【課題】輸作障害、各種疫病や害虫問題、光照射栽培の技術先行によるによる土壌や水質管理の欠落、研究機関の圃場への技術浸透の遅延、人材不足による監視の欠落、産品の食に対する安全不安や偽装等の改善対策を、省力化の条件の基に、より早く実行できるようにする。
【解決手段】各種有蓋圃場や一般圃場等の管理地を横幅、奥行き、高さのグリッド状の想定線XYZで細分化して所番地を設定し位置決めする。一般圃場においては、DGPSを使用して精度良く位置決めする。通信機器には検知機器を直結し且つ当該検知機器に二種類のタグTを貼付する。前記所番地を登録し一覧化して表示した管理モニタM上において遠隔操作し集中観察によって管理する。また、疫病技術情報や海外情報も集約し照合対策が迅速に行えるようにする。
各種有蓋圃場や一般圃場を横幅、奥行き、高さのグリッド状の想定線で細分化し、当該想定線のそれぞれの交点に連番を付して位置決め設定した作物管理上の所番地を登録し一覧化して管理モニタ上に表示可能とした管理端末と、前記所番地毎に割り振り設置されて前記管理端末と通信ネットワーク接続してなる栽培管理用通信機器とを備え、前記各所番地に設置された栽培管理用通信機器との送受信により、前記管理端末において圃場の産品履歴管理と前記栽培管理用通信機器の遠隔制御管理を可能としたことを特徴とする農作物栽培管理システム。
前記管理端末は、作物管理上で不要な所番地は前記管理モニタ上に空き番地として記録し、該空き番地には前記栽培管理用通信機器は割り振らず、新たな作物種が栽培される時点で前記空き番地を新規登録し、前記栽培管理用通信機器を割り振るようにしたことを特徴とする請求項1記載の農作物栽培管理システム。
前記所番地に割り振られた栽培管理用通信機器には、栽培管理に必要な観察用カメラ、赤外線カメラ、光量子センサ、紫外線放射管、放射線検知器、各種センサのうちの何れか一種あるいは複数種組み合わせたものを直結し、前記圃場の各所番地にて採取した画像やデータを、前記管理モニタ上で常時目視できるようにするとともに、遠隔スイッチング制御器によって前記栽培管理用通信機器を自在にオンオフ制御できるようにしたことを特徴とする請求項1または2記載の農作物栽培管理システム。
前記栽培管理用通信機器は、防水対策及び電磁波シールド対策がなされた保護筐体に内包してなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の農作物栽培管理システム。
前記保護筐体には所番地を示す自動認識タグを貼付するとともに、前記管理モニタに一時登録し、作物種が決定した段階で作物種、生産者暗号等を示す自動認識タグを貼付し、これら二種のタグと前記管理端末に蓄積保存される観察画面によって収穫までの履歴が永続的に検証できるようにしたことを特徴とする請求項4記載の農作物栽培管理システム。
前記保護筐体は、DGPS子局、土壌の降霜暑熱検知器、送信機能付き広域監視カメラを一体化して構成し、降霜情報については管理者携帯に緊急発信する無線機能を有するものとしたことを特徴とする請求項4又は5記載の農作物栽培管理システム。
前記放射線検知器は、圃場での用水の原水と還流水の両方の放射線を検知するよう、用水タンクに浮船形状筐体による検知機器を並設し電磁式給水逆止弁を用いて水流がある場合は遠隔操作によって常時、検知を可能にする平面放射線検知器にて形成したことを特徴とする請求項3記載の農作物栽培管理システム。
前記浮船形状筐体の底面に、差し込み式の縦型の水質検知器用ホルダを付設し、当該ホルダに前記平面放射線検知器を内包するものとしたことを特徴とする請求項7記載の農作物栽培管理システム。
前記放射線検知器の検知データ表示面には赤外線カメラを近接設置し、表示データを表示画面のまま、PLC子機から同親機を通じて前記管理端末に送信するとともに、当該管理端末からの遠隔制御によって前記赤外線カメラを自在にオンオフ制御できるようにしたことを特徴とする請求項3、7、8のいずれか記載の農作物栽培管理システム。
前記放射線検知器を検知用手動車に載架し、PLCアダプタ子機に付設した無線ルーター経由でPLCアダプタ親機に連結するとともに、前記PLCアダプタ子機にはDGPS子局を付設して前記検知用手動車の移動に伴う検知位置をより正確に把握できるようにしたことを特徴とする請求項3、7、8、9のいずれか記載の農作物栽培管理システム。
【背景技術】
【0002】
現状の農業技術は非特許文献1の日本経済新間「食と農他」の調査レポートにも記載されているように作業現場での技術改善は極めて不十分であり営農家の人材不足と重なり憂慮すべき状態にある。
【0003】
また、作物管理技術は、特許文献3や特許文献4に代表されるように各種有蓋ハウス(以下の説明においてはハウスと略称する)内で光照射により作物栽培の生産性を向上することを目的とした技術であるが、これらの技術においても、生産性の基本となる陰影部監視や食の安全を保障するための、産品の生産履歴を明確化する技術ではない。
【0004】
更に、非特許文献2に示すように、農産品の収穫時を起点にして自動認識タグ(AIタグ)を貼付する技術(農研機構)もあるが、これは産品収穫時以後の物流合理化の技術であって、現場の栽培管理に直結した技術ではない。最近の農業に関する各種展示会等の発表調査でもこの点の改善案は見当たらず、管理技術の盲点となっている。
【0005】
圃場や作物を無人で監視しつつ無線通信で管理する技術としては、非特許文献3に示すように、中央農業総合研究センターの「圃場モニタリングのための農業センサーネットワークの現状と課題」と言う研究発表がある。これは遠隔制御できる技術であるが、疫病等詳細な局所観察による作物管理ではない。また、ハウス内では、ハウスシートにシート強化用の金属の網目が多用されており、当該網目自体による電磁波乱反射や遮蔽効果等で電磁波障害が多発し安定した管理が期待できないものと判断される。しかも、詳細区割りによる継続的な管理や産品の安全確保の作物管理ではない。
【0006】
ハウス内では、ハウスシートにシート強化用の金属の網目が多用されており、当該網目自体による電磁波障害が発生する。このことは、EMC(エレクトロ マグネティック コンパティビリティー)技術分野では周知の問題点である。したがって、本発明の目的とする、詳細な観察技術として無線の内外通信は不適である。また、各種携帯端末やRFID(ラジオフレッケンシーID)、M2M(マシンツウマシン)等、各種の無線ラン技術が発展しつつあるが、ハウスの内外を正確につなぐ技術としては、EMC上、不適である。さらに、本発明では、費用を抑えるために、既設の電力線を活用する。電力線の他に電話線や光ファイバーに、通信子機を連動させることも出来るが、発明の意義は同様である。
【0007】
上記電磁波障害に対応する同類の特許とすれば既に登録されている特許文献1の「通信機能を有する照明器具(発明者は本出願人と同一)」がある。すなわち、この発明は、照明光源と相似する形状の装着部が、ホルダ部もしくはソケット部に支架される既存の照明光源の電極間に装着されることで、当該照明光源に対し、電力線通信用の中継器であるPLCアダプタ(PLC「パワーラインコンピューティング」:非特許文献5を参照)、さらには無線ルータを一体化させる技術である。
【0008】
因みに、PLCとは、交流電力を供給する電力線に交流周波数(50/60Hz)よりもはるかに高い周波数の信号を乗せることにより通信を可能とする電力線通信の略称である。また、照明光源へのAC電力は、先ず第1にPLCアダプタに入力されるように回路設計され、当該PLCアダプタはAC電力から電力と信号とを分別して取り分け、電力は照明光源に流れ、信号はこのPLCアダプタと一体化した無線ルータへ流れる。このとき、無線ルータは信号に必要な周波数変調を行い、内蔵または外接されたアンテナによって所望の無線端末機器に発信する。このように各種電子機器間の接続を単純化可能にすることで配線の複雑化と混乱性を無くし且つ電波の干渉等の各種の障害を低減できるものとしている。
【0009】
上記した特許文献1に開示されている照明器具で使用するPLCアダプタに観察検知機能を付与すれば上記非特許文献3に示すような圃場や作物を無人で監視しつつ無線通信で管理する技術と同様の作用効果が期待できるが、栽培部位を詳細にセグメントする技術ではないため、一般圃場での疫病等詳細な局所観察(その場観察)による作物管理として充分な成果が得られず、しかも産品履歴も記録することはできない。
【0010】
また、上記した特許文献2に開示されているように、生産者側のコンピュータと、消費者側のコンピュータと、前記生産者側のコンピュータと前記消費者側のコンピュータとに通信回線で接続されたコンピュータシステムとからなり、農産物に流通システムでの識別子(ID番号)を付与することにより、該農産物の生産者以外の者が前記識別子に基づいて当該農産物に係る個体情報を入手自在とする農産物流通における農産物の個体情報入手システムが存在する。この技術においても、上記と同ように栽培部位を詳細にセグメントする技術ではないため、上記したような一般圃場での疫病等詳細な局所観察(その場観察)による作物管理として充分な成果が得られない。
【0011】
更には、直近の課題として、従来の例えば非特許文献6によるベラルーシ放射線測定器を採用するなどしての放射線検知のテーマがある。云うまでもなく放射線物質の飛来には国境はなく、例年の黄砂に見る通りである。非特許文献4にも示す通り、最近では各地方自治体は空気、雨水等について放射線量を計測しているが、従来では、収穫前の産品、耕耘時の土壌、栽培用水等の位置を精度高くして放射線量を検知する技術は含まれていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記したように、従来、各種ハウス栽培や、同一営農家所有の隣接する一般圃場において、農産品の栽培管理は極めて粗く、詳細部分については人手不足に悩む営農家の、日々の観察と過去の経験対応に依存してきた。このため、管理ミスによる生産性の低下、疫病対策等の技術の遅れ、産品に関する食の安全性の不足等が放置され今日に至っている。因みに、政府の減反政策等に伴い農業現場の生産技術改善や産品の安全性確立は大幅に遅滞している。そしてTPPを背景に農産品市場の国際化や国内外品の混在偽装等も予測される。しかも営農家の立場に立てば人材不足、後継者不足で作物の詳細で確実な管理は極めて困難な状況にある。
【0015】
また、営農現場ではハウスと一般圃場とを一つの営農家が運営することが多い。従って、両圃場を一体で管理することにより現場立脚の栽培管理の革新と生産性向上のテーマを同時に解決することが重要な課題であり、この点についても大幅に改善する必要がある。
【0016】
更に、作物の病疫には各県試験場で発表している例えば「レタスの萎凋病」のように、病原実態不明だが、土壌や作業具からも伝染すると云うものもある。発見された場合はその区画は長期にわたって栽培禁止となり、一定期間監視されなければならない。
【0017】
この他、従来は放置されていた水質や放射線検知等も農作物の流通の国際的な進展に鑑み解決されなければならない課題である。
【0018】
本発明は、以上のような種々の課題・問題点を解決すべくなされたもので、農作物栽培圃場の詳細な栽培管理のために、当該圃場を詳細にセグメント化して観察位置を特定する(所番地設定)圃場細分化と、後述する各種の尖端通信技術との複合により、前記観察位置が変動した場合における正確な連動対応を可能にし、更に生産性向上と食の安全性と物流を視野に入れつつ、輸作障害、各種疫病や害虫問題等、研究機関データと照合する等の改善対策を、省力化の条件の基に、より早くより確実に実行できるようにした農作物栽培管理システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記した目的を達成するために本発明の請求項1の記載においては、各種有蓋圃場や一般圃場を横幅、奥行き、高さのグリッド状の想定線XYZで細分化し、当該想定線XYZのそれぞれの交点に連番を付して位置決め設定した作物管理上の所番地を登録し一覧化して管理モニタ上に表示可能とした管理端末と、前記所番地毎に割り振り設置されて前記管理端末と通信ネットワーク接続してなる栽培管理用通信機器とを備え、前記各所番地に設置された栽培管理用通信機器との送受信により、前記管理端末において圃場の産品履歴管理と、前記栽培管理用通信機器の遠隔制御管理を可能としたことを特徴とする。
【0020】
請求項2の記載においては、前記管理端末は、作物管理上で不要な所番地は前記管理モニタ上に空き番地として記録し、該空き番地には前記栽培管理用通信機器は割り振らず、新たな作物種が栽培される時点で前記空き番地を新規登録し、前記栽培管理用通信機器を割り振るようにしたことを特徴とする。
【0021】
請求項3の記載においては、前記所番地に割り振られた栽培管理用通信機器には、栽培管理に必要な観察用カメラ、赤外線カメラ、光量子センサ、紫外線放射管、放射線検知器のうちの何れか一種あるいは複数種組み合わせたものを直結し、前記圃場の各所番地にて採取した画像やデータを、前記管理モニタ上で常時目視できるようにするとともに、遠隔スイッチング制御器によって前記栽培管理用通信機器を自在にオンオフ制御できるようにしたことを特徴とする。
【0022】
請求項4の記載においては、前記栽培管理用通信機器は、防水対策及び電磁波シールド対策がなされた保護筐体に内包してなることを特徴とする。
【0023】
請求項5の記載においては、前記保護筐体には所番地を示す自動認識タグを貼付するとともに、前記管理モニタに一時登録し、作物種が決定した段階で作物種、生産者暗号等を示す自動認識タグを貼付し、これら二種のタグと、前記管理端末に蓄積保存される観察画面によって収穫までの履歴が永続的に検証できるようにしたことを特徴とする。
【0024】
請求項6の記載においては、前記保護筐体は、DGPS子局、土壌の降霜暑熱検知器、送信機能付き広域監視カメラを一体化して構成し、降霜情報については管理者携帯に緊急発信する無線機能を有するものとしたことを特徴とする。
【0025】
請求項7の記載においては、前記放射線検知器は、圃場での用水の原水と還流水の両方の放射線を検知するよう、用水タンクに浮船形状筐体による検知容器を並設し電磁式給水逆止弁を用いて水流がある場合は遠隔操作によって常時、検知を可能にする平面放射線検知器にて形成したことを特徴とする。
【0026】
請求項8の記載においては、前記浮船形状筐体の底面に、差し込み式の縦型の水質検知器用ホルダを付設し、当該ホルダに前記平面放射線検知器を内包するものとしたことを特徴とする。
【0027】
請求項9の記載においては、前記放射線検知器の検知データ表示面には赤外線カメラを近接設置し、表示データを表示画面のまま、PLC子機から同親機を通じて前記管理端末に送信するとともに、当該管理端末からの遠隔制御によって前記赤外線カメラを自在にオンオフ制御できるようにしたことを特徴とする。
【0028】
請求項10の記載においては、前記放射線検知器を検知用手動車に載架し、PLCアダプタ子機に付設した無線ルーター経由でPLCアダプタ親機に連結するとともに、前記PLCアダプタ子機にはDGPS子局を付設して前記検知用手動車の移動に伴う検知位置をより正確に把握できるようにしたことを特徴とする。
【0029】
以上のように、本発明においては、先ずは詳細な管理位置を明確にしなければならない。そのためにはハウス内においては平面のみならず上下位置も勘案して区分けし、いわゆる所番地を図面上で決定する。この時には作物種を勘案しなくてもよく、しかも所番地を図面上にて自在に変更することもできる。
【0030】
一般圃場においては標準地図から、必要位置に線引きして圃場地図にマーキングする。管理位置の精度を高めるために、管理実施に当たっては、DGPSを使用する。当然のことではあるが標準地図から線引きした位置は不変であるのでマーキングは事後的にも有効利用される。
【0031】
位置決めした所番地にPLC等の通信用アダプタ子機を割り振る。この時には管理に必要と判断される位置のみにアダプタを割り振る。不要な所番地には割り振る必要はない。不要な所番地は飛ばして割り振る。その部分は空き番になるが作物種が変わり必要とあればアダプタを入れればよい。
【0032】
このようにして割り当てた所番地を、管理端末に接続された専用プリンタで出力する。即ち本発明では、いわゆる所番地を示す自動認識のRFタグを使用する。本発明では作物種、生産者暗号等を示す自動認識のRFタグも使用する。二次元タグも使用できるが、発明の趣旨は同一である。
【0033】
圃場で利用する栽培管理用通信機器は一般圃場では勿論、ハウスであっても散水灌漑があるので全天候型にしなければならない。同時に電磁波障害に対応しなければならない。そのために栽培管理用通信機器は上記した保護筐体に内包するようにする。
【0034】
この保護筐体に上記専用プリンタでプリントアウトした所番地を示す自動認識タグを貼付して管理棟の管理端末(管理用コンピュータ)に登録する。栽培する作物種が決定した段階で、管理用暗号などを決め、作物種、生産者暗号等を示す自動認識タグを出力し保護筐体に添付する。そして出力した作物種、生産者暗号等を示す自動認識タグは管理モニタによって一覧化する。
【0035】
この管理モニタは管理端末と連動して観察や検知情報を常時、画像やデータで表現できるので、所番地の観察や検知情報を研究機関等の情報と照合チェックできる。従って即座に改善対策が可能になる。GPS使用によって海外圃場栽培の情報とも同ように照合できる。また、産品のタグも出力できるので物流網へと連動できる。また、伝染性疫病等の発生した区画については対策完了するまで耕作できないが、本発明により無人管理が可能な安心システムでもある。
【発明の効果】
【0036】
本発明においては、農作物栽培圃場の詳細な栽培管理のために当該圃場の観察位置を特定する所番地を設定する圃場細分化と各種の尖端通信技術との複合により、前記観察位置が変動した場合における正確な連動対応を可能にし、更に生産性向上と食の安全性と物流を視野に入れつつ、輸作障害、各種疫病や害虫問題等、研究機関データと照合しての改善対策を、省力化の条件の基に、より早く実行することができる。
【0037】
すなわち、
(1)請求項1乃至請求項3の構成によれば、各種有蓋ハウス内の作物栽培においていわゆる所番地別に、詳細に無人での常時監視ができる。従って産品の管理ロスが極小になる。しかも、請求項3の構成により、産品の疫病観察と研究機関の尖端情報との、リアルタイムでの照合ができるので、素早い改善対策が可能となる。
【0038】
(2)請求項4の構成により、通信障害が発生し難くしたので、DGPS子局を筐体と同体化することでEMC技術の活用域を拡大することができる。
【0039】
(3)請求項5の構成を中心にした効果として、産品の生育履歴を明確にすることができるので、産品の食の安全性を単なる物流管理上のテーマに止めず、精密に確保することができる。
【0040】
(4)請求項6の構成によれば、一般圃場におけるスプリンクラーの正確な稼動が可能であり、降霜被害や暑熱被害を最小限に止めることができる。しかも、スプリンクラー等の設備のない圃場でも、簡単な管理ポールと観察端末の併用により圃場見回りの作業なしに、精密な作物の観察と対策ができる。しかも、一般圃場での降霜暑熱検知器と広域監視カメラを一体化しているので、降霜時の表上の微細な温度変化と全く同時に圃場全体の変化の実体を画像観察し管理技術の向上に資することができる。
【0041】
(5)請求項7及び請求項8の構成によれば、用水のチェックにより、国内外の地域での放射線の一次検知が可能となり、必要に応じて爾後の詳細検知管理に資する。
【0042】
(6)請求項9及び請求項10の構成により、一般圃場での多点箇所での放射線チェックや、収穫前の産品の放射線の一次検知が可能となり、用水に問題を抱える地域での水の安全性判断に資することができる。しかも、一般圃場での土壌表面や収穫前の作物について土壌の組成と放射線量を正確な位置決め技術と併用して同時検知でき、農業分野に新たな管理技術の道が拓ける。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明の一実施の形態について図及び写真を参照して詳細に説明する。
本実施形態では、農作物栽培圃場の詳細な栽培管理のために、当該圃場を詳細にセグメント化して観察位置を特定する(所番地設定)圃場細分化を行う。例えば、
図1に示すように、各種有蓋圃場や一般圃場を横幅、奥行き、高さのグリッド状の想定線L(XYZ)で細分化し、当該想定線L(XYZ)のそれぞれの交点LCに連番を付して作物管理上の所番地を設定し、
図3に示すように、該所番地を管理棟の管理端末(ホストコンピューター)Pに登録して管理モニタM(液晶ディスプレイ(LCD)、あるいはプロジェクタによる白幕投影等の投影型管理版)に一覧化させるネットワーク構成となっている。また、前記所番地毎に栽培管理用通信機器Q(以下、通信機器Qと略称する)が割り振り設置されて前記管理端末(ホストコンピューター)Pと送受信が可能となっている。
【0045】
図面上で一般圃場の各種ハウスHを管理に必要なレベルまで細分化し所番地を設定し位置決めする。具体的には、
図1に示すように、一般圃場におけるハウスHを1号棟、2号棟、3号棟、・・・に区分けし、例えば1号棟において、1番区、2番区、3番区、・・・、等の如く所番地を付ける。
図1(a)は図面代用写真であり、
図1(b)はハウスH全体のナンバリングと各棟の細分化を示すもので、ハウスH内部を上下左右に区分けし、ハウス横幅X、ハウス奥行きY、ハウス高さZの想定線L(XYZ)のそれぞれの交点LCに、想定上の所番地を付し、栽培管理上の所番地とする図である。
【0046】
そして、所番地を記したタグT(後述するタグA及びタグB)を通信機器Qの後述する保護筐体Sに添付し配置できるようにする(後述する
図4参照)。
図1(c)は通信機器Q(端末機器:子機)と通信親機Q1(メインAD)との配列を示す。平面上での交点LCと交点LCとの距離の設定は管理者の経験によって決めればよいが、作物種の大小を勘案して例えばレタスの場合5m程度にする。また、使用しない位置は、空き番地として管理する。あるいは、所番地があっても、不要な個所には、通信機器Qは配置せずに「空き番地」とし、事後、管理の必要に応じて通信機器Qを配置すれば良い。
【0047】
前記通信機器QにはPLCアダプタ等を使用する。同類通信機器Qには光ファイバーや電話線を使用することもできるが、発明の趣旨目的に差異はない。上記した所番地に対応して通信障害想定域では有線通信機器を、一般圃場ではDGPS子局(
図2参照)を割り振る。また、前記通信機器Qには監視カメラ、放射温度センサ等の後述する検知機器を直結するとともに、例えば
図1、
図4、
図5に示すように、全面金属メッキを施したプラスチック製等の保護筐体Sに内包する。この他の保護筐体Sの材質としては、高透磁率且つ高Q値タイプのコバルト系アモルファス合金による電磁波シールド材が使用される。因みに、この材料は、RF帯域動作機器に対する磁気シールド・金属からのシールド材等として利用されている。
【0048】
前記保護筐体Sには、例えば周波数帯域が900MHz以上のRFID(ラジオフレッケンシーアイデンティフィケーション)やUHF(ウルトラハイフレッケンシー)タグ、または二次元タグ等を貼付する。RFIDタグには、電波(通信距離が短い)を受けて目覚めて反応するパッシプタグと、電波(通信距離が長い)を受けて内臓のミニ電池で自ら発信するアクティブタグとがあり、タグリーダー及びタグライターが読み書きをする。また、前記RFIDタグには、金属に貼付した場合は反応できない一般的タグと、金属に貼付しても問題無しの金属対応タグとがある。本実施形態では、前記保護筐体Sのプラスチックに両面金属メッキをするので、金属対応のパッシブタブを使用する。
【0049】
このように構成した通信ネットワークシステムを、
図3に示すように、モニタ化し、遠隔制御機能で制御する。一方、これらを研究機関情報等と照合し対策を講じる。食の安全管理や、海外との情報照合も行う。なお、このような通信ネットワークシステムとして、上記したように、例えば周波数帯幅700MHzというグローバル化対応の高速通信網による無線LANを使った、スマートフォンやタブレット等の携帯移動端末によるJPEG・MPEG等の画像データやテキストデータを応用することもできる。
【0050】
具体的には、観察管理すべき各圃場を細分化して位置決めし、位置に対応した観察用機器をPLCアダプタ等の通信機器Qと一体化して連動させ、これを管理棟に集約して観察し、作業人による見廻り管理の不備を改善する。管理棟では前記管理端末(ホストコンピューター)Pに直結した広い表示面積を有する管理モニタMの画面を目視しながら、現状では技術的に困難な課題、例えば輸作障害、各種疫病や害虫問題等、研究機関データと照合し改善対策をより早く実行できるようにする。そのためには、PLCアダプタ等に記録用のタグT(後述するタグA及びタグB)を添付することにより、当該産品の生産圃場名だけではなく、圃場内での生産位置、生育状況、収穫日付等、産品の安全性に関する情報を画面とともに保管し永続検討できるようにする。
【0051】
一般圃場においては、標準地図により観察位置決めの圃場細分化を行うが、位置精度を高めるために高精度補正式の全地球測位システム(以下にDGPS「ディファレンシャル−グローバル−ポジショニング−システム」と称す)の技術を活用し、上記したPLCアダプタ等の無線通信機器と複合する(
図2参照)。また、各種有蓋のハウスH内の圃場においては、営農家自身の所見により、精細に位置決めを行う。このようにして設定された位置毎に、当該ハウスH内では上記したようにPLCアダプタ等の通信機器Q(端末機器)を各配置し、各ハウスH毎に一箇所に設置された通信親機Q1(メインAD)を通して現場の管理棟へ集中させる(
図1(c)及び
図3参照)。
【0052】
このようにして構成された各通信機器Q(端末機器)の観察情報は、各通信機器Q(端末機器)毎の情報として管理し且つ保管され、産品の物流とも連動する。そして圃場全体の通信機器Q(端末機器)の配置を広い表示面積を有する管理モニタMによって表示し、リブータ(登録商標)等の遠隔スイッチング技術により自在に制御する。
【0053】
各通信機器Q(端末機器)はハウスHの内外を問わず電磁波障害対策と全天候対応性を要するので、既述した保護筐体Sに内包する。この保護筐体Sには所番地と生産記録を示す上記タグTとしてタグAとタグBの二種類を貼着する。当該農産品の日付、生産者、生育履歴、生育環境等が各通信機器Q(端末機器)の検知機器により管理棟に記録され、必要に応じて公開する。また、農産品の安全性の市場要求に対しても詳細に即刻対応する。情報は永久保存でき、また営農家が海外に市場展開する場合でも当該農産品の履歴を常時、明確化し参考にする。
【0054】
図2は一般圃場を標準地図とDGPSを使用して区分けし、所番地と測定点の設定を示す。DGPS基準器(親局)16を標準図面の一か所に設定し、DGPS子局15を観察用機器に付設する。
図2中では、DGPS基準器(親局)16を例えば長野県塩尻市岩垂原の北緯36度8分19.38秒、東経137度55分2.69秒の位置における交差幅約20mの歩道交差点17の一隅に設定した例を示している。一般圃場のZ軸(高さ)については、XY軸の交点(平面の交点)における高さで表現する。立木果樹における果実や立木の害虫等の観察を高精度に行うためである。平面のみの観察実施例としては、レタス畑を想定している。その管理の要点は、降霜の早期予知、暑熱予知とスプリンクラーの適時稼動、連作や輸作障害の検知等である。
【0055】
図3は、区分けした部分に所番地を付け一覧化してモニタ化した図面であり、ハウスHや一般圃場で設定した所番地を管理棟に設置された前記管理端末(ホストコンピューター)Pに入力し、図形化したものである。管理に際しては、所番地を入力すれば、通信機器QのPLCアダプタに連結している観察用機器、例えば
図3中の監視カメラE等の360度全方位撮影可能な魚眼レンズを使用したカメラの観察画面や
図3中の土壌の放射線等の土壌センサFS、水の放射線等の水質検査機F(後述の放射線検知器61参照)等の各種の検知機器のセンサデータが日時とともに管理棟に設置された管理モニタ(投影型管理版)Mの画面に表示される。すなわち、この管理棟には、図中に示すように、前記管理端末(ホストコンピューター)Pが設置され、外接圃場に設置されたハウスH内の管理位置を表すPLC親機Q1(Aハウス1、2、3)から、上記観察用機器や検知機器等のセンサデータが当該管理端末(ホストコンピューター)Pに送信され、管理モニタ(投影型管理版)Mに表示される。有線のない一般圃場からの情報はPLC無線ルーターQ2を駆使し、前記管理端末(ホストコンピューター)と付属されている管理端末(コンピューター)P1に送信され当該管理端末(ホストコンピューター)Pに集約される。
【0056】
例えば、一般圃場のデータは、隣接管理棟から送信される。具体的には、
図3に示すように、一般圃場の場合、例えば降霜検知輪ワイヤレスによるLEDフラットリング等を使用した降霜検知器W1と、潅水タンク温ワイヤレスによる非接触熱電対センサ等を使用した灌漑水温度検知器W2と、用水の源流の放射線量を検知する放射線検知器W3(後述の放射線検知器61参照))等のそれぞれの検知信号(検知情報)をDGPSによる位置情報とともにPCL無線ルーターQ2によって前記管理端末(コンピューター)P1に送信する。また、上記した観察用機器や検知機器等の各機器は、
図3に示すように、前記管理端末(ホストコンピューター)Pに付設した遠隔操作用の遠隔スイッチング制御器R、例えばリブータ(登録商標)等により自在に操作できる。
【0057】
図4は、モニタ化した図面と照合しつつ保護筐体SにタグTを貼付する工程及び作物種別の疫病情報を集約して今後に生かすための構成を示す説明図である。本実施形態では、所番地を示す自動認識のRFタグAと、作物種や生産者暗号等を示す自動認識のRFタグBとが併用される。先ず、一般圃場におけるハウスH内で上記所番地から、通信機器Qの位置する詳細位置を決定し、プリンタWL1でプリンタデータグTをプリントアウトする。このタグTがRFタグAであり、前記保護筐体S上に貼付し、前記管理端末(ホストコンピューター)Pに登録する。この管理端末(ホストコンピューター)Pは既に設定されている管理モニタM(
図3に示す投影型管理版)と照合確認し、登録タグTを発行する。作物種類が決定された段階でプリンタWL2でプリンタデータグTをプリントアウトする。このタグTがRFタグBであり、このRFタグBには、偽装表示等を防止するために、営農家自身が設定する暗号(暗証番号)等を含む。管理端末(ホストコンピューター)Pは各種研究機関(情報盤)の技術情報Iを常時収集し作物種別の病害虫・疫病・降霜・水質・放射線等の各種情報を集約する作業も行う。海外情報を含む作物種別疫病関係情報については、別途の管理端末P2を使用する。
【0058】
図5は、防水及びEMC対策を施した前記通信機器Qの保護筐体Sの一例を示すものである。
図5(a)に示すように、前記保護筐体Sの上にはタグTの収納袋1が設置され、タグTの交換が常時可能となっている。前記保護筐体Sの内部隅所には二次電池2が設置され、その隣にはアンテナ4を備えたPLCアダプタによる通信機器Qが収容されている。
図5(b)に示すように、前記保護筐体Sは、電磁波シールド機能を果たすための多層化構造部5となっている。前記保護筐体Sの側面にはDGPS子局6が付設され、そのアンテナ7によってDGPS親局と交信可能となっている。
図5(c)及び
図5(d)は前記保護筐体Sの壁面の拡大断面図であり、多層化の筐体壁断面となっていて、メッキ層9まで含めて6層で構成されている。前記保護筐体Sの内外には、電磁波吸収材10が二層をなして装着されており、柔軟性材で防水機能も有する。
【0059】
また、前記保護筐体S全体をカバーするようにプラスチック成型筐体11が付設されている。これにより、前記保護筐体S内部に侵入しようとする電磁波12はプラスチック成型筐体11(外部筐体)を通過するが、電磁波吸収材10で吸収され大幅に減衰する。残余の電磁波12はメッキ層9の金属メッキ面で反射し、再び電磁波吸収材10を通過するが、更に減衰して、電磁波障害を極小にする。前記保護筐体S内の電磁波も同ようにして大幅減衰する。
なお、
図5(c)中の符号13はグランドである。また、前記保護筐体Sの人出力部はEMC対応の線材、電磁波吸収ガスケット、コンセント等の部材を既知の技術を駆使し使用する。
【0060】
図6(a)は、通信機器Qと各種監視カメラや検知器を一体化して自在に操作可能にする具体的な構成を示している。前記保護筐体S内部には通信機器QとしてのPLCアダプタが内包され、その隣には二次電池24が設けられている。前記保護筐体Sの前面には観察用広角カメラ23の装着部23Aが備えられている。
図6(b)に示すように、前記保護筐体Sは背面部に設けられたボールジョイント25を介して圃場ポールの取付部26に装着され、上下左右に手動で操作できるものとしてある。ボールジョイント25は、
図6(c)に示すように、クランプナット27に、支持部29末端の支承球体28が揺動自在に枢着されてなり、支持部29に取付けられた前記保護筐体Sがこの支承球体28の中心部を揺動支点として上下左右方向に角度約25度だけ偏角揺動できるものとなっている。このように前記取付部26は、ボールジョイント25と合わせて、観察用広角カメラ23とともに保護筐体Sの位置を任意に設定できるものとしてある。
【0061】
図7は、花卉栽培のハウスHの内部実査時の図面である。この花卉栽培のハウスHを例題にして、各番地に光量子センサ等を配置する。すなわち、図中には所番地を設定するための想定線L(前述のハウス横幅X、ハウス奥行きY、ハウス高さZ)、ハウスに常設されるパワーライン(動力線)PL等が描かれており、既に上記した
図1で示したものである。この
図1に示す想定線Lの交点LCには、
図7中に示す光量子センサPhSや赤外線カメラIRC等が設定される信号機位置QPとなる。光量子センサPhSは、400〜700nmの光合成有効放射を正確に測定することができる光量子計である。この光量子計は植物の根部での赤外線や遠赤外線の波長を輻射能率(完全黒体では絶対温度Tの4乗に比例する)まで含めて検知する先端技術センサである。また、Qは上記PLCアダプタの子機であり、光量子センサPhSと一体化して陰影部の光量子の量をセンシングする。照度計では不完全であるので、波長λで計測可能な光量子計としている。さらに、上記赤外線カメラIRCは、植物の根部にとっては特に大切なものであり、波長λは1又は2ナノメートルよりも長いことから、植物に吸収されずに透視ができるものである。
因みに、赤外線カメラIRCは、主として植物の葉脈を透視観察することで植物ウイルスを簡易に検知するために使用する。
【0062】
図8は、上記
図6で示した通信機器Qと観察用広角カメラ23を一体化してなる装置を各種圃場で使用した実施例である。この場合、各種圃場の観察テーマを示す現場調査において、例えば有蓋トマトハウスHの陰影部分を放置すれば、大量の不良産品が発生する危険部分となり、ぶどう棚下部に発生するプドウ芯喰い虫と葉の萎縮病も危惧される。また、落葉期のリンゴ立木の手入れ前の時期の観察手入れの如何でリンゴの生産の良否が決まる。
図8(a)及び
図8(b)は、特にハウスH内に発生する陰影部分の観察用に創案した検知器31の設置構造を示すものであり、当該検知器31自体の構成は上記した
図6の通信機器Qと観察用広角カメラ23を一体化してなる装置の構成と略同一である。この
図8(a)においては、高さと回転角度を調節できるT字型ポール34の上端に、両側に電極端子を備えた略上向コ字状のソケット部37Aが形成され、該ソケット部37Aには、例えば白色光、葉脈観察用の赤外線光源、UV光源等のいずれかの照明光源37が交換可能に装着される。図中、35は灌漑噴霧等に対応した防水用傘である。
【0063】
また、
図8(a)中、観察データは無線ルーター等の通信機器Qから一般圃場の所定位置に設置されているDGPS子局6を介して、管理者が所持する携帯端末KPに送信される。
図8(b)中、32は、棒状の広角観察用カメラ32であり、この広角観察用カメラ32は、灌漑噴霧等に対応した防水用カバー筐体33によって被覆されている。この防水用カバー筐体33としては、例えばフレネルレンズ等が好適に使用される。
図8(b)中の36は、一般圃場使用時のDGPS子局であり、そのアンテナ36Aによって親局と交信可能となっている。本実施形態では、観察情報の公開についは一定の制約を要するが、営農家自身不在の時には管理棟外でも観察できるように配慮して観察可能にしている。この実施例においても、上記した構成と同様の作用効果をもたらす。なお、通信機器QとしてPLCアダプタ等の親機(マスター)を使用し、上記各情報を分岐して無線ルーター等から上記携帯端末KP等の通信機で観察できるようにしても良い。
【0064】
図9は、一般圃場での降霜検知の一例を示すものである。特に、レタスの萎凋病(香川県農試公開)という疫病による葉基部の黒変症状の状態では、極めて強い伝染性を持つといわれている。この降霜は地熱放射によって起きるとされるが、降霜検知は時間との勝負であり、対策はいろいろあるが、本実施形態のように、葉菜類の場合の主たる技術は、降霜時間を正確に予知し、その直前にスプリンクラー43で散水する。予知に失敗すれば、大被害となる。
図9(b)は回転式スプリンクラー43の設置例を示す図面代用写真である。本図は降霜対策ではなく暑熱時散水であるが態様は同一である。
図9(a)は降霜検知装置の具体的な構成例を示している。すなわち、
図9(a)において、スプリンクラー43の主柱43Aには、降霜時前後の表上の状況や作物の状況を観察把握し、事後の対策の参考にするための回転自在式の観察用カメラ44が設置されている。このカメラ44は、自体に付設されたDGPSの子局45により、観察位置を正確に把握することができる。また、主柱43には、非接触熱電対センサ46が設置され、土壌表面の温度を正確に測定し、通信機器QであるPLCアダプタの子機49によって、リアルタイムで管理棟に送信するものとしてある。図中47は降霜時の地上への地熱放射路を示す。さらに、図中48はLEDフラットリング照明であり、上記回転自在式の観察用カメラ44とともに降霜時の地表の局部状況を観察し今後に生かすものとしている。
【0065】
図10は、検知した病疫や放射線量と、他所データとの照合状況を示したものである。
図10の51は、既に示したように、モニタ化した図面である。52は該モニタから各所番地の観察画面を引き出すコンピュータ(上記した管理端末(ホストコンピューター)P)である。53は引き出された画面であり、54は農研機構等、各種の研究機関が保有蓄積している技術情報である。
図10では例示として、トマトの作物種別疫病データが示される。これらの情報を照合検討することによって、早急な改善対策が可能になる。なお、上記技術情報は、農研機構、各県農業試験場、各大学民間種苗企業研究室、当該地域行政放射線データ等の各記録データを記憶した情報源サーバを経由させている。
【0066】
図11は、ハウスHや圃場での用水や土壌の放射線等、各種成分を検知する放射線検知器61、例えばベラルーシ製造品である「PKC−107」のガイガーカウンター等の一例であり、
図11(a)乃至
図11(c)では、約三分の一の実寸法図で示してある。図中、放射線検知器61は筐体60内に収容され、当該放射線検知器61の表示面62にベクレル単位で測定データが表示される。前記筐体60上部には薄型赤外線カメラ63が設置され、これによってデータを表示面62からそのまま読み取り、信号線64によって通信機器QであるPLCアダプタの子機を経由して管理棟に送信される。このようにして送信されたデータは蓄積されるので、必要に応じて当該分野の専門家によって読解させる。前記筐体60の外側面には、縦型検知器66のホルダ部65が設けられ、縦型検知器66による検知データは、実寸15ミリ角程度の観察用ミニカメラ67によって捕捉し送信するものとしてある。また、二次電池は通信機器Qのものを共用する配線とする。なお、前記放射線検知器61も同ようにデータの表示面62を観察用ミニカメラ67で捕捉し送信するものとしても良い。
【0067】
図12は、放射線と水質の検知方法の一例を示すものである。
図12(a)は、作物種や圃場形態によって様々な用水の利用形態があるが、それらを一括して表現した用水の流れ(フロー)を示す図である。先ず、
図12(a)において、用水の源流71aをメイン用水タンク71に貯水し、灌漑タンク72、散水用タンク73、液肥タンク74それぞれに分流する。前記灌漑タンク72、散水用タンク73の用水は、一般圃場、ハウスH、水耕栽培等の用地に使用された後、循環回収水タンク75に還流される。本実施形態では、原水そのものもチェックするので、前記メイン用水タンク71の用水は、原水検知容器として機能する水質〜放射線検知容器76に分流して必要な検知を行う。また、前記循環回収水タンク75の回収水は、還流水検知容器である水質〜放射線検知容器77に分流して必要な検知を行う。このようにして検知したデータは、PLCアダプタの子機78から同親機79を経由して、前記原水検知機器が検知したデータを表示面のまま管理棟に送信する。
【0068】
ここで、図中80は送信のための信号線であり、管理棟の管理モニタMと、上記リブータ(登録商標)等の遠隔スイッチ制御器により自在に制御される。
図12(b)は、検知部分の構造を示したもので、水流91は貯水タンク92に給水される一方、自動電磁式給水逆止弁93によって、用水を検知用容器94に分流し、検知可能な状況を維持する。検知用容器94の内部構成の詳細は、図中二点鎖線の枠95に示した通りである。放射線や水の検知器形状は様々だが、前記筐体60は内包した検知器を水に浮かべるために、当該筐体60を浮船形状に形成し、検知部分を水にもっとも近接するようにした。なお、図中97は検知部分を保護する透明な保護板であり、98は筐体60の浮遊を安定化するためのセラミック製の重りである。
【0069】
図13は、一般圃場での放射線や土壌成分の検知用手動車100の一例を示す。
図13(a)は、検知用手動車100の側面図であり、検知部分の構成は
図11と同一である。すなわち、
図13(a)において、筐体60上に設置された通信機器QであるPLCアダプタは、アンテナ101で管理棟へ無線で情報を送信する。また、筐体60上には、DGPSの子局105が設置され、DGPSの親局(図示せず)と連動している。なお、図中の符号104の矢印は特に耕盤深度計を想定している。耕盤は連作(輸作ではない)障害の最大の要因であり、ロータリー耕だけに頼ると耕盤が浅くなり障害が発生する。その場合はプラウ耕による深耕で天地返しをしなければならない。耕盤深度計はこの状態を予知する。図中106は検知器内包筐体である。この
図13(b)は、検知用手動車100の正面図であり、葉菜類の畝を跨いで検知している状況を示す。この
図13(b)において、102は測定部位の上下調整部分であり、103は畝幅に対応した車巾の調整部分である。上記放射線検知器61が収容された筐体60は、左右の上下調整部分102の間に設置されている。また、
図13(c)は装置をトラクター100aに装着し、所望の位置でオペレターによって計測する状態を示したものである。また、
図13(c)において、計測装置全体は検知器内包筐体106に内包され、トラクター100aは常時、洗浄されるので、検知器内包筐体106自体は完全防水による構成とする。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、圃場細分化と通信技術の複合による栽培技術の革新に係るが、植物工場等の新分野での展開に利用できる。
【0071】
図3に示すように、農業圃場をXYZ(横幅、奥行き、高さ)に分割して所番地を付し、モニタ化してコンピュータに直結し且つスイッチの遠隔自動制御より細部の作物管理に資するようにしたモニタ化の新技術で詳細な作物管理技術に貢献できる。
【0072】
図4に示すように、通信機の保護筐体に、自動認識のRFタグを貼付して、作物の種苗の段階から、作物の育成過程や病歴等を明確に記録管理することができるようにしたことで、自動認識技術の応用展開に資することができる。
【0073】
図5に示すように、通信機保護筐体を電磁波シールドし、かつDGPS子局を筐体と同体化して、且つ、通信障害が発生しにくくしたことで、EMC技術の活用域を拡大することができる。
【0074】
図6に示すように、カメラと通信機器を一体化し、各種カメラを上下左右自在に装着制御できるようにするとともに、カメラとセンサを一体化したことで、陰影部観察や葉脈検知等各種の作物栽培分野でのカメラ市場を拡大化することができる。
【0075】
また、
図7に示すように、各種センサを農作物管理の現場に巾広く採用使用することで、従来農業の管理感覚から脱皮できるとともに、センサ使用の世界を大きく広げ、センサ市場の大幅な拡大に貢献でき、日本から世界への展開技術として貢献することができる。
【0076】
図9に示すように、一般圃場での降霜検知と観察カメラを一体化して、降霜時の表上の微細な温度変化と全く同時に固場全体の変化の実体を画像観察し管理技術の向上に資することができる。
【0077】
図11、
図12に示すように、圃場用水の原水と該原水の循環終了水の放射線や水質を検知することによって、用水に問題を抱える地域での水の安全性判断に資することができる。
【0078】
図12に示すように、一般圃場での土壌表面や収穫前の作物について土壌の組成と放射線量を正確な位置決め技術と併用して同時検知できるようにしたことで、農業分野に新たな管理技術の道が拓ける。