【解決手段】リンギング抑制回路5は、伝送線路3を介して差動信号を伝送することで他のノードとの通信を行う通信回路6を備えたノードに設けられたものであり、抑制部7および動作状態設定部8を備えている。抑制部7は、差動信号の伝送に伴い発生するリンギングを抑制する抑制動作を行う。動作状態設定部8は、抑制部7の動作状態として、差動信号のレベルが変化したことを検出すると抑制動作を実行する通常動作状態と、抑制動作を常時行わない常時オフ状態とのうち、いずれかに設定する。
一対の通信線(3P、3N)を介して差動信号を伝送することで他のノード(2)との通信を行う通信回路(6)を備えたノード(2)に設けられたリンギング抑制回路(5、21、31、41)であって、
前記差動信号の伝送に伴い発生するリンギングを抑制する抑制動作を行う抑制部(7、22)と、
前記抑制部の動作状態として、前記差動信号のレベルが変化したことを検出すると前記抑制動作を実行する通常動作状態と、前記抑制動作を常時行わない常時オフ状態とのうち、いずれかに設定する動作状態設定部(8、23)と、
を備えるリンギング抑制回路。
前記動作状態設定部(23)は、前記抑制部の動作状態として、前記通常動作状態と、前記常時オフ状態と、前記抑制動作を常時行う常時オン状態とのうち、いずれかに設定する請求項1に記載のリンギング抑制回路。
さらに、前記一対の通信線間のインピーダンスである線間インピーダンスを検出し、その検出値に基づいて前記抑制部の動作状態を選択する選択信号を出力するインピーダンス検出部(32、42)を備え、
前記動作状態設定部は、前記インピーダンス検出部から出力される選択信号に基づいて前記抑制部の動作状態を設定する請求項1または2に記載のリンギング抑制回路。
さらに、前記一対の通信線間のインピーダンスである線間インピーダンスを検出し、その検出値が所定の第1閾値以下である場合には前記抑制部の動作状態として前記常時オフ状態を選択する選択信号を出力し、その検出値が前記第1閾値より高い値である場合には前記抑制部の動作状態として前記通常動作状態を選択する選択信号を出力するインピーダンス検出部(32)を備え、
前記動作状態設定部(8、23)は、前記インピーダンス検出部から出力される選択信号に基づいて前記抑制部の動作状態を設定する請求項1または2に記載のリンギング抑制回路。
さらに、前記一対の通信線間のインピーダンスである線間インピーダンスを検出し、その検出値が所定の第2閾値以下である場合には前記抑制部の動作状態として前記通常動作状態を選択する選択信号を出力し、その検出値が前記第2閾値より高い値である場合には前記抑制部の動作状態として前記常時オン状態を選択する選択信号を出力するインピーダンス検出部(42)を備え、
前記動作状態設定部(23)は、前記インピーダンス検出部から出力される選択信号に基づいて前記抑制部の動作状態を設定する請求項2に記載のリンギング抑制回路。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の複数の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各実施形態において実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について
図1〜
図5を参照して説明する。
【0011】
図2に示す通信ネットワーク1は、車両に搭載される複数のノード2間の制御通信のために、それらのノード2がツイストペア線で構成される伝送線路3を介して接続されたネットワークである。各ノード2は、それぞれ車両の状態を検出するためのセンサ類やセンサからの情報に基づいてアクチュエータをコントロールする電子制御装置である。
【0012】
各ノード2には、それぞれ図示しない通信回路が設けられており、伝送線路3での通信プロトコル、例えばCANプロトコルに従って送信データや受信データを通信信号に変換し、他のノード2との通信を行う。伝送線路3、つまり通信バスの途中には、適宜、伝送線路3を分岐するための分岐コネクタ4が設けられている。
【0013】
なお、
図2に示したノード2のうち、長方形内に「T」と記載したノード2は、その外部に終端抵抗を持つノードを示しており、以下の説明では、このような終端抵抗を有するノードのことをノード2Tとも呼ぶこととする。また、
図2に示したノード2のうち、単なる長方形のシンボルで表したノード2は終端抵抗を備えていないノードを示している。この場合、終端抵抗の抵抗値は、例えば120Ωとなっている。
【0014】
図1に示すリンギング抑制回路5は、通信回路6とともに、
図2に示したノード2に設けられる。リンギング抑制回路5は、抑制部7および動作状態設定部8を備える。抑制部7は、高電位側信号線3Pおよび低電位側信号線3Nからなる伝送線路3のインピーダンスを低下させることにより、差動信号の伝送に伴い発生するリンギングを抑制する抑制動作を行う。なお、高電位側信号線3Pおよび低電位側信号線3Nは、一対の通信線に相当するものであり、以下、単に信号線3Pおよび信号線3Nと省略することもある。
【0015】
動作状態設定部8は、抑制部7の動作状態を設定する。この場合、抑制部7の動作状態としては、通常動作状態および常時オフ状態の2つの動作状態のうちいずれかに設定することが可能となっている。通常動作状態は、抑制部7が通常の動作を実行する動作モードであり、具体的には、差動信号の信号レベルが変化したことを検出すると抑制動作を実行する、といった動作モードである。また、常時オフ状態は、抑制動作が常時行われないようにする動作モードである。
【0016】
動作状態設定部8は、外部から与えられる選択信号SELの信号レベルに基づいて、抑制部7の動作状態を設定する。選択信号SELは、抑制部7の動作状態を選択するための信号である。具体的には、選択信号SELは、Lレベルのときに通常動作状態を選択することを表し、Hレベルのときに常時オフ状態を選択することを表すようになっている。なお、選択信号SELのHレベルは、回路の電源電圧Vccに相当し、Lレベルは回路の基準電位であるグランド(GND)に相当する。
【0017】
このようなリンギング抑制回路5の具体的な構成としては、例えば
図3に示すような構成を採用することができる。
図3に示すように、リンギング抑制回路5は、通信回路6とともに、信号線3P、3Nの間に並列に接続されている。リンギング抑制回路5は、ソースがいずれも信号線3Nに接続される4つのNチャネル型MOSFETであるトランジスタT1〜T4と、Pチャネル型MOSFETであるトランジスタT5とを備えている。
【0018】
トランジスタT1、T3のゲートは、信号線3Pに接続されている。トランジスタT4のドレインは、信号線3Pに接続されており、トランジスタT2、T3のドレインは、トランジスタT4のゲートに接続されているとともに抵抗素子R1を介してトランジスタT5のドレインに接続されている。
【0019】
トランジスタT5のソースは、電源線11に接続されている。電源線11には、リンギング抑制回路5の動作用の電源電圧Vccが供給される。トランジスタT5のゲートは、外部から選択信号SELを入力するための入力端子12に接続されている。したがって、トランジスタT5は、ゲートに与えられる選択信号SELに応じてオンオフされる。
【0020】
トランジスタT1のドレインは、抵抗素子R2を介して電源線11に接続されているとともに、抵抗素子R3を介してトランジスタT2のゲートに接続されている。また、トランジスタT2のゲートは、コンデンサC1を介して信号線3Nに接続されている。抵抗素子R3およびコンデンサC1は、RCフィルタ回路13を構成している。トランジスタT4のゲートは、抵抗素子R4を介して信号線3Nに接続されている。
【0021】
このような構成において、トランジスタT1〜T4、抵抗素子R1〜R3およびコンデンサC1により抑制部7が構成されている。また、トランジスタT5および抵抗素子R4により動作状態設定部8が構成されている。なお、抵抗素子R4の抵抗値は、抵抗素子R1の抵抗値よりも高い値に設定されている。
【0022】
次に、上記構成の作用について、
図4を参照して説明する。なお、
図4では、有効に機能しない回路素子などの図示を省略している。
[1]通常動作状態
抑制部7が通常動作状態に設定される場合、Lレベルの選択信号SELが与えられるため、トランジスタT5がオンされる。そのため、
図4(a)に示すように、トランジスタT4のゲートが抵抗素子R1を通じてプルアップされた状態となる。これにより、リンギング抑制回路5は、特開2012−257205号公報の
図1に示された従来のリンギング抑制回路と同様の回路構成となる。したがって、抑制部7が通常動作状態に設定された
図4(a)に示すリンギング抑制回路5によれば、従来のリンギング抑制回路と同様のリンギング抑制動作を実行することができる。
【0023】
すなわち、この場合、伝送線路3は、ハイレベル、ロウレベルの2値信号を差動信号として伝送する。例えば、電源電圧が5Vの場合、信号線3P、3Nは、非ドライブ状態においていずれも中間電位である2.5Vに設定され、差動電圧は0Vであり、差動信号はレセッシブを表すロウレベルとなる。
【0024】
そして、通信回路6の送信回路(図示略)が伝送線路3をドライブすると、信号線3Pは例えば3.5V以上に、信号線3Nは例えば1.5V以下にドライブされ、差動電圧は2V以上となり、差動信号はドミナントを表すハイレベルとなる。また、図示しないが、信号線3P、3Nの両端は120Ωの終端抵抗により終端されている。したがって、差動信号の信号レベルがハイレベルからロウレベルに変化する際には、伝送線路3が非ドライブ状態となり伝送線路3のインピーダンスが高くなることから、差動信号波形にリンギングが発生する。
【0025】
そこで、リンギング抑制回路5は、差動信号の信号レベルがハイレベルからレセッシブを表すロウレベルに変化したことをトリガとして、トランジスタT4をターンオンさせることで抑制部7による抑制動作を開始する。この動作は、次のようにして実現される。すなわち、差動信号のレベルがハイレベルの場合、トランジスタT1、T3がオンしているため、トランジスタT2はオフしている。したがって、トランジスタT4はオフ状態となっている。
【0026】
この状態から、差動信号の信号レベルがハイレベルからロウレベルに変化すると、トランジスタT1、T3がターンオフするため、トランジスタT4がターンオンする。すると、信号線3P、3Nの間は、トランジスタT4のオン抵抗を介して接続されることになり、インピーダンスが低下する。これにより、差動信号の信号レベルがハイレベルからロウレベルに変化する立ち下がり期間に発生する波形歪みのエネルギーが上記オン抵抗により消費され、リンギングが抑制される。
【0027】
[2]常時オフ状態
抑制部7が常時オフ状態に設定される場合、Hレベルの選択信号SELが与えられるため、トランジスタT5がオフされる。そのため、
図4(b)に示すように、トランジスタT4のゲートは、抵抗素子R4によりプルダウンされた状態となる。そのため、トランジスタT4は、差動信号の信号レベルに関係なく、常時オフされたままとなる。したがって、抑制部7が常時オフ状態に設定された
図4(b)に示すリンギング抑制回路5は、常時、リンギングを抑制する抑制動作を行わない状態となる。
【0028】
以上説明した本実施形態によれば、次のような効果が得られる。
従来のリンギング抑制回路は、常時、差動信号の信号レベルが変化したことを検出すると、信号線3P、3N間に設けられたスイッチング素子をオンするようになっていた。そのため、このようなリンギング抑制回路が終端抵抗を有するノード2Tに設けられた場合、抑制動作が実行されるときにインピーダンスの不整合が生じるおそれがあった。
【0029】
このようにインピーダンスの不整合が生じると、
図5に示す波形Aのように、差動信号の信号レベル、つまり通信バスがドミナントからレセッシブへと変化する際、差動信号の波形にアンダーシュートが発生する。このように差動信号の波形に歪みが生じると、ノイズが増大するなどの問題が生じる。なお、
図5は、回路動作のシミュレーション結果であり、スター型転送路の通信ネットワークにおける終端抵抗を持つノードの通信バスの差電圧波形を示している。
【0030】
これに対し、本実施形態のリンギング抑制回路5は、抑制部7の動作状態として、抑制動作を常時行わない常時オフ状態に設定することが可能となっている。そのため、リンギング抑制回路5が終端抵抗を備えるノード2Tに設けられる場合、抑制部7を常時オフ状態に設定しておけば、信号線3P、3N間に終端抵抗だけが接続された状態が維持されてインピーダンスの不整合を起こすことが無くなる。その結果、差動信号のレベルが変化するタイミングにおいても終端抵抗によりインピーダンス整合が図られる。したがって、
図5に示す波形Bのように、差動信号のレベル、つまり通信バスがドミナントからレセッシブへと変化する際におけるリンギングの発生を抑制することができる。
【0031】
また、本実施形態のリンギング抑制回路5は、抑制部7の動作状態として、従来と同様の抑制動作を行う通常動作状態に設定することが可能となっている。そのため、リンギング抑制回路5が終端抵抗を備えないノード2に設けられる場合、抑制部7を通常動作状態に設定しておけば、抑制部7の抑制動作によって通信に伴い発生するリンギングを適切に抑制することができる。
【0032】
このように、本実施形態のリンギング抑制回路5によれば、共通の回路構成で、終端抵抗を備えるノード2Tおよび終端抵抗を備えないノード2のいずれに対しても設けることが可能となる。つまり、本実施形態のリンギング抑制回路5によれば、通信ノードの種類を問わずに用いることができるという優れた効果が得られる。
【0033】
また、この場合、従来のリンギング抑制回路に対し、選択信号SELを入力するための入力端子12、選択信号SELに基づいてトランジスタT4のゲートをプルアップするか否かを切り替えるトランジスタT5、トランジスタT4のゲートをプルダウンするための抵抗素子R4を追加するだけで、上述した動作状態の切り替えを実現することが可能となっている。したがって、本実施形態によれば、従来のリンギング抑制回路に対し、簡易な構成を追加するだけで、上述した効果を得ることができる。
【0034】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について
図6〜
図9を参照して説明する。
図6に示すように、本実施形態のリンギング抑制回路21は、抑制部22および動作状態設定部23を備える。抑制部22は、第1実施形態の抑制部7と同様の抑制動作を行う。ただし、抑制部22は、その動作状態として、通常動作状態、常時オフ状態および常時オン状態の3つの動作状態のうちいずれかに設定することが可能となっている。常時オン状態は、抑制動作が常時行われるようにする動作モードである。
【0035】
動作状態設定部23は、外部から与えられる選択信号SEL1、SEL2の信号レベルに基づいて、抑制部22の動作状態として上記3つの動作状態のうちいずれかに設定する。選択信号SEL1、SEL2は、抑制部22の動作状態を選択するための信号である。なお、選択信号SEL1、SEL2のHレベル、Lレベルは、それぞれ電源電圧Vcc、グランド(GND)に相当する。
【0036】
具体的には、
図7に示すように、選択信号SEL1、SEL2がいずれもLレベルのときに常時オン状態を選択することを表し、選択信号SEL1がHレベルであり且つ選択信号SEL2がLレベルであるときに通常動作状態を選択することを表す。また、選択信号SEL2がハイレベルであるときには、選択信号SEL1のレベルに関係なく、常時オフ状態を選択することを表す。
【0037】
このようなリンギング抑制回路21の具体的な構成としては、例えば
図8に示すような構成を採用することができる。
図8に示すように、リンギング抑制回路21は、
図3に示した第1実施形態のリンギング抑制回路5に対し、OR回路24、インバータ回路25、Pチャネル型MOSFETであるトランジスタT21、T22、Nチャネル型MOSFETであるトランジスタT23および抵抗素子R21〜R24が追加されている。
【0038】
OR回路24の各入力端子は、選択信号SEL1、SEL2をそれぞれ入力するための入力端子26、27に接続されている。OR回路24の出力信号は、インバータ回路25に入力されるとともに、トランジスタT21のゲートに与えられている。インバータ回路25の出力信号は、トランジスタT22のゲートに与えられている。この場合、トランジスタT5のゲートには、選択信号SEL2が与えられている。
【0039】
トランジスタT21、T22の各ソースは、電源線11に接続されている。トランジスタT21のドレインは、抵抗素子R21、R22を介して信号線3Nに接続されている。トランジスタT22のドレインは、抵抗素子R2を介してトランジスタT1のドレインに接続されている。また、この場合、トランジスタT1のドレインは、抵抗素子R23を介して信号線3Nに接続されている。
【0040】
抵抗素子R21、R22の相互接続点N21は、トランジスタT23のゲートに接続されている。トランジスタT23のドレインは、トランジスタT3のゲートに接続されるとともに、抵抗素子R24を介して信号線3Pに接続されている。トランジスタT23のソースは、信号線3Nに接続されている。
【0041】
このような構成において、トランジスタT1〜T4、抵抗素子R1〜R3およびコンデンサC1により抑制部22が構成されている。また、OR回路24、インバータ回路25、トランジスタT5、T21〜T23および抵抗素子R4、R21〜R24により動作状態設定部23が構成されている。なお、抵抗素子R21、R22の抵抗値は、トランジスタT21がオンされているときに、相互接続点N21の電圧が、トランジスタT23をオン可能な電圧値となるような値に設定されている。
【0042】
次に、上記構成の作用について、
図9を参照して説明する。なお、
図9では、OR回路24、インバータ回路25、有効に機能しない回路素子などの図示を省略している。
[1]通常動作状態
抑制部22が通常動作状態に設定される場合、Hレベルの選択信号SEL1およびLレベルの選択信号SEL2が与えられる。そのため、トランジスタT5、T22がオンされるとともに、トランジスタT21、T23がオフされる。これにより、
図9(a)に示すように、トランジスタT4のゲートが抵抗素子R1を通じてプルアップされた状態となり、トランジスタT1のドレインが抵抗素子R2を通じて電源線11に接続された状態となり、トランジスタT3のゲートが抵抗素子R24を通じて信号線3Pに接続された状態となる。
【0043】
そのため、リンギング抑制回路21は、特開2012−257205号公報の
図1に示された従来のリンギング抑制回路と同様の回路構成となる。したがって、抑制部22が通常動作状態に設定された
図9(a)に示すリンギング抑制回路21によれば、従来のリンギング抑制回路と同様のリンギング抑制動作を実行することができる。
【0044】
[2]常時オフ状態
抑制部22が常時オフ状態に設定される場合、Hレベルの選択信号SEL2が与えられる。そのため、トランジスタT5、T21、T23がオフされるとともに、トランジスタT22がオンされる。これにより、
図9(b)に示すように、トランジスタT4のゲートは、常に、抵抗素子R4によりプルダウンされた状態となる。そのため、トランジスタT4は、差動信号の信号レベルに関係なく、常時オフされたままとなる。したがって、抑制部22が常時オフ状態に設定された
図9(b)に示すリンギング抑制回路21は、常時、リンギングを抑制する抑制動作を行わない状態となる。
【0045】
[3]常時オン状態
抑制部22が常時オン状態に設定される場合、いずれもLレベルの選択信号SEL1、SEL2が与えられる。そのためトランジスタT5、T21、T23がオンされるとともに、トランジスタT22がオフされる。これにより、
図9(c)に示すように、トランジスタT5のゲートは、常に、抵抗素子R1を通じて電源線11に接続された状態となる。そのため、トランジスタT4は、差動信号の信号レベルに関係なく、常時オンされたままとなる。したがって、抑制部22が常時オン状態に設定された
図9(c)に示すリンギング抑制回路21は、常時、リンギングを抑制する抑制動作を行う状態となる。
【0046】
以上説明したように、本実施形態のリンギング抑制回路21は、抑制部22の動作状態として、第1実施形態のリンギング抑制回路5と同様に、通常動作状態および常時オフ状態に設定することが可能となっている。したがって、本実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0047】
また、リンギング抑制回路21は、抑制部22の動作状態として、抑制動作を常時行う常時オン状態に設定することが可能となっている。この常時オン状態では、信号線3P、3N間にトランジスタT4のオン抵抗が常時接続された状態となる。したがって、リンギング抑制回路21が終端抵抗の無いノード2に設けられたとき、常時オン状態に設定すれば、リンギング抑制回路21を終端抵抗として機能させることが可能となる。このようにすれば、外部に終端抵抗を設ける必要が無くなる分だけ、コスト低減の効果が得られる。
【0048】
(第3実施形態)
以下、第3実施形態について
図10および
図11を参照して説明する。
図10に示すように、本実施形態のリンギング抑制回路31は、第1実施形態のリンギング抑制回路5が備える各構成に加え、さらにインピーダンス検出部32を備えている。
【0049】
インピーダンス検出部32は、信号線3P、3N間のインピーダンスである線間インピーダンスZを検出する。線間インピーダンスZを検出する手法としては、周知の様々な手法を採用することができる。例えば、信号線3P、3N間に所定の電流し、そのときに生じる信号線3P、3N間の電位差を検出し、流した電流の値および検出した電位差から線間インピーダンスを算出するといった手法を採用することができる。
【0050】
インピーダンス検出部32は、外部から開始信号STARTが与えられたことをトリガとして、線間インピーダンスZの検出を開始する。インピーダンス検出部32は、線間インピーダンスZの検出値に基づいて、出力する選択信号SELの論理を決定する。そして、動作状態設定部8は、インピーダンス検出部32から与えられる選択信号SELの信号レベルに基づいて、抑制部7の動作状態を設定する。
【0051】
なお、選択信号SELの信号レベルと設定される動作状態との関係は、第1実施形態と同様である。また、開始信号STARTは、リンギング抑制回路31が設けられたノード2(電子制御装置)が通信ネットワーク1から切り離された状態において、そのノード2が起動されたときや、リンギング抑制回路31に対して電源供給が開始されたとき(電源立ち上げ時)などに与えられる。
【0052】
次に、上記構成の作用について
図11のフローチャートに沿って説明する。
開始信号STARTが与えられると、ステップS31に進み、抑制部7が常時オフ状態に設定される。なお、以下の処理が行われる際、抑制部7のトランジスタT4がオンする可能性が無ければ、ステップS31において抑制部7を通常動作状態に設定してもよい。
【0053】
ステップS32では、インピーダンス検出部32により線間インピーダンスZの検出が行われる。なお、以下の説明では、線間インピーダンスZの検出値のことを検出値Zとも呼ぶ。続くステップS33では、検出値Zが第1閾値Zth1以下であるか否かが判断される。
【0054】
第1閾値Zth1は、リンギング抑制回路31が設けられたノード2に外付けの終端抵抗が有るか否かを判断するための閾値である。したがって、第1閾値Zth1としては、終端抵抗の抵抗値(120Ω)または終端抵抗の抵抗値に多少のマージンを加えた値などに設定するとよい。これにより、検出値Zが第1閾値Zth1以下であれば、ノード2に外付けの終端抵抗が有ると判断し、第1閾値Zth1よりも高い値であれば、ノード2に外付けの終端抵抗が無いと判断することができる。
【0055】
検出値Zが第1閾値Zth1以下である、つまりノード2に外付けの終端抵抗が有ると判断された場合(ステップS33で「YES」の場合)、ステップS34に進む。ステップS34では、抑制部7が常時オフ状態に設定される。一方、検出値Zが第1閾値Zth1より大きい、つまりノード2に外付けの終端抵抗が無いと判断された場合(ステップS33で「NO」の場合)、ステップS35に進む。ステップS35では、抑制部7が通常動作状態に設定される。ステップS34またはS35の実行後、処理が終了となる。
【0056】
以上説明したように、本実施形態のリンギング抑制回路31は、線間インピーダンスZの検出値に基づいて、自ノード2に外付けの終端抵抗が有るか無いかを判断し、終端抵抗が有ると判断すると抑制部7を常時オフ状態に設定し、終端抵抗が無いと判断すると抑制部7を通常動作状態に設定するようになっている。したがって、本実施形態によれば、ユーザがノード2に終端抵抗が有るか無いかを確認して抑制部7の動作状態を切り替える、といった作業を行う必要がなく、ノード2の種類に応じて抑制部7の動作状態が適切な動作状態に自動的に切り替えられるので、動作状態の設定ミスが無くなるとともに、作業を簡単化できるという効果が得られる。
【0057】
また、本実施形態では、抑制部7を常時オフ状態に設定したうえで線間インピーダンスZの検出を行うようにしている。このようにすれば、線間インピーダンスZを検出する際に抑制部7のトランジスタT4がオンすることが無くなるため、線間インピーダンスの検出値に基づいて終端抵抗の有無を精度良く判断することが可能となる。
【0058】
(第4実施形態)
以下、第4実施形態について
図12および
図13を参照して説明する。
図12に示すように、本実施形態のリンギング抑制回路41は、第2実施形態のリンギング抑制回路21が備える各構成に加え、さらにインピーダンス検出部42を備えている。
【0059】
インピーダンス検出部42は、第3実施形態のインピーダンス検出部32と同様の構成であり、線間インピーダンスZを検出し、その検出値に基づいて、出力する選択信号SEL1、SEL2の論理を決定する。そして、動作状態設定部23は、インピーダンス検出部42から与えられる選択信号SEL1、SEL2の信号レベルに基づいて、抑制部22の動作状態を設定する。
【0060】
なお、選択信号SEL1、SEL2の信号レベルと設定される動作状態との関係は、第2実施形態と同様である。この場合、開始信号STARTは、リンギング抑制回路41が設けられたノード2(電子制御装置)が通信ネットワーク1に接続された状態において、そのノード2が起動されたときや、リンギング抑制回路31に対して電源供給が開始されたとき(電源立ち上げ時)などに与えられる。
【0061】
次に、上記構成の作用について
図13のフローチャートに沿って説明する。
開始信号STARTが与えられると、ステップS41に進み、抑制部22が常時オフ状態に設定される。なお、以下の処理が行われる際、抑制部22のトランジスタT4がオンする可能性が無ければ、ステップS41において抑制部22を通常動作状態に設定してもよい。また、以下の処理は、他のノード2間においても通信が行われていない期間に実行されるものとする。
【0062】
ステップS42では、インピーダンス検出部42により線間インピーダンスZの検出が行われる。続くステップS43では、検出値Zが第2閾値Zth2以下であるか否かが判断される。第2閾値Zth2は、通信バス上に2つの終端抵抗が存在するか否かを判断するための閾値である。したがって、第2閾値Zth2としては、終端抵抗の抵抗値の1/2の抵抗値(60Ω)またはその抵抗値に多少のマージンを加えた値などに設定するとよい。これにより、検出値Zが第2閾値Zth2以下であれば、通信バス上に2つの終端抵抗が存在すると判断し、第2閾値Zth2よりも高い値であれば、通信バス上に終端抵抗が1つしかない、または全く無いと判断することができる。
【0063】
検出値Zが第2閾値Zth2以下である、つまり通信バス上に2つの終端抵抗が存在する判断された場合(ステップS43で「YES」の場合)、ステップS44に進む。ステップS44では、抑制部22が通常動作状態に設定される。一方、検出値Zが第2閾値Zth2より大きい、つまり通信バス上に終端抵抗が1つしかない、または全く無いと判断された場合(ステップS43で「NO」の場合)、ステップS45に進む。ステップS45では、抑制部22が常時オン状態に設定される。ステップS44またはS45の実行後、処理が終了となる。
【0064】
以上説明したように、本実施形態のリンギング抑制回路41は、線間インピーダンスZの検出値に基づいて、通信バス上に2つの終端抵抗が有るか否かを判断し、2つの終端抵抗が有ると判断すると抑制部22を通常動作状態に設定し、終端抵抗が1つしか無い、または全く無いと判断すると抑制部22を常時オン状態に設定するようになっている。したがって、本実施形態によれば、ユーザが通信バス上に2つの終端抵抗が有るか否かを確認して抑制部22の動作状態を切り替える、といった作業を行う必要がなく、通信バス上に2つの終端抵抗が有るか否かに応じて抑制部22の動作状態が適切な動作状態に自動的に切り替えられるので、動作状態の設定ミスが無くなるとともに、作業を簡単化できるという効果が得られる。
【0065】
例えば、車両における通信ネットワーク1では、必ずしも全てのノード2が取り付けられるわけではなく、必ず取り付けられる標準的なノード2、ユーザの意図などに応じて適宜取り付けられる付加的なノード2、ユーザにより後から取り付けられる後付けのノード2などが存在する。付加的なノード2や後付けのノード2(例えばナビゲーション装置に関連する電子制御装置など)が取り付けられる場合と取り付けられない場合とでは、終端抵抗の配置などを含めた通信ネットワーク1の構成が変化する。本実施形態の構成によれば、後付けのノードの取り付け状況などによって通信ネットワーク1の構成が変化すると、その変化に応じて抑制部22が最適な動作状態となるように自動的に切り替えが行われる。
【0066】
(その他の実施形態)
なお、本発明は上記し且つ図面に記載した各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で任意に変形、組み合わせ、あるいは拡張することができる。
抑制部7、22の具体的構成としては、差動信号のレベルが変化すると伝送線路3のインピーダンスを低下させて差動信号の伝送に伴い発生するリンギングを抑制する動作を行い得る構成であれば、適宜変更可能である。例えば、抑制部7、22として、特開2012−244220号公報に記載されているような構成、つまり信号線3P、3N間に複数のスイッチング素子を直列接続した構成を採用してもよい。あるいは、抑制部7、22として、信号線3P、3N間にスイッチング素子および抵抗素子を直列接続した構成を採用してもよい。そして、この場合、動作状態設定部8、23の構成についても、抑制部7、22の変更に合わせて変更すればよい。
通信プロトコルはCANに限ることなく、一対の通信線を介して差動信号を伝送する通信プロトコルであれば適用が可能である。