【解決手段】アンテナ装置(1)は、表面にグランド層(40)が形成された基板(50)と、基板(50)上に起立した第1のアンテナ(10)と、基板(50)上に起立し、第1のアンテナ(10)と共通の動作帯域を有する第2のアンテナ(20)と、基板(50)上に起立し、グランド層(40)と短絡された遮蔽板(30)であって、第1のアンテナ(10)と第2のアンテナ(20)との間に配置された遮蔽板(30)と、を備えており、第1のアンテナ(10)と第2のアンテナ(20)との間隔は、動作帯域の下限周波数に対応する実効波長の8分1以上8分3以下である。
前記グランド層は、前記第1のアンテナの根元を取り囲む第1の部分と、前記第2のアンテナの根元を取り囲む第2の部分と、前記第1の部分と前記第2の部分との双方に接続されたブリッジ部とにより構成されており、前記ブリッジ部は、前記第1のアンテナの根元と第2のアンテナの根元とを通る直線を避けて配線されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
前記グランド層の前記第2の部分は、前記第2のアンテナの前記根元からの距離が前記動作帯域の上限周波数に対応する実効波長の4分の1以上8分3以下となる範囲に形成されている、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載のアンテナ装置。
前記第1のアンテナ及び前記第2のアンテナは、前記グランド層に短絡された放射素子として、前記グランド層から絶縁された放射素子よりも電気長が短い2つの放射素子であって、当該グランド層から絶縁された放射素子を挟み込むように配置された2つの放射素子を備えている、
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のアンテナ装置。
第1の給電線を構成する一方の導体を前記第1のアンテナの前記グランド層から絶縁された放射素子に接続すると共に、前記第1の給電線を構成する他方の導体を前記第1のアンテナの前記グランド層に短絡された放射素子に接続するための第1のコネクタと、
第2の給電線を構成する一方の導体を前記第2のアンテナの前記グランド層から絶縁された放射素子に接続すると共に、前記第2の給電線を構成する他方の導体を前記第2のアンテナの前記グランド層に短絡された放射素子に接続するための第2のコネクタとを、更に備えている、
ことを特徴とする請求項5に記載のアンテナ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、送受信両用のアンテナ装置においては、共通の又は重複する周波数帯域で動作する送信用のアンテナと受信用のアンテナとを、ひとつの筐体内に収容する必要が生じる。このようなアンテナ装置において筐体のコンパクト化を進めると、送信用のアンテナと受信用のアンテナとが近接して配置されることになる。
【0007】
しかしながら、共通の又は重複する周波数帯域で動作する送信用のアンテナと受信用のアンテナとを近接させて配置させた場合、送信用のアンテナが放射した電磁波の影響を受信用のアンテナが受けてしまい、基地局との通信に支障をきたすという課題があった。受信用のアンテナが正しく基地局と通信するためには、送信用のアンテナが放射した電磁波の影響を受信用のアンテナが受けないように互いのアンテナを電気的に孤立させることが求められる。換言すれば、これら2つのアンテナにおけるアイソレーション特性を高めることが求められる。
【0008】
本発明は、前記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、共通する動作帯域を有する2つのアンテナを備えたアンテナ装置において、これら2つのアンテナにおけるアイソレーション特性を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るアンテナ装置は、表面にグランド層が形成された基板と、前記基板上に起立し、前記グランド層と短絡された放射素子と、前記グランド層から絶縁された放射素子とを含む第1のアンテナと、前記基板上に起立し、前記グランド層と短絡された放射素子と、前記グランド層から絶縁された放射素子とを含む第2のアンテナであって、前記第1のアンテナと共通の動作帯域を有する第2のアンテナと、前記基板上に起立し、前記グランド層と短絡された遮蔽板であって、前記第1のアンテナと前記第2のアンテナとの間に配置された遮蔽板と、を備えており、前記第1のアンテナと前記第2のアンテナとの間隔は、前記動作帯域の下限周波数に対応する実効波長の8分1以上8分3以下である。
【0010】
遮蔽板は、第1のアンテナと第2のアンテナとの間に形成される電界を遮ることができる。すなわち、遮蔽板は、第1のアンテナと第2のアンテナとを電磁気的に隔離することができる。したがって、本アンテナ装置は、同じ動作帯域を有する第1のアンテナと第2のアンテナとを至近距離に配置しているにも関わらず、一方のアンテナから送信した電磁波を、他方のアンテナが強い強度のまま受信してしまうことを防止できる。したがって、本アンテナ装置は、第1のアンテナと第2のアンテナとにおけるアイソレーション特性を高めることができる。
【0011】
本発明の一態様に係るアンテナ装置は、前記グランド層は、前記第1のアンテナの根元を取り囲む第1の部分と、前記第2のアンテナの根元を取り囲む第2の部分と、前記第1の部分と前記第2の部分との双方に接続されたブリッジ部とにより構成されており、前記ブリッジ部は、前記第1のアンテナの根元と第2のアンテナの根元とを通る直線を避けて配線されている、ことが好ましい。
【0012】
第1の部分と第2の部分とを接続するブリッジ部は、アイソレーション特性を高め得る。しかし、ブリッジ部が第1のアンテナの根元と第2のアンテナの根元とを通る直線を含んで配線されている場合、ブリッジ部は、アイソレーション特性を低下させる。上記の構成によれば、ブリッジ部は、アイソレーション特性を低下させることなく第1の部分と第2の部分とを接続する。
【0013】
本発明の一態様に係るアンテナ装置は、前記動作帯域には、通信に用いない不使用周波数が含まれており、前記グランド層の前記第1の部分は、前記第1のアンテナの前記根元から前記不使用周波数に対応する実効波長の4分の1以上8分3以下の範囲内で前記第2のアンテナの前記根元に向かって延伸しており、前記遮蔽板は、その根元が当該第1の部分の先端付近に接続されている、ことが好ましい。
【0014】
第1の部分及び第2の部分に短絡された遮蔽板を第1のアンテナと第2のアンテナとの間に起立させるために、第1の部分は、第1のアンテナの根元から第2のアンテナの根元に向かって延伸されている。
【0015】
グランド層の一部を構成する第1の部分は、第1のアンテナ及び第2のアンテナの各々のグランド層と短絡された放射素子と短絡されている。したがって、第1の部分は、一種の放射素子として機能し得る。
【0016】
上記の構成によれば、第1の部分が放射素子として機能する場合であっても、その延伸された部分の長さは、動作帯域内の不使用周波数の実効波長に相当するため、不使用周波数以外の動作帯域に対して悪影響を及ぼさない。したがって、不使用周波数を除く動作帯域におけるアイソレーション特性を悪化させることなく、遮蔽板を第1のアンテナと第2のアンテナとの間に設けることができる。
【0017】
本発明の一態様に係るアンテナ装置は、前記グランド層の前記第2の部分は、前記第2のアンテナの前記根元からの距離が前記動作帯域の上限周波数に対応する実効波長の4分の1以上8分3以下となる範囲に形成されている、ことが好ましい。
【0018】
グランド層の一部を構成する第2の部分は、第1のアンテナと第2のアンテナとのアイソレーション特性を高める要因の一つである。その一方、第1の部分と同じように、第2の部分は、グランド層の一部を構成するために一種の放射素子として機能し得る。
【0019】
上記の構成によれば、第2の部分が放射素子として機能する場合であっても、第2の部分は、動作帯域の上限周波数よりも高い周波数の電磁波のみを放射する。なぜなら、第2の部分は、動作帯域の上限周波数に対応する実効波長以下となる範囲に形成されているためである。したがって、このように構成された第2の部分は、動作帯域におけるアイソレーション特性を悪化させない。
【0020】
本発明の一態様に係るアンテナ装置は、前記第1のアンテナ及び前記第2のアンテナは、前記グランド層に短絡された放射素子として、前記グランド層から絶縁された放射素子よりも電気長が短い2つの放射素子であって、当該グランド層から絶縁された放射素子を挟み込むように配置された2つの放射素子を備えている、ことが好ましい。
【0021】
上記の構成によれば、第1のアンテナ及び第2のアンテナは、サイズがコンパクトで、且つ、動作帯域が従来のアンテナより広いアンテナを提供することができる。
【0022】
本発明の一態様に係るアンテナ装置は、第1の給電線を構成する一方の導体を前記第1のアンテナの前記グランド層から絶縁された放射素子に接続すると共に、前記第1の給電線を構成する他方の導体を前記第1のアンテナの前記グランド層に短絡された放射素子に接続するための第1のコネクタと、第2の給電線を構成する一方の導体を前記第2のアンテナの前記グランド層から絶縁された放射素子に接続すると共に、前記第2の給電線を構成する他方の導体を前記第2のアンテナの前記グランド層に短絡された放射素子に接続するための第2のコネクタとを、更に備えている、ことが好ましい。
【0023】
上記の構成によれば、第1の給電線の延伸方向に対してグランド層から絶縁された放射素子の長手方向を沿わせるように配置する場合に、第1のアンテナと第1の給電線とを第1のコネクタを介して容易に接続することができる。第2のアンテナについても同様である。したがって、アンテナ装置に対して、第1及び第2の給電線を接続することを容易にすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、共通する動作帯域を有する2つのアンテナを備えたアンテナ装置において、互いのアンテナにおけるアイソレーション特性を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
〔第1の実施形態〕
本発明の第1の実施形態に係るアンテナ装置1について、
図1〜
図2を参照して説明する。
図1の(a)は、アンテナ装置1は、の斜視図である。
図1の(b)は、アンテナ装置1の断面の一部を拡大した断面図である。具体的には、アンテナ10の根元付近の断面を拡大した断面図である。
図2は、アンテナ装置1が備えているグランド層40の平面図である。なお、
図2には、基板50を仮想線(二点鎖線)を用いて図示している。
【0027】
図1の(a)に示すように、アンテナ装置1は、第1のアンテナであるアンテナ10と、第2のアンテナであるアンテナ20と、遮蔽板30と、表面にグランド層40が形成された基板50と、ベースブロック60を備えている。
【0028】
(アンテナ10)
図1の(a)に示すように、アンテナ10は、放射素子11と、放射素子12と、放射素子13と、誘電体基板14と、第1のコネクタであるコネクタ15とにより構成されている。放射素子11〜13の各々は、金属(例えば銅)製の導体箔を後述する形状に成形したものである。放射素子11〜13の各々は、誘電体基板14の一方の表面に形成されている。
【0029】
図1の(a)に示すように、アンテナ10は、放射素子11と、放射素子12と、放射素子13と、誘電体基板14と、コネクタ15とを備えている。放射素子11〜13の各々は、金属(例えば銅)製の導体箔を所望の形状に成形することによって得られる。放射素子11〜13の各々は、誘電体基板14の一方の表面に形成されている。放射素子12及び放射素子13は、放射素子11を挟み込むように配置されている。
【0030】
放射素子11は、低周波側の周波数帯域を動作帯域とする放射素子である。放射素子11の電気長は、第1の共振点である698MHzの電磁波に対応するように定められている。放射素子11の電気長は、放射素子11の一端と他端との距離を、放射素子11の中心軸に沿って図った長さに対応する。
【0031】
放射素子12,13の各々は、高周波側の周波数帯域を動作帯域とする放射素子である。放射素子12の電気長は、第2の共振点である1420MHzの電磁波に対応するように定められている。放射素子13の電気長は、第3の共振点である2000MHzの電磁波に対応するように定められている。したがって、放射素子12の電気長、及び、放射素子13の電気長は、放射素子11の電気長よりも短い。放射素子12及び13の各々の電気長は、それぞれ、放射素子12の放射素子11に対向する側と反対側の外縁及び放射素子13の放射素子11に対向する側と反対側の外縁の長さに対応する。アンテナ10は、698MHz以上2690MHz以下の周波数帯域、いわゆるLTE用の周波数帯域を動作帯域とするように設計されている。したがって、アンテナ10の動作帯域は、下限周波数f1が698MHzであり、上限周波数f2が2690MHzである動作帯域である。なお、本明細書では、上記動作帯域のうち698MHz以上960MHz以下の周波数帯域を重視する。動作帯域のうち低周波側の周波数帯域におけるアイソレーション特性は、アンテナ装置1の動作に大きな影響を与えるためである。
【0032】
このように、放射素子12,13は、放射素子11を挟み込むように配置されている。したがって、アンテナ10は、従来のアンテナと同程度にコンパクトである。
【0033】
放射素子12,13の各々の電気長は、放射素子11の電気長よりも短い。すなわち、アンテナ10は、放射素子11の電気長に対応する第1の共振点と、第2及び第3の放射素子の各々の電気長にそれぞれ対応する第2及び第3の共振点とを有する。第1の共振点を698MHzに設定し、第2の共振点を1420MHzに設定し、第3の共振点を2000MHzに設定することによって、アンテナ10は、所望の周波数帯域である698MHz以上2690MHz以下の周波数帯域を動作帯域にし得る。
【0034】
更に、アンテナ10において、放射素子12,13の各々は、放射素子11を挟み込むように配置されている。この構成によれば、放射素子11と放射素子12との間に生じる容量の値、及び、放射素子11と放射素子13との間に生じる容量の値を容易に制御できる。したがって、所望の周波数帯域のうち特定の帯域においてVSWRが低下すること防止し、VSWRの谷間が生じることを防止することができる。したがって、アンテナ10は、所望の周波数帯域であるLTE用の周波数帯域を動作帯域にすることができる。
【0035】
以上のように、アンテナ10は、サイズがコンパクトで、且つ、動作帯域が従来のアンテナより広いアンテナを提供することができる。
【0036】
コネクタ15は、アンテナ10と、同軸ケーブル(
図1に不図示)とを接続する。同軸ケーブルは、請求の範囲に記載の給電線の一例である。同軸ケーブルは、内側導体、外側導体、及び、内側導体と外側導体とを絶縁する絶縁層と、外側導体の外側を覆う被覆層とにより構成されている。内側導体及び外側導体の各々は、それぞれ、請求の範囲に記載の一方の導体及び他方の導体に対応する。
【0037】
コネクタ15は、中心導体、外側導体、及び、中心導体と外側導体とを絶縁する絶縁体により構成されている。
図1の(b)に示すように、コネクタ15の中心導体は、同軸ケーブルの内側導体を放射素子11の一端(
図1においては下端)に電気的に接続する。コネクタ15の外部導体は、同軸ケーブルの外側導体を放射素子12の一端(
図1においては下端)及び放射素子13の一端(
図1においては下端)の両方に電気的に接続する。したがって、放射素子12及び放射素子13は、コネクタ15の外側導体を介して短絡されている。また、放射素子11は、放射素子12,13から絶縁されている。
【0038】
上記の構成によれば、同軸ケーブルの延伸方向に対して放射素子11の長手方向を沿わせるように配置する場合に、容易にアンテナ10と同軸ケーブルとをコネクタ15を介して接続することができる。放射素子11と、放射素子11を挟み込むように配置された放射素子12,13との配置が、同軸ケーブルの内側導体と、内側導体を取り囲むように配置された外側導体との配置に対応するためである。
【0039】
(アンテナ20)
アンテナ20は、上述したアンテナ10と同様の構成を有する。すなわち、アンテナ20は、放射素子21と、放射素子22と、放射素子23と、誘電体基板24と、コネクタ25とを備えている。放射素子21〜23は、放射素子11〜13と同様に構成されており、誘電体基板24は、誘電体基板14と同様に構成されており、コネクタ25(請求の範囲に記載の第2のコネクタ)は、コネクタ15と同様に構成されている。したがって、放射素子21は、グランド層40から絶縁されており、放射素子22,23は、グランド層と短絡されている。また、アンテナ20は、基板50の表面上に起立している。
【0040】
以上のように、アンテナ20は、アンテナ10と同様の構成を有するため、アンテナ10と共通の動作帯域を有する。したがって、アンテナ装置1の動作帯域は、LTE用の周波数帯域である。すなわち、アンテナ装置1の動作帯域の、下限周波数f1は698MHzであり、上限周波数f2は2690MHzである。
【0041】
(グランド層40)
グランド層40は、導電体(本実施形態においては銅)によって構成されている。グランド40は、基板50の表面に貼り付けられた導体板であってもよいし、基板50の表面に形成された導体膜であってもよい。表面にグランド層40が形成された基板50は、プリント回路基板の一態様である。したがって、プリント回路基板の分野で用いられるパターニング技術を適用することにより、グランド層40は、容易に任意の形状にパターニング可能である。グランド層の形状については、後述する。
【0042】
図1の(b)に示すように、グランド層40の、アンテナ10の根元(放射素子11の一端)に対応する位置には、開口40aが設けられている。
【0043】
同様に、グランド層40の、アンテナ20の根元(放射素子21の一端(下端))に対応する位置には、開口が設けられている。この構成によれば、放射素子21の一端と、コネクタ25の中心導体とを接続することができる。
【0044】
(基板50)
基板50は、長円形状(オーバル形状)に成形された誘電体によって構成されている。基板50を構成する材料は、例えば、ポリイミドフィルムのような柔軟性を有する材料(剛性が低い材料)であってもよいし、ガラスエポキシ樹脂のような剛性が高い材料であってもよい。
【0045】
図1の(b)に示すように、基板50の、アンテナ10の根元(放射素子11の一端)に対応する位置には、開口50aが設けられている。開口40aの直径及び開口50aの直径は、コネクタ15の外径よりも大きい。
【0046】
以上のように、グランド層40の、アンテナ10の根元に対応する位置に開口40aが設けられており、且つ、基板50の、アンテナ10の根元に対応する位置に開口50aが設けられていることによって、開口40a及び開口50aを貫通するようにコネクタ15を配置することができる。したがって、コネクタ15は、放射素子11の一端と、コネクタ15の中心導体とを接続することができる。
【0047】
さらに、コネクタ15の外部導体は、基板50の表面に形成されたグランド層40と短絡されている。したがって、放射素子12,13は、コネクタ15の外部導体に短絡されるとともにグランド層40に短絡されている。
【0048】
なお、本実施形態では、放射素子12,13と、コネクタ15の外部導体と、グランド層40とを短絡する方法として半田付けを用いている。すなわち、放射素子12,13と、コネクタ15の外部導体と、グランド層40とは、半田を介して短絡されている。
【0049】
この半田は、表面にグランド層40が形成された基板50の表面に対して、アンテナ10を起立した状態で固定する固定部材でもある。すなわち、アンテナ10は、基板50の表面上に起立している。
【0050】
同様に、グランド層40及び基板50の各々の、アンテナ20の根元に対応する位置には、それぞれ、開口が設けられている。この構成によれば、アンテナ10の場合と同様に、アンテナ20を基板50の表面上に、起立した状態で固定することができる。
【0051】
(ベースブロック60)
ベースブロック60は、長円形状(オーバル形状)に形成された高い剛性を有する材料によって構成されている。ベースブロック60を構成する材料は、例えばガラスエポキシ樹脂や、ABS樹脂や、アクリル樹脂などに代表される樹脂材料であることが好ましい。
【0052】
ベースブロック60の表面には、上述した基板50の裏面(グランド層が設けられている側と逆側の表面)が、例えば樹脂製の接着剤を用いて接合されている。
【0053】
ベースブロック60の、アンテナ10の根元に対応する位置には、開口60aが設けられている。開口60aの直径は、アンテナ10に接続される同軸ケーブルの一端に設けられたコネクタ(コネクタ15と対をなす他方のコネクタ)の外形よりも大きい。この構成によれば、開口60aの内部に上記他方のコネクタの少なくとも一部を収容することができる。
【0054】
ベースブロック60の厚さは、任意である。しかし、上記他方のコネクタの全体を開口60aの内部に収容するために、ベースブロック60の厚さは、上記他方のコネクタの長さより厚いことが好ましい。また、その表面に接続された基板50がしならないように、十分な合成を有する厚みであることが好ましい。
【0055】
このように構成されたアンテナ装置1において、(1)基板50の表面内において、基板50及びベースブロック60の長軸に沿った方向であって、アンテナ20からアンテナ10へ向かう方向をy軸正方向と規定し、(2)基板50の表面内において、y軸に直交する方向であって、基板14の、放射素子11〜13が形成されている側の表面から、放射素子11〜13が形成されていない側の表面(裏面)へ向かう方向をx軸正方向と規定し、(3)xy平面に直交する方向であって、基板50からグランド層40へ向かう方向をz軸正方向と規定する。
【0056】
また、以下において、z軸正方向が天頂方向に沿うようにアンテナ10を空間中に配置したものとして説明する。しかし、アンテナ10を運用する場合にアンテナ10を配置する方向は、これに限定されるものではなく、任意に定めることができる。
【0057】
(アンテナ及び遮蔽板の配置)
図1の(a)に示すように、アンテナ10の誘電体基板14及びアンテナ20の誘電体基板24の各々は、それぞれ、その表面がyz平面に沿うように配置されている。また、
図2に示すように、誘電体基板14及び誘電体基板24の各々は、長円形状である基板50の長軸上に一列に配列している。
【0058】
また、誘電体基板14及び誘電体基板24の各々の表面は、基板50及びグランド層40の表面に対して直行している。
【0059】
したがって、放射素子11〜13及び放射素子21〜23の各々は、yz平面に沿った同一平面上に配置されている。換言すれば、アンテナ10をy軸負方向へ並進させた位置にアンテナ20は、配置されている。
【0060】
アンテナ10とアンテナ20とは同様に構成されているため、基板14と基板24とは合同である。したがって、アンテナ10とアンテナ20との間隔LGAPは、基板14のy軸負方向側の外縁と、基板24のy軸正方向側の外縁との間隔をy軸方向に沿って測った場合の長さである(
図1参照)。
【0061】
アンテナ装置1において、間隔LGAPは、動作帯域の下限周波数f1に対応する実効波長λg1の8分1以上8分3以下となるように定められている。f1=698MHzなので、真空中における波長λ0は、λ0=430mmである。誘電体基板14の比誘電率ε0がε0=4.4であり、且つ、誘電体基板14の厚さが1.6mmである場合、実効波長λg1は、λg1=215mmであり、実効波長λg1の4分の1の長さである4分の1実効長は、53.8mmである。したがって、アンテナ装置1において、間隔LGAPは、53.8mm以上80.6mm以下となるように定められている。
【0062】
そのうえで、アンテナ10とアンテナ20との間には、導電体(例えば銅)製の遮蔽板30が配置されている。遮蔽板30は、基板50上に起立しており、且つ、その一端(下端)がグランド層40に接続されている。すなわち、遮蔽板30は、グランド層40に短絡されている。遮蔽板30の根元(下端)は、グランド層40の表面に対して、半田付けされている。
【0063】
本実施形態において、遮蔽板30とxy平面とのなす角は、基板14のy軸負方向側の外縁とxy平面とのなす角、及び、基板24のy軸正方向側の外縁とxy平面とのなす角と略等しくなるように構成されていることが好ましい。ここで、略等しいとは、製造上の誤差を含む。
【0064】
遮蔽板30は、アンテナ10とアンテナ20との間に形成される電界を遮ることができる。すなわち、遮蔽板30は、アンテナ10とアンテナ20との各々を電磁気的に隔離することができる。したがって、アンテナ装置1は、同じ動作帯域を有するアンテナ10とアンテナ20とを至近距離に配置しているにも関わらず、一方のアンテナ(例えばアンテナ10)から送信した電磁波を、他方のアンテナ(例えばアンテナ20)が強い強度のまま受信してしまうことを防止できる。
【0065】
なお、本実施形態において、遮蔽板30の一端は、基板50の長軸と交わるように配置されている。しかし、遮蔽板30の一端は、基板50の長軸と交わらないように、当該長軸のx軸正方向側又はx軸負方向側にずらして配置されていてもよい。
【0066】
(グランド層40のパターン)
図2に示すように、グランド層40は、第1の部分41と、第2の部分42と、ブリッジ部43とにより構成されている。
【0067】
第1の部分41は、アンテナ10の根元(すなわち、放射素子11の一端に対応する開口40a,50a部分)を取り囲み、アンテナ10の根元からアンテナ20の根元(すなわち、放射素子21の一端に対応する開口部分)へ向かう方向(y軸負方向)に延伸されている。
【0068】
第2の部分42は、第2のアンテナ20の根元を取り囲み、アンテナ20の根元からアンテナ10の根元へ向かう方向(y軸正方向)に延伸されている。
【0069】
ブリッジ部43は、第1のアンテナ10の根元と第2のアンテナ20の根元とを通る直線(基板50の長軸と一致する直線)を避けて配線されている。本実施形態において、ブリッジ部43は、y軸方向に沿った方向に延伸された帯状導体であり、基板50の長軸をx軸負方向側に避けて配線されている。
【0070】
第1の部分41と第2の部分42とを接続するブリッジ部43は、アイソレーション特性を高め得る。しかし、ブリッジ部43がアンテナ10の根元とアンテナ20の根元とを通る直線(基板50の長軸に一致する直線)の上に配線されている場合、ブリッジ部43は、アイソレーション特性を低下させる。上記の構成によれば、ブリッジ部43は、アイソレーション特性を低下させることなく第1の部分41と第2の部分42とを接続する。
【0071】
また、グランド層40の第1の部分41は、アンテナ10の根元からアンテナ20の根元に向かって、所定の長さである長さL1だけ延伸されていることが好ましい。更に、遮蔽板30は、その根元が第1の部分41の先端付近(第1の部分41のy軸負方向側の外縁付近)に接続されている、ことが好ましい。ここで、第1の部分41の先端付近とは、第1の部分41の先端(第1の部分41のy軸負方向側の外縁)からの距離が第1の部分41の根元から第1の部分41の先端までの距離であるL1に比べて十分に小さい領域のことを指す。
【0072】
また、長さL1は、LTE用の通信に用いない不使用周波数f3に対応する実効波長λg3の4分の1以上8分の3以下の範囲内であることが好ましい。
【0073】
なお、不使用周波数f3は、LTE用の通信に用いない周波数帯域である不使用周波数帯に含まれている周波数である。LTE用の周波数帯域における代表的な不使用周波数帯は、1000MHz以上1400MHz以下である。f3=1000MHzである場合の実効周波数λg3は、λg3=150mmであり、f3=1400MHzである場合の実効周波数λg3は、λg3=107mmである。したがって、長さL1は26.8mm以上56.3mm以下であることが好ましい。
【0074】
第1の部分41及び第2の部分42に短絡された遮蔽板30をアンテナ10とアンテナ20との間に起立させるために、第1の部分41は、アンテナ10の根元からアンテナ20の根元に向かって延伸されている。
【0075】
グランド層40の一部を構成する第1の部分41は、アンテナ10の放射素子12,13、及び、アンテナ20の放射素子22,23と短絡されている。したがって、第1の部分41は、一種の放射素子として機能し得る。
【0076】
上記の構成によれば、第1の部分41が放射素子として機能する場合であっても、その延伸された部分の長さL1は、動作帯域内の不使用周波数f3の実効波長λg3に相当するため、不使用周波数f3を除いた動作帯域に対して悪影響を及ぼさない。したがって、このように構成された第1の部分41は、不使用周波数f3を除く動作帯域におけるアイソレーション特性を悪化させることなく、遮蔽板を第1のアンテナと第2のアンテナとの間に設けることができる。
【0077】
また、グランド層40の第2の部分42は、アンテナ20の根元からの距離が動作帯域の上限周波数f2に対応する実効波長λg2の4分の1以上8分の3以下となる範囲に形成されている、ことが好ましい。なお、上限周波数f2である2690MHzに対応する実効波長λg2は、λg2=55.5mmである。したがって、第2の部分42は、アンテナ20の根元から13.75mm以上20.8mm以下となる範囲に形成されていることが好ましい。
【0078】
グランド層40の一部を構成する第2の部分42は、アンテナ10とアンテナ20とのアイソレーション特性を高める要因の一つである。その一方、第1の部分41と同様に、第2の部分42は、グランド層40の一部を構成するために一種の放射素子として機能し得る。
【0079】
上記の構成によれば、第2の部分42が放射素子として機能する場合であっても、第2の部分42は、動作帯域の上限周波数f2よりも高い周波数の電磁波のみを放射する。なぜなら、第2の部分42は、動作帯域の上限周波数f2に対応する実効波長λg2以下となる範囲に形成されているためである。したがって、このように構成された第2の部分42は、動作帯域におけるアイソレーション特性を悪化させない。
【0080】
〔第1の実施例〕
図3は、
図1に示したアンテナ装置1の第1の実施例が備えているアンテナ10,20の平面図である。
図3においては、コネクタ15,25を省略し図示していない。ここでは、アンテナ10を例にして説明する。本実施例のアンテナ10が備えている放射素子11,12,13の各々は、
図3に示した形状にパターニングされている。本実施例のアンテナ10において、放射素子11の中心軸(放射素子11の首部の中心軸)と放射素子11の他端(上端)とのなす角は、70°である。すなわち、上記中心軸と上記他端の法線とのなす角(以下においてアンテナ10の傾斜角と称する)は、20°である。また、誘電体基板14の比誘電率は、4.4である。
【0081】
上述したように、アンテナ20は、アンテナ10と同様に構成されている。
【0082】
本変形例のアンテナ装置1は、各パラメータの値を以下とおり定めることによって得られた。
【0083】
間隔Lgap=70mm
長さL1=43mm
λg2=19mm
70mmという間隔Lgapは、LTE用の周波数帯域の下限周波数f1に対応する実効波長λg1の32.6%に相当する。
【0084】
本実施例のアンテナ装置1を用いて、利得及びVSWR、並びに、アンテナ10とアンテナ20とにおけるアイソレーション特性を測定した。
図4は、この測定を実施するときに用いた構成の斜視図である。
【0085】
図4に示すように、アンテナ装置1は、アルミニウム合金製の円盤100の中心に配置されている。円盤100の直径は、500mmである。ここでは、アンテナ装置1を自動車のルーフ上に搭載することを想定しており、円盤100は、自動車のルーフを模している。なお、円盤100の中心付近には、アンテナ10のコネクタ15に接続する同軸ケーブル、及び、アンテナ20のコネクタ25に接続する同軸ケーブルを通すための貫通孔が設けられている。
【0086】
アンテナ10のコネクタ15及びアンテナ20のコネクタ25には、実施する測定の種類に応じて送信回路又は受信回路が、同軸ケーブルを介して接続される。
【0087】
(利得及びVSWR)
図5の(a)及び(b)の各々は、それぞれ、本実施例のアンテナ装置1が備えているアンテナ10及び20の利得とVSWRとを示すグラフである。
【0088】
図5の(a)に示した利得を参照すれば、本実施例のアンテナ装置1に搭載されたアンテナ10は、900MHz以上2690MHz以下の幅広い周波数帯域において、−2dBi以下の良好な利得を示すことがわかった。また、
図5の(a)に示したVSWRを参照すれば、800MHz以上1450MHz以下の周波数帯域、及び、1650MHz以上2800MHz以下の周波数帯域という幅広い周波数帯域において、本実施例のアンテナ10は、2以下の良好なVSWRを示すことが分かった。
【0089】
1450MHzを上回り、1650MHzを下回る周波数帯域において、本実施例のアンテナ10のVSWRは、2を上回る。しかし、この周波数帯域は、LTE用の周波数帯域における不使用帯域である。
【0090】
図5の(b)に示した利得を参照すれば、本実施例のアンテナ装置1に搭載されたアンテナ20は、900MHz以上2690MHz以下の幅広い周波数帯域において、−2dBi以下の良好な利得を示すことがわかった。また、
図5の(b)に示したVSWRを参照すれば、1600MHz以上2600MHz以下の周波数帯域において、本実施例のアンテナ20は、2以下の良好なVSWRを示すことが分かった。
【0091】
1450MHzを下回る周波数帯域において、本実施例のアンテナ20のVSWRは、2を上回る。しかし、700MHz以上1350MHz以下の周波数帯域において、本実施例のアンテナ20は、3以下のVSWRを示した。VSWRが2には達しないものの、VSWRが3以下であればLTE用のアンテナとして用いることができる。
【0092】
1350MHzを上回り1420MHzを下回る周波数帯域において、本実施例のアンテナ20のVSWRは、3を上回る。しかし、この周波数帯域は、LTE用の周波数帯域における不使用帯域である。
【0093】
アンテナ10,20では、上述したように放射素子11,12,13の外縁の形状を定めることにより、−2dBi以下の利得と3以下のVSWRとを幅広い周波数帯域において実現することができた。また、VSWRが3を上回る周波数帯域がわずかに生じる場合であっても、その周波数帯域を不使用帯域内に設定することができた。したがって、VSWRが3を上回る周波数帯域は、アンテナ10,20をLTE用のアンテナとして用いる場合に問題とならない。このように、アンテナ10,20は、LTE用のアンテナとして好適に用いることができる。
【0094】
(アイソレーション特性)
図6は、本実施例のアンテナ装置1におけるアイソレーション特性(S12の周波数依存性)を示すグラフである。
図6には、本発明の比較例であるアンテナ装置におけるアイソレーション特性を併せて示している。比較例のアンテナ装置は、本実施例のアンテナ装置1から遮蔽板30を省略することによって得られた。
図6では、本実施例のアンテナ装置1におけるアイソレーション特性を実線で示し、比較例のアンテナ装置のアイソレーション特性を破線で示した。
【0095】
LTE用の、送受信両用のアンテナ装置においては、低周波側の周波数帯域(698MHz以上960MHz以下の周波数帯域)におけるアイソレーション特性が重視され、698MHz以上800MHz以下の周波数帯域におけるアイソレーション特性が特に重視される。これは、アンテナ10とアンテナ20との間に生じる混信は、LTE用の周波数帯域の低周波側の帯域においてアイソレーションが不足していることの影響をより強く受けるためである。
【0096】
そこで、アンテナ装置1においても、698MHz以上800MHz以下の周波数帯域におけるアイソレーション特性を特に重視する。
図6においては、698MHz及び960MHzに相当する位置を一点鎖線にて示している。
【0097】
LTE用のアンテナにおいては、アイソレーション特性は、−20dBi以下であることが好ましいとされており、−22.5dBi以下であることがより好ましいとされている。そこで、本明細書では、698MHz以上800MHz以下の周波数帯域において、アイソレーション特性が−22.5dBi以下であるアンテナ装置のことを良好なアンテナ装置と判定する。
【0098】
図6を参照すれば、本実施例のアンテナ装置1は、1600MHz以上1800MHz以下の波長帯域を除いて、比較例のアンテナ装置よりもアイソレーション特性を高めることができた。すなわち、698MHz以上800MHz以下の周波数帯域においても、アンテナ装置1は、アイソレーション特性を高めることができた。
【0099】
以上のように、アンテナ装置1は、良好なアンテナ装置である。
【0100】
(第2の変化例)
図1に示したアンテナ装置1の第2の実施例におけるアイソレーション特性を
図7に示す。第2の実施例であるアンテナ装置1の各々は、第1の実施例であるアンテナ装置1において、それぞれ、間隔Lgapを80mmと変化させることによって得られる。
【0101】
上述したように、LTE用のアンテナ装置においては低周波側の周波数帯域におけるアイソレーション特性が重視されるため、
図7には、600MHz以上1200MHz以下の周波数帯域を示した。ここでは、698MHz以上800MHz以下の周波数帯域に着目する。なお、
図7においては、698MHz、870MHz、及び960MHzに相当する位置を一点鎖線にて示している。
【0102】
図7を参照すれば、間隔Lgapが80mmである第2の実施例のアンテナ装置1は、698MHz以上800MHz以下の周波数帯域において、−22.5dBi以下のアイソレーション特性を示すことが分かった。第2の実施例のアンテナ装置1は、第1の実施例のアンテナ装置1と比較して、698MHz以上800MHz以下の周波数帯域におけるアイソレーション特性が低下するものの、800MHzを上回る全ての周波数帯域においてアイソレーション特性が向上することが分かった。
【0103】
(第1及び第2の比較例)
図7には、アンテナ装置1の第1及び第2の比較例であるアンテナ装置のアイソレーション特性もプロットしてある。第1及び第2の比較例のアンテナ装置は、第1の実施例であるアンテナ装置1において、それぞれ、間隔Lgapを90mm及び100mmと変化させることによって得られる。
【0104】
第1及び第2の比較例のアンテナ装置は、840MHz以上の周波数帯域において、第2の実施例のアンテナ装置より良好なアイソレーション特性を示すものの、700MHz以上800MHz以下の周波数帯域の一部において−22.5dBiを上回ることが分かった。
【0105】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。