【課題】基準マークの検出時に、電子線や検査光がレジスト膜上を走査することによるチャージアップ、不必要なレジスト感光などの不具合を解消し、欠陥の座標管理を高精度で行うための基準マークを形成した反射型マスクブランクを提供する。
【解決手段】基板上に、EUV光を反射する多層反射膜およびEUV光を吸収する吸収体膜が形成されている反射型マスクブランクである。上記吸収体膜の上には電子線描画用レジスト膜が形成されている。上記反射型マスクブランクの例えば多層反射膜に、欠陥情報における欠陥位置の基準となる基準マークが形成されている。そして、この基準マークの形成箇所を含む領域上には上記レジスト膜が形成されていない。
前記レジスト膜は、前記吸収体膜上の転写パターンが形成されるパターン形成領域を含む領域に形成され、前記基準マークは、前記パターン形成領域の外側に設けられた外周部に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の反射型マスクブランク。
大きさが6インチ角の反射型マスクブランクの周縁部において、外周端から0.5mm乃至5.0mmの範囲の領域上には前記レジスト膜が形成されていないことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の反射型マスクブランク。
請求項1乃至6のいずれかに記載の反射型マスクブランクを用いて、電子線描画及び現像によってレジストパターンを形成する工程と、形成されたレジストパターンをマスクにして前記吸収体膜をパターニングする工程と、欠陥検査装置による検査工程とを有することを特徴とする反射型マスクの製造方法。
請求項8乃至10のいずれかに記載のマスクブランクを用いて、電子線描画及び現像によってレジストパターンを形成する工程と、形成されたレジストパターンをマスクにして前記薄膜をパターニングする工程と、欠陥検査装置による検査工程とを有することを特徴とするマスクの製造方法。
前記電子線描画は、電子線描画機における電子線で基準マークを検出し、検出した基準点に基づいて修正した描画データを元に行うことを特徴とする請求項11に記載のマスクの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1に開示されている方法によりマスクブランクの欠陥位置の検査精度を上げることは理論的には可能である。しかし、マスクブランク用基板等に基準マークを形成し、この基準マークと欠陥の相対位置を高い精度で管理(座標管理)するためには、基準マークが検出し易く、換言すれば確実に検出することができ、しかも基準マークを元にした欠陥検出位置のばらつきが小さいことが要求される。
【0010】
また最近では、マスクブランクの欠陥データとデバイスパターンデータとを元に、欠陥が存在している箇所に吸収体パターンが形成されるように描画データを補正して、欠陥を軽減させる試み(Defect mitigation technology)が提案されている。上述の技術を実現するためには、多層反射膜上に吸収体膜が形成され、さらに吸収体パターンを形成するためのレジスト膜が形成されたレジスト膜付きマスクブランクの状態で、電子線描画機においても電子線で基準マークを検出し、検出した基準点に基づいて、補正・修正した描画データを元に電子線描画が行われるが、基準マークについても、電子線走査に対してコントラストが十分に得られる必要がある。
【0011】
ところが、通常、マスクブランク上の略全面にレジスト膜が形成されるため、電子線や検査光の走査によるレジストへのダメージ、レジストの感光による検査精度が劣化する恐れがある。また、レジスト上では、電子線によるチャージアップが起こり、これが原因で基準マークの検出精度が劣化する恐れがある。いずれにしても、マスクブランクに形成した基準マークを元にした欠陥位置の座標管理や、電子線で基準マークを検出し、検出した基準点に基づいて、補正・修正した描画データを元に電子線描画を行うことで欠陥を低減させることが精度良く行えないという問題がある。
【0012】
そこで本発明は、このような従来の問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、第一に、基準マークの検出時に、電子線や検査光がレジスト膜上を走査することによるチャージアップ、不必要なレジスト感光などの不具合を解消し、欠陥の座標管理を高精度で行うための基準マークを形成した反射型マスクブランク及びマスクブランクを提供することであり、第二に、これらマスクブランクを使用し、欠陥を低減させた反射型マスク及びマスクの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記課題を解決するため、特に基準マークの形成領域に着目し、鋭意検討した結果、基準マークの形成領域を回避してマスクブランク上にレジスト膜を形成することにより、基準マークの検出時に、電子線や検査光がレジスト膜上を走査することによるチャージアップ、不必要なレジスト感光などの不具合を解消し、その結果、電子線描画機、欠陥検査装置のいずれでも基準マークを確実に検出でき、しかも電子線、欠陥検査光の走査によって決定される欠陥位置の基準点のずれを小さくすることができ、基準マークを元に検査した欠陥検出位置のばらつきを小さく(例えば100nm以下に)抑えることが可能であることを見出した。
【0014】
本発明者は、以上の解明事実に基づき、さらに鋭意研究を続けた結果、本発明を完成したものである。
すなわち、上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
(構成1)
基板上に、EUV光を反射する多層反射膜およびEUV光を吸収する吸収体膜が形成されている反射型マスクブランクであって、前記吸収体膜の上には電子線描画用レジスト膜が形成され、前記反射型マスクブランクに、欠陥情報における欠陥位置の基準となる基準マークが形成されており、前記基準マークの形成箇所を含む領域上には前記レジスト膜が形成されていないことを特徴とする反射型マスクブランク。
【0015】
構成1にあるように、本発明の反射型マスクブランクは、基板上に、EUV光を反射する多層反射膜およびEUV光を吸収する吸収体膜が形成され、前記吸収体膜の上には電子線描画用レジスト膜が形成され、この反射型マスクブランクには、欠陥情報における欠陥位置の基準となる基準マークが形成されており、前記基準マークの形成箇所を含む領域上には前記レジスト膜が形成されていない構成としている。従って、基準マークの検出時に、電子線や検査光が吸収体膜上を走査し、レジスト膜上を走査することによるチャージアップ、不必要なレジスト感光などの不具合を解消できる。その結果、電子線描画機、欠陥検査装置のいずれでも基準マークを確実に検出でき、しかも電子線、欠陥検査光の走査によって決定される欠陥位置の基準点のずれを小さくすることができ、基準マークを元に検査した欠陥検出位置のばらつきを小さく(例えば100nm以下に)抑えることが可能である。
【0016】
(構成2)
前記基準マークは、前記欠陥位置の基準点を決定するためのメインマークを有し、前記メインマークは、点対称の形状であって、且つ、電子線又は欠陥検査光の走査方向に対して200nm以上10μm以下の幅の部分を有することを特徴とする構成1に記載の反射型マスクブランク。
構成2にあるように、この基準マークは、前記欠陥位置の基準点を決定するためのメインマークを有している。そしてこのメインマークは、点対称の形状であって、且つ、電子線又は欠陥検査光の走査方向に対して200nm以上10μm以下の幅の部分を有することが好ましい。このように構成された基準マークは、電子線描画機、光学式あるいはEUV光、電子線の欠陥検査装置のいずれでも容易に検出でき、言い換えれば確実に検出することができる。しかも、点対称の形状をしているので、電子線、欠陥検査光の走査によって決定される基準点のずれを小さくすることができる。また、エッジ基準で基準マークを形成したり、基準マークを任意の位置に形成後、座標計測器で基準マーク形成位置を特定することにより、基準マークのサイズをより小さくすることが可能であり、その場合、基準マークをメインマークのみとすることが可能である。このように基準マークのサイズを小さくできると、基準マークの形成手段として例えばFIB(集束イオンビーム)を使用した場合、加工時間が短縮でき、また基準マークの検出時間についても短縮できる。従って、基準マークを元に検査した欠陥検出位置のばらつきが小さい。また、これによって、欠陥検査においては、欠陥位置の基準点を決定し、欠陥位置(基準点と欠陥の相対位置)情報を含む精度の良い欠陥情報(欠陥マップ)を取得することができる。さらに、マスクの製造においては、この欠陥情報に基づいて、予め設計しておいた描画データ(マスクパターンデータ)と照合し、欠陥による影響が低減するように描画データを高い精度で修正(補正)することが可能になり、その結果として、最終的に製造される反射型マスクにおいて欠陥を低減させることができる。
【0017】
(構成3)
前記基準マークは、前記欠陥位置の基準点を決定するためのメインマークと、該メインマークの周囲に配置された補助マークとから構成され、前記メインマークは、点対称の形状であって、且つ、電子線又は欠陥検査光の走査方向に対して200nm以上10μm以下の幅の部分を有することを特徴とする構成1に記載の反射型マスクブランク。
構成3にあるように、この基準マークは、前記欠陥位置の基準点を決定するためのメインマークと、該メインマークの周囲に配置された補助マークとから構成され、このメインマークは、点対称の形状であって、且つ、電子線又は欠陥検査光の走査方向に対して200nm以上10μm以下の幅の部分を有することが好ましい。このように構成された基準マークは、電子線描画機、光学式あるいはEUV光、電子線の欠陥検査装置のいずれでも容易に検出でき、言い換えれば確実に検出することができる。しかも、点対称の形状をしているので、電子線、欠陥検査光の走査によって決定される基準点のずれを小さくすることができる。従って、基準マークを元に検査した欠陥検出位置のばらつきが小さい。これによって、欠陥検査においては、欠陥位置の基準点を決定し、欠陥位置(基準点と欠陥の相対位置)情報を含む精度の良い欠陥情報(欠陥マップ)を取得することができる。さらに、マスクの製造においては、この欠陥情報に基づいて、予め設計しておいた描画データ(マスクパターンデータ)と照合し、欠陥による影響が低減するように描画データを高い精度で修正(補正)することが可能になり、その結果として、最終的に製造される反射型マスクにおいて欠陥を低減させることができる。
【0018】
(構成4)
前記レジスト膜は、前記吸収体膜上の転写パターンが形成されるパターン形成領域を含む領域に形成され、前記基準マークは、前記パターン形成領域の外側に設けられた外周部に形成されていることを特徴とする構成1乃至3のいずれかに記載の反射型マスクブランク。
構成4にあるように、基準マークは、転写パターンが形成されるパターン形成領域の外側に設けられた外周部である非パターン形成領域に形成されている。従って、上述の構成1乃至3により得られる効果に加え、基準マークの検出時に、電子線や検査光による転写パターンが形成されるパターン形成領域への照射を最小限に抑えることができるので、チャージアップや、不必要なレジスト感光などの不具合がなく、高精度の反射型マスクを提供することができる。
【0019】
(構成5)
前記基準マークは、前記多層反射膜に形成されていることを特徴とする構成1乃至4のいずれかに記載の反射型マスクブランク。
構成5にあるように、前記基準マークを多層反射膜に形成することにより、多層反射膜成膜後の欠陥検査においても、電子線、及び欠陥検査光の走査で基準マークを検出し易くなる。また、描画データの補正・修正等によっても回避できない欠陥が発見された多層反射膜付き基板を廃棄せずに、多層反射膜を剥離除去してガラス基板を再生(再利用)することも可能である。
【0020】
(構成6)
大きさが6インチ角の反射型マスクブランクの周縁部において、外周端から0.5mm乃至5mmの範囲の領域上には前記レジスト膜が形成されていないことを特徴とする構成1乃至5のいずれかに記載の反射型マスクブランク。
構成6にあるように、例えば大きさが6インチ角の反射型マスクブランクにおいては、外周端から0.5mm乃至5mmの範囲の領域上に基準マークを形成し、この領域上には前記レジスト膜が形成されていないことが好適である。
【0021】
(構成7)
構成1乃至6のいずれかに記載の反射型マスクブランクを用いて、電子線描画及び現像によってレジストパターンを形成する工程と、形成されたレジストパターンをマスクにして前記吸収体膜をパターニングする工程と、欠陥検査装置による検査工程とを有することを特徴とする反射型マスクの製造方法。
上記構成の反射型マスクブランクを用いて得られる反射型マスクは、反射型マスクブランクにおける欠陥情報に基づく高精度の描画データの補正・修正、およびパターン描画によって、欠陥を低減させたものが得られる。
【0022】
(構成8)
基板上に転写パターンとなる薄膜が形成されているマスクブランクであって、前記薄膜の上には電子線描画用レジスト膜が形成され、前記マスクブランクに、欠陥情報における欠陥位置の基準となる基準マークが形成されており、前記基準マークの形成箇所を含む領域上には前記レジスト膜が形成されていないことを特徴とするマスクブランク。
構成8にあるように、本発明のマスクブランクは、転写パターンとなる薄膜の上には電子線描画用レジスト膜が形成され、このマスクブランクには、欠陥情報における欠陥位置の基準となる基準マークが形成されており、前記基準マークの形成箇所を含む領域上には前記レジスト膜が形成されていない構成としている。従って、上記構成1と同様、基準マークの検出時に、電子線や検査光が吸収体膜上を走査し、レジスト膜上を走査することによるチャージアップ、不必要なレジスト感光などの不具合を解消できる。その結果、電子線描画機、光学式あるいは電子線の欠陥検査装置のいずれでも基準マークを確実に検出でき、しかも電子線、欠陥検査光の走査によって決定される欠陥位置の基準点のずれを小さくすることができ、基準マークを元に検査した欠陥検出位置のばらつきを小さく(例えば100nm以下に)抑えることが可能である。
【0023】
(構成9)
前記基準マークは、前記欠陥位置の基準点を決定するためのメインマークを有し、前記メインマークは、点対称の形状であって、且つ、電子線又は欠陥検査光の走査方向に対して200nm以上10μm以下の幅の部分を有することを特徴とする構成8に記載のマスクブランク。
構成9にあるように、この基準マークは、前記欠陥位置の基準点を決定するためのメインマークを有している。そしてこのメインマークは、点対称の形状であって、且つ、電子線又は欠陥検査光の走査方向に対して200nm以上10μm以下の幅の部分を有することが好ましい。このように構成された基準マークは、電子線描画機、光学式あるいは電子線の欠陥検査装置のいずれでも容易に検出でき、言い換えれば確実に検出することができる。しかも、点対称の形状をしているので、電子線、欠陥検査光の走査によって決定される基準点のずれを小さくすることができる。また、エッジ基準で基準マークを形成したり、基準マークを任意の位置に形成後、座標計測器で基準マーク形成位置を特定することにより、基準マークのサイズをより小さくすることが可能であり、その場合、基準マークをメインマークのみとすることが可能である。このように基準マークのサイズを小さくできると、基準マークの形成手段として例えばFIB(集束イオンビーム)を使用した場合、加工時間が短縮でき、また基準マークの検出時間についても短縮できる。従って、基準マークを元に検査した欠陥検出位置のばらつきが小さい。また、これによって、欠陥検査においては、欠陥位置の基準点を決定し、欠陥位置(基準点と欠陥の相対位置)情報を含む精度の良い欠陥情報(欠陥マップ)を取得することができる。さらに、マスクの製造においては、この欠陥情報に基づいて、予め設計しておいた描画データ(マスクパターンデータ)と照合し、欠陥による影響が低減するように描画データを高い精度で修正(補正)することが可能になり、その結果として、最終的に製造されるマスクにおいて欠陥を低減させることができる。
【0024】
(構成10)
前記基準マークは、前記欠陥位置の基準点を決定するためのメインマークと、該メインマークの周囲に配置された補助マークとから構成され、前記メインマークは、点対称の形状であって、且つ、電子線又は欠陥検査光の走査方向に対して200nm以上10μm以下の幅の部分を有することを特徴とする構成8に記載のマスクブランク。
上記構成10のマスクブランクにおいても、このように構成された基準マークは、電子線描画機、光学式あるいは電子線の欠陥検査装置のいずれでも容易に検出でき、言い換えれば確実に検出することができる。しかも、点対称の形状をしているので、電子線、欠陥検査光の走査によって決定される基準点のずれを小さくすることができる。従って、基準マークを元に検査した欠陥検出位置のばらつきが小さい。これによって、欠陥検査においては、欠陥位置の基準点を決定し、欠陥位置(基準点と欠陥の相対位置)情報を含む精度の良い欠陥情報(欠陥マップ)を取得することができる。さらに、マスクの製造においては、この欠陥情報に基づいて、予め設計しておいた描画データ(マスクパターンデータ)と照合し、欠陥による影響が低減するように描画データを高い精度で修正(補正)することが可能になり、その結果として、最終的に製造されるマスクにおいて欠陥を低減させることができる。
【0025】
(構成11)
構成8乃至10に記載のマスクブランクを用いて、電子線描画及び現像によってレジストパターンを形成する工程と、形成されたレジストパターンをマスクにして前記薄膜をパターニングする工程と、欠陥検査装置による検査工程とを有することを特徴とするマスクの製造方法。
(構成12)
前記電子線描画は、電子線描画機における電子線で基準マークを検出し、検出した基準点に基づいて修正した描画データを元に行うことを特徴とする構成11に記載のマスクの製造方法。
上記構成のマスクブランクを用いて得られるマスクは、マスクブランクにおける欠陥情報に基づく高精度の描画データの補正・修正、およびパターン描画によって、欠陥を低減させたものが得られる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、基準マークの検出時に、電子線や検査光がレジスト膜上を走査することによるチャージアップ、不必要なレジスト感光などの不具合を解消し、その結果、電子線描画機、欠陥検査装置のいずれでも確実に検出することができ、しかも電子線、欠陥検査光の走査によって決定される欠陥位置の基準点のずれが小さく、欠陥の座標管理(基準マークと欠陥の相対位置管理)を高精度で行うことが可能な反射型マスクブランク及びマスクブランクを提供することができる。
また、本発明によれば、これらマスクブランクを使用し、これらの欠陥情報に基づき、描画データの修正、修正データによる電子線描画を行なうことで欠陥を低減させた反射型マスク及びマスクを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を詳述する。
[反射型マスクブランク]
本発明に係る反射型マスクブランクは、上記構成1にあるとおり、基板上に、EUV光を反射する多層反射膜およびEUV光を吸収する吸収体膜が形成されている反射型マスクブランクであって、前記吸収体膜の上には電子線描画用レジスト膜が形成され、前記反射型マスクブランクに、欠陥情報における欠陥位置の基準となる基準マークが形成されており、前記基準マークの形成箇所を含む領域上には前記レジスト膜が形成されていないことを特徴とするものである。
本発明に係る反射型マスクブランクの膜構成は、基板上に、少なくともEUVを反射する多層反射膜と、EUV光を吸収する吸収体膜を有する構成であればよく、後述の下地層、保護膜(キャッピング層、バッファ層)、吸収体膜上に形成されるエッチングマスク膜を有する構成であってもよい。
【0029】
図1は、本発明の反射型マスクブランクの構成を示す平面図である。また、
図9はその断面図である。
図1では、相対的に大きさの大きなラフアライメントマーク12と小さなファインマークである本発明における基準マーク(以下、「本発明の基準マーク」とも呼ぶ。)13の2種類のマークを形成している。なお、
図9に示されるように、本実施の形態では、上記基準マーク13は、反射型マスクブランク10の多層反射膜31に凹部形状で形成されている。
【0030】
上記ラフアライメントマーク12は、それ自体は基準マークの役割は有していないが、上記基準マーク13の位置を検出し易くするための役割を有している。上記基準マーク13は大きさが小さく、目視で位置の目安を付けることは困難である。また、検査光や電子線で最初から基準マーク13を検出しようとすると、検出に時間が掛かり、製造プロセス上好ましくない。上記基準マーク13との位置関係が予め決められている上記ラフアライメントマーク12を設けることで、基準マーク13の検出が迅速かつ容易に行える。
【0031】
図1においては、上記ラフアライメントマーク12を矩形状のガラス基板11の主表面上のコーナー近傍の3箇所に、上記基準マーク13を各ラフアライメントマーク12の近傍に2箇所ずつ配置した例を示している。上記ラフアライメントマーク12と基準マーク13はいずれも上記マスクブランク主表面上の外周部のAで示す領域上(転写パターンが形成されるパターン形成領域の外側に位置する非転写パターン形成領域)に形成されている。本発明の反射型マスクブランクにおいて特徴的な構成は、上記基準マーク13の形成箇所を含む領域上には電子線描画用レジスト膜61が形成されていないことである。つまり、上記レジスト膜61は、上記基準マーク13の形成領域を回避して、上記基準マーク13の形成箇所を含む領域を除いた領域(
図1中のBで示す領域であり、パターン形成領域を含む領域である。)にのみ形成されている。
【0032】
上記基準マーク13の形成箇所を含む領域上には上記レジスト膜61が形成されていない構成とすることにより、基準マークの検出時に、電子線や検査光が吸収体膜上を走査することになるため、レジスト膜上を走査することによるチャージアップ、不必要なレジスト感光などの不具合を回避することができる。その結果、電子線描画機、光学式の欠陥検査装置のいずれでも基準マークを確実に検出でき、しかも基準マークの検出精度が向上し、電子線、欠陥検査光の走査によって決定される欠陥位置の基準点のずれを小さくすることができ、基準マークを元に検査した欠陥検出位置のばらつきを小さく(例えば100nm以下に)抑えることが可能である。
【0033】
例えば大きさが6インチ角の反射型マスクブランクにおいては、面取り面の幅と、パターン転写領域の事情から、外周端から0.5mm乃至5.0mmの範囲の領域上に上記基準マーク13を形成し、この領域上には上記レジスト膜61が形成されていないことが好適である。
但し、基板外周縁にあまり近いと、主表面の平坦度があまり良好でない領域であったり、他の種類の認識マークと交差する可能性があるので、外周端から1.0mmよりも内側の領域に上記基準マーク13を形成することが好ましい。即ち、外周端から1.0mm乃至5.0mmの範囲の領域上に上記基準マーク13を形成するのが望ましい。
【0034】
本発明において、基準マーク、ラフアライメントマークの個数は特に限定されない。基準マークについては、最低3個必要であるが、3個以上であっても構わない。また、上記ラフアライメントマーク12についても、上記基準マーク13の形成箇所を含む領域上に形成することが望ましい。なお、検査光や電子線で最初から本発明の基準マーク13を検出するのに特に不都合がなければ、上記ラフアライメントマーク12は設けなくてもよい。
すなわち、
図13に示すように、上記ラフアライメントマーク12は設けずに、例えば、一例としてガラス基板11の主表面上のコーナー近傍の4箇所に上述の基準マーク13を配置するようにしてもよい。これによって、相対的に大きさの大きなラフアライメントマークの形成工程を省くことができ、基準マークの加工時間を大幅に短縮できる。なお、
図13には、メインマーク(後述)13aと、その周囲に配置された4つの補助マーク(後述)13b,13c、13d、13eとから構成される基準マーク13を一例として示している。
【0035】
また、
図1に示すように、本実施の形態では、反射型マスクブランク10の外周部において、上記基準マーク13の形成箇所を含む領域の全周に亘って、上記レジスト膜61が形成されていない構成としているが、これに限らず、たとえば上記基準マーク13の形成箇所及びその近傍の領域にレジスト膜61が形成されていない構成とすることもできる。すなわち、本発明の反射型マスクブランクにおいて、上記レジスト膜61は、上述のパターン形成領域及び、その外周部の非転写パターン形成領域に形成されてもよいが、少なくとも基準マークの検出時に電子線や検査光が走査される基準マーク13の形成箇所の周囲には電子線描画用レジスト膜61が形成されていない構成とすることもできる。但し、本実施の形態のように、上記基準マーク13の形成箇所を含む領域の全周に亘って、上記レジスト膜61が形成されていない構成とすることにより、基板周縁部のレジスト膜剥離による発塵を抑制することができるという効果も奏する。
【0036】
ここで、上記基準マークの構成についてもう少し詳しく説明する。
図2は、上記基準マークの形状例を示す図である。
図2に示す例では、上記ラフアライメントマーク12および基準マーク13はいずれも十字形状である。これらマークの大きさや幅、凹形状とする場合の深さ等は、電子線描画の際の電子線や欠陥検査装置の検査光に対して認識し得るものであれば任意に設定できる。具体例を挙げると、上記ラフアライメントマーク12の場合、x方向の大きさx1、y方向の大きさy1(
図2を参照)はいずれも0.55mm、十字形状の線幅は5μm、深さは100nm、上記基準マーク13の場合、x方向の大きさx2、y方向の大きさy2(
図2を参照)はいずれも0.1mm、十字形状の線幅は5μm、深さは100nmとすることができる。また、上記ラフアライメントマーク12の中心点と基準マーク13の中心点間のx方向の距離x3、y方向の距離y3(
図2を参照)はいずれも1.5mmとすることができる。
【0037】
また、
図3は、上記基準マークの他の構成例に係る本発明に特に好適な基準マークを構成するメインマーク及び補助マークの形状例及び配置例を示す図であり、
図4は、この基準マークを用いた基準点を決定する方法を説明するための図である。
上記基準マークは、欠陥情報における欠陥位置の基準となるものであるが、
図3に示す本発明の基準マーク13は、欠陥位置の基準となる位置(基準点)を決定するためのメインマークと、該メインマークの周囲に配置された補助マークとから構成される。
図3及び
図4には、上記メインマーク13aと、その周囲に配置された2つの補助マーク13b,13cとから構成される基準マーク13を一例として示している。
【0038】
本発明において、上記メインマーク13aは、電子線描画機又は欠陥検査光の走査方向(
図4におけるX方向及びY方向)に対して垂直で且つ平行な辺を少なくとも2組有する多角形状であることが好適である。このように、上記メインマーク13aは、電子線又は欠陥検査光の走査方向に対して垂直で且つ平行な辺を少なくとも2組有する多角形状であることにより、電子線描画機、欠陥検査装置による検出の容易性(確実性)を向上させ、また、欠陥検出位置のばらつきを更に抑えることができる。
図3及び
図4では、具体例として、上記メインマーク13aが、縦横(X及びY方向)が同じ長さの正方形である場合を示している。この場合、縦横の長さがそれぞれ30nm〜10μmとすることができるが、特に200nm以上10μm以下とすることが好ましい。
【0039】
上記メインマーク13aは、点対称の形状であることが好ましい。上記の正方形に限らず、例えば
図5の(a)に示すように、正方形の角部が丸みを帯びた形状や、同図(b)のように、八角形の形状や、同図(c)のように、十字形状であってもよい。この場合においても、メインマーク13aの大きさ(縦横の長さ)Lは、30nm〜10μmとすることができるが、特に200nm以上10μm以下とすることが好ましい。具体例として、メインマーク13aが十字形状の場合、その大きさ(縦横の長さ)は、5μm以上10μm以下とすることができる。また、図示していないが、上記メインマーク13aは、直径が30nm以上10μm以下の正円形とすることもできる。
【0040】
また、上記2つの補助マーク13b,13cは、上記メインマーク13aの周囲に、電子線又は欠陥検査光の走査方向(
図4におけるX方向及びY方向)に沿って配置されている。本発明においては、上記補助マーク13b,13cは、電子線又は欠陥検査光の走査方向に対して垂直な長辺と平行な短辺を有する矩形状であることが好適である。補助マークが、電子線又は欠陥検査光の走査方向に対して垂直な長辺と平行な短辺を有する矩形状であることにより、電子線描画機、欠陥検査装置の走査により確実に検出できるため、メインマークの位置を容易に特定することができる。この場合、長辺は、電子線描画機、欠陥検査装置のできるだけ最小回数の走査により検出可能な長さであることが望ましい。例えば、25μm以上600μm以下の長さを有することが望ましい。一方、長辺の長さが短いと、例えば25μm未満であると、電子線描画機、欠陥検査装置の走査により補助マークをなかなか検出できない恐れがある。また、長辺の長さが長いと、例えば、600μmを超えると、基準マークの形成方法によっては加工時間に1時間/箇所を超えることになるので好ましくない。より好ましくは、長辺の長さは、25μm以上400μm以下、さらに好ましくは、25μm以上200μm以下が望ましい。
【0041】
また、上記補助マーク13b,13cとメインマーク13aは、所定の間隔離間させても良いし、離間させなくても良い。補助マークとメインマークを離間させる場合、間隔は特に制約されないが、本発明においては例えば25μm〜50μm程度の範囲とすることが好適である。
【0042】
なお、上記メインマーク13a、補助マーク13b、13cはいずれも断面形状を凹形状とし、基準マークの高さ方向に所望の深さを設けることで認識し得る基準マークとすることが望ましい。電子線や欠陥検査光による検出精度を向上させる観点から、凹形状の底部から表面側へ向かって広がるように形成された断面形状であることが好ましく、この場合の基準マークの側壁の傾斜角度は75°以上であることが好ましい。さらに好ましくは、80°以上、さらに好ましくは、85°以上とすることが望ましい。
【0043】
上記基準マークを用いて、欠陥位置の基準となる基準点は次のようにして決定される(
図4を参照)。
上記補助マーク13b,13c上を電子線、あるいは欠陥検査光がX方向、Y方向に走査し、これら補助マークを検出することにより、メインマーク13aの位置を大まかに特定することができる。位置が特定された上記メインマーク13a上を電子線、あるいは検査光がX方向及びY方向に走査後、(上記補助マークの走査により検出された)メインマーク13a上の交点P(通常、メインマークの略中心)をもって基準点を決定する。
【0044】
上記のように、本発明においては上記メインマーク13aは、点対称の形状であって、且つ、電子線又は欠陥検査光の走査方向に対して200nm以上10μm以下の幅の部分を有することが好適である。
本発明者は、メインマーク13aの幅と電子線に対するコントラストとの関係、メインマーク13aの幅と欠陥検出位置のばらつきとの関係について検討した結果、メインマーク13aの幅が200nm未満になると、EBコントラストが低下する傾向にあることを見出した。EBコントラストが低下すると、EB(電子線)走査でのメインマークの検出が難しくなるので、高精度の描画データの補正・修正が困難となる。また、メインマーク13aの幅が10μmを超えると、欠陥検出位置のばらつきが大きくなる(例えば100nmを超える)ことを見出した。これは、前述のDefect mitigation technologyを実現・可能にするための基準マークを基準点にした時の欠陥検出位置のばらつき100nm以下を満たすことができない。従って、コントラストと欠陥検出位置のばらつきの両方を満足するためには、上記メインマーク13aは、電子線又は欠陥検査光の走査方向に対して200nm以上10μm以下の幅の部分を有することが好ましい。
【0045】
ところで、上記したように、上記補助マーク13b、13cは、電子線又は欠陥検査光の走査方向に対して垂直な長辺と平行な短辺を有する矩形状であることが好ましく、この場合、長辺は、電子線描画機、欠陥検査装置のできるだけ最小回数の走査により検出可能な長さ、例えば25μm以上600μm以下の長さを有することが好適である。但し、例えば集束イオンビームでこの数百μm程度の長さを形成するとなると、加工時間が長時間必要となる。
【0046】
そこで、上記補助マークを、
図6に示すように、いくつかの矩形に分割することができる。
図7は、このような態様を具体的に示した例であり、5μm×5μmの大きさのメインマーク13aの一方(Y方向)に、50μm×1μmの大きさの矩形状の補助マーク13b1〜13b6を等間隔で配置し、各補助マーク間の間隔(スペース)は50μmとする。
【0047】
この場合、例えば第1スキャン(1回目のスキャン)では補助マークを外し、上(Y方向)に60μmシフトさせた第2スキャン(2回目のスキャン)でも補助マークを外し、さらに上に60μmシフトさせた第3スキャン(3回目のスキャン)で補助マーク13b5を検出することができる。
このように補助マークを分割し、分割した個々の補助マークの長辺の長さを短くしても、走査ルールを決めて、出来るだけ少ない走査回数で補助マークを確実に検出することが可能である。また、このように補助マークを分割することで、全体の加工時間の短縮が図れる。
【0048】
また、本発明において、
図14に示すように、上記補助マーク13b、13cを設けずに、例えば、一例としてガラス基板11の主表面上のコーナー近傍の4箇所に上述のメインマーク13aを配置するようにしてもよい。これによって、補助マークの形成工程を省くことができ、基準マークの加工時間を大幅に短縮できる。基準マークとしてメインマーク13aのみで構成する場合、電子線描画機や欠陥検査装置による電子線又は欠陥検査光の走査により検出が難しくなる。その場合、基準マークをガラス基板11のエッジ座標を基準に設定した原点からの所定の位置に形成し、基準マークを形成した多層反射膜付き基板や反射型マスクブランクと、基準マークの形成位置情報とを対応付けて保存することにより、基準マークを短時間で確実に検出することができる。また、上記基準マークを形成した後、座標計測器で基準マークの形成位置を特定し、基準マークを形成した多層反射膜付き基板や反射型マスクと、基準マークの形成位置情報とを対応付けて保存することにより、基準マークを短時間で確実に検出することができる。
【0049】
本発明の基準マーク13を形成する位置は特に限定されない。例えば反射型マスクブランクの場合、多層反射膜の成膜面であれば、どの位置に形成してもよい。例えば、基板、下地層(後述)、多層反射膜、保護膜(キャッピング層、バッファ層)、吸収体膜のいずれの位置でもよい。
【0050】
なお、EUV光を露光光として使用する反射型マスクにおいては、特に反射面となる多層反射膜や保護膜(キャッピング層)に存在する欠陥は、修正が殆ど不可能である上に、転写パターン上で重大な位相欠陥となり得るので、転写パターン欠陥を低減させるためには多層反射膜上又は保護膜(キャッピング層)上の欠陥情報が重要である。従って、少なくとも多層反射膜成膜後や保護膜(キャッピング層)成膜後に欠陥検査を行い、欠陥情報を取得することが望ましい。そのためには、
図9のように、少なくとも多層反射膜31に本発明の基準マークを形成することが好ましい。
【0051】
本発明の基準マーク13を形成する方法は特に限定されない。例えば前述の基準マークの断面形状が凹形状の場合、フォトリソ法、レーザー光やイオンビームによる凹部形成、ダイヤモンド針を走査しての加工痕、微小圧子によるインデンション、インプリント法による型押しなどで形成することができる。
【0052】
なお、
図3乃至
図7に示す実施の形態では、上記メインマーク13aの周囲に、電子線描画機や欠陥検査装置の走査方向(X方向、Y方向)に沿って2つの補助マーク13b、13cを配置した例について説明したが、本発明はこのような実施の形態に限定されるわけではない。例えば欠陥の検出が検査光の走査によらない方式においては、メインマークと補助マークとの位置関係が特定されていれば、メインマークに対する補助マークの配置位置は任意である。また、この場合、メインマークの中心ではなく、エッジを基準点とすることもできる。
【0053】
図8は、本発明の反射型マスクブランクの製造に用いられる多層反射膜付き基板50の構成を示すもので、ガラス基板11上に形成されたEUV光を反射する多層反射膜31に本発明の基準マーク13が形成されている。
図8においては、多層反射膜31を構成する全ての層を除去して基準マーク13が形成されている例を示すが、多層反射膜31を構成する一部の膜を除去して基準マーク13を形成してもよい。
【0054】
なお、
図8では、多層反射膜31に本発明の基準マーク13が形成された多層反射膜付き基板50を説明したが、多層反射膜31上に保護膜32(キャッピング層)を形成した保護膜付きの多層反射膜付き基板に対して、本発明の基準マーク13を設けても構わない。この場合、保護膜32と多層反射膜31を構成する一部の膜、又は全ての層を除去して、基準マーク13を形成する。保護膜32の材料、基準マーク13の形成方法や、基準マーク13形成後の洗浄方法を考慮して適宜選定することができる。
例えば、保護膜32をRu系の材料を使用して、フォトリソ法により形成する場合、加工速度等の観点から、多層反射膜31に対して基準マーク13を形成するのが好ましい。
【0055】
また、基準マークを集束イオンビームにより形成する場合は、生成物として炭素(C)が表層に付着する場合があるので、生成物を除去するための洗浄液(酸やアルカリ)に対して耐性のある多層反射膜31(表層はSi膜)に対して基準マーク13を形成するか、または、Ruに他の金属(たとえば、Nb、Zr、B、Ti等)を添加したRu合金からなる保護膜32が形成された多層反射膜付き基板に対して基準マーク13を形成するのが好ましい。
上記多層反射膜31は、低屈折率層と高屈折率層を交互に積層させた多層膜であり、一般的には、重元素又はその化合物の薄膜と、軽元素又はその化合物の薄膜とが交互に40〜60周期程度積層された多層膜が用いられる。
【0056】
例えば、波長13〜14nmのEUV光に対する多層反射膜としては、Mo膜とSi膜を交互に40周期程度積層したMo/Si周期積層膜が好ましく用いられる。その他に、EUV光の領域で使用される多層反射膜として、Ru/Si周期多層膜、Mo/Be周期多層膜、Mo化合物/Si化合物周期多層膜、Si/Nb周期多層膜、Si/Mo/Ru周期多層膜、Si/Mo/Ru/Mo周期多層膜、Si/Ru/Mo/Ru周期多層膜などがある。露光波長により、材質を適宜選択すればよい。
【0057】
EUV露光用の場合、ガラス基板11としては、露光時の熱によるパターンの歪みを防止するため、0±1.0×10
−7/℃の範囲内、より好ましくは0±0.3×10
−7/℃の範囲内の低熱膨張係数を有するものが好ましく用いられ、この範囲の低熱膨張係数を有する素材としては、例えば、SiO
2−TiO
2系ガラス、多成分系ガラスセラミックス等を用いることが出来る。
【0058】
上記ガラス基板11の転写パターンが形成される側の主表面は、少なくともパターン転写精度、位置精度を得る観点から高平坦度となるように表面加工されている。EUV露光用の場合、ガラス基板11の転写パターンが形成される側の主表面132mm×132mmの領域、若しくは142mm×142mmの領域において、平坦度が0.1μm以下であることが好ましく、特に好ましくは0.05μm以下である。また、転写パターンが形成される側と反対側の主表面は、露光装置にセットする時に静電チャックされる面であって、142mm×142mmの領域において、平坦度が1μm以下、好ましくは0.5μm以下である。
【0059】
また、上記多層反射膜付き基板のガラス基板11としては、上記のとおり、SiO
2−TiO
2系ガラスなどの低熱膨張係数を有する素材が用いられるが、このようなガラス素材は、精密研磨により、表面粗さとして例えばRMSで0.1nm以下の高平滑性を実現することが困難である。そのため、
図8に示すように、ガラス基板11の表面粗さの低減、若しくはガラス基板11表面の欠陥を低減する目的で、ガラス基板11の表面に下地層21を形成することが好適である。このような下地層21の材料としては、露光光に対して透光性を有する必要はなく、下地層表面を精密研磨した時に高い平滑性が得られ、欠陥品質が良好となる材料が好ましく選択される。例えば、Si又はSiを含有するケイ素化合物(例えばSiO
2、SiONなど)は、精密研磨した時に高い平滑性が得られ、欠陥品質が良好なため、好ましく用いられる。特にSiが好ましい。
【0060】
下地層21の表面は、マスクブランク用基板として要求される平滑度となるように精密研磨された表面とすることが好適である。下地層21の表面は、二乗平均平方根粗さ(RMS)で0.15nm以下、特に好ましくは0.1nm以下となるように精密研磨されることが望ましい。また、下地層21の表面は、下地層21上に形成する多層反射膜の表面への影響を考慮すると、最大表面粗さ(Rmax)との関係において、Rmax/RMSが2〜10であることが良く、特に好ましくは、2〜8となるように精密研磨されることが望ましい。
下地層21の膜厚は、例えば75nm〜300nmの範囲が好ましい。
【0061】
図9(a)は、上記のとおり、
図8に示す基準マーク13が形成された多層反射膜付き基板50における多層反射膜31上に、保護膜(キャッピング層)32及びEUV光を吸収するパターン形成用の吸収体膜41が形成され、さらに吸収体膜41の上に、基準マーク13の形成箇所を含む領域を除く領域上に電子線描画用レジスト膜61が形成されている反射型マスクブランク10を示す。なお、ガラス基板11の多層反射膜等が形成されている側とは反対側に裏面導電膜42が設けられている。
【0062】
なお、
図9(a)では、基準マーク13が形成された多層反射膜付き基板50における多層反射膜31上に、保護膜(キャッピング層)32及び吸収体膜41を形成した反射型マスクブランクを説明したがこれに限らない。上述したように、保護膜32が形成された多層反射膜付き基板50に基準マーク13を形成して、その上に吸収体膜41を形成した反射型マスクブランクであっても構わない(
図9(b))参照)。または、
図9(c)のように、基準マーク13の形成領域には、吸収体膜41及びレジスト膜61が形成されないようにした反射型マスクブランクであっても構わない。
反射型マスクブランク10を使用し反射型マスク30を作製する際のエッチャント(エッチングガス)に対する多層反射膜31への影響を考慮すると、
図9(a)や
図9
(b)のように、基準マーク13の形成領域の多層反射膜31上には、保護膜32及び吸収体膜41が形成されていることが望ましい。
【0063】
上記吸収体膜41は、露光光である例えばEUV光を吸収する機能を有するもので、例えばタンタル(Ta)単体又はTaを主成分とする材料が好ましく用いられる。Taを主成分とする材料としては、TaとBを含む材料、TaとNを含む材料、TaとBを含み、更にOとNの少なくとも何れかを含む材料、TaとSiを含む材料、TaとSiとNを含む材料、TaとGeを含む材料、TaとGeとNを含む材料、等が用いられる。
【0064】
また、通常、上記吸収体膜41のパターニング或いはパターン修正の際に多層反射膜を保護する目的で、多層反射膜と吸収体膜との間に上記保護膜32やバッファ膜を設ける。保護膜の材料としては、ケイ素のほか、ルテニウムや、ルテニウムにニオブ、ジルコニウム、ロジウムのうち1以上の元素を含有するルテニウム化合物が用いられ、バッファ膜の材料としては、主に前記のクロム系材料が用いられる。
【0065】
上記のとおり、本発明に係る反射型マスクブランクにおいては、基準マークの形成箇所を含む領域(例えば
図1のA領域)上には前記レジスト膜が形成されていない構成としている。従って、かかる構成のマスクブランクを得るために、基準マークの形成箇所を含む領域を除く領域(
図1のB領域)にのみレジスト膜を形成する方法としては、例えば、通常の回転塗布法により、ブランク主表面の全面にレジスト膜を形成し、次いでブランク周縁部において上記の基準マークの形成箇所を含む領域に形成されたレジスト膜を除去する方法が挙げられる。
【0066】
この場合、ブランク周縁部において不要な領域に形成されたレジスト膜を除去する方法としては、たとえば、主表面全面にレジスト膜を形成したマスクブランク表面をカバー部材で覆い、このカバー部材の上からレジスト膜を溶解する溶媒を供給してこの溶媒をカバー部材の周辺部に設けられた溶媒流路を通じ、マスクブランクの上記基準マークの形成箇所を含む領域を除く領域においては残存され、基準マークの形成箇所を含む領域においては除去されるよう、溶媒の供給量及び/又は供給装置を調整しながら溶媒を所定部位に供給することによって、不要なレジスト膜を溶媒で除去する方法を適用することができる(特許第3607903号公報参照)。また、不要なレジスト領域にレジスト剥離液を供給するための供給路と、この不要なレジスト領域のレジストを溶解した剥離液を排出するための排出路とを有するヘッド(具体的には基板の上下主表面周縁部及び端面部を囲むように断面コ字状に形成されたヘッド)を備えた除去装置を用いてもよい(例えば特開2004−335845号公報参照)。また、マスクブランクの上記基準マークの形成箇所を含む領域を予めレジスト膜が形成されないようにシールした上で、通常の回転塗布法によりレジスト膜を形成してもよい。
【0067】
本発明は、以下の構成に係る反射型マスクブランクの製造方法についても提供する。
(構成A)
前記構成1乃至6のいずれかに記載の反射型マスクブランクの製造方法であって、前記基板上に、EUV光を反射する多層反射膜が形成された多層反射膜付き基板を準備する工程と、前記多層反射膜に欠陥情報における欠陥位置の基準となる基準マークを形成する基準マーク形成工程と、前記基準マークを基準として多層反射膜付き基板の欠陥情報を取得する多層反射膜付き基板欠陥情報取得工程と、前記多層反射膜上に吸収体膜を形成する吸収体膜形成工程と、前記吸収体膜上の転写パターンが形成されるパターン形成領域を含む領域と、前記基準マークの形成箇所を含む領域にレジスト膜を形成するレジスト膜形成工程と、前記基準マークの形成箇所を含む領域のレジスト膜を除去するレジスト膜除去工程と、を有することを特徴とする反射型マスクブランクの製造方法。
【0068】
構成Aにあるように、本発明の反射型マスクブランクの製造方法により、上述の構成1に記載された効果を奏する反射型マスクブランクを提供することができる。即ち、反射型マスクを製造する過程において、基準マークの検出時に、電子線や検査光が吸収体膜上を走査し、レジスト膜上を走査することによりチャージアップ、不必要なレジスト感光になどの不具合を解消することができる反射型マスクブランクを提供することができる。
【0069】
(構成B)
前記基準マークを基準として反射型マスクブランクの欠陥情報を取得する反射型マスクブランク欠陥情報取得工程をさらに有することを特徴とする構成Aに記載の反射型マスクブランクの製造方法。
(構成C)
前記多層反射膜付き基板の欠陥情報、及び/又は前記反射型マスクブランクの欠陥情報と、反射型マスクブランクとを対応させる工程を有することを特徴とする構成A又はBに記載の反射型マスクブランクの製造方法。
構成B、Cの製造方法により得られる反射型マスクブランクは、基準マークを基準として得られた多層反射膜付き基板の欠陥情報、及び/又は反射型マスクブランクの欠陥情報が対応付けされているので、これらの欠陥情報を使用することで、く高精度の描画データの補正・修正、およびパターン描画が可能となり、欠陥を低減させた反射型マスクを提供することができる。
【0070】
以上説明したように、本発明の反射型マスクブランクは、基板上に、EUV光を反射する多層反射膜およびEUV光を吸収する吸収体膜が形成され、前記吸収体膜の上には電子線描画用レジスト膜が形成され、この反射型マスクブランクには、欠陥情報における欠陥位置の基準となる基準マークが形成されており、前記基準マークの形成箇所を含む領域上には前記レジスト膜が形成されていない構成としている。従って、基準マークの検出時に、電子線や検査光が吸収体膜上を走査することになるため、レジスト膜上を走査することによるチャージアップ、不必要なレジスト感光などの不具合を解消できる。その結果、電子線描画機、欠陥検査装置のいずれでも基準マークを確実に検出でき、しかも基準マークの検出精度を向上させ、電子線、欠陥検査光の走査によって決定される欠陥位置の基準点のずれを小さくすることができ、基準マークを元に検査した欠陥検出位置のばらつきを小さく(例えば100nm以下に)抑えることが可能である。
【0071】
これによって、欠陥検査においては、欠陥位置の基準点を決定し、欠陥位置(基準点と欠陥の相対位置)情報を含む精度の良い欠陥情報(欠陥マップ)を取得することができる。さらに、マスクの製造においては、この欠陥情報に基づいて、予め設計しておいた描画データ(マスクパターンデータ)と照合し、欠陥による影響が低減するように描画データを高い精度で修正・補正することが可能になる。そして、電子線描画機においても電子線で基準マークを検出し、検出した基準点に基づいて、補正・修正した描画データを元に電子線描画が行われる。その結果、最終的に製造される反射型マスクにおいて欠陥を低減させることができる。
【0072】
[マスクブランク]
図10は、ガラス基板11上に、遮光膜51が形成されているバイナリマスクブランク20を示す。本発明の基準マーク13は遮光膜51に凹形状となるように形成されている。そして、基準マーク13の形成箇所を含む領域上には前記レジスト膜61が形成されていない構成としている。上記構成におけるレジスト膜の形成方法、基準マークとその形成方法は、上述の反射型マスクブランクの場合と同様である。
また、図示していないが、ガラス基板11上に、位相シフト膜、あるいは位相シフト膜及び遮光膜を備えることにより、位相シフト型マスクブランクが得られる。また、ガラス基板11の表面に必要に応じて前記下地層21を設ける構成としてもよい。
この遮光膜は、単層でも複数層(例えば遮光層と反射防止層との積層構造)としてもよい。また、遮光膜を遮光層と反射防止層との積層構造とする場合、この遮光層を複数層からなる構造としてもよい。また、上記位相シフト膜についても、単層でも複数層としてもよい。
【0073】
このようなマスクブランクとしては、例えば、クロム(Cr)を含有する材料により形成されている遮光膜を備えるバイナリマスクブランク、遷移金属とケイ素(Si)を含有する材料により形成されている遮光膜を備えるバイナリマスクブランク、タンタル(Ta)を含有する材料により形成されている遮光膜を備えるバイナリ型マスクブランク、ケイ素(Si)を含有する材料、あるいは遷移金属とケイ素(Si)を含有する材料により形成されている位相シフト膜を備える位相シフト型マスクブランクなどが挙げられる。
【0074】
上記クロム(Cr)を含有する材料としては、クロム単体、クロム系材料(CrO,CrN,CrC,CrON,CrCN,CrOC,CrOCN等)が挙げられる。
上記タンタル(Ta)を含有する材料としては、タンタル単体のほかに、タンタルと他の金属元素(例えば、Hf、Zr等)との化合物、タンタルにさらに窒素、酸素、炭素及びホウ素のうち少なくとも1つの元素を含む材料、具体的には、TaN、TaO,TaC,TaB,TaON,TaCN,TaBN,TaCO,TaBO,TaBC,TaCON,TaBON,TaBCN,TaBCONを含む材料などが挙げられる。
【0075】
上記ケイ素(Si)を含有する材料としては、ケイ素に、さらに窒素、酸素及び炭素のうち少なくとも1つの元素を含む材料、具体的には、ケイ素の窒化物、酸化物、炭化物、酸窒化物、炭酸化物、あるいは炭酸窒化物を含む材料が好適である。
【0076】
また、上記遷移金属とケイ素(Si)を含有する材料としては、遷移金属とケイ素を含有する材料のほかに、遷移金属及びケイ素に、さらに窒素、酸素及び炭素のうち少なくとも1つの元素を含む材料が挙げられる。具体的には、遷移金属シリサイド、または遷移金属シリサイドの窒化物、酸化物、炭化物、酸窒化物、炭酸化物、あるいは炭酸窒化物を含む材料が好適である。遷移金属には、モリブデン、タンタル、タングステン、チタン、クロム、ハフニウム、ニッケル、バナジウム、ジルコニウム、ルテニウム、ロジウム、ニオブ等が適用可能である。この中でも特にモリブデンが好適である。
【0077】
以上の本発明のマスクブランクにおいても、転写パターンとなる薄膜の上には電子線描画用レジスト膜が形成され、このマスクブランクには、欠陥情報における欠陥位置の基準となる基準マークが形成されており、前記基準マークの形成箇所を含む領域上には前記レジスト膜が形成されていない構成としている。従って、上記の反射型マスクブランクの場合と同様、基準マークの検出時に、電子線や検査光が吸収体膜上を走査し、レジスト膜上を走査することによるチャージアップ、不必要なレジスト感光などの不具合を解消できる。その結果、電子線描画機、欠陥検査装置のいずれでも基準マークを確実に検出でき、しかも基準マークの検出精度が向上し、電子線、欠陥検査光の走査によって決定される欠陥位置の基準点のずれを小さくすることができ、基準マークを元に検査した欠陥検出位置のばらつきを小さく(例えば100nm以下に)抑えることが可能である。
【0078】
[マスク]
本発明は、上記構成の反射型マスクブランクにおける前記吸収体膜がパターニングされている反射型マスク、上記構成のマスクブランクにおける前記薄膜がパターニングされているマスクについても提供する。
図11は、
図9(a)の反射型マスクブランク10における吸収体膜41がパターニングされた吸収体膜パターン41aを備える反射型マスク30を示す。
また、
図12は、
図10のバイナリマスクブランク20における遮光膜51がパターニングされた遮光膜パターン51aを備えるバイナリマスク40を示す。
【0079】
マスクブランクにおける転写パターンとなる上記吸収体膜または上記遮光膜等の薄膜をパターニングする方法は、フォトリソグラフィー法が最も好適である。すなわち、本発明の反射型マスクまたはマスクを得るためには、上記反射型マスクブランクまたはマスクブランクを用いて、電子線描画及び現像によってレジストパターンを形成する工程と、形成されたレジストパターンをマスクにして前記吸収体膜または薄膜をパターニングする工程と、欠陥検査装置による検査工程とを有する製造方法が好適である。
【0080】
また、本発明は、以下の構成に係る反射型マスクの製造方法についても提供する。
(構成D)
前記構成A、B、Cのいずれかに記載の反射型マスクブランクの製造方法により得られた反射型マスクブランクを用いて、電子線描画及び現像によってレジストパターンを形成する工程と、形成されたレジストパターンをマスクにして前記吸収体膜をパターニングする工程と、欠陥検査装置による検査工程とを有することを特徴とする反射型マスクの製造方法。
(構成E)
前記レジストパターンの形成は、前記多層反射膜付き基板の欠陥情報、及び/又は前記反射型マスクブランクの欠陥情報に基づいて、予め設計しておいたマスクパターンデータと照合し、電子線描画により描画する描画データを修正する工程を有することを特徴とする構成Dに記載の反射型マスクの製造方法。
(構成F)
前記電子線描画は、電子線描画機における電子線で基準マークを検出し、検出した基準点に基づいて修正した描画データを元に行うことを特徴とする構成D又はE、あるいは前記構成7のいずれかに記載の反射型マスクの製造方法。
【0081】
本発明に係る上記構成の反射型マスクブランクを用いて得られる反射型マスクは、反射型マスクブランクにおける欠陥情報に基づく高精度の描画データの補正・修正、およびパターン描画によって、欠陥を低減させたものが得られる。
また、本発明に係る上記構成のマスクブランクを用いて得られるマスクは、マスクブランクにおける欠陥情報に基づく高精度の描画データの補正・修正、およびパターン描画によって、欠陥を低減させたものが得られる。
【0082】
なお、図示していないが、上述のマスクブランク用ガラス基板上に、位相シフト膜、あるいは位相シフト膜及び遮光膜を備える構造の位相シフト型マスクブランクにおいても、転写パターンとなる薄膜をパターニングすることにより、位相シフト型マスクが得られる。
【実施例】
【0083】
以下、実施例により、本発明の実施の形態を更に具体的に説明する。
(実施例1)
両面研磨装置を用い、酸化セリウム砥粒やコロイダルシリカ砥粒により段階的に研磨し、低濃度のケイフッ酸で基板表面を表面処理したSiO
2−TiO
2系のガラス基板(大きさが約152.4mm×約152.4mm、厚さが約6.35mm)を準備した。得られたガラス基板の表面粗さは、二乗平均平方根粗さ(RMS)で0.25nmであった(原子間力顕微鏡にて測定した。測定領域は1μm×1μm。)。
【0084】
このガラス基板の表裏両面の表面形状(表面形態、平坦度)を平坦度測定装置(トロッペル社製UltraFlat)で測定( 測定領域148mm×148mm)した結果、ガラス基板表面及び裏面の平坦度は約290nmであった。
次に、ガラス基板表面に局所表面加工を施し表面形状を調整した。
得られたガラス基板表面の表面形状(表面形態、平坦度)と表面粗さを測定したところ、142mm×142mmの測定領域において、表裏面の平坦度は80nmで、100nm以下 となっており良好であった。
【0085】
次に、BドープSiターゲットを使用し、スパッタリングガスとしてArガスとHeガスの混合ガスを使用し、DCマグネトロンスパッタリングにより、100nmのSi下地層を成膜した後、Si膜に熱エネルギーを付与して応力低減処理を行った。
【0086】
その後、Si下地層表面について、表面形状を維持し、表面粗さを低減するため、片面研磨装置を用いた精密研磨を行った。
得られたSi下地層表面の表面形状(表面形態、平坦度)と表面粗さを測定したところ、142mm×142mmの測定領域において、80nmで、100nm以下となっており良好であった。また、表面粗さは、1μm×1μmの測定領域において、二乗平均平方根粗さRMSで0.08nmとなっており極めて良好であった。RMSで0.1nm以下と極めて高い平滑性を有しているので、高感度の欠陥検査装置におけるバックグランドノイズが低減し、擬似欠陥検出抑制の点でも効果がある。
また、最大表面粗さ(Rmax)は、1μm×1μmの測定領域において、0.60nmで、Rmax/RMSは7.5となっており、表面粗さのばらつきは小さく良好であった。
【0087】
次に、Si下地層上に、イオンビームスパッタリング装置を用いて、Si膜(膜厚:4.2nm)とMo膜(膜厚:2.8nm)を一周期として、40周期積層して多層反射膜(総膜厚280nm)を形成し、多層反射膜付き基板を得た。
【0088】
次に、上記多層反射膜の表面に、外周端から内側に2.5mmの領域内の所定の箇所に以下の表面形状で断面形状が凹形状の基準マークを形成した。基準マークの形成は集束イオンビームを用いて行った。この時の条件は加速電圧50kV、ビーム電流値20pAとした。
なお、本実施例では、基準マークとして、前述のメインマークと補助マークを
図3に示すような配置関係となるように形成した。メインマーク13aは、大きさが5μm×5μmの矩形、深さは多層反射膜を構成する全ての層を除去したので、280nmとした。また、補助マーク13b,13cはいずれも、大きさが1μm×200μmの矩形、深さは多層反射膜を構成する全ての層を除去したので、280nmとした。また、本実施例では、基準マークを
図1に示すような3箇所に形成した。
【0089】
基準マークの断面形状を原子間力顕微鏡(AFM)により観察したところ、側壁の傾斜角度が85度、多層反射膜表面と側壁との間の稜線部の曲率半径が約250nmと良好な断面形状であった。
多層反射膜に形成したこの基準マークは、電子線描画装置やブランクス検査装置で、コントラストが0.025と高く、精度良く検出でき、しかも欠陥検出位置のばらつきも83nmで100nm以下となり再現性良く検出できることを確認した。
【0090】
次に、多層反射膜表面をブランクス欠陥検査装置(KLA−Tencor社製Teron600シリーズ)で欠陥検査を行った。この欠陥検査では、上述の基準マークを基準として、基準点を決定し、決定した基準点との相対位置に基づく凸、凹の欠陥位置情報と、欠陥サイズ情報を取得し、欠陥マップを作成した。多層反射膜付き基板と、これら欠陥位置情報、欠陥サイズ情報とを対応させた欠陥情報(欠陥マップ)付き多層反射膜付き基板を得た。この多層反射膜付き基板の多層反射膜表面の反射率を、EUV反射率計により評価したところ、下地層表面粗さばらつきが抑えられたことにより、67%±0.2%と良好であった。
【0091】
次に、DCマグネトロンスパッタリング装置を用いて、多層反射膜上にRuNbからなるキャッピング層(膜厚:2.5nm)と、TaBN膜(膜厚:56nm)とTaBO膜(膜厚:14nm)の積層膜からなる吸収体層を形成し、また、裏面にCrN導電膜(膜厚:20nm)を形成した。
次に、上記吸収体層の表面上に、レジスト膜として、電子線描画用ポジ型レジスト膜を120nmの膜厚に形成した。レジスト膜の形成は、スピンナー(回転塗布装置)を用いて、回転塗布した。次いで、上記基準マークの形成箇所を含む領域、つまり外周端から内側に3.0mmの領域上に形成されたレジスト膜を前述の特許第3607903号公報に記載された方法を適用して除去した。これによって、上記基準マークの形成箇所を含む領域上には上記レジスト膜が形成されていないEUV反射型マスクブランクが得られた。
【0092】
得られたEUV反射型マスクブランクについて、ブランクス欠陥検査装置(KLA−Teccor社製Teron600シリーズ)で欠陥検査を行った。上述と同様に上述の基準マークを基準として、凸、凹の欠陥位置情報と、欠陥サイズ情報を取得し、EUV反射型マスクブランクと、これら欠陥位置情報、欠陥サイズ情報とを対応させた欠陥情報付きEUV反射型マスクブランクを得た。
【0093】
次に、この欠陥情報付きのEUV反射型マスクブランクを用いて、EUV反射型マスクを作製した。
まず、EUV反射型マスクブランクの欠陥情報に基づいて、予め設計しておいたマスクパターンデータと照合し、露光装置を用いたパターン転写に影響のないマスクパターンデータに修正するか、パターン転写に影響があると判断した場合には、例えば欠陥をパターンの下に隠すように修正パターンデータを追加したマスクパターンデータに修正するか、修正パターンデータでも対応ができない欠陥については、マスク作製後の欠陥修正の負荷が低減できるマスクパターンデータに修正し、この修正されたマスクパターンデータに基づいて、上述のレジスト膜に対して電子線描画機によりマスクパターンを描画、現像を行い、レジストパターンを形成した。本実施例では、上記基準マークと欠陥との相対位置関係が高い精度で管理できたので、マスクパターンデータの修正を高精度で行うことができた。そして、電子線描画機においても電子線で基準マークを検出し、検出した基準点に基づいて、修正した描画データを元に電子線描画が行われた。
【0094】
次に、このレジストパターンをマスクとして、吸収体層をフッ素系ガス(CF
4ガス)によりTaBO膜を、塩素系ガス(Cl
2ガス)によりTaBN膜をエッチング除去して、キャッピング層上に吸収体層パターンを形成した。
さらに、吸収体層パターン上に残ったレジストパターンを熱硫酸で除去し、EUV反射型マスクを得た。
【0095】
この得られたEUV反射型マスクについてマスク欠陥検査装置(KLA−Tencor社製Teron600シリーズ)により検査したところ、多層反射膜上に凸欠陥は確認されなかった。
こうして得られた反射型マスクを露光装置にセットし、レジスト膜を形成した半導体基板上へのパターン転写を行う場合、反射型マスク起因の転写パターンの欠陥も無く、良好なパターン転写を行うことができる。
【0096】
(実施例2)
両面研磨装置を用い、酸化セリウム砥粒やコロイダルシリカ砥粒により段階的に研磨し、低濃度のケイフッ酸で基板表面を表面処理した合成石英基板(大きさが約152.4mm×約152.4mm、厚さが約6.35mm)を準備した。得られたガラス基板の表面粗さは、二乗平均平方根粗さ(RMS)で0.2nmであった。また、ガラス基板表面及び裏面の平坦度は約290nmであった。
【0097】
次に、上記ガラス基板上に、以下のようにしてTaN膜とTaO膜の積層からなる遮光膜を形成した。
ターゲットにタンタル(Ta)ターゲットを用い、キセノン(Xe)と窒素(N
2)の混合ガス雰囲気(ガス圧0.076Pa、ガス流量比 Xe:N
2=11sccm:15sccm)で、DC電源の電力を1.5kWとし、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、TaN膜を膜厚44.9nmで成膜し、引き続いて、Taターゲットを用い、アルゴン(Ar)と酸素(O
2)の混合ガス雰囲気(ガス圧0.3Pa、ガス流量比 Ar:O
2=58sccm:32.5sccm)で、DC電源の電力を0.7kWとし、TaO膜を膜厚13nmで成膜することにより、TaN膜とTaO膜の積層からなるArFエキシマレーザー(波長193nm)用遮光膜を形成した。なお、ArFエキシマレーザーに対する遮光膜の光学濃度は3.0、表面反射率は19.5%であった。
【0098】
次に、上記遮光膜の表面に、外周端から内側に2.5mmの領域内の所定の箇所に、実施例1と同様の基準マークを形成した。基準マークの形成は集束イオンビームを用いて行った。この時の条件は加速電圧50kV、ビーム電流値20pAとした。
基準マークの断面形状を原子間力顕微鏡(AFM)により観察したところ、実施例1と同様、側壁の傾斜角度が83度、遮光膜表面と側壁との間の稜線部の曲率半径が約300nmと良好な断面形状であった。
遮光膜に形成したこの基準マークは、電子線描画装置やブランクス検査装置で、コントラストが0.02と高く、精度良く検出でき、しかも欠陥検出位置のばらつきも80nmとなり再現性良く検出できることを確認した。
【0099】
次に、上記遮光膜の表面上に、レジスト膜として、実施例1と同じ電子線描画用ポジ型レジスト膜を120nmの膜厚に形成した。レジスト膜の形成は、スピンナー(回転塗布装置)を用いて、回転塗布した。次いで、上記基準マークの形成箇所を含む領域、つまり外周端から内側に3.0mmの領域上に形成されたレジスト膜を前述の特許第3607903号公報に記載された方法を適用して除去した。これによって、上記基準マークの形成箇所を含む領域上には上記レジスト膜が形成されていないバイナリマスクブランクが得られた。
【0100】
得られたバイナリマスクブランクについて、ブランクス欠陥検査装置(KLA−Teccor社製Teron600シリーズ)で欠陥検査を行った。上述の遮光膜に形成した基準マークを基準として、凸、凹の欠陥位置情報と、欠陥サイズ情報を取得し、バイナリマスクブランクと、これら欠陥位置情報、欠陥サイズ情報とを対応させた欠陥情報付きバイナリマスクブランクを得た。
【0101】
次に、この欠陥情報付きのバイナリマスクブランクを用いて、バイナリマスクを作製した。
まず、実施例1と同様、バイナリマスクブランクの欠陥情報に基づいて、予め設計しておいたマスクパターンデータと照合し、露光装置を用いたパターン転写に影響のないマスクパターンデータに修正するか、パターン転写に影響があると判断した場合には、修正パターンデータを追加したマスクパターンデータに修正するか、修正パターンデータでも対応ができない欠陥については、マスク作製後の欠陥修正の負荷が低減できるマスクパターンデータに修正し、この修正されたマスクパターンデータに基づいて、上述のレジスト膜に対して電子線描画機によりマスクパターンを描画、現像を行い、レジストパターンを形成した。本実施例においても、上記基準マークと欠陥との相対位置関係が高い精度で管理できたので、マスクパターンデータの修正を高精度で行うことができた。そして、電子線描画機においても電子線で基準マークを検出し、検出した基準点に基づいて、修正した描画データを元に電子線描画が行われた。
【0102】
次に、このレジストパターンをマスクとして、フッ素系ガス(CF
4ガス)によりTaO膜を、塩素系ガス(Cl
2ガス)によりTaN膜をエッチング除去して、遮光膜パターンを形成した。
さらに、遮光膜パターン上に残ったレジストパターンを熱硫酸で除去し、バイナリマスクを得た。
【0103】
この得られたバイナリマスクについてマスク欠陥検査装置((KLA−Tencor社製Teron600シリーズ)により検査したところ、ガラス基板上に凸欠陥は確認されなかった。
こうして得られたバイナリマスクを露光装置にセットし、レジスト膜を形成した半導体基板上へのパターン転写を行ったところ、転写パターンの欠陥も無く、良好なパターン転写を行えた。
【0104】
(実施例3)
上記実施例1において、基準マークとして、大きさが5μm×5μmの矩形のメインマークのみとした以外は実施例1と同様に、基準マークを形成した多層反射膜付き基板、反射型マスクブランク、反射型マスクを順に作製した。
この得られたEUV反射型マスクについてマスク欠陥検査装置(KLA−Tencor社製Teron600シリーズ)により検査したところ、多層反射膜上に凸欠陥は確認されなかった。
こうして得られた反射型マスクを露光装置にセットし、レジスト膜を形成した半導体基板上へのパターン転写を行う場合、反射型マスク起因の転写パターンの欠陥も無く、良好なパターン転写を行うことができる。
【0105】
(比較例)
上記実施例1において、基準マークの形成箇所を含む領域上に形成されたレジスト膜を除去しないこと以外は、実施例1と同様に、基準マークを形成した多層反射膜付き基板、反射型マスクブランク、反射型マスクを順に作製した。
【0106】
この得られたEUV反射型マスクについてマスク欠陥検査装置(KLA−Tencor社製Teron600シリーズ)により検査したところ、多層反射膜上に数十個の凸欠陥が確認された。
【0107】
多層反射膜上に数十個の凸欠陥が確認された原因を詳細に検討したところ、基準マーク形成箇所の上にもレジスト膜が形成されていたため、基準マークの検出時に、電子線や検査光がレジスト膜上を走査することによるチャージアップ、不必要なレジスト感光などの不具合が発生し、それが原因で、基準マークの検出精度が劣化し、電子線、欠陥検査光の走査によって決定される欠陥位置の基準点のずれが大きくなり、基準マークを元に検査した欠陥検出位置のばらつきが大きくなったためであることが判明した。
【0108】
なお、上述の実施例では、いずれも基準マークを集束イオンビームにより形成した例を挙げて説明したが、これに限定されない。前にも説明したとおり、フォトリソ法、レーザー光等による凹部形成、ダイヤモンド針を走査しての加工痕、微小圧子によるインデンション、インプリント法による型押しなどで形成することができる。