特開2017-227527(P2017-227527A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2017227527-非球面レンズの計測装置 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-227527(P2017-227527A)
(43)【公開日】2017年12月28日
(54)【発明の名称】非球面レンズの計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 11/00 20060101AFI20171201BHJP
【FI】
   G01M11/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-123527(P2016-123527)
(22)【出願日】2016年6月22日
(71)【出願人】
【識別番号】501193218
【氏名又は名称】株式会社 清原光学
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】特許業務法人永井国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100087446
【弁理士】
【氏名又は名称】川久保 新一
(72)【発明者】
【氏名】清原 元輔
(72)【発明者】
【氏名】清原 耕輔
【テーマコード(参考)】
2G086
【Fターム(参考)】
2G086FF01
(57)【要約】
【課題】測定対象の非球面レンズである上記サンプルの全体の透過性能を測定することができ、また上記サンプルの外形形状を測定することができ、しかも、非球面ヌル上記干渉計、上記CGH上記干渉計の2台の上記干渉計を使用して計測する場合よりも、全体の測定時間を短くすることができる非球面レンズの計測装置を提供することを目的とする。
【解決手段】測定対象であるサンプルを設置するサンプル台と、ヌルミラーと、上記CGHの光軸を上記干渉計が出射する光と平行になるように、上記CGHを移動させ、一方、上記干渉計と上記サンプル台との間の第1の領域の外に、上記CGHを移動させるCGH移動手段と、上記ヌルミラーの光軸を上記干渉計が出射する光と平行になるように、上記ヌルミラーを移動させ、一方、上記干渉計が出射し、上記サンプルを透過した光が通過する第2の領域以外の領域に、上記ヌルミラーを退避させるヌルミラー移動手段とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
干渉計と;
CGHと;
測定対象であるサンプルを設置するサンプル台と;
ヌルミラーと;
上記CGHの光軸を上記干渉計が出射する光と平行になるように、上記CGHを移動させ、一方、上記干渉計と上記サンプル台との間の第1の領域の外に、上記CGHを移動させるCGH移動手段と;
上記ヌルミラーの光軸を上記干渉計が出射する光と平行になるように、上記ヌルミラーを移動させ、一方、上記干渉計が出射し、上記サンプルを透過した光が通過する第2の領域以外の領域に、上記ヌルミラーを退避させるヌルミラー移動手段と;
を有することを特徴とする非球面レンズの計測装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記干渉計が出射する光と上記CGHの光軸とが平行になっているときに、上記ヌルミラーを上記第2の領域以外の領域に移動するように、上記ヌルミラー移動手段を制御し、一方、上記干渉計が出射する光が上記ヌルミラーの光軸と平行になっているときに、上記第1の領域の外に、上記CGHを移動するように、上記CGH移動手段を制御する制御手段を有することを特徴とする非球面レンズの計測装置。
【請求項3】
請求項1において、
上記CGH移動手段は、回転運動または直線運動によって上記CGHを移動する手段であり、また、上記ヌルミラー移動手段は、回転運動または直線運動によって上記ヌルミラーを移動する手段であることを特徴とする非球面レンズの計測装置。
【請求項4】
請求項3において、
上記回転運動または直線運動は、自動的に移動し、または手動で移動することを特徴とする非球面レンズの計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非球面レンズの計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非球面レンズを計測する場合、従来は、非球面ヌル干渉計が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
この従来の非球面ヌル干渉計は、測定すべき非球面レンズであるサンプルの透過光が正対して反射するように非球面のヌルミラーを設計して設置する。サンプルが設計通りの性能が出ていれば、干渉計に戻る波面は「無収差」になる。サンプルに何らかの問題があれば、戻り波面が乱れ、干渉縞に反映される。このように、従来の非球面ヌル干渉計を使用すれば、サンプルのレンズ全体の透過性能を測定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−115077
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記非球面ヌル干渉計では、サンプルの外形形状を測ることができないという問題がある。
【0006】
一方、サンプルの外形形状を測定する装置として、CGH干渉計が知られている。このCGH干渉計は、CGH(Computer Generated Hologram)の回析光がサンプルに正対して入反射するように、CGHを設計し、設置する。戻り光には理想状態との差の波面が作られ、通常の干渉計で面計測される。
【0007】
ところで、サンプルのレンズ全体の透過性能を測定することができ、しかもサンプルの外形形状を測定することができるようにするためには、上記非球面ヌル干渉計の隣にCGH干渉計を設置し、両干渉計のそれぞれに交互に、同一のサンプルを設置し、測定することが考えられる。
【0008】
具体的には、非球面ヌル干渉計に、測定すべき非球面レンズであるサンプルを設置し、測定した後に、そのサンプルをCGH干渉計に移動して設置し、測定する。しかし、両干渉計にサンプルを設置する場合、それぞれでサンプルの位置調整、光軸調整を実行する必要があり、位置調整、光軸調整に2倍の時間がかかる。つまり、非球面ヌル干渉計、CGH干渉計の2つの干渉計で測定すると、全体の測定時間が長いという問題がある。
【0009】
また、従来の非球面干渉計では、透過波面計測によって、非球面レンズの良否を判定していた。
【0010】
しかし、上記従来方法では、透過波面計測において、レンズ内部の収差であるのか、非球面レンズ表面の形状誤差であるのかを、判別することができないという問題がある。
【0011】
本発明は、測定装置から被検レンズを外さずに、非球面レンズの表面形状を測定することによって、収差を分離することができ、誤差を特定することができ、しかも、非球面ヌル干渉計、CGH干渉計の2台の干渉計を使用して計測する場合よりも、全体の測定時間を短くすることができる非球面レンズの計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の非球面レンズの計測装置は、測定対象であるサンプルを設置するサンプル台と、ヌルミラーと、上記CGHの光軸を上記干渉計が出射する光と平行になるように、上記CGHを移動させ、一方、上記干渉計と上記サンプル台との間の第1の領域の外に、上記CGHを移動させるCGH移動手段と、上記ヌルミラーの光軸を上記干渉計が出射する光と平行になるように、上記ヌルミラーを移動させ、一方、上記干渉計が出射し、上記サンプルを透過した光が通過する第2の領域以外の領域に、上記ヌルミラーを退避させるヌルミラー移動手段とを有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、測定装置から被検レンズを外さずに、非球面レンズの表面形状を測定することによって、収差を分離することができ、誤差を特定することができ、しかも、非球面ヌル干渉計、CGH干渉計の2台の干渉計を使用して計測する場合よりも、全体の測定時間を短くすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施例1である非球面レンズの計測装置100を示す図である。
図2】実施例1において、CGH30を退避させ、ヌルミラー40のみでサンプル20を計測する場合を示す図である。
図3】本発明の実施例2である非球面レンズの計測装置200を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明を実施するための形態は、以下の実施例である。
【実施例1】
【0016】
図1は、本発明の実施例1である非球面レンズの計測装置100を示す図である。
【0017】
非球面レンズの計測装置100は、干渉計10と、サンプル台21と、CGH台31と、CGH移動手段32と、ヌルミラー台41と、ヌルミラー移動手段42とを有する。
【0018】
なお、図1は、干渉計10からの光が照射される領域R1にCGH30が存在し、干渉計10で出射された光が照射される領域から、ヌルミラー40が退避している状態を示す図である。
【0019】
サンプル20は、測定対象である非球面レンズである。サンプル台21は、サンプル20を載置する台である。
【0020】
サンプル台21にサンプル20を載置する場合、サンプル20の光軸と干渉計10からの光の軸とが平行になるように、サンプル台21にサンプル20を載置する。つまり、サンプルの位置、方向を調整する。非球面レンズの計測装置100において、1つのサンプルの位置、方向を調整する回数が1回であることが重要である。
【0021】
CGH台31は、CGH30(Computer Generated Hologram)を載置する台である。
【0022】
CGH移動手段32は、CGH30を移動する手段である。また、CGH移動手段32は、CGH30の光軸を干渉計10が出射する光と平行になるように、CGH30を移動させ、一方、干渉計10とサンプル台21との間の第1の領域R1の外に、CGH30を移動させる手段である。
【0023】
つまり、CGH移動手段32は、CGH30を使用する場合に、CGH30の光軸をサンプル20の光軸と一致させるようにCGH30を移動させ、また、CGH30を使用しないときに、干渉計10とサンプル台21との間の第1の領域R1の外に、CGH30を移動させる手段である。
【0024】
具体的には、CGH移動手段32は、モーターM3と、モーターM3の回転軸S3と、バーB3とを有する。バーB3は、一端がCGH台31に固定され、他端部が回転軸S3に固定されている。モーターM3が回転すると、その回転軸S3の回転に伴って、バーB3が回転し、これに連動して、CGH台31とCGH30とが回転する。
【0025】
ヌルミラー40は、サンプル20の透過光が正対して反射するように設計されている非球面のミラーであり、サンプル20に応じて異なる非球面を有するミラーである。
【0026】
ヌルミラー台41は、ヌルミラー40を載置する台である。
【0027】
ヌルミラー移動手段42は、ヌルミラー40を移動する手段である。また、ヌルミラー移動手段42は、ヌルミラー40の光軸を干渉計10が出射する光と平行になるように、ヌルミラー40を移動させ、一方、干渉計10が出射し、サンプル20を透過した光が通過する第2の領域R2以外の領域に、ヌルミラー40を退避させる手段である。
【0028】
つまり、ヌルミラー40を使用する場合に、ヌルミラー40の光軸をサンプル20の光軸と一致させるようにヌルミラー40を移動させ、また、ヌルミラー40を使用しない場合、干渉計10で出射され、サンプル20を通過した光がヌルミラー40で反射しない領域に、ヌルミラー40を退避させる手段である。
【0029】
具体的には、ヌルミラー移動手段42は、モーターM4と、モーターM4の回転軸S4と、バーB4とを有する。バーB4は、一端がヌルミラー台41に固定され、他端部が回転軸S4に固定されている。モーターM4が回転すると、その回転軸S4の回転に伴ってバーB4が回転し、これに連動して、ヌルミラー台41とヌルミラー40とが回転する。
【0030】
次に、非球面レンズの計測装置100の動作について説明する。
【0031】
まず、サンプル20の表面形状を計測する。この場合、サンプル載置台21にサンプルを載置し、干渉計10とサンプル20との間に、CGH30をセットする。つまり、CGH移動手段32によって、CGH30を移動し、図1に示す状態にする。この場合、ヌルミラー移動手段42によって、ヌルミラー40を、第2の領域R2の外に領域に移動する。すなわち、干渉計10が出射しサンプル20を通過した光の光路の領域にヌルミラー40が存在せず、つまり、干渉計10が出射しサンプル20を透過した光の経路である第2の領域R2から、ヌルミラー40が退避されている。この状態で、干渉計10によって干渉縞を計測する。
【0032】
この計測によって、測定対象の非球面レンズであるサンプル20の表面形状を計測することができる。
【0033】
次に、ヌルミラー40を使用して、サンプル20の全体の透過性能を測定する。
【0034】
図2は、CGH30を退避させ、ヌルミラー40のみでサンプル20を計測する場合を示す図である。
【0035】
図1に示す状態から、CGH30を退避させる場合、モーターM3を駆動して、バーB3を時計方向に90度回転し、CGH台31に載置されているCGH30を90度回転し、図2に示す状態にする。
【0036】
また、図1に示す状態から、ヌルミラー40を光路中に挿入する場合、モーターM4を駆動して、バーB4を時計方向に90度回転し、ヌルミラー台41に載置されているヌルミラー40を90度回転し、図2に示す状態にする。
【0037】
このようにすれば、ヌルミラー40によって、サンプル20のレンズ全体の透過性能を測定することができる。
【0038】
そして、ヌルミラー40によって計測したレンズ全体の透過性能と、CGH30のみによって計測したレンズの外形形状との差をとれば、サンプル20の透過性能を得ることができる。
【0039】
したがって、上記実施例によれば、サンプルの第1面が異常であるのか、サンプルの第2面が異常であるのかが分かる。
【0040】
また、上記実施例によれば、CGH30のみを使用して測定する場合と、ヌルミラー40のみを使用して測定する場合とで、干渉計10とサンプル20との間隔を一定にすることができる(2台使用した場合では、間隔を一定にすることが困難である)。さらに、上記実施例では、サンプル20の光軸と干渉計10の光の方向とを平行に維持することが容易である。
【0041】
なお、CGH30が第1の領域R1から退避している場合には、モーターM3を駆動して、バーB3を反時計方向に90度回転し、CGH台31に載置されているCGH30が90度回転し、図1に示す状態にする。
【0042】
また、ヌルミラー40が、第2の領域R2以外の領域に存在している場合には、モーターM4を駆動して、バーB4を反時計方向に90度回転し、ヌルミラー台41に載置されているヌルミラー40が90度回転し、図2に示す状態にする。
【0043】
なお、CGH移動手段32の代替手段として、CGH台31に一端が接続されている直線歯車と、この直線歯車に螺合する歯車と、この歯車を回転させるモーターとによって構成するようにしてもよい。また、CGH移動手段32の代替手段として、CGH台31をスライドするガイド(図示せず)を設け、操作者が自分の手で、CGH台31をそのガイドに沿って手動でスライドすることによって、CGH30を光路から退避するようにしてもよい。
【0044】
なお、ヌルミラー移動手段42の代替手段として、ヌルミラー台41に一端が接続されている直線歯車と、この直線歯車に螺合する歯車と、この歯車を回転させるモーターとによって構成するようにしてもよい。さらに、ヌルミラー移動手段42の代替手段として、ヌルミラー台41をスライドするガイドを設け、操作者が自分の手で、ヌルミラー40台をガイドに沿って手動でスライドすることによって、ヌルミラー40を光路から退避するように構成してもよい。
【0045】
上記実施例によって、計測対象の非球面レンズであるサンプル20を測定装置から外さずに、非球面レンズの表面形状を測定することによって、収差を分離することができ、誤差を特定することができ、しかも、非球面ヌル干渉計、CGH干渉計の2台の干渉計を使用して計測する場合よりも、全体の測定時間を短くすることができる。
【実施例2】
【0046】
図3は、本発明の実施例2である非球面レンズの計測装置200を示す図である。
【0047】
非球面レンズの計測装置200は、基本的には、非球面レンズの計測装置100と同じであるが、非球面レンズの計測装置100に、制御手段50、入力手段51が設けられている。
【0048】
制御手段50は、CGH移動手段32と、ヌルミラー移動手段42とを自動的に制御する手段である。入力手段51は、CGHボタン(図示せず)とヌルミラーボタン(図示せず)とが設けられ、CGHボタンを押すと、制御手段50を介して、図1に示す状態にセットされる。一方、ヌルミラーボタンを押すと、制御手段50をかいして、図2に示す状態にセットされる。
【符号の説明】
【0049】
100、200…非球面レンズの計測装置、
10…干渉計、
20…サンプル、
30…CGH、
40…ヌルミラー、
50…制御手段。
図1
図2
図3