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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-25148(P2017-25148A)
(43)【公開日】2017年2月2日
(54)【発明の名称】洗浄用水素水の製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
   C11D 7/02 20060101AFI20170113BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20170113BHJP
   B08B 3/08 20060101ALI20170113BHJP
   C11D 7/06 20060101ALI20170113BHJP
   C11D 17/08 20060101ALI20170113BHJP
   C02F 1/68 20060101ALI20170113BHJP
   B01F 1/00 20060101ALI20170113BHJP
   B01F 15/04 20060101ALI20170113BHJP
   B01F 3/08 20060101ALI20170113BHJP
   B01F 15/02 20060101ALI20170113BHJP
   B01F 15/00 20060101ALI20170113BHJP
【FI】
   C11D7/02
   H01L21/304 647Z
   H01L21/304 648K
   B08B3/08 Z
   C11D7/06
   C11D17/08
   C02F1/68 510A
   C02F1/68 520B
   C02F1/68 530A
   C02F1/68 530K
   C02F1/68 530L
   B01F1/00 A
   B01F15/04 A
   B01F3/08 Z
   B01F15/02 A
   B01F15/02 C
   B01F15/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-142747(P2015-142747)
(22)【出願日】2015年7月17日
(71)【出願人】
【識別番号】000245531
【氏名又は名称】野村マイクロ・サイエンス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】510005650
【氏名又は名称】エーシーエム リサーチ (シャンハイ) インコーポレーテッド
(71)【出願人】
【識別番号】516030845
【氏名又は名称】エイチジェイエス エンジニアリング カンパニーリミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】自在丸 隆行
(72)【発明者】
【氏名】ワン フイ
(72)【発明者】
【氏名】ファン デュチョル
【テーマコード(参考)】
3B201
4G035
4G037
4H003
5F157
【Fターム(参考)】
3B201AA03
3B201AA21
3B201AB01
3B201AB51
3B201BB92
3B201CD24
4G035AA01
4G035AB28
4G035AB36
4G037AA02
4G037AA12
4G037AA18
4G037BA01
4G037BB06
4G037BB21
4G037BC03
4G037BD04
4G037BD10
4G037EA01
4H003DA15
4H003DB01
4H003EA23
4H003EA31
4H003ED02
4H003FA04
5F157AA73
5F157AB02
5F157BD25
5F157BE12
5F157BE33
5F157CC21
5F157CF74
(57)【要約】
【課題】半導体基板表面のアンモニア由来の微粒子の発生を防止することのできる洗浄用水素水の製造方法及び製造装置の提供。
【解決手段】計量タンクで計量された濃厚アンモニア水を希釈タンクに供給し、超純水で希釈して希釈アンモニア水を生成し、生成した希釈アンモニア水を、水素ガスを溶解させた超純水中に所定のアンモニア濃度となるように給液する洗浄用水素水の製造方法であって、前記計量タンクに超純水供給管を設けて、前記計量タンク内に生成するアンモニア由来の微粒子を、所定の運転期間ごとに超純水で洗浄除去する洗浄工程を有する洗浄用水素水の製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計量タンクで計量された濃厚アンモニア水を希釈タンクに供給し、超純水で希釈して希釈アンモニア水を生成し、生成した希釈アンモニア水を、水素ガスを溶解させた超純水中に所定のアンモニア濃度となるように給液する洗浄用水素水の製造方法であって、
前記計量タンクに超純水供給管を設けて、前記計量タンク内に生成するアンモニア由来の微粒子を、所定の運転期間ごとに超純水で洗浄除去する洗浄工程を有することを特徴とする洗浄用水素水の製造方法。
【請求項2】
超純水に水素ガスを溶解させて水素水を生成する水素水生成部と、
前記水素水をユースポイントに供給する水素水供給管と、
前記水素水供給管の前記水素水生成部の下流側に配置されたアンモニア水添加部とを備えた洗浄用水素水の製造装置において、
前記アンモニア水添加部は、濃厚アンモニア水を計量する計量タンクと、
前記計量タンクの下方に管路によって接続され、落差によって前記計量タンクから供給される濃厚アンモニア水を超純水で希釈する希釈タンクと、
前記希釈タンクの下方に管路によって接続され、落差によって前記希釈タンクから供給される希釈アンモニア水を貯留する供給タンクと、
前記計量タンクと前記希釈タンクを接続する管路及び前記希釈タンクと前記供給タンクを接続する管路のそれぞれに介装された開閉弁と、
前記供給タンク中の希釈アンモニア水を所定の濃度となるよう前記水素水供給管に供給する希釈アンモニア水供給装置を有し、
前記計量タンク内で生成するアンモニア由来の微粒子を前記超純水で洗浄する洗浄装置を備えることを特徴とする洗浄用水素水の製造装置。
【請求項3】
前記計量タンク及び前記希釈タンクはそれぞれレベルセンサーを備え、
前記レベルセンサーの検出信号によって前記開閉弁の開閉を制御する制御装置を備えることを特徴とする請求項2記載の洗浄用水素水の製造装置。
【請求項4】
前記アンモニア水添加部は、クリーンルーム内に設置されていることを特徴とする請求項2又は3記載の洗浄用水素水の製造装置。
【請求項5】
前記計量タンクの上部には、外気中の浮遊微小粒子を捕捉するフィルタを介して前記クリーンルームに連通する通気管が接続されていることを特徴とする請求項4記載の洗浄用水素水の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄用水素水の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体デバイスや液晶デバイスなどの電子工業製品の製造工程において、ウェット洗浄は、基板表面上に付着する微粒子を除去する重要な工程として行われている。微粒子の除去方法として、アンモニア水、過酸化水素水及び純水を例えば1:1:5の体積比で混合した洗浄水を用いるRCA洗浄法が一般的である。RCA洗浄法では、超純水によって洗浄後の基板表面をリンスすることも行われる。
【0003】
しかし、この方法では、アンモニア水や過酸化水素水の使用量が多いため、使用済みアンモニア水や過酸化水素水、及びリンス後の超純水などの廃液処理の負荷が増大することに由来する環境への負荷が大きいなどの問題がある。
【0004】
そこで、近年、超純水に水素ガスを溶解させた洗浄水を用いた洗浄方法が使用され始めている(例えば、特許文献1参照。)。この水素ガスを溶解した洗浄水は、溶存イオン、微粒子、有機物等の不純物が極限まで除去されているため、配管ノズル等の内壁との摩擦により、洗浄水中に静電気が帯電し、洗浄水が被洗浄体である半導体ウエハなどのような電子部品類に接触する際に電流が流れ、半導体素子が破壊されて半導体ウエハなどの製品の歩留りを低下させる。そのため、水素ガスを溶解した洗浄水にアンモニア等を溶解させて、比抵抗値を所定の値に調整することで、静電気帯電防止能を付与することも行われている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
水素水にアンモニアを添加して半導体基板の洗浄に用いる方法においては、例えば濃厚アンモニア水の収容された原液タンクから、アンモニア水の原液を希釈タンクに導入し、ここで、原液を超純水で希釈し、その後、水素水に添加することが行われる。
【0006】
ところが、本発明者らは、このような方法で水素水にアンモニアを添加しながら半導体ウエハの洗浄装置に供給し、ウエハの洗浄を枚葉式で繰り返し行なっていると、長期間経過後の洗浄後の基板表面上に、まれに、粒径が0.02〜0.1μm程度の微粒子状のごみ(ソフトパーティクル)が発生することを知見した。本発明者らは、その原因を究明すべく検討を進めたところ、この微粒子状のごみは、アンモニア水の原液を超純水で希釈する装置で長期間連続運転を行う際に、アンモニア水の原液を貯留するタンク内で形成されるアンモニア由来のごみであることを突き止めた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−64867号公報
【特許文献2】特開2000−354729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記した課題を解決するためになされたものであって、半導体基板表面のアンモニア由来の微粒子の発生を防止した洗浄用水素水の製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の洗浄用水素水の製造方法は、計量タンクで計量された濃厚アンモニア水を希釈タンクに供給し、超純水で希釈して希釈アンモニア水を生成し、生成した希釈アンモニア水を、水素ガスを溶解させた超純水中に所定のアンモニア濃度となるように給液する洗浄用水素水の製造方法であって、前記計量タンクに超純水供給管を設けて、前記計量タンク内に生成するアンモニア由来の微粒子を、所定の運転期間ごとに超純水で洗浄除去する洗浄工程を有することを特徴とする。
【0010】
本発明の洗浄用水素水の製造装置は、超純水に水素ガスを溶解させて水素水を生成する水素水生成部と、前記水素水をユースポイントに供給する水素水供給管と、前記水素水供給管の前記水素水生成部の下流側に配置されたアンモニア水添加部とを備えた洗浄用水素水の製造装置において、前記アンモニア水添加部は、濃厚アンモニア水を計量する計量タンクと、前記計量タンクの下方に管路によって接続され、落差によって前記計量タンクから供給される濃厚アンモニア水を超純水で希釈する希釈タンクと、前記希釈タンクの下方に管路によって接続され、落差によって前記希釈タンクから供給される希釈アンモニア水を貯留する供給タンクと、前記計量タンクと前記希釈タンクを接続する管路及び前記希釈タンクと前記供給タンクを接続する管路のそれぞれに介装された開閉弁と、前記供給タンク中の希釈アンモニア水を所定の濃度となるよう前記水素水供給管に供給する希釈アンモニア水供給装置を有し、前記計量タンク内で生成するアンモニア由来の微粒子を前記超純水で洗浄する洗浄装置を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の洗浄用水素水の製造装置において、前記計量タンク及び前記希釈タンクはそれぞれレベルセンサーを備え、前記レベルセンサーの検出信号によって前記開閉弁の開閉を制御する制御装置を備えることが好ましい。
【0012】
本発明の洗浄用水素水の製造装置において、前記アンモニア水添加部は、クリーンルーム内に設置されていることが好ましい。
【0013】
本発明の洗浄用水素水の製造装置において、前記計量タンクの上部には、外気中の浮遊微小粒子を捕捉するフィルタを介して前記クリーンルームに連通する通気管が接続されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の洗浄用水素水の製造方法又は洗浄用水素水の製造装置によれば、半導体基板表面のアンモニア由来の微粒子の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の洗浄用水素水の製造方法に用いられる製造装置の一例を概略的に示すブロック図である。
図2】本発明の洗浄用水素水の製造装置に用いられる水素水製造部の一例を概略的に示すブロック図である。
図3】本発明の洗浄用水素水の製造方法の一例を概略的に示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、実施形態を詳細に説明する。
図1は、本実施形態の洗浄用水素水の製造装置1を概略的に示す図である。洗浄用水素水の製造装置1は、半導体デバイス、液晶デバイス等の電子工業製品の製造工程で半導体基板等の洗浄に使用される、水素水にアンモニア水の添加された洗浄用水素水を製造する装置である。洗浄用水素水の製造装置1は、水素水生成部100と、アンモニア水添加部200とを備えている。
【0017】
水素水生成部100は、超純水に、水素ガスを溶解又は混合させて水素水を製造するものである。生成された水素水は、水素水供給管17においてアンモニア水添加部200によって希釈アンモニア水が添加された後、半導体基板の洗浄装置等のユースポイントに供給される。
【0018】
水素ガスを溶解させる超純水としては、通常公知の方法により製造されたものであればよく、例えば、市水、井水、河川水、工業用水等の原水から、イオン性物質及び非イオン性物質を除去する超純水製造装置により処理された超純水を用いることができる。超純水は、抵抗率10MΩ・cm以上であることが好ましく、抵抗率18MΩ・cmであることがより好ましい。
【0019】
超純水に水素ガスを溶解させる方法としては、特に制限されず、超純水にガス透過膜を介して水素ガスを注入して溶解させる方法、配管内に直接水素ガスをバブリングして溶解させる方法、水素ガスを注入後にスタティクミキサーなどの分散手段を設けて溶解させる方法、ガス溶解槽に超純水を供給するポンプの上流側に水素ガスを供給し、ポンプ内の攪拌によって溶解させる方法などが挙げられる。
【0020】
図2に、水素水生成部100の一例として、超純水にガス透過膜を介して水素ガスを注入して溶解させる水素水生成部101を概略的に示す。水素水生成部101は、ガス透過膜として中空糸膜を使用し、この中空糸膜において、水素ガスを超純水中に溶解させる装置である。図2に示す、水素水生成部101は、内部に中空糸膜が設置された中空糸膜溶解槽102(中空糸膜ユニット)を備えている。中空糸膜溶解槽102内部には、超純水を中空糸膜溶解槽102に供給する被処理水供給管106が接続されている。超純水は被処理水供給管106を通って中空糸膜の外側103に供給される。一方、水素ガスは、中空糸膜溶解槽102に接続されたガス供給管105を通って、中空糸膜の内側104に供給される。これにより、内側104の水素は中空糸膜を透過して、外側103(超純水側)に拡散し、水素ガスが超純水に溶解されて水素水が調製される。中空糸膜溶解槽102の出水口には、水素水供給管17が接続されており、調製された水素水は、水素水供給管17を介して中空糸膜溶解槽102外に排出される。
【0021】
このようにして、水素水生成部100で生成される水素水は、25℃、1気圧下での溶存水素濃度が、好ましくは0.1ppm以上、より好ましくは0.5〜1.6ppm、さらに好ましくは1.0〜1.2ppmである。
【0022】
また、水素水生成部100における水素ガスの溶解性を高めるために、予め、水素水生成部100に供給される超純水中の溶存酸素、溶存窒素等の溶存ガスが除去されることが好ましい。例えば、水素水生成部100に供給される超純水中の溶存酸素濃度は0.1ppm以下程度に低減されることが好ましい。このため、水素水生成部100の前段には、脱ガス装置を備えることが好ましい。この脱ガス装置としては、ガス透過膜を備える真空脱気装置等が好適に用いられる。
【0023】
図1に示すアンモニア水添加部200は、アンモニア水の原液(濃厚アンモニア水)を希釈して、水素水供給管17内の水素水中に所定のアンモニア濃度となるよう添加する装置である。アンモニア水添加部200は、水素水に添加するアンモニア水の原液を貯留する原液貯留槽11と、原液貯留槽11中の原液が導入されて、原液を計量する計量タンク12を備えている。また、計量タンク12の下方には、計量タンク12で計量された原液を希釈する希釈タンク13が接続されている。希釈タンク13の下方には、希釈されたアンモニア水を貯留する供給タンク14が接続されている。
【0024】
計量タンク12と希釈タンク13、希釈タンク13と供給タンク14はそれぞれバルブ15、16が介装された配管によって接続されている。計量タンク12で計量された原液は、バルブ15、16が開かれた際に、落差によって、希釈タンク13、供給タンク14に順に導入される。バルブ15、16としては、例えば、エア駆動式等の開閉バルブが用いられる。
【0025】
計量タンク12は、希釈される原液の所定量を計量する。計量タンク12の側部には、計量タンク12内の原液の水位を感知するレベルセンサー20が備えられている。計量タンク12の上部には、通気管21及びオーバーフロードレイン22が設けられている。通気管21には、エアフィルタ23が介装されている。エアフィルタ23としては、空気中の浮遊微量粒子を捕捉できるものであれば特に限定されず、例えば、孔径0.01〜0.1μmのガラス繊維、ポリプロピレン、ポリエチレン製等のフィルタ等が用いられる。
【0026】
計量タンク12の側面下部には、超純水貯留槽24内の超純水を導入する超純水供給管25と、原液貯留槽11内のアンモニア水の原液を導入する原液供給管26が接続されている。
【0027】
希釈タンク13は、計量タンク12で計量された原液と超純水を混合して、原液の希釈されたアンモニア水を調製する。希釈タンク13の側部には、希釈タンク13内の液量を感知するレベルセンサー27が備えられている。レベルセンサー20、27としては、フロート式、超音波式等のレベルセンサーが用いられる。また、希釈タンク13は、計量タンク12と同様、上部に通気管及びエアフィルタ(図示せず)が設けられていることが好ましい。
【0028】
供給タンク14は、希釈タンク13内で希釈されたアンモニア水を収容して一旦貯留する。供給タンク14の下部には、アンモニア水供給管18が接続されている。アンモニア水供給管18には、薬注ポンプ19が介装されており、薬注ポンプ19によって、供給タンク14に貯留されたアンモニア水が、水素水供給管17内の水素水に、所望のアンモニア濃度となるように導入される。これにより水素水供給管17内で洗浄用の水素水が製造される。薬注ポンプ19としては、ストローク数の制御可能なポンプが用いられる。この場合、ストローク数としては例えば、1分間あたり好ましくは0〜360回の範囲、より好ましくは150〜240回の範囲で制御される。また、1ストロークの供給量は65〜130mLであることが好ましい。ストローク数が制御されることで、水素水中のアンモニア濃度が所望の濃度に調製される。
【0029】
アンモニア水添加部200は、レベルセンサー20、27の検出信号に基いて、計量タンク12へのアンモニア水の原液及び超純水の供給、バルブ15、16の開閉を、制御する制御装置28を備えている。この制御装置28は、供給タンク14中の希釈アンモニア水を所定の濃度で水素水供給管17に供給するように、薬注ポンプ19の吐出量(ストローク数等)を制御する。
【0030】
次に、洗浄用水素水の製造方法について説明する。図3は、本実施形態の洗浄用水素水の製造方法を概略的に示すブロック図である。図3に示す洗浄用水素水の製造方法は、原液を計量する原液計量工程S100と、計量タンク12を洗浄する計量タンク洗浄工程S200と、超純水を計量する超純水計量工程S300と、原液計量工程S100で計量された原液が超純水計量工程S300で計量された超純水と混合されて希釈されたアンモニア水を貯留する希釈工程S400を備えている。
【0031】
先ず、原液計量工程S100において、図1に示すアンモニア水添加部200のバルブ15が閉の状態で、アンモニア水の原液が原液貯留槽11から原液供給管26を介して計量タンク12に導入される。アンモニア水原液の濃度は特に限定されず、通常5〜35質量%程度である。原液は、例えば20〜50mL/minの流量で液面が暴れないように原液供給管26を介して計量タンク12に導入される。この際、レベルセンサー20によって、計量タンク12内の原液の水位が感知され、計量タンク12内の原液が所定の水位に達したときに、原液の供給を停止する検知信号が制御装置28に入力され、計量タンク12内への原液の供給が停止される。これにより、計量タンク12内で原液が50〜150mLの範囲内の所定の量に計量される。その後、バルブ16が閉の状態で、バルブ15が開かれ、計量タンク12内で計量された原液が、希釈タンク13に落差によって導入される。
【0032】
次に、計量タンク洗浄工程S200において、図1に示すアンモニア水添加部200のバルブ15が閉じられ、超純水貯留槽24から超純水が超純水供給管25を介して計量タンク12に導入される。超純水は、例えば200〜1000mL/minの流量で計量タンク12に導入される。超純水は、計量タンク12が満水になり、さらに、オーバーフローするまで導入される。オーバーフローした超純水は、オーバーフロードレイン22より計量タンク12の外部に排水される。
【0033】
計量タンク洗浄工程S200は、計量タンク12の内容量にもよるが、例えば1〜10分間、好ましくは1〜5分間行われる。これにより、原液計量工程S100後に計量タンク12内に残留した原液を洗浄、排水することができる。
【0034】
次いで、超純水計量工程S300で、図1に示すアンモニア水添加部200のバルブ15が開かれ、バルブ16が閉じたままの状態で、超純水が、その液面が暴れないように超純水供給管25から計量タンク12に通水され、計量タンク12を介して希釈タンク13に導入される。この際、レベルセンサー27によって、希釈タンク13内の超純水の水位が感知され、希釈タンク13内の超純水が所定の水位に達したときに、超純水の供給を停止する検知信号が制御装置28に入力され、希釈タンク13内への超純水の供給が停止される。これにより、希釈タンク13内で超純水が、原液計量工程S100で計量された原液を好ましくは20〜40倍、より好ましくは30倍程度に希釈する量で計量される。超純水計量工程S300で計量される超純水の量は、原液計量工程S100で計量された原液の量と、水素水に添加されるアンモニア水の濃度に応じて適宜設定することができる。例えば、原液計量工程S100で50mLの原液を計量し、10倍に希釈する場合、超純水計量工程S300では、450mLの超純水が計量されればよい。
【0035】
超純水計量工程S300を行った後、図1に示すアンモニア水添加部200のバルブ16が開とされ、計量された超純水により希釈されたアンモニア水が希釈タンク13から供給タンク14内に落差によって導入される(希釈工程S400)。
【0036】
上記原液計量工程S100から希釈工程S400を適宜繰り返すことで、供給タンク14に所定量の希釈アンモニア水が貯留される。そして、上記原液計量工程S100から希釈工程S400が所定の運転期間ごとに行われ、計量タンク12で生成するアンモニア由来の微粒子が超純水で洗浄されながら希釈アンモニア水が調製される。
【0037】
供給タンク14に貯留されたアンモニア水は、薬注ポンプ19によって、アンモニア水供給管18を介して水素水供給管17内を通流する水素水に所定のアンモニア濃度となるように給液され、洗浄用水素水が調製される。
【0038】
洗浄用水素水中のアンモニアの濃度は例えば導電率を指標として測定され、例えば40μS/cm(アンモニア濃度で20ppm相当)に調製される。洗浄用水素水中のアンモニアの濃度は、導電率計で測定することができる。洗浄用水素水中のアンモニアの濃度は、導電率の測定値に基いて、上記濃度となるように、制御装置が薬注ポンプ19に濃度制御信号を出力し、例えばストローク数を制御することで調製される。
【0039】
洗浄用水素水の製造装置1は、少なくともアンモニア水添加部200が、例えば上記電子工業製品の製造工場で用いられるクリーンルーム内に備えられるように設置される。一般的に、クリーンルームにおいては、孔径0.1μm程度のガラス繊維製のヘパフィルタ(超高性能フィルタ)等により空気中の浮遊微小粒子等を捕集して清浄した空気をクリーンルーム内に拡散させている。この拡散されたクリーンルーム内の空気を空調機等で吸い込み、再度フィルタを通過させ、クリーンルーム内に循環させている。これにより、クリーンルーム内に取り入れられる外気の量を極力少なくして、内部の清浄度を高めている。
【0040】
しかしながら、上記ヘパフィルタでは、空気中の浮遊微小粒子が除去できるものの、フィルタを通過する物質(不純物)は取り除かれず、不純物がクリーンルーム内を浮遊することになる。このような不純物としては、例えば、アンモニア、塩酸、硫酸、硝酸、フッ酸、炭酸等がある。このため、外気中に混入された、電子工業製品の製造工場内で放出される不純物を除去してクリーンルーム内に取り入れるために、クリーンルームには、ケミカルフィルタや、エアーワッシャ等を設置することも行われる。
【0041】
本発明者らは、枚葉式の半導体ウエハの洗浄工程において、上記洗浄工程を行わずにアンモニア水の原液を希釈し、この希釈されたアンモニア水の添加された水素水で洗浄された半導体ウエハ表面上に、まれに、微粒子状のごみが発生することを見出した。また、この微粒子状のごみは、枚葉洗浄を繰り返すに従って増加していくこともわかった。
【0042】
この、半導体ウエハ表面上に発生した微粒子は、ウエハ表面を走査型電子顕微鏡等(SEM)によって観察して発見された。上記観察によれば、微粒子は、大きさが、0.05〜0.1μm程度の、不定形状の微粒子であり、当該形状から判断すると、配管等から生じた切削屑や微生物ではないものと考えられる。本発明者らは、水素水自体が不純物を含まない超純水を用いて調製されていることも考慮して、水素水の調製過程で微粒子の混入が疑われる箇所等を検討した結果、これら微粒子は、計量タンク12内に残留するアンモニアに由来するものであると考え、調査を行って本発明を完成した。すなわち、従来の方法において上記微粒子状のごみが生じた際に、一旦洗浄装置への水素水の供給を止めて、計量タンク内を超純水によって洗浄した後、上記同様にウエハ表面を観察したところ、これによりアンモニア水を水素水に添加して洗浄装置に繰り返し供給した場合にも、上記微粒子の増加がみられなくなることを知見した。
【0043】
このことから、上記のように、ヘパフィルタを通過した不純物を含むクリーンルーム中の空気が計量タンク12に取り込まれ、不純物のうち、アンモニアと反応し得る化合物が、計量タンク12内に残留するアンモニアと化学反応を起こし、微粒子が発生すると考えられる。そして、その微粒子が、アンモニア水希釈タンク、そしてアンモニア水供給タンクを通じて、水素水中に供給され、その水素水で洗浄されたウェハ上に、微粒子として付着するという現象が起きると考えられる。
【0044】
上記した洗浄用水素水の製造装置及び製造装置によれば、洗浄工程S200において、計量タンク12内に付着された濃厚アンモニア水が洗浄、除去されるため、このアンモニア由来の微粒子の発生が抑制される。その結果、微粒子が水素水中に供給されるのを回避し、その水素水で洗浄されたウェハ上への微粒子の付着を抑制することができるものである。
【0045】
なお、本発明の洗浄用機能水の製造装置及び製造装置によれば、従来用いられている薬液希釈手段の、例えば、超純水供給管の接続部位など、配管経路を変更するだけで、ウェハ上への微粒子の付着を抑制することができるものである。そのため、上記ケミカルフィルタや、エアーワッシャ等を設置してクリーンルーム内へ不純物の混入を防止して、これによりアンモニア由来の微粒子の発生を防止する方法に比べて、簡素な装置かつ簡易な操作でウェハ上の微粒子の付着を抑制することができるので、経済的に有利である。
【0046】
さらに、クリーンルーム内に混入されたどのような不純物によってアンモニア由来の微粒子が発生するかは検討課題であり、アンモニア由来の微粒子の発生メカニズムの一部は未だ不明りょうである。そのため、上記ケミカルフィルタ等の設置自体が、アンモニア由来の微粒子の発生を防止するのに有効かどうかの懸念があり、実際にケミカルフィルタ等を設置して検証するほかない。この点を考慮すると、本発明の方法によれば、アンモニア由来の微粒子の発生を確実に防止し得るため、工業的、経済的に有利である。
【実施例】
【0047】
次に、実施例について説明する。
(実施例1)
図1に示すのと同様の装置を用いて、洗浄用の水素水を製造した製造された洗浄用の水素水は、枚葉式の洗浄装置において、半導体ウエハの洗浄に用いた。
【0048】
先ず、アンモニア水添加部200において、バルブ15を閉じた状態で、アンモニア水原液(約29質量%)を計量タンク12の下部から計量タンク12内に20〜50mL/minの流量で液面が暴れないように通水し、50mL計量した。アンモニア水原液が計量された後、計量タンク12の下部のバルブ15を開いて、計量タンク12の下部に配管で連結された希釈タンク13に通液した。
【0049】
次に、計量タンク12の下部のバルブ15を閉じて、計量タンク12の下部に接続された超純水供給管25から計量タンク12内に超純水を1000mL/minの流量で通水した。超純水は、計量タンク12の満水後も通水し続け、オーバーフローさせて計量タンク12上部のオーバーフロードレイン22より排水した。この工程は、約10分間行った。これにより、計量タンク12内に残留した濃厚アンモニア水の洗浄、排水を行った。
【0050】
その後、計量タンク12の下部のバルブ16を開けて、計量タンク12を介して希釈タンク13内に超純水を供給した。超純水は、希釈タンク13内のレベルセンサーを用いて1450mLを計量した。このようにして、希釈タンク13内で、アンモニア水原液を29倍に希釈して濃度約1質量%のアンモニア水を調製した。調製されたアンモニア水は、供給タンク14内に一旦貯留した後、薬注ポンプ19によって、水素水供給管内17において、水素水生成部100で生成された水素水(水素濃度1.2ppm)中に添加した。水素水生成部100としては、図2と同様の中空糸溶解膜式の水素水製造装置を用いた。
【0051】
供給タンク14内のアンモニア水が500mL以下になった際に、計量タンク12内で、再度上記アンモニア水原液の計量を行い、上記同様にアンモニア水の希釈操作を行った。初回の計量タンク12内におけるアンモニア水原液の計量から、次の計量タンク12内におけるアンモニア水原液の計量までの期間は、約1時間であった。このようにして、アンモニア水原液の計量、希釈、水素水への添加の操作を連続して繰り返しながら、製造された洗浄用水素水を枚葉式の洗浄装置に供給して、半導体ウエハの洗浄を行った。
【0052】
希釈されたアンモニア水の、水素水への供給開始(洗浄初期)から所定の期間経過後に、洗浄後のウエハの表面をSEMによって観察し、付着した微粒子の数を測定した。測定した微粒子数を、洗浄開始直後(洗浄初期)のウエハ表面の微粒子数を1とした相対値で表1に示す。実施例では、枚葉洗浄を繰り返した際にも洗浄後のウエハ表面の微粒子数は、洗浄初期からの増加がみられなかった。
【0053】
(比較例)
実施例で用いた装置において、超純水供給管25を、計量タンク12に代えて、希釈タンク13の下部に接続して、希釈用の超純水を希釈タンク13内に供給した。計量タンク12の洗浄を行わない以外は実施例と同様の操作を行い、洗浄後のウエハ表面の微粒子数の測定を行った。測定した微粒子数を、洗浄開始直後のウエハ表面の微粒子数を1とした相対値で表1に示す。
【0054】
比較例では、希釈されたアンモニア水の水素水への供給開始(洗浄初期)の約2ヶ月後から洗浄後のウエハ表面の微粒子数の増加傾向がみられ、約5月後には相対評価で希釈したアンモニア水の水素水への供給開始時の20倍の微粒子が計測された。
【0055】
(実施例2)
比較例において約4か月後に、実施例1と同様にして計量タンク12の洗浄を行ったところ、ウエハ表面上に発生した微粒子数は洗浄初期と同等の数まで減少した。このことから、ウエハ表面の微粒子が、計量タンク12内に残留するアンモニア由来のものであると考えられる。
【0056】
【表1】
【0057】
上記実施例に示されるように、本発明の水素水の製造方法及び製造装置によれば、アンモニアの溶解した水素水で洗浄後の基板表面の微粒子数を低減させることができる。
【符号の説明】
【0058】
1…洗浄用水素水の製造装置、11…原液貯留槽、12…計量タンク、13…希釈タンク、14…供給タンク、15,16…バルブ、17…水素水供給管、18…アンモニア水供給管、19…薬注ポンプ、20,27…レベルセンサー、21…通気管、22…オーバーフロードレインン、23…エアフィルタ、24…超純水貯留槽、25…超純水供給管、26…原液供給管、100,101…水素水生成部、200…アンモニア水添加部、102…中空糸膜溶解槽、103…中空糸膜外側、104…中空糸膜内側、105…ガス供給管、106…被処理水供給管、S100…原液計量工程、S200…計量タンク洗浄工程、S300…超純水計量工程、S400…希釈工程。
図1
図2
図3