(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-229012(P2017-229012A)
(43)【公開日】2017年12月28日
(54)【発明の名称】光ファイバ中継装置および下水道管渠通信システム
(51)【国際特許分類】
H04B 10/80 20130101AFI20171201BHJP
E03F 7/00 20060101ALI20171201BHJP
H04B 10/27 20130101ALI20171201BHJP
【FI】
H04B9/00 380
E03F7/00
H04B9/00 270
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-125508(P2016-125508)
(22)【出願日】2016年6月24日
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(71)【出願人】
【識別番号】000220675
【氏名又は名称】東京都下水道サービス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】500343371
【氏名又は名称】一般社団法人日本下水道光ファイバー技術協会
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】田所 秀之
(72)【発明者】
【氏名】畑山 正美
(72)【発明者】
【氏名】鷹野 秀明
(72)【発明者】
【氏名】川上 博行
(72)【発明者】
【氏名】熱田 孝
(72)【発明者】
【氏名】三浦 春好
(72)【発明者】
【氏名】藤平 貞義
【テーマコード(参考)】
2D063
5K102
【Fターム(参考)】
2D063BA37
5K102AD01
5K102AL01
5K102AL07
5K102AN01
5K102AN03
5K102MH04
5K102PB01
5K102PH32
5K102PH48
5K102PH49
(57)【要約】
【課題】下水道管渠内における無電源環境下でも、複数種類のセンサによるセンシングデータの計測を可能とする光ファイバ中継装置および下水道管渠通信システムを提供する。
【解決手段】下水道管渠内に設置され、複数芯の光ファイバケーブルで接続された光ファイバ中継装置であって、複数芯の光ファイバケーブルから特定の光ファイバを取り出す光成端部と、光受電部と、光コネクタと、電気コネクタとを含み、光受電部は、光ファイバからの光により電力を得て駆動電力とし、電気コネクタからの信号を光信号に変換して光ファイバに送出し、光コネクタと光成端部との間に設けられた光ファイバにより光信号を送受信するとともに、光成端部において、光ファイバが融着接続されていることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下水道管渠内に設置され、複数芯の光ファイバケーブルで接続された光ファイバ中継装置であって、
前記複数芯の光ファイバケーブルから特定の光ファイバを取り出す光成端部と、光受電部と、光コネクタと、電気コネクタとを含み、
前記光受電部は、光ファイバからの光により電力を得て駆動電力とし、前記電気コネクタからの信号を光信号に変換して光ファイバに送出し、
前記光コネクタと前記光成端部との間に設けられた光ファイバにより光信号を送受信するとともに、
前記光成端部において、光ファイバが融着接続されていることを特徴とする光ファイバ中継装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光ファイバ中継装置であって、
前記電気コネクタに電気式センサを接続し前記駆動電力を用いて計測を行うとともに、前記光コネクタに光ファイバセンサを接続することを特徴とする光ファイバ中継装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の光ファイバ中継装置であって、
前記光受電部は、WDM(波長分割多重)カプラを備え、前記駆動電力を得るための光ファイバと前記電気コネクタ側に接続される光ファイバを、前記WDM(波長分割多重)カプラによって多重化することで1本化することを特徴とする光ファイバ中継装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の光ファイバ中継装置であって、
前記駆動電力は、間歇的に前記電気コネクタ側に与えられることを特徴とする光ファイバ中継装置。
【請求項5】
請求項2に記載の光ファイバ中継装置であって、
前記光ファイバセンサを接続する光コネクタ以外に、情報通信用の第2の光コネクタを備えていることを特徴とする光ファイバ中継装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の光ファイバ中継装置であって、
光ファイバ中継装置は、水密構造の箱体で構成されており、前記光ファイバケーブル、光コネクタ及び電気コネクタは、前記箱体の下部に設けられていることを特徴とする光ファイバ中継装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の複数の光ファイバ中継装置が、互いに光ファイバケーブルで接続され、その一部に親局を備えて構成されたことを特徴とする下水道管渠通信システム。
【請求項8】
請求項7に記載の下水道管渠通信システムであって、
前記親局は、前記光ファイバケーブル内の光ファイバに光パワーを有する高出力レーザを印加し、光ファイバ中継装置は当該高出力レーザの光パワーを光電変換して前記駆動電力を得ることを特徴とする下水道管渠通信システム。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の下水道管渠通信システムであって、
前記電気コネクタからの信号の工学値への変換処理を、前記親局側にて実施することで、光ファイバ中継装置側における消費電力を低減させることを特徴とする下水道管渠通信システム。
【請求項10】
請求項7から請求項9のいずれか1項に記載の下水道管渠通信システムであって、
光ファイバ中継装置内でWDM(波長分割多重)カプラによる光受電を行い、計測データ送信用の光ファイバに光カプラを設置することで、分光し、ツリー型構成で、複数の光ファイバ中継装置を1本の光ファイバに接続可能とすることを特徴とする下水道管渠通信システム。
【請求項11】
請求項7から請求項10のいずれか1項に記載の下水道管渠通信システムであって、
前記電気コネクタからの信号の送信方式を、データ送信間隔に比べてデータ伝送時間が充分小さくなるようにデータ送信間隔を決定し、データ送信間隔内において、複数の前記電気コネクタからの信号の送信タイミングをランダムとすることで、伝送制御に伴う電力消費量を低減することを特徴とする下水道管渠通信システム。
【請求項12】
請求項7から請求項11のいずれか1項に記載の下水道管渠通信システムであって、
前記電気コネクタからの信号をマルチプレクサ経由で接続することで、1本の光ファイバで、前記電気コネクタからの信号を同一の光ファイバ中継装置に複数接続可能とすることを特徴とする下水道管渠通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は下水道管渠内に設置する光ファイバ中継装置および下水道管渠通信システムに係り、特に光ファイバを活用して下水道管路内の状況を監視、計測し、通信により情報収集する光ファイバ中継装置および下水道管渠通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
日本国内の下水道管渠には光ファイバの敷設が進められており、主に下水道事業体の自営通信網として活用されている。日本下水道光ファイバ技術協会によれば、2014年度末における敷設総延長は約2250kmに及んでいる。
【0003】
係る下水道管渠光ファイバ網は、例えば下水道管渠に接続されたポンプ場などの下水場施設間に設置されて通信を行うことに使用されているが、近年では下水道管渠光ファイバ網の一部にセンサ(光ファイバセンサ)を備えた光ファイバ中継装置を設置して、下水道管渠内の状況を監視、計測することが検討されている。このために、光ファイバセンサの開発、設置が推進されている。ここで用いられる光ファイバセンサは、耐環境性に優れ、計測ポイントに電源がなくても計測可能であり、既に水位センサが実用化されている。
【0004】
しかしながら光ファイバセンサは、計測可能な物理量に制約がある。たとえば、下水道管渠内でのモニタリングニーズの高い水質や各種ガス濃度などは計測することが困難である。このような物理量は電気式センサならば計測可能である。しかしながら下水道管渠で電源を確保することは一般に困難で、電池駆動をしたとしても定期的な電池交換が必要となる。
【0005】
一方、計測のニーズに応えるために、計測値を無線通信で収集することが考えられる。しかし、下水道管渠内では湿度100%のため無線電波が伝播しにくく、地下をアドホック通信していくことは困難である。他方、地上の無線通信設備を利用して通信を行うには許可が必要であり、手続きが煩雑化する。このため下水道光ファイバ設備の利用が有効であるが、光通信を行うための電力確保が困難である。
【0006】
これらの解決策として、近年、光ファイバによる給電技術が検討されている。例えば、特許文献1には、光ファイバ給電によりカメラを動作させ、取得した画像データを別の光ファイバで伝送する技術が開示されている。これは、光給電用光源とカメラとが1対1対応で、上りと下りの2本の光ファイバを用いる方式である。光給電により単一機能のセンシングを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014−143492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
下水道管渠内のモニタリングにおいては、単一の物理量計測ではなく、複数種の物理量を同時に無電源環境下で計測し、データ通信可能であることが求められる。
【0009】
しかしながら、これを解決するために下水道モニタリングに光給電技術を適用する場合には、実用上の課題が3つある。
【0010】
一つ目は、下水道管渠内という過酷環境下ではセンサの経年劣化や破損などが本質的に起こりやすいが、センサ設置/交換には大変な手間がかかる点である。光ファイバ配線時のファイバ融着作業のためには、道路を一時的に封鎖してマンホールより作業員が管渠内に入って実施することになるが、融着本数に比例して作業時間は長くなる。作業効率の面だけでなく、厳しい労働環境下での作業となるため管渠内での作業時間は短いほうが望ましい。
【0011】
二つ目は、安全性の確保である。上記課題を解決しようとしてファイバ融着の代わりに光コネクタを使用した場合、作業現場での誤接続リスクも大きくなってしまう。光給電で使用するレーザはクラス3B〜4であるので、直接光(クラス3B及び4)や間接光(クラス4)が作業員の目に入ることを回避する必要がある。インターロック機構は装備されるが、下水道管渠の敷設状態が不可視であるため不測の事態が起こるリスクも伴う。
【0012】
三つ目は、既設の下水道光ファイバケーブルは芯数に制約があるので、光ファイバ1本あたりの計測ポイントを増やす必要があることである。
【0013】
以上のことから本発明においては、下水道管渠内における無電源環境下でも、複数種類のセンサによるセンシングデータの計測を可能とする光ファイバ中継装置および下水道管渠通信システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
以上のことから本発明においては、下水道管渠内に設置され、複数芯の光ファイバケーブルで接続された光ファイバ中継装置であって、複数芯の光ファイバケーブルから特定の光ファイバを取り出す光成端部と、光受電部と、光コネクタと、電気コネクタとを含み、光受電部は、光ファイバからの光により電力を得て駆動電力とし、電気コネクタからの信号を光信号に変換して光ファイバに送出し、光コネクタと光成端部との間に設けられた光ファイバにより光信号を送受信するとともに、光成端部において、光ファイバが融着接続されていることを特徴とする。
【0015】
また本発明においては、光ファイバ中継装置が、互いに光ファイバケーブルで接続され、その一部に親局を備えて構成されたことを特徴とする下水道管渠通信システムである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、下水道管渠内における無電源環境下でも、複数種類のセンサによるセンシングデータの計測が可能となる。
【0017】
本発明の実施例によれば、センサの設置/交換作業の工数減可能、かつ光ファイバ1本あたりの計測ポイントを増やすことができる。
【0018】
より具体的に述べると、本発明の実施例によれば、電気/光ファイバセンサが光ファイバ中継装置とコネクタ接続されているので、センサの設置/交換にかかる作業時間を大幅に短縮することができる。
【0019】
また本発明の実施例によれば、ファイバ融着作業は光給電用光ファイバに限定することで作業時間の短縮を図りつつ、センサ交換などメンテナンスの際に誤接続などのリスクをなくすことが可能となる。また、給電光側でのコネクタ接続を回避することで、作業安全性を確保している。
【0020】
さらに本発明の実施例によれば、電気式センサを間欠的に動作させることでセンサの平均消費電力を抑制できるので、光ファイバ1本で可能な給電能力で、計測ポイント数を増やすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に係る下水道管渠通信システムの構成例を示す図。
【
図2a】実施例1に係る親局1内の光源装置1Gの構成例を示す図。
【
図2b】実施例1に係る光ファイバ中継装置3内の構成例を示す図。
【
図3】マイコン234に実装したロジックの処理フローの例を示す図。
【
図4a】実施例2に係る親局1内の光源装置1Gの構成例を示す図。
【
図4b】実施例2に係る光ファイバ中継装置3内の構成例を示す図。
【
図5】複数の光ファイバ中継装置3を光ファイバ2により直列接続する構成を示す図。
【
図6】
図5の構成で、ノード間同期をせずにデータをランダム送信する方式を示す図。
【
図7】電気コネクタ41から電気式センサS2間の構成を示した図。
【
図8】複数の電気式センサS2を接続した光ファイバ中継装置3の構成を示図。
【
図9a】実施例6に係る親局1内の光源装置1Gの構成例を示す図。
【
図9b】実施例6に係る光ファイバ中継装置3内の構成例を示す図。
【
図10】光ファイバ中継装置3に光コネクタ42Aを設置した構成を示す図。
【
図11】下水道管渠C内に設置されるセンサの具体事例を示す図。
【
図12】光ファイバ中継装置3を構成する光中継箱3Gの構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下本発明の実施例について図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0023】
図1は、本発明に係る下水道管渠通信システムの構成例を示している。
【0024】
図1において、Pはポンプ場、下水処理場など、電源設備を有する下水場施設、Mは下水道管渠Cの各所に設けられたマンホール部であり、下水場施設Pには光源装置1Gを備えた親局1、マンホール部Mには、一般には無電源の光ファイバ中継装置3が設置されている。親局1と複数の光ファイバ中継装置3の間は、多芯の光ファイバで構成された光ファイバケーブル2が直列接続されて配置されている。また光ファイバ中継装置3には、センサS1、S2が接続されている。センサS1は光ファイバセンサであり、センサS2は電気式センサである。
図1の回路構成により、センサS1、S2で検知した下水道管渠C内の検知情報が親局1に伝送される。
【0025】
図2aは実施例1に係る親局1内の光源装置1G、
図2bは実施例1に係る光ファイバ中継装置3内の構成例を示している。光源装置1Gと光ファイバ中継装置3の組み合わせ回路構成により、光ファイバセンサS1の検知信号SOを入手するとともに、光源装置1Gから光ファイバ中継装置3へ光給電することにより、光ファイバ中継装置3内の電気式センサS2を駆動し、電気式センサS2の取得データを光信号に変換して、光ファイバ2で送り返してくる。
【0026】
図2aの光源装置1Gは、光給電用基板11と光ファイバセンサ用コンバータ12を主たる構成要素として構成されており、光給電用基板11内の高出力レーザ発生器111で生成した数100mWの光パワーを有する高出力レーザRSが光ファイバケーブル2内の光給電用光ケーブル21に送出される。他方、後述する
図2bの光ファイバ中継装置3内の電気式センサS2で検知された電気式検知信号SPが光ファイバケーブル2内の電気式検知信号用光ファイバ22に印加されている。電気式検知信号SPは、光給電用基板11内の電気式検知信号SP受信用のフォトダイオード112、インタフェイス回路113を介してデータDEとして取り出される。また
図2bの光ファイバ中継装置3内の光ファイバセンサS1で検知された光検知信号SOが光ファイバケーブル2内の光検知信号用光ファイバ23に印加されている。光検知信号SOは、光給電用基板11内の光ファイバセンサ用コンバータ12を介してデータDOとして取り出される。
【0027】
図2bの光ファイバ中継装置3は、数〜100芯程度からなる光ファイバケーブル同士の接続をするために用いられている。光ファイバ中継装置3は、人孔(マンホール部M)や下水道管渠Cの内壁に設置され、光ファイバケーブル同士を1芯ずつ融着接続しており、光ファイバ中継装置3の箱全体は防水処理がなされている。
【0028】
光ファイバ中継装置3は、成端部31と制御基板32を主たる構成要素として構成されており、光ファイバケーブル同士の接続処理は成端部31において、例えば融着処理7により行われている。なお成端部31には、光源装置1Gからの光ファイバケーブル2Iと次段設備である光ファイバ中継装置3または他方端の光源装置1Gに至る光ファイバケーブル2Oが導入されており、当該光ファイバ中継装置3に関与する光ファイバ(
図2bの例では21、22、23)が、光ファイバ中継装置3内の制御基板32に融着処理7により取り込まれている。
【0029】
制御基板32内のフォトダイオード321には光給電用光ファイバ21が接続されており、光給電用基板11内の高出力レーザ発生器111で生成した数100mWの光パワーを有する高出力レーザRSがフォトダイオード321に接続されることで光エネルギーを電力に変換する。この電力を用いてDC/DCコンバータ322を駆動し、バッテリ323に蓄電する。蓄電された電力によりマイコン324を動かし、電気式センサS2により検知したデータを取得し、変調信号を生成する。レーザ325により光変調信号を電気式検知信号用光ファイバ22に入力して、電気式検知信号SPを光源装置1Gに送出する。光ファイバ22は再び光源装置1Gに戻り、電気式検知信号用光ファイバ22の電気式検知信号SPはフォトダイオード112に接続されて電気信号に変換され、インタフェイス回路113を介してデータDOとして出力される。また光ファイバセンサS1により検知された光検知信号SOは、光検知信号用光ケーブル23に印加されて光源装置1Gに送られ、光給電用基板11内の光ファイバセンサ用コンバータ12を介してデータDOとして取り出される。なお
図2bにおいて41は電気コネクタ、42は光コネクタである。
【0030】
上記構成における本発明の第1の特徴は、光成端部31と制御基板32の間の光給電用光ファイバ21が融着箇所7で融着接続され、電気式センサS2とは電気コネクタ41で、光ファイバセンサS1とは光コネクタ42で接続されている点である。また融着作業は、成端部31において内部取り込み用ファイバ21、22、23に対してのみ実施し、他のファイバは後段に直接スルーさせるのみとすることができる。これによって、工数を有する光融着作業が必要な箇所数を減らすことができる。また、光給電用光ファイバ21は光給電で使用するため、クラス3B〜4相当の強い光が入力されており、直接光(クラス3B及び4)や間接光(クラス4)が作業員の目に入る危険性が常にある。特に下水道管渠では、途中の経路の光ファイバが不可視であるため、インターロック機構が装備されても、不測の事態が起こるリスクも伴うため、本質安全化が必要である。そのため、高出力レーザ発生器111からの出力光は500mW未満としてクラス3Bとすることで、間接光が作業員の目に入っても問題ないようにすることができる。
【0031】
本発明の第2の特徴は、電気式センサS2が間欠動作をする点である。これにより、平均消費電力を抑制することができる。バッテリ323に蓄電された電力によりマイコン324を駆動し、電気コネクタ41を介して接続された電気式センサS2を動作させ、センサデータSPをマイコン324に格納する。マイコン324からは光変調電気信号を送出し、レーザ325により光信号に変換し、光ファイバ22に入力する。ここで、マイコン324でロジックを組み、電気式センサ51を間歇的に動作させることで平均消費電力を抑制し、バッテリ323に蓄電された電力消費を節約することができる。
【0032】
図3に、マイコン234に実装した上記ロジックの処理フローの例を示す。本処理は定周期で起動される。起動される毎に処理ステップS91でタイマー状態をチェックする。本タイマーは電気式センサS2の動作タイミングを計るものである。カウント中(動作タイミングではない)の場合は、本処理を終了させ、カウントアップ(動作タイミング)である場合は、処理ステップS92にてバッテリ323の充電状態をチェックし、充電量が充分であると判定された場合、処理ステップS95、処理ステップS96、処理ステップS97の処理を実行し、電気式センサ電源オン、計測データ取り込み、送信した後、電気式センサS2の電源をオフすることで、電気式センサの間歇動作を実現する。最後に処理ステップS98でタイマーをセットして、次の動作タイミングに向けたカウントを開始させる。
【0033】
光ファイバセンサ用コンバータ12は光ファイバ23に接続され、信号光を送出し、光ファイバから戻ってくる光信号を検出し、所望の物理量に変換する機能を有する。具体例としては、FBG(ファイバブラッググレーティング)型の水位センサの場合、光ファイバ23に信号光を出力し、各計測点からの反射スペクトルの中心波長が水圧によりどれだけずれているかを水位へ換算して出力する。反射光は、光ファイバ23を経由して伝送され、光ファイバセンサ用コンバータ12にて検出される。光ファイバ23は、光ファイバ中継装置3において、光コネクタ42を通じて、光ファイバセンサS1に接続されている。光ファイバセンサS1を経由した光ファイバ23は、もう一端の多芯光ファイバケーブル2Oに入る。光ファイバセンサS1は、例えば「環境システム計測学会誌EICA、Vol15 No.2/3 2010.10、 p25「光ファイバを用いた水位検出システムの開発」遠藤他」のように、1芯の光ケーブルにツリー状に複数接続することが可能であり、本実施例においても、光ファイバ中継装置3外に設置されている光ファイバセンサS1に、多芯光ファイバケーブル2Iを通じて接続する。
【0034】
本発明では、光ファイバケーブルを複数芯の光ファイバケーブルを収納する光ファイバ中継装置3において、箱内においては光給電用光ファイバが融着接続され、且つ箱外においては電気/光ファイバセンサとコネクタ接続されている構成とすることによって、時間を要する融着作業が必要となる箇所を給電側の光ケーブルのみに限定し作業時間の短縮を可能とするとともにセンサ交換時の誤接続リスクを低減している。また、上記構成でコネクタ接続は電気/光ファイバセンサとの接続部分のみであるがゆえに、クラス3B 〜4のレーザ光が作業員の目に入ることを避けることができる。
【0035】
光ファイバ中継装置3内では、光ファイバ経由で送られてきた給電光を光電変換にて電気に変換後バッテリに蓄電する。これを電気式センサ用の電源として活用し、電気式センサを間欠的動作させることで、平均消費電力を抑制する。これによって光ファイバケーブル1本の給電能力で可能な計測ポイント数を増やすことができる。
【実施例2】
【0036】
図4aは実施例2に係る親局1内の光源装置1G、
図4bは実施例2に係る光ファイバ中継装置3内の構成例を示している。
【0037】
実施例2では、光源装置1Gの光給電用基板11上で、高出力レーザ発生器111の出力側、フォトダイオード112の入力側にWDM(波長分割多重)カプラ114を接続している。また実施例2の光ファイバ中継装置3においては、光給電兼データ伝送用のフォトダイオード321の入力側と電気式センサS2による計測データ通信用のレーザダイオード325の出力側にWDM(波長分割多重)カプラ326を接続している。
【0038】
実施例2の構成によって、電気式センサS2の光給電用ファイバ21に計測データ通信用の信号を重ねることができ、光ファイバが1本で済む。
【実施例3】
【0039】
本発明の実施例3を
図5に示す。実施例3では、複数の光ファイバ中継装置3を光ファイバ2により直列接続する構成を示している。
【0040】
実施例3では、実施例2における光ファイバ中継装置3において、成端箱31内に光カプラ311を設置し、電気式センサS2の給電と計測データ通信用途に使用している光ファイバ21の光(高出力レーザRS)を、次段設備に通過する高出力レーザRS1と、内部に取り込む高出力レーザRS2に分光している。これによって光ファイバ21は、
図5に示すように複数の光ファイバ中継装置3をツリー状に接続することが可能となる。また、光ファイバセンサS1用のケーブルは、図に示すように光ファイバセンサS1を直列接続しているが、これは光ファイバセンサS1の公知技術によって対応可能である。実施例3のように、電気式センサS2がツリー状に接続する構成とすることで、光ファイバセンサS1の使用本数と同じとすることが可能となり、光ファイバケーブルの利用効率が向上する。
【0041】
図6は、実勢例3において、ツリー型トポロジの構成で消費電力の低減を図るために、ノード間同期(光ファイバ中継装置3間同期)をせずに、データをランダムで送信する方式を示した図である。
図6において、横軸は時間、縦軸は出力データを表しており、周期Tintの間に♯1、♯3、♯2の光ファイバ中継装置3との間の通信をこの順序で実行し、かつ周期Tintで継続通信することを表している。
【0042】
然るに、送受信機システム間で送信側と受信側の同期をとる際によく用いられるデータ通信のシェイクハンド方式は、送受信間の状態確認のやり取りによる情報量が増大し、消費電力を増加させる恐れがある。通信速度を早くすれば、通信時間を短縮できるが、早くしすぎると周辺回路の消費電力が増大する上、ノイズの影響やシステムマージンの低下、部品の追加によるコストの増加が問題となる。
【0043】
図5のようなツリー型トポロジのデメリットとして、複数の光ファイバ中継装置3からのデータ通信が衝突する可能性があるが、センサからの情報量が少なく、各光ファイバ中継装置3が間欠的通信ですむのであれば、各光ファイバ中継装置3からのタイミングをランダムにすることで十分対応可能である。通信間隔Tint(例えば5秒に1回)と、データ送信時間Td(例えば10ミリ秒)との比を十分大きくとり、各光ファイバ中継装置3の通信路占有時間を極小化すれば、光ファイバ中継装置3間でデータ衝突する確率をゼロに近づけることができる。この比は、ch数の10分の1以下が望ましい。例えば10chであれば、1対100以下であればch間衝突確立が小さくすることができる。これは各光ファイバ中継装置3の消費電力低減方向とも一致しており、コストパフォーマンスに優れる方式である。
【実施例4】
【0044】
図7は、本発明において、電気式センサS2として電気伝導度計を接続した第4の実施例における電気コネクタ41から電気式センサS2間の構成を示したものである。電気伝導度計は通常の4〜20mAの計装信号で計測する場合は、たとえば、東亜ディーケーケー株式会社2013年11月15日発行SPECIFICATION 「SHEET電磁誘導式電気伝導率検出器カタログ(高感度ME−6□□/7□□/11T型シリーズ、小型軽量ME−1□□型シリーズ)」にあるように、検出端(センサヘッド)と変換器から構成されている。
【0045】
実施例4では、電気伝導度計のセンサヘッド511、512部分のみを用いて、得られた計測信号の電気伝導度への変換は光源装置1G側で実施することとして、光ファイバ中継装置での消費電力を減らしている。
【実施例5】
【0046】
図8は、ひとつの光ファイバ中継装置3に複数の電気式センサS2を接続した、第5の実施例である。
【0047】
2個の電気式センサS2を接続する構成では、2種類のセンサデータ量は少ないので、光ファイバ中継装置3内のマイコンでTDM(時分割多重化、Time Division Multiplexing)を行えば、ハード構成に大きな変更を加えずに済む。TDMは複数の信号を時間分割して一つのケーブルで送信できる。
【0048】
このための構成として
図8では、2種の電気式センサS2a、S2bの信号は、マルチプレクサMUX33に入る。マルチプレクサ33は、複数の信号を受け、一つの信号として出力する素子であり、マルチプレクサ33を経由してマルチプレクサセンサの信号が制御基板32に渡される。各マルチプレクサ中継装置3からの光通信をWDM(Wavelength Division Multiplex、光波長分割多重)方式とすることも考えられるが、マルチプレクサ中継装置3毎に波長の異なる高出力レーザ発生器111を準備する必要があるなど、メンテナンスや在庫管理が煩雑になる恐れがある。実施例5では、光ファイバセンサの種別毎にレーザを供する必要性がなくレーザ種類を単一にできるため、在庫管理や部品共通化により、低コスト化を図ることができる。
【実施例6】
【0049】
図9aは実施例6に係る親局1内の光源装置1G、
図9bは実施例6に係る光ファイバ中継装置3内の構成例を示している。実施例6では、光ファイバ中継装置3において、予備光回線を光コネクタとして取り出す構成を示している。
図9bを
図4bと比較すると、コネクタ42Aをそなえており、ここに情報コンセント6を接続できるようにしている。情報コンセント6に、情報通信機器を接続することで、下水管渠光ファイバ網を、各種の情報通信に活用することができる。下水道管渠光ファイバ網は震災に強いとされており、また、無線のように気象条件の影響も受けないことから、災害時における通信手段として利用可能である。なお、情報コンセント6は、公知のLAN接続コネクタ等で構成できる。
【0050】
図10は、実施例6の光ファイバ中継装置3において、下部に光コネクタ42Aならびに情報コンセント6を設置した構成である。光ファイバ中継装置3は、数〜100芯程度からなる光ファイバケーブル同士の接続するために用いられている。人孔内壁に設置され、光ファイバケーブル同士を1芯ずつ融着接続しており、箱全体は防水処理がなされている。
【実施例7】
【0051】
図11は、下水道管渠C内のマンホール部Mに設置された光ファイバ中継装置3の下部から電気式コネクタ41を介して設置された電気式センサS2の例としてH2SガスセンサS2B、水質センサS2Aを、また光ファイバセンサS1の例として光水位センサS1A、光液位センサS1Bを設置した例を示している。
【実施例8】
【0052】
図12は、光ファイバ中継装置3を構成する光中継箱3Gの構成例を示す図である。光中継箱3Gはゴムパッキンされた水密構造の箱体で構成されており、箱体の上部から、光源装置1Gからの光ファイバケーブル2Iと次段設備である光ファイバ中継装置3または他方端の光源装置1Gに至る光ファイバケーブル2Oが導入されている。箱体3G内には予長処理された光ファイバを収納する光ファイバ収納トレイ2Tや、電気、電子部品で構成された制御基板32などが収納されている。制御基板32には、バッテリ323や、センサS1、S2、情報通信用のコネクタ42Aなどと接続するためのセンサ子基板60が敷設されている。箱体の下部からは防水栓101や、防水コネクタ102を介して光ファイバセンサS1や電気式センサS2に導く計測用導管103が導出されている。実施例8では、防水コネクタ102の部分が電気式コネクタ41、光コネクタ42、情報通信用のコネクタ42Aに相当しており、防水機能を兼用している。
【符号の説明】
【0053】
C:下水道管渠
M:マンホール部
P:下水場施設
S1:光ファイバセンサ
S2:電気式センサ
1:親局
1G:光源装置
2:光ファイバケーブル
3:光ファイバ中継装置
6:情報コンセント
7:融着箇所
11:光給電用基板
12:光ファイバセンサ用コンバータ
21:光給電用光ファイバ
22:電気式検知信号用光ファイバ
23:光検知信号用光ファイバ
31:成端部
311:光カプラ
32:制御基板
41:電気式コネクタ
42:光コネクタ
51:電気式センサ
52:光ファイバセンサ
111:高出力レーザ発生器
112:フォトダイオード
113:インタフェイス回路
114:WDMカプラ
321:フォトダイオード
322:DC/DCコンバータ
323:バッテリ
324:マイコン
325:レーザ
326:WDMカプラ