【実施例】
【0036】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。試験例1,4,6〜8が実施例であり、試験例2,3,5が比較例である。
【0037】
対極13を形成する分散液に使用する親水性カーボンは、表1に記載のものを使用した。表1に記載の親水性カーボンAには、ナノカロイド(株式会社シオン製)を使用した。その他親水性カーボン及びカーボンは、ナノカロイドの製造条件を変更することによって得たものを使用した。なお、親水性カーボンBの修飾基に使用しているアミノシランカップリング剤には、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩(KBM−575(信越化学工業株式会社製))を使用した。
【0038】
【表1】
【0039】
対極13を形成する分散液(以下、HC/TiO
2分散液とする。)は、表2及び表3に記載のものを使用した。Pt分散液は、Dyesol社製のPtペーストを使用した。界面活性剤は、ノニオン界面活性剤であるアルキルフェノールポリエチレングリコールエーテル系界面活性剤(Triton X−100(フィッシャーケミカル社製))を使用した。
【0040】
【表2】
【0041】
【表3】
【0042】
酸化チタンコロイドは、チタンテトライソプロポキシド(東京化成製)11質量部と、2−プロパノール1質量部と、脱イオン水70質量部とを、撹拌しながら混合し、硝酸(65%)を1質量部添加し、80℃8時間保持することによって得られたものを使用した。
【0043】
このようにして得られたHC/TiO
2分散液の安定性として、50℃での貯蔵安定性を評価した。そして、50℃4週間後に沈降・分離がないものを◎、50℃4週間後に沈降・分離が発生しているものの、再撹拌することにより常温下で1日以上沈降・分離がないものを○、50℃4週間後に沈降・分離が発生し、再撹拌することにより常温下で1時間以上沈降・分離がないものを△、50℃4週間後に沈降・分離が発生し、再撹拌できないもの、再撹拌してもすぐに沈降・分離が発生するものを×として評価した。
【0044】
対極基材11には、表面抵抗が8Ω/SqのFTO蒸着ガラスの市販品を使用した。HC/TiO
2分散液の塗布方法は、焼成後の対極13の厚みが1μmとなるように対極基材11の両側端にスコッチテープ(3M)を2枚重ねてドクターブレード法により対極基材11に塗布した。HC/TiO2分散液は、室温(25℃)で10分乾燥させた後、450℃で30分間焼成した。
【0045】
このようにして得られた対極13について、対極耐久性を評価した。そして、対極の耐久性に問題がないものを◎、対極基材11への密着性に問題があるものを△、対極基材11への密着性に問題があり太陽電池を形成することができなかったものを×として評価した。
【0046】
色素増感太陽電池1の作用電極(−極)は、陰極基材21に導電層22として表面抵抗が8Ω/SqのFTOが蒸着されたガラスを使用し、チタニアペースト第1層、チタニアペースト第2層により、酸化チタン膜23を形成した後、ルテニウム系色素24を付着させ、酸化チタン光陰極とした。
【0047】
チタニアペースト第1層には、90−T(Dyesol社製)を使用し、FTO蒸着ガラス上に汎用の塗装方法で塗布し、500℃で30分焼成することによって形成した。チタニアペースト第2層には、WER−40(Dyesol社製)を使用し、チタニアペースト第1層が形成されたFTO蒸着ガラス上に汎用の塗装方法で塗布し、500℃で30分焼成することによって形成した。
【0048】
酸化チタン膜23は、チタニアペースト第1層と第2層とが形成されたFTO蒸着ガラスを、70℃に調整された四塩化チタンのテトラヒドロフラン錯体の40mM水溶液に30分浸漬し、浸漬後に、脱イオン水で洗浄し、更にエタノールで洗浄し、500℃で30分焼成することによって形成した。
【0049】
ルテニウム系色素24の付着は、ルテニウム系色素24とtert−ブチルアルコールとの1:1溶液(0.3mM)中に、作用電極(酸化チタン光陰極)を24時間浸漬し、イソプロパノールですすいだ後、窒素気流下で乾燥させることによって付着させた。ルテニウム系色素24には、シス−ビス(イソチオシアナト)ビス(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボン酸)ルテニウム(II)ビス(テトラブチルアンモニウム)色素(N719(Solaronix社製))のアセトニトリル溶液を使用した。
【0050】
以上のように形成したHC/TiO2対極13と作用電極との間に電解質30を密閉することによって、色素増感太陽電池1を形成した。
【0051】
HC/TiO2対極13と作用電極との間は、その外周に25μm厚のsurlynスペーサー(Solaronix社製)を挟持させて、電解質密閉空間を形成した。電解質30は、ヨウ素(0.06M、アセトニトリル溶液)(Sigma Aldrich社製)と、4−tert−ブチルピリジン(0.5M)(Sigma Aldrich社製)と、1−ブチル−9,10−ジフルオロ−3−メチルイミダゾリウムヨウ化物(0.5)(io−li−tec社製)とを混合したものを使用した。電解質30は、HC/TiO2対極13に形成した穴から注入し、注入後に穴をスライドガラスで密閉した。
【0052】
このようにして得られた色素増感太陽電池1について、光電エネルギ−変換効率の比較として電流密度を測定した。そして、0.6mA/cm
2以上であるものを◎、0.5mA/cm
2以上、0.6mA/cm
2未満であるものを○、0.2mA/cm
2以上、0.4mA/cm
2未満であるものを△、0.2mA/cm
2未満であるものを×として評価した。なお、対極にプラチナ電極を用いたものの電流密度は、0.75mA/cm
2であった。
【0053】
(試験例1〜3)
試験例1〜3のHC/TiO
2分散液の配合は、表2に記載したものである。 試験例1は、ベストモードとなる実施例であり、親水性カーボンにナノカロイド(株式会社シオン製)(親水性カーボンA)を使用したものである。試験例1のHC/TiO
2分散液から形成された対極13と得られた色素増感太陽電池は、酸化チタンコロイドによって、対極基材11への密着性に優れ、親水性カーボンによって、電解質30との親和性に優れ、光電エネルギー変換効率に優れたものとなった。また、試験例1のHC/TiO
2分散液は、分散液安定性にも優れていた。
【0054】
試験例2は、親水性カーボンを添加しなかったHC/TiO
2分散液である。試験例1のHC/TiO
2分散液から形成された対極13と得られた色素増感太陽電池と比較して、電解質30との親和性に劣り、光電エネルギー変換効率が劣るものとなった。
【0055】
試験例3は、酸化チタンコロイドを添加しなかったHC/TiO
2分散液である。試験例1のHC/TiO
2分散液から形成された対極13と得られた色素増感太陽電池と比較して、対極基材11への密着力が劣り、対極耐久性が劣るものとなった。なお、対極13が対極基材11から早期に剥離したため、エネルギー変換効率を測定することはできなかった。
【0056】
(試験例4〜9)
試験例4〜9のHC/TiO
2分散液の配合は、表3に記載したものである。試験例4は、親水性カーボンに、アミノシランカップリング剤を使用した親水性カーボンBを使用した。試験例1のHC/TiO
2分散液と比較して、分散液安定性がやや劣るものとなった。
【0057】
試験例5は、親水性カーボンの代わりに、修飾基で修飾されていないカーボンCを使用した。試験例1のHC/TiO
2分散液と比較して、カーボンCは分散液に分散することができなく、分散液安定性が劣るものとなった。分散が不十分であるため、試験例5のHC/TiO
2分散液は対極13を形成することができず、対極耐久性とエネルギー変換効率は測定することができなかった。
【0058】
試験例6は、親水性カーボンに、カーボン粒子と親水基の比率が1:0.3であるカーボンDを使用した。親水基が少ないために、試験例1のHC/TiO
2分散液と比較して、分散液安定性がやや劣るものとなった。
【0059】
試験例7は、親水性カーボンに、カーボン粒子と親水基の比率が1:6であるカーボンEを使用した。親水基が多いために、カーボン粒子自体の電解質30との接触面積が小さくなり、試験例1のHC/TiO
2分散液から形成された対極13と得られた色素増感太陽電池と比較して、光電エネルギー変換効率がやや劣るものとなった。
【0060】
試験例8は、親水性カーボンに、カーボン粒子の平均粒子径が150nmであるカーボンFを使用した。粒子径が小さいために、試験例1のHC/TiO
2分散液から形成された対極13と得られた色素増感太陽電池と比較して、対極13の密着強度が劣り、対極耐久性がやや劣るものとなった。
【0061】
試験例9は、親水性カーボンに、カーボン粒子の平均粒子径が700nmであるカーボンGを使用した。粒子径が大きいために、試験例1のHC/TiO
2分散液から形成された対極13と得られた色素増感太陽電池と比較して、表面積が小さくなり、光電エネルギー変換効率がやや劣るものとなった。