【解決手段】放射キャビティー15を有する放射キャビティー基板10と、給電導波路25を有する給電導波路基板20とが積層された積層構造30を有し、放射キャビティー15及び給電導波路25は、互いに対向する位置に開口16,26を有し、放射キャビティー基板10は、誘電体基板11と、誘電体基板11の両面の導体層12,13と、放射キャビティー15の面内方向の周囲を囲むポスト壁14とを備え、給電導波路基板20は、ガラス基板21と、ガラス基板21の両面の導体層22,23と、給電導波路25の面内方向の周囲を囲むポスト壁24とを備える。
前記放射キャビティー基板の前記開口と、前記給電導波路基板の前記開口とが、それぞれ異なる誘電体材料で充填されていることを特徴とする請求項2に記載のアンテナ装置。
前記給電導波路のガラス基板がシリカガラス又は合成石英からなり、前記放射キャビティーの誘電体基板が前記ガラス基板の比誘電率の±1以内の比誘電率を有する樹脂材料からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
放射キャビティーの内部を構成する誘電体基板と、前記誘電体基板の両面の導体層と、前記放射キャビティーの面内方向の周囲を囲むポスト壁とを備え、前記両面の導体層のうち一方は放射開口面を有し、前記両面の導体層のうち他方は前記放射開口面に対向する開口を有する放射キャビティー基板を準備する工程と、
給電導波路の内部を構成するガラス基板と、前記ガラス基板の両面の導体層と、前記給電導波路の面内方向の周囲を囲むポスト壁とを備え、前記両面の導体層のうち一方は開口を有する給電導波路基板を準備する工程と、
前記放射キャビティー基板と、前記給電導波路基板とを、それぞれ前記開口が対向するように積層する工程と、
を有することを特徴とするアンテナ装置の製造方法。
前記放射キャビティー基板の前記開口と、前記給電導波路基板の前記開口とを、それぞれ誘電体材料で充填した後、前記放射キャビティー基板と、前記給電導波路基板とを、それぞれ前記開口が対向するように積層することを特徴とする請求項7に記載のアンテナ装置の製造方法。
前記放射キャビティー基板の前記開口と、前記給電導波路基板の前記開口とのいずれか一方に、前記放射キャビティー基板の前記開口及び前記給電導波路基板の前記開口を充填可能な誘電体材料を設けた後、前記放射キャビティー基板と、前記給電導波路基板とを、それぞれ前記開口が対向するように積層することを特徴とする請求項7に記載のアンテナ装置の製造方法。
前記給電導波路のガラス基板がシリカガラス又は合成石英からなり、前記放射キャビティーの誘電体基板が前記ガラス基板の比誘電率の±1以内の比誘電率を有する樹脂材料からなることを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項に記載のアンテナ装置の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の従来技術には、次の問題があった。
(1)空洞(開口部)を利用しているため、誘電体基板の穴あけ工程等が必要となり、工程が煩雑になる。
(2)複数の誘電体層を積層する工程が煩雑になる。
【0005】
本発明は、上記の問題点を解決すべく案出されたものであり、製造工程が簡便、低コストで、且つ広帯域な入力インピーダンス特性を実現し、大規模なアンテナアレーにも応用可能なアンテナ装置及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、放射キャビティーを有する放射キャビティー基板と、給電導波路を有する給電導波路基板とが積層された積層構造を有し、前記放射キャビティー及び前記給電導波路は、互いに対向する位置に開口を有し、前記放射キャビティー基板は、前記放射キャビティーの内部を構成する誘電体基板と、前記誘電体基板の両面の導体層と、前記放射キャビティーの面内方向の周囲を囲むポスト壁とを備え、前記給電導波路基板は、前記給電導波路の内部を構成するガラス基板と、前記ガラス基板の両面の導体層と、前記給電導波路の面内方向の周囲を囲むポスト壁とを備えることを特徴とするアンテナ装置を提供する。
【0007】
前記アンテナ装置において、前記放射キャビティー基板及び前記給電導波路基板の前記開口は、誘電体材料で充填されている構成を採用することも可能である。
前記アンテナ装置において、前記放射キャビティー基板の前記開口と、前記給電導波路基板の前記開口とが、それぞれ異なる誘電体材料で充填されている構成を採用することも可能である。
前記アンテナ装置において、前記放射キャビティー基板の前記開口と、前記給電導波路基板の前記開口とが、同一の誘電体材料で充填されている構成を採用することも可能である。
前記アンテナ装置において、前記給電導波路のガラス基板がシリカガラス又は合成石英からなり、前記放射キャビティーの誘電体基板が前記ガラス基板の比誘電率の±1以内の比誘電率を有する樹脂材料からなる構成を採用することも可能である。
【0008】
また、本発明は、放射キャビティーの内部を構成する誘電体基板と、前記誘電体基板の両面の導体層と、前記放射キャビティーの面内方向の周囲を囲むポスト壁とを備え、前記両面の導体層のうち一方は放射開口面を有し、前記両面の導体層のうち他方は前記放射開口面に対向する開口を有する放射キャビティー基板を準備する工程と、給電導波路の内部を構成するガラス基板と、前記ガラス基板の両面の導体層と、前記給電導波路の面内方向の周囲を囲むポスト壁とを備え、前記両面の導体層のうち一方は開口を有する給電導波路基板を準備する工程と、前記放射キャビティー基板と、前記給電導波路基板とを、それぞれ前記開口が対向するように積層する工程と、を有することを特徴とするアンテナ装置の製造方法を提供する。
【0009】
前記アンテナ装置の製造方法において、前記放射キャビティー基板及び前記給電導波路基板の前記開口を誘電体材料で充填する構成を採用することも可能である。
前記アンテナ装置の製造方法において、前記放射キャビティー基板の前記開口と、前記給電導波路基板の前記開口とを、それぞれ誘電体材料で充填した後、前記放射キャビティー基板と、前記給電導波路基板とを、それぞれ前記開口が対向するように積層する構成を採用することも可能である。
前記アンテナ装置の製造方法において、前記放射キャビティー基板の前記開口と、前記給電導波路基板の前記開口とのいずれか一方に、前記放射キャビティー基板の前記開口及び前記給電導波路基板の前記開口を充填可能な誘電体材料を設けた後、前記放射キャビティー基板と、前記給電導波路基板とを、それぞれ前記開口が対向するように積層する構成を採用することも可能である。
前記アンテナ装置の製造方法において、前記給電導波路のガラス基板がシリカガラス又は合成石英からなり、前記放射キャビティーの誘電体基板が前記ガラス基板の比誘電率の±1以内の比誘電率を有する樹脂材料からなる構成を採用することも可能である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、放射キャビティー基板と、給電導波路基板とを、互いに開口を対向させて積層させることにより、製造工程が簡便、低コストで、且つ広帯域な入力インピーダンス特性を実現することができ、大規模なアンテナアレーにも応用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、好適な実施形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
図1は、本実施形態のアンテナ装置を模式的に例示する断面図である。また、
図2は、
図1の断面構造を有するアンテナ装置の斜視図の一例である。
【0013】
本実施形態のアンテナ装置は、放射キャビティー基板10と、給電導波路基板20とが積層された積層構造30を有する。上部の放射キャビティー基板10には、放射キャビティー15が形成されている。また、下部の給電導波路基板20には、給電導波路25が形成されている。給電導波路25の上部には、放射キャビティー15が開口31を介して配置されている。
【0014】
放射キャビティー基板10は、誘電体基板11と、誘電体基板11の両面の導体層12,13と、放射キャビティー15の面内方向の周囲を囲むポスト壁14を備える。誘電体基板11としては、樹脂基板、ガラス基板、セラミック基板、樹脂−ガラス等の複合材料基板が挙げられる。導体層12,13は、金属箔等の導体から構成することができる。放射キャビティー15が誘電体基板11で構成(充填)されているため、従来技術のような空洞(開口部)が不要であり、空洞を形成するための穴あけ工程等を省略することができる。また、空洞が空気(比誘電率=1)で充填される場合と比べて、放射キャビティー15と給電導波路25との比誘電率の差を小さくすることができる。
【0015】
放射キャビティー基板10のポスト壁14は、誘電体基板11に埋設された導体から構成することができる。具体的には、誘電体基板11の厚さ方向を貫通するスルーホール(孔)の内面に導体を成膜し、又はスルーホールの内部に導体を充填して形成される貫通導体の列から、ポスト壁14を構成することができる。ポスト壁14の上下両端がそれぞれ導体層12,13に電気的に接続されることにより、放射キャビティー15の内部が導体層12,13及びポスト壁14に囲まれる。放射キャビティー15が基板の厚さ方向で単層の誘電体層から構成されることにより、放射キャビティー基板10の構造が単純になり、低コスト化に寄与できる。
【0016】
給電導波路基板20は、ガラス基板21と、ガラス基板21の両面の導体層22,23と、給電導波路25の面内方向の周囲を囲むポスト壁24を備える。給電導波路基板20の誘電体基板として、ガラス基板21を採用することにより、給電導波路25の損失を低減することができる。導体層22,23は、金属箔等の導体から構成することができる。ガラス基板21を構成するガラス材料の誘電正接は、例えば給電導波路25により伝送される電気信号の周波数において、10
−4台であることが好ましい。ガラス基板21の構成材料としては、例えば、シリカガラス、合成石英等が挙げられる。なお、
図2中、ポスト壁14と重なり合う箇所において、ポスト壁24の一部の図示は省略されている。
【0017】
給電導波路基板20のポスト壁24は、ガラス基板21に埋設された導体から構成することができる。具体的には、ガラス基板21の厚さ方向を貫通するスルーホール(孔)の内面に導体を成膜し、又はスルーホールの内部に導体を充填して形成される貫通導体の列から、ポスト壁24を構成することができる。ポスト壁24の上下両端がそれぞれ導体層22,23に電気的に接続されることにより、給電導波路25の内部が導体層22,23及びポスト壁24に囲まれる。給電導波路25が基板の厚さ方向で単層の誘電体層から構成されることにより、給電導波路基板20の構造が単純になり、低コスト化に寄与できる。
【0018】
導体層12,13,22,23及びポスト壁14,24を構成する導体は、電気抵抗の低い金属であることが好ましく、具体例としては、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、これらの1種以上を含む合金等が好ましい。これらの導体と誘電体基板11、ガラス基板21との密着性を高めるため、間に密着層としてチタン(Ti)やクロム(Cr)等の膜を設けてもよい。
ポスト壁14,24の貫通導体が形成されるスルーホール(孔)の断面形状は特に限定されず、円形孔、矩形孔、長孔、スリット孔等が挙げられる。ポスト壁14,24に沿った貫通導体の間隔は、電気信号を外部に漏洩しないように適宜設定される。
【0019】
給電導波路基板20の上部(放射キャビティー15側)の導体層22は、給電導波路25から電磁波(信号)を放射キャビティー15に伝搬させるための開口26を有する。給電導波路25の上流側には、給電ポート27が設けられている。給電ポート27に信号を伝搬させるための構造(図示せず)としては、例えば導体ピン、マイクロストリップ線路、導波管、ポスト壁導波路等を有してもよい。電気信号(電磁波)を給電ポート27から開口26まで伝搬させる際は、1つの給電ポート27から1つの開口26に連絡してもよく、1つの給電ポート27から2つ以上の開口26に連絡してもよい。給電導波路25は、1段階又は2段階以上の分岐構造(図示せず)を有してもよい。
【0020】
放射キャビティー基板10の下部(給電導波路25側)の導体層13は、給電導波路25の開口26に対向した開口16を有する。また、放射キャビティー基板10の上部(外部空間側)の導体層12は、開口16に対向した放射開口面17を有する。放射開口面17を有する放射キャビティー15により、開口面アンテナが構成される。このアンテナは、送信用、受信用いずれにも使用可能である。
放射開口面17の面積は、ポスト壁14で囲まれる放射キャビティー15の断面積と同等又はそれ以下であればよいが、放射開口面17の面積が開口16の面積よりも広いと、電磁波(信号)を外部空間に放射しやすく(又は外部空間から入射させやすく)なり、好ましい。
【0021】
各基板を積層した際、対向する放射キャビティー基板10の導体層13と給電導波路基板20の導体層22とが互いに接触してもよい。放射キャビティー基板10と給電導波路基板20の接合方法としては、例えば導体層13と導体層22との間に半田等の材料を介在させる方法、拡散接合等により導体層13と導体層22とを直接接合させる方法が挙げられる。これにより、導体層13と導体層22とを電気的に接続することができる。放射キャビティー基板10の導体層12,13及び給電導波路基板20の導体層22,23を接地する場合には、基板ごとに導体を接地してもよく、一方の基板を接地電位に、他方の基板を一方の基板に直列的に接続してもよい。
【0022】
放射キャビティー基板10は、例えばプリント基板(PCB)から構成することができる。放射キャビティー15を構成する誘電体基板11の比誘電率は、給電導波路25を構成するガラス基板21の比誘電率と近いことが好ましい。放射キャビティー15の誘電体基板11を構成する材料の比誘電率が、給電導波路25のガラス基板21を構成する材料の比誘電率に対して、例えば±1以内、±0.5以内などであることが好ましい。ガラスに近い誘電率を有する樹脂材料として、ポリフェニレンエーテル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂又はこれらの樹脂に無機フィラーを配合した組成物が挙げられる。具体例として、パナソニック社の商品名MEGTRON(登録商標)が挙げられる。
【0023】
本実施形態のアンテナ装置によれば、放射キャビティー基板10及び給電導波路基板20からなる基板計2層の積層構造30により、製造工程が簡便、低コストで、且つ広帯域な入力インピーダンス特性を実現することが可能である。
【0024】
給電導波路25がガラス基板21から構成されることにより、大規模なアンテナアレーシステムを構成する場合でも、給電ロスを極力抑えることができる。一方、放射キャビティー15を構成する誘電体基板11は、誘電正接が2×10
−2程度など、比較的損失の多き材料を用いても、アンテナの放射効率を90%超とすることができる。従って、給電導波路25には低損失な誘電体材料、放射キャビティー15には比較的損失が大きい低価格な誘電体材料を用いても、高性能で、構造が簡便、安価なアンテナ装置を実現することが可能である。
【0025】
図1に示す積層構造30においては、開口31が空気等の気体で充填されてもよいが、比誘電率が1より大きい誘電体材料が開口31に充填されてもよい。開口31を誘電体材料で充填する工程は、特に限定されないが、放射キャビティー基板10と、給電導波路基板20とを積層する際に、各基板の開口16,26の一方又は両方に誘電体材料を配置してもよい。
【0026】
第1の例として、
図3に、放射キャビティー基板10の開口16には誘電体材料18を充填し、給電導波路基板20の開口26には誘電体材料28を充填する例を示す。開口16,26及び誘電体材料18,28が対向するように、放射キャビティー基板10と、給電導波路基板20とを積層することにより、基板間の隙間40が閉じて、
図1と同様な積層構造30が得られる。放射キャビティー基板10側の誘電体材料18と、給電導波路基板20側の誘電体材料28とは、同一の材料でもよく、異なる材料でもよい。
【0027】
放射キャビティー基板10側の誘電体材料18としては、ソルダーレジスト等のレジスト材料を利用することが好ましい。なぜなら、放射キャビティー基板10をプリント基板の製造技術に基づいて製作する際に、レジスト材料を容易に利用することができ、誘電体材料18の準備及び充填工程を別途用意する必要がないためである。例えば、開口16を有する導体層13を形成する際に、開口16の位置に設けるレジスト材料を残して、誘電体材料18とすることもできる。
【0028】
給電導波路基板20側の誘電体材料28とは、樹脂材料等のパッシベーション材料を利用することが好ましい。なぜなら、給電導波路基板20をガラス基板21の加工技術に基づいて製作する際に、パッシベーション材料を容易に利用することができ、誘電体材料28の準備及び充填工程を別途用意する必要がないためである。パッシベーション材料としては、ポリイミド等の樹脂材料、酸化物等の無機材料が挙げられる。
【0029】
第2の例として、
図4には、放射キャビティー基板10の開口16に、導体層13より厚膜で、給電導波路基板20の開口26の充填も可能な誘電体材料32を充填する例を示す。開口16,26が対向するように、放射キャビティー基板10と、給電導波路基板20とを積層することにより、基板間の隙間40が閉じて、
図1と同様な積層構造30が得られる。
【0030】
なお、
図4では、導体層13より厚膜の誘電体材料32を放射キャビティー基板10の開口16に配置した例を示したが、これとは逆に、導体層22より厚膜の誘電体材料32を給電導波路基板20の開口26に配置することも可能である。いずれの場合も、放射キャビティー基板10の開口16と、給電導波路基板20の開口26とを、同一の材料で充填することができる。
また、別の例として、放射キャビティー基板10又は給電導波路基板20の一方に配置する誘電体材料32を、2種以上の誘電体材料から構成した後、放射キャビティー基板10と給電導波路基板20とを積層することも可能である。
【0031】
開口16,26,31を充填するための誘電体材料18,28,32は、比誘電率が1より大きい誘電体材料であることが好ましい。空気の比誘電率は約1(約1.000585)であるが、開口充填用の誘電体材料の比誘電率として、例えば1.5〜15程度が挙げられる。開口16,26,31に2種類又は3種類以上の誘電体材料が配置されてもよい。
【0032】
放射キャビティー基板10の誘電体基板11を構成する材料の比誘電率をε
1、給電導波路基板20のガラス基板21を構成する材料の比誘電率をε
2とするとき、誘電体材料18,28,32の比誘電率ε
3としては、ε
1−1≦ε
3≦ε
1+1、ε
2−1≦ε
3≦ε
2+1、min(ε
1,ε
2)≦ε
3≦max(ε
1,ε
2)、min(ε
1,ε
2)−1≦ε
3≦max(ε
1,ε
2)+1等の範囲内であることが好ましい。これにより、低損失の帯域を広げることができる。ここで、min(a,b)はa及びbの最小値を表し、max(a,b)はa及びbの最大値を表す。
【0033】
以上、本発明を好適な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【0034】
上述の実施形態において、対向する放射キャビティー基板10の導体層13と給電導波路基板20の導体層22とは、それぞれ別の層として図示したが、これらを1層としてもよい。例えば、2つの基板の接合後に、導体層13,22が一体化して界面が不明瞭であっても、製造物の構造及び機能としては異なることはない。このため、上記実施形態の積層構造30は、厚さ方向(
図2のZ方向)において、導体層23/給電導波路25のガラス基板21/導体層13,22に相当する1又は2以上の導体層/放射キャビティー15の誘電体基板11/導体層12という積層構造であってもよい。
すなわち、本実施形態のアンテナ装置は、放射キャビティー15と給電導波路25とが、基板の厚さ方向に積層された積層構造30を有し、放射キャビティー15及び給電導波路25の間に開口31を有する1層又は2層以上の導体層13,22と、放射キャビティー15の内部を構成する誘電体基板11と、誘電体基板11の開口31とは反対側の面を覆う導体層12と、放射キャビティー15の面内方向の周囲を囲むポスト壁14と、給電導波路25の内部を構成するガラス基板21と、ガラス基板21の開口31とは反対側の面を覆う導体層23と、給電導波路25の面内方向の周囲を囲むポスト壁24とを備えてもよい。
【実施例】
【0035】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0036】
図5のグラフは、
図2に記載の構成を電磁波解析し、アンテナの入力インピーダンス特性を計算した結果である。
放射開口面17の寸法は、x1=1800μm、y1=2000μmと設定した。
給電導波路25の幅寸法x2は、1700μmと設定した。
放射キャビティー15と給電導波路25との間の開口31の寸法は、x3=848μm、y3=424μmと設定した。
誘電体基板11は、厚さ600μmで、比誘電率3.7、誘電正接0.004の誘電材料から構成されていると設定した。
ガラス基板21は、厚さ536μmで、比誘電率3.82、誘電正接0.000336のガラス材料から構成されていると設定した。
【0037】
例1は、
図1に記載の開口31全体(放射キャビティー基板10側の開口16及び給電導波路基板20側の開口26)が空気(比誘電率1、誘電正接0)で満たされている構成である。
【0038】
例2は、開口31全体が比誘電率2、誘電正接0.02の誘電体材料で充填されている構成である。
例3は、開口31全体が比誘電率5、誘電正接0.02の誘電体材料で充填されている構成である。
例4は、開口31全体が比誘電率9、誘電正接0.02の誘電体材料で充填されている構成である。
【0039】
例5は、放射キャビティー基板10側の開口16が比誘電率3.5、誘電正接0.04の誘電体材料で、給電導波路基板20側の開口26が比誘電率3、誘電正接0.02の誘電体材料で充填されている構成である。
例6は、放射キャビティー基板10側の開口16が比誘電率3.5、誘電正接0.04の誘電体材料で、給電導波路基板20側の開口26が比誘電率3.4、誘電正接0.02の誘電体材料で充填されている構成である。
例7は、開口31全体が比誘電率3.5、誘電正接0.04の誘電体材料で充填されている構成である。この例は、放射キャビティー基板10側の開口16、給電導波路基板20側の開口26ともに比誘電率3.5、誘電正接0.04の誘電体材料で充填されている構成である。
【0040】
なお、例5〜7の構成は、
図3に示すように、各基板の開口16.26にそれぞれ誘電体材料18,28を配置して構成することができるが、本実施例の製造方法は特に限定されない。また、例2〜4及び例7の構成は、
図4に示すように、片方の開口に誘電体材料32を配置して構成することができるが、本実施例の製造方法は特に限定されない。
【0041】
図5の結果によれば、開口31が空気で満たされている例1よりも、開口31が比誘電率2〜3.5の誘電体材料で充填されている例2及び例5〜7において、|S11|が−15dBを下回る帯域が広くなっていることが確認できる。また、開口31が比誘電率5〜9の誘電体材料で充填されている例3〜4では、|S11|が−15dBを下回る帯域が例1より狭くなっているものの、|S11|が−10dBを下回る帯域が例1より拡大していることが確認できる。
【0042】
したがって、帯域を拡大するには、開口31を空気より比誘電率が大きい誘電体材料で充填することが好ましく、|S11|が−15dBを下回る帯域を拡大するには、開口31を基板材料と近い比誘電率を有する誘電体材料で充填することが有効と結論づけられる。また、本発明により設計した各実施例のアンテナは、E−band(71〜86GHz)をすべてカバーすることが可能である。