【課題を解決するための手段】
【0023】
第一の課題「電極構造が作る空気の流束抵抗」の解決手段を述べる。
図1に示した一段階方式の例は構造が単純であるが、集塵効率が低い傾向がある。
図4にこの例の課題を示した。ここでは帯電粒子のすべてが対抗電極側に到達せずに残存の外部放出分があることを示し、その原因の一つとして、真空中ではない空気という流体内の現象であることと、空気の流体としての拡散時間による結果的な粘性の存在をあげた。
【0024】
このとりこぼした残存の帯電粒子が発生する背景をまとめると下記となる。
1)粒子のつくる流束の媒体が真空ではなく空気である。
2)流束の経路に同じ他の流束である空気分子の流れが存在し、これらが抵抗となる。
3)このため対向電極まで到達されない帯電粒子が存在する。
4)背景に粒子の拡散時間の存在がつくる結果的な空気の粘性現象の層が存在する。
5)結果的に対抗電極の平面近傍で広がる流束が帯電粒子の到達を妨害する。
要約すると、対抗電極の平板構造そのものが空気抵抗を発生させ、帯電粒子の到達を妨害する構造となっているのが一つの原因である。
【0025】
図5、
図6は第一の課題「電極構造が作る空気の流束抵抗」の解決手段の例である。
ここでは平板電極のかわりに、流束が容易に通過する経路を持つメッシュ構造、あるいは穴あき構造の疑似平板構造を提案している。これらを解決する一つの手段は電界加速された粒子の作る流束を乱さずに各々の帯電粒子が素直に対向電極へ流れるような対向電極と流束構造を提供することである。
【0026】
図5の極細電極1または、
図6の針状電極5では印加された高電圧によるコロナ放電により、粒子が帯電される。本図では周囲の粒子がマイナスの電荷で帯電された例を示している。この帯電粒子7は印加された高電圧が形成する電界により加速され、金属等の導体からなるメッシュ構造の対抗電極板6に向けた流束が形成される。メッシュ状の対抗電極6は穴構造であるため、流束の透過機能を有し、流束は乱されることなく対抗電極に向けてのスムースな流れが形成される。ここで対抗電極は放電電極が入り込む構造ではない。このため容易にスライドして引き抜ける構成である。これにより、引き抜いて容易に清掃等が可能となることが前提となる。
図7はこの解決手段の別の例である。ここに示したように、電極板はマトリックス形状丸穴や角穴構造、あるいはパイプ構造や、図示しないハニカム構造の電極や導電性のスポンジ構造でもよい。
【0027】
一方で、メッシュ電極のメッシュの粗さは背反的な様相をなす。すなわち、メッシュが細かければ帯電した粒子を補足しやすくなるが、逆に流束が乱れやすくなり、結果として局所的な補足になるため、捕捉率が下がる。逆に、メッシュが粗ければメッシュをすり抜ける部分が発生するため、個々の流束の捕捉率は下がるが、全体の流束の乱れはなくなる。このことから、捕捉率を上げるにはメッシュを細かくし、流束の乱れをなくすにはメッシュを粗くする必要があり、互いに相反する構造が要求される。
【0028】
図8はこの互いに相反する課題の解決手段である。
ここで示したメッシュの積層構造により、対抗電極に向かう流束の流れが乱されることがなく、且つ、積層数に応じて対数的に捕捉率が高くなることが期待できる。
【0029】
なお、流束の乱れによる帯電粒子の捕捉率の低下は、流束を波動としてとらえた場合には一種の反射現象であることは既に述べた。このことは終端条件を適正に整合、つまりはマッチングさせることにより、流束の乱れを防げることを示唆する。平板電極面は流束の経路の不連続な境界面であり、この不連続構造により流束は反射されて戻ったり、広がったりすることになる。このため、対抗電極面より前面に流束を乱すような一種の反射とみなせる乱流が発生しない構造は極力不連続な物理構造とならない構造が求められる。ここにおいても、空気の流束の流れは乱されることなくそのまま透過する構造であり、スムースに透過した空気が次段に伝達される構成であることが前提である。
【0030】
図9では、これを実現させるための流束の終端部での反射整合構造も提案している。基本構造は多段メッシュ構造の対抗電極ブロックである。この構造により、物理的な極端な不連続性を緩和し、流束の反射を抑制しているものである。ここにおいても、帯電電極は対抗電極側に入り込む構造ではない。そのため、対抗電極のブロックはそのままスライドして引き抜いて容易に清掃が可能な構成となる。
【0031】
一層目は基本的に粗いメッシュ構造とすることで流束をまずは電極ブロック内に引き込むことが主目的となる。二層目以降は徐々に細かいメッシュとして積層することで流束を緩やかに受け止め、反射方向への流束を防いでいく構造としている。
なお、構造は連続的な緩和構造であればよく、これを連続的なスポンジ構造の電極とした場合は深くなるにしたがって段階的に目の粗さ、つまりは粒度が細かくなる構造等も想定される。
【0032】
図9の例では電極ブロックの各メッシュの電位は同電位であり、内部の電位はいわゆるファラデーシールド内の無電界の状態に置かれている。
対して、
図10は前述と同等の段階的に細かくなるメッシュの層構造であるが、個々のメッシュに帯電粒子の方向性を持たせる電界を印加する部分に工夫がされている構造の例である。
【0033】
図9の例の電位固定について説明する。
ここでは、メッシュブロック11の内部の多段メッシュ構造はすべて同電位である。このため、この内部はファラデーシールドを構成し、内部に浸透した帯電粒子は無電界の状態におかれ、そこで働く力は自己の帯電電荷とメッシュブロック内の電極との投影電荷での吸引力で吸着されるのみとなる。なお、連続した流束の流れは当然存在している。
【0034】
図10は、
図9の各メッシュに個別の電位を与えた、もう一つの例である。
ここではメッシュブロック内の個々のメッシュ間に第二の電源15、第三の電源16による電圧が加えられており、電界17、電界18が形成されている。これらの電界の内部では、帯電粒子の電荷の極性により電界方向への吸引力あるいは斥力が発生し、メッシュブロック内部でも帯電粒子の吸着が容易になされるように工夫がされているものである。このようなメッシュブロック内部の段階的な電界構造により、さらに帯電粒子の捕捉率を上げることが可能となる。
なお、本例はメッシュ3段の構成であり、追加の電源は2個であるが、メッシュ層が増えればその分の電源は増大する構成となる。
【0035】
図10の例は単純な二段階構造の電気集塵器とは異なることを説明する。
ここに示した対抗電極側のメッシュブロックの内部に段階的な電界構造を設ける方法は、一段目で粒子を帯電させ、二段目で電界集塵する構成であり、二段階構造の電気集塵器に類似している。しかし、本願と従来の二段階方式では以下が大きく異なる。
1)メッシュ構造による流束の吸い込み構造。
2)段階的に細かくなる多層メッシュによる流束の反射現象の防止構造。
3)段階的電界構造によるメッシュブロック内の帯電粒子の方向制御。
4)流束の流れを乱さずに、流れをそのまま相乗効果的に利用している。
5)その結果、コンパクトな構成とすることが可能となる。
【0036】
また、この構造は、位置的、構造的、機能的に一つのブロックとして粒子の帯電から加速して、流束の乱れを防止して補足するまでを行う構造なので、各々の部分を分離できず、二段階方式のように単純に機能を分けることは不可能な構成である。
【0037】
第二の課題「火災や感電にかかわる安全性と不要ノイズの発生」の解決手段を述べる。
前述の電気集塵器は二つの電極間に高電圧を印加する非常に単純な構成の反面で、対抗する二つの電極は裸電極であり、間を絶縁する絶縁物は空気である。
この空気層には時には汚れや特殊なガス、時には害虫も、あるいは高い湿度のケースも含まれる。絶縁物が空気で、基本的に裸電極である構造は、異物による絶縁劣化で短絡、放電ノイズ、危険な高電圧等が発生する可能性が常に存在し、害虫の侵入、導電性のほこり、吸湿による絶縁物の劣化、可燃性のガスの環境での使用、ノイズにより他の電気装置への障害等の課題がある。いずれの場合も意図しない回路への短絡が想定され、最終的には感電事故や火災等の不具合につながるものである。
【0038】
まず、前述の安全性対策の一つとして、意図しない放電による火災や感電の防止の手段について述べる。当然ではあるがまずは絶縁材料となる絶縁物を不燃物で構成することがあげられる。特に高電圧を扱う装置では耐トラッキング材料を使用することは当然である。耐トラッキング材料を使用することで絶縁の劣化進展による発火を有効に防止できることはよく知られている。耐トラッキング材料としてはたとえばセラミックやガラス繊維を含むプラスチック樹脂等が知られている。
本願ではこれらの対策は既に採用されているという前提で、それ以外の因子について言及する。
【0039】
安全対策のうち、感電に関して、高電圧回路に特有な現象として、周囲の導電物に静電誘導により意図しない高電圧が誘導され現象がある。これらを極力防ぐためには、二つの基本的構造が求められる。
一つは、導電物の電気的なフロート構造をつくらないことである。たとえば、フロート構造の導電物が高電圧部分の近傍にあるだけで、例をとればネジ一本がフロートしているだけで、そこに静電誘導により電圧が誘起され、意図しないコロナ放電が発生する場合がある。
二つ目は、システム全体をファラデーケージ、つまり導電性の金属で囲むことである。さらに感電を防ぐにはこのケージが電位的に非フロート状態であることが必要である。特に感電防止の観点からは、常に接地電位相当の安全電位であることが望ましい。
【0040】
次に、安全対策としての火災対策であるが、可燃性ガスの発生する環境で爆発現象のような連鎖的な燃焼現象を防止する機構が知られている。この一つが、金属メッシュで発火源を覆う方法であり、古くはいわゆる炭鉱作業用のデービー灯に採用されていた実績がある。
【0041】
これはメタンガス発生下の炭鉱内でも連鎖爆発しないように揮発油ランプ、つまりは発火源を金属メッシュで囲むことが有効であることを利用している。これらの構造は、現在でも引火物の輸送パイプの途上に設けられる逆火防止弁でも採用されている。逆火防止弁の内部には多段メッシュ構造のフレームアレスタが設けられ、逆火防止の主要構造として採用されている。なお、逆火を防止する原理は、炎がある程度狭い隙間を透過できないことと、金属メッシュの熱容量による炎の冷却効果を利用しているものである。
【0042】
第二の課題「火災や感電にかかわる安全性」の解決の具体例を次に示す。
図11では、主要な集塵機構部の全体を金属メッシュで覆う構造を提案している。
ここでは、金属メッシュの効果としてしられる個々に異なる二つの公知の効果を同時に利用することが特徴的である。ここでは吸入ファン19から吸い込まれた流入空気20が、金属メッシュ等からなる安全シールド18を経由して、集塵システム本体17を通過し、再度、安全シールド18の出口から排出空気21として排出される。なお、安全シールド18は安全電位電源28を経由して接地電位相当の安全電位24に固定されるため、静電誘導の影響は受けない。なお、安全電位電源28は放電現象や感電に影響ない安全な相対的に接地とみなせるような定電圧の電源であるが、場合によっては無くてもよい。安全電位電源28は後述するように、安全シールドに意図しない帯電粒子が付着することを防止するものである。
【0043】
本願では、感電や火災の防止を目的として電気集塵器の主要機構部の全体を接地電位相当の安全電位とした金属メッシュ等の安全シールドで被うことを一つの特徴としている。この構造は前述の感電、火災の安全性、その他の効果として、以下に言及する効果が期待されるものである。
1)ファラデーケージにより、内部の電気現象が外部に影響せず感電事故を防止。
2)金属メッシュ構造が炎のブロック構造となり、内部の炎が外部に進展しない。
3)その結果、全体を覆う金属メッシュの外部に可燃物からなる構造を設けられる。
4)流束の経路を利用した可燃性の衝突フィルタの採用が可能。
5)前述の可燃物として活性炭フィルタやHEPAフィルタ等を設けることができる。
6)結果として、活性炭フィルタで不要オゾンの吸収が可能となる。
7)さらに、容易に交換できるエアフィルタ構造が容易に実現可能。
8)ファラデーケージは静電シールドとなるため、不要ノイズの輻射が防げる。
【0044】
第二の課題「火災や感電にかかわる安全性と不要ノイズの発生」を担保する要件について述べる。具体的には、電気集塵器の各構成部の接地電位である。これは、前述の主要な集塵機構全体を覆う安全シールドの電位固定をあえて「接地電位相当の安全電位」としている背景でもあり、これには以下の二つの理由がある。
【0045】
一つ目の理由は、前記の金属メッシュ部に放電を起こさない範囲での低い電圧をかける場合も想定しているからであり、この場合は機能的動作として接地電位と相違のない動作を期待していることが前提となるため、「接地電位相当の安全電位」とした。
背景には危険な放電や放電による不要ノイズが発生せず、感電にも至らない管理された接地電位相当の電位であるという前提がある。
【0046】
二つ目の理由は、電気機器として真の接地電位が得られない場合に、機能上問題ない範囲で接地電位相当の電位を得る場合があることである。この場合も、機能的には接地電位とほぼ同等の動作を期待していることから、「接地電位相当の安全電位」とした。
【0047】
図11を例に、一つ目の理由の背景を説明する。ここでは最外層に設けるエアフィルタ25の設置も想定している。このエアフィルタ25は多くは可燃性であり、当然であるが、放電等が発生する環境での使用は制限される。ここで、前述した安全シールド18がしっかりと接地電位相当の安全電位に固定されることにより、可燃性のフィルタを制限することなく安全に使用することが可能となる。
【0048】
実際の電気集塵器や簡易型の帯電粒子発生装置等では集塵板電極、エアフィルタ等々の主要機構部の電位固定がどこにもされてないものが相当量ある。しかし、電気的主要機構部の電位固定は重要である。ここでは安全シールド18の電位固定とともに、エアフィルタ25の電位固定も重要であることを説明する。
図11の電気集塵ブロックの排出空気26には集塵システム本体17で補足しきれなかった帯電粒子が含まれる。このとき、エアフィルタ25が電気的にフロート電位であると帯電現象により、エアフィルタ25の電位が不安定となり、場合よっては帯電現象により生じた電界により帯電粒子を反発させる場合も想定される。このため、エアフィルタは帯電しにくい導電性を有す材質で、且つ、電気的にフロートしていない接地電位相当であることが要求される。電気集塵器であり、帯電した粒子が排出される可能性が常にあることを考慮すると、エアフィルタ自身を電気的に固定して、不要な帯電が発生しない状態を保つことは、電気集塵器を安定して運用するために重要な管理項目となる。
【0049】
一方、安全シールド18を真の接地電位とすると、意図しない帯電粒子は接地電位に向かうため、安全シールドを構成する金属メッシュ等に付着しやすくなる。しかし、メンテナンスを容易にするという社会的要求の視点では、粉塵を可能な限りディスポーザブルや簡単清掃の可能な最外層に設置されるエアフィルタ25に選択的に付着させる方が運用や保守が簡便となる。このため、本願では安全シールド18は安全電位電源28を介して完全な接地電位とならないように管理している。なお、これは性能次第ではなくてもよい。安全電位電源28とは放電や感電に影響ない程度に機能的に十分低い電源という意味である。
【0050】
ここで、安全シールド18は安全電位電源28により、管理された安全電位が与えられ、エアフィルタ25は最外層であり、メンテナンスで人体が接触する可能性もあるため、基本的には安全な接地電位相当に固定される。これにより、低電圧ではあるが、安全シールド18とエアフィルタ25の間にも電界が発生するため、帯電粒子は最終的にはエアフィルタ25に最も付着することとなる。
【0051】
なお、エアフィルタ25は、たとえば活性炭ペーパや、活性炭スポンジ、あるいはHAPAフィルタ等である。本案では前述したように、これらのフィルタにある程度の導電性を持たせることを想定している。これは、エアフィルタ25の電位を安全な接地電位相当に固定することで帯電粒子による不要な帯電現象を防止するとともに、帯電粒子が接地電位に向かうことを利用して集塵性能を向上することを狙う機能も想定しているからである。
エアフィルタ25の導電性は絶縁物のような絶縁抵抗でなければよく、単位体積で数100kΩオーダーの高抵抗であってもよい。
【0052】
ここまでで、問題となったのは一般のエアフィルタのほとんどが可燃性であることと、電気集塵器の電極構造から内部で火花放電が発生する可能性のあることである。この対策として、金属メッシュ構造等による炎の封じ込め構造を採用した。また、この構造により、集塵システム本体を被う安全電位に固定された安全シールドと、さらにその外部に設けられるほぼ接地電位のエアフィルタとの間に電界を発生させることが可能となり、エアフィルタに効果的に粉塵を集めることが可能となった。
【0053】
図12に示すように、エアフィルタは接地電位にかかわらず、多重層フィルタ構成にして、各層に帯電粒子を加速できるような電位を与えることを行ってもよい。エアフィルタ25は通常は単体で接地電位相当24に固定されているが、同右図のようにエアフィルタを多層構造にするものである。たとえば本図では3段構成の例であるが、エアフィルタ61、62、63の段構成にし、その間に安全電源により電圧を加えているものである。
【0054】
「接地電位相当の安全電位」とした、二つ目の理由を述べる。
電気集塵器は帯電粒子を扱うため、接地電位の確保は非常に重要である。しかし、現実として、家庭内や限定された設置場所では接地線接続用の端子が得られず、理想的な接地電位を確保できない場合が非常に多いのが事実である。特に日本ではAC100Vの商用電源には接地コンセントが付属していない場合がほとんどであり、真の接地電位を確保するのは一般的に容易ではない。
【0055】
このため、本願では機能として接地電位とほぼ同等の機能を得られる電位を便宜上「接地電位相当」とした。具体的には、電気集塵器としてほぼ接地電位とみなせる電圧は部位や目的とする機能にもよるが、一般に数100V、あるいは数10V以下と思われる。
一方で、電気集塵機の電極の電圧は一般的に数kV前後であり、電気機器としては比較的高い電圧である。これに対して、たとえば0.1kV程度の電圧であれば機能的にはほぼ接地と同等みなせる場合を「接地電位相当」とした。
【0056】
「安定した電位固定の必要性」 について述べる。
電気集塵器の場合の帯電粒子は最終的には真の接地電位に対して周囲の構造物がどの程度の電位を帯びているかによりその挙動が定まる。たとえば、構造物の電位が電気的にフロートされていた場合は帯電現象により数kVにも帯電して、帯電粒子の挙動に大きく影響する。乾燥した冬場の静電気の影響を考慮すれば、これが重要な因子であることは容易に理解される。言い換えれば、電気集塵器であるからこそ、帯電現象や静電気現象を厳密に管理して、安定した動作を行わなければならないとも言える。
【0057】
このように各構造物の電位が固定されない状況で動作させると真の接地電位に対しての電圧が定まらず、扱う帯電粒子の挙動も安定しなくなる。これを防ぐため、には真の接地電位に対して常に構造物の電位が安定する構造が必要となる。本願ではほぼ接地電位とみなせる電位を安定的に確実に得るための一つの手法として、AC100V電源網の電位を利用することを想定している。
【0058】
まず、真の接地電位に接続できない場合に、次善の策として、接地電位に近い感電せず、また、火災等の原因とならない安全な電位固定方法を得るという視点から説明する。
この点では、感電や放電等の現象が起きない回路条件は種々の電気安全規格で規定されているのは周知のとおりである。この条件は安全規格等では、電気回路の「非充電部」とみなす根拠として示されており、これが一つのよりどころとなる。具体的には電圧の最大値でみなす場合と、インピーダンスによる分離とされる二つの判断基準がある。
【0059】
一例であるが、一般に電気製品で非充電部とみなされるのは、いわゆるSELV電圧(安全低電圧)とされる60V(直流)以下の電圧であるか、もしくは、接地回路と接続した場合に0.5mA以下の漏れ電流となる「充電部とインピーダンスで分離された回路」のいずれかである。
本願では、真の接地電位に接続できない場合には、少なくともAC100V等の商用電源に所定のインピーダンスを介して接地電位相当とすることを想定している。
さらに、人間が触れる可能性がある場合は、前述の安全規格にしたがって、介在するインピーダンスを所定の値にすることで「インピーダンスで分離された回路」として、人間が触れる可能性のある部分の電位を安定に固定する。
なお、この場合、当然であるが、真の接地電位が得られる場合であれば、電気的にそちらの接地回路が優先される。
【0060】
ここで、真の接地電位に接続できない場合に、機能的にほぼ接地電位とみなせる電位固定を得る方法について述べる。
まず、接地電位相当とは電圧値ではなく、真の接地電位との接続回路が確保されていることが重要である。たとえば回路電圧がSELV電圧(直流で60V)以下であっても、真の接地電位に対して回路全体が電気的にフロートしており、帯電粒子等の影響で10kVに帯電していれば、当然ながら接地電位として扱えない。
さらに、回路自体が電気的にフロート状態であれば、近傍の誘導電位により回路全体の電位は大きく変動する。この場合も近傍の誘導電位によっては危険な挙動を示す場合や、目的とした機能が得られない場合がある。このため、安定した電位固定、つまり、真の接地電位との確実な接続回路は特に電気集塵器では重要となる。
【0061】
図12は日本での解決手段の例である。
日本では商用電源のAC100Vは周囲環境で最も確実に電位が固定されている回路である。接地電位が容易に得られない環境で、接地に近い安定電位に固定する方法は一般の商用電源に接続することが最も簡便であり、安定であり、且つ、安全である。
ここで、商用電源のニュートラル(N)側33は安全のために接地されており、且つ、ライブ(L)側も接地電位に対して非常に安定した電圧を維持している。具体的には日本では多くの電源はAC100Vであるが、AC100Vの電源網は一般的にはニュートラル側(N)が接地電位であり、ライブ側(L)は非常に安定したAC100Vであるからである。
【0062】
商用電源に接続される機器の容量と相対比較した場合、AC100V電源は現実的数値として内部インピーダンスがほぼゼロとみなせる理想的な電圧源回路で設計されている。このため、AC100V系を疑似的な等価接地電位として使用する場合は、ライブ側(L)を使用しても最大でもその電位は誤差の範囲でAC100Vを超えることはない。
【0063】
安全な接地電位相当の電位を得る第一の方法の概念図を
図13示す。この回路ではニュートラル側が接地電位31に固定された商用電源39と電気集塵器本体40が接続されている。電気集塵器40の内部では分圧抵抗(R1)41と、分圧抵抗(R2)42で抵抗分圧した中点から保護抵抗(R3)44を介して仮想接地(VE)43として引き出す構造となる。
【0064】
抵抗分圧の中点としたのは、使用者が電源プラグの極性の差し込みを逆にすることで0Vと100Vと変化する事の影響をなくすためである。中点であれば、0V、つまりは完全な接地電位になることはないが、常に中間の50Vの安定電位が得られるため都合がよいからであり、実際は使用者がその都度に極性を逆につないで安定でなくてもよいならば、分圧抵抗(R2)42は不要であり、中点でなく使用してもよい。なお、保護抵抗R3は感電の保護を行う場合に挿入し、仮想接地(VE)43に触れた場合に感電しないようにする値とする。このときR1とR2の値で電流値が安全な値に制限されるなら、当然であるが保護抵抗R3は不要である。また、人体が触れないで管理できる状況であれば、感電電流以下で管理する必要はない。
【0065】
図14は、安全な接地電位相当の電位を得る第二の手法である。
これは接地検出装置47により極性選択リレー接点46を制御して、AC100V電源のニュートラル側(N)を接地電位として切り替えて提供する。接地検出機構はここでは詳細は規定しない。
【0066】
図15は、安全な接地電位相当の電位を得る第三の手法である。
この回路では商用電源(AC100V)39を全波整流回路58でブリッジ整流して、ブリーダ抵抗(R6)57に接続される。出力のプラスとマイナスの端子には保護抵抗R4とR5が接続されるが、電流制限の必要がなければなくてもよい。D5とD6は逆流防止回路である。
図17に、
図16のブリッジ回路の出力と接地電位菅の電圧を示す。ここでは全波整流回路が半波毎にプラス側とマイナス側が交互に接地電位となる。
図15は、これを利用して、仮想接地電位(VE)43に接地電位を得るものである。
図16のVLとVNは全波整流回路の出力と接地間の電位の変化である、これが逆流防止ダイオードD5とD6を経た部分である仮想接地電位部では、同
図Voutとなり、ほぼ接地電位に等しくなることがわかる。
【0067】
ここで留意しなければならないのは
図15のD1〜D6のダイオードが挿入されているゆえに、接地電位側に流れる電流方向が一方向であることと、ダイオードの順方向電圧分は残留していることである。
また、ブリーダ抵抗(R6)57は仮想接地(VE)43の出力に電流容量を持たせるために接地側にあらかじめ所定の電流を流すための負荷回路として機能している点が重要なポイントである。このため、このブリーダ抵抗が無い場合や、値が大きい場合はこの仮想接地出力回路はうまく動作しない。したがって、大電流を流す用途の仮想接地回路としては不向きである。しかし、静電誘導や静電気対策の微小電流容量での電位固定目的の接地端子としては充分に使用可能である。この方式であれば、自動的に接地相当の電位が得られ、第一の方式のように中間電圧の50Vの残留はなく、第二の方式のように専用の接地電位検出装置は不要である。
【0068】
第二の課題「火災や感電にかかわる安全性と不要ノイズの発生」の解決手段の補足情報について述べる。
前記のシステム全体をメッシュで覆う手法は従来方式の電気集塵機に採用してももちろんよい。しかし、ここで示した手法は、第一の課題である空気の流れの流束そのものによる集塵の妨害を解決するための一部分もなしている。また、安全を担保するための静電誘導や帯電による意図しない放電等を防止する安全な接地電位相当を得る手法についても述べた。この接地電位については、第五の課題として対抗電極に付着する粉塵のメンテナンスについても一部分をなしている。この部分に関しては、後述するが、蓄積した粉塵のメンテナンスを効率的に行うためにも、この接地電位相当の最外層のメッシュ層が有効となる。
【0069】
第二の課題「火災や感電にかかわる安全性と不要ノイズの発生」の放電電流による不要アークの発生の解決手段の補足情報について述べる。異物等の混入による不要アークは火花放電であり、継続した場合は火災やノイズの発生につながる。
図6は、一般の針状電極5を利用してコロナ放電を発生させる帯電電極構造であり、このままの構成では電極間にアークが発生した場合の防止手段がない。
図18は、同タイプの帯電電極の配列構造である。
図18の例では各針状電極94,95,・・・96の直下に電流制限抵抗97、98、・・・99が接続されている。また、対抗電極101,102、・・・103の直後にも同、制限抵抗104,105,・・・106、および、電源側の集合部にも制限抵抗100、107が接続されている。
【0070】
図18の電流低減手法について説明する。たとえば同図の針状電極97より、何らかの理由によりアーク放電108が発生したと仮定する。このとき針状電極側の電流制限抵抗97、および、対抗電極側の制限抵抗104はアーク放電による短絡電流で電圧降下し、結果として針状電極94とその対抗電極101の間の電圧値も低下し、空間絶縁破壊電圧以下に制限され、自動的に放電は抑制されるものである。
【0071】
図18では、高圧電源の各所のブロックごとに、ブロックの分岐ごとにこのようにして電流制限抵抗を挿入している。このため、どこかのブロックで電極間を直接的に短絡する放電が発生すると放電した電極自身と属するブロック自身の電位が低下し、放電した電極での短絡を抑制する動作となる。ブロック自身の全体の接続集合部にも制限抵抗を入れているのは、短絡の原因が広範囲に及ぶ場合も想定しており、さらに、周囲の電極が放電原因に対して静電誘導的な誘導により放電を助長することも抑制する効果を狙っている。
【0072】
図19の二段構成の保護抵抗ブロックの例で、この効果を説明する。
この例では、簡単のために、各抵抗値は10MΩ、電源は10kVとしている。短絡が無い状態では、電極間の電圧Vpはほぼ10kVとなる。ここで先端の抵抗の一つが短絡すると、図中のVpはアーク抵抗が相対的に無視できるとしてゼロとすれば、Vpは0Vとなり、20MΩの抵抗から、アーク電流は0.5mAとなる。
【0073】
ここで、放電のアークが自己消弧される理由を述べる。一般に直流の場合は電流のゼロクロス点がないため、アークは継続しやすい。一般的に放電のアークの抵抗は意外に小さく、電流値にもよるがアーク制御をおこなわない自然なアークの電圧は数V〜数10V程度であり、一旦発生したアークによる短絡は継続する傾向がある。しかし、ある程度以下の微小電流では継続しない。
図21にアーク電圧と電流の一般的特性をしめす。この特性の傾きが微小電流領域で反転していることから、微小電流領域での自己消弧性が読み取れる。微小電流領域ではアーク電圧が高くなり、その結果アーク抵抗が増大し、これにより電流が小さくなり、さらにアーク電圧が高くなる繰り返しで電流値はゼロに向かって収束する。さらに、ここではファンによる強制循環と、アーク自身の迷走性により空気で冷やされて自己消弧される。
図19にもどる。一方で、この短絡電流0.5mAにより集合部の抵抗10MΩで電圧降下5kVが発生し、ブロック内のすべての電極の電圧が10kVから、5kVに低下する。この電圧降下により、ブロック内の二次的な放電の発生の可能性は抑制される。
【0074】
図20は、
図18の抵抗群にコンデンサを並列に入れた例を、一素子で示したものである。
図18の抵抗には、この図のようにコンデンサを並列に入れてもよい。これにより、瞬時的な電源容量を上げることができるため、常時の電極先端の電圧は安定し、コロナ放電の安定性を得るものである。一方で、あまり大きくすると、異物等の放電ギャップの異常でアーク放電が発生しやすくなるため、バランスが必要である。
【0075】
図22は、
図6の対抗電極を絶縁電線のメッシュ113で構成した例である。
ここでは、絶縁被覆で被われた回路のため、原理的にアーク放電は発生しないものである。
【0076】
なお、前述までの例では、帯電用の電極の例を示したが、集塵用の電極も、同様にブロック構成として、個々に抵抗を挿入してもよい。
【0077】
第三の課題「集塵電極に補足されずに外部に放出される帯電粒子」の解決手段を述べる。
電気集塵器から帯電された荷電粒子が外部に放出された場合、それは意図しない荷電粒子となる。部屋内の物体はプラスあるいはマイナスに帯電されているか、あるいは0電位、もしくは接地電位であるのいずれかの場合となる。帯電粒子はこれらの表面状態に応じて物体の表面に付着し、結果的に物体の表面を汚すことになる。特に樹脂材料の成形品等の絶縁物の表面は帯電しやすく、意図せずに汚れた帯電粒子を吸着し、表面が汚損される現象は多々あることである。
【0078】
これは第一の課題と第二の課題により、以下のように、すでに解決している部分を含む。
第一の課題「電極構造が作る空気の流束抵抗」の解決手段により、すでに帯電粒子を効率よく補足する手段を提示しており、これにより外部に放出される帯電粒子の問題は解決されている。
同様に、第二の課題「火災や感電にかかわる安全性」の解決手段によっても、追加的なエアフィルタを流束の途上に効率よくおけるため、さらに帯電粒子の捕捉率は高まる。
このため、ここでは、他の手法について述べる。
【0079】
図23は、帯電粒子を中和イオン発生器66で中和する解決手段の例である。
ここでは、
図12に解決手段を追加しており、吸入空気69を第二の吸入口68からファン67により空気を吸入し、中和イオン発生器66を介して中和イオンの流束71を発生させ、電気集塵部のフィルタ部分の最終段の混合部70で混合し、中和している例である。なお、中和イオン発生器にも図示していないが、安全シールドで被ってもよい。
【0080】
図24は、中和イオン発生器66を最終段のエアフィルタの間に挿入したものである。これにより、最終段で中和イオンにより帯電粒子が中和される。
【0081】
図25は、中和イオン発生器66の基本構造である。ここではイオン発生部として多数の鋭利な先端構造をもつ高電圧電極72から、対抗電極73に向けて、コロナ放電74が発生させている。このコロナ放電で発生するプラスイオン、マイナスイオンを用いて中和を帯電粒子の中和を行うものである。
図19と異なり、既にほとんど清浄化された空気をイオン化するため、不要な粒子の帯電現象をともなうことはない。
ここで目的としているのは空気のイオンの発生であり、帯電ではない。このため、コロナ放電で電離した空気イオンは数10cm以内に速やかに消滅する。このため、この機構がさらに帯電現象を起こすことはない。
【0082】
図25の高電圧電源75はコロナ放電によるイオン化でプラスとマイナスの両方のイオンを発生させるために、高電圧の交流電源が使用される。
図26はこのときの電源の波形の例である。本図のように一般に、正弦波79、または矩形波80が使用され、周波数は数Hz〜数10Hzであり、電圧は通常は数kV程度であるが、コロナが発生するような電圧でなければならない。ここで、R6、R7、R8は電流値を制限して安全を確保するための安全抵抗である。この抵抗により、出力電流を0.5mA以下に抑制することで安全が確保される。
【0083】
第四の課題「意図しないオゾンの発生」の解決手段について述べる。
オゾンはいわゆる無声放電、一般には高電界にさらされた絶縁物の沿面でみられる放電により効率的に発生する活性ガスである。電気集塵器では原理的に常に微量の放電が存在するため、微量のオゾンガスの発生は不可避の現象である。
オゾンガスは微量であれば脱臭、減菌等に効果があるといわれるように利点も多いが、その一方で、意図しない発生の場合は障害となるケースがある。たとえばオゾンにアレルギーのある人や、特にオゾンに敏感な人等にとっては無視できない障害となることがある。
このことから、意図しないで発生するオゾンガスを低減する手段が必要となる。
【0084】
図27は、オゾンガスを低減するための活性炭フィルタ81の設置例である。活性炭フィルタは一般に可燃性であるため、ここでも炎の進展を抑制する安全シールド18が置かれることが前提となる。ここでは、最後のエアフィルタの次段に活性炭フィルタ81を置き、その効果によりオゾンが吸収され、不要なオゾンの発生を抑えることができる。なお、当然であるが、エアフィルタ自身に活性炭を混在させてもよい。
【0085】
ここで、オゾンを意図的に出したい場合がある。脱臭目的や、減菌目的等である。このようなときは活性炭フィルタ81を通過せずに排気する必要がある。
図27の構造では、オゾンを吸収する活性炭フィルタ81を経由するため、オゾンの意図的な通過は不可能である。
【0086】
図28は、オゾンガスを意図的に排出することもできる例である。
ここでは、吸入口エアフィルタ82から空気を吸入し、電気集塵部の一段目83を経て、粒子に帯電させ、集塵部吸入ファン88、集塵板であるメッシュブロック11、エアフィルタ25、活性炭フィルタ81をへて集塵部経由の空気の流れ84に従い排気される。
このとき、機能制御ファン88はバランス弁の役割を担う。すなわち、通常は第二の吸排気口からの空気の排出空気の流れ86の方向で機能制御ファンを回転させる。このとき、ほとんどこの流れが逆流しない程度の回転で良い。このファンの回転は弁の役割をさせるので、極端な例ではこの流れは限りなくゼロとなるように回転を制御することが目的となる。この常態の使用では電気集塵器からの空気の流れは、必ず活性炭エアフィルタ81を経由して排出されることになる。
【0087】
一方で、この機能制御ファン88を逆回転し、強制排気空気の流れ87が生じるようにする。このようにすると、内部で発生したオゾンはそのまま外気に排出されることとなり、オゾン発生装置を構成することができる。このとき、集塵部吸入ファン88と、機能制御ファン89の回転数、つまり二つのファンの吸排気量は同じとなり、吸入した分がそのまま排気される流束回路となるため、活性炭エアフィルタ81経由での排気はほとんどなくなるものである。これにより、電気集塵部一段目(帯電部)で発生したオゾンはほとんどそのまま強制吸排気用エアフィルタ90から出力されるものである。
なお、空気清浄器内部にタールの臭気成分が付着する場合がある、このときはすべてのファンを止めて、あるいは非常にゆっくりと回転させて、内部の蓄積して付着した汚損物質の脱臭を行うことも可能である。
【0088】
図28における中和イオン発生器66の機能を説明する。主目的は第三の課題「集塵電極に補足されずに外部に放出される帯電粒子」の解決手段である。
通常の電気集塵モードであれば、ここで中和イオンを発生させて集塵用電気集塵ユニットに中和イオンを注入する。
一方で、オゾン発生モードのときであるが、オゾン以外の帯電粒子がそのまま放出されてしまうため、このときも中和イオンを発生させて機能制御ユニットから、オゾンのみを排出することが目的である。
【0089】
第五の課題「帯電した粒子を吸着する対抗電極の粉塵の蓄積」の解決手段を述べる。
電気集塵器において、電極に蓄積した粉塵を除去する方法は、電極に物理的振動を与えて付着した粉塵を重力落下させて除去する方法、表面を自動車のフロントグラスのワイパーのようにワイプする構造により汚れの除去を行う方法、集塵板の清掃や交換等が知られている。
しかし、振動方式は集塵板全体に機能せず、また、ワイパー方式は複雑となる。また、メンテナンスフリーの装置が求められる市場の社会情勢においては、清掃や交換は不便であるとみなされる傾向があるのは否めない。
【0090】
図29に解決手段の例を示す。
この例では対抗電極6、12、13やエアフィルタ61、62を振動モーター114〜117で振動させる方式である。これにより、表面に付着した粉塵118を重力で落下させる。落下した118はダストトラップ119に集められ、適宜、廃棄する構成となる。ダストトラップ119は内部での空気の流れの吹き溜まりとなるような吹き抜ける構造とならない構造を使用し、一度入り込んだら抜け出すような流束の流れがファン等の強制流束によっても構成されない構造とする。
【0091】
図30に第二の解決手段の例を示す。
この例では、振動モーターの替わりに、交流電磁石120と永久磁石121を使用する。ここで、交流電磁石120はたとえば長尺の鉄心等を有する広範囲の交番磁束Φを発生させる構成とする。これにより数mTの磁束を広範囲に発生させることができる。
一方で、永久磁石は高い磁束密度を有するネオジウム等の磁石を使用すれば十分に振動を起こすことができる。この方式では小さな永久磁石を各所に置くことができることが特徴である。
【0092】
第六の課題は「絶対的な送風量と吸入口と排出口の位置」である。
これは清浄時間と清浄効率にかかわる。24時間で清浄する装置ではなく、1時間以内で清浄する装置が求められており、このためには圧倒的な送風量と清浄性能が要求される。
さらに、吸気口と排気口の位置が工夫されており、排気された空気が吸気口に戻らない構造が要求される。
【0093】
図31に、第一の解決手段として、集塵効率の向上手段を持つ構造を示す。
ここでは流束全体にわたり、もれなくコロナ放電を発生させることと、流束に逆らわない対抗電極構造と、対抗電極にもれなく付着させることと、そして、さらに多層構造による効率向上を行う構造を採用している。
【0094】
図31では、全体として高効率集塵ユニット124を構成する。
ここでは、まず、帯電電極を通常の細線タイプから、効率の良い針状電極とし、さらに多数の格子配置とした多連針状電極122を採用する。これにより、針の先端形状を鋭利にすることでより多数の粒子を帯電させることができる。さらにその構造を多段構成とすることで、通常の性能を超えた性能をもたせている。
【0095】
図31では、対抗電極124は空気を通過させるたとえば格子状であり、この電極は絶縁されていてもよい。絶縁されることでアーク放電が防止され、イオン化された空気も電極に入らずに次段までもたせることが可能となり、効率も上昇する。ただし、粒子を積極的に対抗電極に付着させるには絶縁は不要なので、多段構成のうちの、たとえば二段目、三段目等だけを絶縁することにしてもよい。
【0096】
ここで、多段構成にすることにより、一段構成では漏れてしまう粒子も対数的に捕捉できるようになる。たとえば一段での補足漏れが1/2あっても、4段構成なら、1/16となり、効率は、(1-1/16)×100=94%まで上昇する。
【0097】
図31の多連針状電極は格子状に配置され、結果として流入空気22の断面の全域にもれなく配置され、ほとんどの空気がこの帯電電極の格子を通過する。対抗電極124はたとえば本図のような格子状で流束を乱さずに通過できる構造であればよい。メッシュ構成は主たる流束を乱さずに次段につなげるための構成であり、当然であるがメッシュではなくても、多数の穴があり、主たる流束を乱さない構成であればよい。
【0098】
図31の電極122や124は、たとえばステンレス等の放電に耐える材質で構成される。このとき、粉塵粒子の大部分は第一段目の対抗電極に付着される。このため、第一段目の対抗電極は内部に交換可能なフィルタを設ける等を行ってもよい。なお、煙等の細かな粒子はほとんどがこの第一段目の多連針状電極が発生するコロナ放電により帯電される。このときの極性は針状電極がマイナスの方が一般に集塵特性が良い。これは電極から電子が放出される方が、粒子から電子を奪うよりも容易であるからと推定される。
【0099】
ここで針電極の替わりに細線電極を使用してもよい。しかし、針電極は細線電極に比べて三次元的な不平等電界を構成しやすく、コロナ放電を発生しやすい。電気集塵器の効率を上げるという観点では、この第一段目のコロナ放電をいかに効率よく発生させるかが大きなポイントとなっている。
このため、電気集塵器の効率を上げるという視点では、細線電極ではなく、針状電極を使用することで、同じ電圧であれば、大きな効果を上げることができる。実際にコロナ放電が発生すると肉眼でも先端に発光現象を見ることができるが、針状電極では比較的低電圧で容易にこの発光現象を観測することができる。言い換えると、この発光現象がみられないと効率よく帯電させるコロナ放電が得られないともいえるので、針状電極の使用は効率アップには非常に合理的な構成となる。
【0100】
一方で、針状電極を使用した場合は、容易にコロナ放電を発生できるので、電極間に加える電圧を低くできるという利点がある。ただし、このときの電圧は帯電粒子を加速させて吸着させる効果を有す電界の値も決める。このため、当然であるが、どこまでも低くできるというわけではなく、ある程度の電圧は必要である。
【0101】
図32は、さらに清浄能力を向上させるための解決手段の例である。
ここでは、清浄能力を向上させる
図31に示した高効率集塵ユニット125を複数として、並列運転構成とすることで清浄能力を向上させている例である。
【0102】
図32は、
図31で示した高効率集塵ユニット125-1〜125−4と4個、強制流束構成用のファンを4個使用した例である。
【0103】
ファンと対をなす高効率集塵ユニットが中間部に2個、上下に2個、合計4個が搭載されている。一方で、清浄空気の排出は、上部排出ユニット144と下部排出ユニット145の二カ所に設けている。排出ユニットの活性炭フィルタ132は副次的に発生するオゾンの吸収用である。
【0104】
図32は、構成としては集塵ユニットを複数設け、並列運転する構成にすぎない。しかし、部屋の空気層の上部、中部、下部から吸気し、上下の位置の異なる二カ所の排気ユニットから廃棄されており、温度層をなす部屋の空気層をもれなく対象としていることが特徴である。当然であるが、4個の集塵ユニットにより、集塵能力も単純想定では4倍になり、さらに、この集塵ユニット自身も多層構成の
図31に示した高効率集塵ユニットであることから、集塵能力の飛躍的な向上を実現している。
【0105】
図32では、位置の異なる高さの部分から各々複数の吸気と排気を行っており、これにより、吸気と排気が混入することを避けている。すなわち、位置の異なる吸気口と排気口の構成により、部屋内の清浄空気と汚損空気との置換をすみやかに行う構成となっている点が特徴的である。
【0106】
図33は小型のタイプのもう一つの例である。ここでは吸入空気は吸入口フィルタ144を介して、3段構成の上側の高効率集塵ユニット145、下側の高効率集塵ユニット146の二つの集塵ユニットを経て、上下に分かれ、上部と下部の排出口から清浄空気が排出される例である。凹凸構造のダストトラップ157は、エアフィルタから不用意に落下した塵等をトラップするものである。また、ここでは安全シールドは図示していない。
図34は、
図33を簡略説明した図である。
【0107】
ここで、3個のすべてのファンを非常に回転を遅くして上部に向けて回転させて排出することで、排気口153は一時的に吸気口になる。吸気口内部の凹凸はこのときのダストトラップ構造である。このことにより、吸入空気は二つの高効率集塵ユニットで発生したオゾンをそのまま上部から排出することが可能となり、一時的なオゾン発生器として作用することができる。
【0108】
図33のファン151は通常は下向きに流束が発生するように内部に微小な与圧を発生させる程度に回転する。これが弁の作用をして、常時は活性炭フィルタ147を介してのみ排出されるので、内部で発生したオゾンは活性炭フィルタで除去されるものである。
【0109】
図35は、部屋の上部に長尺方向で設けた、簡易形集塵器である。壁や天井に沿って発生する自然な流束に逆らわないような構成であり、ファンなしで構成できる。もちろんファンがあってもよいのは当然である。流束にさからわない構造のため、このような簡略化した集塵器も構成できるものである。
【発明の効果】
【0110】
第一の課題「電極構造が作る空気の流束抵抗」の解決手段の効果を示す。
図1に示した従来の一段階方式の例は構造が単純であるが、集塵効率が低い傾向がある。この場合は、
図4に示したように、対抗電極は平面であり、帯電粒子のすべてが対抗電極側に到達せず、主たる空気の流束そのものが帯電粒子の吸着の障害となる構造となっている。
図5、
図6の例では対抗電極がメッシュ構造、つまり流束の通過構造の対抗電極であり、主たる流束を乱さずに流束が通過できる。この構造は流束の通過構造であればよく、
図7の例のように、流束を乱さない種々の機構や外形に合わせた構成を採用できる。
これにより、コロナ放電による帯電部の構造は、帯電と安定した粒子の吸着の両方が効率よく同時に可能となった。つまり、
図3のように従来では二段構成の帯電部と集塵部を分けた構成とする必要はなく、コンパクトにすることも可能となった。
いずれも一貫して空気の流れが乱されることなく透過構造を基本とすることが前提である。空気の流れを最初から最後まで透過構造を軸にして構成することによりコンパクト化と高効率を実現するものである。
【0111】
図31はこの構成の多連構造の例であるが、本図のように、主たる空気の流束はこの単純構造を通過するのみである。その過程で、流束の断面方向でもれなく配置された複数の帯電電極と、流束の進行方向に多段構成される同構造の積み重ねにより、対数的に集塵効果が向上する効果も得られている。ここではすべての流束が帯電電極を通過し、すべての流束が対抗電極を通過するため、流束に逆らわずに従来に比べて効率の良い集塵効果が得られるものである。
【0112】
ここでは、帯電電極としての針電極構造の利点が最大限に利用される。
図5に示す細線状電極は二次元的な不平等電界を利用してコロナ放電を起こすが、針電極構成では不平等電界は一次元増えて、三次元的な不平等電界であり、容易にコロナを発生することが可能である。細線電極は直径が0.1mm前後と細いため、容易に断線したり、線のゆるみが発生しないよう、常にテンションをかける構造も要求されるが、針状電極は
図31に示したように、多連の針状でステンレス板を加工したものでも充分に動作する。このため、加工も、取り付け構造も容易であり、さらにコロナ放電も起こしやすく、帯電効率も良い。
【0113】
図8は対抗電極を多層構造とした例であるが、これによりさらにメッシュの深く入り込んだ流束の対抗電極への接触確率が増え、結果的に集塵効率が増大する。このように流束に逆らわずに大きな乱流を発生させない構造、つまりは流束の通過構造が、集塵電極側との接触確率を結果的に増やすことになり集塵効率を高めることとなる。
【0114】
図9はさらに多層構造の対抗電極のメッシュの目を段階的に狭くした例である。流束の乱流は物理的境界面で大きく発生し、集塵機能を妨害するが、このように段階的に物理構造を細かくしていくことでこれらの影響をなくし、さらに細かな目のメッシュで集塵効率を上げることができる。特にこれらが有効なのはファン等を併用して圧力差をつくり、強制流束を構成する場合である。このように強制流束と、コロナ放電による帯電と、電界による帯電粒子の加速現象のバランスを構成することで集塵効率を上げる効果が得られる。
なお、ここでも主たる透過構造は維持される。
【0115】
図10は加えて、多層構造の対抗電極のメッシュ相互間に集塵機能として電界をかけた構造の例である。これにより、流束を乱さずに、多層メッシュ内でも電界を使用した集塵電極を構成でき、集塵効果をさらに上げる効果がある。
【0116】
第二の課題「火災や感電の安全性と不要ノイズの発生」の解決手段の効果を述べる。
図11の例は、主たる電気集塵部の全体を金属メッシュ等の安全シールドで被っている。この構成は内部で発生した炎、内部の危険電圧、内部のノイズをすべて封止する構造となる。これで電気集塵器による火災、感電、ノイズに対する安全性の改善に効果が得られた。一方で、この安全構造が得られることにより、可燃性のエアフィルタや、活性炭フィルタ等を外部に付属することが可能となり、消臭や二次フィルタによる集塵機能のさらなる向上も可能とする効果がある。
【0117】
図12は安全シールドをつけることにより、可燃性のエアフィルタを追加できたもう一つの例である。この例では、導電性のフィルタを多層使用し、電圧を加えることで帯電粒子をさらに効率よくとらえる効果がある。多層にしているのは流束とフィルタの接触確率を増大させるためである。
【0118】
図13は安全性に関わるもう一つの課題である構成要素の電位固定にかかわる改善効果を説明する例である。この例では電気集塵器の各電極の電位固定の基礎となる接地電位の確保のための商用電源の構成の例であり、単相三線式の家庭用配電線の構成例を示している。本願では、商用電源の一端が接地されていることから、商用電源を接地相当として利用することを提案しており、このための説明図であり、ここにあるように商用電源の接地側を接地電位として使用できる根拠を示している。
【0119】
図14はこのための効果的な手法を示している。数kVを扱う電気集塵器ではこの図の中点の50Vから保護抵抗を介した端子は充分に接地電位相当として使用可能である。たとえば、電気集塵器でどこにも電位固定されていない場合は、電気的にフロートであり、容易に帯電現象により大地間に高い電圧が発生し、集塵機能を不安定とする原因ともなり、また、誘導電圧が外部にも出やすくなり安全性にも支障が出る。このように商用電源にインピーダンスを介して電位固定することで、安定動作と不要な誘導電圧や帯電現象を防止するために有効となる。
【0120】
図15は商用電源から接地電位相当の電位を得る別の方法である。この例では接地電位検出装置で商用電源の接地側を検出してリレー切り替えにより、接地電位を供給することを可能としており、電気集塵器の接地電位相当の提供に有効である。
図16はもう一つの例で、全波整流回路が周波数に合わせて交互に等価的に接地電位となることを利用した接地電位供給回路であり、こちらも、負荷電流の範囲で接地電位が供給できるため、電気集塵器の電位固定としては有効となる。ただし、この方法は接地に向けた負荷電流が発生していることが条件となる。
【0121】
図16は、帯電電極の意図しない放電による火災や感電、故障等の障害を防止するための電流制限回路の例である。各々の電極や回路のブロック単位に電流制限抵抗を挿入することで危険な電流の放電や短絡が起きることを防止している。これにより、火災や感電や危険電圧の誘起の防止に有効となる。
【0122】
図22は、もう一つの放電防止対策の例である。この例では、帯電電極の対抗側の電極を絶縁した例である。これにより、帯電電極ではコロナ放電を発生することはできるが、放電電流は絶縁物があるために本質的に発生しない本質安全機能を持つことが可能となる。
【0123】
第三の課題「集塵電極に補足されずに外部に放出される帯電粒子」の効果を述べる。
図23、
図24の例は帯電粒子を中和イオン発生器で中和する例である。これにより不要に外部に放出される帯電粒子が中和される。
図25は、中和イオン発生器の基本構成である。針状電極からコロナ放電によりプラスとマイナスのイオンを発生させて、帯電粒子を中和させるものである。プラスとマイナスの両方を発生させるため、電源は交流となる。なお、この中和イオン発生器も図示しない安全シールドで被ってもよいのは当然である。これにより、安全に帯電粒子が中和されるため、不要な構造物に帯電付着して汚れをつくることが防止できるものである。
【0124】
第四の課題「意図しないオゾンの発生」の解決手段の効果について述べる。
図27は、オゾンガスを低減するための活性炭フィルタ81の設置例である。活性炭フィルタは一般に可燃性であるため、ここでも炎の進展を抑制する安全シールド18が置かれることが前提となる。
【0125】
図28は、オゾンガスを意図的に排出することもできる例である。脱臭目的で等で意図的にオゾンを排出する機能を付随した例である。
ここでは、回転数や回転方向を逆転できる機能制御ファンにバランス弁の役割を担わせ、必要なときはオゾンを排出することが可能となり、付随機能として有効に活用できる効果を得た。
【0126】
第五の課題「帯電した粒子を吸着する対抗電極の粉塵の蓄積」の効果を述べる。
図29に例を示す。この例では対抗電極やエアフィルタを振動モーターで振動させる方式である。これにより、表面に付着した粉塵落下させてダストトラップ集める構成となる。
図30は第二の例である。この例では、振動モーターの替わりに、交流電磁石と永久磁石を使用する。ここで、交流電磁石はたとえば長尺の鉄心等を有する広範囲の交番磁束Φを発生させる構成とする。これにより数mTの磁束を広範囲に発生させることができ、広範囲を一つの電磁石で振動させることが可能となり、粉塵を落下することが可能となる。
【0127】
第六の課題は「絶対的な送風量と吸入口と排出口の位置」の効果を述べる。
図31に例を示す。ここでは流束全体にわたり、もれなくコロナ放電を発生させることと、流束に逆らわない対抗電極構造と、対抗電極にもれなく付着させることと、そして、さらに多層構造による効率向上を行う構造を採用している。
ここでは、まず、帯電電極を通常の細線タイプから、効率の良い針状電極とし、さらに多数の格子配置とした多連針状電極を採用する。これにより、針の先端形状を鋭利にすることでより多数の粒子を帯電させることができる。さらにその構造を多段構成とすることで、通常の性能を超えた性能をもたせることができた。
ここで、多段構成にすることにより、一段構成では漏れてしまう粒子も対数的に捕捉できるようになる。たとえば一段での補足漏れが1/2あっても、4段構成なら、1/16となり、効率は、(1-1/16)×100=94%まで上昇する。
ここで、針状電極を使用することで、同じ電圧であれば、大きな効果を上げることができる。実際にコロナ放電が発生すると肉眼でも先端に発光現象を見ることができるが、針状電極では比較的低電圧で容易にこの発光現象を観測することができる。言い換えると、この発光現象がみられないと効率よく帯電させるコロナ放電が得られないともいえるので、針状電極の使用は効率アップには非常に合理的な構成となる。
さらに、針状電極を使用した場合は、容易にコロナ放電を発生できるので、電極間に加える電圧を低くできるという利点がある。
【0128】
図32は、第二の例である。ここでは、清浄能力を向上させる
図31に示した高効率集塵ユニットを複数として、並列運転構成とすることで清浄能力を向上させた。ここでは高効率集塵ユニット4個、強制流束構成用のファンを4個使用している。ファンと対をなす高効率集塵ユニットが中間部に2個、上下に2個、合計4個が搭載されている。一方で、清浄空気の排出は、上部排出ユニットと下部排出ユニットの二カ所に設けている。排出ユニットの活性炭フィルタは副次的に発生するオゾンの吸収用である。
これにより、部屋の空気層の上部、中部、下部から吸気し、上下の位置の異なる二カ所の排気ユニットから廃棄されており、温度層をなす部屋の空気層をもれなく対象としていることが特徴である。当然であるが、4個の集塵ユニットにより、集塵能力も単純想定では4倍になり、さらに、この集塵ユニット自身も多層構成の高効率集塵ユニットであることから、集塵能力の飛躍的な向上を実現する効果がある。
【0129】
図32では、また、位置の異なる高さの部分から各々複数の吸気と排気を行っており、これにより、吸気と排気が混入することを避けている。すなわち、位置の異なる吸気口と排気口の構成により、部屋内の清浄空気と汚損空気との置換をすみやかに行う構成となっている点が特徴的である。このため、部屋全体の空気清浄を速やかに行う効果が得られる。
【0130】
図33は小型のタイプの例である。ここでは吸入空気は吸入口フィルタ144を介して、3段構成の上側の高効率集塵ユニット145、下側の高効率集塵ユニット146の二つの集塵ユニットを経て、上下に分かれ、上部と下部の排出口から清浄空気が排出される例である。凹凸構造のダストトラップ157は、エアフィルタから不用意に落下した塵等をトラップするものである。また、ここでは安全シールドは図示していない。
図34は、
図33を簡略説明した図である。
この例の構成では、小型であるが、二つの高効率集塵ユニットを搭載し、上下の二カ所から排気されるため、集塵能力の高さを小型で実現できる効果がある例である。
【0131】
図33のファン151は弁の機能も持たせている。たとえば、オゾンを意図的に放出したい場合、3個すべてのファンの回転を遅くして上部に向けて回転させて排出する。このとき排気口149は一時的に吸気口になる。この一時的吸気口内部の凹凸は逆転した場合に内部に落下するほこり等のダストトラップ構造である。
これにより、吸入空気は二つの高効率集塵ユニットで発生したオゾンはファンの回転に主として導かれ、そのまま上部から流束155として排出し、途中のエアフィルタ144や、活性炭フィルタ147からはほとんど排出しない。この動作により、一時的なオゾン発生器として作用することができる効果がある。
【0132】
なお、通常は吸入空気152から上下の排気口150、149により排出される方向にファンは回転する。このため、必ず活性炭フィルタ147、153を経由するため、外部に放出されるオゾンは抑制される。
図33のファン151は通常は下向きにわずかな流束が発生するように回転を動作させている。これにより内部に微小な与圧を発生する。これが弁の作用をして、常時は活性炭フィルタ147を介してのみ排出されるので、内部で発生したオゾンは活性炭フィルタで除去されるものである。
【0133】
図35は、部屋の上部に長尺方向で設けた、簡易形集塵器である。壁や天井に沿って発生する自然な流束に逆らわないような構成であり、ファンなしで構成できる。もちろんファンがあってもよいのは当然である。流束にさからわない構造のため、このような簡略化した集塵器も構成できるものである。