日中の野外や明るい照明の下でも、明度及びコントラストに優れた鮮明な映像を映し出すことができるとともに、投射光の反射型スクリーンの反対側への透過(ホットスポット現象)が十分に防止される反射型スクリーン及び反射型スクリーン用シート、並びにこれらを用いた映像表示システムを提供すること。
請求項1又は2に記載の反射型スクリーンにおいて、前記視野制御フィルタは、光透過層と光遮光層とが交互に繰り返し配置されたルーバー層であり、これら光透過層と光遮光層の接合面が前記ルーバー層の厚さ方向に対し、平行又は所定の角度で傾斜していることを特徴とする反射型スクリーン。
請求項1〜5のいずれか一項に記載の反射型スクリーン又は請求項6若しくは7に記載の反射型スクリーン用シートを有するスクリーンと、前記スクリーンに映像又は動画を投影する映写装置と、前記スクリーンを振動体として音を生じさせる機能を有する振動スピーカーとを有することを特徴とする映像表示システム。
請求項8又は9に記載の映像表示システムにおいて、さらに周辺の音を集音する集音装置と、音の位相を反転させる位相反転器とを有していることを特徴とする映像表示システム。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明をその一実施形態に即して詳細に説明する。
【0025】
[1]反射型スクリーン
(1)第1の態様
図1は、投射光により画像を表示する反射型スクリーンの第1の態様を示す。反射型スクリーン1は、透明基板10と、前記透明基板10の上に設けられた視野制御フィルタ20と、前記視野制御フィルタ20の上に設けられた前記投射光を散乱させる散乱層30とを有し、前記散乱層30がダイヤモンド粒子及び/又は金属系無機粒子からなる光散乱体31を含有することを特徴とする。
【0026】
第1の態様の反射型スクリーンは、前記散乱層30の側から投射光を投影して前記散乱層30に画像を表示し、投射光と同じ側(散乱層30の側)から画像を観察する。散乱層30に含まれるダイヤモンド(屈折率2.4)及び金属系無機粒子はガラスや高分子樹脂に比べて高い屈折率を有するため良好な光散乱体として働き、ミー散乱により高い散乱効果を発揮するため視野角依存性が小さく広い範囲から画像を観察することが可能となる。さらに透明基板10の上に設けられた特定の角度成分以外の光を除去する視野制御フィルタ20が、投射光を吸収しスクリーンの反対側へ直接透過しないようにするため、可視光の透過性を保持しつつ、観察する側とは反対側から入射する可視光の強さを弱めることにより、映し出される画像(反射像)の明度及びコントラストを高め、鮮明な画像を観察することが可能となるとともに、スクリーンの反対側から観察したときのホットスポット現象が解消される。
【0027】
視野制御フィルタは、所定の範囲の角度域(以下、「透過角度域」ともいう。)の入射角で入射する光は透過させるが、当該範囲を外れた角度域(以下、「非透過角度域」ともいう。)の入射角で入射する光は透過させないという特性を有するものである。なお入射角とは視野制御フィルタの法線方向に対する角度である。
このため、反射型スクリーンに対して投射光が非透過角度域の入射角で入射するように映写装置を配置することにより、投影光が反射型スクリーンを透過しなくなるので、スクリーンの反対側から観察したときのホットスポット現象が解消されるとともに、スクリーンの反対側からは映写した映像や動画を観察できないようにすることができる。一方、投射側又は投射側の反対側から、視軸が透過角度域に入るように観察した場合は、スクリーンの反対側を観察することができる。このような効果を発揮させるため、この視野制御フィルタ20は投影側から見て前記散乱層の後側に設ける。
【0028】
第1の態様の反射型スクリーンは、
図2に示すように、反射型スクリーン1における散乱層30の上にさらにもう一つの透明基板10’を設けた構成の反射型スクリーン2としても良い。この場合、画像は透明基板10’の側から投射し、同じ側から観察する。また
図3に示すように、散乱層30の上にさらにハードコート層40を設けた構成の反射型スクリーン3としても良い。この場合も、画像はハードコート層40の側から投射し、同じ側から観察する。このように、散乱層30の上にさらにもう一つの透明基板10’又はハードコート層40を設けることにより、散乱層30を保護することができる。なお、ハードコート層40に前記光散乱体31を含有させても良い。また、ハードコート層40を設ける代わりに、散乱層30にハードコート剤を含有させても良い。
【0029】
第1の態様の反射型スクリーン1,2,3において、光散乱体31を含有する散乱層30は、視野制御フィルタ20と直接接して設けられていても良いし、接着剤(図示せず)を介して設けられていても良い。またこの接着剤中に前記光散乱体を含有させても良い。散乱層30と視野制御フィルタ20との間に透明支持体等からなる中間層を有していても良い。反射型スクリーン2において、光散乱体31を含有する散乱層30は、透明基板10’と直接接して設けられていても良いし、接着剤(図示せず)を介して設けられていても良い。反射型スクリーン3において、光散乱体31を含有する散乱層30は、ハードコート層40と直接接して設けられていても良いし、接着剤(図示せず)を介して設けられていても良い。
【0030】
反射型スクリーン1のように、光散乱体31を含有する散乱層30が空気と接している場合、すなわち散乱層30が最外層を形成している場合、
図1に示すように、散乱層30の表面に光散乱体31の一部が飛び出しているような状態で光散乱体31を存在させるのが好ましい。
【0031】
(a)透明基板
透明基板はガラス又は高分子樹脂からなるのが好ましい。透明基板は平面状の板であっても良いし、曲面状の板であっても良い。また可撓性のあるシート状であっても良い。ガラスとしては、ケイ酸塩ガラス、リン酸塩ガラス、ホウ酸塩ガラス等の酸化ガラスが実用的であり、特にケイ酸ガラス、ケイ酸アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス、カリ石灰ガラス、鉛ガラス、バリウムガラス、ホウケイ酸ガラス等のケイ酸塩ガラスが好ましい。
【0032】
高分子樹脂としては可視光の透過性に優れたものが好ましく、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、ポリウレタンアクリレート系樹脂、エポキシアクリレート系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、セルロース系樹脂、アセタール系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂等を用いることができる。高分子樹脂には、可塑剤が添加されていてもよい。可塑剤としては、例えばトリエチレングリコール−ビス−2−エチルブチレートが挙げられる。
ガラス又は高分子樹脂の厚さは、特に限定されないが、強度及び経済性の観点から、10μm〜50mmが好ましく、20μm〜30mmが好ましい。
【0033】
(b)視野制御フィルタ
視野制御フィルタは、透過角度域の入射角から入射する光は透過させるが、非透過角度域の入射角から入射する光は透過させないという特性を有するものであれば限定はされずどのようなものであってもよい。視野制御フィルタとしては、θ
0を中心に[(θ
0−α
1)〜(θ
0+α
2)]の範囲の入射角で入射する光は透過させるが、[(θ
0−α
1)〜(θ
0+α
2)]の範囲を外れた角度域θ
α(θ
α<θ
0−α
1及びθ
α>θ
0+α
2)の入射角で入射する光は透過させないという特性を有するのが好ましい。
このような視野制御フィルタの透過率は、例えば
図4に示すように、θ
0で最も透過率が高く、θ
0から遠ざかるに従って透過率が低下し、(θ
0−α
1)より小さい角度及び(θ
0+α
2)よりも大きい角度で透過率が最も低くなるような角度依存性を有している。このような透過率が最も低くなる角度域の入射角から入射する光は実質的に透過しなくなるので、投射光によるスクリーン反対側のホットスポットの発生を防止できる。
【0034】
θ
0及びα(α
1又はα
2)は視野制御フィルタの設計によって適宜設定することが可能であり、どのような角度にするかは反射型スクリーンの使用目的に応じて適宜決定すればよい。θ
0は0〜60°の範囲が好ましく、0〜50°の範囲がより好ましい。角度αは0°より大きく90°未満の範囲が好ましく、10〜80°の範囲がより好ましい。θ
0で入射する光がこの視野制御フィルタを透過する時の透過率は60%以上であるのが好ましく、70%以上であるのがより好ましく、80%以上であるのが最も好ましい。角度域θ
α(θ
α<θ
0−α
1及びθ
α>θ
0+α
2)の入射角で入射する光がこの視野制御フィルタを透過する時の透過率は、10%以下であるのが好ましく、5%以下であるのがより好ましく、2%以下であるのが更に好ましい。
【0035】
このような特性を有する視野制御フィルタ20としては、
図5(a)に示すように、光透過層21aと光遮光層21bとが平面方向でかつ一定の方向に、交互に繰り返し配置されたルーバー層21であるのが好ましい。ルーバー層21は、光透過層21aと光遮光層21bとの接合面21cがルーバー層21の厚さ方向に対して平行となるように構成されている、つまり前記接合面21cがルーバー層21の平面に対して直交している。また
図5(b)に示すように、光透過層22aと光遮光層22bとの接合面22cが、ルーバー層22の厚さ方向に対して所定の傾斜角度x(>0°)で傾斜するように構成されていてもよい。ここで傾斜角度xはθ
0に相当する。
【0036】
このように設計されたルーバー層21又はルーバー層22からなる視野制御フィルタ20は、前記光透過層21a(22a)と光遮光層21b(22b)との接合面21c(22c)に平行な方向の光L
0(θ
0で入射する光に相当)を中心として接合面に対してα
1又はα
2の傾きを有する光L
αまでの角度域の光を透過させるが、この範囲を外れた角度域からの光(角度域θ
αで入射する光に相当)は透過させないといった特性を有する。このようなルーバー層21(22)からなる視野制御フィルタ20により、光が透過する角度がθ
0を中心に(θ
0−α
1)から(θ
0+α
2)の範囲に制限される。なお光透過層21aと光遮光層21bとの接合面21cがルーバー層21の厚さ方向に対して平行となるように構成されているルーバー層21の場合は、α
1=α
2(
図5(a)中では「α」と表記)である。
【0037】
以下、光透過層21a(22a)の厚さをWa、光遮光層21b(22b)の厚さをWb、ルーバー層21(22)の厚さをtとして、より具体的な態様を説明する。光透過層21a(22a)と光遮光層21b(22b)との接合面21c(22c)に平行な方向の光L
0の透過率は、光透過層21a(22a)が厚いほど高くなり、Wa/(Wa+Wb)に比例する。従って、ルーバー層21(22)からなる視野制御フィルタ20を透過する透過角度域の入射角からの光の透過率を高くするためには、光透過層21a(22a)の厚さWaを大きくし、光遮光層21b(22b)の厚さWb小さくするのが好ましい。
【0038】
接合面21cとルーバー層21の厚さ方向とのなす傾斜角度xが0°であるルーバー層21を透過することのできる光の入射角の範囲[(θ
0−α)〜(θ
0+α)]は、光透過層21aの厚さWaと、ルーバー層21の厚さtとによって次式:
α=tan
-1(Wa/t) (ただし、x=θ
0=0°)
で求められるαによって決まる。また接合面22cとルーバー層22の厚さ方向とのなす傾斜角度xが0°よりも大きいルーバー層22を透過することのできる光の入射角の範囲[(θ
0−α
1)〜(θ
0+α
2)]は、次式:
α
1=tan
-1((Wa×cos(x))/(t−Wa×sin(x)))、及び
α
2=tan
-1((Wa×cos(x))/(t+Wa×sin(x)))
で求められるα
1及びα
2によって決まる。
【0039】
ルーバー層21(22)の厚さtは150〜2500μmであるのが好ましく、光透過層21a(22a)の厚さWaは10〜2600μmであるのが好ましく、15〜2300μmであるのがより好ましく、20〜2000μmであるのが最も好ましい。光遮光層21b(22b)の厚さWbは、人間の視力に悪影響を及ぼさないよう2〜500μmであるのが好ましく、5〜300μmであるのがより好ましく、10〜200μmであるのが最も好ましい。Wa、Wb及びtを上記の範囲で調節することにより、αを0.5〜85°の範囲(x=0°の場合)で設定するのが好ましい。光透過層22aと光遮光層22bとの接合面22cと、ルーバー層22の厚さ方向とのなす傾斜角度xは、投射光がスクリーンに入射する角度によって適宜設定する。例えば、投射光がスクリーンに対してほぼ垂直に照射される場合は、ルーバー層22の厚さ方向とのなす傾斜角度x(角度θ
0)を大きくして、投射光が反射型スクリーンを透過しないようにする。この場合、投射光が入射することのできる入射角は、[(x−α
1)〜(x+α
2)]の角度範囲であるので、投射光を遮断するためには、xがα
1よりも大きくなるようにx、Wa及びtを設定するのが好ましい。
【0040】
例えば、投射光がルーバー層の厚さ方向に平行(ルーバー層へ入射角0°)で入射する場合、
図6(a)に示すように、投射光がルーバー層(厚さt
1)を透過しないような傾斜角度x
1及び間隔Wa
1で光遮光層22bを構成することで、入射角0°で入射する投射光がルーバー層(厚さt
1)を透過しないような視野制御フィルタを得ることができる。
図6(a)に示す構成に対して、透過率を高めるために、
図6(b)に示すように、光遮光層22bの間隔Wa
2(Wa
2>Wa
1)に広げた場合、入射角0°で入射する投射光はルーバー層(厚さt
1)を透過してしまうが、
図6(c)に示すように、傾斜角度x
1よりも大きな傾斜角度x
2で光遮光層22bを構成することで、光遮光層22bの間隔Wa
2を広げた場合であっても、投射光がルーバー層(厚さt
1)を透過しないような視野制御フィルタを得ることができる。さらに
図6(b)に示す構成と同じ傾斜角度x
1及び間隔Wa
2(Wa
2>Wa
1)であっても、
図6(d)に示すように、ルーバー層の厚さをt
1よりも大きな厚さt2に設定することで、投射光がルーバー層を透過しないような視野制御フィルタを得ることができる。
【0041】
視野制御フィルタとして、1種又は2種以上のルーバー層を重ねて用いても良い。例えば、傾斜角度x
1=0°のルーバー層は、光透過層と光遮光層との接合面に直交する方向の光に対しては角度依存性を有するが、平行する方向の光に対しては角度依存性がないので、このルーバー層を、光透過層と光遮光層との接合面同士が直交するように2枚重ねて使用することにより、ルーバー層の横方向及び縦方向どちらの方向にも透過する光の角度依存性を付与することが可能となる。さらにこのとき2枚のうち1枚だけ傾斜角度x
1を0°よりも大きな値に設定することにより、光の透過する方向をルーバー層に対して斜めに制御することが可能となる。
【0042】
さらに、投射光がルーバー層の厚さ方向に対してある角度λ(入射角λ)で入射する場合は、
図6(a)に示す構成(傾斜角度x
1、間隔Wa
1及び厚さt
1)に対して、
図6(e)に示すように、光遮光層22bの傾斜角度をx
1よりも小さな傾斜角度x
3(x
1>x
3)に設定しても投射光がルーバー層(間隔Wa
1及び厚さt
1)を透過しないようにすることができる。
【0043】
ルーバー層は、例えば、透明なシリコーンゴム組成物とカーボンブラック等で着色されたシリコーンゴム組成物とをそれぞれ所定の厚さのシートに成形して光透過層と光遮光層とを複数形成し、これら複数の光透過層と光遮光層とを交互に積層するとともに、加圧加熱して一体的なブロック体を作製し、このブロック体をスライスする方法により製造される。このときに、光透過層と光遮光層との接合面に対して垂直方向にスライスすることによって光透過層と光遮光層との接合面がルーバー層の厚さ方向に対して平行となるように構成されたルーバー層21が形成され、前記接合面に対して斜めにスライスすることによって光透過層と光遮光層との接合面がルーバー層の厚さ方向に対して所定の角度で傾斜したルーバー層22が形成される。
【0044】
また、ルーバー層を製造する別の方法として、光透過層としてのシリコーンゴムコンパウンドからなる高透明フィルムに、複数の平行な直線の溝を、離間させて、厚さ方向に貫通するように形成し、次に、カーボンブラック等の黒色物質で着色したシリコーンゴムコンパウンドを、光遮光層として前記溝に充填した後、加熱加硫硬化する方法が挙げられる。
【0045】
ルーバー層を構成する視野制御フィルタとしては、信越ポリマー株式会社製、視野角制御フィルムVC−FILM等が好ましく使用できる。なお、視野制御フィルタとしては、電源をオンにしたときのみ視野制御フィルタとしての機能を発現し、電源をオフにしたときは透明フィルムとして機能するフィルムを用いてもよい。
【0046】
(c)散乱層
ダイヤモンド粒子は、天然ダイヤモンドの粒子又は人工ダイヤモンドの粒子を用いることができる。人工ダイヤモンドとしては、単結晶ダイヤモンド、多結晶ダイヤモンド等があるが、例えば、爆射法で得られたグラファイト相を有する単結晶ナノダイヤモンドを酸化処理して得られるものが好ましい。爆射法で得られたナノダイヤモンド(グラファイト相を有するナノダイヤモンド)は、ダイヤモンドの表面をグラファイト系炭素が覆ったコア/シェル構造を有しており、そのため黒く着色している。このため酸化処理を施すことにより、グラファイト相がほとんど除去されたダイヤモンド粒子とするのが好ましい。
【0047】
溶剤等との親和性を高めるため、ダイヤモンド粒子の表面をケイ素又はフッ素で修飾して用いても良い。特にダイヤモンド粒子をフッ素処理して得られたフッ素化ダイヤモンド粒子は、高分子樹脂への分散性に優れており、前記光散乱体として好適である。
【0048】
ダイヤモンド粒子は特に限定されないが、比重が3.38g/cm
3より大きいものであるのが好ましく、3.5g/cm
3以下であるのが好ましい。爆射法で得られたダイヤモンドは、1〜10nm程度の径を有するナノサイズのダイヤモンドが凝集したメジアン径10〜250nm(動的光散乱法)の粒子であるので、光散乱体として使用する場合、さらに凝集させて使用するのが好ましい。
【0049】
ダイヤモンド粒子のメジアン径は、0.01〜1μmであるのが好ましい。特に、ダイヤモンド粒子のメジアン径は、コントラストをより向上させる観点から、1μm以下であるのが好ましく、0.7μm以下であるのがより好ましく、0.4μm以下であるのが更に好ましい。また、ダイヤモンド粒子のメジアン径は、明度をより向上させる観点から、0.01μm以上であるのが好ましく、0.03μm以上であるのがより好ましい。
【0050】
金属系無機粒子は、金属酸化物又は金属酸化物以外のものを微粒化したものが用いられる。金属酸化物としては、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化セリウム等を挙げることができ、金属酸化物以外としては、チタン酸バリウム、硫酸バリウム等を挙げることができる。特に、投射光の散乱性、粒子の凝集性及び製造コストの観点から、酸化ジルコニウム、酸化チタン粒子、酸化セリウム粒子、チタン酸バリウム及び硫酸バリウム粒子を用いるのが好ましい。これらの金属系無機粒子は、1種のみで使用しても良いし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。さらに前記のダイヤモンド粒子と組み合わせて用いてもよい。
【0051】
金属系無機粒子は、市販のものを使用してもよく、例えば、酸化ジルコニウム粒子としては、SZR−W、SZR−CW、SZR−M、SZR−K(以上、堺化学工業(株)製、商品名)等、酸化チタン粒子としては、GT−10W2(堺化学製)等を好適に使用することができる。
【0052】
金属系無機粒子は、ガラス又は高分子樹脂中に一次粒子の単独で存在しても良いが、少なくとも一部が凝集した状態で存在するのが好ましい。一次粒子の単独で存在する場合も、凝集状態で存在する場合も、金属系無機粒子のメジアン径は、0.01〜1μmであるのが好ましい。特に、金属系無機粒子のメジアン径は、コントラストをより向上させる観点から、1μm以下であるのが好ましく、0.7μm以下であるのがより好ましく、0.4μm以下であるのが更に好ましい。また、金属系無機粒子のメジアン径は、明度をより向上させる観点から、0.01μm以上であるのが好ましく、0.03μm以上であるのがより好ましい。
【0053】
光散乱体を含有する散乱層は、前記透明基板に用いることのできるガラス又は高分子樹脂に前記光散乱体を分散させて形成するのが好ましく、特に高分子樹脂で形成するのが好ましい。透明基板及び散乱層の両方を高分子樹脂で構成する場合、それらの樹脂は同じであっても異なっていてもよい。散乱層の厚みは、特に限定されないが、コントラスト及び明度をより向上させる観点から、0.5〜1000μmであるのが好ましく、1〜500μmであるのがより好ましく、2〜400μmであるのが更に好ましい。
【0054】
ガラス又は高分子樹脂中の光散乱体の含有量は、コントラスト及び明度をより向上させる観点から、ガラス又は高分子樹脂に対して0.01〜35質量%、好ましくは0.02〜34質量%、より好ましくは0.05〜33質量%、さらに好ましくは0.1〜30質量%である。
【0055】
散乱層は、光散乱体を含有する樹脂溶液を透明基板の上に設けられた視野制御フィルタの表面に塗装することにより形成しても良いし、あらかじめ作製した光散乱体を含有する樹脂からなるシートを前記視野制御フィルタ上に貼り付けて形成しても良い。塗装により散乱層を形成する場合、熱又はUV硬化性の樹脂を用いるのが好ましい。塗装方法としては、バーコート法、ディップコート法、フローコート法、スプレーコート法、スピンコート法、ローラーコート法等が挙げられる。
【0056】
(d)ハードコート層
反射型スクリーンには、表面にハードコート層を設けても良い。ハードコート層は、ハードコート剤を散乱層の上に、塗装することにより形成する。ハードコート層と散乱層との間に、密着性を改良するための中間層を設けてもよい。塗装方法としては、バーコート法、ディップコート法、フローコート法、スプレーコート法、スピンコート法、ローラーコート法等の方法が挙げられる。
【0057】
(2)第2の態様
図7は、投射光により画像を表示する反射型スクリーンの第2の態様を示す。反射型スクリーン4は、透明基板10と、前記透明基板の一方の面に設けられた前記投射光を散乱させる散乱層30と、前記透明基板の他方の面に設けられた視野制御フィルタ20とを有し、前記散乱層30がダイヤモンド粒子及び/又は金属系無機粒子からなる光散乱体31を含有することを特徴とする。前記視野制御フィルタ20の上にさらに透明基板10’’を設けるのが好ましい。
【0058】
反射型スクリーン4は、反射型スクリーン1と同様に、前記散乱層30の側から投射光を投影して画像を表示し、投射光と同じ側(散乱層30の側)から画像を観察する。散乱層30に含まれるダイヤモンド(屈折率2.4)及び金属系無機粒子はガラスや高分子樹脂に比べて高い屈折率を有するため良好な光散乱体として働き、ミー散乱により高い散乱効果を発揮するため視野角依存性が小さく広い範囲から画像を観察することが可能となる。さらに散乱層30に対して透明基板10の反対側に設けられた視野制御フィルタ20が、投射光を吸収しスクリーンの反対側へ直接透過しないようにするため、可視光の透過性を保持しつつ、観察する側とは反対側から入射する可視光の強さを弱めることにより、映し出される画像(反射像)の明度及びコントラストを高め、鮮明な画像を観察することが可能となるとともに、スクリーンの反対側から観察したときのホットスポット現象が解消される。
【0059】
視野制御フィルタ20の上には、さらに透明基板10’’を設けて視野制御フィルタ20の保護層とするのが好ましい。反射型スクリーン4を構成する透明基板10、視野制御フィルタ20及び散乱層30は、反射型スクリーン1と同様なので詳細な説明を省略する。
【0060】
第2の態様の反射型スクリーンは、
図8に示すように、反射型スクリーン4における散乱層30の上にさらに透明基板10’を設けた構成の反射型スクリーン5としても良い。この場合も、画像は透明基板10’の側から投射し、同じ側から観察する。また
図9に示すように、散乱層30の上にさらにハードコート層40を設けた構成の反射型スクリーン6としても良い。この場合も、画像はハードコート層40の側から投射し、同じ側から観察する。またハードコート層に前記光散乱体を含有させても良いし、前記光散乱体を含有する層をハードコート層としても良い。このように、散乱層30の上に透明基板10’又はハードコート層40を設けることにより、散乱層30を保護することができる。なお透明基板10’及び透明基板10’’は透明基板10と同様の材料を使用することができる。またハードコート層40については反射型スクリーン1と同様なので詳細な説明を省略する。
【0061】
第2の態様の反射型スクリーン4,5,6において、光散乱体31を含有する散乱層30は、透明基板10と直接接して設けられていても良いし、接着剤(図示せず)を介して設けられていても良い。同様に、反射型スクリーン5において、光散乱体31を含有する散乱層30は、透明基板10’と直接接して設けられていても良いし、接着剤(図示せず)を介して設けられていても良く、視野制御フィルタ20は透明基板10’’と直接接して設けられていても良いし、接着剤(図示せず)を介して設けられていても良い。また反射型スクリーン6において、光散乱体31を含有する散乱層30は、ハードコート層40と直接接して設けられていても良いし、接着剤(図示せず)を介して設けられていても良い。
【0062】
[2]反射型スクリーン用シート
(1)第1の態様
図10は、投射光により画像を表示する反射型スクリーン用シートの第1の態様を示す。反射型スクリーン用シート101は、投射光により画像を表示する反射型スクリーンを得るためのシートであって、透明な高分子樹脂からなる可撓性を有する透明シート11と、前記透明シート11上に設けられた視野制御フィルタ20と、前記視野制御フィルタの上に設けられた前記投射光を散乱させる散乱層30とを有し、前記散乱層30がダイヤモンド粒子及び/又は金属系無機粒子からなる光散乱体31を含有することを特徴とする。
【0063】
この反射型スクリーン用シート101は、反射型スクリーン1(反射型スクリーンの第1の態様)の透明基板10を透明な高分子樹脂からなる可撓性を有する透明シート11に限定したものであり、視野制御フィルタ20及び散乱層30の構成は反射型スクリーン1と同様である。反射型スクリーン用シート101に使用できる透明な高分子樹脂は、可撓性を有していればどのような材料でも良く、反射型スクリーン1で挙げた透明基板10と同様の材料を使用することができる。この反射型スクリーン用シート101は、反射型スクリーン1と同様、散乱層30の側から画像を投射し、同じ側から観察する。
【0064】
第1の態様の反射型スクリーン用シートは、
図11に示すように、反射型スクリーン用シート101における散乱層30の上にさらにハードコート層40を設けた構成の反射型スクリーン用シート102としても良い。この反射型スクリーン用シート102は、反射型スクリーン3の透明基板を透明な高分子樹脂からなる可撓性を有する透明シート11に限定したものであり、視野制御フィルタ20、散乱層30及びハードコート層40の構成は反射型スクリーン3と同様である。この場合も、画像はハードコート層40の側から投射し、同じ側から観察する。このように、散乱層30の上にさらにハードコート層40を設けることにより、散乱層30を保護することができる。なお、ハードコート層40に前記光散乱体31を含有させても良い。また、ハードコート層40を設ける代わりに、散乱層30にハードコート剤を含有させても良い。
【0065】
これらの反射型スクリーン用シート101,102は、板ガラスのように透明な基板上に貼り付けて、透明な基板を反射型スクリーンとするものである。このような使い方をすることにより、例えば、何かのイベントのために普段はショーウインドウとして使用している板ガラスに、これらの反射型スクリーン用シートを貼り付けて一時的に透明な反射型スクリーンとし、そのイベント終了後にはショーウインドウ表面に貼り付けた反射型スクリーン用シートをはがして元のショーウインドウに戻すといった使用方法が可能である。
【0066】
(2)第2の態様
図12は、投射光により画像を表示する反射型スクリーン用シートの第2の態様を示す。反射型スクリーン用シート103は、投射光により画像を表示する反射型スクリーンを得るためのシートであって、透明な高分子樹脂からなる可撓性を有する透明シート11と、前記透明シートの一方の面に設けられた前記投射光を散乱させる散乱層30と、前記透明シートの他方の面に設けられた視野制御フィルタ20とを有し、前記散乱層30がダイヤモンド粒子及び/又は金属系無機粒子からなる光散乱体31を含有することを特徴とする。前記視野制御フィルタ20の上にさらに透明な高分子樹脂からなる可撓性を有する透明シート11’を設けるのが好ましい。
【0067】
この反射型スクリーン用シート103は、反射型スクリーン4(反射型スクリーンの第2の態様)の透明基板10を透明な高分子樹脂からなる可撓性を有する透明シート11に限定したものであり、視野制御フィルタ20及び散乱層30の構成は反射型スクリーン4と同様である。反射型スクリーン用シート103に使用できる透明な高分子樹脂は、可撓性を有していればどのような材料でも良く、反射型スクリーン4で挙げた透明基板10と同様の材料を使用することができる。この反射型スクリーン用シート103は、反射型スクリーン4と同様、散乱層30の側から画像を投射し、同じ側から観察する。
【0068】
第2の態様の反射型スクリーン用シートは、
図13に示すように、反射型スクリーン用シート103における散乱層30の上にさらにハードコート層40を設けた構成の反射型スクリーン用シート104としても良い。この反射型スクリーン用シート104は、反射型スクリーン6の透明基板10を透明な高分子樹脂からなる可撓性を有する透明シート11に限定したものであり、散乱層30及びハードコート層40の構成は反射型スクリーン6と同様である。この場合も、画像はハードコート層40の側から投射し、同じ側から観察する。またハードコート層に前記光散乱体を含有させても良いし、前記光散乱体を含有する層をハードコート層としても良い。このように、散乱層30の上にさらにハードコート層40を設けることにより、散乱層30を保護することができる。
【0069】
これらの反射型スクリーン用シート103,104は、板ガラスのように透明な基板上に貼り付けて、透明な基板を反射型スクリーンとするものである。このような使い方をすることにより、例えば、何かのイベントのために普段はショーウインドウとして使用している板ガラスに、これらの反射型スクリーン用シートを貼り付けて一時的に透明な反射型スクリーンとし、そのイベント終了後にはショーウインドウ表面に貼り付けた反射型スクリーン用シートをはがして元のショーウインドウに戻すといった使用方法が可能である。
【0070】
[3]映像表示システム
(1)全体構成
上述の反射型スクリーン(又は反射型スクリーン用シート)を用いることにより、映像表示システムを構築することができる。映像表示システムとしては、例えば、
図14に示すように、反射型スクリーン201と、前記スクリーンに映像又は動画を投影する映写装置202と、前記スクリーンを振動体として音を生じさせる機能を有する振動スピーカー203とを有するものが挙げられる。映写装置202は映像出力部に、振動スピーカー203は音声出力部にそれぞれ接続され、システム制御部により制御される。前記振動スピーカー203は必要のない場合は備えていなくてもよい。
【0071】
前記映像表示システムは、
図15に示すように、さらに周辺の音を集音する集音装置204を備えていてもよい。集音装置204は音声入力部に接続され、システム制御部により制御される。また前記集音装置204に加えて、音の位相を反転させる位相反転器(図示せず)とを有していてもよい。
【0072】
映像表示システムは、さらに通信機能を有していても良い。通信機能を有することにより、LAN回線等を通じて配信された画像及び動画を投影することや、ユーザーの入力した各種情報をサーバーに送信し集計することなどが可能となる。
【0073】
(2)反射型スクリーン
映像表示システムに用いる反射型スクリーンとしては、上述の反射型スクリーン及び反射型スクリーン用シートを用いて得られる反射型スクリーンを用いることができる。
【0074】
(3)映写装置
映像表示システムは、画像、動画等を投影するための映写装置202を有する。映写装置202は、ブルーレイディスク(BD)、DVD、メモリー(メモリースティック、SDカード等)等のメディアに保存されたデータ又はLAN回線によって配信されたデータを、映像出力部で処理し、画像及び動画にしてスクリーンに投影する。なお映像出力部から映写装置202に送られる電気信号は、有線で送信しても良いし、無線装置によって送信しても良い。
【0075】
映像装置と反射型スクリーンとの距離は、特に限定されるものではないが、スペース等の関係から、できるだけ至近距離から映写するのが好ましい。映像装置と反射型スクリーンとの距離は、10cm〜2mであるのが好ましく、15cm〜1mであるのがより好ましい。至近距離から映写する場合、光軸は反射型スクリーンに対して、90°以下の角度で映写するのが好ましく、30°以下の角度で映写するのがより好ましい。このように映像を斜めから映写する場合、投影される映像のひずみ及び光量を補正する機能(台形補正等)を有しているのが好ましい。
【0076】
(4)振動スピーカー
映像表示システムは、さらに反射型スクリーンを振動体として音を生じさせる機能を有する振動スピーカー203を有していてもよい。振動スピーカー203は、音声出力部から出力される電気信号を振動に変換し、振動体を振動させて音を発生させる電磁素子や圧電素子などで形成された振動素子を備え、反射型スクリーン(窓ガラス、ショーウインドウ、看板、パネル等)に取り付けることにより反射型スクリーンをスピーカーとして利用する装置である。なお音声出力部から振動スピーカー203に送られる電気信号は、有線で送信しても良いし、無線装置によって送信しても良い。
【0077】
(5)集音装置及び位相反転器
映像表示システムは、さらに周囲の音を集める集音マイクからなる集音装置204を有するのが好ましい。集音マイクで集めた音を音声入力部を介してシステム制御部に入力し、システム制御部に含まれる音の位相を反転させる機能を備えた位相反転器で、集めた音の位相を反転させた逆相ノイズを発生させ、音声出力部を介して振動スピーカー203から出力することによって、周囲の音を逆相ノイズで打ち消すことができる。すなわち、ノイズキャンセラーの効果を発揮させることにより、振動スピーカーからの音楽、音声、効果音などをより鮮明に視聴者に聴かせることができる。なお集音装置204から音声入力部に入力する信号は、有線で送信されても良いし、無線装置によって送信されても良い。
【0078】
このように、周囲の音を逆相ノイズで打ち消すことにより、振動スピーカー203の設置された反射型スクリーン(窓ガラス、ショーウインドウ、看板、パネル等)の前の限られた領域の中のみ音楽、音声、効果音などが良く聞こえ、その領域を外れた位置では聞こえないという指向性を持った音響効果(音響マスキング)を演出することができる。
【0079】
(6)タッチセンサー機能
映像表示システムは、さらにタッチセンサー機能を有していてもよい。タッチセンサー機能を有していることにより、情報を一方的に提供するだけでなく、ユーザーの意志で情報の選択を行うことができ、さらにユーザーからの情報入力等が可能となる。タッチセンサーの方式としては、特に限定されるものではなく、静電容量方式、抵抗膜方式等、公知の方法を適用することができる。
【0080】
(7)応用例
上述の映像表示システムを適用した具体例として、店舗や美術館の展示物のショーウインドウなどへの応答が挙げられる。例えば、ショーウインドウの一部を反射型スクリーンとして、飾られた作品や商品の案内の映像を映し出し、そこに振動スピーカー203を設置することで、展示用ガラスケースの前に立ち止まっている人々にのみ、人が語りかける程度の音量で伝達することができるシステムが挙げられる。さらに反射型スクリーンにタッチセンサー機能を付与することにより、ユーザーが商品等の案内表示に触れると画面が切り替わり、その商品等の詳細な説明が音声とともに映し出されるようにできる。
【実施例】
【0081】
本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0082】
実施例1
ポリビニルブチラール樹脂(ブチラール化度:65.9モル%、アセチル基量:0.9モル%)100質量部に対し、可塑剤として40質量部のトリエチレングリコール−ビス−2−エチルブチレートと、2質量部のダイヤモンド粒子(ビジョン開発製、メジアン径360nm)を添加し、3本ロールミキサーにより約70℃で約15分間混練した後、押出機を使って180℃で厚さ約0.3mmにフィルム化し、ロールに巻き取ることによりダイヤモンド粒子を含有する樹脂膜を得た。作製した樹脂膜と、視野制御フィルタA(信越ポリマー株式会社製 視野角制御フィルムVC−FILM(VC−609500)、可視角度60°、ルーバー角度0°、最大透過率角度0°、Wa577μm、厚さ1.0mm)と、2枚のガラス板とを用いて、ガラス板1/ダイヤモンド粒子含有樹脂膜/視野制御フィルタA/ガラス板2の構成(
図2を参照)となるように挟み、これをゴムバックに入れて約2.7kPa(20Torr)の真空度で20分間脱気した後、脱気したままの状態で90℃のオーブンに移し、90℃で30分間保持しつつ真空プレスし、合わせガラスの予備接着を行った。予備接着された合わせガラスをオートクレーブに入れ、温度135℃、圧力約120N/cm
2(12kgf/cm
2)の条件で20分間本接着を行って反射型スクリーンを作製した。
なお視野制御フィルタAの可視角度とは、フィルタを通して向こうが見える範囲であり、
図4で説明した角度(θ
0−α
1)及び角度(θ
0+α
2)の差、すなわち(α
1+α
2)に対応する。またルーバー角度とは、フィルタの法線方向に対する光透過層と光遮光層との接合面の傾斜角度であり、
図5(b)におけるxに対応する。最大透過率角度とは
図4におけるθ
0である。
【0083】
比較例1
視野制御フィルタAを設けなかった以外は実施例1と同様にして、ガラス板1/ダイヤモンド粒子含有樹脂膜/ガラス板2の構成を有する反射型スクリーンを作製した。
【0084】
比較例2
ダイヤモンド粒子を含有しない以外は実施例1と同様にして、ガラス板1/樹脂膜/視野制御フィルタA/ガラス板2の構成を有する反射型スクリーンを作製した。
【0085】
比較例3
ダイヤモンド粒子を含有しない以外は比較例1と同様にして、ガラス板1/樹脂膜/ガラス板2の構成を有する反射型スクリーンを作製した。
【0086】
(評価)
晴天の日の野外に、実施例1及び比較例1〜3の反射型スクリーンを
図16(a)に示すように、垂直に立てて配置し、斜め上から投射光の入射角が投影画像の上端部分で40°、下端部分で70°となるようにガラス板1の側から映像を投影した。なお、実施例1及び比較例2の反射型スクリーンは、垂直に立てて配置することにより、視野制御フィルタAの光透過層と光遮光層との接合面が水平になるように配置された。投射光と同じ側(投影側)からスクリーンに映し出される映像を観察し、画像の鮮鋭性及び視野角を評価した。さらに、投射光に対して反射型スクリーンの反対側から投射光の透過性を観察した。
【0087】
映像の鮮鋭牲は、スクリーンに投影された画像を投影側から観察し、目視で評価した。その結果、比較例1の反射型スクリーンは投射された映像が全体的に白っぽく、輪郭が薄く観察された。また比較例2及び比較例3の反射型スクリーンは、投射された映像の色合いがほとんど区別できず、輪郭がほとんど認識できなかった。これに対して、実施例1の反射型スクリーンは、投射された映像の発色が極めて鮮やかで、輪郭が極めてはっきりと見えた。
【0088】
視野角は、スクリーンに投影された画像を、投影側の、左右方向の視野角が120°となる方向から観察し、目視で評価した。なお前記視野角は、スクリーンの法線を中心とした左右方向の角度である。その結果、比較例1の反射型スクリーンは、投射された映像の色合いがほとんど区別できず、輪郭がほとんど認識できなかった。また比較例2及び比較例3の反射型スクリーンは、投射された映像がほとんど認識できなかった。これに対して、実施例1の反射型スクリーンは、投射された映像の発色が鮮やかで、輪郭がはっきりと見えた。また画像を投影していないときはスクリーンを通してスクリーンの向こうの景色を見ることができた。
【0089】
透過性は、投射光に対して反射型スクリーンの反対側からスクリーン越しに投射光を観察し、目視で評価した。その結果、比較例1及び比較例3の反射型スクリーンは投射光が直接目に入り非常にまぶしかったのに対して、実施例1及び比較例2の反射型スクリーンは、投射光が視野制御フィルタで完全に遮断されていたため、全くまぶしさを感じなかった。
【0090】
実施例2
(1)フッ素化ダイヤモンド微粒子Aの作製
10gのダイヤモンド粒子(ビジョン開発製、メジアン径360nm)をニッケル製の反応管に入れ、フッ素ガスを流量15ml/min及びアルゴンガスを流量385ml/minで流通しながら400℃で120時間加熱し、ダイヤモンド粒子の表面をフッ素で修飾したフッ素化ダイヤモンド微粒子Aを作製した。得られたフッ素化ダイヤモンド微粒子Aのメジアン径は365nmであり、フッ素含有量はXPS及び元素分析の結果から12質量%であった。なおフッ素化ダイヤモンド微粒子Aのメジアン径はメチルエチルケトン(MEK)に分散させて動的光散乱法により測定した。
【0091】
(2)反射型スクリーンの作製
ポリビニルブチラール樹脂(ブチラール化度:65.9モル%、アセチル基量:0.9モル%)100質量部に対し、可塑剤として40質量部のトリエチレングリコール−ビス−2−エチルブチレートと、3質量部のフッ素化ダイヤモンド微粒子Aを添加し、3本ロールミキサーにより約70℃で約15分間混練した後、押出機を使って180℃で厚さ約0.3mmにフィルム化し、ロールに巻き取ることによりフッ素化ダイヤモンド微粒子Aを含有する樹脂膜を得た。
作製した樹脂膜と、視野制御フィルタB(信越ポリマー株式会社製 視野角制御フィルムVC−FILM、可視角度50°(α
1=32.8°、α
2=17.2°)、ルーバー角度40°、最大透過率角度40°、Wa546μm、厚さ1.0mm)と、2枚のアクリル板(アクリル板A及びB)とを用いて、アクリル板A/ダイヤモンド粒子含有樹脂膜(散乱層)/視野制御フィルタB/アクリル板Bの構成(
図2を参照)となるように挟み、これをゴムバックに入れて約2.7kPa(20Torr)の真空度で20分間脱気した後、脱気したままの状態で60℃のオーブンに移し、60℃で30分間保持しつつ真空プレスし接着を行って反射型スクリーンを作製した。
【0092】
実施例3
ポリビニルブチラール100質量部及びトリエチレングリコール−ビス−2−エチルブチレート40質量部を含むメチルエチルケトン(MEK)溶液(ポリビニルブチラール:10質量%)に、実施例2で作製したフッ素化ダイヤモンド微粒子Aを2質量部添加し、十分攪拌した後、超音波洗浄器を用いて均一分散させた。フッ素化ダイヤモンド微粒子Aは、前記MEK溶液に良好に分散した。この溶液をアクリル板の一方の面にディップ法により塗布及び乾燥し、200μmの厚みの散乱層を形成した。さらに前記散乱層の上に、多官能アクリレート(大日精化社製、EXF37)100重量部と、コロイダルシリカ(東芝シリコーン社製、UVHC−1105)10重量部と、トルエン270質量部とからなるハードコート剤塗工液を、バーコーターによって塗工し、加熱乾燥した後、300MJ/cm
2で紫外線ランプを照射し、厚さ5μmのハードコート層を形成した。さらに前記アクリル板の他方の面(前記散乱層及びハードコート層を形成した側の反対側)に、視野制御フィルタBを貼り付けて反射型スクリーンを得た。この反射型スクリーンは、ハードコート層/ダイヤモンド粒子含有樹脂膜(散乱層)/アクリル板/視野制御フィルタBの構成であった。
【0093】
実施例4
ハードコート剤として、多官能アクリレート(大日精化社製、EXF37)100重量部と、コロイダルシリカ(東芝シリコーン社製、UVHC−1105)10重量部と、実施例2で作製したフッ素化ダイヤモンド微粒子A 3質量部との混合溶液を、トルエンで上記混合溶液分が40%になるように希釈し調整した。アクリル板の一方の面に、バーコーターによって、上記ハードコート剤混合溶液を塗工し、加熱乾燥した後、300MJ/cm
2で紫外線ランプを照射し、厚さ100μmのハードコート層を形成した。さらに前記アクリル板の他方の面(前記散乱層及びハードコート層を形成した側の反対側)に、視野制御フィルタBを貼り付けて反射型スクリーンを得た。この反射型スクリーンは、ダイヤモンド粒子含有ハードコート層(散乱層)/アクリル板/視野制御フィルタBの構成であった。
【0094】
実施例5
200mlステンレスポットに、ダイヤモンド粒子(ビジョン開発製、メジアン径360nm)を9質量部、水系ウレタン樹脂エバファノールHA―170(日華化学製、不揮成分:36.5%)を91質量部加えて、ホモミキサー(PRIMIX社製、商品名:T.K HOMODisper(Model2.5))を用い、4000rpmで15分間攪拌を行った。その後、#2000紗にてろ過を行い、ダイヤモンド粒子/ウレタン樹脂分散液を得た。紗に凝集物は見られなかった。
厚さ2mmのアクリル板A面に、上記分散液を、固形分の濃度が50g/m
2になるようにバーコーター法で塗布した。その後、105℃のオーブンの中に30分間入れて乾燥させ、厚さ15μmのダイヤモンド粒子含有樹脂膜を得た。
次に上記作製物と、視野角制御フィルタBと更にもう一枚の厚さ2mmのアクリル板Bを用いて、アクリル板A/ダイヤモンド粒子含有樹脂膜/視野角制御フィルタB/アクリル板Bの構成となるように挟み、これをゴムバックに入れて約2.7KPa(20Torr)の真空度で20分間脱気した後、脱気したままの状態で90℃のオーブンに移し、90℃で30分間保持しつつ真空プレスし、合わせガラスの予備接着を行なった。予備接着された合わせガラスをオートクレーブに入れ、温度135℃、圧力約120N/cm
2(12kgf/cm
2)の条件で20分間本接着を行なって、反射型スクリーンを作製した。
【0095】
実施例6
実施例5のエバファノールHA―170に代えて水系アクリル樹脂EK−61(サイデン化学製、不揮成分=36.5%に調整)を用いたこと以外は、実施例5と同様の方法で反射型スクリーンを作製した。
この反射型スクリーンは、アクリル板A/ダイヤモンド粒子含有樹脂膜(散乱層)/視野角制御フィルタB/アクリル板Bの構成であった。
【0096】
実施例7
200mlステンレスポットに、二酸化チタン水分散液GT−10W2(堺化学製、メジアン径90nm、不揮成分:40.0%)を21質量部、水系アクリル樹脂EK−61(化学製、不揮成分:42.0%)を79質量部加えて、ホモミキサー(PRIMIX社製、商品名:T.K HOMODisper(Model2.5))を用い、4000rpmで15分間攪拌を行った。その後、#2000紗にてろ過を行い、ダイヤモンド微粒子/ウレタン樹脂分散液を得た。紗に凝集物は見られなかった。
厚さ2mmのアクリル板A面に、上記分散液を、固形分の濃度が50g/m
2になるようにバーコーター法で塗布した。その後、105℃のオーブンの中に30分間入れて乾燥させ、厚さ15μmの二酸化チタン粒子含有樹脂膜を得た。
次に上記作製物と、視野角制御フィルタBと更にもう一枚の厚さ2mmのアクリル板Bを用いて、アクリル板A/二酸化チタン粒子含有樹脂膜/視野角制御フィルタB/アクリル板Bの構成となるように挟み、これをゴムバックに入れて約2.7KPa(20Torr)の真空度で20分間脱気した後、脱気したままの状態で90℃のオーブンに移し、90℃で30分間保持しつつ真空プレスし、合わせガラスの予備接着を行なった。予備接着された合わせガラスをオートクレーブに入れ、温度135℃、圧力約120N/cm
2(12kgf/cm
2)の条件で20分間本接着を行なって、反射型スクリーンを作製した。
【0097】
比較例4
視野制御フィルタBを設けなかった以外は実施例2と同様にして、アクリル板A/ダイヤモンド粒子含有樹脂膜/アクリル板Bの構成を有する反射型スクリーンを作製した。
【0098】
比較例5
ダイヤモンド粒子を含有しない以外は実施例2と同様にして、アクリル板A/樹脂膜/視野制御フィルタB/アクリル板Bの構成を有する反射型スクリーンを作製した。
【0099】
(評価)
晴天の日の野外に、実施例2〜7、比較例4及び5の反射型スクリーンを
図16(b)に示すように、垂直に立てて配置し、スクリーン正面から投射光の入射角が投影画像の上端部分で10°、下端部分で10°となるように、実施例2、5、6、及び7及び比較例4及び5の反射型スクリーンはアクリル板Aの側から映像を投影し、実施例3の反射型スクリーンはハードコート層の側から映像を投影し、実施例4の反射型スクリーンはダイヤモンド粒子含有ハードコート層(散乱層)の側から映像を投影した。なお、実施例2〜7及び比較例5の反射型スクリーンは、垂直に立てて配置することにより、視野制御フィルタの光透過層と光遮光層との接合面が水平から手前に40°(ルーバー角度分)傾くように配置された。投射光と同じ側(投影側)からスクリーンに映し出される映像を観察し、実施例1と同様にして、画像の鮮鋭性及び視野角を評価し、さらに、投射光に対して反射型スクリーンの反対側から投射光の透過性を観察した。
【0100】
(画像の鮮鋭性)
比較例4の反射型スクリーンは、観察する側の反対側(アクリル板Bの側)から光が入射したため投射された映像が全体的に白っぽく、輪郭が薄く観察された。比較例5の反射型スクリーンは、投射された映像の色合いがほとんど区別できず、輪郭がほとんど認識できなかった。これに対して、実施例2〜7の反射型スクリーンは、投射された映像の発色が極めて鮮やかで、輪郭が極めてはっきりと見えた。
【0101】
(視野角)
比較例4の反射型スクリーンは、投射された映像の色合いがほとんど区別できず、輪郭がほとんど認識できなかった。比較例5の反射型スクリーンは、投射された映像がほとんど認識できなかった。これに対して、実施例2〜7の反射型スクリーンは、投射された映像の発色が鮮やかで、輪郭がはっきりと見えた。
【0102】
(透過性)
比較例4の反射型スクリーンは投射光が直接目に入り非常にまぶしかったのに対して、実施例2〜7及び比較例5の反射型スクリーンは、投射光が視野制御フィルタで完全に遮断されていたため、全くまぶしさを感じず、ホットスポット現象が解消された。