【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リング状の保持部は指をリングに通すだけで容易に携帯端末を保持できる。しかし、携帯端末は、使用しない時は衣服のポケット等に収納して持ち歩くため、携帯端末の不使用時にはリング状の保持部は収納の邪魔にならないように折り畳まれた状態とすることが好ましい。
【0005】
一方で、携帯端末の使用時には折り畳まれた状態のリング状の保持部を素早く引き起こすことができなければならない。素早い引き起こし動作ができなければ携帯端末の操作性に支障をもたらすことにもなり、また、引き起こし動作に手間取ったために携帯端末を落下させる恐れもあるからである。
【0006】
特許文献2に記載されたリング状の保持部は、多角面形状の凹溝部とこれと同一の多角面を持つリング及びスリーブを備える。しかし、凹溝部と、リングの一部及びスリーブがいずれも同一の多角面であることで、面と面とが接し合うことによりリングを特定の位置に固定した際の安定性は高いものの、リングが携帯端末の背面に沿って折り畳まれた状態から引き起こすためには強い力が必要であるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、上記課題を解決するための手段として本発明に係る携帯端末用保持具は、裏面に、粘着パッドを備えた基板と、前記基板を貫通して取り付けられてなる回転軸ピンと、前記回転軸ピンに枢着され、前記基板の表面に対して平行に回動自在に設けられてなる回動部材と、前記回動部材の裏面に形成されてなる軸受部材嵌め込み溝と、前記軸受部材嵌め込み溝に嵌め込まれた軸受部材と、前記軸受部材に形成されてなる軸孔に挿通された軸によって、前記回動部材に取り付けられてなるリングとを備える。さらに、前記軸孔の断面形状は、全体が曲線からなり、辺が僅かに内側へ湾曲してなる隅丸の方形に形成されてなり、前記軸の断面形状が楕円形であることを特徴とする。
【0008】
また、前記軸孔は、前記軸受部材の表面側に解放部を有する軸溝と、前記解放部と連続する前記軸受部材嵌め込み溝の内面部分とから形成されてなり、前記解放部に沿った前記軸受部材嵌め込み溝の内面部分が僅かに凹んで凹溝に形成されてなることによって、前記凹溝が、断面が方形に形成された前記軸孔の一の隅を構成し、前記一の隅を構成する素材が、前記軸受部材を構成する素材よりも硬い素材からなることとしても良い。
【0009】
また、前記リングは、前記軸受部材を中心に、前記基板の表面から起き上がる方向に対して任意の角度に引き起こし動作が可能であることとしても良い。
【0010】
このようにしてなる前記携帯端末用保持具は、携帯端末の背面の略中央部に、前記粘着パッドにより着脱可能に付着して使用するものである。携帯端末の使用開始時に前記リングを引き起こし、該リングに、例えば人差し指を挿通して掌で携帯端末を保持することにより、携帯端末の使用中の落下防止に役立つものである。
【0011】
前記基板は、インジェクション樹脂と、前以ってデザインが印刷された樹脂フィルムとを材料にしてIML製法と呼ばれるインサート成形で成形されることが好ましい。前記基板の中央部に前記回動部材を枢着するための前記回転軸ピンを挿通する貫通孔が設けられ、表面側には前記回動部材が前記貫通孔に挿通される前記回転軸ピンにより枢着され、且つ、裏面側には前記粘着パッドが付着されるための台座が設けられてなる。
【0012】
前記回転軸ピンは、頭部と足部からなるリベット形状を有したもので、前記回動部材と前記基板を貫通して取り付けられてなる。前記基板の裏面部分に前記回転軸ピンの足部の先端部分がカシメ加工により前記回動部材の抜け落ちを防止し、前記基板に対して前記回動部材が滑らかに回動するように軸着されてなる。
【0013】
前記回動部材は、鉄やアルミニウム合金等の金属素材からなることが好ましく、該回動部材を枢着する前記回転軸ピンが軸通される貫通孔と、該回動部材の裏面側に前記リングの前記軸が挿通される前記軸受部材を嵌め込むための前記軸受部材嵌め込み溝とがそれぞれ形成されてなる。また、該回動部材の前記軸受部材嵌め込み溝の内面部分には僅かに凹んだ凹溝に形成されてなることが好ましい。
【0014】
前記軸受部材は、前記回動部材の材質より柔らかい材質の熱可塑性樹脂から成形されることが好ましい。このような素材であれば、前記軸の回転に合わせて前記軸溝の形状を変形させることができ、該軸の回転運動を妨げないからである。該軸受部材の表面側に前記解放部を有する前記軸溝が形成されてなり、前記回動部材の前記軸受部材嵌め込み溝に前記軸受部材を嵌め込んで、該軸溝の前記解放部と、該解放部と連続する前記回動部材の前記軸受部材嵌め込み溝の内面部分に有する前記凹溝とを合わせることにより前記軸孔を形成しても良い。
【0015】
前記軸孔の断面形状は、全体が曲線からなり、辺が僅かに内側へ湾曲してなる隅丸の方形に形成されてなるので、該軸孔に挿通された断面形状が楕円形の前記軸を滑らかに回転させることができる。さらに、前記隅丸の方形に形成された前記軸孔の隅と、前記リングの前記軸の長軸端とが一致する位置で前記リングを安定して挟持するように固定させることができる。
【0016】
前記基板の表面に沿って平行な軸をY軸とし、前記基板の表面に対して垂直な軸をX軸として、この二つの軸の間で前記リングが折り畳まれ、または、引き起こされる動作を該リングの動作の基本とすることができる。
【0017】
前記軸孔は、断面を形成する方形の対角線が前記Y軸及びX軸の方向と一致するように形成されてなることが好ましい。また、前記リングの前記軸は、断面を形成する楕円の長軸が、該リングが前記基板の表面に沿って折り畳まれた状態で前記X軸の方向と一致するように形成されてなることが好ましい。
【0018】
このような構成とすれば、前記軸孔を構成する前記軸受部材の素材よりも、前記回動部材の材質の方が硬い素材とからなり、該軸孔が前記軸溝及び前記一の隅を構成する前記凹溝とからなる場合に、前記リングの前記軸の前記長軸端が前記軸孔の前記一の隅と一致するX軸方向を向いた時がより強く該リングの該軸を保持することができる。
【0019】
すなわち、折り畳まれた状態の前記リングを引き起こされた状態の該リングよりもぐらつきを抑えて保持することができる。そのため、ポケット等へ携帯端末を収める際に前記リングがポケットの端等に引っ掛かることを防止できる。
【0020】
また、携帯端末の使用開始に伴って前記リングをY軸からX軸に引き起こし動作を行う際、断面が楕円の該リングの前記軸の前記長軸端と前記軸孔の隅の内面を形成する曲面とが線接触で接していることで、携帯端末の背面と平行に折り畳まれた状態の0度であるY軸の位置から、指先を該リングの先端に添え当てて軽く該リングを持ち上げることができる。続いて、辺が僅かに内側へ湾曲してなることによる押圧により該リングが約45度に引き起こされる手前で、該リングに指が入る段階から少しずつ重くなる。さらに続けていくと、該リングが45度を超えた辺りから90度の完全に引き起こされるX軸の手前の位置に掛けて軽くなるという、僅かではあるが軽重による前記リングの変位を感じることができる。
【0021】
また、携帯端末の使用が終わり前記リングを折り畳む際も同様で、前記リングをX軸からY軸に折り畳む際、該リングが引き起こされた90度の段階より指で軽く押し下げる。続いて、辺が僅かに内側へ湾曲してなることによる押圧により該リングが約45度に折り畳まれる手前で少しずつ重くなる。さらに続けていくと、該リングが45度を超えた辺りから0度の完全に折り畳まれるY軸の手前の位置に掛けて軽くなるという、僅かな軽重による前記リングの変位が感じられる。
【0022】
なお、この前記リングの引き起こし動作及び折り畳み動作は、Y軸とX軸の間で0度から90度の往復について述べたが、0度から90度、さらに90度を超えて180度であっても、折り畳まれた位置は両方ともY軸になるだけであるので、0度の場合と同一である。
【0023】
また、前記軸孔の四つの辺が僅かに内側へ湾曲してなることで、前記長軸端が前記隅丸部分と一致する位置のY軸からX軸の間の任意の角度であっても、楕円形断面の前記軸の前記長軸端が前記軸孔内面の各辺からの十分な押圧力を得ることができるため、該リングが90度以外にも任意の角度に引き起こし動作が可能となる。
【0024】
前記リングは、アルミニウム合金等から形成されることが好ましく、前記軸受部材に挿通される前記軸を形成する直線部分の断面形状は楕円形をしてなる。また、該リングは、大人の人差し指が挿入できる程度の内径で形成されてなり、その断面形状は横長で指を傷つけないように角が取れた方形をしてなることが好ましい。
【0025】
さらに、前記リングの前記軸と前記軸孔の接触形態は、特許文献2に記載されたような多角面同士の面接触ではなく、前記軸孔の断面形状の全体が曲線からなる線と、前記軸の断面形状が楕円形からなる線との曲線同士の線接触のために、前記リングの角度を変更する引き起こし動作や折り畳み動作を軽やかで滑らかに行うことができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、隅丸の方形に形成された前記軸孔の隅と前記リングの軸の長軸端とが一致する位置で前記リングを安定して固定することができる。
【0027】
また、前記軸孔の辺が僅かに内側へ湾曲してなることで、前記リングを前記軸孔の隅と一致する位置以外の角度とした場合にも、該リングを固定するための該軸孔の内面からの十分な押圧力を得ることができるため、該リングを任意の角度で固定することができる。
【0028】
また、前記軸孔の断面形状の全体が曲線からなるため、前記リングの角度を変更するための引き起こし動作及び折り畳み動作を滑らかに行うことができる。
【0029】
また、前記リングの前記軸と前記軸孔の内面とが面ではなく線で接しているため、折り畳まれた状態の前記リングを引き起こす際に、該リングに指先または爪を引っ掛けて軽い力を掛けるだけで容易に該リングを僅かに引き起こすことができる。同時に、僅かに引き起こされた該リングと前記基板との間に指を差し入れて該リングが該基板に対して垂直となるまで引き起こす動作の手掛かりとすることができる。
【0030】
このため、ポケットから携帯端末を取り出しつつ、前記リングを素早く引き起こし、引き起こされた該リングに指を通して携帯端末の保持を完了するまでの動作を軽い力をもってごく短時間に行うことができる。
【0031】
また、前記軸孔の一の隅を構成する素材を前記軸受部材よりも硬い素材から形成することで、該一の隅と前記リングの前記軸の長軸端とが一致する位置に該リングを折り畳む場合に、他の隅と一致させる場合よりも該リングの固定状態を安定させることができる。つまり、前記軸孔の一の隅が前記軸受部材よりも硬い金属素材であることにより、前記一の隅が収縮することがないため、該リングの該軸をより強く保持することができる。