【課題】 ノズルタッチブロック内に設けている導入孔からマニホールド内のホットランナに溶融樹脂を注入する際に、ノズルタッチブロックとホットランナとの間に溶融樹脂が漏出する隙間を生じさせないようにする。
【解決手段】 複数の樹脂導入孔13、14を設けているノズルタッチブロック10をマニホールド4上で摺動させてその一つの導入孔をマニホールド4内に設けている複数のホットランナ5、6における上記導入孔に対応したホットランナに連通させ、これらの導入孔とホットランナを通じてキャビティ3内に溶融樹脂を充填するように構成した成形品の色替えが可能な射出成形用金型において、上記導入孔13、14の下端開口部に上面を溶融樹脂の樹脂面に形成している環状パッキン材15、16を装着してこの樹脂面に流動する樹脂圧によってノズルタッチブロック10をマニホールド4に圧接させるようにしている。
固定金型上に配設され、内部に異なった色の溶融樹脂をそれぞれ流通させる互いに独立した複数のホットランナを設けているマニホールドと、このマニホールド上にガイド部材に沿って摺動自在に配設され、上記複数のホットランナにそれぞれ対応した複数の導入孔を設けているノズルタッチブロックとを備え、射出成形時にこのノズルタッチブロックを移動させて一つの導入孔を射出ユニットのノズル直下に臨ませた時に、この導入孔をマニホールド内の複数のホットランナにおけるこの導入孔に対応するホットランナに連通させ、上記射出ユニットのノズルからの溶融樹脂をこのホットランナを通じてキャビティ側に供給するように構成した射出成形用金型において、ノズルタッチブロックに設けられた上記導入孔の下端開口部に、中心部を樹脂流通孔部に形成している環状パッキン材をその内周部が導入孔の内周面から導入孔内に向かって突出するように装着し、その突出した内周部の上面を溶融樹脂の流動圧を受止する受止面に形成していることを特徴とする射出成形用金型。
ノズルタッチブロックに設けている導入孔の下部を上部よりも大径に形成している共に、導入孔の下端開口部に装着している環状パッキン材における樹脂流通孔部の径を導入孔の上記上部側の径と同一径に形成してあり、この環状パッキン材を、導入孔の下端開口部に形成した内径が環状パッキン材の外径に等しく、且つ、深さが環状パッキン材の厚みに等しい環状凹部に嵌着していることを特徴とする請求項1に記載の射出成形用金型。
【背景技術】
【0002】
一つの金型によって成形品の色替えが行える射出成形用金型としては、従来から、例えば特許文献1に記載しているように、マニホールドの本体であるホットランナブロック内に異なった色の溶融樹脂をそれぞれ流通させる互いに独立した複数のホットランナを設けてこれらのホットランナを通じてキャビティ内に溶融樹脂を供給するように構成しているマニホールドと、このマニホールド上に、互いに平行な一対のガイド部材によってその両側端部上面を摺動自在に支持され、且つ、上記複数のホットランナにそれぞれ対応させて複数の樹脂導入孔を所定間隔毎に穿設しているノズルタッチブロックとを備えた射出成形用金型が知られている。
【0003】
そして、ノズルタッチブロックを、このノズルタッチブロックに穿設している複数の樹脂導入孔における所望の樹脂導入孔が射出ユニットのノズル直下に達するまで移動させてその位置で停止させることにより、この樹脂投入孔をマニホールド内に設けている複数のホットランナにおける、この樹脂導入孔に対応して設けているホットランナの入口に連通させるように構成している。
【0004】
従って、例えば、マニホールド内に白色に着色された溶融樹脂を流通させるホットランナと黒色に着色された溶融樹脂を流通させるホットランナとを設けておく一方、ノズルタッチブロックに、これらのホットランナの入口にそれぞれ連通する白色に着色された溶融樹脂用の導入孔と黒色に着色された溶融樹脂用の導入孔とを設けておくと、ノズルタッチブロックの白色の溶融樹脂用導入孔が射出ユニットのノズル直下に達するまでノズルタッチブロックを移動させてその位置で停止させ、射出ユニットのノズルから白色に着色された溶融樹脂を上記導入孔に注入すれば、この白色の溶融樹脂を流通させる上記ホットランナを通じてキャビティ内にこの溶融樹脂を充填して白色成形品を製造することができる。
【0005】
また、上記ノズルタッチブロックを移動させて黒色に着色された溶融樹脂用導入孔が射出ユニットのノズル直下に位置するように切り替え、射出ユニットのノズルから黒色に着色された溶融樹脂を上記黒色の溶融樹脂用導入孔に注入すると、この導入孔に連通した上記黒色の溶融樹脂を流通させるホットランナを通じてキャビティ内にこの溶融樹脂を充填して黒色成形品を製造することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のように構成した色替えが可能な射出成形用金型においては、マニホールドとこのマニホールド上を摺動移動するノズルタッチブロックとの対向面間に隙間が生じて、射出ユニットのノズルからノズルタッチブロックの導入孔に注入された溶融樹脂がこの隙間を通じて漏れ出す虞れがある。
【0008】
このため、上記特許文献1に記載の射出成形用金型においては、マニホールド上を摺動するノズルタッチブロックをマニホールドに強制的に押し付ける押圧手段を設けている。この押圧手段は、ノズルタッチブロックの両側端部上面と、この両側端部上面を押さえるようにしてノズルタッチブロックを摺動移動可能に支持した上記ガイド部材の下面とに、高さが極めて低い突部をノズルタッチブロックの移動方向に一定間隔毎に設けてなり、ガイド部材に沿ってノズルタッチブロックを移動させてその一つの導入孔が射出ユニットのノズル直下に位置した際に、上記ガイド部材の下面に設けている突部にノズルタッチブロックの両側端部上面に設けている突部を乗り上げさせることによりノズルタッチブロックをマニホールドに押し付けて隙間を生じさせないように構成している。
【0009】
このように構成した押圧手段によれば、射出成形時において、射出ユニットのノズルから押し出される溶融樹脂をノズルタッチブロックの導入孔からマニホールド内のホットランナを通じてキャビティに充填する際に、ガイド部材の下面とノズルタッチブロックの両側端部上面とに突設している突部の重なりによってノズルタッチブロックをマニホールド上に強制的に押し付けることができるが、突部同士を重ね合わせるには、ノズルタッチブロックをマニホールド上に沿って水平移動させて一方の突部上に他方の突部を乗り上げさせなければならず、その際に、突部同士の衝接による抵抗力が生じてノズルタッチブロックの円滑な作動に支障をきたす虞れあると共に故障の発生が生じ易くなり、さらに、マニホールドに設けているホットランナの入口に対するノズルタッチブロックに設けている導入孔の位置合わせが正確に行えなくなる虞れが生じるといった問題点がある。
【0010】
また、突部同士の繰り返し行われる重合によって突部が磨滅し、突部同士が重なり合っていない状態においては勿論のこと、重なりあった状態においてもマニホールドとノズルタッチブロックとの間に隙間が生じ易くなって溶融樹脂の漏れを防止できなくなるといった問題点が発生する。
【0011】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、ノズルタッチブロックをマニホールドの平坦な面に接して常に円滑に且つ正確に摺動移動させることができると共に、射出成形時において溶融樹脂がノズルタッチブロックの導入孔に注入される時にのみ、ノズルタッチブロックをマニホールド上に積極的に押し付けてノズルタッチブロックとマニホールドとの間に隙間を生じさせることなく射出成形が行えるようにした射出成形用金型を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明の射出成形用金型は、請求項1に記載したように、固定金型上に配設され、内部に異なった色の溶融樹脂をそれぞれ流通させる互いに独立した複数のホットランナを設けているマニホールドと、このマニホールド上にガイド部材に沿って摺動自在に配設され、上記複数のホットランナにそれぞれ対応した複数の導入孔を設けているノズルタッチブロックとを備え、射出成形時にこのノズルタッチブロックを移動させて一つの導入孔を射出ユニットのノズル直下に臨ませた時に、この導入孔をマニホールド内の複数のホットランナにおけるこの導入孔に対応するホットランナに連通させ、上記射出ユニットのノズルからの溶融樹脂をこのホットランナを通じてキャビティ側に供給するように構成した射出成形用金型において、ノズルタッチブロックに設けられた上記導入孔の下端開口部に、中心部を樹脂流通孔部に形成している環状パッキン材をその内周部が導入孔の内周面から導入孔内に向かって突出するように装着し、その突出した内周部の上面を溶融樹脂の流動圧を受止する受止面に形成していることを特徴とする。
【0013】
このように構成した射出成形用金型において、請求項2に係る発明は、ノズルタッチブロックに設けている導入孔の下部を上部よりも大径に形成している共に、導入孔の下端開口部に装着している環状パッキン材における樹脂流通孔部の径を導入孔の上記上部側の径と同一径に形成してあり、この環状パッキン材を、導入孔の下端開口部に形成した内径が環状パッキン材の外径に等しく、且つ、深さが環状パッキン材の厚みに等しい環状凹部に嵌着していることを特徴とする。
【0014】
また、請求項3に係る発明は、上記環状パッキン材はノズルタッチブロックよりも熱膨脹率の大きい銅製であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明によれば、複数の溶融樹脂導入孔を設けているノズルタッチブロックを段差などを設けることなく全面に亘って平坦な平滑面に形成されているマニホールド上をガイド部材に沿って所望の導入孔が射出ユニットのノズル直下に達するまで摺動移動可能に形成しているので、ノズルタッチブロックの移動を円滑に行わせることができると共に、成形品の色替え時においては所望の導入孔を射出ユニットのノズル直下に正確に位置させてこの導入孔に対応するマニホールド内の一つのホットランナを通じて射出成形を行うことができる。
【0016】
さらに、ノズルタッチブロックに設けられた上記導入孔の下端開口部に、内周部を導入孔の内周面から導入孔内に向かって突出させてその上面を溶融樹脂の流動圧を受止する受止面に形成し、中央部を樹脂通流孔部に形成している環状パッキン材を装着しているので、上記のように導入孔を射出ユニットのノズル直下に位置させた状態にしてこのノズルから所望の色に着色された溶融樹脂を導入孔に射出、注入すると、溶融樹脂が導入孔を流通する際に、その一部が環状パッキン材の上面に流突してその流動圧がこの環状パッキン材を介してノズルタッチブロックに伝達され、この流動圧によってノズルタッチブロックをマニホールド側に押圧してその下面をマニホールドの上面に押し付けて圧接させ、ノズルタッチブロックとマニホールドとの間に隙間を生じさせるとなく溶融樹脂をノズルタッチブロックの導入孔からこの導入孔に対応するマニホールド内のホットランナを通じてキャビティに充填することができる。
【0017】
請求項2に係る発明によれば、上記ノズルタッチブロックに設けている導入孔の下部を上部よりも大径に形成している共に、導入孔の下端開口部に設けている環状パッキン材における樹脂流通孔部の径を導入孔の上記上部側の径と同一径に形成しているので、環状パッキン材の上面を導入孔の下端部において導入孔内に突出させた状態で導入孔の上部側に向け、導入孔の下部内を流動する溶融樹脂の流動圧を確実にその上面で受止してノズルタッチブロックをマニホールドの上面に圧接させることができ、また、上記環状パッキン材は、導入孔の下端開口部に形成した内径がこの環状パッキン材の外径に等しく、且つ、深さが環状パッキン材の厚みに等しい環状凹部に嵌着しているので、この環状パッキン材を、溶融樹脂の射出時においてその下面がマニホールドの上面に圧接してシール効果を奏するパッキンとしての機能を発揮させることができる。
【0018】
さらに、請求項3に係る発明によれば、上記環状パッキン材はノズルタッチブロックよりも熱膨脹率の大きい銅製であるので、射出成形時にノズルタッチブロックの導入孔内を流動する溶融樹脂の高熱によって環状パッキン材が熱膨脹し、この環状パッキン材の上面に作用する溶融樹脂の流動圧と共にその膨脹圧によってこの環状パッキン材の下面をマニホールドの上面に一層強固に押し付けることができ、ノズルタッチブロックとマニホールドとの間に溶融樹脂が漏れる虞れのある隙間の発生を確実に防止することができ、色違いの成形品の射出成形用金型として長期の使用に供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の具体的な実施の形態を図面について説明すると、
図1において、射出成形用金型は、固定金型1と移動金型2とを上下に対向させて配設し、これらの金型1、2の対向面間で成形品を得るためのキャビティ3を形成するように構成してあり、固定金型1の上面にはマニホールド4が配設、固定されている。
【0021】
マニホールド4は、内部に第1ホットランナ5と第2ホットランナ6との二つのホットランナを上下方向と前後方向(マニホールド4の幅方向)とに一定間隔を存して互いに独立した状態で水平方向に平行に設けているホットランナブロック4aと、このホットランナブロック4aの上面に一体に固着し、上面が全面に亘って平滑な平坦面に形成されている平面長方形状の一定厚みを有する固定板4bとからなる。
【0022】
マニホールド4内に設けられた上記第1、第2ホットランナ5、6の入口5a、6aは、固定板4bの長さ方向の中央部において、
図3に示すように、この固定板4bの幅方向に小間隔を存してその上端開口部を固定板4bの上面から上方に向かってそれぞれ開口させてあり、下端が第1、第2ホットランナ5、6の適所にそれぞれ連通するように、固定板4bを貫通してホットランナブロック4a内を第1、第2ホットランナ5、6に達するまで穿設した孔によって形成されている。
【0023】
さらに、上記第1、第2ホットランナ5、6の両端部は固定金型1の端部にこの端部を上下方向に貫通するようにして設けられている第1、第2ゲート7、8を通じてそれぞれ上記キャビティ3に連通している。
【0024】
上記マニホールド4における固定板4bの長辺側である両端部上に、垂直部と水平部とからなる断面L字状のガイド部材9、9を固定板4bの幅方向に一定間隔を存して互いに平行に配設してその垂直部の下端を固定板4bの上面に固着してあり、これらのガイド部材9、9の垂直部の平滑な内面と水平部の平滑な下面とによって囲まれた空間部内にノズルタッチブロック10の一定厚みを有する両端部10b 、10b を摺動自在に嵌合させ、ノズルタッチブロック10を、その平滑な下面を固定板4bの平滑な上面に摺接させながらガイド部材9、9の長さ方向(前後方向)に往復移動可能に構成している。
【0025】
ノズルタッチブロック10は平面矩形状に形成された一定厚みの台板10a の両端部10b 、10b を上述したようにガイド部材9、9に摺動自在に支持させていると共にその台板10a
の上面における幅方向に中央部に長さ方向、即ち、移動方向に一定の間隔を存して第1スプルーブッシュ11と第2スプルーブッシュ12とを突設している。
【0026】
第1スプルーブッシュ11には、
図3に示すように、その内部に、上端開口部をこの第1スプルーブッシュ11の上面中心部から上方に開口させていると共にこの上端開口部から下方に向かってノズルタッチブロック10の幅方向における一側方に傾斜させ、ノズルタッチブロック10をこの第1スプルーブッシュ11が成形ユニットのノズル20の直下にまで移動してその位置で停止した際に下端開口部が上記マニホールド4内に設けている第1ホットランナ5の入口5aに連通する第1導入孔13を形成している。
【0027】
同様に、上記第2スプルーブッシュ12には、その内部に、
図3において点線で示すように、上端開口部をこの第2スプルーブッシュ11の上面中心部から上方に開口させていると共にこの上端開口部から下方に向かって上記第1導入孔13とは反対方向であるノズルタッチブロック10の幅方向における他側方に傾斜させ、ノズルタッチブロック10をこの第2スプルーブッシュ12が成形ユニットのノズル20の直下にまで移動してその位置で停止した際に下端開口部が上記マニホールド4内に設けている第2ホットランナ6の入口6aに連通する第2導入孔14を形成している。
【0028】
上記第1、第2導入孔13、14は、その上部を第1、第2ホットランナ5、6やその入口5a、6aと同一径に形成していると共に、下部13a 、14a の径を上部よりも大径に形成してあり、その下部13a 、14a の下端開口部に
図4に示すように、その内周部を第1、第2導入孔13、14の内周面からこれらの導入孔13、14内に向かって突出させてその上面を溶融樹脂の流動圧を受止する受止面15a 、16a に形成し、中心部を上部と同一径に形成されていて上記第1、第ホットランナ5、6の入口5a、5aにそれぞれ連通した樹脂通流孔部15b 、16b に形成している第1、第2環状パッキン材15、16をそれぞれ装着している。
【0029】
具体的には、第1、第2スプルーブッシュ11、12にそれぞれ設けている第1、第2導入孔13、14の下端開口部に内径が上記第1、第2環状パッキン材15、16の部材の外径に等しく、ノズルタッチブロック10の台板10a の下面からの深さが第1、第2環状パッキン材15、16の厚みに等しい環状凹部17、18を形成し、これらの環状凹部17、18に第1 、第2 環状パッキン材15、16をそれぞれ嵌着させてこれらの第1 、第2環状パッキン材15、16の内周部を第1、第2スプルーブッシュ11、12の第1、第2導入孔13、14の下端部内周面から内方に向かって突出させ、その内周部上面を上記受止面15a 、16a に形成していると共に下面をノズルタッチブロック10の台板10a の下面に面一状に連続させている。これらの第1、第2環状パッキン材15、16は、ノズルタッチブロック10と同一の金属材から形成しておいてもよいが、ノズルタッチブロック10よりも熱膨脹率が大きい銅製であることが好ましい。
【0030】
上記マニホールド4における固定板4a上、或いは、固定金型1上には、そのピンロッド19a を上記ノズルタッチブロック10の長さ方向の端部中央に連結してこのピストンロッド19a の伸縮によってノズルタッチブロック10をガイド部材9、9に沿って前後方向に往復動させる油圧シリンダ19を配設している。なお、図示していないが、油圧シリンダ19の作動によってノズルタッチブロック10が前後方向に移動し、その第1スプルーブッシュ11の第1導入孔13の上端開口部が成形ユニットのノズル20の直下に達した時、及び、その第2スプルーブッシュ12の第2導入口14の上端開口部が成形ユニットのノズル20の直下に達した時に、その位置を検出して油圧シリンダ19の作動を停止させる位置検知センサーを設けている。
【0031】
このように構成した射出成形用金型を使用して異なる色の成形品、例えば、白色の成形品と黒色の成形品を成形するには、ノズルタッチブロック10に設けている上記第1、第2スプルーブッシュ11、12のいずれか一方、例えば、第1スプルーブッシュ11側を黒色成形品用とし、第2スプルーブッシュ12側を白色成形品用に設定する。
【0032】
そして、黒色成形品を成形する場合には油圧シリンダ19を作動させてノズルタッチブロック10を両側ガイド部材9、9に沿って移動させ、その上面に突設している第1スプルーブッシュ11の第1導入孔13を射出ユニットのノズル20の直下にまで位置させた時に、その位置を位置検知センサーによって検出させて油圧シリンダ19の作動を停止させる。この状態にすると、第1スプルーブッシュ11の第1導入孔13の下端がマニホールド4内に設けている第1ホットランナ5の入口5aの上端開口部に連通する。
【0033】
この状態にして成形ユニットのノズル20を第1スプルーブッシュ11の第1導入孔13の上端開口部に当てがい、黒色に着色された溶融樹脂を第1導入孔13に注入すると、この溶融樹脂は、第1導入孔13から第1ホットランナ5の入口5aを通じて第1ホットランナ5内に流入し、さらに、この第1ホットランナ5から第1ゲート7を通じてキャビティ3内に充填され、黒色の成形品を成形することができる。
【0034】
一方、白色成形品を成形する場合には油圧シリンダ19を作動させてノズルタッチブロック10の上面に突設している第2スプルーブッシュ12の第2導入孔14が射出ユニットのノズル20の直下に達するまで位置までノズルタッチブロック10を移動させ、その位置に達したことを位置検知センサーによって検出させて油圧シリンダ19の作動を停止させる。この状態にすると、第2スプルーブッシュ12の第2導入孔14の下端がマニホールド4内に設けている第2ホットランナ6の入口6aの上端開口部に連通する。
【0035】
この状態にして成形ユニットのノズル20を第2スプルーブッシュ12の第2導入孔14の上端開口部に当てがい、白色に着色された溶融樹脂を第2導入孔14に注入すると、この溶融樹脂は、第2導入孔14から第2ホットランナ6の入口6aを通じて第2ホットランナ6内に流入し、さらに、この第1ホットランナ6から第2ゲート8を通じてキャビティ3内に充填され、白色の成形品を成形することができる。
【0036】
上記黒色或いは白色の成形品を射出成形する際に、成形ユニットのノズル20から第1スプルーブッシュ11の第1導入孔13或いは第2スプルーブッシュ12の第2導入孔14に上記のようにして溶融樹脂を一定の射出圧でもって注入すると、注入された溶融樹脂が第1導入孔13或いは第2導入孔14内を流動しながら通過する際に、
図4に示すように、これらの導入孔13、14の下端開口部にそれぞれ装着されてその内周部を導入孔13、14内に突出させている第1、第2環状パッキン材15、16の受止面(上面)15a に流突し、この流動圧によってノズルタッチブロック10がマニホールド4側に押圧されてその平滑な下面をマニホールド4の平滑な上面に押し付け、ノズルタッチブロック10とマニホールド4との間に隙間が生じるのを確実に阻止しながら溶融樹脂を第1、第2環状パッキン材15、16の中心部に開口している樹脂流通孔15a 、16a を通じて第1、第2ホットランナ5、6に導入することができる。
【0037】
さらに、上記第1、第2環状パッキン材15、16をノズルタッチブロック10よりも熱膨脹率の大きい銅から作製しているので、射出成形時に溶融樹脂がノズルタッチブロック10の第1導入孔13内或いは第2導入孔14内を流動する際に、この溶融樹脂の高熱によって第1、第2環状パッキン材15、16が熱膨脹し、該環状パッキン材15、16の上面に作用する溶融樹脂の圧力と共にその膨脹圧によって、マニホールド4側に面して全面的に露出させている下面をマニホールド4の上面に全面的に一層強固に押し付けることができ、ノズルタッチブロック10とマニホールド4との間に溶融樹脂が漏れる虞れのある隙間の発生を確実に防止することができる。
【0038】
なお、上記実施例においては、マニホールド4に設けている第1、第2ホットランナ5、6を固定金型1に設けている第1、第2ゲート7、8に直接、連通させて、溶融樹脂を第1、第2ホットランナ5、6から直接、第1、第2ゲート7、8を通じてギャビティ3内に充填するように構成しているが、第1、第2ホットランナ5、6と第1、第2ゲート7、8との間にこれらのゲート7、8を開閉するバルブ装置を配設しておいてもよい。
【0039】
図5はこのバルブ装置を設けた射出成形用金型を示すものであって、マニホールド4内に設けている上記第1、第2ホットランナ5、6の固定金型1の上面に向かって開口している出口端の下方に対応して固定金型1内の複数箇所にバルブ本体21を装着している。
【0040】
このバルブ本体21内には、上端がそれぞれ上記第1、第2ホットランナ5、6の出口に連通させている一定径を有する第1、第2樹脂通路22、23を垂直に貫通させた状態で並設してあり、これらの第1、第2樹脂通路22、23の下端にキャビティ3に連通する第1、第2ゲート7a、8aをそれぞれ設けている。なお、これらの第1、第2ゲート7a、8aは、その下端を直接、キャビティ3内に連通させておいてもよいが、図に示すように、その下端を一つの共通する通路24に連通させて、この共通通路24の下端をキャビティ3内に連通させておいてもよい。バルブ本体21はヒートバンド(図示せず)によって加熱するように構成されてあり、バルブ本体21の上端部は断熱部材によってホットランナブロック4aの熱が固定金型1に伝達するのを遮断されている。
【0041】
上記第1、第2樹脂通路22、23の中心には、その下端によって上記第1、第2ゲート7a、8aをそれぞれ開閉する第1、第2バルブピン25、26が上下方向に進退移動可能に挿入されてあり、これらの第1、第2バルブピン25、26の上端部をマニホールド4に上下方向に摺動自在に貫通させてマニホールド4の上面からその上端部を突出させ、この突出先端部をマニホールド4上に並列状態に設置している第1、第2油圧シリンダ27、28のロッドにそれぞれ連結してあり、これらの第1、第2油圧シリンダ27、28の作動によって第1、第2バルブピン25、26をそれぞれ上下動させてその下端で第1、第2ゲート7a、8aを開閉するように構成している。その他の構成については上記実施例と同じであるので、同一部分に同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0042】
このように構成した射出成形用金型を使用して異なった色の成形品、例えば、白色の成形品と黒色の成形品を成形するには、上記実施例で述べたように、ノズルタッチブロック10に設けている上記第1、第2スプルーブッシュ11、12のいずれか一方、例えば、第1スプルーブッシュ11側を黒色成形品用とし、第2スプルーブッシュ12側を白色成形品用に設定する。
【0043】
そして、黒色成形品を成形する場合には、上記バルブ装置において、第1油圧シリンダ27を作動させて第1バルブピン25を上動させることにより第1ホットランナ5に連通している第1樹脂通路22のゲート7aを開放する一方、第2油圧シリンダ28を作動させることなく、第2ホットランナ6に連通している第2樹脂通路23のゲート8aを閉止した状態に保持しておく。
【0044】
さらに、ノズルタッチブロック10を油圧シリンダ19の作動によって移動させてその上面に突設している第1スプルーブッシュ11の第1導入孔13を射出ユニットのノズル20の直下にまで位置させ、第1スプルーブッシュ11の導入孔13の下端をマニホールド4内に設けている第1ホットランナ5の入口5aの上端開口部に連通させた状態にする。
【0045】
この状態にして成形ユニットのノズル20から黒色に着色された溶融樹脂を上記第1導入孔13に注入すると、この溶融樹脂は、第1導入孔13から第1ホットランナ5の入口5aを通じて第1ホットランナ5内に流入する。この際、第1導入孔13を流通する溶融樹脂が、導入孔13の下端開口部に装着している上記第1環状パッキン材15の投入孔13内に露出している受止面(上面)15a に流突し、この流動圧によってノズルタッチブロック10がマニホールド4側に押圧されてその平滑な下面をマニホールド4の平滑な上面に押し付け、ノズルタッチブロック10とマニホールド4との間に隙間が生じるのを確実に阻止しながら溶融樹脂を第1環状パッキン材15の中心に設けている樹脂流通孔15a を通じて第1ホットランナ5に導入することができる。
【0046】
さらに、第1ホットランナ5内に導入された溶融樹脂は、この第1ホットランナ5の出口からバルブ本体21内の第1樹脂通路22内に導入されてこの第1樹脂通路22の下端ゲート7aから共通通路24を通じてキャビティ3内に充填され、黒色の成形品が射出成形される。
【0047】
また、白色の成形品を得る場合には、上記バルブ装置において、第1油圧シリンダ27を作動させて第1バルブピン25を下動させることにより第1ホットランナ5に連通している第1樹脂通路22のゲート7aを閉止した状態にする一方、第2油圧シリンダ28を作動させて第2バルブピン25を上動させることにより、第2ホットランナ6に連通している第2樹脂通路23のゲート8aを開放させると共に、ノズルタッチブロック10を移動させてその上面に突設している第2スプルーブッシュ12の第2導入孔14を射出ユニットのノズル20の直下にまで位置させ、第2スプルーブッシュ12の第2導入孔14の下端をマニホールド4内に設けている第2ホットランナ6の入口6aの上端開口部に連通させた状態にする。
【0048】
この状態にして成形ユニットのノズル20から白色に着色された溶融樹脂を上記第2導入孔14に注入すると、この溶融樹脂は、第2導入孔14から第2ホットランナ6の入口6aを通じて第2ホットランナ6内に流入する。この際、第2導入孔14を流通する溶融樹脂が、導入孔14の下端開口部に装着している上記第2環状パッキン材16の受止面(上面)16a に流突し、この圧力によってノズルタッチブロック10がマニホールド4側に押圧されてその平滑な下面をマニホールド4の平滑な上面に押し付け、ノズルタッチブロック10とマニホールド4との間に隙間が生じるのを確実に阻止しながら溶融樹脂を第2環状パッキン材16の中心に設けている樹脂流通孔16a を通じて第2ホットランナ6に導入することができる。
【0049】
さらに、第2ホットランナ6内に導入された溶融樹脂は、この第2ホットランナ6の出口からバルブ本体21内の第2樹脂通路23内に導入されてこの第2樹脂通路23の下端ゲート8aから共通通路24を通じてキャビティ3内に充填され、白色の成形品が射出成形される。
【0050】
なお、以上の実施例においては、いずれも、白色と黒色等の二つの異色の成形品を射出成形することができる射出成形用金型について説明したが、ノズルタッチブロック10に三つ以上の導入孔を設けると共にマニホールドにこれらの導入孔にそれぞれ連通する複数のホットランナを設けて、3つ以上の色の異なる成形品を製造できる射出成形用金型に構成しておいてもよい。