特開2017-24963(P2017-24963A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 2017024963-液相用活性炭およびその製造方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-24963(P2017-24963A)
(43)【公開日】2017年2月2日
(54)【発明の名称】液相用活性炭およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/30 20170101AFI20170113BHJP
   C01B 32/336 20170101ALI20170113BHJP
   B01J 20/20 20060101ALI20170113BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20170113BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20170113BHJP
【FI】
   C01B31/08 ZZAB
   C01B31/10
   B01J20/20 B
   B01J20/28 Z
   B01J20/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-148492(P2015-148492)
(22)【出願日】2015年7月28日
(71)【出願人】
【識別番号】309015019
【氏名又は名称】地方独立行政法人青森県産業技術センター
(74)【代理人】
【識別番号】100119264
【弁理士】
【氏名又は名称】富沢 知成
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 孝
【テーマコード(参考)】
4G066
4G146
【Fターム(参考)】
4G066AA05B
4G066AA10D
4G066AA14D
4G066AC07A
4G066BA25
4G066BA26
4G066CA10
4G066CA25
4G066CA27
4G066CA33
4G066DA07
4G066FA18
4G066FA21
4G066FA23
4G066FA33
4G066FA34
4G066FA38
4G066FA39
4G066FA40
4G146AA06
4G146AB01
4G146AC04A
4G146AC04B
4G146AC09A
4G146AC10A
4G146AD11
4G146AD33
4G146BA32
4G146BA34
4G146BB03
4G146BB07
4G146BC06
4G146BC23
4G146BC26
4G146BC29
4G146BC33A
4G146BC33B
4G146BC34A
4G146BC35A
4G146BC36A
4G146BC37A
4G146BC37B
4G146BD01
4G146BD02
4G146BD06
4G146BD07
4G146CB09
4G146DA14
(57)【要約】      (修正有)
【課題】水質浄化に利用可能な、リンゴ剪定枝等を原料とする高機能活性炭及びその製造方法の提供。
【解決手段】4.2〜20nmのメソ孔容積0.1cm/g以上、メチレンブルー吸着性能が高いことを主たる構成とし、比表面積1000m/g以上である活性炭。特定温度、特定雰囲気下にて、賦活用薬品を添加することなく原料を炭素化及びガス賦活することにより得られる液相用活性炭。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
4.2nm以上20nm以下のメソ孔容積0.1cm/g以上であり、メチレンブルー吸着性能が高いことを特徴とする、液相用活性炭。
【請求項2】
比表面積1000m/g以上であることを特徴とする、請求項1に記載の液相用活性炭。
【請求項3】
薬品添加することなく、原料を炭素化およびガス賦活することにより得られることを特徴とする、請求項1または2に記載の液相用活性炭。
【請求項4】
樹木枝を原料とすることを特徴とする、〔1〕ないし〔3〕のいずれかに記載の液相用活性炭。
【請求項5】
リンゴ剪定枝を原料とすることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の液相用活性炭。
【請求項6】
原料を炭素化およびガス賦活することにより、薬品添加することなく4.2nmnm以上20nm以下のメソ孔容積0.1cm/g以上のメチレンブルー吸着性能が高い活性炭を得ることを特徴とする、液相用活性炭製造方法。
【請求項7】
前記炭素化およびガス賦活が単一の処理によりなされることを特徴とする、請求項6に記載の液相用活性炭製造方法。
【請求項8】
前記処理は、炭化賦活炉中に投入した原料を窒素ガス流通状態で加熱する処理であり、最高到達温度に達した時点で加熱した水を窒素ガスに含ませて所定時間以上流通させる処理であることを特徴とする、請求項7に記載の液相用活性炭製造方法。
【請求項9】
前記最高到達温度は800℃以上であることを特徴とする、請求項8に記載の液相用活性炭製造方法。
【請求項10】
前記所定時間は90分間以上であることを特徴とする、請求項8または9に記載の液相用活性炭製造方法。
【請求項11】
前記原料はリンゴ剪定枝であることを特徴とする、請求項6ないし10のいずれかに記載の液相用活性炭製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液相用活性炭およびその製造方法に係り、特に、活性炭の用途として水質浄化をターゲットとし、特にメチレンブルー吸着特性の高い、高機能な活性炭およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまで出願人は、リンゴ剪定枝等の樹木枝からの活性炭製造について研究を重ね、成果を発表してきた(後掲特許文献1〜3)。新しくは、空気賦活で調製した活性炭の細孔構造に関して灰分析や細孔物性、顕微鏡観察より評価し、同条件にて調製したスギ活性炭と比較検討した結果、リンゴ剪定枝活性炭の灰分はスギ活性炭と比較して高く、4〜20nmの範囲の孔が多く生成されていることが分かった。これは、含有しているカルシウム等の微量金属が触媒的に賦活に対して作用し、上述した範囲の細孔の生成を促進したためと考えられた。
【0003】
吸着剤は、粒子の内部に多数の空隙(細孔)をもつ物質(多孔体)であり、細孔はその直径によって分類されている。国際純正・応用化学連合(IUPAC)は直径50nm以上をマクロ孔、2〜50nmをメソ孔、2nm以下をミクロ孔と定めている。また吸着質分子径等を考慮して、ガス吸着等気相用活性炭の場合はミクロ孔に集中し、脱色等液相用活性炭の場合はメソ孔が多く分布しているのが特徴となっている。
【0004】
さて、東日本大震災に伴う原子力発電所の事故によって環境中に放射性物質が放出され、浄水や水道水中からは放射性ヨウ素やセシウムが検出されたが、この低減を目的に浄水処理プロセスでの対策の一手段として、粉末活性炭処理等が行われるようになった。一方、青森県内の浄水場において近年臭気物質が発生し、その除去を目的として活性炭が用いられている。今後、このような活性炭を用いた水質浄化の要請・市場は、さらに拡大すると予測される。
【0005】
活性炭とその利用に関する技術的提案等は従来、相当多数がなされているが、たとえば後掲特許文献4には、空気浄化、放射性物質吸着、ヨウ素トラップ、メタン吸蔵、水素吸蔵、浄水製造、溶剤回収、脱色、水処理、ガスマスクでの用途などの目的で細孔径2.0nm超50.0nm未満の細孔(メソ孔)の全細孔容積中の容積比率が40%以上である活性炭が開示されている。また特許文献5には、比表面積が800〜4000m/gで、細孔幅2.0nm以上50nm未満のメソ孔容積Vmが、0.1〜0.5cm/gであることを特徴とする活性炭が開示されている。また非特許文献1には、ガス吸着等気相用活性炭の場合はミクロ孔に集中し、脱色等液相用活性炭の場合はメソ孔に分布している特徴のあることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−177656号公報「樹木枝由来吸着性材料およびその製造方法」
【特許文献2】特開2013−173633号公報「活性炭およびその製造方法」
【特許文献3】特開2014−047087号公報「担持活性炭の製造方法、担持活性炭、およびそれを用いたフィルタ」
【特許文献4】特開2013−249234号公報「活性炭とその製造方法」
【特許文献5】2011−93774号公報「活性炭及びその製造方法、並びにそれを用いた液体の精製方法、及び燃料電池システム」
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】真田雄三、鈴木基之、藤元 薫:新版活性炭 基礎と応用、第8版、講談社サイエンティフィック、p21(1997)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
水質浄化等の液相で用いる活性炭は上述した通り、メソ孔が多く分布しているのが特徴であるが、このような活性炭は塩化亜鉛やリン酸等を用いた薬品賦活にて調製されるのが一般的である。しかし、この方法は、
1)生産設備のほとんどが耐食性材料や耐食性処理を必要とするため、設備投資が高く、製造原価に影響する
2)製造プロセスが煩雑で、生産規模の拡大や生産の自動化が難しい
等の問題点を有している。
【0009】
このような従来技術の問題、および、活性炭による水質浄化技術の需要が高まっている社会的背景に鑑みると、廃棄物であるリンゴ剪定枝等の樹木枝を原料とした、メソ孔が多く分布している活性炭の製造を、より設備投資を抑えて製造原価低減可能に行える技術が求められている。また、より簡易な製造プロセスによって生産規模の拡大や生産の自動化を容易化できる製造技術が求められている。かかる技術の提供によって、資源の有効活用、産業振興・活性化に寄与することができる。
【0010】
また、活性炭としての吸着特性を高めるためには、用途に応じて、つまり個々の吸着質に対して細孔分布を特化させた活性炭とすることが、望ましい。この点、上記各先行技術文献には、活性炭の用途や個別の吸着質における有効なメソ孔の範囲等が開示されておらず、また、メチレンブルー吸着特性をメルクマールとする細孔範囲限定という着眼も示されていない。
【0011】
そこで本発明が解決しようとする課題は、かかる従来技術の状況を踏まえ、リンゴ剪定枝を原料とする活性炭、またはその他の原料による活性炭の用途として水質浄化をターゲットとし、薬品賦活を用いることなく、特にメチレンブルー吸着特性の高い、高機能な活性炭およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明者は、リンゴ剪定枝活性炭の用途として水質浄化をターゲットとして上記課題について検討した。すなわち、リンゴ剪定枝等の樹木枝を原料とし、ガス賦活によってメソ孔が多く分布している活性炭を製造できることを確認した。併せて、リンゴ剪定枝活性炭および市販品の基本物性や日本水道協会規格「水道用活性炭」中の項目の一つであるメチレンブルーの吸着に関与する細孔分布範囲、およびその吸着量を測定、比較検討し、その結果、基準値を越えるための賦活条件を見出した。そして、かかる成果を基礎として本発明を完成するに至った。すなわち、上記課題を解決するための手段として本願で特許請求される発明、もしくは少なくとも開示される発明は、以下の通りである。
【0013】
〔1〕 4.2nm以上20nm以下のメソ孔容積0.1cm/g以上であり、メチレンブルー吸着性能が高いことを特徴とする、液相用活性炭。
〔1b〕 4.2722nm以上20nm以下のメソ孔容積0.1cm/g以上であり、メチレンブルー吸着性能が高いことを特徴とする、液相用活性炭。
〔2〕 比表面積1000m/g以上であることを特徴とする、〔1〕または〔1b〕に記載の液相用活性炭。
〔3〕 薬品添加することなく、原料を炭素化およびガス賦活することにより得られることを特徴とする、〔1〕ないし〔2〕のいずれかに記載の液相用活性炭。
〔4〕 樹木枝を原料とすることを特徴とする、〔1〕ないし〔3〕のいずれかに記載の液相用活性炭。
【0014】
〔5〕 リンゴ剪定枝を原料とすることを特徴とする、〔1〕ないし〔3〕のいずれかに記載の液相用活性炭。
〔6〕 原料を炭素化およびガス賦活することにより、薬品添加することなく4.2nmnm以上20nm以下のメソ孔容積0.1cm/g以上のメチレンブルー吸着性能が高い活性炭を得ることを特徴とする、液相用活性炭製造方法。
〔6b〕 原料を炭素化およびガス賦活することにより、薬品添加することなく4.2722nmnm以上20nm以下のメソ孔容積0.1cm/g以上のメチレンブルー吸着性能が高い活性炭を得ることを特徴とする、液相用活性炭製造方法。
〔7〕 前記炭素化およびガス賦活が単一の処理によりなされることを特徴とする、〔6〕または〔6b〕に記載の液相用活性炭製造方法。
【0015】
〔8〕 前記処理は、炭化賦活炉中に投入した原料を窒素ガス流通状態で加熱する処理であり、最高到達温度に達した時点で加熱した水を窒素ガスに含ませて所定時間以上流通させる処理であることを特徴とする、〔7〕に記載の液相用活性炭製造方法。
〔9〕 前記最高到達温度は800℃以上であることを特徴とする、〔8〕に記載の液相用活性炭製造方法。
〔10〕 前記所定時間は90分間以上であることを特徴とする、〔7〕または〔9〕に記載の液相用活性炭製造方法。
〔11〕 前記原料はリンゴ剪定枝であることを特徴とする、〔6〕ないし〔10〕のいずれかに記載の液相用活性炭製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明の液相用活性炭およびその製造方法は上述のように構成されるため、これによれば、薬品賦活を用いることなく、2.4〜20nmのメソ孔を多く有し、特にメチレンブルー吸着特性を高めた、高機能な液相用活性炭を提供することができる。また、メソ孔が多く分布している液相用活性炭を、低コスト、かつより簡易な製造プロセスによって得ることができ、生産規模の拡大や生産の自動化を容易化することができる。
【0017】
また、2.4〜20nmの孔がメチレンブルー吸着を高めることを見出せたことにより、リンゴ剪定枝のみならず、他の素材を原料とした活性炭およびその製造に用いることもできる。また、リンゴ剪定枝等の樹木枝を原料として用いる本発明では、廃棄物であるリンゴ剪定枝等樹木枝を原料とすることができ、製造原価を低減できるのみならず、廃棄物削減に寄与することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】各活性炭の細孔分布を示したグラフである。
図2図1の要部を拡大したグラフである。
図3】各活性炭のメチレンブルー吸着性能を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明の液相用活性炭は、4.2nm以上20nm以下のメソ孔容積0.1cm/g以上であり、メチレンブルー吸着性能が高いことを、主たる構成とする。かかる数値範囲は、実施例に後述する研究過程において明らかにしたものであり、具体的には、用いた細孔分布測定装置において設定可能な細孔間隔に基づく。より正確には、最下限の設定点4.2722nm、次の設定点4.8532nmであり、これらのいずれか以上20nm以下のメソ孔容積0.1cm/g以上の液相用活性炭である。
【0020】
また本発明の液相用活性炭は、比表面積1000m/g以上であり、薬品添加つまり薬品賦活することなく、原料を炭素化およびガス賦活することによって得られるものである。また、原料としてはリンゴ剪定枝等の樹木枝を好適に用いることができるが、本発明はこれには限定されず、上記特性のメソ孔を得られるものであればいかなるものでも原料とすることができる。
【0021】
本発明の液相用活性炭製造方法は、原料を炭素化およびガス賦活することにより、薬品添加することなく4.2nmnm以上20nm以下のメソ孔容積0.1cm/g以上のメチレンブルー吸着性能が高い活性炭を得るものであるが、この炭素化およびガス賦活は単一の処理によりなされるものとすることができる。なお、原料は限定されず、リンゴ剪定枝等の樹木枝を用いられることも、上述の通りである。
【0022】
炭素化およびガス賦活処理は、炭化賦活炉中に投入した原料を窒素ガス流通状態で加熱する処理であり、最高到達温度に達した時点で加熱した水を窒素ガスに含ませて所定時間以上流通させる処理である。最高到達温度は800℃以上とし、また所定時間は90分間以上とすることで、良好な結果を得ることができる。
【実施例】
【0023】
以下、本発明をリンゴ剪定枝由来活性炭に係る実施例により説明するが、本発明がこれに限定されるものではない。なお、本発明完成に至る研究経過の概要説明をもって、実施例とする。
1.テーマ
リンゴ剪定枝由来活性炭のメチレンブルー吸着に関する研究
リンゴ剪定枝活性炭の用途として水質浄化をターゲットとし、リンゴ剪定枝活性炭および市販品の基本物性や日本水道協会規格「水道用活性炭」中の項目の一つであるメチレンブルー吸着量を測定、比較検討した。
【0024】
2.実験方法
2.1 活性炭の調製
原料として、リンゴ剪定枝を原料とした炭(社会福祉法人桐の里社製、青森炭)をハンマーにて粉砕し、0.3〜2mmのふるいにかけたもの(以下:A0)を用いた。賦活は、活性炭賦活試験装置(タナカテック社製、RK−S20)を用いて、A0を105℃、24時間乾燥後、6Lキルン容器に100g投入した。
【0025】
キルン容器回転速度2.2rpm、窒素ガス流通量1L/minとして、炭素化およびガス賦活処理を行った。ガス賦活は、キルン容器内が最高到達温度1000℃に達した時点で、水1.67mL/minを130℃で加熱して窒素ガスに含ませながら流通させ、90分、または120分保持することにより行った。このようにして、各条件4回サンプルを調製した(以下、ガス賦活90分:A2、ガス賦活120分:A3)。
【0026】
なお、リンゴ剪定枝活性炭の収率Y(%)は、賦活前の試料の質量:Ws(g)および賦活後の試料の質量:Wc(g)から以下の〔1〕式より得、その平均値とした。
Y=Wc/Ws×100 ・・・〔1〕
また、比較として、市販活性炭(以下:S1)を用いた。これはミルサー(岩谷産業社製)を用いて粉末化し、試験に用いた。
【0027】
2.2 活性炭の物性評価
粉末化した活性炭の粒子径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所社製、LA−300)を用いて測定し、メジアン径:Mps(μm)を算出した。また、活性炭の比表面積および細孔容積は、比表面積/細孔分布測定装置(日本ベル社製、BELSORP−mini)を用いて250℃、5時間脱気後に−196℃での窒素吸脱着等温線を測定し、BET法により、比表面積:S(m/g)、t−プロット法により、外部表面積:So(m/g)、MP法により、マイクロ孔容積:VtN(cm/g)、BJH法により、メソ孔容積:ViN(cm/g)を算出した。またMP−プロット法により、マイクロ孔分布、BJHプロット法により、メソ孔分布を算出した。
【0028】
2.3 メチレンブルーの吸着性能
メチレンブルー吸着量の測定は、JISK1474(活性炭試験方法)に準じて行った。吸着量は3回の試験の平均より、それぞれの試料1gに対するメチレンブルー吸着性能を算出した。
【0029】
3. 結果および考察
3.1 活性炭の基本物性
図1は、各活性炭の細孔分布を示したグラフ、図2図1の要部を拡大したグラフである。上述のとおり活性炭A2は賦活時間90分、活性炭A3は同120分で調製したものである。活性炭A2と市販品S1を比較すると、2.1nmでは市販品S1の方が活性炭A2よりも高い値であったが、2.4nmではその値が逆転し、それ以降はその関係を維持し、20nmの辺りで全ての活性炭がほぼ同等の値となった。
【0030】
3.2 活性炭の吸着性能
図3は、各活性炭のメチレンブルー吸着性能を示したグラフである。メチレンブルー吸着性能は、市販品S1よりも活性炭A2、A3の方が高かった。このように吸着性能が高くなった理由は、メチレンブルーの吸着に関わる細孔が多いからであり、したがって、2.4〜20nmの細孔の多さが、メチレンブルー吸着性能を高くすることが明らかとなった。
【0031】
また、公益財団法人日本水道協会(JWWA)の規格である「水道用粉末活性炭」において、実際の現場等で利用可能な粉末活性炭のメチレンブルー吸着量は150ml/gとされている。図3において、賦活時間90分の活性炭A2ではこの値を下回ったが、同120分の活性炭A3では大きく上回った。このことから、賦活時間90分から120分の間に、メチレンブルー吸着性能の最適賦活時間があることが明らかとなった。
【0032】
4.まとめ
(1) メソ孔容積の大きい活性炭が、メチレンブルー吸着性能が高くなることが明らかとなった。
(2) 2nmから2.4nmの間にメチレンブルー吸着に対して影響している細孔があることが明らかとなった。
(3) 特に賦活時間120分のリンゴ剪定枝活性炭のメチレンブルー吸着性能が、水道用粉末活性炭の基準を越えた値を示した。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の液相用活性炭およびその製造方法によれば、薬品賦活を用いることなく、2.4〜20nmのメソ孔を多く有し、特にメチレンブルー吸着特性を高めた、高機能な液相用活性炭を提供することができる。また、メソ孔が多く分布している液相用活性炭を、低コスト、かつより簡易な製造プロセスによって得ることができる。したがって、活性炭・吸着材製造や水処理技術に関わる全分野、その他関連する全分野において、産業上利用性が高い発明である。























図1
図2
図3