【解決手段】一実施形態に係るヒータによれば、絶縁体基板と、前記絶縁体基板の第1面において長手方向に複数の分割領域を形成された発熱部と、前記発熱部の両端部に、前記複数の分割領域に対応して形成された電極と、前記電極の少なくとも1つに接続され、前記絶縁体基板の前記第1面と異なる面に亘って形成された導電体と、を有する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係る定着装置を用いた画像形成装置の構成例を示す図である。
図1において、画像形成装置は、例えば複合機であるMFP(Multi-Function Peripherals)や、プリンタ、複写機等である。以下の説明ではMFP10を例に説明する。
【0009】
MFP10の本体11の上部には透明ガラスの原稿台12があり、原稿台12上には自動原稿搬送部(ADF)13が開閉自在に設けられている。また、本体11の上部には操作パネル14が設けられている。操作パネル14は、各種のキーとタッチパネル式の表示部を有している。
【0010】
本体11内のADF13の下部には、読取装置であるスキャナ部15が設けられている。スキャナ部15は、ADF13によって送られる原稿または原稿台上に置かれた原稿を読み取って画像データを生成するもので、密着型のイメージセンサ16を備えている。イメージセンサ16は、主走査方向(ADF13によって送られる原稿の搬送方向と直交する方向。
図1では奥行方向)に配置されている。
【0011】
イメージセンサ16は、原稿台12に載置された原稿の画像を読み取る場合は原稿台12に沿って移動しながら、原稿画像を1ライン分ずつ読み取る。これを原稿サイズ全体にわたって実行し1ページ分の原稿の読み取りを行う。また、ADF13によって送られる原稿の画像を読み取る場合、イメージセンサ16は、固定位置(図示の位置)にある。
【0012】
更に、本体11内の中央部にはプリンタ部17を有し、本体11の下部には、各種サイズの用紙P(記録媒体)を収容する複数の給紙カセット18を備えている。プリンタ部17は、感光体ドラムと、露光装置としてLEDを含む走査ヘッド19を有し、走査ヘッド19からの光線によって感光体ドラムを走査して画像を生成する。
【0013】
プリンタ部17は、スキャナ部15で読み取った画像データや、パーソナルコンピュータなどで作成された画像データを処理して用紙に画像を形成する。プリンタ部17は、例えばタンデム方式によるカラーレーザプリンタであり、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像形成部20Y,20M,20C,20Kを含む。画像形成部20Y,20M,20C,20Kは、中間転写ベルト21の下側に、上流から下流側に沿って並列に配置されている。また、走査ヘッド19も画像形成部20Y,20M,20C,20Kに対応した複数の走査ヘッド19Y,19M,19C,19Kを有している。
【0014】
図2は、画像形成部20Y,20M,20C,20Kのうち、画像形成部20Kを拡大した図である。なお、以下の説明において各画像形成部20Y,20M,20C,20Kは同じ構成であるため、画像形成部20Kを例に説明する。
【0015】
画像形成部20Kは、像担持体である感光体ドラム22Kを有する。感光体ドラム22Kの周囲には、回転方向tに沿って帯電器23K、現像器24K、一次転写ローラ(転写器)25K、クリーナ26K、ブレード27K等を配置している。感光体ドラム22Kの露光位置には、走査ヘッド19Kから光を照射し、感光体ドラム22K上に静電潜像を形成する。
【0016】
画像形成部20Kの帯電器23Kは、感光体ドラム22Kの表面を一様に帯電する。現像器24Kは、現像バイアスが印加される現像ローラ24aによりブラックのトナーおよびキャリアを含む二成分現像剤を感光体ドラム22Kに供給し、静電潜像の現像を行う。クリーナ26Kは、ブレード27Kを用いて感光体ドラム22K表面の残留トナーを除去する。
【0017】
また、
図1に示すように、画像形成部20Y,20M,20C,20Kの上部には、現像器24Y,24M,24C,24Kにトナーを供給するトナーカートリッジ28を設けている。トナーカートリッジ28は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナーカートリッジ28Y,28M,28C,28Kを含む。
【0018】
中間転写ベルト21は、循環的に移動する。中間転写ベルト21は、駆動ローラ31および従動ローラ32に張架される。また、中間転写ベルト21は、感光体ドラム22Y,22M,22C,22Kに対向して接触している。中間転写ベルト21の感光体ドラム22Kに対向する位置には、一次転写ローラ25Kにより一次転写電圧が印加され、感光体ドラム22K上のトナー像を中間転写ベルト21に一次転写する。
【0019】
中間転写ベルト21を張架する駆動ローラ31には、二次転写ローラ33を対向して配置している。駆動ローラ31と二次転写ローラ33の間を用紙Pが通過する際に、二次転写ローラ33により二次転写電圧が用紙Pに印加される。そして、中間転写ベルト21上のトナー像を用紙Pに二次転写する。中間転写ベルト21の従動ローラ32付近には、ベルトクリーナ34を設けている。
【0020】
また、
図1で示すように、給紙カセット18から二次転写ローラ33に至る間には、給紙カセット18内から取り出した用紙Pを搬送する給紙ローラ35が設けられている。更に、二次転写ローラ33の下流には定着装置36が設けられている。また、定着装置36の下流には搬送ローラ37が設けられている。搬送ローラ37は用紙Pを排紙部38に排出する。更に、定着装置36の下流には、反転搬送路39が設けられている。反転搬送路39は、用紙Pを反転させて二次転写ローラ33の方向に導くもので、両面印刷を行う際に使用される。
【0021】
図1、
図2は本発明の実施形態の一例を示すものであり、定着装置36以外の画像形成装置部分の構造を限定するものではなく、公知の電子写真方式画像形成装置の構造を用いることができる。
【0022】
図3は、一実施形態におけるMFP10の制御系50の構成例を示すブロック図である。制御系50は、例えば、MFP10全体を制御するCPU100、リードオンリーメモリ(ROM)120、ランダムアクセスメモリ(RAM)121、インターフェース(I/F)122、入出力制御回路123、給紙・搬送制御回路130、画像形成制御回路140、定着制御回路150を備えている。
【0023】
CPU100は、ROM120あるいはRAM121に記憶されるプログラムを実行することにより画像形成のための処理機能を実現する。ROM120は、画像形成処理の基本的な動作を司る制御プログラムおよび制御データなどを記憶する。RAM121は、ワーキングメモリである。ROM120(あるいはRAM121)は、例えば、画像形成部20や定着装置36等の制御プログラムと制御プログラムが使用する各種の制御データを記憶する。本実施形態における制御データの具体例としては、用紙中の印字領域の大きさ(主走査方向での幅)と給電対象となる発熱部との対応関係などが挙げられる。
【0024】
定着装置36の定着温度制御プログラムは、トナー像が形成された用紙における画像形成領域の大きさを判定する判定ロジックと、用紙が定着装置36の内部に搬送される前に画像形成領域が通過する位置に対応する発熱部のスイッチング素子を選択して給電し、加熱手段における加熱を制御する加熱制御ロジックとを含んでいる。
【0025】
I/F122は、ユーザ端末やファクシミリ等の各種装置との通信を行う。入出力制御回路123は、オペレーションパネル123a、表示器123bを制御する。給紙・搬送制御回路130は、給紙ローラ35あるいは搬送路の搬送ローラ37等を駆動するモータ群130a等を制御する。
【0026】
給紙・搬送制御回路130は、CPU100からの制御信号に基づいて給紙カセット18近傍あるいは搬送路上の各種センサ130bの検知結果を考慮してモータ群130a等を制御する。画像形成制御回路140は、CPU100からの制御信号に基づいて感光体ドラム22、帯電器23、走査ヘッド19、現像器24、転写器25をそれぞれ制御する。定着制御回路150は、CPU100からの制御信号に基づいて定着装置36の駆動モータ360、加熱部材361、サーミスタ等の温度検知部362をそれぞれ制御する。
【0027】
なお、本実施形態では定着装置36の制御プログラムおよび制御データをMFP10の記憶装置内に記憶してCPU100で実行する構成としているが、定着装置36専用に演算処理装置と記憶装置を別途設ける構成にしてもよい。おんど
図4は、定着装置36の構成例を示す図である。ここでは、定着装置36が、板状の加熱部材361と、弾性層が形成され、複数のローラに懸架されたエンドレス状の回転体、例えば無端ベルト363と、この無端ベルト363を駆動するベルト搬送ローラ364と、無端ベルト363に張力を与えるテンションローラ365と、弾性層が表面に形成されたプレスローラ366を備えている。
【0028】
加熱部材361は、複数の分割領域としての発熱体361a、発熱体361b、発熱体361c、からなる発熱部361Aが無端ベルト363の内側に接触して配置し、プレスローラ366方向に押圧されることで、プレスローラ366との間に所定幅の定着ニップを形成する。この構成では加熱部材361がニップ領域を形成しつつ加熱する構成のため、給電時における応答性はハロゲンランプによる加熱方式の場合よりも高い。なお、上述の実施態様では、発熱部361Aを無端ベルト363の内側に接触して配置させたが、必ずしも両者を接触させる必要はなく、発熱部361Aと無端ベルト363との間に何らかの部材を介在させても良い。
【0029】
無端ベルト363は、例えば厚さ50μmのSUS基材あるいは70μmの耐熱樹脂であるポリイミド上の外側に厚さ200μmのシリコンゴム層が形成され、最外周はPFA等のベルト保護層で被覆されている。プレスローラ366は、例えばφ10mmの鉄棒表面に厚さ5mmのシリコンスポンジ層が形成され、最外周はPFA等のベルト保護層で被覆されている。
【0030】
また、加熱部材361には、例えば、セラミック基板などの絶縁体上に発熱抵抗層あるいはグレーズ層および発熱抵抗層が積層されている。グレーズ層はなくてもよい。発熱抵抗層は、例えばTaNやTaSiO
2などの既知の素材で形成され、主走査方向において所定の長さと個数に分割されている。分割の詳細については後述する。
【0031】
図5は、本実施形態における発熱部の配置と給電構造を示す上面図である。ここでは、加熱部材361の発熱領域が、ハガキサイズ(100×148mm)、CDジャケットサイズ(121×121mm)、B5Rサイズ(182×257mm)、A4Rサイズ(210×297mm)に対応するために3種類の長さの発熱部に分割されている。各発熱部は、搬送される用紙の搬送精度やスキューや非加熱部分への熱の逃げを考慮して、加熱領域に5%程度の余裕を持つように形成されるものとする。
【0032】
図5の例では、最小サイズ(第1の媒体サイズ)であるハガキサイズの幅100mmに対応するため、主走査方向(長手方向)における一番左側に発熱体361aを設け、その幅は105mmとする。次に大きいサイズ(第2の媒体サイズ)121mmと148mmに対応するため、発熱体361aの右側に、幅50mmの発熱体361bを設け、148mm+5%で155mmまでの幅をカバーする。更に大きいサイズ(第3の媒体サイズ)182mmと210mmに対応するため、発熱体361bの更に右側には、各発熱部の幅65mmの発熱体361cを設け、210mm+5%で220mmまでの幅をカバーする。
【0033】
また、
図5に示されるように、発熱体361a、発熱体361b、発熱体361cの一端部は、いずれも共通電極361dに接続されているが、他端部は電極361e〜361gにそれぞれ接続されている。3つに分割された発熱体361a〜361cと電極361d〜361gは、上述の方法で絶縁体基板361hの表面(第1の面)に固定されている。また、分割されている電極361e〜361gは、リークを防止するため、それぞれ隣接する電極同士は所定の幅ΔG1以上で離間している。
【0034】
また、発熱体361a〜361c間で共通電極361dは、導電体361pに接続されている。同様に、電極361e〜361gは、導電体361q〜361sにそれぞれ接続されている。導電体361p〜361sはいずれも給電装置に接続される。各導電体361q〜361sの詳細については後述する。
【0035】
なお、
図5における発熱領域の分割数とそれぞれの幅は一例として挙げたものであり、これに限定はされない。MFP10が例えば5つの媒体サイズに対応していた場合には、発熱領域を各媒体サイズに合わせて5分割にしてもよい。
【0036】
すなわち、対応する媒体サイズに応じて分割数、分割幅を自在に選択し、更に細分化された発熱部群を均一に発熱させることができる。同様に、媒体サイズの代わりに印刷サイズ(画像形成領域)の大小に基づいて給電対象の発熱体361a〜361cを選択するように構成することもできる。
【0037】
なお、各発熱部は、連続的に構成することなく、複数の長方形状の発熱素子から構成するようにすることも可能である。すなわち、離間された長方形状の発熱素子を、
図5上、上下方向に、共通電極と対向する個々の電極の間に並列的に接続される構成とすることも可能である。
【0038】
また、
図5の例では、共通電極361dならびに電極361e、361f、361gを、絶縁体基板361hの短手方向(用紙Pの搬送方向)の両端部に設けたが、これに限らない。即ち、絶縁体基板361hの長手方向(用紙Pの搬送方向と直交する方向)のどちらかの端部または両端部に、共通電極や個別電極を配設する実施態様であっても良い。
【0039】
また、
図5の例では、用紙を左寄せにする例、すなわち発熱部を、左側を中心に配置する非対称構成の例を示した。しかし、本発明では、用紙の幅に拘らず、用紙の中心が常に中央にあるように発熱部を対象配置する構成とすることもできる。この構成の場合には、用紙が主走査方向(図示左右方向)における中央領域を通過する場合には、発熱部の分割数、大きさ、位置を適宜変更すればよい。
【0040】
また、本実施形態では、通紙領域にラインセンサ(図示省略する)を配置し、通過する用紙のサイズと位置をリアルタイムで判定できるものとする。印刷動作の開始時に画像データあるいはMFP10内で媒体(用紙)を貯蔵されている給紙カセット18の情報から媒体サイズを判定する構成にしてもよい。
【0041】
図6は、
図5の給電構造を示す側面図であり、
図7は透過斜視図である。これらの図に示されるように、加熱部材361は、積層状態で配置され、複数の発熱部が最上層に固定された複数の絶縁体基板361h〜361jを有している。これらの絶縁体基板361h〜361jは、発熱部の数に基づいて設けられている。ここでは、発熱領域が3分割で構成されているので、3層構造となっているが、必ずしも同数には限られない。
【0042】
基板の積層数は、分割された発熱領域に対する給電パターンの形成領域を確保するために必要な数とする。電流容量が足りるのであれば、基板は1層でもよい。その場合、例えば導電体はこの絶縁層の第1の面の裏面(反対の面)に亘って形成されることとなる。
【0043】
電流容量の関係で、絶縁層が1層では不足であれば、1つのパターンの導電体を複層で用いても良い。
【0044】
なお、加熱部材361は、セラミック製の絶縁体基板361h〜361jに限られない。例えば、ガラスを主成分とするグレーズ層等、耐熱および絶縁機能を有する材料を、印刷方法により複数層塗布してもよい。この場合、
図6において、最初に絶縁体基板361jに相当する部分をグレーズ等により印刷形成し、その上に、電極361eを形成し、その上に、361iに相当する部分を、同様にグレーズ等により印刷形成し、その上に、電極361fを形成し、同様の手順で、361h、361gを形成する。
【0045】
なお、加熱部材361を形成する際は、セラミック製の絶縁層(絶縁体基板)と、グレーズ等を原材料とする印刷方式による絶縁層とを、混成しても良い。
【0046】
導電体361qは、第1層の絶縁体基板361hと第2層の絶縁体基板361iの側面並びに絶縁体基板361iと第3層の絶縁体基板361jとの境界面Bに亘って連続して形成されている。同様に、導電体361rは、絶縁体基板361hの側面並びに絶縁体基板361hと絶縁体基板361iとの境界面Aに亘って連続して形成されている。
図7に示されるように、導電体361qおよび導電体361rは、基板の側面や境界面Bおよび境界面Aにおいて板状の良導体層を形成している。良導体層の厚さは、例えば、10μm程度とすると好適である。なお、本実施形態では、絶縁体基板の側面に導電体361r,導電体361rを設けているが、給電経路に側面を使用せずに、各電極部分から各導電体を絶縁体内部に形成したスルーホールにより導通させることも可能である。
【0047】
また、
図6および
図7の例では、第1層の絶縁体基板361hの上面に導電体361sの配置スペースを確保できているため、導電体361sについては絶縁体基板間の境界面上には形成されてはいない。しかし、設計上、発熱面と同一面上において導電体の配置スペースの確保が困難な場合には、絶縁体基板の積層数を適宜増やして、他と同様に基板の側面と境界面に亘って連続的に形成することもできる。これは、発熱部間で共通電極361d側に配置されている導電体361pについても同様である。
【0048】
導電体361p〜361rは、複数の電極361d〜361gと給電装置との間において並列の給電経路を構成し、隣接する給電経路が所定の幅ΔG以上で離間するように配置される。
【0049】
良導体層である導電体361p〜361rの形成は絶縁体基板361h〜361jの形成時に同時に行ってもよいし、後から、貼りあわせてもよい。なお、本実施形態では、最下層(第3層)の底面側には良導体層を設けていないため、温度検知部362を配置するのに好適である。
【0050】
発熱抵抗層の形成方法は既知の方法、例えばサーマルヘッドの作成方法と同様であり、発熱抵抗層の上にマスキングによりアルミニウム層(電極層)を形成させる。隣接する発熱領域間が絶縁され、かつ、用紙搬送方向に発熱部(抵抗発熱体)が露出するようなパターンでアルミニウム層を形成する。発熱部への給電は、両端のアルミニウム層(電極)から導電体(配線)で繋ぎ、それぞれをスイッチングドライバのスイッチング素子等に繋ぐ。更に、抵抗発熱体、アルミ層、配線等の全てを覆うように、最上部に表面保護層を形成する(
図18の表面保護層43)。発熱体361a〜361cの切替部である駆動ICの具体例としては、スイッチング素子、FET、トライアックス、スイッチングICなどが挙げられる。各図では、駆動ICはスイッチ151a,151b、151cとして示している。
【0051】
表面保護層43は、例えばSiN系やSi−O−N系などによって形成される。このような発熱部群に対して交流や直流を供給する場合は、トライアックや、FETで発熱させる部分をゼロクロスで給電し、フリッカにも配慮するものとする。
【0052】
図8は、第1の実施形態における発熱部群への給電構造を示す回路図である。ここでは、各発熱体361a〜361cが、対応するスイッチ151a〜151cによって個別に通電が制御される並列の給電構造が示されている。共通電極361dに導電体361pが接続され交流電源45の一端に接続される。交流電源45の他端は、スイッチ151a,151b,151cの一端に共通接続され、これらのスイッチの他端は、各々導電体361q,361r,391sに接続される。
【0053】
導電体361q,361r,361sは各々電極361e,361f,361gに接続されている。これらの電極361e,361f,361gは、各々発熱体361a,361b,361cの一端に接続される。これらの発熱体361a,361b,361cの他端は、共通電極361dに接続される。
【0054】
図8に示す回路接続関係を、
図6に示す構造体の接続に示すと、
図6の右端に示すようになる。すなわち、導電体361qにスイッチ151aが接続され、導電体361rにスイッチ151bが接続され、導電体361sにはスイッチ151cが接続される。これらのスイッチ151a,151b,151cは交流電源45に共通接続されている。
【0055】
図6の構造体を矢印Cの方向の側面から見た構成を
図18に示す。すなわち、絶縁体基板361j,361i,361hが積層され、絶縁体基板361jの上面に導電体361qが設けられ、絶縁体基板361iの上面に導電体361rが設けられている。なお、
図18においては、交流電源45、スイッチ151a、151b、スイッチ151cを、絶縁体基板361h、361i、361jの短手方向に配置して図示しているが、実際は、長手方向に配置されるものである。
【0056】
交流電源45は、その一端を共通電極361dに接続され、他端はスイッチ151a,151b,151cに接続されている。スイッチ151cの他端は、導電体361sに接続されている。スイッチ151aの他端は、絶縁体基板361iの側面及びこの基板の底面に設けられた導電体361qに接続されている。スイッチ151bの他端は、絶縁体基板361hの側面及びこの基板の底面に設けられた導電体361rに接続されている。
【0057】
発熱体361c及び
図18には示していない発熱体361a,361bの上面には、先に述べた表面保護層43が設けられている。
【0058】
上述のように、
図6に示される実施形態においては、導電体361q、361r、361sからスイッチ151a、151b、151cに接続する構成を、絶縁体基板361j、361i、361hの長手方向に集約させている。このため、配線の取り回しが簡略化されるという効果を奏する。
【0059】
(第1の実施形態における印刷時の動作説明)
以下、上記のように構成されたMFP10の印刷時の動作を図面に基づいて説明する。
図9は、第1の実施形態におけるMFP10の制御の具体例を示すフローチャートである。
【0060】
先ず、スキャナ部15で画像データを読込む(Act101)と、画像形成部20における画像形成制御プログラムと定着装置36における定着温度制御プログラムが並列して実行される。
【0061】
画像形成処理が開始されると、読込まれた画像データを処理し(Act102)、感光体ドラム22の表面に静電潜像を書込み(Act103)、現像器24で静電潜像を現像した後(Act104)、Act114へ進む。
【0062】
他方、定着温度制御処理が開始されると、例えばラインセンサ(図示省略された)の検出信号、操作パネル14による用紙選択情報、あるいは画像データの解析結果等に基づいて用紙サイズと画像データの印字範囲の大きさをそれぞれ判定し(Act105)、用紙Pの印字範囲が通過する位置に配置された発熱部群を発熱対象として選択する(Act106)。
【0063】
次に、選択された発熱部群への温度制御開始信号をONにすると(Act107)、選択された発熱部群への給電が行われ、温度が上昇する。
【0064】
次に、無端ベルト363の内側あるいは外側に配置された温度検知部362により、発熱部群の表面温度を検知すると(Act108)、発熱部群の表面温度が所定の温度範囲内か否かを判定する(Act109)。ここで、発熱部群の表面温度が所定の温度範囲内であると判定された場合は(Act109:Yes)、Act110へ進む。これに対し、発熱部群の表面温度が所定の温度範囲内でないと判定された場合は(Act109:No)、Act111へ進む。
【0065】
Act111においては、発熱部群の表面温度が所定の温度上限値を超えているか否かを判定する。ここで、発熱部群の表面温度が所定の温度上限値を超えていると判定された場合(Act111:Yes)は、Act106において選択されていた発熱部群への給電をOFFにし(Act112)、Act108へ戻る。これに対し、発熱部群の表面温度が所定の温度上限値を超えていないと判定された場合(Act111:No)は、Act109の判定結果より表面温度が所定の温度下限値に満たない状態であるため、発熱部群への給電をON状態に維持、あるいは、再度ONにし(Act113)、Act108へ戻る。
【0066】
次に、発熱部群の表面温度が所定の温度範囲内の状態で、用紙Pを転写部に搬送すると(Act110)、用紙Pにトナー像を転写した後(Act114)に、用紙Pを定着装置36内に搬送する。
【0067】
次に、定着装置36内で用紙Pにトナー像を定着させると(Act115)、画像データの印字処理を終了するか否かを判定する(Act116)。ここで、印字処理を終了すると判定した場合(Act116:Yes)、全ての発熱部群への給電をOFFにし(Act117)、処理を終了する。これに対し、画像データの印字処理を未だ終了しないと判定した場合(Act116:No)、すなわち、印刷対象の画像データが残っている場合には、Act101へ戻り、終了するまで同様の処理を繰り返す。
【0068】
以上、本実施形態によれば、絶縁体基板361h〜361jを積層構造とするとともに、分割された導電体361qを絶縁体基板361hおよび第2層の絶縁体基板361iの側面から基板間の境界面Bに亘って、導電体361qを絶縁体基板361hの側面および基板間の境界面Bに亘って連続的に形成し、導電体361sを第1層の絶縁体基板361hの上面に形成している。このように、発熱面である第1層の絶縁体基板361hの上面だけでなく、絶縁体基板の側面と境界面を利用して良導体層を形成することにより、発熱体361a〜361cと同一面上に形成する給電経路(給電パターン)の数を少なくすることができる。このため、加熱部材361の発熱領域を複数に分割し、各発熱領域を独立して制御する場合でも、媒体の搬送方向におけるヒータ幅を小型化(例えば10mm以下)し、ベルト直径20〜30mmといった小型の定着装置36に搭載することも可能となる。なお、本実施形態では画像サイズに相当する部分の発熱に関して述べたが、ヒータを細分化して、画像のあるところのみを加熱させる、あるいは、何らかの事情で部分的に温度差があるところを補正しながら加熱することも可能である。
【0069】
<第2の実施形態>
図10は、第2の実施形態における発熱部群への給電構造を示す側面図である。また、
図11は、
図10に示す境界面Aにおける断面図である。なお、第1の実施形態において付された符号と共通の符号は同一の対象を示すものとする。また、発熱部群は、第1の実施形態と同様に3分割されているものとする。
【0070】
図10に示されるように、本実施形態では、絶縁体基板が3層構造から2層構造となっており、発熱部群の数よりも少ない層数に抑えられている。また、
図11に示されるように、絶縁体基板の層数を減らすために、境界面A内には、導電体361qおよび導電体361rが所定の幅ΔG2で離間して形成されている。なお、本実施形態では、絶縁体基板の側面に導電体361q,361rを設けているが、給電経路に側面を使用せずに、各電極部分から各導電体を絶縁体内部に形成したスルーホールにより導通させることも可能である。
【0071】
以上、本実施形態によれば、3つの導電体361q〜361sのうちの2つが、同一の境界面を共用して給電経路を構成しているため、絶縁体基板の積層数を第1の実施形態に比べて抑え、加熱部材361全体の厚さを薄くすることができる。発熱部群の分割数を更に増やした場合も同様であり、分割数の増加に伴って絶縁体基板の層数を増やさなければならない場合、一つの境界面に対して複数の導電体の給電経路を構築することができるため、効果的である。また、絶縁体基板の積層数が少なくなるため、製造コストを削減できる利点もある。
【0072】
<第3の実施形態>
図12は、第3の実施形態における発熱部群への給電構造を示す側面図である。
図12に示されるように、本実施形態は、導電体361qが基板間の境界面ではなく、最下層の絶縁体基板361iの底面にも形成されている点で上記二つの実施形態とは異なっている。絶縁体基板361iの底面に給電経路が形成されることにより、接触式の温度検知部を底面に配置することはできなくなるため、代わりに非接触の温度検知部を使用して温度制御を行うと好適である。
【0073】
なお、本実施形態では、絶縁体基板の側面に導電体361q,361rを設けているが、給電経路に側面を使用せずに、各電極部分から各導電体を絶縁体内部に形成したスルーホールにより導通させることも可能である(後述の第5の実施形態を示す
図16のスルーホール361thを参照)。
【0074】
本実施形態によれば、絶縁体基板の積層数を第1の実施形態に比べて抑え、加熱部材361全体の厚さを薄くすることができる。また、絶縁体基板の積層数が少なくなるため、製造コストを削減できる利点もある。
【0075】
<第4の実施形態>
図13は、第4の実施形態における発熱部群への給電構造を示す側面図である。また、
図14は、
図13の給電構造を示す透過斜視図である。これらの図に示されるように、本実施形態では、複数の絶縁体基板361h〜361jの最上層(絶縁体基板361h)の上面側に積層され、複数の発熱体361a〜361cの表面と電極361e〜361gの上面を被覆する絶縁体基板401を更に備えている。絶縁体基板401は、絶縁体基板361h〜361jと同一材料で形成されてもよいが、耐熱性・絶縁性を有する別の材料から形成されてもよい。
【0076】
このように、本実施形態によれば、複数の発熱体361a〜361cの表面を覆うように耐熱性を有する絶縁体基板401を更に積層しているため、複数の発熱体361a〜361cの間の絶縁性が確保され、温度ムラの発生を防ぐことができる。
【0077】
<第5の実施形態>
図15は、第5の実施形態における発熱部群への給電構造を示す斜視図である。また、
図16は、
図15の給電構造を示す断面図である。これらの図に示されるように、複数の発熱体361a〜361cの一端側の共通電極361dが発熱面側に形成され、他端側の電極361gが絶縁体基板361hの厚み方向に形成されたスルーホール361thを介して発熱面側から裏面側に通って形成されている。
【0078】
このように、本実施形態によれば、電極が発熱部の表面側と裏面側にそれぞれ形成されることで、加熱部材361のサイズを大きくすることなく、給電ソケット(図示省略する)の位置に対応して電極を形成することが可能となる。
【0079】
<第6の実施形態>
上述の
図4に示した、定着装置の構成例では、加熱部材361の発熱部側が無端ベルト363の内側に接して設けられ、対向するプレスローラ366方向に押圧されることにより、無端ベルト363とプレスローラ366に挟まれて移動する用紙Pに、トナーが加熱定着されるようになっていた。このときの無端ベルト363の駆動は、駆動モータが接続されるベルト搬送ローラ364によりなされていた。しかし、プレスローラ側から駆動して、用紙Pを移送するようにすることも可能である。
【0080】
このような例の定着装置の構成例を
図17に示す。
図17に示す定着装置では、プレスローラ側から駆動される。プレスローラ51と対向して断面円弧状のフィルムガイド52が設けられ、その外側に定着フィルム53が回転可能に取り付けられている。フィルムガイド52の内側には、セラミックヒータ54a、複数の発熱部54b、表面保護層54cが積層して設けられる。この積層部は、上記定着フィルムを介してプレスローラに圧接されニップ部を形成する。上述のように発熱部は並列に接続されており、温度制御回路55に接続される。温度制御回路55は図示しないスイッチング素子を開閉制御して、温度を制御する。
【0081】
この定着装置の作動中には、駆動モータに接続されたプレスローラ51が回転駆動して、接触している定着フィルムを従動回転させる。このとき、左方から定着フィルム53とプレスローラ51間に入ってくる用紙Pを、発熱部54bにより加熱定着させ、右方に排出する。
【0082】
このように、本発明の定着装置は、プレスローラ側から駆動力を与える構造とすることも可能である。
【0083】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。本実施形態およびその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。