【課題を解決するための手段】
【0019】
上記問題点を解決するための第1の形態では、画像出力部の映像を、接眼レンズを介して直接両目で見るタイプのヘッドマウントディスプレイ装置に於いて、画像出力部及び接眼レンズ部を有する本体部と、頭部に前記本体部を固定する為の装着部と、前記本体部の重量を頭部後方に分散させるウェイトキャンセラー部を有し、前記本体部と前記ウェイトキャンセラー部はケーブルで結合されており、前記装着部に対して前記ケーブルが独立に移動できることを特徴としている。
【0020】
これは課題の中の第1の問題を解決する方法であり、
図1(a)のHMDの側面図と人が装着した場合の側面図を使って説明する。
図1(a)に示す様に、HMD本体部1の重量に対応したウェイトキャンセラー2をケーブル3で結合し、重心位置をトータルで首の位置近くにする事で問題を解決している。ケーブル3とは、釣り糸に代表される様なナイロンやフロロカーボンといった単線の合成繊維や、更に強度の高いPEラインといわれる編み糸等が考えられる。引っ張り強度は非常に高く、頭部の色々な形状に沿わせる事が可能で、重さは殆ど無視できる。
【0021】
また、引っ張り強度は非常に高く、頭部の色々な形状に沿わせる事が可能なものならば、ベルトの様な帯状の構造でも良く、ケーブル3として適用する事ができる。
【0022】
ウェイトキャンセラー2については、後頭部の後方に配置されるので、できるだけ比重が高く、体積の小さいものが望ましい。一般に考えられる素材としては、比重が11.34の鉛等が安価だが、タングステンの比重は19.3であり、更に体積を小さくする事が可能である。ウェイトキャンセラー2も頭部に沿って配置される為、
図1(a)では複数の部分に分け、曲面に上手く沿う様に工夫されている。尚、商用のHMD用に、画像出力部のバッテリーをウェイトキャンセラーとして用いても良い。
【0023】
頭部に沿ったベルト4にケーブル3用のガイド5を取り付けており、ケーブル3が頭部から外れる事を防止している。また、ケーブル3とガイド5間には所定の摩擦があり、本体部1とウェイトキャンセラー2の重量に差があってもその摩擦により通常の顔の動かし方では、その位置関係がずれる事は無い。
【0024】
この構成により、HMD本体部1とウェイトキャンセラー2の重量は、ベルト4に沿って均等に分散され、頭部全体で支える事になる。その結果、頭部で局部的に重量を支える事で、その局部での痛みや赤い跡が残る様な不具合は発生しない。
【0025】
また、HMD本体部1の前後左右方向のシフト及び回転方向の変動を抑える部材6と、額に沿ったベルト7を設置する事により、安定してHMD本体部1を頭部に固定する事が可能となる。
図1(b)ではHMDの側面図と上面図を使い、部材6とベルト7が耳付近で結合されている様子と、HMD本体部1を安定して固定できる原理を示している。
【0026】
図1(b)に於いて、HMD本体部1の重量をMとすると、重力方向へのベクトルMgが存在している。その重量を支える為に、ケーブル3の引っ張り方向に引っ張り力のベクトルFtが発生する。更には、HMD本体部1はその他に部材6で支えられており、部材6を圧縮する方向の力、ベクトルFaが発生している。ここでベクトルFtと部材6で押し返すベクトル−Faの合力はベクトルMgと釣り合っている。部材6を圧縮する方向の力は、結合されている耳付近でベルト7に受け渡され、ベルト7の引っ張り力Fbに置き換えられる。これはベルト4と同様に、額に沿って均等に額全体に分散される構造なので、額部の局部的な部分で重量を支える事で、その局部での痛みや赤い跡が残る様な不具合は発生しない。
【0027】
尚、部材6はHMD本体部1の前後左右方向のシフト及び回転方向の変動を抑えるだけの剛性があれば良い。HMD本体部1の十字で示した重心の延長線上付近をケーブル3で引き上げる事で、HMD本体部1の前後左右方向のシフト及び回転方向の変動も小さく抑える事ができるので更に良い。この様に、重量物を直接支える必要が無いので、それ以上の高い剛性は不要である。よって、これらの部材6は比較的軽量な部材で形成すれば良い。ベルト7は引っ張り強度が高く、額に沿って形状を変える事が可能な、高密度ポリエチレンの板等がその候補である。
【0028】
ベルト7についても、引っ張り強度が高く、額に沿って形状を変える事が可能なもの、即ち、低密度ポリエチレンやゴム、スポンジにケーブル3を貼り付ける事で引っ張り強度を高くしても同様の効果がある。
【0029】
図2(a)〜(c)では引き上げるケーブル3a、3bの2本に分けた場合の例を示している。
図2(a)は顔を向って右方向に傾けた場合を示し、
図2(b)は顔を傾けない状態、
図2(c)は顔を向って左方向に傾けた場合を示している。それぞれケーブル3の延長線上に十字の本体部1の重心HMD−Gが存在している。よって、顔を傾けない場合は両方のケーブル3a,3bで支える為、横への力は発生しない。また、
図2(a)の状態ではケーブル3aで主に支えるので、横への力は発生しない。また、
図2(c)の状態ではケーブル3bで主に支えるので、横への力は発生しない。この様に、HMD本体部1とウェイトキャンセラー2を、頭部の上を通る角度の異なる2方向に分割して締結する事で、顔を左右に傾けた場合でも、安定してHMD本体部1を支える事が可能な構造になっている。
【0030】
図2(d)、
図2(e)では顔を下に向けた場合と上に向けた場合について説明している。
図2(d)の様に顔を下に向けると、ケーブル3の引っ張り方向に引っ張り力のベクトルFtと重力ベクトルMgのなす角は広がっていき、180°を超えた時点で、部材6を圧縮する方向の力ベクトルFaが今度は引っ張るベクトルに反転する。この場合、額部のベルト7は役に立たなくなり、頭部後側のベルト7により支えられる事になる。一方、
図2(e)の様に顔を上に向けると、ウェイトキャンセラー2を保持する袋部2aが頭部から離れてしまう事になる。ここでは頭部後側のベルト7及び、首の方に向かっているベルト7と、後頭部方向に伸びているベルト7が、袋部2aを頭部から離さない様に支える役割を担う。
【0031】
次に第2の形態では、前記ケーブルは、頭部に設置されたガイド部に沿って移動可能に配置されており、前記本体部の移動に伴い、前記ウェイトキャンセラー部も移動できる構成である事を特徴としている。
【0032】
第3の形態では、画像出力部の映像を、接眼レンズを介して直接両眼で見るタイプのヘッドマウントディスプレイ装置に於いて、画像出力部及び接眼レンズ部を有する本体部と、頭部に前記本体部を固定する為の装着部と、前記装着部に固定され、前記本体部が両目の視線上から外れる様に駆動させる駆動部を有する事を特徴としている。
【0033】
第4の形態では、前記駆動部は両目と前記接眼レンズの距離を変化させる伸縮機構と、前記本体部を両眼の前方位置から回転により頭部方向に退避させる回転部と、所定の位置で前記駆動部を固定する固定機構を有する事を特徴としている。
【0034】
この第2の形態から第4の形態は、課題の中の第2,3の問題を解決する方法であり、具体的内容を
図3のHMDの側面図で説明する。
図3(b)は通常の裸眼で画像モニター部を見ている様子を示す。ここで眼球102の瞳位置と接眼レンズ9間の距離をアイレリーフL1としている。一般的にアイレリーフは裸眼時に2mm〜8mm程度取る場合が多く、アイレリーフが短いと視野角が広がり、長くなるに従い視野角は狭くなる。もしも、
図3(a)の様にメガネをかけた状態でHMD本体部1を装着すると、アイレリーフL2は最低でも15mm程度取る必要がある。
【0035】
これを可能にする方法として本発明では、第4の形態に示した様に、部材6の中に伸縮部10を設けている。この伸縮部10を伸縮させる事で、アイレリーフをL1からL2まで自由に変える事ができる。この伸縮部はワンタッチストッパー(図示せず)が付いており、任意の長さで固定する事が可能な構成である。しかし、前述の様に、HMD本体部1は部材6とケーブル3で支えられており、部材6の長さが変わっても、ケーブルの長さが変わらないとHMD本体部1の位置を変える事ができない。そこでケーブル3及びウェイトキャンセラー2が矢印の様に、HMD本体部1の位置変化に応じて、移動できる様な構成となっている。この部分が第2の形態の説明である。
【0036】
これはエレベータが上下しても、バランスが保てるのと同じ原理であり、HMD本体部1が移動しても、常にウェイトキャンセラー2とHMD本体部1が釣り合う事になり、HMD本体部1の安定した固定ができる。これらがアイレリーフ可変機構となり、課題の第2の問題を解消できる。
【0037】
次に
図3(c)では第3の形態について説明する。部材6とベルト7は
図1(b)で示した様に、耳付近で結合されているが、その部分に部材6とベルト7の結合位置を中心に部材6を回転させる回転機構11が設置されている。部材6をθ回転させる事で、HMD本体部1も回転し、部材6の長さに応じて上方向に持ち上がる事になる。前述の様に、ケーブル3は移動可能であり、ウェイトキャンセラー2と釣り合う構造なので、手のちからで簡単に持ち上げる事ができる。およそθ=25°の回転で、眼球102の前にあったHMD本体部1が無くなり、容易に外界の状況を把握する事ができる。
【0038】
尚、この回転機構は0〜25°まで回転できるが、それ以上の移動はストッパー(図示せず)により制限されている。これにより、万一ケーブル3が切れた時でも、HMDの重心が首付近から眼球102の前方に変わるだけで、眼の位置よりも下にHMD本体部1が下がる事は防止されている。以上の様に、HMD本体部1をケーブル3及び部材6のみで保持しており、ゴーグルの様な楕円形状で眼の廻りを覆う必要が無い。更には容易に目の前からHMD本体部1を移動させる事ができるので、空気の澱みを無くし、顔の汗を拭く行為や、外界の状況把握も簡単にできる事から、課題の第3の問題を解消できる。
【0039】
第5の形態では、前記本体部の画像出力部は脱着可能であり、形状の異なる画像出力部に対して画像出力部の中心が一致する様に画像出力部の位置を調整する調整機構を有する事を特徴としている。
【0040】
図4及び、
図5は、大きさの異なる携帯電話12aと12bを接眼レンズ設置部13に搭載するまでの様子を正面図及び側面図で示している。
図4(d)は大きさが大きい6インチサイズの携帯電話であり、
図5(d)は大きさが小さい5インチサイズの携帯電話を示している。それぞれの携帯電話は大きさが異なり、
図4(c)に示す携帯電話固定部14に固定する場合、携帯電話12aは3か所に設置された位置固定ピン15に沿って横から挿入し、抑えバネ16により携帯電話12aを固定する事ができる。重力のかかる下側を2点とした3点支持なので、ガタ等の発生が少ない構造である。
【0041】
一方、携帯電話12bは概観の寸法が異なるので、そのまま携帯電話固定部14に固定する事はできない。そこで、
図5(c)に示す様に、位置固定ピン15を携帯電話固定部14から抜き取り、ワッシャー17を位置固定ピン15にはめ込んで戻している。このワッシャー17は携帯電話12bのサイズを上下から固定できる幅で設計されており、携帯電話固定部14に固定する場合、携帯電話12bをワッシャー17に沿って横から挿入し、抑えバネ16により携帯電話12bを固定する事ができる。
【0042】
図4(b)と
図5(b)は共に本体部1の中から接眼レンズ9が設置された接眼レンズ設置部13を示している。この接眼レンズ設置部13は側面図の矢印方向から、固定ガイド18aに沿って、携帯電話固定部14の移動ガイド18bをはめ込む事ができる構造であり、ストッパー(図示せず)により任意の位置に固定できる構造になっている。メガネを装着している人がメガネを外し、裸眼の状態で視野角の大きい映像を楽しみたい場合もあるので、この調整部を用いて、接眼レンズと携帯電話のディスプレイ面の距離を変える事で、近眼の人が裸眼でフォーカスを合わせられる様になっている。以上の機構を全て組み合わせたものがHMD本体部1に相当し、ドッキングした時の状態を
図4(a)及び
図5(a)にて示している。
【0043】
この様にして、上下方向の位置は異なるサイズの携帯電話でも安価なワッシャーの交換のみで簡単に位置調整を行う事ができる。一方、横方向だが、無論、同様の位置固定ピンを挿入方向と逆の方向に設置し、固定する事も可能である。但し、携帯電話のディスプレイは、短い辺方向には概観とディスプレイの位置が対称で、長い辺の方向には僅かに非対称な位置に取り付けられている場合が多い。本発明では、ドッキングした後でも携帯電話の表示面を見ながら携帯電話を手で触る事は容易にできるので、中心位置が合う様に、携帯電話を横にスライドして調整する事も可能にしている。
【0044】
次に第6の形態では、画像出力部の映像を、接眼レンズを介して直接両眼で見るタイプのヘッドマウントディスプレイ装置に於いて、接眼レンズ部を有する本体部と、画像出力に必要な電子デバイスを有する画像出力部は、前記本体部と脱着可能に構成されており、前記画像出力部には、パネルの解像度が1k以上の携帯電話を固定する固定手段と、前記携帯電話に対し、アプリケーションを行う為の電子デバイスが設置されている事を特徴としている。
【0045】
図6を用いて、この第6形態について説明する。
図6は、携帯電話12aを携帯電話固定部14aに搭載するまでの様子を正面図及び側面図で示している。
図6(c)は携帯電話12aである。ここでは携帯電話12aを固定する為に、携帯電話固定部14aを用いている。この携帯電話固定部14aは、3か所に設置された位置固定ピン15に沿って横から携帯電話12aを挿入し、抑えバネ16により携帯電話12aを固定する。携帯電話固定部14aの移動ガイド18bを用いて、接眼レンズ設置部13の固定ガイド18aに固定する構造は携帯電話固定部14と共通である。相違点は、携帯電話固定部14a上に携帯電話12aの画像出力に必要な電子デバイスが設置されている事である。
【0046】
図6(b)にて携帯電話固定部14a上に配置された電子デバイスを示す。USB端子20を携帯電話12aに接続し、応答する為のUSB送受信装置19は、携帯電話固定部14a上の3軸加速度計21の出力及び、携帯電話12aからの電源供給を電子デバイスに対して行う。更に、眼の位置の延長線上に設置された、左右のUSBカメラ23からの画像データを携帯電話12aに送信する役割を果たす。更に、携帯電話固定部14a上にはUSB端子24が設置されている。これは有線で外部のバッテリーと接続できる様になっており、携帯電話12aのバッテリー容量が少なくなってきた場合に、必要に応じて電力を供給できる構造となっている。
【0047】
また、このUSB端子に外部からコントローラ(図示せず)を接続する事で、携帯電話12a上の画面操作も容易に行う事ができる。コントローラとしてはゲーム用コントローラから、有線・無線マウスまで幅広いものに対応可能である。
図6(a)が、携帯電話固定部14a上に携帯電話12aを接続した時の様子を示している。
【0048】
この携帯電話固定部14aも携帯電話固定部14と同様に、ワッシャー17を利用する事で、色々な大きさの携帯電話を固定する事が可能である。それぞれの携帯でUSBをつなげる場所も異なるので、どのような携帯電話でも、USBの接続ができる様にUSB端子20はコードで引き回しができる構成にしている。3軸加速度計21の出力結果は本体部1を装着した装着者の顔の向きに対応した、角度変位情報として携帯電話12aに送られるので、携帯電話12aの3D画像表示アプリケーションソフトを用いる事で、装着者の視線方向の仮想画像を画像表示できる。
【0049】
左右のUSBカメラ23からの画像データは、携帯電話12aに送信され、左右の眼の画像として画像表示されるが、前述の3D画像表示アプリケーションソフトを用いた装着者の視線方向の仮想画像を重畳画像として表示すれば、簡単にMR(ミックス&リアリティ)画像を楽しむ事もできる。
【0050】
この様に、携帯電話固定部14aは、HMDとして装着者に装着される、接眼レンズ設置部13と完全に電気的に独立しているので、携帯電話のアプリを開発する開発者も、携帯電話固定部14aのみの購入で、長時間HMDを装着しなくても、色々な携帯電話を用いたアプリケーションソフトの開発が可能となる。
【0051】
また、携帯電話固定部14aが、HMD本体部1として常時装着者に装着される接眼レンズ設置部13と、完全に切り離せる構造である。HMDを装着し、任意の携帯電話を3D画像モード(左右62mm離れた位置を中心とした同じ画像2画面を表示する)に設定し、
図7の様に接眼レンズ設置部13の結像面に持ってくると、簡単にHMDで見ている状態が再現できる。携帯電話を購入する場合、携帯の解像度がディスプレイの大きさでHMDの装着した場合の見えも変わってくるので、購入する機種に目安を付ける事ができる。この様に、第4、第5、第6の形態はどれも課題の第4の問題を解消するのに役立つ。
【0052】
第7の形態では、前記画像出力部はパネルの解像度が1k以上の脱着可能な携帯電話であり、外部PCにより描画された画像を無線で高速受信する無線受信部と、その画像を前記携帯電話で表示させる配線部を有する事を特徴としている。但し、この場合は外部PCを用いるので、前記画像出力部は携帯電話ではなく、解像度が1k以上の画像表示パネルとその制御ドライバーで置き換える事も可能である。
【0053】
外部の商用モーションキャプチャシステムを利用して、HMD上にマーカーを設置し、そのマーカーの位置をモニターする。外部に設置された高速画像処理PCは、その位置情報からHMDの装着者の見ている画像を左右の眼に対して独立に算出表示する。この3D画像を、実物大の仮想画像として装着者が検証・評価する試作レスシステムや、HMDに搭載された画像モニター機構で撮影した画像と仮想画像を融合して検証・評価するMRシステム(ミックス&リアリティシステム)を第7の形態では実現可能となる。
【0054】
図8(b)にて携帯電話固定部14b上に配置された電子デバイスを示す。高速画像送受信制御装置25は、前述の高速画像処理PCからのハイビジョン用の1k〜4kの解像度を有する3D画像データを受信する。
図8(c)の高速画像送信端子26を接続可能な携帯電話12cに接続すると、外部のPCの3D画像データがリアルタイムに高速画像送信端子26を介して携帯電話12cに送られる。携帯電話12cの画面上には、実物大の仮想画像として装着者が検証・評価できる動画が表示される。尚、高速画像送受信制御装置25は、高速画像送信端子26を介して携帯電話12cからの電源供給を受けている。
【0055】
もう一つの使い方として、眼の位置の延長線上に設置された、左右のUSBカメラ23で撮像された画像データは、高速画像送受信制御装置25より外部PCにリアルタイムに送信される。これを受け取った外部PCは、USBカメラ23で撮影した画像と仮想画像を融合して、再び高速画像送受信制御装置25に融合された画像を送信し、高速画像送受信制御装置25はこの3Dデータを受信する。受信されたデータは、高速画像送信端子26を介して携帯電話12cに送られる。携帯電話12cの画面上には、現実の画像と仮想画像を融合して検証・評価できる動画が表示される。
【0056】
更に、携帯電話固定部14b上にはUSB端子24が存在する。これは有線で外部のバッテリーと接続できる様になっており、携帯電話12cのバッテリー容量が少なくなってきた場合に、必要に応じて電力を供給できる構造となっている。
また、このUSB端子24に外部からコントローラ(図示せず)を接続する事で、携帯電話12c上の画面操作も容易に行う事ができる。コントローラとしてはゲーム用コントローラから有線、無線マウスまで幅広いものに対応可能である。
図8(a)が、携帯電話固定部14b上に携帯電話12cを接続した時の様子を示している。
【0057】
この携帯電話固定部14bも携帯電話固定部14と同様に、ワッシャー17を利用する事で、色々な大きさの携帯電話を固定する事が可能である。それぞれの携帯で高速画像送信端子26をつなげる場所も異なるので、どのような携帯電話でも、高速画像送信端子26の接続ができる様に高速画像送信端子26はコードで引き回しができる構成にしている。この第7の形態を実施する事で、課題の第5の問題を解消する事ができる。
【0058】
但し、一般の携帯電話の端子は外部への画像出力用HDMI(登録商標)やUSB端子である。よって、上記システムを実現するには、画像入力用HDMI(登録商標)やUSB端子が付いている携帯電話を用いる必要がある。外部PCを使うシステムは、商用が一般的なので、携帯電話ではなく、解像度が1k以上の画像表示パネルとその制御ドライバーで置き換えても良い。画像表示用パネルの制御ドライバーには画像入力用のHDMI(登録商標)やUSB端子が付いているので、高速画像送信端子26から直接3Dデータを受け取る事ができる。
【0059】
次に、前記接眼レンズ部の接眼レンズ形状に関する説明を行う。第8の形態では、前記前記接眼レンズ部の接眼レンズは高屈折率プラスチックレンズであり、レンズ面の少なくとも1面のコーニック定数が0未満の非球面であり、前記接眼レンズ部から前記接眼レンズは脱着可能である事を特徴としている。
図9〜
図12までのそれぞれの図はレンズの光線図(左上)と設計数値(右上)とディストーション(左下)と結像点での光線の広がりを1セットとして開示している。アイレリーフを2.25mm⇒7.25mm⇒15mmに変えた時の収差状態と、視線を所定の角度傾けた時(視線角としている)の収差状態でレンズの評価は行っている。
【0060】
図9は接眼レンズの第1実施例である。接眼レンズに高屈折率プラスチック(屈折率1.74)を使用している。接眼レンズ径36mm、2面ともコーニック定数が0未満の非球面で構成されており、アイレリーフを、メガネを付けた距離15mmに離しても、更に視線をレンズ周辺に向けても、○で示す様に、高い解像度を得る事ができている。
【0061】
図10は接眼レンズの第2実施例である。接眼レンズに高屈折率プラスチック(屈折率1.74)を使用している。接眼レンズ径46mmを実現している。2面ともコーニック定数が0未満の非球面で構成されており、アイレリーフを、メガネを付けた距離15mmに離しても、更に視線をレンズ周辺に向けても、○で示す様に、高い解像度を得る事ができている。その上で、裸眼で120°、メガネ装着でも92°の視野角を確保している。
【0062】
図11は接眼レンズの第3実施例である。接眼レンズに高屈折率プラスチック(屈折率1.74)を使用しているが、レンズ枚数は2枚使っている。接眼レンズ径41.7mmを実現した上で、ディスプレイのフォーカッシングを行うと、例1、例2よりも高い光学性能を満たしている。レンズの1面はコーニック定数が0未満の非球面で構成されており、○で示す様に、アイレリーフを、メガネを付けた距離15mmに離しても、更に視線をレンズ周辺に向けても、裸眼で114°、メガネ装着でも90°の視野角を確保している。
【0063】
図12は接眼レンズの第4実施例である。接眼レンズに高屈折率プラスチック(屈折率1.74)を使用しているが、レンズ枚数は2枚使っている。レンズ面計3面のコーニック定数が0未満の非球面で構成されており、接眼レンズ径50mmを実現した上で、○で示す様に、例1、例2とほぼ同じ光学性能を満たしている。それにより、裸眼で120°、メガネ装着でも100°の視野角を確保している。
【0064】
次に、
図13〜
図15では、接眼レンズ設置部13に接眼レンズを取り付ける様子を示している。
図13は接眼レンズ設置部13の接眼レンズ取り付け面側からの正面図と、その側面図を示す。接眼レンズ設置部13上には画像を見るための開口部28が両目に対応して2か所設けられている。それぞれの開口部の上下には接眼レンズを固定する為の固定ガイド27があり、鼻と接眼レンズ設置部13が干渉しない様に、溝31が形成されている。
【0065】
図14ではそれぞれ例1から例4までのレンズを鏡筒に入れた接眼レンズユニット29a、29b、29c、29dの正面図を示しているが、それぞれ同じ接眼レンズ設置部13の固定ガイド27に対し共通してはめ込む事ができる様に、同じ寸法位置に移動ガイド30が設けられている。
図15では接眼レンズ設置部13にそれぞれの接眼レンズユニット29a、29b、29c、29dをはめ込んだ時の様子を側面図で示している。色々な視野角の接眼レンズ29を共通のHMDで利用できるので、総合的に安価で多機能に対応したHMDを供給する事が可能となる。
【0066】
それぞれの接眼レンズユニット29は、横から固定ガイド27に沿ってはめ込むが、その位置を左右僅かにずらす事で、眼福調整を行える様になっている。眼福調整は、携帯電話の画面上で、62mm離れた白い縦線を見て、普通に白い線が見えれば調整の必要は無い。但し、白い線が赤・青・緑に分離して見えた場合、眼福が合っていない事になるので、接眼レンズユニット29を僅かに左右に移動する事で、白い線として認識できる位置を探せば良い。また、各接眼レンズの焦点距離は共通ではないので、接眼レンズ設置部13の固定ガイド18aに沿って、携帯電話固定部14の移動ガイド18bを移動させて調整すれば良い。眼福調整やフォーカスをきちんと合わせる事で、没入感の高い画像を得る事ができる。
【0067】
上記で説明した接眼レンズの第1実施例及び、第2実施例は1枚のレンズで構成されており、第3実施例及び第4実施例は凹面を1枚含む2枚のレンズで構成されている。これらは前記眼福調整を行う事で没入感の高い画像を得る事ができるが、眼福調整機構は両眼を同時に左右に動かす機構が必要であり、接眼レンズユニット29を重たくする原因の一つである。もし、眼福調整を行わないと、眼福は
図16の様に62mm程度を中心に±8mm程度の個人差があるので、接眼レンズの中心と眼の中心がずれてしまう。
【0068】
図17は第2実施例に対し、レンズの中心と眼の中心がずれた場合(図上では位置シフト量に該当する)の収差を示したものである。縦方向にずれ量が変わった場合の収差形状、横方向に視線角による収差形状を示しており、右側の眼で見た時に発生する収差の量を赤色、緑色、青色に分けて示している(但し、これは眼の方向から光束を入れた時の収差量であるから、実際には見えは赤方向と青方向が反転して見える)。ずれ量に応じて視線角が大きい位置で、収差が大きくなっている事が分かる。
【0069】
この問題を解決する為には、接眼レンズを少なくとも2枚のレンズ構成とし、少なくとも3面以上のコーニック係数が0未満の非球面(凸面)と、残りの1面は平面若しくは凸面の形状で構成する事が望ましい。1面の曲率が大きいと、接眼レンズの中心と眼の中心がずれた場合に大きな収差が発生するので、緩い曲率の複数のレンズ面にした方がずれに強くなる。また、一部のレンズ面のみコーニック定数を0未満とし、その数値を大きくすると、視線角やアイレリーフの変化に対してやはり収差が大きくなってしまう。しかし、非球面加工は硝材を用いると高価となるので、非球面の型版に合わせて加工できるプラスチック材を用いたいが、一般のプラスチック材は屈折率が低く、広視野角のレンズを設計する事が困難である。
【0070】
そこで第8の形態のもう一つの方法として、高屈折率プラスチック(屈折率1.74以上)を用いた少なくとも2枚のレンズ構成とし、更に少なくともコーニック係数が0未満の非球面で構成された3面以上の凸面と、残りの1面は平面若しくは凸面の形状にしている。この組み合わせにより、
図18に示す様にアイレリーフが変化しても、接眼レンズの中心と眼の中心がずれても収差量が小さい接眼レンズを提供でき、眼福調整を不要とする事で、接眼レンズユニット29の軽量化と共に、機構をシンプルにする事が可能となる。
【0071】
図18では第2実施例の1枚で構成された接眼レンズを用いた場合の、位置シフト量による収差を示している。アイレリーフを、メガネを付けた距離15mmに離すと、視線角30°で画像が見えなくなる(×で表示)だけではなく、ずれ量がプラス方向で大きな収差が発生しているのが分かる。これはレンズを2枚にしても、1面を凹面で形成すると同様に大きな収差がある。第4実施例の2枚で構成されたレンズを用いたアイレリーフ15mmの場合も、位置シフト量による収差量は大きく、視野角が40°で画像が見えなくなる部分(×で表示)が発生している。
【0072】
図18では新たに第8の形態として、1面が平面で残りの3面がコーニック係数0未満の非球面で構成された接眼レンズの第5実施例、1面が凸面で残りの3面がコーニック係数0未満の非球面で構成された接眼レンズの第6実施例を示している。裸眼時のアイレリーフ10mmの条件及び、メガネを付けたアイレリーフの距離15mmでシミュレーションしているが、いずれも位置シフト量による収差は小さく、視野角が40°でも画像を見る事ができている。即ち、この第5実施例及び第6実施例を利用すれば、眼福調整を行なわなくても鮮明な画像を見る事ができる。
【0073】
但し、第5実施例、第6実施例の接眼レンズを用いても、位置シフト量が大きくなると、収差の中で、ディストーション及び色収差量は、レンズ中心に対して左右に非対称に発生する。
図19では、第5実施例のレンズを用いた場合の、アイレリーフ10mmと15mm、位置シフト量−4mm、0mm、4mmの2×3の6通りの条件による収差を示している(但し、これは眼の方向から光束を入れた時の収差であるから、実際には見えは赤方向と青方向が反転して見える)。上下方向は線対称なので省いているが、左右のディストーション及び色収差がシフト量0mmと比較すると、いずれの場合も非対称に発生しているのが分かる。
【0074】
但し、このディストーション及び色収差は位置シフト量0mmの時点で、画像データの位置をRGB毎に補正する事で、見えに問題が出ない様に画像処理されているのが一般的である。そこで第9の形態では、複数の位置シフト量に応じて発生するディストーション及び色収差を第1の情報として記憶しておき、装着者の第2の情報に応じてその記憶された第1の情報に基づき画像処理を行う事とした。第2の情報とは、メガネの装着の有無や眼福に関するものである。
【0075】
メガネの装着の有無については、伸縮部10の伸縮量を自動計測しても良いし、装着者が直接その情報を入力しても良い。但し、眼福については一般的に分からない場合が多いので、それぞれ記憶された第1の情報で補正した画像情報を装着者に見せ、色収差が少なく、歪が小さいものを選択してもらえば良い。例えば、−4mm〜4mmの位置シフト量の画像データ(
図19の画像のRGBの位置をそれぞれ計測し、その位置にその色のスポットデータとして表示)を離散的に表示する。無論、それぞれのデータの間を補間し、連続的に変化する画像情報として表示しても良い。このデータは実際の見えとは赤方向と青方向が反転して表示されているので、装着者が眼福に合った画像データを見ると、結果的にRGBデータが一致して白く見える。どこを見渡しても白いスポットデータに見えれば眼福が合った事になる。
【0076】
尚、
図19を見ると分かるが、周辺ではRGBのスポットの大きさが色毎に異なって見える。人間の眼は緑に対して一番感度が良いので、緑を基準にレンズの設計が行われている場合が多い。この条件では緑より赤、赤より青の方が光の波長が離れているので、スポットも緑と比べて収差が大きく太く見え易い。スポットの大きさや形状が異なると、色が重なって見えても白く見えない可能性がある。このスポットの大きさや形状の違いも第1の情報で予め分かっているので、その分、緑と赤のスポットの大きさが青と同じ大きさ、形状で重なる様に表示すれば、スポットの位置の一致の確認が容易になる。
【0077】
次に第10の形態では、画像出力部の映像を、接眼レンズを介して直接両眼で見るタイプのヘッドマウントディスプレイ装置に於いて、画像出力部及び接眼レンズ部を有する本体部と、前記本体部の画像出力部はパネルの解像度が1k以上の脱着可能な携帯電話であり、前記本体部に前記携帯電話を取り付けた後も、前記パネル画面を見ながら、パネル上の所定の位置を指で触れる様な窓を前記本体部に有する事を特徴としている。
【0078】
図20では第10の形態を説明している。
図20は本体部1の上面図と側面図である。この接眼レンズ設置部13は側面図の矢印方向から、固定ガイド18aに沿って、携帯電話固定部14の移動ガイド18bをはめ込む事ができる構造であるが、その固定ガイド18a及び、ガイド18bの共通位置に指が下から入れる程度の大きさの開口部32が空けてある。
【0079】
通常は、ここから光が入ると、携帯電話の画面が見難くなるので、中央部に切り込みが入ったゴム板等の弾性体33が貼られている。携帯電話のアプリケーションソフトを起動させる時や、ソフトの中止、ソフトの変更等、携帯電話の画面の下側をタッチする事で、HMDを装着したまま指令を出す事ができる。タッチは片眼側のみで行うので、実際の画像は半透明の様になり、アプリの画像を見ながら携帯電話のソフトを制御する事が可能である。この様に、第8及び第10の形態は課題の第4の問題を解消するのに役立つ。