【解決手段】ヒータ32は、発熱体60と、保護層90とを有する。保護層は、発熱体を覆い、表面の少なくとも一部は、発熱体に向かって凸となる凸面部を有している。このようなヒータを定着装置に適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態の画像形成装置および定着装置について、図面を用いて説明する。
【0012】
図1は、実施形態の画像形成装置の模式図である。画像形成装置1は、読取り部R、画像形成部P、給紙カセット部C、定着装置30を有する。読取り部Rは、原稿台に設置される原稿シートをCCD(Charge-Coupled Device)イメージセンサなどで読み取り、光信号をデジタルデータに変換する。画像形成部Pは、読取り部Rで読み取られた原稿画像、もしくは外部のパーソナルコンピュータからの印刷データを取得し、トナー像をシート上に形成、定着させるユニットである。
【0013】
画像形成部Rは、レーザ走査部200、および感光ドラム201Y、201M、201C、201Kを有する。レーザ走査部200は、ポリゴンミラー208、および光学系241を有し、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像信号に基づき、シート上に形成する像を感光ドラム201Y〜201Kに照射する。
【0014】
感光ドラム201Y〜201Kは、不図示の現像装置から供給される各色トナーを、上記の照射位置に従い保持する。感光ドラム201Y〜201Kは、保持したトナー像を順次転写ベルト207に転写する。転写ベルト207は、無端ベルトであり、ローラ213が回転駆動することで、転写位置Tまでトナー像を搬送する。
【0015】
搬送路101は、給紙カセット部Cにストックされたシートを、転写位置T、定着装置30、排出トレイ211の順に搬送する。給紙カセット部Cにストックされたシートは、搬送路101の案内により転写位置Tまで搬送され、転写ベルト15が転写位置Tにてトナー像をシートに転写する。
【0016】
トナー像が表面に形成されたシートは、搬送路101の案内に従い定着装置30まで搬送される。定着装置30は、トナー像を加熱、溶融することで、シートへ浸透させて定着させる。これにより、シート上のトナー像が外力によって乱されることを防ぐ。搬送路101は、トナー像が定着したシートを排出トレイ211まで搬送し、シートを画像形成装置1の外部に排出する。
【0017】
制御部801は、画像形成装置1内の装置や機構を統括的に制御するユニットであり、例えばCPU(Central Processing Unit)などの中央演算装置や、揮発性/不揮発性の記憶装置を含む。一つの実施形態として、中央演算装置が記憶装置に記憶されたプログラムを演算実行することで、画像形成装置1内の装置、機構を制御する。また、機能の一部を回路として実装しても構わない。
【0018】
尚、形成対象の画像(トナー画像)を転写位置Tまで搬送し、シート上に転写するまでの各ユニットを含めた構成を転写部40とする。
【0019】
図2は定着装置30の構成例を示す図である。定着装置30は、板状のヒータ32、複数のローラに懸架された無端ベルト34を有する。また定着装置30は、無端ベルト34を懸架し、一定方向に回転駆動させる駆動ローラ33を有する。定着装置30は、無端ベルト34を懸架するとともに張力を与えるテンションローラ35を有する。また定着装置30は、弾性層が表面に形成された加圧ローラ31を有する。ヒータ32は、発熱部側が無端ベルト34の内側面に接触しており、加圧ローラ31の方向に押圧する。これにより、加圧ローラ31とで形成される接触部分(ニップ部)に、トナー像を乗せたシート105を挟み込み、加熱、加圧する。
【0020】
加圧ローラ31(加熱体)は、無端ベルト34を挟んでヒータ32と対向する位置に設置される。加圧ローラ31は、無端ベルト34とともに、搬送されるシートを挟持するためのニップを形成する。ニップは、換言すると、ヒータ32と加圧ローラ31とにより形成されるシート(無端ベルト34)の挟圧領域を指す。ニップのシート搬送方向の長さをニップ幅と言う。
【0021】
尚、無端ベルト34は、ヒータ32と接する側から順に、基層(Ni/SUS/PI:厚さ60〜100μm)、弾性層(Siゴム:厚さ100〜300μm)、離型層(PFA:厚さ15〜50μm)の各層から成っている。各厚さの数値や材質などは一例である。
【0022】
無端ベルト34は、加圧ローラ31の回転をベルト動力源としてもよい。
【0023】
図3は、ヒータ32内に含まれる、発熱抵抗部材を図示したものである。発熱抵抗部材60(発熱体)は、搬送されるシート105の面と対面するよう配置されている板状部材であり、複数の抵抗部材61により構成されている。抵抗部材61は、発熱抵抗部材60をシート搬送方向に対し直角方向(Y軸方向)に複数小分けしたセル領域である。抵抗部材61のそれぞれは両端が電極62と接続しており、通電することで発熱する。電極62は、アルミ層で形成されている。
【0024】
本実施形態では、
図3に示す複数のセルに小分けした発熱抵抗部材60を用いるが、小分けせずに一体となった板状の発熱抵抗部材を用いても構わない。
【0025】
図4(A)は実施形態のヒータ32の構成を図示したものであり、
図4(B)は、対比用に従前の加熱部材の構成を図示したものである。
図4において、無端ベルト34は省略している。
【0026】
図4(A)に示すヒータ32は、セラミック基板70の上に上述の発熱抵抗部材60が積層されている。さらに、耐熱部材の保護層90が積層されており、発熱抵抗部材60を覆う。保護層90は、セラミック基板70および発熱抵抗部材60が不図示の無端ベルト34と接触することを防ぐために設けられている。保護層90を設けることで、無端ベルト34の摩耗を抑制する。本例において、セラミック基板70は1〜2mmの厚さを有し、保護層90の材質はSio2であり、その厚さは60〜80μmである。
【0027】
保護層90の加圧ローラ31のローラ面31Aと対面している表面90Aは、対向する加圧ローラ31に対して窪み形状(凹形状)となっている。換言すると、保護層90の加圧ローラ31と対向する側の面90Aは、加圧ローラ31に対して凹となる凹面部を有している。保護層90の表面90Aは、発熱抵抗部材60に向かって凸形状となった曲面を有している。このように、保護層90は、発熱抵抗部材60を覆い、表面90Aの少なくとも一部は、発熱抵抗部材60に向かって凸となる凸面部を有している。保護層90の表面90Aは、加圧ローラ31のローラ面31Aと係合し、ローラ面を包接する円弧状に削ぎ落とされた形状となっている。保護層90は、
図4(A)のように、端部91、92近傍の外側部が厚くなっており(X軸方向に高く)、中心部が薄くなる(X軸方向に低い)形状をしている。
【0028】
加圧ローラ31の径をRpとし、保護層90の円弧状の径をR1とすると、これらの曲率の関係は
1/Rp>1/R1
となる。すなわち、保護層90の円弧状の径R1の方が、加圧ローラ31の径Rpよりも長く、よって緩やかな径となっている。換言すると、保護層90の凹面部の曲率は、加圧ローラ31の表面の曲率よりも小さい。
【0029】
一方、
図4(B)に示す従来の加熱部材の保護層80は、その表面が平坦形状となっている。本実施形態の保護層90のように、表面を円弧状に削り取られた形状とすることで、
図4(B)に示す従来の平坦表面の保護層80よりも、加圧ローラ31とのニップ幅を増大させることができる。このように、表面を円弧状に削り取られた形状とすることで、加圧ローラ31の荷重を増大させることなく、加圧ローラ31の径を大きくすることなく、所定のニップ幅を確保することができる。
【0030】
ここで、保護層80の表面90Aが加圧ローラ31に対して凸となる凸面部を有する場合を考える。この場合、凸面部がヒータ32に当たり、ヒータ32に強い荷重がかかることにより、ヒータ32が破損しやすくなる。本実施形態では、保護層80の表面90Aが加圧ローラ31に対して凹となる凹面部を有するので、保護層80と加圧ローラ31とのニップ幅を確保しつつ、加圧ローラ31から保護層80への荷重を適正範囲に収めることができる。
【0031】
また、
図4(A)に示す保護層90は、中心部が最も薄くなっているが、最薄部の厚さT1は60μm以上とする。これは、保護層の強度を担保するためであり、本実施形態では、少なくとも60μm以上を確保する。
【0032】
尚、
図4(A)に示すように、保護層90は左右対称となっているが、これは加圧ローラ31が保護層90の中心部で接触することに基づく。加圧ローラ31との接触位置によっては非対称としてもよい。
【0033】
図5は、保護層90を図示したものであり、特に端部91、92の形状(縁(へり)の形状)に着目した図である。
図5において、無端ベルト34は省略している。端部91は、シート搬送方向の上流側に位置し、表面90Aと保護層90の上流側側面90Bとで形成される接合部である。端部92はシート搬送方向の下流側に位置し、表面90Aと保護層90の下流側側面90Cとで形成される接合部である。以下、端部91(縁(へり))を上流側端部と称し、端部92(縁(へり))を下流側端部と称する。
図5に示すように、上流側端部91、下流側端部92の先端形状は、いずれも曲率が設けられ、円弧形状を有している。上流側端部91の先端円弧形状と下流側端部92の先端円弧形状とは径や大きさが異なっている。
【0034】
上流側端部91の先端円弧形状の径(縁(へり)の径)をr1、下流側端部92の先端円弧形状の径(縁(へり)の径)をr2とすると、これらの曲率は、
1/r2>1/r1
の大小関係が成立する。すなわち、上流側端部91の径r1の方が下流側端部92の径r2よりも大きく、緩やかとなっている。本実施形態では、r1とr2との比率はr1:r2=2:1程度とし、r1=0.04mm程度、r2=0.08mm程度とする。上流側端部91の径を大きくし、緩やかにすることで、シートがニップ部に進入しやすくなる。また、入口側の径を大きくすることで、シートの搬入負荷を低減させることができ、例えば厚紙など、様々なシートにも対応させることができる。また、保護層90の表面90Aに関して、
図4(A)におけるニップ幅を形成する箇所(挟圧領域)よりも、上流側の箇所の方が、曲率が大きく、より加圧ローラ31に近づくような曲面形状になっている。このように、本実施形態では、保護層90の表面90Aの上流側の箇所の曲率を大きくしたので、該箇所の保護層90にシート105をより早い段階で接触させることができる。そのため、本実施形態では、シート105が発熱抵抗部材60から享受する熱量を、増大させることができる。
【0035】
一方、下流側端部92の径を小さくし、先鋭状にすることで、下流側端部92が無端ベルト34を介してシートに強く当たり、定着装置30からシートが剥離しやすくなる。また、保護層90は無端ベルト34と接する部位であるため、上流側端部91、下流側端部92が尖ったままででは、無端ベルト34がすぐに劣化してしまう。よって本実施形態では、上流側端部91、下流側端部92のいずれも円形状として丸みを帯びることで、無端ベルト34の摩耗を抑制することも可能となる。
【0036】
上流側端部91および下流側端部92については、以下のようにも言える。保護層90において、シートの搬送方向の上流側端部91(発熱抵抗部材60の短手方向における一方側の端部91)は、発熱抵抗部材60および保護層90の積層方向に膨出し、かつ頂面が曲面である。保護層90において、シートの搬送方向の下流側端部92(発熱抵抗部材60の短手方向における他方側の端部)は、発熱抵抗部材60および保護層90の積層方向に膨出し、かつ頂面が曲面である。上流側端部91(一方側の端部91)の曲面の曲率と、下流側端部92(他方側の端部)の曲面の曲率とは異なる。上流側端部91の曲面の曲率は、下流側端部92の曲面の曲率よりも小さい。
【0037】
(第2実施形態)
第2実施形態では、定着装置の構成を第1実施形態から変更した態様例について説明する。
図6は、定着装置30Aの構成例を示す図である。
【0038】
フィルムガイド36は、半円筒形であり、外周面にある凹部361内にヒータ32を収容する。
【0039】
定着フィルム34A(ベルト)は、無端の回転ベルトである。定着フィルム34Aは、フィルムガイド36の外周面に嵌められる。定着フィルム34Aは、フィルムガイド36および加圧ローラ31に挟持され、加圧ローラ31の回動に従動する。
【0040】
上記のヒータ32は、定着フィルム34Aに接し、定着フィルム34Aを加熱する。
【0041】
トナー像が形成されたシート105が、定着フィルム34Aと加圧ローラ31との間に搬送される。定着フィルム34Aは、シートを加熱し、シート上のトナー像をシートに定着させる。
【0042】
図3〜
図5に示したヒータ32などの態様は、第2実施形態の定着装置30Aにも適用させることができる。
【0043】
以上に詳説したように、実施形態では、ヒータ32と加圧ローラ31とのニップ幅を増大させることができる。
【0044】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他の様々な形で実施することができる。そのため、前述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する全ての変形、様々な改良、代替および改質は、すべて本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0045】
1 画像形成装置、30,30A 定着装置、32 ヒータ、31 加圧ローラ(加圧体)、34、34A 無端ベルト、33 駆動ローラ、35 テンションローラ、40 転写部、60 発熱抵抗部材(発熱体)、
61 抵抗部材、62 電極、70 セラミック基板、
90 保護層、91 上流側先端部、92 下流側先端部、801 制御部、
C 給紙カセット部、R 読取り部、P 画像形成部。