【課題】従来技術に比較して簡単な回路で、電圧源からの電力供給が停止されたときに電動機の巻線に発生する過電流を抑制して速やかに電動機を停止させることが可能な電動機の駆動制御装置を提供する。
【解決手段】電動機の駆動制御装置は、インバータ回路と、制御信号に基づいてインバータ回路の出力端子を短絡する第1のスイッチ部と、直流電圧をダイオードを介して充電するコンデンサと、電動機の起電圧を整流して整流電圧を出力する整流回路と、整流電圧を変換信号に変換するフォトカプラと、変換信号が入力されていないときにコンデンサの充電電圧を制御信号として出力する一方、変換信号が入力されているときに制御信号を出力しない第2のスイッチ部と、直流電圧を検出しないときに上記制御信号を第1のスイッチ部に出力する一方、直流電圧を検出したときに上記制御信号を第1のスイッチ部に出力しない電圧検出部とを備える。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明又は実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0011】
なお、発明者は、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0012】
(実施の形態1)
以下、
図1〜3を参照して、実施の形態1を説明する。
【0013】
[1−1.構成]
図1は、実施の形態1にかかる電動機3の駆動制御装置1の構成例を示す回路図である。
図1に示す駆動制御装置1は、制御回路4からの制御信号φ1〜φ6に基づいて電圧源2から供給される直流電圧V2を3相交流電圧に変換し、3相交流電圧を電動機3の3相の巻線3u,3v,3wにそれぞれ供給することにより、電動機3の駆動を制御する。駆動制御装置1は、インバータ回路10と、コンデンサ21と、ダイオード22と、整流回路30と、分圧回路40と、フォトカプラ50と、スイッチ回路60と、電圧検出回路70と、短絡スイッチアレイ80とを備える。
【0014】
図1において、インバータ回路10は、例えばNチャネル電界効果トランジスタ(以下、FETという。)である6個のトランジスタ11〜16を有するフルブリッジ回路で構成される。トランジスタ11,12は電圧源2の陽極と陰極との間に当該順序で直列に接続され、トランジスタ13,14は電圧源2の陽極と陰極との間に当該順序で直列に接続される。また、トランジスタ15,16は電圧源2の陽極と陰極との間に当該順序で直列に接続される。
【0015】
具体的には、トランジスタ11のドレインは電圧源2の陽極に接続され、トランジスタ11のソースはトランジスタ12のドレインに接続される。トランジスタ12のソースは電圧源2の陰極に接続される。また、トランジスタ13のドレインは電圧源2の陽極に接続され、トランジスタ13のソースはトランジスタ14のドレインに接続される。トランジスタ14のソースは電圧源2の陰極に接続される。さらに、トランジスタ15のドレインは電圧源2の陽極に接続され、トランジスタ15のソースはトランジスタ16のドレインに接続される。トランジスタ16のソースは電圧源2の陰極に接続される。なお、各トランジスタ11〜16のドレインとソースとの間にはフライホイールダイオードが接続されてもよい。
【0016】
トランジスタ11のソースとトランジスタ12のドレインとの接続点であるU相正出力端子17uは電動機3のU相巻線3uに接続され、トランジスタ13のソースとトランジスタ14のドレインとの接続点であるV相正出力端子17vは電動機3のV相巻線3vに接続される。また、トランジスタ15のソースとトランジスタ16のドレインとの接続点であるW相正出力端子17wは電動機3のW相巻線3wに接続される。各トランジスタ11〜16のゲートには、電動機3の回転数N3を制御する制御回路4からの例えばPWM信号である制御信号φ1〜φ6が入力される。インバータ回路10は、制御信号φ1〜φ6に基づいてトランジスタ11〜16をスイッチング制御することにより、直流電圧V2を3相交流電圧に変換して電動機3に出力する。
【0017】
コンデンサ21の一方の電極はダイオード22を介して電圧源2の陽極に接続され、コンデンサ21の他方の電極は電圧源2の陰極に接続される。具体的には、コンデンサ21の一方の電極はダイオード22のカソードに接続され、ダイオード22のアノードは電圧源2の陽極に接続される。これにより、直流電圧V2が電圧源2から供給されているとき、コンデンサ21は直流電圧V2に略等しい電圧V21、より詳細には直流電圧V2からダイオード22の順方向電圧を差し引いた電圧V21に充電される。その後、電圧源2からの直流電圧V2の供給が停止されると、ダイオード22が逆バイアス状態となり、コンデンサ21は電圧V21を保持する。
【0018】
整流回路30は、6個のダイオード31〜36を有するダイオードブリッジ回路で構成される。ダイオード31のアノード及びダイオード32のカソードは電動機3のU相巻線3uに接続され、ダイオード33のアノード及びダイオード34のカソードは電動機3のV相巻線3vに接続され、ダイオード35のアノード及びダイオード36のカソードは電動機3のW相巻線3wに接続される。ダイオード31のカソード、ダイオード33のカソード及びダイオード35のカソードは整流回路30の正出力端子に接続され、ダイオード32のアノード、ダイオード34のアノード及びダイオード36のアノードは整流回路30の負出力端子に接続される。整流回路30は、電動機3のU相−V相間に発生する起電圧V3uv、V相−W相間に発生する起電圧V3vw、及び、W相−U相間に発生する起電圧V3wuを整流して整流電圧V30を分圧回路40に出力する。
【0019】
図2(a)は
図1の電動機3の各相間に発生する起電圧V3uv,V3vw,V3wuの波形を示す波形図であり、
図2(b)は
図1の駆動制御装置1における整流回路30の整流電圧V30の波形を示す波形図である。
図2(a)に示すように、電動機3の各相間には、回転数N3に比例した起電圧V3uv,V3vw,V3wuが発生する。本実施の形態では、起電圧V3uv,V3vw,V3wuは、最大値が電圧+V3pであり最小値が電圧−V3pである略正弦波形状の電圧である。整流回路30は、電動機3の相間に発生する起電圧V3uv,V3vw,V3wuを整流し、
図2(b)に示すように整流電圧V30を生成する。本実施の形態では、整流回路30はフルブリッジ回路で構成されているので、整流電圧V30はリップルの少ない直流電圧となる。
【0020】
図1において、分圧回路40は、整流回路30の正出力端子と負出力端子との間に直列に接続された抵抗41と抵抗42とを備える。分圧回路40は、整流回路30からの整流電圧V30を抵抗41と抵抗42とで分圧し、抵抗42の端子間電圧を分圧電圧V40としてフォトカプラ50に出力する。
【0021】
フォトカプラ50は、互いに光学的に統合されたフォトダイオードであるLED51と、フォトトランジスタである出力トランジスタ52とを有する。LED51は分圧回路40の抵抗42の端子間に接続され、分圧電圧V40を光信号に電光変換する。出力トランジスタ52のコレクタはスイッチ回路60に接続され、出力トランジスタ52のエミッタは電圧源2の陰極に接続される。出力トランジスタ52はLED51からの光信号を変換信号に光電変換する。例えば、分圧電圧V40が1.5V以上でLED51に電流が流れ、出力トランジスタ52はオン状態となり、ローレベルの変換信号を出力する。一方、分圧電圧V40が1.5V未満では、LED51に電流が流れず、出力トランジスタ52はオフ状態となり、変換信号を出力しない。
【0022】
スイッチ回路60は、コンデンサ21の一方の電極と短絡スイッチアレイ80の制御端子との間に設けられる。スイッチ回路60は、NPNトランジスタ61と、抵抗62、63とを備える。トランジスタ61のコレクタはコンデンサ21の一方の電極に接続され、トランジスタ61のエミッタは抵抗62を介して短絡スイッチアレイ80の制御端子に接続される。抵抗63はトランジスタ61のベースとコレクタとの間に接続される。トランジスタ61のベースはフォトカプラ50の出力トランジスタ52のコレクタに接続され、トランジスタ61のベースには変換信号が入力される。スイッチ回路60は、変換信号が入力されているときにはコンデンサ21の電圧V21を制御信号として出力しない。一方、スイッチ回路60は、変換信号が入力されていないときにコンデンサ21の電圧V21を制御信号として出力する。スイッチ回路60は、第2のスイッチ部の一例である。
【0023】
これらの整流回路30、分圧回路40、フォトカプラ50及びスイッチ回路60によれば、電動機3の回転数N3が所定のしきい値回転数以上であり、分圧電圧V40が例えば1.5V以上であり、出力トランジスタ52がオン状態であるとき、トランジスタ61はオフ状態となり、コンデンサ21の一方の電極と短絡スイッチアレイ80の制御端子とを接続しない。ここで、上記しきい値回転数は、後述するように電動機3に電気的な制動力を発生させるためのしきい値であり、電動機3の巻線3u,3v,3wを電圧源2の陰極に短絡する際に流れる過電流によって巻線3u,3v,3wの焼損又は駆動制御装置1の回路の故障が生じない程度の回転数に設定される。上記しきい値回転数は、分圧回路40の分圧比によりプログラムすることが可能である。
【0024】
一方、電動機3の回転数N3が上記しきい値回転数未満であり、分圧電圧V40が例えば1.5V未満であり、出力トランジスタ52がオフ状態であるとき、トランジスタ61はオン状態となり、コンデンサ21の一方の電極と短絡スイッチアレイ80の制御端子とを接続し、コンデンサ21の電圧V21を短絡スイッチアレイ80の制御端子に供給する。
【0025】
電圧検出回路70は、抵抗71,72とNPNトランジスタ73とを備える。抵抗71,72は電圧源2の陽極と陰極との間に直列に接続され、抵抗71と抵抗72との間の接続点はトランジスタ73のベースに接続される。トランジスタ73のコレクタは短絡スイッチアレイ80の制御端子に接続され、トランジスタ73のエミッタは電圧源2の陰極に接続される。これにより、電圧検出回路70のトランジスタ73は、直流電圧V2が電圧源2から入力されているときにオン状態となり、短絡スイッチアレイ80の制御端子と電圧源2の陰極とを短絡する。一方、直流電圧V2が電圧源2から入力されていないときには、電圧検出回路70のトランジスタ73はオフ状態となり、短絡スイッチアレイ80の制御端子を電圧源2の陰極から開放する。
【0026】
このように、電圧検出回路70は、直流電圧V2と所定のしきい値電圧であるトランジスタ73のゲート−ソース間しきい値電圧とを比較し、直流電圧V2がしきい値電圧以上であるときに直流電圧V2を検出し、直流電圧V2がしきい値電圧未満であるときに直流電圧V2を検出していないと判断する。電圧検出回路70は、直流電圧V2を検出したときにスイッチ回路60からの制御信号を短絡スイッチアレイ80の制御端子に出力せず、直流電圧V2を検出しないときにスイッチ回路60からの制御信号を短絡スイッチアレイ80の制御端子に出力する。
【0027】
短絡スイッチアレイ80は、NチャネルFET等の3個のトランジスタ81〜83を備える。トランジスタ81〜83はインバータ回路10の各相出力端子間にそれぞれ設けられる。具体的には、トランジスタ81のドレインはインバータ回路10のU相正出力端子17uに接続され、トランジスタ81のソースは電圧源2の陰極に接続される。また、トランジスタ82のドレインはインバータ回路10のV相正出力端子17vに接続され、トランジスタ82のソースは電圧源2の陰極に接続される。また、トランジスタ83のドレインはインバータ回路10のW相正出力端子17wに接続され、トランジスタ83のソースは電圧源2の陰極に接続される。トランジスタ81〜83のゲートは、スイッチ回路60のトランジスタ61のエミッタに抵抗62を介して接続されるとともに、電圧検出回路70のトランジスタ73のコレクタに接続される。短絡スイッチアレイ80は、以下に示すように、制御端子であるトランジスタ81〜83のゲートに入力される制御信号であるゲート電圧V80に基づいて、インバータ回路10の各相出力端子を短絡する。短絡スイッチアレイ80は、第1のスイッチ部の一例である。
【0028】
直流電圧V2が入力され、電圧検出回路70のトランジスタ73がオン状態であるとき、短絡スイッチアレイ80のトランジスタ81〜83のゲート電圧V80は略0Vとなる。そのため、トランジスタ81〜83はオフ状態となり、インバータ回路10の各相出力端子間を短絡しない。一方、直流電圧V2の供給が停止され、電圧検出回路70のトランジスタ73がオフ状態であるとき、短絡スイッチアレイ80のトランジスタ81〜83は、電動機3の回転数N3に応じて以下のように2つの動作を行う。
【0029】
電動機3の回転数N3が上記しきい値回転数以上であり、トランジスタ61がオフ状態であるとき、短絡スイッチアレイ80のトランジスタ81〜83はオフ状態となり、インバータ回路10の各相出力端子間を短絡しない。これにより、電動機3の巻線3u,3v,3wに過大な電流が流れることを抑制する。
【0030】
一方、電動機3の回転数N3が上記しきい値回転数未満であり、トランジスタ61がオン状態であるとき、短絡スイッチアレイ80のトランジスタ81〜83にはコンデンサ21の電圧V21がゲート電圧V80として入力される。その結果、トランジスタ81〜83はオン状態となり、インバータ回路10の各相出力端子間を短絡する。これにより、電動機3に制動力が発生し、速やかに電動機3を停止させることができる。
【0031】
[1−2.動作]
以上のように構成された電動機3の駆動制御装置1の動作について、
図3を参照して説明する。
図3(a)は
図1の電圧源2の電圧V2を示すタイミングチャートであり、
図3(b)は
図1のコンデンサ21の電圧V21を示すタイミングチャートであり、
図3(c)は
図1の電動機3の回転数N3を示すタイミングチャートであり、
図3(d)は
図1の分圧回路40の分圧電圧V40を示すタイミングチャートであり、
図3(e)は
図1のフォトカプラ50の出力トランジスタ52の状態を示すタイミングチャートであり、
図3(f)は
図1の電圧検出回路70のトランジスタ73の状態を示すタイミングチャートであり、
図3(g)は
図1のスイッチ回路60のトランジスタ61の状態を示すタイミングチャートであり、
図3(h)は
図1の短絡スイッチアレイ80のゲート電圧V80を示すタイミングチャートである。
【0032】
図3において、電圧源2がオフ状態である初期状態において、電圧源2の電圧V2は0Vであり、コンデンサ21の電圧V21は0Vであり、電動機3の回転数N3は0rpmである。このとき、分圧回路40の分圧電圧V40は0Vであり、フォトカプラ50の出力トランジスタ52はオフ状態であり、トランジスタ73はオフ状態であり、トランジスタ61はオフ状態である。また、短絡スイッチアレイ80のゲート電圧V80は0Vである。
【0033】
(1)電動機の駆動動作(時刻t1〜t3)
時刻t1において、電圧源2がオンされると、直流電圧V2が電圧V2Hに上昇する(
図3(a))。このとき、コンデンサ21は直流電圧V2によってダイオード22を介して充電され、コンデンサ21の電圧V21が電圧V21Hに上昇する(
図3(b))。
【0034】
電圧V2により、電圧検出回路70のトランジスタ73はオン状態となる(
図3(f))。また、フォトカプラ50の出力トランジスタ52がオフ状態であるので(
図3(e))、コンデンサ21の電圧V21により、スイッチ回路60のトランジスタ61はオン状態となる(
図3(g))。このように、電圧検出回路70のトランジスタ73がオン状態であるとき、短絡スイッチアレイ80のトランジスタ81〜83のゲート電圧V80は0Vであり(
図3(h))、トランジスタ81〜83はオフ状態となる。これより、インバータ回路10の各相出力端子間は短絡されず、インバータ回路10で生成された3相の交流電圧が電動機3のU相巻線3u、V相巻線3v及びW相巻線3wにそれぞれ供給される。
【0035】
その後、電動機3の回転数N3が次第に大きくなる(
図3(c))。このとき、電動機3の相間の起電圧V3uv,V3vw,V3wuが次第に大きくなり、これらを整流した整流電圧V30及び分圧電圧V40が次第に大きくなる(
図3(d))。
【0036】
その後、時刻t2において、分圧回路40の分圧電圧V40が1.5Vに達すると(
図3(d))、フォトカプラ50の出力トランジスタ52がオン状態となり(
図3(e))、スイッチ回路60のトランジスタ61がオフ状態となる(
図3(g))。このとき、電圧検出回路70のトランジスタ73はオン状態を継続するので、短絡スイッチアレイ80のトランジスタ81〜83はオフ状態を継続し、インバータ回路10からの3相交流電圧は電動機3に供給され続ける。その後、電動機3の回転数N3は回転数N3Hまで上昇し(
図3(c))、その回転数N3Hが保持される。このとき、分圧電圧V40は電圧V40Hまで上昇する(
図3(d))。
【0037】
(2)電動機の停止動作(高回転時、制動なし)(時刻t3〜t4)
次に、時刻t3において、電動機3が運転状態であるときに電圧源2がオフされると、電圧源2の直流電圧V2が0Vに低下する(
図3(a))。このとき、ダイオード22は逆バイアス状態となるので、コンデンサ21の電圧V21は保持される(
図3(b))。
【0038】
電圧V2が0Vに低下すると、電圧検出回路70のトランジスタ73はオフ状態となる(
図3(f))。また、フォトカプラ50の出力トランジスタ52がオン状態であるので(
図3(e))、スイッチ回路60のトランジスタ61はオフ状態を継続する(
図3(g))。このように、直流電圧V2が0Vに低下しても、電動機3の回転数N3が上記しきい値回転数以上であるときには、フォトカプラ50の出力トランジスタ52がオン状態であり、スイッチ回路60のトランジスタ61がオフ状態となる。これにより、コンデンサ21の電圧V21が短絡スイッチアレイ80のトランジスタ81〜83のゲートに供給されず、トランジスタ81〜83のゲート電圧V80は0Vであり(
図3(h))、トランジスタ81〜83はオフ状態を継続する。これにより、インバータ回路10の各相出力端子間は短絡されない。
【0039】
このように、直流電圧V2が0Vに低下しても、電動機3の回転数N3が上記しきい値回転数以上であるときには、駆動制御装置1はインバータ回路10の各相出力端子間の短絡を行わない。これにより、電動機3の巻線3u,3v,3wに過大な電流が流れることを抑制することができる。
【0040】
このとき、インバータ回路10の各トランジスタ11〜16はオフ状態となるので、電動機3は慣性力によって回転を継続しつつ、電動機3の回転数N3が次第に低下する(
図3(c))。その結果、電動機3の各相間の起電圧V3uv,V3vw,V3wuが次第に低下し、これらを整流した整流電圧V30及び分圧電圧V40が次第に低下する(
図3(d))。
【0041】
(3)電動機の停止動作(低回転時、制動あり)(時刻t4〜t5)
次に、時刻t4において、電動機3の回転数N3が上記しきい値回転数未満となり、分圧回路40の分圧電圧V40が1.5V未満に低下すると(
図3(d))、フォトカプラ50の出力トランジスタ52がオフ状態となり(
図3(e))、スイッチ回路60のトランジスタ61がオン状態となる(
図3(g))。これにより、短絡スイッチアレイ80のトランジスタ81〜83のゲートにコンデンサ21の電圧V21が入力され、ゲート電圧V80が電圧V80Hになり(
図3(h))、トランジスタ81〜83がオン状態となり、インバータ回路10の各相出力端子が短絡される。その結果、電動機3の巻線3u,3v,3wが短絡され、電動機3に制動力が発生し、速やかに電動機3を停止させることができる(
図3(c)の時刻t5)。なお、時刻t4において電動機3の巻線3u,3v,3wが電圧源2の陰極に短絡されるので、分圧電圧V40は0Vとなる(
図3(d)の時刻t4)。
【0042】
[1−3.効果]
以上のように、本実施の形態において、電動機3の駆動制御装置1は、電動機3の駆動を制御する駆動制御装置であって、インバータ回路10と、短絡スイッチアレイ80と、コンデンサ21と、ダイオード22と、整流回路30と、スイッチ回路60と、電圧検出回路70とを備える。インバータ回路10は、直流電圧V2を交流電圧に変換して出力端子を介して電動機3に出力する。短絡スイッチアレイ80と、制御信号に基づいてインバータ回路10の出力端子を短絡する。コンデンサ21は、直流電圧V2をダイオード22を介して充電する。整流回路30は、電動機3に発生する起電圧を整流して整流電圧V30を出力する。フォトカプラ50は、整流電圧V30を光信号に電光変換した後、当該光信号を変換信号に光電変換する。スイッチ回路60は、変換信号が入力されていないときにコンデンサ21の電圧V21を制御信号として出力する一方、変換信号が入力されているときに制御信号を出力しない。電圧検出回路70は、直流電圧V2を検出するか否かを判断し、直流電圧V2を検出しないときに上記制御信号を短絡スイッチアレイ80に出力する一方、直流電圧V2を検出したときに上記制御信号を短絡スイッチアレイ80に出力しない。
【0043】
本実施の形態では、直流電圧V2が供給されるときには(
図3のt1〜t3)、電圧検出回路70がスイッチ回路60からの制御信号を短絡スイッチアレイ80に出力しないので、短絡スイッチアレイ80がインバータ回路10の出力端子を短絡することがなく、電動機3に制動力が発生することがない。
【0044】
一方、直流電圧V2の供給が停止されたとき(
図3のt3〜t5)、電圧検出回路70がスイッチ回路60からの制御信号を短絡スイッチアレイ80に出力する。
【0045】
このとき、電動機3の回転数N3が上記しきい値回転数以上である場合には(
図3のt3〜t4)、フォトカプラ50の出力トランジスタ52がオン状態であり変換信号を出力し、スイッチ回路60はコンデンサ21の電圧V2を上記制御信号として出力しない。これにより、短絡スイッチアレイ80がインバータ回路10の出力端子を短絡することがなく、電動機3に制動力が発生することがない。そのため、電動機3の巻線3u,3v,3wに過大な電流が流れることを抑制することができる。
【0046】
その後、電動機3の回転数N3が上記しきい値回転数未満になった場合(
図3のt4〜t5)、フォトカプラ50の出力トランジスタ52がオフ状態となり変換信号を出力せず、スイッチ回路60はコンデンサ21の電圧V21を上記制御信号として出力する。これにより、コンデンサ21に保持された電圧が短絡スイッチアレイ80に供給され、短絡スイッチアレイ80がインバータ回路10の出力端子を短絡し、電動機3に制動力が発生する。そのため、速やかに電動機3を停止させることができる。
【0047】
このように、本実施の形態によれば、電動機3の巻線3u,3v,3wの起電圧、すなわち電動機3の回転数を検出し、電動機3の回転数が上記しきい値回転数以上のときには電動機3の制動を行わず、電動機3の回転数が上記しきい値回転数未満に低下したときのみ制動を行うので、電動機3の巻線3u,3v,3wに発生する過電流を抑制して速やかに電動機3を停止させることができる。
【0048】
また、本実施の形態では、直流電圧V2が供給されるときにコンデンサ21がダイオード22を介して充電され、直流電圧V2の供給が停止されたときにはダイオード22が逆バイアス状態となってコンデンサ21は電圧V21を保持する。短絡スイッチアレイ80を動作させるためにコンデンサ21の電圧V21を使用することにより、直流電圧V2の供給が停止されたときでも上記した電動機3の制動を行うことができる。
【0049】
さらに、本実施の形態によれば、上記した電動機3の制動を従来技術に比較して簡単な回路で実現することができる。
【0050】
(他の実施の形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。そこで、以下、他の実施の形態を例示する。
【0051】
例えば、本実施の形態1では、電圧検出回路70のトランジスタ73としてNPNトランジスタを例示したが、トランジスタ73はNチャネルFETであってもよい。
【0052】
また、本実施の形態1では、インバータ回路10のトランジスタ11〜16としてNチャネルFETを例示したが、トランジスタ11〜16はPチャネルFETであってもよいし、NPNトランジスタ又はPNPトランジスタであってもよい。
【0053】
以上のように、本開示における技術の例示として、実施の形態を説明した。そのために、添付図面および詳細な説明を提供した。
【0054】
したがって、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面又は詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0055】
また、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。