【解決手段】一実施形態に係る投影システムは投影画像を制御する。この投影システムは、画像を記憶する画像データベースから、取引のために陳列されている商品に対応する画像を抽出する抽出部と、抽出部により抽出された画像をプロジェクタに送信することで、該プロジェクタに、陳列された商品の表面に該画像を投影させる送信部とを備える。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一または同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0012】
図1〜
図5を参照しながら、実施形態に係る投影システム1の機能および構成を説明する。投影システム1は、陳列された商品の表面に画像を投影するコンピュータシステムである。「商品」とは、有償または無償で取引可能な任意の有体物であり、その種類は何ら限定されない。「陳列された商品」とは、取引のために所定の場所に置かれた商品である。例えば、「陳列された商品」とは、実店舗の陳列棚または陳列台に置かれた商品である。「商品の表面」とは、陳列されている商品の外表面であり、例えば、箱または容器の外面である。「画像」とは、有体物の面に映し出された、人が視認できる像である。画像は静止画であっても動画であってもよい。また、画像は撮影により得られてもよいしコンピュータ・グラフィックスであってもよい。
【0013】
図1は、投影システム1の適用の一例を示し、具体的には、棚に置かれた商品(飲料缶)80に画像90を投影する例を示す。本実施形態では、投影システム1はバーコードリーダ2、カメラ3、およびプロジェクタ4を備える。バーコードリーダ2は、商品の表面に付されたバーコードを読み取る機器である。バーコードリーダ2の種類は限定されず、例えば一次元バーコードを読み取るリーダでもよいし、二次元バーコードを読み取るリーダでもよい。商品にバーコードを付す手法も何ら限定されない。例えば、バーコードが商品の表面に印刷されてもよいし、バーコードが印刷されたシールが商品の表面に貼られてもよい。カメラ3は、棚の前方にいる人(陳列されている商品の前に来た人)を撮影するための機器である。プロジェクタ4は、棚の最前列に置かれた商品の表面に画像を投影する機器であり、例えば小型の超短焦点プロジェクタであり得る。
図1は、バーコードリーダ2が棚の脇に設置され、カメラが棚板の前端に設置され、プロジェクタ4が棚板の下面に設置された例を示す。棚板の下面のような目立たない場所にプロジェクタ4を取り付けることで、陳列棚の見た目をよくすることができる。もっとも、各装置の設置場所は何ら限定されない。例えば、プロジェクタ4が棚板の前側面に取り付けられてもよい。あるいは、各装置が棚以外の物に取り付けられてもよい。
【0014】
図1は、プロジェクタ4が、星マーク、斜線、および文字列「ABC」が印刷された商品80の表面に、「期間限定!」という文字が入った吹き出しの画像90を映した例を示す。人がその商品80を棚から出して手に取ると、当然ながら、その画像(吹き出し)90がその缶から消え、星マーク、斜線、および文字列「ABC」のみが缶の表面に残ることになる。言い換えると、プロジェクタ4から提供される画像は、商品が棚に置かれているときのみ視認でき、客がその商品を入手する際には消えるものである。
【0015】
図2は投影システム1の機能構成を示す。投影システム1はバーコードリーダ2、カメラ3、およびプロジェクタ4に加えてデータベース群10およびサーバ20を備える。投影システム1内の各装置はインターネットやLANなどの通信ネットワークを介して他の装置との間でデータ通信を行うことができる。
図2は一つの陳列スペースの装置群(バーコードリーダ2、カメラ3、およびプロジェクタ4)しか示していないが、投影システム1は複数の陳列スペース(例えば、一つの棚を構成する複数の段、複数の棚など)に設けられた複数の装置群を含んでもよい。
【0016】
データベース群10は、投影システム1での処理に必要なデータを記憶する1以上のデータベースの集合である。本実施形態では、データベース群10は機器データベース11および画像データベース12を備える。「データベース」とは、プロセッサまたは外部のコンピュータからの任意のデータ操作(例えば、抽出、追加、削除、上書きなど)に対応できるようにデータ集合を記憶する機能要素(記憶部)である。データベースの実装方法は限定されず、例えばデータベース管理システムでもよいし、テキストファイルでもよい。
【0017】
機器データベース11は、棚に設置された機器の対応関係を示す機器情報を記憶する装置である。
図3は機器情報の例を示す。本実施形態では、機器情報の各レコードは、バーコードリーダを一意に特定するリーダIDと、カメラを一意に特定するカメラIDと、プロジェクタを一意に特定するプロジェクタIDとを含む。
図3は例えば、ある一つの陳列スペース(例えば、棚の一つの段)にバーコードリーダ「R01」、カメラ「C01」、および3台のプロジェクタ「P01」、「P02」、「P03」が設置されていることを示す。また、
図3はカメラ「C01」が二つの陳列スペース(例えば、一つの棚の複数の段)に対応することも示す。
【0018】
画像データベース12は,商品に投影する画像を示す画像情報を記憶する装置である。本明細書では、この画像を「投影画像」ともいう。
図4は画像情報のレコードの例を示す。本実施形態では、画像情報の各レコードは、商品を一意に特定する商品IDと、その商品に投影される画像(画像データ)と、投影条件とを含む。
図6は例えば、商品「P001」には常に画像Xが投影されるのに対して、商品「P002」については時間帯および棚の前に来た人の性別に応じて投影画像が切り替わることを示す。例えば、商品「P002」の前に女性が来た場合には、画像Ycがその商品「P002」に投影される。
【0019】
なお、データベース群10内の各データベースおよび各レコードの構成は上記のものに限定されず、各データベースに対して任意の正規化または冗長化を行ってよい。
【0020】
サーバ20は、プロジェクタに画像を提供するコンピュータである。
図5は、サーバ20の一般的なハードウェア構成を示す。サーバ20は、オペレーティングシステムやアプリケーション・プログラムなどを実行するプロセッサ101と、ROM及びRAMで構成される主記憶部102と、ハードディスクやフラッシュメモリなどで構成される補助記憶部103と、ネットワークカードあるいは無線通信モジュールで構成される通信制御部104と、キーボードやマウスなどの入力装置105と、モニタなどの出力装置106とを備える。
【0021】
図2に示すように、サーバ20は機能的構成要素として受信部21、抽出部22、および送信部23を備える。これらの機能要素は、プロセッサ101または主記憶部102の上に所定のソフトウェアを読み込ませてそのソフトウェアを実行させることで実現される。プロセッサ101はそのソフトウェアに従って、通信制御部104、入力装置105、または出力装置106を動作させ、主記憶部102または補助記憶部103におけるデータの読み出し及び書き込みを行う。処理に必要なデータまたはデータベースは主記憶部102または補助記憶部103内に格納される。
【0022】
受信部21は、バーコードリーダ2およびカメラ3からデータを受信する機能要素である。受信部21は、バーコードリーダ2からバーコードデータをリーダIDと共に受信し、そのバーコードデータから商品IDを抽出する。また、受信部21はカメラ3から撮影画像をカメラIDと共に受信する。受信部21は受信したこれらのデータを抽出部22に出力する。すなわち、本実施形態では受信部21はバーコード受信部および画像受信部として機能する。
【0023】
抽出部22は、陳列されている商品に対応する画像を画像データベース12から抽出する機能要素である。まず、抽出部22は入力されたデータに基づいて、少なくとも商品IDを含む検索条件を設定する。検索条件は現在時刻をさらに含んでもよい。また、検索条件は撮影された人(被写体)の属性をさらに含んでもよい。「人の属性」とは、人の性質または特徴である。属性の種類は何ら限定されず、例えば性別、年齢、大人および子供の区別などが挙げられる。抽出部22は入力された撮影画像に対する画像認識を実行することで、撮影された人(被写体)の属性を判定する。画像データベース12から画像を抽出する検索条件として用いられるものであれば、抽出部22は任意の属性を撮影画像から判定してよい。続いて、抽出部22は設定した検索条件に合致する画像を画像データベース12から読み出す。
【0024】
画像情報が
図4に示す例であるとして、例えば商品ID「P001」が入力された場合には、抽出部22は被写体の属性および現在時刻にかかわらず画像Xを読み出す。商品ID「P002」が入力され、被写体の属性が「女性」であると判定した場合には、抽出部22は画像Ycを読み出す。商品ID「P002」が入力され、被写体の属性が「男性」であると判定し、現在時刻が18:00である場合には、抽出部22は画像Ybを読み出す。
【0025】
抽出部22は読み出した画像を、リーダIDおよびカメラIDと共に送信部23に出力する。
【0026】
送信部23は、抽出部22により抽出された画像をプロジェクタ4に送信する機能要素である。送信部23はこの送信処理により、プロジェクタ4に、陳列された商品の表面にその画像を投影させる。送信部23は、入力されたリーダIDおよびカメラIDに対応する少なくとも一つのプロジェクタIDを機器データベース11から読み出し、そのプロジェクタIDで示される少なくとも一つのプロジェクタ4に、入力された画像を送信する。各プロジェクタ4は、その画像を受信し、陳列されている商品にその画像を投影する。
【0027】
次に、
図6を参照しながら、投影システム1の動作を説明するとともに本実施形態に係る投影方法について説明する。
【0028】
まず、受信部21がバーコードリーダ2からバーコードデータを受信して商品IDを取得し(ステップS11)、また、カメラ3から撮影画像を受信する(ステップS12)。続いて、抽出部22は少なくとも商品IDに基づいて検索条件を設定し(ステップS13)、その検索条件に合致する画像を画像データベース12から抽出する(ステップS14、抽出ステップ)。抽出部22は、撮影画像から判定した被写体の属性と現在時刻との少なくとも一方をさらに含む検索条件を設定してもよい。最後に、送信部23が抽出された画像をプロジェクタ4に送信する(ステップS15、送信ステップ)。
【0029】
次に、
図7を参照しながら、投影システム1(サーバ20)を実現するための投影プログラムP1を説明する。
【0030】
投影プログラムP1は、メインモジュールP10、受信モジュールP11、抽出モジュールP12、および送信モジュールP13を備える。メインモジュールP10は、投影システム1(サーバ20)の機能を統括的に制御する部分である。受信モジュールP11、抽出モジュールP12、および送信モジュールP13を実行することにより実現される機能はそれぞれ、上記の受信部21、抽出部22、および送信部23の機能と同様である。
【0031】
投影プログラムP1は、CD−ROMやDVD−ROM、半導体メモリなどの有形の記録媒体に固定的に記録された上で提供されてもよい。あるいは、投影プログラムP1は、搬送波に重畳されたデータ信号として通信ネットワークを介して提供されてもよい。
【0032】
以上説明したように、本発明の一側面に係る投影システムは、投影画像を制御する投影システムであって、画像を記憶する画像データベースから、取引のために陳列されている商品に対応する画像を抽出する抽出部と、抽出部により抽出された画像をプロジェクタに送信することで、該プロジェクタに、陳列された商品の表面に該画像を投影させる送信部とを備える。
【0033】
本発明の一側面に係る投影方法は、投影画像を制御するプロセッサを備える投影システムにより実行される投影方法であって、画像を記憶する画像データベースから、取引のために陳列されている商品に対応する画像を抽出する抽出ステップと、抽出ステップにおいて抽出された画像をプロジェクタに送信することで、該プロジェクタに、陳列された商品の表面に該画像を投影させる送信ステップとを含む。
【0034】
本発明の一側面に係る投影プログラムは、投影画像を制御する投影システムとしてコンピュータを機能させる投影プログラムであって、画像を記憶する画像データベースから、取引のために陳列されている商品に対応する画像を抽出する抽出ステップと、抽出ステップにおいて抽出された画像をプロジェクタに送信することで、該プロジェクタに、陳列された商品の表面に該画像を投影させる送信ステップとをコンピュータに実行させる。
【0035】
このような側面においては、商品が陳列されているときには該商品に対応する画像が該商品の表面に表示されるが、人がその商品を手に取ると、その画像はもはやその商品には映らなくなる。この仕組みにより、商品が陳列されているときと、客が実際に商品を手に取ったときとで商品の見た目を変えることができる。すなわち、場面に応じて商品の見た目を変えることができる。
【0036】
図8はこのような効果の一例を示す。この例は、商品(飲料缶)80の外装そのものをシンプルなデザインにして(
図8の左側)、陳列されている間だけ、追加のデザイン(例えば、宣伝文句、広告など)の画像90をプロジェクタにより商品の表面に映してその商品を目立たせる(
図8の中央)。客がその商品80を手に取って購入した後には、当然ながらその画像(追加のデザイン)90は商品80の表面上に現れないので、客はシンプルな外装の商品80を持つことになる(
図8の右側)。この仕組みを利用すれば、例えば、商品の外装そのものをシンプルで洗練された感じのデザインにしつつ、店頭では派手なデザインをその商品の表面に重畳表示させて注目を集めるようにすることができる。また、商品の表面に印刷すると却って客が敬遠する可能性が高いデザイン(例えば、宣伝文句、派手なデザインなど)を、印刷ではなく投影により商品の表面に表すことで、客が商品を手に取った以降にそのデザインを消すことができる。このような仕組みにより、商品の購入を促すことができる。
【0037】
さらに、
図8の上段および下段に示すように、一つの商品80に対して投影画像90を自由に設定できる。例えば、上段の投影画像90は宣伝文句を表し、下段の投影画像90は商品の概念または印象を表す。例えば、客の種類や時間帯などに応じて適切な画像を、陳列されている商品に投影することができる。このことも商品の購入の促進につながり得る。
【0038】
他の側面に係る投影システムでは、陳列されている商品に付されたバーコードを読み取ったバーコードリーダからバーコードデータを受信するバーコード受信部をさらに備え、抽出部が、バーコードデータから抽出された商品IDに対応する画像を抽出してもよい。商品の種類を一意に特定するための商品IDを商品のバーコードから自動的に取得することで、商品に投影する画像を正確に設定することができる。
【0039】
他の側面に係る投影システムでは、陳列されている商品の前に来た人を撮影したカメラから撮影画像を受信する画像受信部をさらに備え、抽出部が、撮影画像に対する画像認識を実行することで人の属性を判定し、陳列されている商品および該属性に対応する画像を抽出してもよい。この仕組みにより、商品を見ていると推定される人に合った画像をその商品に投影することができる。
【0040】
他の側面に係る投影システムでは、抽出部が、陳列されている商品および現在時刻に対応する画像を抽出してもよい。この仕組みにより、時間帯に応じた画像を商品に投影することができる。
【0041】
他の側面に係る投影システムでは、商品が棚に陳列され、プロジェクタが棚の棚板に取り付けられてもよい。
【0042】
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0043】
上記実施形態では受信部21がバーコードデータおよび撮影画像を受信したが、受信部21はこれら2種類のデータのうちいずれか一つのみを受信してもよい。あるいは、投影システムは受信部を備えなくてもよい。例えば、商品と、その商品に投影する画像とが予め決まっているのであれば、投影システムはその画像を画像データベースから読み出してプロジェクタに送信すればよい。
【0044】
上述したとおり、商品の種類は限定されない。例えば、商品は缶、瓶、またはペットボトルに入った飲料でもよいし、食料品でもよい。あるいは、商品は生理用品や避妊具などの衛生用品であってもよく、この場合には、店頭での購入手続の際に一般に行われているような、衛生商品を紙袋に入れる作業が不要になる。もちろん、商品は、食品および衛生用品以外の任意の有体物であってもよい。
【0045】
画像の投影方法は限定されない。例えば、1台のプロジェクタからの画像が複数個の同一商品に跨がって映るようにプロジェクタと商品との位置関係を調整してもよい。あるいは、隣り合う二列の同一商品について、各列にバーコードリーダを設け、各列の投影画像が異なるように画像情報(画像および投影条件)を設定することで、同一商品に投影される画像を列ごとに異ならせてもよい。
【0046】
商品に印刷された元々のデザインと投影画像との位置関係も何ら限定されない。例えば、商品の元々のデザインと投影画像とが重なり合ってもよい。あるいは、そのような重畳が起こらないように、商品そのものデザインと画像が投影される位置との少なくとも一方を調整してもよい。例えば、商品そのもののデザイン(このデザインは原材料または栄養成分の表示を含み得る)を商品の上部または下部に印刷して商品の中央部には何も印刷せず、この中央部に画像を投影してもよい。
【0047】
バーコードリーダ、カメラ、プロジェクタ、およびデータベース群は、投影システム以外の他のシステムに属していてもよい。
【0048】
本発明の一側面に係る投影システムをA/Bテストに利用してもよい。例えば、投影システムは、第1の期間では、ある商品の特定の列に画像Axを投影させ該商品の別の列に画像Ayを投影させる。その後の第2の期間では、投影システムは、その商品の特定の列に画像Bxを投影させ該商品の別の列に画像Byを投影させる。そして、投影システムは、第1および第2の期間での該商品の販売数を比較し、その後(第3の期間)は、販売数が多かった方の画像を表示させる。投影システムは、各商品の販売数を記憶するデータベースを参照して、該第3の期間における投影画像を決定する。このように投影システムを用いることで、従来は行われていなかった実店舗でのA/Bテストを実施できる。
【0049】
少なくとも一つのプロセッサにより実行される投影システムでの処理手順は上記実施形態での例に限定されない。例えば、投影システムは上述したステップ(処理)の一部を省略してもよいし、別の順序で各ステップを実行してもよい。また、上述したステップのうちの任意の2以上のステップが組み合わされてもよいし、ステップの一部が修正又は削除されてもよい。あるいは、投影システムは上記の各ステップに加えて他のステップを実行してもよい。