【解決手段】 本方法は、ガラス板Gの幅方向Xにおける一端部Ga側の一部のみをクランプ部材3aによりクランプする。そして、ガラス板Gの幅方向Xにおけるガラス板Gの中途部Gcを、加熱装置4により、ガラス板Gの長さ方向Yに沿って直線状に加熱して軟化させ、ガラス板Gにおける中途部Gcの軟化に応じてガラス板Gを屈曲させる。
前記曲げ加工工程において、前記ガラス板における前記中途部の軟化に応じて前記ガラス板における前記他端部側の前記一部をクランプ部材によりクランプし、前記クランプ部材を移動させることで前記ガラス板を屈曲させることを特徴とする、請求項1又は2に記載のガラス板の曲げ加工方法。
前記ガラス板における前記一端部側の前記一部に対する前記クランプ部材のクランプ位置、又は前記ガラス板における前記他端部側の前記一部に対する前記クランプ部材のクランプ位置は、前記ガラス板の前記長さ方向における中央部であることを特徴とする、請求項3に記載のガラス板の曲げ加工方法。
前記支持部材は、前記ガラス板における前記他端部側の前記一部の下方位置に設けられることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載のガラス板の曲げ加工方法。
前記加熱装置は、前記ガラス板の上方位置に設けられる第1ラインバーナーと、前記ガラス板の下方位置に設けられる第2ラインバーナーとを含むことを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載のガラス板の曲げ加工方法。
【背景技術】
【0002】
ガラスは、組成の設計によって様々な特性を付与できることから、耐熱性、機械的強度、電気的特性などの特長を活用して、建築用資材、家庭用品、医薬用品その他の種々の分野に使用されている。例えば、建築用資材として用いる場合には、資材に求められる形状に応じてガラス板に曲げ加工が施される。
【0003】
ガラス板に曲げ加工を施す装置として、特許文献1には、その一端部を挟持しながらガラス板を連続的に送るガラス送り機構と、このガラス送り機構から送られてくるガラス板の全幅(幅方向の全長)に渡って均一に加熱するラインバーナーと、このラインバーナーとガラス送り機構間に設けられていてこのガラス板を支持する支持部材と、このガラス板の他端部を挟持するチャック機構と、このチャック機構を回動させる回動機構とを有するものが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、ガラス板を支持体に支持させた状態で、加熱室内においてこのガラス板全体を均一に加熱した後に、ガスバーナーによりガラス板を局部的に加熱して、ガラス板に曲げ加工を施す装置が開示されている。
【0005】
特許文献1に係る曲げ加工装置では、幅広のガラス板を送り機構により所定の方向に移動させつつ、その全幅にわたってラインバーナーで加熱することにより、ガラス板全体を加熱している。また、特許文献2に係る曲げ加工装置では、加熱室内においてガラス板を全体的に加熱した後に、ガスバーナーによる局部加熱を行って曲げ加工を施している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の曲げ加工装置は、ガラス板全体を加熱している為、熱歪による変形を生じることなく、ガラス板の両端部をクランプした状態であっても破損を生じることなく曲げ加工を行うことができる。しかしながら、この曲げ加工装置は、ガラス板を小さな曲率(大きな曲率半径)で全体的に湾曲させるためのものであり、ガラス板の一部を局所的に屈曲させるような加工を行うことができない。
【0008】
特許文献2に記載の曲げ加工装置では、ガラス板を局部的に加熱して曲げ加工を行うが、事前に加熱室内においてガラス板全体を加熱する必要があるため、その装置構成が大型化し、加工時間も長期化してしまう。
【0009】
装置構成を大型化させることなくガラス板の曲げ加工を迅速に行うためには、ガラス板の全体を加熱せずに、局部的に加熱するだけで曲げ加工を行うことが望ましい。
【0010】
しかしながら、局部的な加熱を行うと、ガラス板には、加熱される部分と加熱されない部分とが存在するため、これに因る熱的な歪(熱歪)が生じ、ガラス板が大きく反り返るように変形しようとする。曲げ加工を精度良く行うためには、ガラス板をクランプ(保持)して加熱を行う必要があるが、ガラス板を例えば両端部や全面をクランプしてしまうと、この熱歪に因るガラス板の変形が拘束されてしまい、これによってガラス板が破損してしまうという問題があった。
【0011】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、局部的な加熱により曲げ加工を施す場合において、加熱による反り等の変形が生じても、ガラス板を好適に曲げることが可能な曲げ加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記の課題を解決するためのものであり、所定長さ及び所定幅を有するガラス板の中途部を加熱により軟化させて屈曲させるガラス板の曲げ加工方法であって、前記ガラス板の幅方向における一端部側の一部のみをクランプ部材によりクランプさせる設置工程と、前記ガラス板の前記中途部を、加熱装置により、前記ガラス板の長さ方向に沿って直線状に加熱して軟化させる加熱工程と、前記ガラス板の前記中途部の軟化に応じて前記ガラス板を屈曲させる曲げ加工工程と、を備えることを特徴とする。
【0013】
かかる構成によれば、加熱工程においてガラス板の中途部を局部的に、すなわち直線状に加熱する場合、ガラス板には、加熱される中途部と、加熱されない中途部以外の部分との間で温度差が生じ、この温度差による熱歪が発生する。これにより、ガラス板は反り返るように変形しようとするが、本方法では、ガラス板における一端部側の一部のみをクランプ部材によりクランプしていることから、ガラス板の全面をクランプする場合と比較して、ガラス板の変形を許容し易い。以上のように、ガラス板の変形を許容しつつ曲げ加工工程を実行すれば、加熱装置の局部的な加熱によってガラス板に反り等の変形が生じる場合であってもガラス板の破損を防止でき、ガラス板の中途部の軟化に応じて好適に屈曲させることができる。
【0014】
また、本方法では、前記設置工程において、前記ガラス板の前記幅方向における他端部側の一部の下面を支持部材により支持させ、前記曲げ加工工程において、前記ガラス板における前記中途部の加熱に応じた前記ガラス板の変形を許容すべく、前記支持部材による前記ガラス板の支持を維持したままで、前記ガラス板の前記変形に追従するように前記支持部材を移動させることが望ましい。
【0015】
上記のように、加熱工程においてガラス板の中途部を直線状に加熱する場合、ガラス板には、加熱される中途部と、加熱されない中途部以外の部分との間で熱歪が発生する。これにより、ガラス板は反り返るように変形しようとするが、本方法では、ガラス板の他端部側の一部が支持部材によって支持されているのみであり、クランプされていないため、反り等の変形が制限されない。これによって、ガラス板を、破損や不良を生じさせることなく、容易かつ確実に変形させることができる。
【0016】
また、本方法では、前記曲げ加工工程において、前記ガラス板における前記中途部の軟化に応じて前記ガラス板における前記他端部側の前記一部をクランプ部材によりクランプし、前記クランプ部材を移動させることで前記ガラス板を屈曲させることが望ましい。
【0017】
すなわち、本方法では、ガラス板における中途部の軟化が十分ではない加熱初期において、ガラス板の変形を許容するようにその下面を支持部材により支持し、ガラス板の中途部が屈曲可能な状態にまで軟化すると、ガラス板における他端部側の一部をクランプ部材によりクランプし、このクランプ部材を移動させることによってガラス板を大きく屈曲させることができる。
【0018】
また、前記ガラス板における前記一端部側の前記一部に対する前記クランプ部材のクランプ位置、又は前記ガラス板における前記他端部側の前記一部に対する前記クランプ部材のクランプ位置は、前記ガラス板の前記長さ方向における中央部であることが望ましい。
【0019】
これによれば、ガラス板の全面をクランプするのではなく、ガラス板の長さ方向における中央部をクランプすることにより、長さ方向におけるガラス板の変形をバランス良く許容しつつ、ガラス板を位置決めして精度の良い曲げ加工を行うことが可能になる。
【0020】
前記支持部材は、前記ガラス板における前記他端部側の前記一部の下方位置に設けられることが望ましい。また、前記支持部材は、前記ガラス板の前記下面を所定の押圧力にて支持することが望ましい。
【0021】
加熱装置としては、前記ガラス板の上方位置に設けられる第1ラインバーナーと、前記ガラス板の下方位置に設けられる第2ラインバーナーとが使用され得る。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、局部的な加熱により曲げ加工を施す場合において、加熱による反り等の変形が生じても、ガラス板を好適に曲げることが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
図1乃至
図7は本発明に係るガラス板の曲げ加工方法及びこの方法を実施する曲げ加工装置の一実施形態を示す。
【0025】
図1に示すように、曲げ加工装置1は、ガラス板Gを支持する支持装置2と、支持装置2と共にガラス板Gをクランプするクランプ装置3と、ガラス板Gを加熱する加熱装置4とを備える。
【0026】
支持装置2は、ガラス板Gの一端部Ga側の一部を支持する第1支持装置2aと、ガラス板Gの他端部Gb側の一部を支持する第2支持装置2bとを備える。
【0027】
第1支持装置2aは、
図1及び
図2に示すように、ガラス板Gの一端部Ga側の一部を支持する支持部材(以下「第1支持部材」という)5aと、この第1支持部材5aと一体に構成される枠体(以下「第1枠体」という)6aとを有する。第1支持部材5aは、第1枠体6aの上面に固定されている。第1支持部材5aは、ガラス板Gの一端部Ga側の一部を支持する支持面7aを有する。この支持面7aには、ガラス板Gの一端部Gaの位置を規制する突起部8aが設けられている。第1枠体6aは、第1支持部材5aの下面を支持するとともに、この第1支持部材5aを、移動しないように保持している。なお、
図2は、平面視におけるガラス板G、クランプ装置3及び第1支持部材5aの位置関係を示し、他の構成要素は図示を省略している。
【0028】
第2支持装置2bは、ガラス板Gの他端部Gb側の一部を支持する支持部材(以下「第2支持部材」という)5bと、この第2支持部材5bよりも先にガラス板Gに接触する支持部材(以下「第3支持部材」)5cと、これら第2支持部材5b及び第3支持部材5cと一体に構成される枠体(以下「第2枠体」という)6bとを備える。
【0029】
第2支持部材5bは、ガラス板Gの他端部Gb側の一部を支持する支持面7bを備える。この支持面7bには、ガラス板Gの他端部Gbの位置を規制する突起部8bが設けられている。また、第2支持部材5bは、第3支持部材5cの一部が挿通される挿通孔9を有する。
【0030】
第3支持部材5cは、本実施形態において空圧シリンダ装置により構成されるが、これに限定されるものではない。第3支持部材5cは、ピストン10とシリンダ11とを備える。ピストン10は、第2支持部材5bに形成される挿通孔9、及び第2枠体6bを通じて、その先端部が第2支持部材5bの支持面7bよりも上方に突出するように構成される。この第3支持部材5cは、ガラス板Gの曲げ加工初期の時点で、ピストン10の先端部を介して、ガラス板Gにおける他端部Gb側の一部の下面を支持する。シリンダ11は、その一部が第2枠体6bに固定されている。
【0031】
図1に示すように、第2枠体6bは、第2支持部材5b及び第3支持部材5cを支持するとともに、支持軸12を介して回動自在に構成される。また、第2枠体6bは、第3支持部材5cにおけるピストン10を挿通可能な開口部13を有する。第2支持装置2bは、図示しない駆動機構及びアクチュエータ(例えば油圧シリンダ、サーボモータ等)によって駆動されることで、支持軸12回りに回動(移動)し、その位置を変更する。
【0032】
クランプ装置3は、ガラス板Gにおける一端部Ga側の一部を押圧する第1クランプ部材3aと、ガラス板Gにおける他端部Gb側の一部を押圧する第2クランプ部材3bとを備える。各クランプ部材3a,3bは、ガラス板Gに対して接近・離反可能に構成される。クランプ装置3は、各クランプ部材3a,3bの押圧力を適宜調整できる。
【0033】
第1クランプ部材3aは、第1支持装置2aの第1支持部材5aと対向するように、この第1支持部材5aの上方に配置される。第2クランプ部材3bは、第2支持装置2bの第2支持部材5bと対向するように、この第2支持部材5bの上方に配置される。また、第2クランプ部材3bは、ガラス板Gをクランプした状態で、第2支持装置2bの移動に追従してその位置を変更できる。この第2クランプ部材3aは、第2支持装置2bの移動に追従できるように、この第2支持部材と一体に構成されていてもよい。
【0034】
加熱装置4は、ラインバーナー4a,4bによりなるが、抵抗加熱器、高周波加熱器、レーザ加熱器その他の各種機器を使用できる。ラインバーナー4a,4bは、ガスバーナーにより構成され、ガラス板Gの上方に位置する第1ラインバーナー4aと、ガラス板Gの下方に位置する第2ラインバーナー4bとを含む。第1ラインバーナー4aは、ガラス板Gの上方位置から下方に向かって火炎を放射する。また、第2ラインバーナー4bは、ガラス板Gの下方位置から上方に向かって火炎を放射する。各ラインバーナー4a,4bは上下方向及び水平方向に沿って位置変更可能に構成される。加熱中における各ラインバーナー4a,4bとガラス板Gとの離間距離は、20mm以下に設定されるが、これに限定されるものではない。
【0035】
なお、本実施形態において、各ラインバーナー4a,4bにより加熱されるガラス板Gとしては、長さ1300mm、幅500mm、厚み5mmの長方形状のものが使用されるが、その寸法はこれに限定されない。ガラス板Gは、長さと幅が等しい正方形であってもよく、長さが幅よりも短いものであってもよい。また、ガラス板Gは、矩形以外の異形形状であってもよい。なお、本実施形態では、説明の便宜上、ラインバーナー4a,4bによって直線状に加熱されるガラス板Gの当該直線に沿う方向を長さ方向(
図2において符号Yで示す)といい、この長さ方向Yに直交する方向を幅方向(
図2において符号Xで示す)という。
【0036】
なお、ガラス板Gの材質としては、例えば、結晶性ガラスからなるものを使用できるが、これに限定されない。ここで「結晶性ガラス」とは、熱処理により結晶化し、結晶化ガラスとなり得るガラスのことをいう。結晶化ガラスは、高い耐熱性を有するとともに、熱膨張率を小さくできるという利点を有し、例えば、建築用の資材(外壁材、内壁材等)として好適に利用され得る。
【0037】
以下、上記構成のガラス曲げ加工装置1を用いてガラス板Gに曲げ加工を施す方法について説明する。
【0038】
まず、曲げ加工装置1の支持装置2にガラス板Gを設置する(設置工程)。この設置工程では、
図1に示すように、ガラス板Gは、略水平方向に支持装置2に設置される。既述のように、第2支持装置2bは支持軸12回りにその位置を変更できる。支持装置2は、第2支持装置2b(第2支持部材5b)に係る支持面7bが、第1支持装置2a(第1支持部材5a)に係る支持面7aよりも下方に位置するように、第2支持装置2bの位置を設定することにより、ガラス板Gを支持する。また、第2支持装置2bに係る支持面7bは、ガラス板Gを好適に支持すべく、傾斜姿勢となっている。
【0039】
この設置工程において、ガラス板Gは、その一端部Ga側の一部が第1支持部材5aの支持面7aに支持される。また、ガラス板Gの一端部Gaは、この支持面7aから突出する突起部8aに接触することにより、位置決め(位置規制)が為される。さらに、第1クランプ部材3aがガラス板Gの上面に接触し、所定の力でこのガラス板Gを押圧し、第1支持部材5aとともにこのガラス板Gにおける他端部Gb側の一部をクランプ(挟持)する。また、ガラス板Gは、その他端部Gb側の一部が、第2支持装置2bにおける第3支持部材5cのピストン10に接触した状態となる。
【0040】
なお、設置工程における第1クランプ部材3aによる押圧力は、約0.1MPaに設定されるが、これに限定されるものではない。また、
図1に示すように、第2クランプ部材3bは、ガラス板Gの上方位置にあって待機状態となっており、設置工程ではガラス板Gの他端部Gb側の一部をクランプしない。また、第2支持部材5bの支持面7b及びその突起部8bは、ガラス板Gに接触していない。
【0041】
上記のようにガラス板Gが所定位置に設置されると、
図3に示すように、各ラインバーナー4a、4bによりガラス板Gを加熱する(加熱工程)。この加熱工程では、第1ラインバーナー4aにより、ガラス板Gの上面側の一部を直線状に加熱するとともに、第2ラインバーナー4bによりガラス板Gの下面側の一部を直線状に加熱する。この加熱は、ガラス板Gの幅方向Xにおける中央位置で、このガラス板Gの長さ方向Yにおける全長に亘って行われる。
【0042】
本方法では、ガラス板Gに対して局部的な加熱を行うため、加熱された部分と加熱されない部分との温度差により、熱歪が生じ、これにより、ガラス板Gは加熱工程中に上方に凸状となるように反り返る(
図3参照)。この変形は、第1ラインバーナー4aと第2ラインバーナー4bの加熱条件の違いにも起因する。すなわち、第2ラインバーナー4bはガラス板Gの下方位置から上方に向かって火炎を放射するが、第1ラインバーナー4aはガラス板Gの上方位置から下方に向かって火炎を放射する。この場合、第1ラインバーナー4aの火炎の形状と第2ラインバーナーの火炎の形状とが異なる。すなわち、第2ラインバーナー4bの火炎は、その上部が尖端状に構成されるが、第1ラインバーナー4aの火炎は、その下部が尖端状になり難く、その長さが短い。このため、第1ラインバーナー4aとガラス板Gとを望ましい離間距離としつつ、その火炎をガラス板Gに到達させるべく、この第1ラインバーナー4aにより多くの燃料ガスを供給する。したがって、第1ラインバーナー4aの火力が第2ラインバーナー4bの火力よりも強くなる。このような第1ラインバーナー4aと第2ラインバーナー4bとの加熱条件に違いによってガラス板Gの変形が助長されるのである。
【0043】
ガラス板Gは、各ラインバーナー4a,4bによって加熱された直線状の部分Gc(
図2参照)が軟化して、屈曲可能な状態になる(以下、この部分Gcを「屈曲部」という)。すなわち、この屈曲部Gcを境として、ガラス板Gの一端部Ga側の部分G1と他端部Gb側の部分G2とを屈曲させる(曲げ加工工程)。以下、ガラス板Gの一端部Ga側の部分G1を、第1の部分といい、他端部Gb側の部分G2を第2の部分という。
【0044】
ガラス板Gの第2の部分G2は、その下面が第3支持部材5cにより支持されている。屈曲部Gcの軟化が進行するにつれ、第3支持部材5cに作用する第2の部分G2による荷重が徐々に増加する。すなわち、ガラス板Gの第2の部分G2は、加熱による屈曲部Gcの軟化の進行に応じて、この屈曲部Gcを中心として、その自重により下方に屈曲しようとする。しかも、ガラス板Gは、上記のように加熱に応じた変形(反り)を伴っている。
【0045】
第3支持部材5cは、このような第2の部分G2の複合的な変形によるガラス板Gの破損を防止すべく、ピストン10が第2の部分G2の変形に追従するよう移動する。すなわち、第3支持部材5cは、所定の圧力により常に第2の部分G2にピストン10を接触している。屈曲部Gcの軟化の進行に伴ってピストン10に作用する第2の部分G2の荷重が増加し、この荷重がピストン10の圧力を超えると、ピストン10は、第2の部分G2との接触(支持)を維持しながら、徐々にシリンダ11側に後退する(第1曲げ加工工程)。ガラス板Gの第2の部分G2は、ピストン10に支持されることにより、急激に変形することが防止され、しかも、その変形が阻害されることもない。したがって、この第1加工工程では、第3支持部材5cのピストン10による第2の部分G2の支持により、ガラス板Gの損傷が防止される。なお、第3支持部材5cによる押圧力は、約5kgf以上20kgf未満の範囲で適宜設定され得る。
【0046】
屈曲部Gcの軟化が十分に進行すると、第2の部分G2の一部をクランプ部材3bによりクランプして大きく屈曲させる(第2曲げ加工工程)。この第2曲げ加工工程では、
図4に示すようにピストン10が完全に後退して、その先端部が第2支持部材5bの挿通孔9内に収容される。ガラス板Gの第2の部分G2は、第2支持部材5bの支持面7bによって支持される。
【0047】
第1曲げ加工工程から第2曲げ加工工程への移行は、第2支持装置2bによる支持が途切れることなく連続的に行われる。すなわち、第3支持部材5cのピストン10は、ガラス板Gの第2の部分G2の支持を維持しつつ、徐々に後退していく。この後退の途中で、ガラス板Gの他端部Gbが第2支持部材5bの支持面7bに接触する。したがって、第2支持部材5bと第3支持部材5cの両方でガラス板Gの第2の部分G2を支持する状態となる。さらに、ピストン10が後退し、その先端部が第2支持部材5bの挿通孔9に収容された時点で、第2の部分G2の一部は、第2支持部材5bの支持面7bのみによって支持される。なお、ピストン10の先端部を支持面7bと面一となるように位置決めし、ピストン10と支持面7bとによって第2の部分G2を支持するようにしてもよい。
【0048】
ガラス板Gの第2の部分G2が上記のように支持面7bに支持されると、その他端部Gbが支持面7bから突出する突起部8bに接触し、その位置決め(位置規制)が為される(
図4参照)。
【0049】
その後、
図5に示すように、待機状態であった第2クランプ部材3bは、下方に移動し、ガラス板Gの第2の部分G2の上面に接触してこれを押圧する。これにより、第2の部分G2はその一部が第2クランプ部材3bと第2支持部材5bとによってクランプ(挟持)される。なお、この第2曲げ加工工程では、各クランプ部材3a,3bによる押圧力は、約0.5MPaに設定されるが、これに限定されるものではない。本実施形態では、第1クランプ部材3aによる押圧力を設置工程、加熱工程、第1曲げ加工工程において、約0.1MPaに設定し、第2曲げ加工工程では約0.5MPaに変更する。すなわち、特に加熱工程において、ガラス板Gの変形を極力拘束しないように押圧力を小さく設定しておき、屈曲部Gcの軟化が十分に進行した時点(第2曲げ加工工程)では押圧力を大きく設定する。
【0050】
曲げ加工装置1は、第2の部分G2をクランプすると、第1の部分G1に対して第2の部分G2を所定の角度に屈曲させるべく、第2支持装置2bを反時計回りに回動させる。このとき、第2クランプ部材3bは、第2支持装置2bと共に移動し、これによってガラス板Gの第2の部分G2が屈曲部Gcを中心として所定の角度に屈曲する。なお、この第2曲げ加工工程では、第2ラインバーナー4bは、第2支持装置2bが干渉しない位置に退避している。
【0051】
上記の第2曲げ加工工程の後、ガラス板Gは、第1支持装置2a及び第2支持装置2bに支持されたままの状態で、所定の期間、自然冷却される(冷却工程)。
【0052】
ガラス板Gを結晶化させる場合には、この冷却工程の後に、ガラス板Gを所定形状の成形型に載置し、ガラス板G全体を加熱炉にて加熱する(結晶化工程)。この結晶化工程における加熱は、例えば、結晶性ガラスからなるガラス板Gの軟化温度〜軟化点+150℃の温度で行うことができるが、この条件に限定されるものではない。
【0053】
以上の各工程を経て、所定の角度で屈曲されたガラス板Gが完成する。本実施形態では、
図7に示すように、第1の部分G1と第2の部分G2を約90°に屈曲したガラス板Gを例示するが、この屈曲角度は、90°に限定されるものではなく、必要とされるガラス板Gの形状に応じて適宜設定可能である。このガラス板Gは、例えば、複数(例えば四つ)の組み合わせにより、四角筒状に構成され、例えば建築用の柱の装飾に利用され得る。ガラス板Gは、この用途に限らず、他の種々の用途に使用され得る。
【0054】
以上のように、本方法によれば、加熱工程においてガラス板Gの中途部を局部的に、すなわち直線状に加熱する場合、ガラス板Gには、加熱される部分(屈曲部Gc)と、加熱されない部分(屈曲部Gc以外の部分)との間で温度差が生じ、この温度差による熱歪が発生する。これにより、ガラス板Gは、反り返るように変形しようとするが、第3支持部材5cのピストン10がこのガラス板Gを支持したままでその変形に追従して移動(後退)する。ガラス板Gの他端部Gb側の一部は、第1曲げ加工工程において、ピストン10のみによって支持されており、第2クランプ部材3bによるクランプが行われていないため、加熱に応じた変形が拘束されない。本方法では、第2曲げ加工工程に移行するまでの間、ガラス板Gを加熱し続ける必要があり、この際に生じる変形によってガラス板Gが破損しないように、第1曲げ加工工程を実行する。これにより、ガラス板Gの変形が拘束されることによって生じる破損を防止でき、第1曲げ加工工程から第2曲げ加工工程へと連続的に移行することによって、ガラス板Gを好適に屈曲させることができる。
【0055】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0056】
上記の実施形態では、ガラス板Gが上方に凸状となるように変形する例を示したが、これに限定されず、ガラス板Gは、下方に凸状となるように変形し得る。
【0057】
上記の実施形態では、ガラス板Gの幅方向における中央位置に屈曲部Gcを設定したが、これに限らず、幅方向の任意の位置を屈曲部Gcに設定できる。
【0058】
上記の実施形態では、第3支持部材5cとしてシリンダ装置を使用した例を示したが、これに限定されず、他の各種アクチュエータを使用できる。また、この第3支持部材5cを省略するとともに、第2支持部材5bによって、第1曲げ加工工程及び第2曲げ加工工程を実行してもよい。例えば、第2支持部材5bを駆動するアクチュエータとしてサーボモータを採用し、第2支持部材5bに作用するガラス板Gの荷重を、サーボモータのトルクとして検出するとともに、そのトルク制御により、第1曲げ加工工程を実行できる。
【0059】
上記の実施形態では、予めガラス板Gを略水平姿勢に保持した状態から曲げ加工を開始する場合を一例として説明したが、傾斜姿勢に保持した状態から曲げ加工を開始しても良 い。
【0060】
上記の実施形態では、第3支持部材5cにガラス板Gの他端部Gb側の一部を支持させながら第1曲げ加工工程を実行する例を示したが、これに限定されない。本方法は、ガラス板Gの他端部Gb側の一部を第3支持部材5cによって支持することなく、第1曲げ加工工程を実行してもよい。