【解決手段】巻芯部22とコア底面24cとを持つコア体20と、巻芯部22の周囲でらせん状の導電経路を形成するコイル部40と、を有するコイル装置10である。コア底面24cには、金属電極60が形成してあり、コイル部40の導電経路のワイヤ端41a,41b,42a,42bが金属電極60に接続してあり、金属電極60の表面の一部が導電性樹脂電極62で覆われている。
前記コア外面の一部が実装面を構成し、前記実装面には、前記金属電極が形成してあると共に、当該金属電極の表面の少なくとも一部を前記導電性樹脂電極が覆っており、前記導電性樹脂電極で覆われていない前記金属電極の表面に、前記リード部が接続してある請求項1〜3のいずれかに記載のコイル装置。
前記コア外面の一部が実装面を構成し、前記実装面には、前記金属電極が形成してあると共に、当該金属電極の表面の少なくとも一部を前記導電性樹脂電極が覆っており、前記導電性樹脂電極の上から食い込んで前記金属電極の表面に前記リード部が接続してある請求項1〜3のいずれかに記載のコイル装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、耐熱ストレスおよび耐衝撃特性に優れるコイル装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るコイル装置は、
巻芯部とコア外面とを持つコア体と、
前記巻芯部の周囲でらせん状の導電経路を形成するコイル部と、を有するコイル装置であって、
前記コア外面には、金属電極が形成してあり、
前記コイル部の導電経路のリード部が前記金属電極に接続してあり、
前記金属電極の表面の少なくとも一部が導電性樹脂電極で覆われていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るコイル装置では、金属電極の表面の少なくとも一部が導電性樹脂電極で覆われていることから、その導電性樹脂電極を介してコイル装置を基板などに実装することができる。そのため、コイル装置を基板などに実装させた状態で、熱ストレスや衝撃などを受けたとしても、導電性樹脂電極が、コイル装置と基板との間での緩衝層となり、熱ストレスや衝撃に基づく応力を緩和する。その結果、電極の剥離や破損が少なくなると共に、コア体の破損などが生じ難くなる。すなわち、本発明のコイル装置では、耐熱ストレスおよび耐衝撃特性が向上する。そのため、本発明のコイル装置は、−55〜150°Cの環境温度範囲でも使用可能であると共に、常に振動が加わるなどの特に厳しい環境下での使用にも耐えることができ、車載部品としても好適に使用することができる。
【0008】
また、リード部は、金属電極の表面に熱圧着などにより接続することができる。リード部が接続される位置で、金属電極の表面の一部が導電性樹脂電極で覆われていたとしても、リード部が金属電極の表面に熱圧着される際に、導電性樹脂電極の樹脂部分は熱で溶けると共に熱圧着時の押し圧力で押しのけられる。そのため、リード部は、金属電極の表面に直接に接続(電気的および機械的)することができる。
【0009】
熱圧着によりリード部は潰されて金属電極の表面に接続されるが、その部分には、ハンダなどの接合部材(以下、「ハンダなど」とも言う)が付着しにくい。しかしながら、リード部が接続されない導電性樹脂電極の表面には、ハンダなどの接合部材が容易に付着して基板などにコイル装置を実装することができる。
【0010】
前記金属電極の表面には、第1被膜が形成してあってもよい。第1被膜を形成しなくとも、金属電極と導電性樹脂電極との密着性は良好であるが、金属電極の表面に第1被膜が形成してあることで、金属電極と導電性樹脂電極との密着性がさらに向上する。その第1被膜としては、Ni,Ag,Cu,Auなどの金属(合金含む)膜が好ましい。第1被膜は、多層膜でも良い。
【0011】
前記導電性樹脂電極の表面には、第2被膜が形成してあってもよい。導電性樹脂電極の表面に第2被膜が形成してあることで、ハンダなどとの濡れ性が向上し、ハンダによる実装強度が向上する。その第2被膜としては、Au,Sn、Ni−Snなどの金属(合金含む)メッキ膜が好ましい。第2被膜は、多層膜でも良く、最外層には、ハンダとの濡れ性に優れたSnメッキ膜などが形成してあってもよい。
【0012】
前記コア外面の一部が実装面を構成し、前記実装面には、前記金属電極が形成してあると共に、当該金属電極の表面の少なくとも一部を前記導電性樹脂電極が覆っており、前記導電性樹脂電極で覆われていない前記金属電極の表面に、前記リード部が接続してあってもよい。実装面に位置する金属電極の表面にリード部が接続してあると、リード部が接続してある位置で、ハンダなどとの濡れ性は低下するが、実装面に位置する導電性樹脂電極が、ハンダなどの接合部材と良好に接続する。
【0013】
前記実装面には、段差状凸部と段差状凹部とが隣接して形成してあってもよく、
前記段差状凸部と段差状凹部とに連続して前記金属電極が形成してあってもよい。好ましくは前記段差状凹部に位置する前記金属電極の表面に前記リード部が接続してある。また好ましくは、前記段差状凸部に位置する前記金属電極の表面が前記導電性樹脂電極で覆われている。
【0014】
このように構成することで、コイル装置を実装するためのハンダなどの接合部材は、段差状凹部には入り込み難くなり、段差状凸部の表面に形成してある導電性樹脂電極に確実に接続される。その結果、コイル装置は、確実に導電性樹脂電極を介して基板などに実装されることから、応力緩和機能が向上する。
【0015】
前記コア外面の一部が実装面を構成し、前記実装面には、前記金属電極が形成してあると共に、当該金属電極の表面の少なくとも一部を前記導電性樹脂電極が覆っており、前記導電性樹脂電極の上から食い込んで前記金属電極の表面に、前記リード部が接続してあってもよい。導電性樹脂電極の上から熱圧着方式でリード部を接続することでも、リード部が導電性樹脂電極の内部に食い込んで、金属電極の表面に良好に接続できることが本発明者等により確認できた。
【0016】
前記実装面には、段差状凸部と段差状凹部とが隣接して形成してあってもよく、
前記段差状凸部と段差状凹部とに連続して前記金属電極が形成してあってもよい。また、前記段差状凸部と段差状凹部とに連続して前記金属電極の表面が前記導電性樹脂電極で覆われており、
前記段差状凹部に位置する前記導電性樹脂電極の上から食い込んで前記金属電極の表面に前記リード部が接続してあってもよい。
【0017】
このように構成することで、コイル装置を実装するためのハンダなどの接合部材は、段差状凹部には入り込み難くなり、段差状凸部の表面に形成してある導電性樹脂電極に確実に接続される。その結果、コイル装置は、確実に導電性樹脂電極を介して基板などに実装されることから、応力緩和機能が向上する。また、導電性樹脂電極の上から熱圧着方式でリード部を接続することでも、リード部が導電性樹脂電極の内部に食い込んで、金属電極の表面に良好に接続できることが本発明者等により確認できた。
【0018】
前記コア体が、前記巻芯部の巻軸方向の端部に形成してある鍔部を有してもよく、前記鍔部に前記コア外面が形成してあってもよい。すなわち、コア体は、ドラムコアであってもよい。なお、コア体の形状や構造は、ドラムコアに限らず、その他のコアであっても良く、内部にコイル部が埋設された圧粉成形コアであってもよい。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0021】
第1実施形態
図1に示すように、本発明の一実施形態に係るコイル装置10は、ドラム型コア(コア体)20と、板コア(コア体)30と、ドラムコア20の巻芯部22に巻回されたコイル部40を有する。なお、コイル装置10の説明では、コイル装置10を実装する実装面と平行な面内にありドラムコア20の巻芯部22の巻軸と平行な方向をX軸、X軸と同じく実装面と平行な面内にありX軸と垂直な方向をY軸方向、実装面の法線方向をZ軸方向とする。
【0022】
コイル装置10は、その外形寸法が、たとえば(X軸方向長さ2.0〜7.0mm×Z軸方向高さ1.0〜5.0mm×Y軸方向幅1.0〜6.0mm)であるが、コイル装置10のサイズはこれに限定されない。
【0023】
図4に示すように、ドラムコア20は、X軸方向に巻軸を持ちY軸方向に細長い長方形状の断面を持つ巻芯部22と、巻芯部22のX軸方向の両端に備えられる一対の第1鍔部24および第2鍔部25と、を有する。なお、巻芯部22の横断面形状は、本実施形態では略矩形であるが、円形でも良く、その断面形状は特に限定されず、六角形などの多角形や楕円形でもよい。
【0024】
第1鍔部24および第2鍔部25のそれぞれの外形状は、本実施形態では、Y軸方向に細長い略直方体であり、これらの鍔部24,25は、X軸方向に関して所定の間隔を空けて、互いに略平行になるように配置されている。巻芯部22は、一対の鍔部24,22bにおいて互いに向かい合うそれぞれの面の略中央部に接続している。
【0025】
第1鍔部24および第2鍔部25は、それぞれコア外面としての外端面24a,25aを有する。これらの外端面24a,25aは、X軸に略垂直な面を有し、それぞれX軸の外側を向いている。各第1鍔部24および第2鍔部25は、それぞれコア外面としての内端面24b,25bを有する。これらの内端面24b,25bは、X軸に略垂直な面を有し、それぞれX軸の内側(巻芯部22の方向)を向いている。
【0026】
また、第1鍔部24および第2鍔部25は、それぞれコア外面としての底面24c,25cを有する。これらの底面24c,25cは、Z軸に略垂直な面を有し、それぞれZ軸の下側を向いており、実装面を構成している。各第1鍔部24および第2鍔部25は、それぞれコア外面としての上面24d,25dを有する。これらの上面24c,25cは、Z軸に略垂直な面を有し、それぞれZ軸の上側(反実装面)を向いている。
【0027】
さらに、第1鍔部24および第2鍔部25は、それぞれコア外面としての側面24e,25eを有する。これらの側面24e,25eは、Y軸に略垂直な面を有し、それぞれY軸の外側を向いている。
【0028】
巻芯部22の外周には、一対のワイヤ41,42がらせん状の導電経路を形成するように巻回してあり、コイル部40を構成している。ワイヤ41,42は、たとえば被覆導線で構成してあり、良導体からなる芯材を絶縁性の被覆膜で覆った構成を有している。本実
施形態では、各ワイヤ41,42における導体部分の横断面積は同一であるが、異なって
いても良い。
【0029】
図3に示すように、ドラムコア20の第1鍔部24には、端子電極51および52がY軸方向に沿って所定間隔で具備してある。また、第2鍔部25には、端子電極53および54がY軸方向に沿って所定間隔で具備してある。各端子電極51〜54は、金属電極60と、導電性樹脂電極62とから構成してある。
【0030】
端子電極51および52は、外端面24aのZ軸方向下部から実装面である底面24cにわたり連続して略L字形状に形成してある。端子電極51および52では、金属電極60は、外端面24aのZ軸方向下部から実装面である底面24cにわたり連続して略L字形状に形成してあり、底面24cでは、底面24cのX軸方向の略全長にわたり形成してある。
【0031】
端子電極51および52の外端面24aでは、導電性樹脂電極62は、金属電極60の外表面をほとんど被覆しており、底面24cでは、
図3に示すように、金属電極60の外表面を、完全には被覆せずに、非被覆部分60aを残すように被覆している。底面24cに形成される導電性樹脂電極62と外端面24aに形成される導電性樹脂電極62とは連続している。端子電極53および54は、鍔部24が鍔部25に置き換わる以外は、端子電極51および52と同様な説明になるので、その説明は一部省略する。
【0032】
底面24c(底面25cも同様/以下同様)において、非被覆部分60aのX軸方向の長さx0は、ワイヤ41,42のワイヤ端(リード部)41a,42a(41b,42bも同様/以下同じ)が金属電極の表面に接続するX軸方向長さx1などに応じて決定される。好ましくはx1/x0は、0.3〜2.0、さらに好ましくは0.6〜1.2である。なお、
図6Aに示すように、x1/x0は、1以上であっても良い。非被覆部分60aのX軸方向の長さx0の最小値は、0.1mm以上であり、x0の最大値は、底面24cにおける金属電極60のX軸方向幅x2との関係で、x0/x2が0.3〜0.8となるように決定される。
【0033】
なお、導電性樹脂電極62と非被覆部分60aとの境界は、必ずしもY軸に沿った直線である必要はなく、斜めでも良く、X軸方向に沿ってワイヤ端41a,42aを避けるような凹状の直線または曲線でも良く、ワイヤ端41a,42aに重複するような凸状の直線または曲線でもよい。また、ワイヤ端41a,42aは、図示例では、X軸に平行な直線状に配列してあるが、X軸に対して傾斜していてもよく、直線状で無く曲線状でも良い。
【0034】
金属電極60は、Ag,Cu,Niなどの金属(これらの合金含む)で形成してある。金属電極60は、これらの金属を含む導電性ペーストを焼付け処理することにより金属膜として形成することができる。あるいは、金属電極60は、金属板、金属箔、金属シートなどのシート状金属部材でもよく、シート状金属部材が端子電極51または52に接着されていてもよい。金属電極60は、その他の成膜手段、たとえばスパッタリングなどにより端子電極51または52に成膜されていてもよい。金属電極60の厚みは、特に限定されないが、好ましくは1〜100μmである。
【0035】
金属電極60の表面には、第1被膜(図示省略)が成膜してあってもよい。第1被膜としては、Ni,Ag,Cu,Auなどの金属(合金含む)膜が好ましい。第1被膜は、多層膜でも良い。第1被膜は、たとえばメッキ、あるいはスパッタリングなどにより、金属電極60の表面に成膜される。第1被膜の金属種は、樹脂との密着性を考慮して選択してもよい。第1被膜の厚みは、好ましくは0.1〜10μmである。
【0036】
第1被膜を形成しなくとも、金属電極60と導電性樹脂電極62との密着性は良好であるが、金属電極60の表面に第1被膜が形成してあることで、金属電極60と導電性樹脂電極62との密着性がさらに向上する。
【0037】
導電性樹脂電極62は、樹脂中に導電性フィラーが分散してある電極である。樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂などが用いられる。導電性フィラーを構成する金属としては、Ag,Cu,Au,Niなどの金属(混合や合金含む)が用いられる。
【0038】
導電性樹脂電極62には、好ましくは樹脂が50〜90重量%含まれている。一方、金属電極60には、樹脂が実質的に含まれていない。なお、実質的に含まれていないとは、樹脂の含有量が3重量%以下であることを意味する。導電性樹脂電極62厚みは、好ましくは1〜100μm、さらに好ましくは10〜100μmである。
【0039】
金属電極60の表面に、所定範囲内で導電性樹脂電極62を形成するための方法としては、特に限定されないが、樹脂を含む導電性ペーストを用いた塗布・乾燥法、塗布・硬化(紫外線硬化、熱硬化など)法などが例示される。なお、塗布に際して、金属電極60の表面における非被覆部分60aをマスキングしてもよい。
【0040】
導電性樹脂電極62の表面には、第2被膜(図示省略)が形成してあってもよい。第2被膜としては、Au,Sn、Ni−Snなどの金属(合金含む)膜が好ましい。第2被膜は、多層膜でも良く、最外層には、ハンダとの濡れ性に優れたSn膜などが形成してあってもよい。第2被膜は、導電性樹脂電極62の表面にメッキ、スパッタリングなどにより成膜することができる。また、第2被膜は、金属電極60の表面にも広がって形成されていても良い。
【0041】
なお、第2被膜の最外層に、Niが存在することで、Snが樹脂電極中に移行することを抑制することができる。また、導電性樹脂電極が導電ペーストで基板などに実装する場合には、第2被膜の最外層にはAuメッキ膜が形成してあっても良い。
【0042】
図3に示すように、ワイヤ41,42のワイヤ端41a,41b,41a,41bは、それぞれドラムコア20の底面に位置して金属電極60における非被覆部分60aに接続(電気的および機械的に)してある。ワイヤ端41a,41b,41a,41bを金属電極60の表面に直接に接続するための方法としては、特に限定されないが、熱圧着、レーザ溶接などが例示される。
【0043】
熱圧着によりリード部としてのワイヤ端41a,41b,41a,41bを金属電極60の表面に接続するには、ワイヤ端41a,41b,41a,41bを潰すことができる程度の圧力を加えつつ、350〜700°C、好ましくは400〜500°Cの熱を加えればよい。金属電極60の表面に第1被膜が形成してある場合には、ワイヤ端41a,41b,41a,41bは、メッキ膜などで構成してある第1被膜に対して継線される。
【0044】
図1および
図2に示すように、本実施形態では、ドラムコア20の実装面である底面24cおよび25cとはZ軸方向に沿って反対側の上面24d,25dには、板コア30が接着剤50、あるいはその他の手段で連結してある。板コア30は、
図1に示すように、ドラムコア20とX軸およびY軸方向の寸法が略一致する略矩形状の板状コアである。板コア30のZ軸方向の厚みは、特に限定されないが、たとえば鍔部24,25のZ軸方向厚みの1/5〜1/1程度の厚みである。
【0045】
コイル装置10の製造では、まず、端子電極51〜54を設置したドラム型のドラムコア20と板コア30とワイヤ41および42を準備する。ドラムコア20は、および板コア30は、それぞれ別々の磁性体部材で構成されるが、これらの材質は、同じであることが好ましいが、別々の磁性体材料で構成されていても良い。
【0046】
磁性体材料としては、たとえば、比較的透磁率の高い磁性材料、たとえばNi−Zn系フェライトや、Mn−Zn系フェライト、あるいは金属磁性体などが例示され、これらの磁性材料の粉体を、成型および焼結することにより、ドラムコア20および板コア30が作製される。あるいは、ドラムコア20および板コア30は、それぞれフェライト粉あるいは金属磁性体粉と樹脂との圧粉成形により形成してもよい。ドラムコア20には、巻芯部22と鍔部24,25とが一体に成形される。また、ドラムコア20および板コア30の表面には、ガラスコートあるいは樹脂コートが施してあってもよい。
【0047】
端子電極51〜54の金属電極60は、接着等によりドラムコア20の鍔部24,25に固定されてもよく、ドラムコア20に印刷・メッキ等により導体膜を形成し、その導体膜を焼き付けることにより、鍔部24,25に設けられてもよい。あるいは、金属電極60は、スパッタリングや蒸着などにより形成されても良い。金属電極60の表面に所定パターンで形成される導電性樹脂電極62の成膜方法は、前述したとおりである。
【0048】
ワイヤ41および42としては、たとえば、銅(Cu)などの良導体からなる芯材を、イミド変成ポリウレタンなどからなる絶縁材で覆い、さらに最表面をポリエステルなどの薄い樹脂膜で覆ったものを用いることができる。準備された端子電極51〜54を設置したドラムコア20およびワイヤ41および42は、巻線機にセットされ、ワイヤ41および42が、所定の順序でドラムコア20の巻芯部22a,22bに巻回される。
【0049】
本実施形態に係るコイル装置10では、金属電極60の表面の一部が導電性樹脂電極62で覆われていることから、
図4に示すように、導電性樹脂電極62に接合部材としてのハンダ72を付着させることでコイル装置10を回路基板70などに実装することができる。そのため、コイル装置10を回路基板70などに実装させた状態で、熱ストレスや衝撃などを受けたとしても、導電性樹脂電極62が、コイル装置10と基板70との間での緩衝層となり、熱ストレスや衝撃に基づく応力を緩和する。
【0050】
その結果、端子電極51〜54の剥離や破損が少なくなると共に、ドラムコア(コア体)20の破損などが生じ難くなる。すなわち、本実施形態のコイル装置10では、耐熱ストレスおよび耐衝撃特性が向上する。そのため、本実施形態のコイル装置10は、−55〜150°Cの環境温度範囲でも使用可能であると共に、常に振動が加わるなどの特に厳しい環境下での使用にも耐えることができ、車載部品としても好適に使用することができる。
【0051】
従来のコイル装置では、1000サイクルの熱サイクルで端子電極にクラックが発生していたが、本実施形態のコイル装置では、1000サイクルの熱サイクルにおいても、端子電極にはクラックなどが生じない。
【0052】
また、リード部としてのワイヤ端41a,41b,42a,42bは、金属電極60の表面に熱圧着などにより接続することができる。
図5Aおよび
図6Aに示すように、ワイヤ端41a,41b,42a,42bが接続される位置で、金属電極60の表面の一部が導電性樹脂電極62で覆われていたとしても、ワイヤ端41a,41b,42a,42bが金属電極60の表面に熱圧着される際に、導電性樹脂電極の樹脂部分は熱で溶けると共に熱圧着時の押し圧力で押しのけられる。
【0053】
すなわち、ワイヤ端41a,41b,42a,42bが導電性樹脂電極62に重なる位置では、導電性樹脂電極62には、凹部(押し逃がし部)62aが形成され、その部分においても、ワイヤ端41a,41b,42a,42bは金属電極60の表面に直接に接続される。
【0054】
なお、熱圧着によりワイヤ端41a,41b,42a,42bは潰されて金属電極60の表面に接続されるが、その部分には、ハンダなどの接合部材(以下、「ハンダなど」とも言う)が付着しにくい。しかしながら、ワイヤ端41a,41b,42a,42bが接続されない導電性樹脂電極62の表面には、ハンダなどの接合部材が容易に付着して基板70などにコイル装置を実装することができる。ハンダの溶融温度は、約260°Cであり、導電性樹脂電極62の耐熱温度は、それよりも高く、300°C程度までの耐熱性がある。
【0055】
導電性樹脂電極62は熱(300°C超)に弱く、ワイヤ端41a,41b,42a,42bの継線を樹脂電極62のみで行う場合には、熱圧着時の熱(400°C以上)で電極62が破壊され、品質が安定しない。本実施形態では、ワイヤ端41a,41b,42a,42bの継線を金属電極60で行うことにより、安定した品質が得られる。
【0056】
本実施形態では、コア外面の一部である底面24cおよび25cが実装面を構成し、底面24c,25cには、金属電極60が形成してあると共に、当該金属電極60の表面の一部を導電性樹脂電極62が覆っている。導電性樹脂電極62で覆われていない金属電極60の表面に、ワイヤ端41a,41b,42a,42bが接続してある。
【0057】
実装面(底面24c,25c)に位置する金属電極60の表面にワイヤ端41a,41b,42a,42bが接続してあると、これらのワイヤ端が接続してある位置で、ハンダ72などとの濡れ性は低下する。しかしながら、実装面に位置する導電性樹脂電極62が、ハンダ72などの接合部材と良好に接続する。なお、ハンダ72などの接合部材は、ワイヤ端が接続してある部分以外の金属電極60の表面とも接続してあっても良い(
図4および
図5Aにおいて二点鎖線)。
【0058】
本実施形態のコイル装置10は、たとえばパルストランス、コモンモードフィルタ、チョークコイルなどの用途に好適に用いることができる。
【0059】
なお、
図5Aおよび
図6Aに示す実施形態では、金属電極60の表面に、導電性樹脂電極62で覆われる部分と、導電等性樹脂電極62で覆われていない部分とを形成し、各ワイヤ端41a,41b,42a,42bは、導電等性樹脂電極62で覆われていない金属電極60の表面に主として接続してある。すなわち、
図5Aおよび
図6Aに示す実施形態では、導電等性樹脂電極62で覆われていない金属電極60のX軸方向長さx0の最小値は、0.1mm以上であり、金属電極60のY軸方向の幅y1は、導電性樹脂電極62のY軸方向の幅y2よりも大きい。
【0060】
本発明のコイル装置は、これに限定されず、たとえば
図5Bおよび
図6Bに示すように、金属電極60のY軸方向の幅y1は、導電性樹脂電極62のY軸方向の幅y2と同等または小さくてもよい。また、底面24c(25cも同様)における金属電極60のX軸方向幅x2よりも、底面24c(25cも同様)における導電性樹脂電極62のX軸方向幅が、余裕幅x3の分だけ大きくても良い。余裕幅x3は、たとえば−0.1mm以上、あるいは0以上でもよく、特に限定されない。なお、−0.1mmとは、
図6Aに示す寸法x0の最小値であり、金属電極60の表面が多少露出していてもよいという意味である。
【0061】
図5Bおよび
図6Bに示す実施形態では、底面24c(25cも同様)における金属電極60の表面のほとんど全てを導電性樹脂電62極が覆っており、導電性樹脂電極62の上から、X軸方向の長さx1のワイヤ端41a,41b,42a,42bが熱圧着などにより食い込んで金属電極60の表面に接続してある。すなわち、ワイヤ端41a,41b,42a,42bが導電性樹脂電極62に重なる位置では、導電性樹脂電極62には、凹部(押し逃がし部)62aが形成され、その部分においても、ワイヤ端41a,41b,42a,42bは金属電極60の表面に直接に良好に接続できることが本発明者等により確認できた。
【0062】
なお、ワイヤ端41a,41b,42a,42bを熱圧着などにより導電性樹脂電極62の上から食い込ませて金属電極60の表面に接続させた後に、ワイヤ端41a,41b,42a,42bおよび導電性樹脂電極62の表面にメッキ膜を形成してもよい。
【0063】
第2実施形態
図7に示すように、本発明の第2実施例に係るコイル装置10aは、以下の点が相違するのみであり、その他の構成は、前述した第1実施形態と同様であり、同様な作用効果を奏し、重複する部分の説明は省略する。
【0064】
この実施形態では、
図4および
図5Aに示すドラムコア20の底面24cには、X軸方向の外側から段差状凸部24c1と段差状凹部24c2とが隣接して形成してある。また底面25cには、X軸方向の外側から段差状凸部25c1と段差状凹部25c2とが隣接して形成してある。
【0065】
本実施形態では、段差状凹部24c2,25c2は、ドラムコア20の底面24c,25cにおいて、X軸方向の内側(巻芯部22の近い方)に形成してあり、段差状凸部24c1,25c1に対して、Z軸の上方に凹んでいる。段差状凹部24c2,25c2と段差状凸部24c1,25c1との間のZ軸方向の段差高さは、特に限定されないが、好ましくは0.05〜0.2mmである。
【0066】
本実施形態では、段差状凹部24c2,25c2に位置する金属電極60の表面にワイヤ端41a,41b,42a,42bが接続してある。段差状凸部24c1,25c1に位置する金属電極60の表面が導電性樹脂電極62で覆われている。
【0067】
このように構成することで、コイル装置10aを実装するためのハンダ72などの接合部材は、段差状凹部24c2,25c2には入り込み難くなり、段差状凸部24c1,25c1の表面に形成してある導電性樹脂電極62に確実に接続される。その結果、コイル装置10aは、確実に導電性樹脂電極72を介して基板70などに実装されることから、応力緩和機能が向上する。その他の構成および作用効果は、第1実施形態と同様である。
【0068】
なお、
図7に示す実施形態では、段差状凸部24c1,25c1に位置する金属電極60の表面のみが導電性樹脂電極62で覆われているが、段差状凹部24c2,25c2に位置する金属電極60の表面も、導電性樹脂電極62で覆われていてもよい(図示省略)。その場合には、リード部としてのワイヤ端41a,41b,42a,42bは、導電性樹脂電極62の上から熱圧着などにより押し付けられ、導電性樹脂電極62の内部に食い込み、金属電極60の表面に良好に接続できることが本発明者等により確認されている。
【0069】
第3実施形態
図8に示すように、本発明の第3実施例に係るコイル装置10bは、以下の点が相違するのみであり、その他の構成は、前述した第1実施形態または第2実施形態と同様であり、同様な作用効果を奏し、重複する部分の説明は省略する。この実施形態では、
図8に示すように、端子電極51〜54の構成が、前述した実施形態と異なると共に、前述した実施形態の板コア30を有さない。
【0070】
本実施形態では、Y軸方向に離れている端子電極51および52の各金属電極60が、鍔部24の底面24cから外側端面24aを通り、上面24dにまで連続して延びている。そして上面24cに位置する金属電極60の表面に、ワイヤ端41a,42aがそれぞれ直接に接続してある。
【0071】
また、底面24cに位置する金属電極60の表面には、略全面で導電性樹脂電極62が覆っている。導電性樹脂電極62は、外端面24aのZ軸方向の下部にまで延びているが、上面24dに位置する金属電極60の表面は被覆していない。
【0072】
また同様に、Y軸方向に離れている端子電極53および54の各金属電極60が、鍔部25の底面25cから外側端面25aを通り、上面25dにまで連続して延びている。そして上面25dに位置する金属電極60の表面に、ワイヤ端41b,42bがそれぞれ直接に接続してある。
【0073】
また、底面25cに位置する金属電極60の表面には、略全面で導電性樹脂電極62が覆っている。導電性樹脂電極62は、外端面25aのZ軸方向の下部にまで延びているが、上面25dに位置する金属電極60の表面は被覆していない。
【0074】
本実施形態では、鍔部24および25における底面24cのX軸方向全長にわたり、導電性樹脂電極62を形成することができ、その部分に、ハンダなどの接合部材が付着する。その他の構成と作用効果は、第1実施形態または第2実施形態と同様である。
【0075】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。たとえば、コア体の形状や構造は、ドラムコアに限らず、その他のコアであっても良く、内部にコイル部が埋設された圧粉成形コアであってもよい。その場合などには、らせん状の導電経路は、ワイヤに形成することなくリードフレーム状の板材、またはその組合せに形成してもよく、リード部は、らせん状の導電経路に接続してある別部材で構成してもよい。なお、上述した実施形態では、らせん状の導電経路は、ワイヤにより構成され、リード部は、ワイヤ端によりワイヤと一体に構成してある。
【0076】
また、ハンダ以外の接合部材としては、導電性接着剤などが例示される。