【解決手段】絶縁材としてステータコアを上下より覆う分割インシュレータとして、ステータコア内径の鍔部周方向両端から外周側に膨出する内側リブと、ステータコア外径側の継鉄部周方向両端から内周側に膨出する外側リブとを有する、主に電動機に備えられるインシュレータを提供する。
外周側に設けられた継鉄部と当該継鉄部から内周側に向けて延設された歯基部と当該歯基部の内周側先端部から周方向両側に延設された鍔部とを備えた複数のT字形状部を有する鉄心を覆う絶縁材としてのインシュレータであって、
前記鍔部の周方向両端から外周側に膨出する内側リブと、
前記継鉄部の周方向両端から内周側に膨出する外側リブとを備えたインシュレータ。
外周側に設けられた継鉄部と当該継鉄部から内周側に向けて延設された歯基部と当該歯基部の内周側先端部から周方向両側に延設された鍔部とを備えた複数のT字形状部を有する鉄心と、
前記鉄心の全周にわたって設けられた請求項1から7のいずれかに記載のインシュレータと、
前記インシュレータに巻回される巻線とを備えた電動機。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。また、全図面を通して、同一の部位については同一の符号を付して二度目以降の説明を省略している。さらに、各図面において、本発明に直接には関係しない各部の詳細については説明を省略している。
【0011】
(実施の形態1)
本発明の第1の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
まず、
図1および
図2を用いて本実施の形態に係る電動機15について説明する。なお
図1は、本実施の形態に係る電動機15の天面側から見た平面図である。
【0013】
電動機15は、回転軸17を軸中心として回転するロータと、ロータの外周側に設けられたステータ14とを備えている。なお、
図1は、電動機15の概略構造を示すものであり、電動機15の外郭やロータ等は便宜上省略している。
【0014】
ステータ14は、ステータコアすなわち鉄心16と、インシュレータ1と、巻線13とを備える。
【0015】
鉄心16は、円筒形状を有し、円筒形状における中心軸である回転軸17に垂直な断面を規定した際に、断面視にして中空円形、すなわちドーナツ形状を有する。鉄心16は、複数のT字形状部(後述のT字形状部18)を周方向に連結して構成されるが、詳細は後述する。
【0016】
インシュレータ1は、円筒形状を有する鉄心16に対して、回転軸17の軸方向における上下から鉄心16に被せて当該鉄心16を覆う構成を有する。つまりインシュレータ1は、インシュレータ部材Aとインシュレータ部材Bとから構成される。インシュレータ1は、内側リブ2と外側リブ3を備えているが詳細は後述する。
【0017】
巻線13は、銅やアルミニウムの合金を主な素材とする導電線であり、インシュレータ1を介して複数のT字形状部18に対して巻装され、すなわちインシュレータ1に巻回される。巻線13は、図示しない交流電源、或いはインバータ回路等を介して直流電源に接続されて通電されることで、回転軸17を中心にロータを回動させる。
【0018】
続いて、
図2を用いてステータ14の詳細構造について説明する。なお
図2は、ステータ14の平面図である。
図2については、ステータ14を構成する巻線13は便宜上省略している。
【0019】
図2においては、鉄心16全周にわたって当該鉄心16とほぼ同一形状のインシュレータ1が覆っており、インシュレータ1が鉄心16と図示しない巻線13との絶縁材として機能する。
【0020】
鉄心16は、
図2に示すようにT字形状部18を、回転軸17を中心に周方向に複数個(
図2においては8個)連結して構成される。但し、鉄心16は、必ずしも個々に分解可能なT字形状部18を複数個連結する必要は無く、複数のT字形状部18を円形に連結した形状として一体に構成してもよい。これはインシュレータ1についても同様である。
【0021】
T字形状部18は、継鉄部12と、歯基部10と、鍔部11とを備える。
【0022】
継鉄部12は、鉄心16の外周に設けられ、鉄心16の外周面を構成する。
【0023】
歯基部10は、継鉄部12から内周側に向けて延設され、回転軸17に垂直な断面における断面視にして矩形の部位として設けられる。
【0024】
鍔部11は、歯基部10の内周側先端部から周方向両側に延設された部位として設けられる。鍔部11は、歯基部10の内周先端部から遠ざかるに従い、漸次径方向の厚みが薄く構成されている。鍔部11は、隣接する鍔部11とは接触していないが、鉄心16の内周面を構成する。
【0025】
鉄心16は、言い換えると、外周を構成する円筒形の継鉄部12と、内周を構成する円筒形の鍔部11とを歯基部10が連結して構成される。なお、1つの歯基部10の周方向の幅は、1つの継鉄部12における周方向の長さよりも短く、かつ1つの鍔部11における周方向の長さよりも短い。
【0026】
続いて、インシュレータ1を構成するインシュレータ部材A及びインシュレータ部材Bについて
図3、
図4、
図5を用いて詳しく説明する。なお
図3はインシュレータ部材と鉄心16の斜視図である。
図4は、本実施の形態に係るインシュレータ部材A1aの背面図とA−Aにおける断面図である。また、
図5は、本実施の形態に係るインシュレータ部材B1bの背面図とB−Bにおける断面図である。
【0027】
インシュレータ1は、鉄心16を構成するT字形状部18のT字形状を有する前面19側から鉄心16に向かって嵌入するインシュレータ部材A1aと、前面19の背面である背面20側から嵌入するインシュレータ部材B1bとから構成される。
【0028】
インシュレータ部材A1aは、外周側で継鉄部12の内周面に当接する外周壁21aと、内周側で鍔部11の外周面に当接する内周壁22aと、外周壁21aと内周壁22aとを連結して歯基部10を覆う連結部23aと、オーバーラップ部9aとを備える。
【0029】
外周壁21aは、矩形の板状で一辺24aから当該一辺に対向する他辺25a方向に向けて切り欠き26aが設けられており、全体としてU字形状を有する。外周壁21aは、一辺24aと他辺25aとに隣接する2つの側辺27aには、当該側辺27a全体(
図3における上端から下端まで)にわたって外側リブ3aが設けられている。
【0030】
内周壁22aは、矩形の板状で一辺28aから当該一辺に対向する他辺29a方向に向けて切り欠き30aが設けられており、全体としてU字形状を有する。内周壁22aは、一辺28aと他辺29aとに隣接する2つの側辺31aには、当該側辺31a全体にわたって内側リブ2aが設けられている。
【0031】
連結部23aは、外周壁21aにおける切り欠き26aの縁部と内周壁22aにおける切り欠き30aの縁部とを、切り欠き方向を揃えてかつ一定の距離を空けて接続している。ここで一定の距離とは、継鉄部12の内周面と鍔部11の外周面との距離であり、歯基部10の径方向の長さと一致する。つまり連結部23aは、径方向に一定の距離を備えたトンネル形状を成す。連結部23aのトンネル形状における内周を歯基部10と接触させることにより、鉄心16に嵌入させることができる。
【0032】
オーバーラップ部9aは、外周壁21aにおける他辺25aの両端部から、連結部23aのトンネル形状における脚部(底部)を介して内周壁22aにおける他辺29aの両端部に至る2本の薄肉部であるが詳細は後述する。
【0033】
インシュレータ部材B1bは、基本的にインシュレータ部材A1aと同一形状であるが、側辺が側辺27a、側辺31aよりも短い。
【0034】
インシュレータ部材B1bは、外周側で継鉄部12の内周面に当接する外周壁21bと、内周側で鍔部11の外周面に当接する内周壁22bと、外周壁21aと内周壁22bとを連結して歯基部10を覆う連結部23bと、オーバーラップ部9bとを備える。
【0035】
外周壁21bは、矩形の板状で一辺24bから当該一辺に対向する他辺25b方向に向けて切り欠き26bが設けられており、全体としてU字形状を有する。なお、
図3上ではU字形状を上下反転して示している。外周壁21bは、一辺24bと他辺25bとに隣接する2つの側辺27bには、当該側辺27b全体(
図3における上端から下端まで)にわたって外側リブ3bが設けられている。
【0036】
内周壁22bは、矩形の板状で一辺28bから当該一辺に対向する他辺29b方向に向けて切り欠き30bが設けられており、全体としてU字形状を有する。内周壁22bは、一辺28bと他辺29bとに隣接する2つの側辺31bには、当該側辺31b全体にわたって内側リブ2bが設けられている。
【0037】
連結部23bは、外周壁21bにおける切り欠き26bの縁部と内周壁22bにおける切り欠き30bの縁部とを、切り欠き方向を揃えてかつ一定の距離を空けて接続している。つまり連結部23bは、径方向に一定の距離を備えたトンネル形状を成す。連結部23bのトンネル形状における内周を歯基部10と接触させることにより、鉄心16に嵌入させることができる。
【0038】
オーバーラップ部9bは、外周壁21bにおける他辺25bの両端部から、連結部23bのトンネル形状における脚部を介して内周壁22bにおける他辺29bの両端部に至る2本の薄肉部であるが詳細は後述する。
【0039】
インシュレータ部材A1a及びインシュレータ部材B1bは、
図4、
図5に示すように、それぞれ樹脂肉厚部6を備えている。
【0040】
樹脂肉厚部6は、0.6mm程度の肉厚を有し、鉄心16と巻線13の絶縁距離を確保するため、継鉄部12の内径側面から、歯基部10の側面を介して鍔部11の外径側面まで連続して、鉄心16に面する(接触する)部分に設けられている。言い換えると、鉄心16と、外周壁21a、内周壁22a、連結部23a、との接触面は、後述の薄肉部を除いて、樹脂肉厚部6で構成される。また、鉄心16と、外周壁21b、内周壁22b、連結部23bとの接触面は、同じく後述の薄肉部を除いて、樹脂肉厚部6で構成される。
【0041】
オーバーラップ部9は、インシュレータ部材A1aとインシュレータ部材B1bが互いに接する部分において、それぞれ薄肉部7aと薄肉部7bとにより係合する。
【0042】
すなわち、オーバーラップ部9aを構成する薄肉部7aは、例えば
図4(b)に示すように、切り欠き26aの入り口近傍に設けられた、インシュレータ部材A1aとインシュレータ部材B1bが互いに接する接面32から他辺25aに向けて延設されている。薄肉部7aは、オーバーラップ部9a全周にわたって軸方向に樹脂肉厚部6の半分程度の厚み0.3mmを有している。
【0043】
また、オーバーラップ部9bを構成する薄肉部7bは、例えば
図5(b)に示すように、切り欠き26bの入り口近傍に設けられた接面32から他辺25bに向けて延設されている。薄肉部7bは、オーバーラップ部9b全周にわたって軸方向に樹脂肉厚部6の半分程度の厚み0.3mmを有している。
【0044】
インシュレータ部材A1aとインシュレータ部材B1bを鉄心16に嵌め込む際には、オーバーラップ部9aとオーバーラップ部9bとを対向させて、切り欠き26aと切り欠き26bとを歯基部10に接触させながら挿入する。その後、互いに対向するインシュレータ部材A1aの薄肉部7aとインシュレータ部材B1bの薄肉部7bとを、オーバーラップ部9の全周にわたって重ねることで、インシュレータ部材A1aとインシュレータ部材B1bが係合する。なお、オーバーラップ部9は、薄肉部7aが巻線13側に、薄肉部7bが鉄心16側にそれぞれ寄せられており、薄肉部7aと薄肉部7bとが重なることで、段差無く、かつ樹脂肉厚部6と略同一の厚みとなる。このオーバーラップ構造により、インシュレータ部材A1aとインシュレータ部材B1bとは重なりをもってT字形状部18を空隙なく覆うことができる。
【0045】
また、インシュレータ部材A1aとインシュレータ部材B1bは、鍔部11の周方向両端から外周側に膨出する内側リブ2a、内側リブ2bと、継鉄部の周方向両端から内周側に膨出する外側リブ3a、外側リブ3bとをそれぞれ備えている。
【0046】
内側リブ2aと内側リブ2bとは、共に側辺31a、側辺31b全体にわたって設けられているため、
図3(b)に示すインシュレータ1形成時には、T字形状部18の前面19から背面20にわたって連続して形成される。
【0047】
外側リブ3aと外側リブ3bは、共に側辺27a、側辺27b全体にわたって設けられているため、
図3(b)に示すインシュレータ1形成時には、T字形状部18の前面19から背面20にわたって連続して形成される。
【0048】
内側リブ2や外側リブ3は、接触面、すなわち樹脂肉厚部6よりも厚く構成されている。例えば、内側リブ2及び外側リブ3においては、巻回される巻線13を支える強度の観点から樹脂肉厚部6のよりも厚く、内側リブ2は1mm程度、外側リブ3は2.5mm程度の厚みを有する。
【0049】
内側リブ2a、外側リブ3aは、
図4(a)に示すように、内側リブ2aの先端から外側リブ3aの先端にわたって薄肉部が設けられている。そして内側リブ2a、外側リブ3aに対応する薄肉部は、他の薄肉部よりも厚みが厚いため先端薄肉部33として区別する。先端薄肉部33もオーバーラップ部9同様、対応する先端薄肉部同士が係合し、段差無く、内側リブ2や外側リブ3を構成する。
【0050】
内側リブ2や外側リブ3は、先端薄肉部33の係合により係合後においても空隙を生じることなく絶縁距離を確保できる。そして、一般的に薄肉部の末端部で多発する成形課題の引け反りの抑制が可能となる。これにより引け反り要因によるインシュレータ部材A1a、インシュレータ部材B1bの係合時の段差防止に繋がるため、巻線13巻回時の断線を防止することができる。
【0051】
内側リブ2は、
図4(a)、
図5(a)の矢印36に示すように、鍔部11の周方向端部から対向する継鉄部12の周方向端部に向けて膨出している。なお、継鉄部12が連続した一体形状を成す場合においては、継鉄部12上であって、隣接する歯基部10から等距離の位置を周方向端部と規定する。
【0052】
外側リブ3は、
図4(a)、
図5(a)の矢印37に示すように、継鉄部12の周方向端部から対向する鍔部11の周方向端部よりもさらに外側に向けて膨出している。なお外側とは、例えば隣接するT字形状部18における歯基部10の内周側先端35が含まれる。なお都合上、
図4(a)、
図5(a)における内周側先端35は、T字形状部18自身のものを示している。
【0053】
このように、内側リブ2と外側リブ3とを全てのインシュレータ1について設けることにより、
図6のステータ14の一部径方向断面図に示すように、巻線13を巻回後においても追加部材なく非充電部である継鉄部12側の鉄心16および、鍔部11側の鉄心16と充電部である巻線13に対し必要な絶縁距離を確保することができる。