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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-229135(P2017-229135A)
(43)【公開日】2017年12月28日
(54)【発明の名称】熱電発電装置
(51)【国際特許分類】
   H02N 11/00 20060101AFI20171201BHJP
   F01N 5/02 20060101ALI20171201BHJP
   H01L 35/28 20060101ALI20171201BHJP
【FI】
   H02N11/00 A
   F01N5/02 Z
   H01L35/28 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-122770(P2016-122770)
(22)【出願日】2016年6月21日
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】桑山 和利
(57)【要約】
【課題】故障判定の精度向上が図れる熱電発電装置を提供する。
【解決手段】熱電発電装置は、冷却水が流れる循環通路と、エンジンからの排ガスが流れる分岐通路と、両側部の温度差によって発電する熱電発電器と、熱電発電器についての開放電圧と交流抵抗とを検出可能な制御装置と、を備える。制御装置は、エンジンが再始動する直前に、検出した開放電圧が基準値を下回り、検出した交流抵抗が判定値を上回り、さらにエンジンの始動後に検出した開放電圧が開放電圧の実績値を上回っている場合に、ステップS230の判定を行う。ステップS230では、検出した交流抵抗と開放電圧の実績値とを用いて求めた発電能力の推定値が所定の許容レベルよりも低下しているときに故障が発生していると判定する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1流体が流れる第1流体通路(27)と、
前記第1流体よりも高温であり、エンジン(20)から排出される第2流体が流れる第2流体通路(31)と、
熱電変換素子を有し、一方側部(10a)に前記第1流体の熱が移動可能であり、他方側部(10b)に前記第2流体の熱が移動可能となるように設けられて、前記一方側部と前記他方側部との温度差によって発電する熱電発電器(10)と、
前記熱電発電器についての開放電圧と交流抵抗とを取得可能な制御装置(5)と、
を備え、
前記制御装置は、前記エンジンが停止してから再始動する直前に、検出した前記開放電圧が基準値を下回る場合に、検出した前記交流抵抗に応じて前記熱電発電器の故障発生か否かを判定する熱電発電装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記エンジンの運転中に検出した前記開放電圧の実績値を記憶しており、
前記制御装置は、前記エンジンが前記再始動する直前に、検出した前記開放電圧が前記基準値を下回り、かつ検出した前記交流抵抗が判定値を上回る場合に、前記エンジンの再始動後に検出した前記開放電圧が前記開放電圧の実績値を上回っているときに故障が発生していると判定する請求項1に記載の熱電発電装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記エンジンが前記再始動する直前に、検出した前記開放電圧が前記基準値を下回り、検出した前記交流抵抗が前記判定値を上回り、さらに前記エンジンの再始動後に検出した前記開放電圧が前記開放電圧の実績値を上回っている場合に、前記検出した前記交流抵抗と前記開放電圧の実績値とを用いて求めた発電能力の推定値が許容レベルよりも低下しているときに故障が発生していると判定する請求項2に記載の熱電発電装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記エンジンの再始動の際に検出した前記開放電圧が、前記エンジンの実回転速度に対応付けて前記記憶された前記開放電圧の実績値のうち、すべての前記実回転速度における前記開放電圧の最大値に対して上回っている場合に、故障が発生していると判定する請求項2に記載の熱電発電装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記エンジンの再始動の際に検出した前記開放電圧が、前記エンジンの目標回転速度に対応付けて前記記憶された前記開放電圧の実績値のうち、すべての前記目標回転速度における前記開放電圧の最大値に対して上回っている場合に、故障が発生していると判定する請求項2に記載の熱電発電装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記エンジンの再始動の際に検出した前記開放電圧が、車速に対応付けて前記記憶された前記開放電圧の実績値のうち、すべての車速における前記開放電圧の最大値に対して上回っている場合に、故障が発生していると判定する請求項2に記載の熱電発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、ゼーベック効果により熱エネルギを電力エネルギに変換する熱電発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の熱電発電装置は、車速センサが検出した車速の検出値と予め定めたマップから熱電変換器の発電量を推定し、熱電変換器の実発電量が推定発電量より小さい場合は熱電変換器が故障していると判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−14084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両において、排ガス温度、排ガス流量、冷却水温度、冷却水流量等は、車速に基づいて一義的に定まるものでなく、例えば、加速、制動等に関わる走行負荷によっても大きく影響を受けるパラメータである。このため、特許文献1の装置のように、車速に基づいて推定した発電量の精度には改良の余地があり、この発電量の推定値を用いた故障判定もその精度の点で課題がある。
【0005】
このような課題に鑑み、この明細書における開示の目的は、故障判定の精度向上が図れる熱電発電装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この明細書に開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。また、特許請求の範囲およびこの項に記載した括弧内の符号は、ひとつの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例であって、技術的範囲を限定するものではない。
【0007】
開示された熱電発電装置のひとつは、第1流体が流れる第1流体通路(27)と、第1流体よりも高温であり、エンジン(20)から排出される第2流体が流れる第2流体通路(31)と、熱電変換素子を有し、一方側部(10a)に第1流体の熱が移動可能であり、他方側部(10b)に第2流体の熱が移動可能となるように設けられて、一方側部と他方側部との温度差によって発電する熱電発電器(10)と、熱電発電器についての開放電圧と交流抵抗とを取得可能な制御装置(5)と、を備える。制御装置は、エンジンが停止してから再始動する直前に、検出した開放電圧が基準値を下回る場合に、検出した交流抵抗に応じて熱電発電器の故障発生か否かを判定する。
【0008】
この熱電発電装置によれば、エンジンが停止後、再度始動する直前に検出した開放電圧が基準値を下回っている場合は熱電発電器が温まっていない。このとき、一方側部と他方側部との温度差があまりない状況であると判断でき、熱電発電器の交流抵抗を正確に検出することができる。これは、温度差が大きく、熱電発電器の電流値が大きい場合には電気的抵抗である交流抵抗の誤差が大きくなるからである。熱電発電装置は、このような状況において検出した交流抵抗に応じて熱電発電器の故障発生か否かを判定するため、負荷に応じて複雑に変動しうる温度依存性が高いパラメータを除いた故障判断を実施することができる。したがって、この熱電発電装置によれば、車速に基づいた発電量の推定値を用いて故障判定を行う従来技術に対して、故障判定の精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態の熱電発電装置と冷却水および排ガスとの関係を示した概要図である。
図2】第1実施形態の熱電発電装置に関する制御構成図である。
図3】第1実施形態において、エンジン運転中にデータ蓄積処理を実行するフローチャートである。
図4】第1実施形態において、エンジン再始動時に故障判定処理を実行するフローチャートである。
図5】故障判定処理のために記憶部に記憶される、エンジン回転速度毎の開放電圧を示すグラフである。
図6】第2実施形態において、エンジン再始動時に故障判定処理を実行するフローチャートである。
図7】第3実施形態において、エンジン再始動時に故障判定処理を実行するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面を参照しながら本開示を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0011】
(第1実施形態)
第1実施形態の熱電発電装置1について、図1図5を参照して説明する。熱電発電装置1は、エンジン20から排出される第2流体としての排ガスと排ガスよりも低温である第1流体との温度差を利用して、ゼーベック効果により熱エネルギを電力エネルギに変換する装置である。熱電発電装置1は、熱電変換素子を有する熱電発電器10において一方側部である低温側部10aと他方側部である高温側部10bとに温度差が与えられると、電位差が生じて電子が流れる現象を利用して発電する。第1流体には排ガスと温度差を与えることが可能な任意の流体を採用することができる。この実施形態では、任意に選択可能な低温流体の一例として、自動車のエンジン20の冷却水を用いる場合について説明する。
【0012】
内燃機関であるエンジン20には燃焼用の空気を吸入する吸気管と、燃焼後の排ガスを排出する排気管3が接続されている。吸気管内には、車両に設けられたアクセルペダルの踏み込み量に応じて開度が可変されるスロットルバルブが設けられている。エンジン20は、エンジン制御装置4によって最適な作動に制御される。エンジン制御装置4には、エンジン回転数信号、スロットルバルブ開度信号、および車速信号等が入力される。エンジン制御装置4は、エンジン回転数信号およびスロットルバルブ開度信号に対する燃料噴射量を対応付けた制御マップを予め記憶している。エンジン制御装置4は、制御マップに基づいて吸気管側に所定のタイミングで必要とされる燃料噴射量を制御する。エンジン制御装置4は、熱電発電装置1の制御装置15と互いの信号の授受が通信可能となるように接続されている。
【0013】
エンジン20には冷却水回路2が接続されている。冷却水回路2は、エンジン20を冷却するためエンジン20内の冷却水が循環する回路である。冷却水は、ウォータポンプ24によって出口部20bからラジエータ21を通過して入口部20aに流通して循環する。ウォータポンプ24は、例えば、エンジン20の駆動力を受けて作動するエンジン駆動式のポンプである。冷却水回路2を循環する冷却水は、ラジエータ21の放熱によって冷却されるので、エンジン20の作動温度を適切に制御することができる。
【0014】
冷却水回路2には、ラジエータ21をバイパスするバイパス通路26と、ラジエータ21側あるいはバイパス通路26側への冷却水流量を調節するサーモスタット22とが設けられている。冷却水温度が第1所定温度以下においては、サーモスタット22によってラジエータ21側が閉じられ、冷却水がバイパス通路26側を流通することで冷却水の過冷却を防止できる。これは、例えばエンジン20の始動直後のように冷却水が充分に昇温していない場合に対応し、エンジン20の暖機を促進することができる。さらにサーモスタット22は、エンジン20の暖機が終了して冷却水温度が第1所定温度を超えると、ラジエータ21側を開き始め、第2所定温度以上でバイパス通路26側を閉じ、ラジエータ21側を全開にする。冷却水回路2には、ラジエータ21に対して並列となるようにヒータコア23と、冷却水回路2の一部を成すヒータ温水回路25と、が設けられている。ヒータコア23は、冷却水を熱源として空調用空気を加熱する暖房装置用の熱交換器である。
【0015】
熱電発電装置1は、熱電発電器10と、熱電発電器10の作動を制御する制御装置5と、を備えている。熱電発電器10は、ゼーベック効果を利用して発電を行う熱電変換素子に対して、第2流体通路である分岐通路31と、第1流体通路である循環通路27と、が配設されて構成されている。分岐通路31は、エンジン20の排気管3から分岐して再び排気管3に合流するように形成された通路を構成し、排ガスの一部が分流するように構成されている。分岐通路31は、熱電変換素子、あるいは熱電発電器10の他方側面である高温側部10bに接触し、排ガスが熱電変換素子の高温側熱源となる。分岐通路31の熱電変換素子に対する排ガスの上流側には、分岐通路31を開閉する開閉弁30が設けられている。
【0016】
循環通路27は、バイパス通路26よりもエンジン20側となる通路であり、ラジエータ21の下流側で、サーモスタット22と入口部20aとを繋ぐ通路である。循環通路27は、熱電変換素子、あるいは熱電発電器10の一方側面である低温側部10aに接触している。バイパス通路26からサーモスタット22を流れる冷却水、あるいは、ラジエータ21を通過しサーモスタット22を流れる冷却水は、熱電変換素子側に供給され、この冷却水が熱電変換素子の低温側熱源となる。
【0017】
制御装置5は、プログラムに従って動作するマイコンのようなデバイスを主なハードウェア要素として備える。制御装置5は、図2に図示するように、各種装置と各種センサとが接続されるインターフェース部50(以下、I/F部50ともいう)と、演算処理部51と、記憶部52と、を備える。演算処理部51は、I/F部50を通して各種センサ、各種測定装置から取得した情報と、記憶部52に格納した各種データとを用いて所定のプログラムにしたがった判定処理や演算処理を行う。
【0018】
記憶部52は、書き込み可能な記憶媒体を備えており、その記憶媒体に、各検出器から出力された信号に基づく情報を一時的に記憶する。記憶部52は、非遷移的実体的記録媒体(non-transitory tangible storage media)である。演算処理部51は、制御装置5における判定部である。I/F部50は、演算処理部51による判定結果、演算結果に基づいて各種装置を操作する。したがって、I/F部50は制御装置5における入力部および制御出力部である。また、制御装置5は、エンジン制御装置4と一体化され、エンジン制御装置4の一部を構成するものでもよい。
【0019】
I/F部50は、エンジン情報信号としてエンジン回転数、エンジン負荷情報等をエンジン制御装置4から取得する。エンジン負荷情報とは、例えばエンジン20のトルク値である。回転速度検出器40は、エンジン20の回転速度を検出するセンサである。演算処理部51は、予め設定されたプログラムにしたがって、エンジン制御装置7からの各種のエンジン情報信号等に対する演算処理を行う。制御装置5は演算処理部51による演算結果に基づいて開閉弁30等の制御を行う。制御装置5は、軸トルクマップ、エンジン20の冷却損失熱量マップ、エンジン20の通水流量マップ、ラジエータ21の基準放熱量マップ、開閉弁30の開度マップや各種演算式を予め記憶している。制御装置5は、これらのマップや演算式に基づいて開閉弁30の開度を制御する。
【0020】
演算処理部51は、回転速度検出器40、電圧検出器41、抵抗検出器42等によって検出される各種情報と所定のプログラムとにしたがって、熱電発電器10の故障判断に係る演算処理を行う。電圧検出器41は、熱電発電器10における開放電圧を検出し、制御装置5に出力する。開放電圧は、開放起電圧とも称する。開放電圧は、熱電発電器10の熱交換性能を示すデータであり、低温側部10aと高温側部10bとの温度差が小さいときは正確に検出できないデータである。制御装置5は、低温側部10aと高温側部10bとの温度差に応じて電圧検出器41からデータ取得するように構成されている。例えば、制御装置5は、低温側部10aと高温側部10bとの温度差が大きい場合に電圧検出器41からデータ取得する。
【0021】
抵抗検出器42は、熱電発電器10についての交流抵抗を検出し、制御装置5に出力する。交流抵抗は、熱電発電器10の電気抵抗を示すデータであり、低温側部10aと高温側部10bとの温度差が大きいときは正確に検出できないデータである。制御装置5は、低温側部10aと高温側部10bとの温度差が小さいときに抵抗検出器42からデータ取得するように構成されている。
【0022】
I/F部50は、演算処理部51による演算結果に基づいて開閉弁30等の機器を操作する。I/F部50には、ユーザインターフェイスとなる端末装置、例えば、コントロールパネル、携帯用端末機等が接続される。使用者は、コントロールパネルの表示部53、端末装置等の表示画面を通じて、I/F部50から出力された現在の運転状態を確認することができる。また、表示部53等の表示画面には、故障判定処理に基づいた熱電発電器10の故障情報が表示される。
【0023】
次に、熱電発電装置1が実行する故障判定処理の一例について図3図5を参照して説明する。この故障判定処理は、熱電発電器10が正常に発電できないような故障が発生しているか否かをエンジン20の再始動の際に判定する処理である。図3に示すフローチャートは、エンジン20の運転中に制御装置5によって実行される処理を示している。図3に示すフローチャートでは、エンジン20の運転中に、エンジン回転速度毎に検出した開放電圧Vocを実績値として記憶する処理が行われる。図4に示すフローチャートは、エンジン20の停止後、再始動を行う際に制御装置5によって実行される処理を示している。
【0024】
図3に示すように、判定部である演算処理部51は、ステップS100でエンジン20が作動しているか否かを判定する。ステップS100はエンジン20が作動されるまで繰り返され、運転中になると、ステップS110で開放電圧の最大値Vocmax(Ne)をゼロに設定して記憶部52に記憶させる処理を実行する。Neは開放電圧検出時のエンジン回転速度を示している。ステップS120で制御装置5は、エンジン運転中に電圧検出器41によって開放電圧Vocを検出し、そのときのエンジン回転速度に対応付けて開放電圧Vocとエンジン回転速度とをセットで取得する。
【0025】
ステップS130では、ステップS120で取得したVoc(Ne)が、記憶部52に記憶されているVocmax(Ne)よりも大きいか否かを判定する。エンジン20の運転後、最初に取得したVoc(Ne)はゼロよりも大きいので、ステップS130で演算処理部51はYESと判定し、ステップS140でこのVoc(Ne)をVocmax(Ne)に設定する処理を実行する。記憶部52には、新たなVocmax(Ne)が記憶されることになる。次にステップS150でイグニッションスイッチがオフ状態か否かを判定し、オフ状態であれば本フローチャートを終了する。
【0026】
イグニッションスイッチがオフ状態ではなく、エンジン20が運転継続中である場合は、ステップS120に戻り、制御装置5は、検出された開放電圧Vocをエンジン回転速度に対応付けてセットで取得する。ステップS130において、ステップS120で取得したVoc(Ne)が、記憶部52に記憶されている同等レベルの回転速度のVocmax(Ne)以下と判定した場合は、ステップS120に戻ってVocを検出し回転速度とVocとをセットで取得する。このようにステップS130でYESと判定するまで、取得したVoc(Ne)をステップS140でVocmax(Ne)に書き換えることなく、ステップS120でエンジン運転中の新しいVoc(Ne)を取得し続ける。ステップS130において、ステップS120で取得したVoc(Ne)が、同等レベルのエンジン回転速度におけるVocmax(Ne)より大きいと判定した場合は、ステップS140でVocmax(Ne)を更新し、記憶部52に記憶させる処理を実行する。
【0027】
Vocの実績値は、例えば図5に図示するグラフのように、同じエンジン回転速度毎の開放電圧値として記憶部52に記憶されている。Vocの実績値は、同じエンジン目標回転速度毎の開放電圧値として、または同じ車速毎の開放電圧値として記憶部52に記憶されているように構成してもよい。
【0028】
イグニッションスイッチがオフ状態になると、図3のステップS150でYESと判定して図3のフローチャートを終了し、エンジン運転中における開放電圧Vocのデータ蓄積を終了する。次にエンジン20が再始動する際には、制御装置5は図4に係るフローチャートに示す処理を開始する。制御装置5は、エンジン20を再始動する信号をエンジン制御装置4から取得すると、図4のフローチャートにしたがった処理を実行する。
【0029】
図4に示すように、エンジン20の再始動直前に、つまりエンジン20の停止後エンジン20の次回運転が始まる前に、ステップS200、ステップS220の各処理を実行する。これは、熱電発電器10が排ガスによって温められて低温側部10aと高温側部10bとの温度差が大きくなると、熱電発電器10の交流抵抗を正確に検出できないからである。制御装置5は、温度影響を受けていない状態の交流抵抗値を故障判定に用いることによって、故障判定の精度を高めることができる。
【0030】
まずステップS200において、演算処理部51は、始動前に取得した開放電圧Voc(0)が所定の基準値であるVocminよりも小さいか否かを判定する。エンジン始動直前のVoc(0)が基準値以上の値であると、熱電変換素子が温まっている状態であり、熱電変換素子の低温側部10aと高温側部10bとの温度差が生じているため、異常な交流抵抗値を正確に検出できず、正確な故障判定ができない。基準値Vocminは、このような状態を除いて判定可能な状態を検出できるような値に設定されており、制御装置5に予め記憶されている。ステップS200でNOと判定すると、熱電変換素子が温まっており故障判定不可能な状態であるので、故障発生の有無を判定せず本フローチャートを終了する。
【0031】
ステップS200でYESと判定すると、ステップS210で演算処理部51は、始動前に抵抗検出器42によって検出されて、取得した交流抵抗Racが所定の判定値であるRac0よりも大きいか否かを判定する。判定値Rac0は、製品として熱電発電器10に要求されている発電能力を出力可能な状態であることを維持するために、設定される値である。例えば、判定値Rac0は、Racがこの値を超えると、必要な発電能力を発揮できない状態になっていることを基準として設定される値である。ステップS210でNOと判定すると、熱電発電器10が必要な発電能力を出力可能な状態であり正常であると判定でき、本フローチャートを終了する。
【0032】
ステップS210でYESと判定すると、次にステップS220で演算処理部51は、エンジン20の始動後に検出したVoc0(Ne)が記憶部52に記憶されているVocmax(Ne)よりも大きいか否かを判定する。Vocmax(Ne)は、記憶部52に記憶されている、実回転速度毎のVocの最大値である。例えばVocmax(Ne)は、図5のグラフにおける縦方向に一列に複数並ぶデータのうち、各列において最も大きいVocの値である。図5のグラフにおいて縦方向に一列に複数並ぶデータは、同等レベルの回転速度について検出された開放電圧Vocの実績値である。したがって、ステップS220の判定処理におけるVoc0は、図5に図示する、すべての回転速度についてのVocmax(Ne)よりも大きい場合にはYESと判定され、そうでない場合にはNOと判定される。このようにステップS220では、エンジン20の再始動の際に検出した開放電圧値が、記憶された開放電圧の実績値のうち、すべての実回転速度における開放電圧の最大値に対して上回っているか否かを判定する。
【0033】
ステップS220でNOと判定すると、この実施形態では正常であると判定して、本フローチャートを終了する。ステップS220でYESと判定すると、演算処理部51はステップS230で、開放電圧の実績値から推定される発電能力の推定値が許容レベルよりも低下しているか否かを判定する。ステップS230でNOと判定すると、熱電発電器10が故障しているとは判定しないで、本フローチャートを終了する。ステップS230でYESと判定すると、熱電発電器10が所望の発電能力を発揮できない状態であるため、ステップS240で故障発生の処理を実行し、本フローチャートを終了する。例えば、制御装置5は、故障発生である旨を表示部53に表示したり、音声等で報知したりしてユーザーに知らせる処理を行う。
【0034】
ステップS230では、発電能力の推定値Ptegを発電能力の狙い値Pteg0で割り算して得られる値が所定の判断値Ptegfより小さいか否かを判定する。判断値Ptegfは、例えば熱電発電器10の発電性能が100%の能力状態から許容レベルを超えて低下した場合に相当する値に設定される。
【0035】
Pteg/Pteg0は次式によって算出するものする。
【0036】
Pteg/Pteg0=(Vocmax/Voc0)/(Rac/Rac0)
また、PtegはVoc/Racで表され、Pteg0はVoc0/Rac0で表される。
【0037】
次に、第1実施形態の熱電発電装置1がもたらす作用効果について説明する。熱電発電装置1は、冷却水が流れる循環通路27と、エンジン20から排出される排ガスが流れる分岐通路31と、熱電発電器10と、熱電発電器10についての開放電圧と交流抵抗とを取得可能な制御装置5と、を備える。熱電発電器10は、熱電変換素子を有し、低温側部10aに冷却水の熱が移動可能であり、高温側部10bに排ガスの熱が移動可能となるように設けられて、低温側部10aと高温側部10bとの温度差によって発電する。制御装置5は、エンジン20が停止してから再始動する直前に、検出した開放電圧が基準値を下回る場合に、検出した交流抵抗に応じて熱電発電器10の故障発生か否かを判定する。
【0038】
この熱電発電装置1によれば、エンジン20が停止後、再度始動する直前に検出した開放電圧が基準値を下回っている場合は熱電発電器10が温まっていない状態である。この状態は、低温側部10aと高温側部10bとの温度差があまりない状況であると判断でき、熱電発電器10の交流抵抗を正確に検出することができる。これは、温度差が大きく熱電発電器10の電流値が大きい場合には電気的抵抗である交流抵抗の誤差が大きくなる性質を利用している。熱電発電装置1は、このような状況において検出した交流抵抗に応じて熱電発電器10の故障発生か否かを判定する。このため、負荷に応じて複雑に変動しうる温度依存性が高いパラメータを除いた熱電発電器10の故障判断を実施できる。この熱電発電装置1によれば、従来の車速に基づいた発電量の推定値を用いて故障判定を行う技術に対して、故障判定の精度を十分に向上することができる。
【0039】
制御装置5は、エンジン20が再始動する直前に、検出した開放電圧が基準値を下回り、検出した交流抵抗が判定値を上回り、さらにエンジン20の再始動後に検出した開放電圧が開放電圧の実績値を上回っている場合に、さらに発電能力に関わる判定を行う。制御装置5は、検出した交流抵抗と開放電圧の実績値とを用いて求めた発電能力の推定値が許容レベルよりも低下しているときに故障が発生していると判定する。
【0040】
この故障判定によれば、温度依存性が高いパラメータを除いた判定処理と過去の熱交換性能に対して再始動後の熱交換性能を比較した判定処理とに加えて、さらに推定発電能力が許容レベルを確保している否かという判断を実施した故障判定を提供できる。したがって、従来の車速に基づいた発電量の推定値を用いて故障判定を行う技術に対して、故障判定の精度を格段に向上することができる。
【0041】
(第2実施形態)
第2実施形態におけるエンジン再始動時の故障判定処理について図6のフローチャートを参照して説明する。図6において第1実施形態の図4と同じ符号を付したステップは、第1実施形態と同様である。第2実施形態で特に説明しない構成、処理、作用、効果については、第1実施形態と同様であり、以下、第1実施形態と異なる点についてのみ説明する。
【0042】
第2実施形態のエンジン再始動時の故障判定処理は、第1実施形態の故障判定処理に対して、ステップS200、S210がともにYESと判定された場合にS240の故障発生の処理を実行する点が相違する。第2実施形態の故障判定処理によれば、低温側部10aと高温側部10bとの温度差があまりない状況において正確な交流抵抗を検出できるので、温度依存性が高いパラメータを除いた熱電発電器10の故障判断を実施できる。この故障判定処理によれば、従来の車速に基づいた発電量の推定値を用いて故障判定を行う技術に対して、故障判定の精度を十分に向上することができる。
【0043】
(第3実施形態)
第3実施形態におけるエンジン再始動時の故障判定処理について図7のフローチャートを参照して説明する。図7において第1実施形態の図4と同じ符号を付したステップは、第1実施形態と同様である。第3実施形態で特に説明しない構成、処理、作用、効果については、第1実施形態と同様であり、以下、第1実施形態と異なる点についてのみ説明する。
【0044】
第3実施形態のエンジン再始動時の故障判定処理は、第1実施形態の故障判定処理に対して、ステップS200、S210、S220がともにYESと判定された場合にS240の故障発生の処理を実行する点が相違する。第3実施形態の故障判定処理によれば、低温側部10aと高温側部10bとの温度差があまりない状況において正確な交流抵抗を検出して、温度依存性が高いパラメータを除いた故障判断を実施できる。さらに、エンジン20の再始動後に検出した開放電圧が開放電圧の実績値を上回っている場合に故障が発生していると判定するため、過去の熱交換性能に対して再始動後の熱交換性能を比較した故障判定を実施できる。第3実施形態の故障判定処理によれば、従来の車速に基づいた発電量の推定値を用いて故障判定を行う技術に対して、故障判定の精度を十分に向上することができる。
【0045】
(他の実施形態)
この明細書の開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品、要素の組み合わせに限定されず、種々変形して実施することが可能である。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品、要素が省略されたものを包含する。開示は、ひとつの実施形態と他の実施形態との間における部品、要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示される技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものと解されるべきである。
【0046】
前述の実施形態において、ステップS210での判定処理に用いるRac0の値は、熱電変換素子の経年劣化等を考慮して、制御装置5において適宜書き換えられる判定値として構成してもよい。
【0047】
前述の実施形態の熱電発電器10は、ケースによって覆われる構成ではなく、多数のP型半導体素子とN型半導体素子とが、分岐通路31を形成する配管と循環通路27を形成する配管とに接触し、両側部に温度差が発生する構成でもよい。熱電発電器10においてケースは必須の構成要素ではない。
【0048】
前述の実施形態において、第1流体と第2流体は、互いに逆向きに流れる対向流を形成してもよい。
【符号の説明】
【0049】
5…制御装置、 10…熱電発電器
10a…低温側部(一方側部)、 10b…高温側部(他方側部)
20…エンジン、 27…循環通路(第1流体通路)、 31…分岐通路(第2流体通路)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7