回目か否かを判定する。S203においてトリガ信号を受信したのが2回目である場合(S203においてYES)、制御部210は、S204において振動測定を開始して処理をメインルーチンに返す。制御部210は、2回目のトリガ信号を受信した場合、トリガ信号のカウント回数をリセットする。振動測定を開始するタイミングは、2回目のトリガ信号を受信した時刻ではなく、当該時刻から所定時間経過後であってもよい。
【0042】
トリガ信号を受信していない場合(S201においてNO)およびトリガ信号を受信したのが2回目でない場合(S203においてNO)、制御部210は、処理をメインルーチンに返す。
【0043】
以上、実施の形態1によれば、送信装置が、車軸軸受の異常とは無関係の振動が発生しにくい測定点に向かってトリガ信号を送信する。そのため、振動測定装置は、送信装置からのトリガ信号を受信したタイミングで振動を測定することにより、車軸軸受の異常とは無関係の振動が発生しにくい測定点での振動測定が可能になる。その結果、振動測定装置によって測定される振動データに車軸軸受の異常とは無関係の振動が含まれ難くなるため、異常診断の精度を向上させることができる。
【0044】
また、振動測定装置は、2つのトリガ信号のそれぞれの受信時刻を保存する。2つの測定点の間の距離を予め計測して解析装置に保存しておくことにより、2つの測定点の間の鉄道車両の移動速度を算出することができる。その結果、鉄道車両の移動速度を取得するための回転速度センサが不要になるため、コストを抑制しながら異常診断の精度を向上させることができる。
【0045】
鉄道車両の移動速度を求めるのに必要な情報は、第1トリガ信号の受信時刻と第2トリガ信号の受信時刻との時間間隔でもよい。あるいは、第1測定点と第2測定点との距離を振動測定装置に予め保存しておき、第1測定点と第2測定点との間の鉄道車両の移動速度を振動測定装置において算出して保存してもよい。
【0046】
[実施の形態2]
実施の形態1においては、振動測定装置の記憶部に保存されたデータを着脱可能な不揮発性メモリによって解析装置に移す場合について説明した。実施の形態2においては、ワイヤレス通信を用いて当該データを解析装置に送信する場合について説明する。実施の形態2において、「測定データ」は、振動測定装置の記憶部に保存された振動データ、および鉄道車両の移動速度を求めるのに必要な情報を含む。実施の形態2においても、鉄道車両の移動速度を求めるのに必要な情報はトリガ信号の受信時刻とする。
【0047】
実施の形態1と2との違いは、振動測定装置の構成および異常診断システムの構成である。すなわち、実施の形態1の図4に示される振動測定装置21の構成が図7に示される振動測定装置22に置き換えられ、図4に示される異常診断システム100の構成が、図9に示される異常診断システム200に置き換えられる。それ以外の構成については同様であるため、その説明は繰り返さない。
【0048】
図7は、実施の形態2に係る振動測定装置22の機能構成を説明するための機能ブロック図である。図4に示されるように、振動測定装置22は、図4の振動測定装置21の構成に加えて、通信部260をさらに備える。通信部260は、ZigBee(登録商標)に準拠した通信方法を用いてデータ収集装置60に測定データと振動測定装置22の識別子(ID)とを送信する。ZigBeeに準拠した通信方法は、一般的に、他の通信規格に準拠した通信方法よりも消費電力が少ない。そのため、ZigBeeに準拠した通信方法を用いることにより消費電力を抑制することができる。送信データには、たとえば測定日、振動測定装置22が設置された車軸軸受を識別するための情報(たとえば機種あるいは型番)、あるいは振動測定装置22が設置された位置情報が含まれていることが望ましい。振動測定装置22とデータ収集装置60との通信には中継器(図示せず)を介しても構わない。通信部260は、不図示の通信回路およびアンテナを含む。通信部260は、受信部220の機能を兼ねていてもよい。
【0049】
図8は、実施の形態2に係る異常診断システム200において、振動測定装置22からデータ収集装置60へ測定データが送信される様子を示す図である。図8(a)に示されるように、実施の形態2においては、データ収集装置60は、レール40の近傍に設置されている。鉄道車両10の進行方向M1において先頭の振動測定装置22が測定点P11を通過した後に測定点12に到達している。先頭の振動測定装置22は、測定点P12を通過した後、図8(b)に示されるように、測定データをデータ収集装置60に送信する。後続する振動測定装置22についても同様である。
【0050】
図9は、実施の形態2に係る異常診断システム200の構成の概略を示す図である。図9に示されるように、異常診断システム200は、複数の振動測定装置22と、データ収集装置60と、データ蓄積サーバ70と、解析装置82とを備える。
【0051】
データ収集装置60は、振動測定装置22からの送信データを収集する。データ収集装置60は、収集した送信データを電話回線によりデータ蓄積サーバ70に送信する。
【0052】
データ蓄積サーバ70は、データ収集装置60からの送信データに含まれる測定データとIDとを関連付けて保存する。さらに、データ蓄積サーバ70は、受信したIDに基づいて、測定データをたとえば振動測定装置が設置された車両毎、台車毎、あるいは軸箱毎に分類して管理する。
【0053】
解析装置82は、LAN(Local Area Network)、WiFi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、またはZigBeeに準拠した通信方法を用いてデータ蓄積サーバ70にアクセスし、測定データを取得する。解析装置82は、取得した測定データに基づき、周波数解析を行ない、その結果を表示する。解析装置82は、解析の結果を保存すると共に、データ蓄積サーバ70に解析の結果とIDとを送信する。データ蓄積サーバ70は当該解析の結果とIDとをバックアップとして保存する。データ蓄積サーバ70においては、解析の結果とIDとが関連付けられて管理される。解析装置82は、周波数解析のピーク値(振幅、速度、または加速度)が所定の閾値以上となった場合には、所定の送信先に、異常な振動が発生した旨の警告を発信する。上記閾値は、軽度の異常な振動に対応する値から重度の異常な振動に対応する値まで段階的に設定しても構わない。
【0054】
周波数解析は、データ蓄積サーバ70で行なってもよい。その場合、データ蓄積サーバは、周波数解析の結果をパーソナルコンピュータ、携帯電話、スマートフォン、またはPDAなどの閲覧端末90に送信する。ユーザは閲覧端末90により振動測定装置22のID毎に異常診断の結果を閲覧することができる。そのため、解析装置82から離れていても、異常診断の結果を閲覧することができる。その結果、異常診断システム200の管理者だけではなく、鉄道車両10を含む周辺機器の管理者も異常診断の結果を確認することができる。また、異常診断システム200を介して軸受交換情報などのメンテナンス情報の確認、あるいは車軸軸受の発注なども行なうことができる。また、測定データ、周波数解析の結果、異常判定の結果、あるいは判定基準(閾値)などは、データ蓄積サーバ70あるいは解析装置82に保存されてもよい。
【0055】
以上、実施の形態2によれば、送信装置が、車軸軸受の異常とは無関係の振動が発生しにくい測定点に向かってトリガ信号を送信する。そのため、振動測定装置は、送信装置からのトリガ信号を受信したタイミングで振動を測定することにより、車軸軸受の異常とは無関係の振動が発生しにくい測定点での振動測定が可能になる。その結果、振動測定装置によって測定される振動データに車軸軸受の異常とは無関係の振動が含まれ難くなるため、異常診断の精度を向上させることができる。
【0056】
また、振動測定装置は、2つのトリガ信号を受信した時刻を保存する。2つの測定点の間の距離を予め計測して解析装置に保存しておくことにより、2つの測定点の間の鉄道車両の移動速度を算出することができる。その結果、鉄道車両の移動速度を取得するための回転速度センサが不要になるため、コストを抑制しながら異常診断の精度を向上させることができる。
【0057】
さらに、実施の形態2に係る異常診断システムにおいては、振動測定装置が外部とワイヤレス通信することができる。そのため、通信のための配線の必要がない。また、実施の形態1に係る異常診断システムとは異なり、振動測定装置から測定データを取り出す必要がない。その結果、遠隔地における測定データの解析が容易になる。
【0058】
実施の形態2に係る異常診断システムにおいては、振動測定装置がデータ収集装置に測定データとIDとを送信する。データ収集装置は、受信した測定データとIDとをデータ蓄積サーバに送信する。そのため、データ蓄積サーバは、受信した測定データがどの振動測定装置によって測定されたものかを特定することができる。異常診断システムは、複数の振動測定装置22からの測定データの管理を容易にする。
【0059】
今回開示された各実施の形態は、矛盾しない範囲で適宜組み合わせて実施することも予定されている。今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0060】
10 鉄道車両、11 軸箱、13 車軸、14 ボルト、15 車輪、21,22 振動測定装置、31,32 送信装置、40 レール、60 データ収集装置、70 データ蓄積サーバ、81,82 解析装置、90 閲覧端末、100,200 異常診断システム、210 制御部、220 受信部、230 振動センサ、240 記憶部、250 電源部、260 通信部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9