【解決手段】一列の電線群13と、電線群13の延在方向の一部分を包囲し電線群挿通部81の内周形状に応じた外周形状部19を有する硬質樹脂材製の堰き止め部15と、を備えるワイヤハーネスの製造方法であって、電線群13の一部分の外周に粘着テープ17を巻装するテープ巻装工程と、堰き止め部15をモールド成形するキャビティ51と、キャビティ51の外側両端部分において電線群13に巻装された粘着テープ17の外周を挟むバリきり49とを有するハーネス収容部57,59が分割面にそれぞれ形成された上型45及び下型47を、ハーネス収容部に電線群13を配置して型締めする型締め工程と、溶融樹脂67をキャビティ51内に射出する射出工程と、を含む。
複数の電線が直径方向に並ぶ少なくとも一列の電線群と、前記電線群の延在方向の一部分を包囲し電線群挿通部の内周形状に応じた外周形状部を有する硬質樹脂材製の堰き止め部と、を備えるワイヤハーネスの製造方法であって、
前記電線群の一部分における各列の外周に粘着テープを巻装するテープ巻装工程と、
前記堰き止め部をモールド成形するためのキャビティと、前記電線群の延在方向に沿った前記キャビティの外側両端部分において前記電線群の各列に巻装された前記粘着テープの外周を挟むバリきりとを有するハーネス収容部が分割面にそれぞれ形成された上型及び下型を、前記ハーネス収容部に前記電線群の一部分を配置して型締めする型締め工程と、
溶融した硬質樹脂材を前記キャビティ内に射出する射出工程と、
を含むことを特徴とするワイヤハーネスの製造方法。
一対の前記粘着テープが、前記キャビティと前記バリきりの外側との双方にそれぞれ掛かるように前記電線群の延在方向に沿って所定間隔でそれぞれ前記電線群の各列に巻装される、
ことを特徴とする請求項1記載のワイヤハーネスの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の1液止水による止水構造は、電線間に止水剤(シリコン503)が充填されて電線被覆と接着する。このため、止水性能は非常に優れているが、止水剤の管理が困難であるほか、固化するまでに数時間程度を必要とすることから、作業性がよくなかった。また、上述のブチルゴム509による止水構造は、電線間に止水剤(ブチルゴム509)が充填され、ブチルゴム自体が柔らかく、なじみ易く、それでいて接着性があるので、確実に充填されれば止水性能は優れるが、使用ブチルゴム量の管理が困難な問題がある。更に、ブチルゴム509による止水構造は、ブチルゴム509がベタベタしていて手に付くなど作業性が悪いとともに、充填状況の確認が行いにくい。
【0006】
また、止水構造への応用が可能な技術として、電線束の外周を樹脂材料によってモールドするモールド構造が知られている(特許文献1等参照)。ところが、このようなモールド構造では、3本以上の電線を束にしてしまうと、隣接する電線間に樹脂を充填できない隙間(樹脂未充填空間)ができてしまう。
また、これらのモールド構造は、通常の射出成形機によって成形が行われる。このため、設備が大掛かりとなる。
更に、射出成形機を使用した場合、成形型のキャビティに溶融樹脂を射出する際の溶融樹脂の漏出によるバリの発生を抑制する必要がある。このため、成形型には、バリきりが設けられる。バリきりは、成形型から引き出される電線の外周に密着させるため、山脈のように先端が尖った複数の突条を有する。その結果、電線群の成形型配置時に、電線の被覆に傷をつけてしまう可能性があり、慎重な取り扱いが必要となるため作業性がよくなかった。
【0007】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、成形型による電線被覆の損傷を防止できるワイヤハーネスの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 複数の電線が直径方向に並ぶ少なくとも一列の電線群と、前記電線群の延在方向の一部分を包囲し電線群挿通部の内周形状に応じた外周形状部を有する硬質樹脂材製の堰き止め部と、を備えるワイヤハーネスの製造方法であって、前記電線群の一部分における各列の外周に粘着テープを巻装するテープ巻装工程と、前記堰き止め部をモールド成形するためのキャビティと、前記電線群の延在方向に沿った前記キャビティの外側両端部分において前記電線群の各列に巻装された前記粘着テープの外周を挟むバリきりとを有するハーネス収容部が分割面にそれぞれ形成された上型及び下型を、前記ハーネス収容部に前記電線群の一部分を配置して型締めする型締め工程と、溶融した硬質樹脂材を前記キャビティ内に射出する射出工程と、を含むことを特徴とするワイヤハーネスの製造方法。
【0009】
上記(1)の構成のワイヤハーネスの製造方法によれば、堰き止め部の成形時には、電線群が上型及び下型(成形型)の分割面に形成されたバリきりに挟持されて成形型のキャビティに配置される。この際、各列の電線群の外周には粘着テープが巻装されており、上型及び下型のバリきりは、粘着テープの外周に接触する。そこで、バリきりは電線被覆に直接触れることがない。これにより、電線群の電線は、電線被覆に上型及び下型のバリきりが接触することによる電線被覆の損傷が防止される。
また、このワイヤハーネスの製造方法によれば、各列の電線群に粘着テープが巻装されるので、個々の電線がばらけずに保持される。このため、電線群を成形型にセットするときに複数の電線を整列固定しておくための治具が不要となる。
【0010】
(2) 一対の前記粘着テープが、前記キャビティと前記バリきりの外側との双方にそれぞれ掛かるように前記電線群の延在方向に沿って所定間隔でそれぞれ前記電線群の各列に巻装される、ことを特徴とする上記(1)に記載のワイヤハーネスの製造方法。
【0011】
上記(2)の構成のワイヤハーネスの製造方法によれば、粘着テープは、キャビティの外側両端部分におけるバリきりが直接接触する可能性がある電線部分だけに巻装される。換言すれば、粘着テープは、外側両端部分を除く、キャビティ内を貫通する電線部分では省略される。そこで、このワイヤハーネスの製造方法によれば、粘着テープの巻装作業を簡略化できる。また、ワイヤハーネスは、キャビティ内において粘着テープの巻装が省略されることにより、粘着テープが巻装されない電線群の各列における電線間に、溶融した硬質樹脂材が入り込みやすくなる。これにより、ワイヤハーネスは、水入り対策性能が更に向上する。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るワイヤハーネスの製造方法によれば、成形型による電線被覆の損傷を防止できる。
【0013】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
図1の(a)に示すように、本発明の一実施形態に係るワイヤハーネスの製造方法により得られるワイヤハーネス100は、水平方向に並んで設けられた複数の電線11からなる電線群13と、硬質樹脂製の堰き止め部15と、粘着テープ17と、有する。
電線群13は、複数の電線11が、直径方向に少なくとも一列に並んでいる。それぞれの電線11は、導体の外周が絶縁性樹脂によって被覆されている。「少なくとも一列」とは、複数列が多段状に配置されてもよい意味である。但し、この場合には、各段の電線群同士は、離間して配置される。
【0016】
堰き止め部15は、電線群13の延在方向の一部分を包囲するように一体にモールド成形される。この堰き止め部15は、後述する電線群挿通部81の内周形状に応じた外周形状部19を有するように一体にモールド成形される。このモールド成形には、後述の低圧射出成形機が使用される。低圧射出成形機では、硬質樹脂材である例えば一般のエンプラ(エンジニアリングプラスチック)が使用される。本発明のワイヤハーネスの製造方法により得られるワイヤハーネス100は、換言すれば、このエンプラに、電線群13の延在方向一部分が埋入(インサート成形)されたものとなっている。
【0017】
堰き止め部15の外周形状部19は、例えば図示例の断面台形状に成形することができる。なお、堰き止め部15の外周形状部19は、これには限定されない。電線群13が多段の場合、堰き止め部15は、高さの高い台形状で成形される。各列の隣接する電線11同士は、僅かに離間していても接触していてもよい。僅かに離間していれば、その間に樹脂が入り込み電線11の外周が包囲されて水入り対策され、接触していればそれによって水入り対策が可能となるためである。
なお、本実施形態において、水入り対策とは、防滴以上の止水性能を言う。
【0018】
堰き止め部15は、断面台形状の底辺側の面が座面21となる。堰き止め部15は、座面21を挟む一対の対向する側面が電線貫通側面23となる。電線群13は、一方の電線貫通側面23から他方の電線貫通側面23に向かって、堰き止め部15を貫通している。従って、電線群13は、電線貫通側面23に対して略垂直な方向で突出している。この電線貫通側面23から突出した電線群13には、堰き止め部15から所定長で延出する粘着テープ17が巻装されている。電線群13の外側を巻いた状態に装う粘着テープ17の一部は、電線貫通側面23から堰き止め部15の内部に進入している。粘着テープ17は、この電線貫通側面23から延出する所定長(突出長)が、後述する成形型27の少なくともバリきり49の横断長よりも長く設定される。これは、電線貫通側面23から延出する粘着テープ17の所定長を、成形型の少なくともバリきり49の横断長よりも長く設定することで、電線群13を成形型27にセットする際の延在方向のズレを許容し、作業性の低下を抑制するためである。
【0019】
なお、粘着テープ17の巻装長さL(
図3参照)は、バリきり49の横断長と同一長さに設定されてもよい。この場合、粘着テープ17は、電線貫通側面23と面一になるように堰き止め部15の外側に配置されることになる。
【0020】
図2は低圧射出成形機の斜視図である。
本実施形態において、堰き止め部15の成形には、低圧射出成形機25が用いられる。低圧射出成形機25は、電線群13の途中位置に堰き止め部15を一体にモールド成形することができる。なお、本実施形態に係るワイヤハーネスの製造方法は、通常の射出成形機が用いられても勿論よい。低圧射出成形機25は、電動機等の外部動力なしに作業員が一人でも操作可能な成形機である。低圧射出成形機25は、成形型27と、図示しない型締め装置と、成形型27に溶融樹脂を加圧注入する低圧射出装置29と、から構成される。
【0021】
低圧射出装置29は、合成樹脂等を加熱して溶融するヒータが設けられた加熱筒31と、加熱筒内の溶融樹脂を図示しないノズルから射出するプランジャ33と、プランジャ33を前進させる射出シリンダ35と、射出シリンダ35を駆動するハンドル37と、加熱筒31の加熱温度を所望の温度に保持する温調器39と、を有し、これらが台座41に立設する装置支柱43に支持されている。
【0022】
なお、本実施形態における低圧射出成形機25とは、1回の射出成形で成形できる樹脂の量が最大で10g程度のものであって、且つ、成形型の型締め時に、エアシリンダ又はリンク等を用いて手動でも行うことができるものをいう。勿論、低圧射出装置29は、電動機やエア等の外部動力によって射出シリンダ35を駆動するものであってもよい。より具体的には、低圧射出成形機25としては、例えば、特開2010−260297号公報、特開2012−30429号公報及び特開2013−103492号公報などに開示された公知の「射出成形装置」を用いることができる。
【0023】
本実施形態に係る成形型27は、台座41に配置される。成形型27は、上型45と下型47とが、電線群13の延在方向に沿った外側両端部分に形成されたバリきり49で電線群13を挟むことにより、堰き止め部15を成形可能な空間(キャビティ51)を画成する。
【0024】
即ち、上型45及び下型47は、上型分割面53及び下型分割面55を有する。上型分割面53及び下型分割面55には、上側ハーネス収容部57及び下側ハーネス収容部59が設けられる。成形型27は、上型45と下型47が型締めされると、内部に中空のキャビティ51を画成する。上側ハーネス収容部57は、このキャビティ51の上側部分と、バリきり49と、からなる。下側ハーネス収容部59は、このキャビティ51の下側部分と、バリきり49と、からなる。バリきり49は、一列の電線群13の延在方向に沿ったキャビティ51の外側両端部分において一列の電線群13の外周を挟む。本実施形態において、バリきり49は、電線群13を挟む面が平坦な面で形成される。
【0025】
なお、バリきり49は、成形型27から引き出される電線11の外周に密着させるため、山脈のように先端が尖った複数の突条を有するものとしてもよい。電線群13は、バリきり49に挟まれる部分に粘着テープ17が巻装されるため、従来とは異なり、バリきり49が直接的に接触することによる損傷が生じなくなるためである。
【0026】
下型47におけるバリきり49は、一列の電線群13を収容可能な凹状部61を有し、下型分割面55からの深さが電線11の直径と略同じとされる。一方、上型45におけるバリきり49は、上型分割面53と同じ面上に平板状に形成されている。
【0027】
なお、下型47と上型45のバリきり49は、同一の凹状部で形成してもよい。この場合、下型47と上型45のバリきり49を構成する凹状部は、下型分割面55と上型分割面53からの深さが電線11の半径と略同じとされる。
【0028】
成形型27は、下型47におけるバリきり49の凹状部内に一列の電線群13を収容した状態で上型45と下型47を型締めする。下型47のみに凹状部61を設けた成形型27は、電線群13が下側ハーネス収容部59に配置し易くなり、型締め時の電線噛み込みが生じにくくなる。
【0029】
次に、本実施形態のワイヤハーネスの製造方法について説明する。
本実施形態に係るワイヤハーネスの製造方法は、テープ巻装工程と、型締め工程と、射出工程と、を含む。
【0030】
図1の(b)は粘着テープ17が巻装された電線群13の斜視図である。
先ず、テープ巻装工程では、電線群13の一部分における各列の外周に粘着テープ17が巻装される。本実施形態において、粘着テープ17は、電線群13の外周に延在方向に沿って二箇所に分けて一対のものが巻装される。一対の粘着テープ17は、キャビティ51とバリきり49の外側との双方にそれぞれ掛かるように、電線群13の延在方向に沿って所定間隔でそれぞれ電線群13の各列に巻装される。
【0031】
粘着テープ17は、溶融樹脂の樹脂圧により電線側に押し付けられ易い柔軟性が高い粘着テープを用いることが好ましい。粘着テープ17は、予め基材の片面に粘着層を設けられているものが、電線群13の延在方向に沿って所定の巻装長さLとなるように電線群13の外周に螺旋状に巻回される。本実施形態において、粘着テープ17の巻装長さLは、電線群13がバリきり49を横断する距離よりも大きく設定される。この他、粘着テープ17は、螺旋状に巻かずに所定の巻装長さLとなる幅のものを同一位置で巻回してもよい。
【0032】
また、電線群13に巻装される粘着テープは、一対の粘着テープ17が巻装された部分との間に、キャビティ51内に位置する第3の粘着テープ17が巻装されてもよい。電線群13は、一対の粘着テープ17の間に第3の粘着テープ17が巻装されることで、電線11同士間への溶融樹脂の充填性を確保しつつ、よりばらけにくくできる。
【0033】
なお、電線群13に巻装される粘着テープは、堰き止め部15がモールド成形される電線群13の一部分の外周に、一括して巻装される幅広の粘着テープ17であってもよい。この場合、幅広の粘着テープ17は、キャビティ51内の電線群13の全てを覆うことになる。キャビティ内で電線群13を覆った幅広の粘着テープ17は、溶融樹脂の樹脂圧により電線側に押し付けられ、電線11の外周に密着する。ワイヤハーネス100は、電線群13の外周に密着すれば、水入り対策が可能となる。
【0034】
次に、型締め工程では、上記のようにして粘着テープ17が巻装された電線群13が、成形型27にセットされる。即ち、型締め工程は、電線群13の一部分(堰き止め部15が成形される部分)を、上型45の上側ハーネス収容部57と下型47の下側ハーネス収容部59とで挟んで型締めする。この型締め工程において、電線群13は、巻装された粘着テープ17が、上側ハーネス収容部57のバリきり49と、下側ハーネス収容部59のバリきり49とに接することになる。従って、電線群13は、直接的にはバリきり49に接触しない。
【0035】
更に、射出工程では、型締め工程によって画成されたキャビティ51にゲート63(
図4参照)を介して供給路から溶融した硬質樹脂材(溶融樹脂)を供給(射出)する。射出工程では、バリきり49に電線群13が挟まれた状態でキャビティ51に所定量の溶融樹脂が低圧射出されると、キャビティ51が溶融樹脂により満たされる。
【0036】
低圧射出では、キャビティ51に注入された溶融樹脂は、注入先端ほど温度が低くなり、硬化が促進される。バリきり49の近傍の型温度は、樹脂溶融温度以下である。注入先端で硬化した溶融樹脂は、それ自体が封止機能を有する。溶融樹脂は、低圧射出装置29によってキャビティ51に低圧射出されるため、流動性は有するものの、平坦なバリきり49と隣接する電線11間との間の小さな隙間を通って多量に漏れ出す程の流動性は抑制される。その結果、堰き止め部15が電線群13の外周にモールド成形される。これにより、電線群13に堰き止め部15を設けたワイヤハーネス100の製造が完了する。
【0037】
本実施形態のワイヤハーネスの製造方法では、バリきり49と隣接する電線11間との間の隙間から溶融樹脂が多量に漏れ出すことはなく、従来の成形型のように成形樹脂を封止するための構造(山脈のように先端が尖った複数の突条)をバリきり49に設ける必要がない。そこで、成形型27は単純な構造となり、製造コストを低減することができる。
【0038】
図3はワイヤハーネスにおける粘着テープ17の成形型接触領域を説明する平面図である。
上記のワイヤハーネスの製造方法で製造したワイヤハーネス100は、堰き止め部15の電線貫通側面23から、電線群13の延在方向に沿って巻装された巻装長さLの粘着テープ17の一部分が突出している。電線貫通側面23から突出した粘着テープ17は、電線貫通側面23からの突出長よりも小さい突出領域が、バリきり49に接触していた成形型接触領域65となる。
【0039】
図4は主に粘着テープ17と電線11との間に硬質樹脂材が充填された状態のバリきり49近傍の要部断面図である。
本実施形態に係るワイヤハーネスの製造方法により得られたワイヤハーネス100は、溶融樹脂(溶融した硬質樹脂材)67が、粘着テープ17と電線11との間に充填される。この場合、溶融樹脂67は、下型47におけるバリきり49の凹状部61に配置された粘着テープ17の上側左右(
図4の左右)と、上型45のバリきり49との間にも充填される。
【0040】
図5は粘着テープとバリきりとの間に硬質樹脂材が充填された状態のバリきり49近傍の要部断面図である。
また、本実施形態に係るワイヤハーネスの製造方法により得られたワイヤハーネス100は、溶融樹脂67が、バリきり49と粘着テープ17との間に充填されることもある。この場合、粘着テープ17は、溶融樹脂67の樹脂圧により電線11の外周に密着する。また、粘着テープ17に包囲された電線11同士の間には、キャビティ51より押し込まれる溶融樹脂67が充填される。
【0041】
このように、本実施形態に係るワイヤハーネスの製造方法では、電線11と粘着テープ17の隙間は、溶融樹脂67が入り込んで埋まるか、樹脂圧により粘着テープ17が電線側に押しつけられるかの何れかにより水入り対策が図られることになる。電線11と粘着テープ17の隙間を溶融樹脂67で埋めるか、粘着テープ17を電線側に押しつけるかの選択は、粘着テープ17の軟性、溶融樹脂温度、樹脂圧の設定等により調整することができる。
【0042】
なお、キャビティ51内の粘着テープ17は、溶融樹脂67の温度により溶けても、成形樹脂内で溶融樹脂67と共に固化するので水入り対策における問題とはならない。
【0043】
本実施形態に係るワイヤハーネスの製造方法により得られたワイヤハーネス100は、電線群13において複数の電線11が直径方向に一列で並ぶので、
図6に示すように、3本以上の電線11によって包囲された樹脂未充填空間73が形成されることがなく、隣接する電線11同士の間を確実に水入り対策できる。
【0044】
図7の(a)は粘着テープが巻装されない電線群13に堰き止め部15が形成された参考例に係るワイヤハーネス200の斜視図、
図7の(b)は
図7の(a)に示したワイヤハーネス200の成形型セット時の状況を表す要部断面図である。
図7の(a)に示す参考例のワイヤハーネス200のように、バリきり49と接触する電線群13の外周に粘着テープ17が巻装されていない場合、
図7の(b)に示すように型締め工程で電線群13が成形型27にセットされた際、バリきり49が電線11に直接接触する。即ち、成形型27にセットされた電線群13の電線11は、バリきり49のエッジ75が直接接触することによる電線被覆の傷つきが発生する可能性がある。本実施形態に係る粘着テープ17は、このような電線群13に堰き止め部15をモールド成形する際の電線被覆部位の保護に有効となる。
【0045】
図8は本実施形態のワイヤハーネスを用いた機器接続構造を表す要部分解斜視図である。
本実施形態に係るワイヤハーネス100は、
図8に示すように、例えば止水ボックス77に使用される。止水ボックス77は、一体ケースに隔壁部79が形成されており、この隔壁部79に、電線群挿通部81が形成されている。電線群挿通部81には、ワイヤハーネス100の堰き止め部15が嵌入される。つまり、ワイヤハーネス100は、電線群挿通部81に嵌入される堰き止め部15により隔壁部79を貫通する。
【0046】
電線群挿通部81は、正面視で台形状の貫通穴83を有する筒状に形成される。堰き止め部15の外周形状部19は、この電線群挿通部81の内周形状に応じた形状を有するように成形されている。堰き止め部15は、電線群13の一端側から貫通穴83に嵌め入れられる。堰き止め部15は、挿入方向の任意位置の断面形状が、同一に形成される。なお、貫通穴83は、内周面にシールスポンジやゴムなどの止水材(図示せず)が貼り付けられ、堰き止め部15との間が止水される。
【0047】
また、堰き止め部15は、挿入方向に先細のテーパー面で外周形状部19が形成されてもよい。これにより、堰き止め部15は、電線群挿通部81への挿入圧力によって、より貫通穴83の内周面に密接させることができ、高い止水性を得ることができるようになる。
【0048】
止水ボックス77には、例えば図示しない電子機器が収容される。電線群13の一端に接続されたコネクタ85は、この電子機器と接続されている。コネクタ85は、止水ボックス77に収容され、止水ボックス77の電線群挿通部81から導出された電線群13が、堰き止め部15によって水入り対策される。これにより、コネクタ85は、水入り対策された止水ボックス内に収容される。
【0049】
次に、上記した構成の作用を説明する。
本実施形態に係るワイヤハーネスの製造方法では、堰き止め部15の成形時には、電線群13が上型45及び下型47の分割面53,55に形成されたバリきり49に挟持されて成形型27のキャビティ51に配置される。この際、各列の電線群13の外周には粘着テープ17が巻装されており、上型45及び下型47のバリきり49は、粘着テープ17の外周に接触する。そこで、バリきり49は電線被覆に直接触れることがない。これにより、電線群13の電線11は、電線被覆に上型45及び下型47のバリきり49が接触することによる電線被覆の損傷が防止される。
【0050】
また、本実施形態のワイヤハーネスの製造方法では、各列の電線群13に粘着テープ17が巻装されるので、個々の電線11がばらけずに保持される。このため、電線群13を成形型27にセットするときに複数の電線11を整列固定しておくための治具が不要となる。
【0051】
また、本実施形態に係るワイヤハーネスの製造方法では、粘着テープ17は、キャビティ51の外側両端部分におけるバリきり49が直接接触する可能性がある電線部分だけに巻装される。換言すれば、粘着テープ17は、外側両端部分を除く、キャビティ51内を貫通する電線部分では省略される。そこで、このワイヤハーネスの製造方法によれば、粘着テープ17の巻装作業を簡略化できる。
【0052】
また、ワイヤハーネスは、キャビティ51内において粘着テープ17の巻装が省略されることにより、粘着テープ17が巻装されない電線群13の各列における電線11間に、溶融した硬質樹脂材が入り込みやすくなる。これにより、ワイヤハーネスは、上下のバリきり49に挟持された電線11同士の隙間にも溶融樹脂67を充填しやすくでき、水入り対策性能を更に向上させることができる。
【0053】
なお、上記実施形態では、電線群は複数の電線が直径方向に一列に並ぶ場合を説明したが、本発明の構成は、二列以上の電線群が多段に並ぶ構成としてもよい。これにより、ワイヤハーネスは、直径方向に一列で並べる場合に比べ、電線の並び方向の堰き止め部の寸法を、小さくすることができる。
【0054】
また、上記実施形態では、堰き止め部15の成形に低圧射出成形機25を用いたが、一般的な射出成形機を用いることもできる。この場合、堰き止め部15の成形時には、成形型に高温の溶融樹脂が注入される。この際、成形型を貫通している電線群13の電線11は、成形型のキャビティに配置されていることにより高温の溶融樹脂に接触することとなり、電線被覆が軟化し、切れやすくなる可能性があるので、堰き止め部15がモールド成形される電線群13の一部分の外周に、バリきりと接触する部分と伴に一括して粘着テープ17が巻装されることが望ましい。これにより、成形型のキャビティに配置された電線群13の電線11は、高温の溶融樹脂に直接接触することがなくなり、電線被覆の損傷が防止される。
【0055】
従って、本実施形態に係るワイヤハーネスの製造方法によれば、成形型27による電線被覆の損傷を防止できる。
【0056】
ここで、上述した本発明に係るワイヤハーネスの製造方法の実施形態の特徴をそれぞれ以下に簡潔に纏めて列記する。
[1] 複数の電線(11)が直径方向に並ぶ少なくとも一列の電線群(13)と、前記電線群の延在方向の一部分を包囲し電線群挿通部(81)の内周形状に応じた外周形状部(19)を有する硬質樹脂材製の堰き止め部(15)と、を備えるワイヤハーネスの製造方法であって、
前記電線群の一部分における各列の外周に粘着テープ(17)を巻装するテープ巻装工程と、
前記堰き止め部をモールド成形するためのキャビティ(51)と、前記電線群の延在方向に沿った前記キャビティの外側両端部分において前記電線群の各列に巻装された前記粘着テープの外周を挟むバリきり(49)とを有するハーネス収容部(上側ハーネス収容部57及び下側ハーネス収容部59)が分割面(上型分割面53及び下型分割面55)にそれぞれ形成された上型(45)及び下型(47)を、前記ハーネス収容部に前記電線群の一部分を配置して型締めする型締め工程と、
溶融した硬質樹脂材(溶融樹脂67)を前記キャビティ内に射出する射出工程と、
を含むことを特徴とするワイヤハーネスの製造方法。
[2] 一対の前記粘着テープが、前記キャビティと前記バリきりの外側との双方にそれぞれ掛かるように前記電線群の延在方向に沿って所定間隔でそれぞれ前記電線群の各列に巻装される、
ことを特徴とする上記[1]に記載のワイヤハーネスの製造方法。
【0057】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。