特開2017-228656(P2017-228656A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-228656(P2017-228656A)
(43)【公開日】2017年12月28日
(54)【発明の名称】窒化鉄磁石
(51)【国際特許分類】
   H01F 1/04 20060101AFI20171201BHJP
   H01F 1/08 20060101ALI20171201BHJP
   B22F 3/00 20060101ALI20171201BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20171201BHJP
   C22C 13/00 20060101ALN20171201BHJP
【FI】
   H01F1/04 Z
   H01F1/08 A
   B22F3/00 F
   C22C38/00 303A
   C22C13/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-123843(P2016-123843)
(22)【出願日】2016年6月22日
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000166443
【氏名又は名称】戸田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】細野 雅和
【テーマコード(参考)】
4K018
5E040
【Fターム(参考)】
4K018AA25
4K018BA11
4K018BA14
4K018BB04
4K018BB05
4K018BC01
4K018BC10
4K018BC12
4K018BC13
4K018BC16
4K018BC22
4K018BD01
4K018CA02
4K018CA04
4K018CA11
4K018CA23
4K018FA23
4K018FA25
4K018KA45
4K018KA63
5E040AA11
5E040AA19
5E040BB01
5E040BC01
5E040CA01
5E040HB14
5E040HB17
5E040NN04
(57)【要約】
【課題】Fe16からなる窒化鉄磁石において、樹脂ボンド磁石や圧粉磁石と比較して、高い機械的強度と高い磁気特性とを兼ね備えた窒化鉄磁石を提供すること。
【解決手段】本発明に係る窒化鉄磁石は、Fe16が主成分である窒化鉄磁石であって、窒化鉄磁石中の窒化鉄磁性粒子間にSnまたはSn合金を、窒化鉄磁石重量に対して1重量%以上30重量%以下含むように構成される。SnまたはSn合金の効果によって比較的低温で緻密化することが可能となり、Fe16の特性を損なうことなく、高い機械的強度と高い磁気特性とを兼ね備えることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Fe16が主成分である窒化鉄磁石であって、窒化鉄磁石中の窒化鉄磁性粒子間にSnまたはSn合金を、窒化鉄磁石重量に対して1重量%以上30重量%以下含むことを特徴とする窒化鉄磁石。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化鉄磁石に関する。
【背景技術】
【0002】
Fe16からなる窒化鉄磁石は、その磁気特性が高いことや、希土類を使用しないという環境への配慮の観点から注目されている。しかしながら、Fe16からなる窒化鉄磁石は、Fe16相が高温で分解するため焼結することが難しい。このため、窒化鉄磁石として、圧縮成型のみによる圧粉磁石や、樹脂により固化されたボンド磁石が提案されている。
【0003】
たとえば下記特許文献1では、明細書中にボンド磁石、圧粉磁石と記載されているものの、実施例を含み具体的な記述はされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−80922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
Fe16からなる窒化鉄磁石において、Fe16は準安定化合物であることから、高温での焼結によってFeNやα−Feといった不純物相が生成する場合がある。これにより、保磁力や磁化といった磁気特性が低下する。また、ボンド磁石のように樹脂を添加する場合、高い保磁力を有するFe16窒化鉄磁石は非常に微細な窒化鉄磁性粒子で構成されることから、多量の樹脂が必要となり、圧粉磁石と比較して磁気特性の低下が生じてしまう。さらに、機械的強度や耐湿性においても十分なものとは言えない。一方、単純な圧縮成型によって緻密化された圧粉磁石の場合、十分な機械的強度が得られないために磁石製品として適さない。
【0006】
本発明は上記を鑑みてなされたものであり、高い機械的強度と高い磁気特性とを兼ね備えた窒化鉄磁石を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る窒化鉄磁石は、Fe16が主成分である窒化鉄磁石であって、窒化鉄磁石中の窒化鉄磁性粒子間にSnまたはSn合金を、窒化鉄磁石重量に対して1重量%以上30重量%以下含むことを特徴とする窒化鉄磁石である。
【0008】
上記本発明に係る窒化鉄磁石は、SnまたはSn合金の効果によって比較的低温で緻密化することが可能であるため、Fe16の特性を損なうことなく、高い機械的強度と高い磁気特性とを兼ね備えることができる。Snを用いる理由は、加工性や機械的強度に優れ、価格や環境への影響の観点から優れているためである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、Fe16からなる窒化鉄磁石を緻密化することが可能となり、高い機械的強度と高い磁気特性とを兼ね備えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、本発明は以下に記載の実施形態及び実施例の内容により限定されるものではない。また、以下に記載の実施形態及び実施例にて示された構成要素は適宜組み合わせても良いし、適宜選択してもよい。
【0011】
本実施形態に係る窒化鉄磁石は、Fe16が主成分であり、一部にFeNやFeN、α−Fe、酸化鉄、非磁性酸化物、樹脂等を含んでいても良い。窒化鉄磁石を構成する窒化鉄磁性粒子の粒子径は、10nmから200nm程度であり、窒化鉄磁石としても原料である窒化鉄磁性粒子の粒子径を維持している。
【0012】
本実施形態に係る窒化鉄磁石は、最大磁気エネルギー積(BH)maxが3MGOe以上であることが好ましい。より好ましくは、最大磁気エネルギー積が3.5MGOe以上ある。また、機械的強度の指標として、曲げ強度が30MPa以上であることが好ましい。より好ましくは、曲げ強度が40MPa以上、更に好ましくは、50MPa以上である。
【0013】
本実施形態に係る窒化鉄磁石は、Fe16が主成分である窒化鉄磁石であって、窒化鉄磁石中の窒化鉄磁性粒子間にSnまたはSn合金を、窒化鉄磁石重量に対して1重量%以上30重量%以下含んでいる。SnまたはSn合金含有量として、1重量%未満の含有量では十分な緻密化を行なうことができず、十分な機械的強度を得ることができない。一方、SnまたはSn合金含有量が30重量%を超えると、最大エネルギー積が低下してしまい、満足な磁気特性を得ることができない。
【0014】
前記Sn合金としては、Snと、Cu、Ag、Zn、Bi、SbやIn等の合金を使用することができる。単体での一般的な低融点金属としては、Sn以外にもZn、Ga、In、BiやPbなどが挙げられる。ただし、Fe16からなる窒化鉄磁石に用いる場合、これらの低融点金属では融点を下げる効果が不十分であり、価格や環境への影響の観点からも好ましくない。
【0015】
次に、本実施形態に係る窒化鉄磁石の好適な製造法について述べる。
【0016】
本実施形態に係る窒化鉄磁性粒子は、酸化鉄を原料として用いて還元処理を行い、続いて窒化処理を行って得ることができる。
【0017】
原料である酸化鉄は、特に限定されないが、マグネタイト、γ−Fe、α−Fe、α−FeOOH、β−FeOOH、γ−FeOOH、FeOなどが挙げられる。
【0018】
原料である酸化鉄の合成方法は、特に限定されないが、共沈法、空気酸化法、水熱合成法、気相法などが挙げられる。
【0019】
本実施形態においては、必要により、還元処理によって粒子同士が焼結することを抑制するために原料である酸化鉄の表面をSi等の化合物で被覆してもよい。
【0020】
表面をSiで被覆された原料酸化鉄は、酸化鉄粒子を分散して得られる水懸濁液のpHを調整した後、Si化合物を添加して混合攪拌することにより、又は、必要により、混合攪拌後にpH値を調整し、その後、水洗、乾燥、粉砕することで得られる。
【0021】
Si化合物としては、オルトケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、コロイダルシリカ、シランカップリング剤等が使用できる。
【0022】
Si化合物の被覆量は、酸化鉄に対しSi換算で0.1重量%以上20重量%以下が好ましい。0.1重量%未満の場合には熱処理時に粒子間の焼結を抑制する効果が十分とは言い難い。20重量%を超える場合には、非磁性成分が増加することとなり好ましくない。より好ましい表面被覆量は0.15重量%以上15重量%以下、更により好ましくは0.2重量%以上10重量%以下である。
【0023】
還元処理の温度は200〜600℃が好ましい。還元処理の温度が200℃未満の場合には酸化鉄が十分に金属鉄に還元されない。還元処理の温度が600℃を超える場合には酸化鉄は十分に還元されるが、粒子間の焼結も進行することになり、好ましくない。より好ましい還元温度は250〜450℃である。
【0024】
還元処理の時間は特に限定されないが、1〜96時間が好ましい。96時間を超えると還元温度によっては焼結が進み後段の窒化処理が進みにくくなってしまう。1時間未満では十分な還元ができない場合が多い。より好ましくは2〜72時間である。還元処理の雰囲気は、水素雰囲気が好ましい。
【0025】
還元処理を行った後、窒化処理を行う。窒化処理の温度は100〜200℃である。窒化処理の温度が100℃未満の場合には窒化が十分に進行しない。窒化処理の温度が200℃を超える場合には、窒化が進行しすぎるため、Fe16は得られない。より好ましい窒化温度は120〜180℃である。
【0026】
窒化処理の時間は特に限定されないが、1〜48時間が好ましい。48時間を超えると窒化温度によってはFe16化合物相ではない異相の割合が多くなってしまう。1時間未満では十分な窒化ができない場合が多い。より好ましくは3〜24時間である。
【0027】
窒化処理の雰囲気は、NH雰囲気が望ましく、NHの他、N、Hなどを混合させてもよい。
【0028】
次に、本実施形態によって得られた窒化鉄磁性粒子を用いた、窒化鉄磁石の製造方法の一例について説明する。
【0029】
本実施形態によって得られた窒化鉄磁性粒子の表面に、SnまたはSn合金を窒化鉄磁石重量に対して1重量%以上30重量%以下被着させる。SnまたはSn合金の被着方法としては、蒸着、めっき、粉末混合、ペースト添加、メカニカルアロイ等が使用できる。
【0030】
次に、窒化鉄磁性粒子を金型に充填し、1〜30t/cmの圧力で加圧しながら、150〜250℃の温度で緻密化させる。加圧時間は1〜3600秒である。なお、成形方法としては、一軸加圧法またはCIPなどの等方加圧法のいずれを用いてもよい。加熱方法としては、ヒーター加熱、マイクロ波加熱、プラズマ加熱等が使用できる。
【0031】
窒化鉄磁性粒子を目的とする所定の形状に成形する際、磁場を印加しながら成形して、得られる成形体を一定方向に配向させるようにしてもよい。これにより、窒化鉄磁石が特定方向に配向するので、より磁性の強い異方性をもった窒化鉄磁石が得られる。印加する磁場の強度は20kOe以上であることが好ましい。
【0032】
成形して得られる窒化鉄磁石の形状は特に限定されるものではなく、用いる金型の形状に応じて、例えば平板状、柱状、断面形状がリング状等、変更することができる。また、得られた窒化鉄磁石は、その表面上に酸化層や樹脂層等の劣化を防止するためにめっきや塗装を施してもよい。
【0033】
以上、本実施形態に係る窒化鉄磁石及びその製造法について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0034】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明をさらに具体的に説明する。
【0035】
(実施例1)
<窒化鉄磁性粒子の作製工程>
Sigma−Aldrich社製の酸化鉄γ−Fe(粒子径30nm)を用い、熱処理炉にて水素ガス2L/min、350℃、50時間の条件で還元し、続いて、アンモニアガスを0.1L/min流しながら、160℃で12時間窒化処理を行うことにより窒化鉄磁性粒子を得た。
【0036】
<Sn被着工程>
得られた窒化鉄磁性粒子に対し、真空蒸着装置を用いてSnを被着させた。真空度は1×10−4Paとし、被着させる重量は、蒸着時間によって調節した。
【0037】
<窒化鉄磁石の作製工程>
得られたSn被着窒化鉄磁性粒子を、90mm×12mmの試料形状の金型に充填し、25kOeの横磁場を印加して20t/cmの圧力で油圧プレス成形をおこなった。この加圧成形の間に、窒素雰囲気にて試料の最高到達温度が200℃となる条件にて緻密化処理を施した。以上の工程により、実施例1の窒化鉄磁石を得た。
【0038】
<曲げ強度試験>
窒化鉄磁石の曲げ強度は、窒化鉄磁石を80×10×4mmのサイズに加工し、JIS K7171規格に準じて曲げ強度試験機を用いて測定した。測定試料5点の平均値を曲げ強度とし、測定には、島津製作所製の万能試験機(AGS)を用いた。結果を表1に示す。
【0039】
<磁気特性評価>
窒化鉄磁石の磁気特性をBHトレーサーにより評価した。磁気特性として、最大エネルギー積を、測定試料5点の平均値により算出した。測定には、玉川製作所製のBHトレーサー(TM−BH25)を用いた。結果を表1に示す。
<添加金属の含有量測定>
窒化鉄磁石重量に対する添加金属の含有量を島津製作所製のICP分析装置(ICPS−8100CL)によって測定した。測定回数2回の平均値を算出し、結果を表1に示す。
【0040】
(実施例2〜10、比較例4、比較例5)
実施例1と同様に作製した窒化鉄磁性粒子に、表1に示す添加金属を所望の被着量となるように被着させることで、実施例2〜10および比較例4、比較例5の窒化鉄磁石を得た。
【0041】
(比較例1〜3)
Sn被着工程がない以外は、実施例1と同様の作製方法で比較例1の窒化鉄磁石を得た。また、Sn被着工程にて、Sn被着量を表1に示す量とすること以外は実施例1と同様の作製方法で比較例2および3の窒化鉄磁石を得た。
【0042】
実施例1と同様の方法で、実施例2〜10及び比較例1〜5の各窒化鉄磁石の曲げ強度試験、磁気特性評価、添加金属の含有量を測定した。曲げ強度、磁気特性評価および添加金属の含有量の測定結果を表1に示す。
【0043】
曲げ強度は、30MPa以上、最大エネルギー積は3MGOe以上を良好とした。
【0044】
【表1】
【0045】
表1に示される結果から、比較例1および2の試料はSnが添加されていない、あるいは添加されていても含有量が不足しているために曲げ強度が不十分である。また、比較例3ではSnの含有量が過剰であるために最大エネルギー積が不十分である。さらに、比較例4および比較例5では、Zn、BiがSnと比較して融点を下げる効果が低いために十分な緻密化ができておらず、曲げ強度が不十分である。これらに対し、本発明では高い曲げ強度と、最大エネルギー積が良好な試料が得られていることがわかる。