【課題】 環境的に安全であり、かつ安定した効果が得られる塩素含有樹脂用安定化剤及び該安定化剤を配合した安定な塩素含有樹脂組成物、並びに塩素含有樹脂組成物の安定化方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 特定の構造を有するエポキシシクロヘキサンジカルボン酸ジエステルが、少量でも安定化剤としての効果に優れ,更に配合量を増やしても揮発性等の問題の生じないエポキシ系の安定化剤として有効であることが確認され、該安定化剤を配合することにより、フォギング等の懸念がなく、安定して使用することのできる安定化された塩素含有樹脂組成物並びにその成形体を得ることができた。
前記アルキル基が、主として炭素数9〜11のアルキル基から構成され、炭素数9のアルキル基/炭素数10のアルキル基/炭素数11のアルキル基の比率(モル比)が10〜25/35〜50/30〜45の範囲である請求項1又は2に記載の塩素含有樹脂用安定化剤。
4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジエステルが、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステルをエポキシ化反応して得られたものである請求項1〜7の何れかに記載の塩素含有樹脂用安定化剤。
前記4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステルが、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸又はその酸無水物と炭素数7〜13の飽和脂肪族アルコールをエステル化反応して得られたものであり、該飽和脂肪族アルコールが炭素数9〜11の飽和脂肪族アルコールを主成分とし、かつ該飽和脂肪族アルコールの直鎖率(モル比)が、50〜99%である請求項8に記載の塩素含有樹脂用安定化剤。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、上記の問題が解決できる、即ち環境的に安全であり、かつ安定した効果が得られる塩素含有樹脂用安定化剤を提供することを目的とし、より具体的には、安定化剤としての効果に優れ、かつ樹脂との相溶性が良好であり、耐揮発性の改善された塩素含有樹脂用安定化剤を提供することである。
【0011】
本発明者らは、上述のエポキシ系化合物の安定化剤としての優位性に着目し、上記課題、即ち近年の厳しい要求に対応できる様な、少量でも安定化剤としての効果を示し,更に配合量を増やしても揮発性等の問題の生じないエポキシ系の安定化剤の開発に向けて鋭意検討した結果、特定の構造を有するエポキシシクロヘキサンジカルボン酸ジエステルが、安定化剤としての効果に優れ、かつ樹脂との相溶性が良好であり、耐揮発性にも優れていることを見出し、本発明の完成に至った。
【0012】
即ち、本発明は以下の特定の構造を有する新規なエポキシシクロヘキサンジカルボン酸ジエステルからなる塩素含有樹脂用安定化剤及び該安定化剤を含んでなる安定化された塩素含有樹脂組成物、更には塩素含有樹脂組成物の安定化方法を提供するものである。
【0013】
[項1] 下記一般式(1)で示される4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジエステルからなり、かつ該ジカルボン酸ジエステルを構成するアルキル基の全量に対する直鎖状のアルキル基の比率(モル比)が50〜99%であることを特徴とする塩素含有樹脂用安定化剤。
【化1】
(式中、R
1及びR
2は同一又は異なって、炭素数7〜13の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を表す。)
【0014】
[項2] 前記アルキル基の炭素数が、8〜12である[項1]に記載の塩素含有樹脂用安定化剤。
【0015】
[項3] 前記アルキル基が、主として炭素数9〜11のアルキル基から構成され、炭素数9のアルキル基/炭素数10のアルキル基/炭素数11のアルキル基の比率(モル比)が10〜25/35〜50/30〜45の範囲である[項1]又は[項2]に記載の塩素含有樹脂用安定化剤。
【0016】
[項4] 前記アルキル基が、90%以上(モル比)の炭素数9のアルキル基を含む[項1]又は[項2]に記載の塩素含有樹脂用安定化剤。
【0017】
[項5] 前記アルキル基中の直鎖状のアルキル基の比率が、55〜95%である[項1]〜[項4]の何れかに記載の塩素含有樹脂用安定化剤。
【0018】
[項6] 前記アルキル基中の直鎖状のアルキル基の比率が、60〜95%である[項5]に記載の塩素含有樹脂用安定化剤。
【0019】
[項7] 前記アルキル基中の直鎖状のアルキル基の比率が、70〜95%である[項6]に記載の塩素含有樹脂用安定化剤。
【0020】
[項8] 4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジエステルが、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステルをエポキシ化反応して得られる[項1]〜[項7]の何れかに記載の塩素含有樹脂用安定化剤。
【0021】
[項9] 前記4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステルが、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸又はその酸無水物と炭素数7〜13の飽和脂肪族アルコールをエステル化反応して得られたものであり、該飽和脂肪族アルコールが炭素数9〜11の飽和脂肪族アルコールを主成分とし、かつ該飽和脂肪族アルコールの直鎖率(モル比)が、50〜99%である[項8]に記載の塩素含有樹脂用安定化剤。
【0022】
[項10] 塩素含有樹脂と[項1]〜[項9]の何れかに記載の安定化剤を含有することを特徴とする安定化された塩素含有樹脂組成物。
【0023】
[項11] 前記安定化剤の含有量が、塩素含有樹脂100重量部に対して、1〜30重量部である[項10]に記載の塩素含有樹脂組成物。
【0024】
[項12] 安定化剤の含有量が、塩素含有樹脂100重量部に対して、1重量部以上、20重量部未満である[項11]に記載の塩素含有樹脂組成物。
【0025】
[項13] 安定化剤の含有量が、塩素含有樹脂100重量部に対して、5重量部以上、20重量部未満である[項12]に記載の塩素含有樹脂組成物。
【0026】
[項14] 塩素含有樹脂が、塩化ビニル系樹脂である[項10]〜[項13]の何れかに記載の塩素含有樹脂組成物。
【0027】
[項15] 更に、可塑剤を含む[項10]〜[項14]の何れかに記載の塩素含有樹脂組成物。
【0028】
[項16] 可塑剤の含有量が、塩素含有樹脂100重量部に対して、5〜150重量部である[項15]に記載の塩素含有樹脂組成物。
【0029】
[項17] 前記可塑剤が、脂肪族多価カルボン酸エステル、芳香族多価カルボン酸エステル、脂環族多価カルボン酸エステル、ポリエステル、ポリエーテルよりなる群より選ばれた一種又は二種以上である、[項15]又は[項16]に記載の塩素含有樹脂組成物。
【0030】
[項18] 可塑剤が、フタル酸エステル、トリメリット酸エステル、シクロヘキサンジカルボン酸エステルからなる群より選ばれた一種又は二種以上である、[項17]に記載の塩素含有樹脂組成物。
【0031】
[項19] 可塑剤が、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、ジ(2−プロピルヘプチル)フタレート(DPHP)、フタル酸ジウンデシル(DUP)、フタル酸ジアルキル(C9〜C11)(PL−200)、フタル酸ジアルキル(C10〜C13)(ビニサイザー124)、フタル酸ジトリデシル(ビニサイザー20)、トリメリット酸トリノルマルアルキル(C8,C10)(トリメックスN−08)、トリメリット酸トリノルマルオクチル(トリメックス New NSK)、トリメリット酸イソノニルエステル(C−9N)、90%以上の炭素数9の脂肪族飽和アルコールを含み、かつ直鎖状の飽和脂肪族アルコールの比率が50〜99%である飽和脂肪族アルコールのトリメリット酸トリエステル(トリメリット酸トリノニル(分岐及び直鎖)、TL9TM)からなる群より選ばれた一種又は二種以上である、[項18]に記載の塩素含有樹脂組成物。
【0032】
[項20] 前記塩素含有樹脂用安定化剤と可塑剤を予め混合した後、塩素含有樹脂に加える方法により得られることを特徴とする、[項15]〜[項19]の何れかに記載の塩素含有樹脂組成物。
【0033】
[項21] [項10]〜[項20]の何れかに記載の塩素含有樹脂組成物から得られた塩素含有樹脂成形体。
【0034】
[項22] 下記一般式(1)で示される4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジエステルから選ばれる少なくとも一種を塩素含有樹脂に含有させることにより、該塩素含有樹脂を安定化する方法であって、かつ該ジカルボン酸ジエステルを構成するアルキル基の全量に対する直鎖状のアルキル基の比率(モル比)が50〜99%である、塩素含有樹脂を安定化する方法。
【化2】
(式中、R
1及びR
2は同一又は異なって、炭素数7〜13の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を表す。)
【0035】
[項23] 前記アルキル基が、主として炭素数9〜11のアルキル基から構成され、炭素数9のアルキル基/炭素数10のアルキル基/炭素数11のアルキル基の比率(モル比)が10〜25/35〜50/30〜45の範囲である[項22]に記載の方法。
【0036】
[項24] 前記アルキル基が90%以上(モル比)の炭素数9のアルキル基を含む、[項22]に記載の方法。
【0037】
[項25] 前記アルキル基中の直鎖状のアルキル基の比率が55〜95%である、[項22]〜[項24]の何れかに記載の方法。
【0038】
[項26] 4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジエステルが、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステルをエポキシ化反応して得られたものである、[項22]〜[項25]の何れかに記載の方法。
【0039】
[項27] 前記4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステルが、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸又はその酸無水物と炭素数7〜13の飽和脂肪族アルコールをエステル化反応して得られたものであり、該飽和脂肪族アルコールが炭素数9〜11の飽和脂肪族アルコールを主成分とし、かつ該飽和脂肪族アルコールの直鎖率(モル比)が50〜99%である、[項26]に記載の方法。
【0040】
[項28] [項1]〜[項7]の何れかに記載の塩素含有樹脂用安定化剤に使用するための4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジエステルの製造方法であって、
必要に応じて触媒の存在下で4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸又はその酸無水物と炭素数7〜13の飽和脂肪族アルコールを、必要に応じて不活性ガスの雰囲気下若しくは気流下で、エステル化する工程、及びエステル化して得られた4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステルをエポキシ化剤の存在下でエポキシ化する工程を具備する、4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジエステルの製造方法。
【0041】
[項29] 飽和脂肪族アルコールが、主として炭素数9〜11の飽和脂肪族アルコールから構成されかつ炭素数9の飽和脂肪族アルコール/炭素数10の飽和脂肪族アルコール/炭素数11の飽和脂肪族アルコールの比率(モル比)が10〜25/35〜50/30〜45の範囲である、又は炭素数9の飽和脂肪族アルコールの比率(モル比)が90%以上の範囲である、[項28]に記載の製造方法。
【0042】
[項30] 飽和脂肪族アルコールの直鎖率(モル比)が、50〜99%である[項28]又は[項29]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0043】
本発明の塩素含有樹脂用安定化剤は、安定化剤としての効果(安定化効果)が優れることに加えて、樹脂との相溶性に良好であり、耐揮発性が改善されており、更にブリードや積層樹脂等への移行性が少なく、長期間安定した効果を示す塩素含有樹脂用安定化剤として使用することができる。
【0044】
更に、該安定化剤を配合した塩素含有樹脂組成物は、フォギング等の懸念がなく、安定して使用することのできる安定化された塩素含有樹脂組成物である。また、その安定化された塩素含有樹脂組成物の成形体は、電線被覆等の用途で非常に有用であり、更には該安定化剤を用いた本発明に係る安定化法方法を採用することにより、これまで使用が困難とされていた長期間屋外で使用する様な用途においても塩素含有樹脂使用の可能性を広げることができる。
【発明を実施するための形態】
【0045】
<塩素含有樹脂用安定化剤>
本発明の塩素含有樹脂用安定化剤は、下記一般式(1)で示される特定の構造を有するエポキシシクロヘキサンジカルボン酸ジエステルからなることを特徴とする。
【化3】
なお、式中、R
1及びR
2は同一又は異なって、炭素数7〜13の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を表し、かつ式中R
1、R
2で示されるアルキル基の全量に対する直鎖状のアルキル基の比率(モル比)が、50〜99%、好ましくは55〜95%、より好ましくは60〜95%、特に好ましくは70〜95%である。なお、この比率を満たすことは、エポキシシクロヘキサンジカルボン酸ジエステルの混合物となる場合を含むことを意味する。そして混合物の場合の比率は、その混合物全体のアルキル基の全量に対する直鎖状のアルキル基の比率(モル比)を意味する。
【0046】
更に、前記アルキル基は、好ましい態様として、主として炭素数9〜11のアルキル基から構成され、炭素数9のアルキル基/炭素数10のアルキル基/炭素数11のアルキル基の比率(モル比)が10〜25/35〜50/30〜45の範囲であるか、または、90%以上(モル比)の炭素数9のアルキル基を含む。
【0047】
本発明のエポキシシクロヘキサンジカルボン酸ジエステル(以下、「本エポキシ化合物」という)は、安定化剤としての性能を満たすものであれば、特にその製造方法により限定されるものではないが、例えば、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸またはその酸無水物と特定の構造の飽和脂肪族アルコールをエステル化反応し、得られた4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステル(以下、「本エステル」という)を所定の条件でエポキシ化することにより、容易に得られる。また、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸またはその酸無水物をエポキシ化後、得られた4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸またはその酸無水物と特定の構造の飽和脂肪族アルコールをエステル化する方法で得ることもできる。更に、上記飽和脂肪族アルコールの種類によっては、予め炭素数1〜6程度の低級アルコールとエステル化後、上記飽和脂肪族アルコールを加えて、エステル交換反応により得る方法もある。簡便性等、実用性の観点から、エステル化後にエポキシ化する方法が最も好ましい。
【0048】
即ち、本発明のエポキシシクロヘキサンジカルボン酸ジエステルは、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸またはその酸無水物と飽和脂肪族アルコールをエステル化反応して得られた4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステル中のシクロヘキセン環上の不飽和結合をエポキシ化した構造を有することを特徴とする。
【0049】
[飽和脂肪族アルコール]
上記のエステル化反応又はエステル交換反応に用いられる飽和脂肪族アルコールは、炭素数7〜13の直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールであり、好ましく炭素数8〜12、より好ましくは9〜11の直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールであり、特に好ましくは、(i)炭素数9の飽和脂肪族アルコールを90重量%以上、より好ましくは95%重量以上含む直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族アルコール、又は(ii)主として炭素数9〜11の飽和脂肪族アルコールからなり、炭素数9のアルキル基/炭素数10のアルキル基/炭素数11のアルキル基の比率(モル比)が10〜25/35〜50/30〜45の範囲である飽和脂肪族アルコールである。なお、上記「主として」とは、飽和脂肪族アルコール全体に占める炭素数9〜11の飽和脂肪族アルコールの比率が90%以上、好ましくは95%以上を意味する。当該飽和脂肪族アルコールは、前記一般式(1)で示されるエポキシシクロヘキサンジカルボン酸ジエステルを構成する飽和脂肪族アルキル基となる原料アルコールであり、即ち前記説明は該アルキル基の説明と同義となる。
【0050】
また、前記飽和脂肪族アルコールは、該アルコール中に占める直鎖状の飽和脂肪族アルコールの比率(モル比)が、50〜99%、好ましくは55〜95%、より好ましくは60〜95%、特に好ましくは70〜95%の条件を満たしていることを特徴とする。
【0051】
本発明に係る飽和脂肪族アルコールの態様の詳細はとしては、(i)炭素数7〜13の直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールからなり、炭素数9の飽和脂肪族アルコールの比率(モル比)が90%以上、好ましくは95%以上で、かつ直鎖状の飽和脂肪族アルコールの占める比率(モル比)が50〜99%、好ましくは55〜95%、より好ましくは60〜95%である態様、または、(ii)炭素数7〜13の直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールからなり、主として炭素数9〜11の飽和脂肪族アルコールの混合物であり、更に、炭素数9、10、11の各アルコールの占める比率が10〜25/35〜50/30〜45となる範囲であり、かつ直鎖状の飽和脂肪族アルコール占める比率(モル比)が50〜99%、好ましくは55〜95%、より好ましくは60〜95%である態様等が推奨される。
【0052】
炭素数7未満の飽和脂肪族アルコールが含まれると、十分な安定化効果が得られ難いだけでなく、耐揮発性も低下し、フォギング等の問題が生ずる可能性がある。また炭素数13を越えた飽和脂肪族アルコールが含まれると、樹脂との相溶性が悪くなり、樹脂との混合むらが生じ、その結果安定化効果にばらつきが生ずる懸念があり、いずれも好ましくない。同様に、直鎖状の飽和脂肪族アルコールの比率が50%未満の場合には、耐揮発性が低下する傾向にあり、直鎖状の飽和脂肪族アルコールの比率が99%を越えると樹脂との相溶性が悪くなり、安定化の効果にばらつきが生ずる懸念が出てくるため、いずれも好ましくない。
【0053】
90%以上の炭素数9の飽和脂肪族アルコールを含み、かつ直鎖状の飽和脂肪族アルコールの比率が50〜99%である飽和脂肪族アルコールは、(1)1−オクテン、一酸化炭素と水素とのヒドロホルミル化反応による炭素数9のアルデヒドを製造する工程及び(2)炭素数9のアルデヒドを水素添加してアルコールに還元する工程を具備する製造方法により製造することができ、その製造方法で得られた飽和脂肪族アルコールをそのまま用いるか又は含有させることにより、本発明に係る飽和脂肪族アルコールとすることができる。
【0054】
前記工程(1)のヒドロホルミル化反応は、例えば、コバルト触媒又はロジウム触媒の存在下、1−オクテン、一酸化炭素及び水素を反応することにより炭素数9のアルデヒドを製造することができる。
【0055】
前記工程(2)の水素添加は、例えば、ニッケル触媒又はパラジウム触媒等の貴金属触媒の存在下、炭素数9のアルデヒドを水素加圧化で、水素添加することによりアルコールに還元することができる。市販品の具体例としては、シェルケミカルズ社のリネボール9などが挙げられる。
【0056】
同じく、主として炭素数9〜11の飽和脂肪族アルコールからなり、炭素数9のアルキル基/炭素数10のアルキル基/炭素数11のアルキル基の比率(モル比)が10〜25/35〜50/30〜45の範囲である飽和脂肪族アルコールで、直鎖状の飽和脂肪族アルコールの比率(モル比)が50〜99%である飽和脂肪族アルコールは、(1)1−オクテン、1−ノネン、1−デセンと一酸化炭素と水素とのヒドロホルミル化反応による炭素数9〜11のアルデヒドを製造する工程及び(2)炭素数9〜11のアルデヒドを水素添加してアルコールに還元する工程を具備する製造方法により製造することができ、その製造方法で得られた飽和脂肪族アルコールをそのまま用いるか又は含有させることにより、本発明に係る飽和脂肪族アルコールとすることができる。
【0057】
前記工程(1)のヒドロホルミル化反応は、例えば、コバルト触媒又はロジウム触媒の存在下、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、一酸化炭素及び水素を反応することにより炭素数9〜11のアルデヒドを製造することができる。
【0058】
前記工程(2)の水素添加は、例えば、ニッケル触媒又はパラジウム触媒等の貴金属触媒の存在下、炭素数9〜11のアルデヒドを水素加圧下で、水素添加することによりアルコールに還元することができる。市販品の具体例としては、シェルケミカルズ社のネオドール911などが挙げられる。
【0059】
[エステル化反応]
本発明に係るエステル化反応とは、本エポキシ化合物を得るためのエポキシ化反応の原料である4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステル(本エステル)を得るための上記アルコールと4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸又はその酸無水物とのエステル化反応を意味し、そのエステル化反応を行うに際し、該アルコールは、例えば、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸又はその酸無水物1モルに対して、好ましくは2.00モル〜5.00モル、より好ましくは2.01モル〜3.00モル、特に2.02モル〜2.50モルを使用することが推奨される。
【0060】
エステル化反応に触媒を使用する場合、その触媒としては、鉱酸、有機酸、ルイス酸類等が例示される。より具体的には、鉱酸として、硫酸、塩酸、燐酸等が例示され、有機酸としては、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等が例示され、ルイス酸としては、アルミニウム誘導体、スズ誘導体、チタン誘導体、鉛誘導体、亜鉛誘導体等が例示され、これらの1種又は2種以上を併用することが可能である。
【0061】
それらの中でも、p−トルエンスルホン酸、炭素数3〜8のテトラアルキルチタネート、酸化チタン、水酸化チタン、炭素数3〜12の脂肪酸スズ、酸化スズ、水酸化スズ、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、酸化鉛、水酸化鉛、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムが特に好ましい。その使用量は、例えば、エステル合成原料である酸成分およびアルコール成分の総重量に対して、好ましくは0.01重量%〜5.0重量%、より好ましくは0.02重量%〜4.0重量%、特に0.03重量%〜3.0重量%を使用することが推奨される。
【0062】
エステル化温度としては、100℃〜230℃が例示され、通常、3時間〜30時間で反応は完結する。
【0063】
本エステルの原料である、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸又はその酸無水物は、特に制限はなく、公知の方法で製造したものや、市販品、試薬等で入手できるものなどが使用できる。例えば、市販品としてリカシッドTH(商品名,新日本理化(株))などが例示される。4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物は、通常、無水マレイン酸と1,3−ブタジエンとをディールス・アルダー反応して得られる。エステル化反応の観点から、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物を使用することが推奨される。
【0064】
エステル化においては、反応により生成する水の留出を促進するために、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサンなどの水同伴剤を使用することが可能である。
【0065】
また、エステル化反応時に原料、生成エステル及び有機溶媒(水同伴剤)の酸化劣化により酸化物、過酸化物、カルボニル化合物などの含酸素有機化合物を生成すると耐熱性、耐候性等に悪影響を与えるため、系内を窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下又は不活性ガス気流下で、常圧ないし減圧下にて反応を行うことが望ましい。エステル化反応終了後、過剰若しくは原料アルコールを減圧下または常圧下にて留去することが推奨される。
【0066】
上記エステル化方法により得られた本エステルは、引き続き、必要に応じて塩基処理(中和処理)→水洗処理、液液抽出、蒸留(減圧、脱水処理)、吸着精製等により精製してもよい。
【0067】
塩基処理に用いる塩基としては、塩基性の化合物であれば特に制約はなく、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムなどが例示される。
【0068】
吸着精製に用いる吸着剤としては、活性炭、活性白土、活性アルミナ、ハイドロタルサイト、シリカゲル、シリカアルミナ、ゼオライト、マグネシア、カルシア、珪藻土などが例示される。それらを1種で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0069】
上記処理は、常温で行なっても良いが、40〜90℃程度に加温して行なうこともできる。
【0070】
[エポキシ化反応]
本発明に係るエポキシ化反応とは、本エポキシ化合物を得るための上記本エステル中のシクロヘキセン環上の不飽和結合のエポキシ化反応を意味し、通常、「有機合成化学、第23巻第7号、612〜619頁(1985)」等に記載されているよく知られたエポキシ化反応を用いて、容易に行うことができる。
例えば、(i)エポキシ化剤に過酢酸や過蟻酸の様な有機過酸を用いる方法や(ii)エポキシ化剤に過酸化水素を用いる方法などが挙げられる。
【0071】
より具体的には、(i)の方法の場合、例えば、過酸化水素と無水酢酸または酢酸を硫酸のような強酸を触媒として反応させて得られた過酢酸を、本エステルに加え、20〜30℃で数時間攪拌した後、徐々に温度を上げていき、50〜60℃に到達した後、2〜3時間その温度を保持して反応を完結させることができる。上記有機過酸としては、上記以外にも、モノ過フタル酸、過メタクロル安息香酸、過トリフルオル酢酸なども使うことができる。
【0072】
また、(ii)の方法の場合、例えば、蟻酸などの酸素キャリアーや硫酸などの強酸触媒の共存下、本エステルに反応させることによりエポキシ化することができる。より具体的には、過酸化水素1モルに対して、酢酸または蟻酸を0.5モル以下、触媒として硫酸を0.05モル以下の少量用いて、40〜70℃で2〜15時間その温度を保持して反応させることにより、容易に本エステルをエポキシ化させることができる。上記触媒としては、上記以外にも、燐酸、塩酸、硝酸、硼酸、またはその塩などがよく知られており、また、スルホン酸型強酸性陽イオン交換樹脂や酸化アルミニウムなども有効である。
【0073】
上記エポキシ化方法により得られた本エポキシ化合物は、引き続き、必要に応じて液液抽出、減圧蒸留、吸着精製等により精製してもよい。
【0074】
吸着精製に用いる吸着剤としては、活性炭、活性白土、活性アルミナ、ハイドロタルサイト、シリカゲル、シリカアルミナ、ゼオライト、マグネシア、カルシア、珪藻土などが例示される。それらを1種で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0075】
上記エポキシ化後の精製処理は、常温で行なっても良いが、40〜100℃程度に加温して行なうこともできる。
【0076】
<塩素含有樹脂組成物>
本発明の安定化された塩素含有樹脂組成物は、上述した本エポキシ化合物を安定化剤として塩素含有樹脂に配合することによる得られる。
【0077】
[塩素含有樹脂]
本発明で用いられる塩素含有樹脂とは、その構造中に塩素を含む樹脂であれば、特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレンや塩素化ポリプロピレンなどの塩素化ポリオレフィン、塩素化ポリ塩化ビニルなどの単独重合体、更に、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−プロピレン共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−スチレン共重合体、塩化ビニル−イソブチレン共重合体、塩化ビニル−ブタジエン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−塩素化プロピレン共重合体、塩化ビニル−マレイン酸エステル共重合体、塩化アリル共重合体、塩化ビニル−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、塩化ビニル−スチレン−無水マレイン酸三元共重合体、塩化ビニル−スチレン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−イソプレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン−酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、及び塩化ビニル−各種ビニルエーテル共重合体などの共重合体等が挙げられる。
【0078】
また、クロロプレン系合成ゴム、エピクロロヒドリンゴム及びその共重合体、塩酸ゴム、塩素化ゴムなどの塩素を含むゴムまたはエラストマーの系でも本発明に係る安定化剤を使用することができる。
【0079】
上記塩素含有樹脂は、単独系であってもよく、他の相溶性の樹脂、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体等の樹脂とのブレンド系であってもよい。
【0080】
なかでも、塩化ビニル系樹脂は、加工しやすく、得られた成形体の特性に優れ、広く使われている塩素含有樹脂である。
【0081】
塩化ビニル系樹脂とは、上述の通り、塩化ビニルあるいは塩化ビニリデンの単独重合体及び塩化ビニルあるいは塩化ビニリデンの共重合体であり、その製造方法は、従来公知の重合方法で行われる。例えば、汎用塩化ビニル樹脂の場合は、油溶性重合触媒の存在下に懸濁重合する方法などが挙げられる。また、塩化ビニルペースト樹脂では水性媒体中で水溶性重合触媒の存在下に乳化重合する方法などが挙げられる。これらの塩化ビニル系樹脂の重合度は、通常300〜5000であり、好ましくは400〜3500、さらに好ましくは700〜3000である。この重合度が低すぎると耐熱性等が低下し、高すぎると成形加工性が低下する傾向がある。
【0082】
共重合体の場合、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン等の炭素数2〜30のα−オレフィン類、アクリル酸およびそのエステル類、メタクリル酸およびそのエステル類、マレイン酸およびそのエステル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アルキルビニルエーテル等のビニル化合物、ジアリルフタレート等の多官能性モノマー及びこれらの混合物と塩化ビニルモノマーとの共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体等のエチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、塩素化ポリエチレン、ブチルゴム、架橋アクリルゴム、ポリウレタン、ブタジエンースチレンーメチルメタクリレート共重合体(MBS)、ブタジエンーアクリロニトリルー(α−メチル)スチレン共重合体(ABS)、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート及びこれらの混合物へ塩化ビニルモノマーをグラフトしたグラフト共重合体等が例示される。
【0083】
[塩素含有樹脂組成物]
本発明に係る安定化された塩素含有樹脂組成物における本エポキシ化合物の含有量としては、配合する樹脂の種類や使用される用途によって適宜選択されるが、塩素含有樹脂100重量部に対して、好ましくは1〜30重量部であり、より好ましくは1重量部以上、20重量部未満、特に好ましくは5重量部以上、20重量部未満である。その含有量が1重量部以上であれば、より優位な安定化効果を得ることが可能であり、特に長期的な安定化効果の面で有利であり、含有量が30重量部以下であれば、どの様な使用環境でも成形品表面へのブリードの問題、積層樹脂や接触するオイル等への移行の問題、更には揮発によりフォギング等の様々な問題が生じる懸念が少なく、好ましい。
【0084】
前記塩素含有樹脂組成物には、本エポキシ化合物と共に他の公知の安定化剤を併用することもできる。また、必要に応じて安定化助剤、酸化防止剤(老化防止剤)、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン等の光安定剤、可塑剤、難燃剤、着色剤、加工助剤、充填剤、滑剤或いは帯電防止剤等の添加剤を適宜配合して使用されることが多い。
【0085】
上記本エポキシ化合物以外の他の安定化剤、添加剤は、1種でまたは2種以上組み合わせて本エポキシ化合物と共に配合されていてもよい。
【0086】
本エポキシ化合物と併用することのできる安定化剤としては、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ラウリン酸マグネシウム、リシノール酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸バリウム、リシノール酸バリウム、ステアリン酸バリウム、オクチル酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、リシノール酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛等の金属を含む有機酸化合物等の金属石鹸化合物、ステアリン酸バリウム−亜鉛、ラウリン酸バリウム−亜鉛、リシノール酸バリウム−亜鉛、オクチル酸バリウム−亜鉛、ステアリン酸カルシウム−亜鉛、ラウリン酸カルシウム−亜鉛、リシノール酸カルシウム−亜鉛、オクチル酸カルシウム−亜鉛等の複合金属を含む有機酸化合物等の金属石鹸化合物、ジメチルスズビス−2−エチルヘキシルチオグリコレート、ジブチルスズマレエート、ジブチルスズビスブチルマレエート、ジブチルスズジラウレート等の有機錫系化合物、アンチモンメルカプタイド化合物、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ樹脂等の本エポキシ化合物以外のエポキシ化合物類等が例示される。中でも、上記金属石鹸化合物の併用は、相乗効果により本エポキシ化合物の安定化効果を増幅する効果を示し、特に好ましい。上記併用できる他の安定化剤を配合する場合、その配合量は、本発明に係る安定化剤の効果を損なわない範囲で適宜選択され、通常、塩素含有樹脂100重量部に対して、0.1〜20重量部程度が推奨される。
【0087】
また、以下の示す様な安定化助剤を併用することも、本エポキシ化合物の効果をより効果的にする方法として有効である。その安定化助剤としては、トリフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、トリデシルフォスファイト等のホスファイト系化合物、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン等のベータジケトン化合物、グリセリン、ソルビトール、ペンタエリスリトール、ポリエチレングリコール等のポリオール化合物、過塩素酸バリウム塩、過塩素酸ナトリウム塩等の過塩素酸塩化合物、ハイドロタルサイト化合物、ゼオライトなどが例示される。安定化助剤を配合する場合、その配合量は、本発明に係る安定化剤の効果を損なわない範囲で適宜選択され、通常、塩素含有樹脂100重量部に対して、0.1〜20重量部程度が推奨される。
【0088】
また、酸化防止剤、紫外線吸収剤酸化防止剤や光安定化剤などを併用することも、本エポキシ化合物の効果をより効果的にする方法として有効である。酸化防止剤としては、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、テトラキス[メチレン−3−(3,5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオネート]メタン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどのフェノール系化合物、アルキルジスルフィド、チオジプロピオン酸エステル、ベンゾチアゾールなどの硫黄系化合物、トリスノニルフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトなどのリン酸系化合物、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、ジアリールジチオリン酸亜鉛などの有機金属系化合物などが例示される。また酸化防止剤を配合する場合、塩素含有樹脂100重量部に対する酸化防止剤の配合量は0.2〜20重量部程度が推奨される。
【0089】
紫外線吸収剤としては、フェニルサリシレート、p−tert−ブチルフェニルサリシレートなどのサリシレート系化合物、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−メトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物、5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール、1−ジオクチルアミノメチルベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系化合物の他、シアノアクリレート系化合物などが例示される。紫外線吸収剤を配合する場合、塩素含有樹脂100重量部に対する紫外線吸収剤の配合量は0.1〜10重量部程度が推奨される。
【0090】
ヒンダードアミン系の光安定剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート及びメチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート(混合物)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドリキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1(オクチルオキシ)−4−ピペリジル)エステル及び1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールと高級脂肪酸のエステル混合物、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの重縮合物、ポリ[{(6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル){(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}}、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N' −ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、N,N' ,N'' ,N''' −テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン等が例示される。光安定剤を配合する場合、塩素含有樹脂100重量部に対する光安定剤の配合量は0.1〜10重量部程度が推奨される。
【0091】
可塑剤としては、従来から使用されている公知の可塑剤が使用でき、例えば、ジエチレングリコールジベンゾエート等の安息香酸エステル類、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(DOP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、ジ(2−プロピルヘプチル)フタレート(DPHP)、フタル酸ジウンデシル(DUP)、フタル酸ジトリデシル(DTDP)、フタル酸ジアルキル(C9〜C11)(PL−200)、フタル酸ジアルキル(C10〜C12)(ビニサイザー124)、フタル酸ジトリデシル(ビニサイザー20)、テレフタル酸ビス(2−エチルヘキシル)(DOTP)、イソフタル酸ビス(2−エチルヘキシル)(DOIP)等のフタル酸エステル類、シクロヘキサン−1, 2−ジカルボン酸ビス(2−エチルヘキシル)(DOCH)、シクロヘキサン−1, 2−ジカルボン酸ジイソノニル(DINCH)等のシクロヘキサンジカルボン酸エステル類、4−シクロヘキセン−1, 2−ジカルボン酸ビス(2−エチルヘキシル)(DOTH)等のシクロヘキセンジカルボン酸エステル類、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル(DOA)、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、アジピン酸ジイソデシル(DIDA)、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル(DOS)、セバシン酸ジイソノニル(DINS)等の脂肪族二塩基酸エステル類、トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル(TOTM)、トリメリット酸トリイソノニル(TINTM)、トリメリット酸トリイソデシル(TIDTM)、トリメリット酸トリノルマルアルキル(C8,C10)(トリメックスN−08)、90%以上の炭素数9の飽和脂肪族アルコールを含み、かつ直鎖状の飽和脂肪族アルコールの比率が50〜99%である飽和脂肪族アルコールのトリメリット酸トリエステル(トリメリット酸トリノニル(分岐鎖及び直鎖、TL9TM)等のトリメリット酸エステル類、ピロメリット酸テトラ−2−エチルヘキシル(TOPM)等のピロメリット酸エステル類、リン酸トリ−2−エチルヘキシル(TOP)、リン酸トリクレジル(TCP)等のリン酸エステル類、ペンタエリスリトール等の多価アルコールのアルキルエステル類、アジピン酸等の2塩基酸とグリコールとのポリエステル化によって合成された分子量800〜4000のポリエステル類、ポリエーテル類、脂環式二塩基酸エステル類、ジカプリン酸−1,4 −ブタンジオール等の脂肪酸グリコールエステル類、アセチルクエン酸トリブチル(ATBC)、アセチルクエン酸トリヘキシル(ATHC)、アセチルクエン酸トリエチルヘキシル(ATEHC)、ブチリルクエン酸トリヘキシル(BTHC)等のクエン酸エステル類、イソソルビドジエステル類、パラフィンワックスやn−パラフィンを塩素化した塩素化パラフィン類、塩素化ステアリン酸エステル等の塩素化脂肪酸エステル類、オレイン酸ブチル等の高級脂肪酸エステル類等が例示される。
【0092】
中でも、フタル酸エステル類、トリメリット酸エステル類等の芳香族多価カルボン酸エステル類、脂環式二塩基酸エステル類等の脂環族多価カルボン酸エステル類、ポリエステル類、ポリエーテル類等が例示され、更に具体的には、フタル酸エステル類、トリメリット酸エステル類、シクロヘキサンジカルボン酸エステル類等が、特に好ましい可塑剤として例示される。前記好ましい可塑剤の具体的な例としては、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、ジ(2−プロピルヘプチル)フタレート(DPHP)、フタル酸ジウンデシル(DUP)、フタル酸ジアルキル(C9〜C11)(PL−200)、フタル酸ジアルキル(C10〜C12)(ビニサイザー124)、フタル酸ジトリデシル(ビニサイザー20)、トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル(TOTM)、トリメリット酸トリノルマルオクチル(トリメックス New NSK)、トリメリット酸トリイソノニル(TINTM)、トリメリット酸トリイソデシル(TIDTM)、トリメリット酸トリノルマルアルキル(C8,C10)(トリメックスN−08)、トリメリット酸トリノニル(分岐及び直鎖)(TL9TM)などが挙げられる。
【0093】
上記可塑剤を含有する場合、その含有量は、使用する用途において要求される硬度に応じて適宜選択されるが、通常、塩素含有樹脂100重量部に対し、1〜200重量部、好ましくは5〜150重量部程度が推奨される。
【0094】
なお、本発明に係る塩素含有樹脂用安定化剤と可塑剤は、別々に塩素含有樹脂に加えても良いが、予め混合した後に、塩素含有樹脂に加える方法がより好ましい。予め混合することにより、樹脂との相溶性の良くない可塑剤の樹脂への相溶化(即ち可塑化効率の良くない可塑剤の可塑化効率の向上という添加効果)、または、安定化剤の含有量が少量の場合の樹脂中での安定化剤の均一性の向上、即ち安定化効果のむらの防止等の効果が期待される。
【0095】
難燃剤としては、水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛等の無機系化合物、クレジルジフェニルホスフェート、トリスクロロエチルフォスフェート、トリスクロロプロピルフォスフェート、トリスジクロロプロピルフォスフェート等のリン系化合物、塩素化パラフィン等のハロゲン系化合物等が例示される。難燃剤を配合する場合、塩素含有樹脂100重量部に対する難燃剤の配合量は0.1〜20重量部程度が推奨される。
【0096】
着色剤としては、カーボンブラック、硫化鉛、ホワイトカーボン、チタン白、リトポン、べにがら、硫化アンチモン、クロム黄、クロム緑、コバルト青、モリブデン橙などが例示される。着色剤を配合する場合、塩素含有樹脂100重量部に対する着色剤の配合量は1〜100重量部程度が推奨される。
【0097】
加工助剤としては、流動パラフィン、ポリエチレンワックス、ステアリン酸、ステアリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド、ブチルステアエレート、ステアリン酸カルシウム、アクリル系等の高分子加工助剤などが例示される。加工助剤を配合する場合、塩素含有樹脂100重量部に対する加工助剤の配合量は0.1〜20重量部程度が推奨される。
【0098】
充填剤としては、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、クレー、タルク、珪藻土、フェライト、などの金属酸化物、ガラス、炭素、金属などの繊維及び粉末、ガラス球、グラファイト、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウムなどが例示される。充填剤を配合する場合、塩素含有樹脂100重量部に対する充填剤の配合量は1〜100重量部程度が推奨される。
【0099】
滑剤としては、シリコーン、流動パラフィン、バラフィンワックス、ステアリン酸金属やラウリン酸金属塩などの脂肪酸金属塩、脂肪酸アミド類、脂肪酸ワックス、高級脂肪酸ワックス等が例示される。滑剤を配合する場合、塩素含有樹脂100重量部に対する滑剤の配合量は0.1〜10重量部程度が推奨される。
【0100】
帯電防止剤としては、アルキルスルホネート型、アルキルエーテルカルボン酸型又はジアルキルスルホサクシネート型のアニオン性帯電防止剤、ポリエチレングリコール誘導体、ソルビタン誘導体、ジエタノールアミン誘導体などのノニオン性帯電防止剤、アルキルアミドアミン型、アルキルジメチルベンジル型などの第4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム型の有機酸塩又は塩酸塩などのカチオン性帯電防止剤、アルキルベタイン型、アルキルイミダゾリン型などの両性帯電防止剤などが例示される。帯電防止剤を配合する場合、塩素含有樹脂100重量部に対する帯電防止剤の配合量は0.1〜10重量部程度が推奨される。
【0101】
本発明の塩素含有樹脂組成物は、本エポキシ化合物、塩素含有樹脂及び必要に応じて各種添加剤を例えばモルタルミキサー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、リボンブレンダー等の攪拌機により攪拌混合を行い、塩素含有樹脂組成物の混合粉とすることができる。
【0102】
また、本エポキシ化合物、塩素含有樹脂及び必要に応じて各種添加剤を、例えばコニカル二軸押出機、パラレル二軸押出機、単軸押出機、コニーダー型混練機、ロール混練機等の混練機により溶融成形することによりペレット状の塩素含有樹脂組成物を得ることもできる。
【0103】
また、本エポキシ化合物、可塑剤、塩化ビニル系ペースト樹脂及び必要に応じて各種添加剤を、例えばポニーミキサー、バタフライミキサー、プラネタリミキサー、リボンブレンダー、ニーダー、ディゾルバー、二軸ミキサー、ヘンシェルミキサー、三本ロールミル等の混合機により均一に混合し、必要に応じて減圧下で脱泡処理し、ペースト状の塩素含有樹脂組成物を得ることもできる。
【0104】
[塩素含有樹脂成形体]
本発明に係る塩素含有樹脂組成物(配合粉状やペレット状)を、真空成型、圧縮成形、押出成形、射出成形、カレンダー成形、プレス成形、ブロー成形、粉体成形等の従来公知の方法を用いて溶融成形加工することにより、所望の形状に成形することができる。
【0105】
一方、上記ペースト状の塩素含有樹脂組成物は、スプレッド成形、ディッピング成形、グラビア成形、スラッシュ成形、スクリーン加工等の従来公知の方法を用いて成形加工することにより、所望の形状に成形することができる。
【0106】
成形体の形状としては、特に限定されないが、例えば、ロッド状、シート状、フィルム状、板状、円筒状、円形、楕円形等あるいは玩具、装飾品等特殊な形状のもの、例えば星形、多角形形状が例示される。
【0107】
かくして得られた成形体は、自動車アンダーボディコート、インストルメントパネル、コンソール、ドアシート、アンダーカーペット、トランクシート、ドアトリム類などの自動車装材、各種レザー類、装飾シート、農業用フィルム、食品包装用フィルム、電線被覆、各種発泡製品、ホース、医療用チューブ、食品用チューブ、冷蔵庫用ガスケット、パッキン類、壁紙、床材、ブーツ、カーテン、靴底、手袋、止水板、玩具、化粧板、血液バック、輸液バック、ターポリン、マット類、遮水シート、土木シート、ルーフィング、防水シート、絶縁シート、工業用テープ、ガラスフィルム、字消し等に有用である。
【実施例】
【0108】
以下に実施例を示し、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。尚、実施例や比較例中の化合物の略号、及び各特性の測定は以下の通りである。
【0109】
(1)アルキル基の炭素数と直鎖状アルキル基の比率
本発明の実施例及び比較例で用いる可塑剤中のアルキル基の炭素数と直鎖状アルキル基の比率は、その製造に用いた原料アルコール中の組成をガスクロマトグラフィー(以下GCと略記)によって測定し、その結果を可塑剤中のアルキル基の炭素数と直鎖状アルキル基の比率とした。前記GCによる原料アルコールの測定方法は次のとおりである。
《GCの測定条件》
機種:ガスクロマトグラフ GC−17A(島津製作所製)
検出器:FID
カラム:キャピラリーカラム ZB−1 30m
カラム温度:60℃から290℃まで昇温。昇温速度=13℃/分
キャリアガス:ヘリウム
試料:50%アセトン溶液
注入量:1μl
定量:安息香酸n−プロピルを内部標準物質として用い定量した。
前記内部標準物質の選定に当たっては、原料アルコール中の安息香酸n−プロピルがGCで検出限界以下であることを予め確認している。
なお、上述のエステル化反応において、本発明の範囲内では原料アルコールの構造による反応性に差異はなく、用いた原料アルコール中の組成比と本エステル並びに本エポキシ中のアルキル基の組成比に差異がないことは、予め確認している。
【0110】
(2)本エステル及び本エポキシ化合物の物性評価
下記の製造例で得られたエステル及びエポキシ化合物は次の方法で分析を行った。
エステル価:JIS K−0070(1992)に準拠して測定した。
酸価:JIS K−0070(1992)に準拠して測定した。
ヨウ素価:JIS K−0070(1992)に準拠して測定した。
オキシラン酸素:基準油脂分析試験法 2.3.7.1-2013「オキシラン酸素定量方法(その1)」に準拠して測定した。
色相:JIS K−0071(1998)に準拠して測定して、ハーゼン単位色数を求めた。
【0111】
(3)塩化ビニルシートの作製
[方法1:硬質及び半硬質塩化ビニルシート]
塩化ビニル樹脂(ストレート、重合度1050、商品名「Zest1000Z」、新第一塩ビ(株)製)100重量部に、本発明に係る安定化剤を表1に記載の所定量配合し、更に本発明以外の安定化剤として、カルシウム−亜鉛系複合安定剤3.0重量部配合し、モルタルミキサーで攪拌混合して、塩化ビニル系樹脂組成物とした。この樹脂組成物を5×12インチの二本ロールを用いて170〜176℃で4分間溶融混練しロールシートを作製した。続いて172〜178℃×10分間プレス成形を行い、厚さ約0.5mmのプレスシートを作製した。
【0112】
[方法2:軟質塩化ビニルシート]
塩化ビニル樹脂(ストレート、重合度1050、商品名「Zest1000Z」、新第一塩ビ(株)製)100重量部に、本発明に係る安定化剤を表2に記載の所定量配合し、更に本発明以外の安定化剤として、カルシウムステアレート(ナカライテスク(株)製)及びジンクステアレート(ナカライテスク(株)製)を各々0.3及び0.2重量部配合し、モルタルミキサーで攪拌混合して、塩化ビニル系樹脂組成物とした。続いて、モルタルミキサーでの攪拌混合後、更に可塑剤30重量部を加え、均一になるまでハンドリング混合し、軟質塩化ビニル系樹脂組成物とした。この樹脂組成物を5×12インチの二本ロールを用いて160〜166℃で4分間溶融混練しロールシートを作製した。続いて162〜168℃×10分間プレス成形を行い、厚さ約1mmのプレスシートを作製した。
【0113】
[樹脂の物性評価]
(4)引張特性:JIS K−6723(1995)に準拠し、プレスシートの弾性率又は100%モジュラスと破断強度及び破断伸びを測定した。弾性率又は100%モジュラスの値が小さいほど柔軟性が良好であることを示し、破断強度及び破断伸びはその材料の実用的な強度の目安であり、一般的にはその値が大きいほど実用的な強度に優れると言うことができる。
【0114】
(5)耐熱性:揮発減量及びシート着色の評価による。
a)揮発減量:ギヤーオーブン中、ロールシートを170℃で30分、60分加熱した後のシートの重量変化を測定し、下記の式に従って揮発減量(%)を算出した。
揮発減量の数値が小さいほど、耐熱性に優れ、安定化剤としての効果の低下が少ないと言うことができる。
揮発減量(%)=((試験前の重量―試験後の重量)/試験前の重量)×100
b)シート着色 :ギヤーオーブン中、ロールシートを170℃で30分、60分間加熱した後の着色度の強弱を目視により6段階で評価した。
なお、シート着色は、耐熱性の評価であるが、熱に対する安定化剤としての効果(安定化効果)の指標でもある。即ち、着色が少ないほど、加えた安定化剤が熱に対する安定化剤として有効に作用し、着色を抑制していると言える。
◎:着色なし、 ○:僅かに着色、 ○△:少し着色、
△:着色、 ×:強い着色、 ××:著しい着色
【0115】
(6)耐熱性(老化性);JIS K−6723(1995)に準拠し、120℃×120時間の加熱条件で加熱後引張試験を行った。結果は、常態に対する試験後のプレスシートの100%モジュラス残率(%)と破断伸び残率(%)で示した。
結果の値が100に近いほど、加熱後の物性変化が少なく、耐熱老化性に優れると言える。また、本試験は、耐熱性に試験であると同時に、熱に対する安定化剤としての効果(安定化効果)の指標でもある。即ち、結果の値が100に近いほど、加えた安定化剤が熱に対する安定化剤として有効に作用し、老化を抑制していると言える。
100%モジュラス残率(%)=(1−(加熱後の100%モジュラス―加熱前の100%モジュラス)/加熱前の100%モジュラス))×100
伸び残率(%)=(加熱後の破断伸び/加熱前の破断伸び)×100
【0116】
(7)耐フォギング性;プレスシート4gをガラス製サンプル瓶に入れ、100℃に温度調節したフォギング試験機にセットした。さらに、上記サンプル瓶にガラス板の蓋をした後、その上に20℃に温度調節した冷却水を通水した冷却板を載せ、100℃で3時間熱処理を実施した。熱処理後、ヘイズメーター(東洋精機製作所製:ヘイズガードII)を用いて上記ガラス板の曇り度(Haze)(%)を測定した。
Haze値が小さいほど、耐フォギング性に優れる。
【0117】
(8)耐候性
キセノンウェザーメーター(スガ試験機(株))による照射200時間の試験後のプレスシートのイエローインデックス(YI)を測定した。試験は放射照度120 W/m
2(300〜400nm)、ブラックパネル温度63℃、湿度50%、照射・降雨18分→照射102分のサイクルの条件で実施した。
YI値が小さいほど、光による着色が少なく、耐候性に優れる。
【0118】
[製造例1]
エステル化反応
温度計、デカンター、攪拌羽、還流冷却管を備えた2L四ツ口フラスコに、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物182.6g(1.2モル,新日本理化(株)製:リカシッドTH)、炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコール重量85.1%と炭素数9の分岐鎖状の飽和族飽和アルコール重量11.7%を含む飽和脂肪族アルコール(シェルケミカルズ社製:リネボール9、直鎖率(モル比)85%)416g(2.9モル)、及びエステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.24gを加え、反応温度を200℃としてエステル化反応を実施した。減圧下アルコールを還流させて生成水を系外へ除去しながら、反応溶液の酸価が0.5mgKOH/gになるまで反応を行った。反応終了後、未反応アルコールを減圧下で系外へ留去した後、常法に従って中和、水洗、脱水して目的とする4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステル(以下、「エステル1」という。)449gを得た。
得られたエステル1は、エステル価:262mgKOH/g、酸価:0.04mgKOH/g、色数:15であった。
【0119】
エポキシ化反応
次に、温度計、攪拌羽、冷却管を備えた1L四ツ口フラスコに、上記エステル化反応で得られたエステル1を423g(1.0モル)仕込み、60〜70℃に昇温した。昇温後、60%過酸化水素水76.6g(1.35モル)、76%蟻酸18.3g(0.30モル)、及び75%燐酸1.47g(0.01モル)を2.25時間かけてゆっくりと滴下した。滴下終了後、更に4時間上記温度を保持し、熟成して反応を完了した。反応終了後、水相を系外へ除去した後、常法に従って、水洗、脱水して目的とする4,5−エポキシシクロヘキサンジカルボン酸ジエステル(以下、「エポキシ1」という。)397gを得た。
得られたエポキシ1は、エステル価:256mgKOH/g、酸価:0.06mgKOH/g、ヨウ素価:2.5gI
2/100g、オキシラン酸素:3.5%、色数:10であった。
【0120】
[製造例2]
飽和脂肪族アルコール(シェルケミカルズ社製:リネボール9)416gの代わりに、炭素数9/10/11の比率(モル比)が18/42/38であり、全体の直鎖率が84%である炭素数9〜11の混合飽和脂肪族アルコール(シェルケミカルズ社製:ネオドール911)400g(2.5モル)を加えた以外は製造例1と同様に実施して、4,5−エポキシシクロヘキサンジカルボン酸ジエステル(以下、「エポキシ2」という。)404gを得た。
得られたエポキシ2は、エステル価:242mgKOH/g、酸価:0.04mgKOH/g、ヨウ素価:1.9gI
2/100g、オキシラン酸素:3.1%、色数:10であった。
【0121】
[製造例3]
飽和脂肪族アルコール(シェルケミカルズ社製:リネボール9)416gの代わりに、2−エチルヘキサノール374g(2.9モル)を加えた以外は製造例1と同様に実施して、4,5−エポキシシクロヘキサンジカルボン酸ジエステル(以下、「エポキシ3」という。)390gを得た。
得られたエポキシ3は、エステル価:273mgKOH/g、酸価:0.04mgKOH/g、ヨウ素価:3.3gI
2/100g、オキシラン酸素:3.5%、色数:10であった。
【0122】
[実施例1]
上記「(3)塩化ビニルシートの作製」の[方法1:硬質及び半硬質塩化ビニルシート]に記載の方法に従って、19重量部のエポキシシクロヘキサンジカルボン酸ジエステル(エポキシ1)を安定化剤として用いて塩化ビニル系樹脂組成物を調製し、得られた塩化ビニル系樹脂組成物より塩化ビニルシートを作製して引張試験、耐熱性試験、耐フォギング性試験及び耐候性試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
なお、上記で作製した塩化ビニルシートは、1ヶ月間室温で放置してもブリード等の兆候は全く認められていない。
【0123】
[実施例2]
19重量部のエポキシ1の代わりに、10重量部のエポキシ2を安定化剤として用いた以外は実施例1と同様に実施して、塩化ビニル系樹脂組成物を調製し、得られた塩化ビニル系樹脂組成物より塩化ビニルシートを作製して引張試験、耐熱性試験、耐フォギング性試験及び耐候性試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
なお、上記で作製した塩化ビニルシートは、1ヶ月間室温で放置してもブリード等の兆候は全く認められていない。
【0124】
[実施例3]
エポキシ1の配合量を19重量部から10重量部に変更した以外は実施例1と同様に実施して、塩化ビニル系樹脂組成物を調製し、得られた塩化ビニル系樹脂組成物より塩化ビニルシートを作製して引張試験、耐熱性試験、耐フォギング性試験及び耐候性試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
なお、上記で作製した塩化ビニルシートは、1ヶ月間室温で放置してもブリード等の兆候は全く認められていない。
【0125】
[実施例4]
上記「(3)塩化ビニルシートの作製」の[方法2:軟質塩化ビニルシート]に記載の方法に従って、安定化剤として19重量部のエポキシシクロヘキサンジカルボン酸ジエステル(エポキシ1)を、可塑剤としてトリメリット酸トリ2−エチルヘキシル(TOTM)30重量部を用いて塩化ビニル系樹脂組成物を調製し、得られた塩化ビニル系樹脂組成物より塩化ビニルシートを作製して引張試験、耐熱性試験、耐フォギング性試験及び耐候性試験を行なった。得られた結果をまとめて表2に示した。
【0126】
[実施例5]
エポキシ1の代わりにエポキシ2を用いた以外は実施例4と同様に実施して、塩化ビニル系樹脂組成物を調製し、得られた塩化ビニル系樹脂組成物より塩化ビニルシートを作製して引張試験、耐熱性試験、耐フォギング性試験及び耐候性試験を行なった。得られた結果をまとめて表2に示した。
【0127】
[実施例6]
TOTMの代わりに上記飽和脂肪族アルコール(リネボール9)のトリメリット酸トリエステル(TL9TM)を用いた以外は実施例4と同様に実施して、塩化ビニル系樹脂組成物を調製し、得られた塩化ビニル系樹脂組成物より塩化ビニルシートを作製して引張試験、耐熱性試験、耐フォギング性試験及び耐候性試験を行なった。得られた結果をまとめて表2に示した。
【0128】
[比較例1]
エポキシ1を加えない以外は実施例1と同様に実施して、塩化ビニル系樹脂組成物を調製し、得られた塩化ビニル系樹脂組成物より塩化ビニルシートを作製して引張試験、耐熱性試験、耐フォギング性試験及び耐候性試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
【0129】
[比較例2]
エポキシ1に代わりにエポキシ3を用いた以外は実施例1と同様に実施して、塩化ビニル系樹脂組成物を調製し、得られた塩化ビニル系樹脂組成物より塩化ビニルシートを作製して引張試験、耐熱性試験、耐フォギング性試験及び耐候性試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
【0130】
[比較例3]
エポキシ1を加えない以外は実施例4と同様に実施して、塩化ビニル系樹脂組成物を調製し、得られた塩化ビニル系樹脂組成物より塩化ビニルシートを作製して引張試験、耐熱性試験、耐フォギング性試験及び耐候性試験を行なった。得られた結果をまとめて表2に示した。
【0131】
[比較例4]
エポキシ1に代わりにエポキシ3を用いた以外は実施例4と同様に実施して、塩化ビニル系樹脂組成物を調製し、得られた塩化ビニル系樹脂組成物より塩化ビニルシートを作製して引張試験、耐熱性試験、耐フォギング性試験及び耐候性試験を行なった。得られた結果をまとめて表2に示した。
【0132】
【表1】
【0133】
【表2】
【0134】
表1及び2の結果より、明らかに本発明のエポキシシクロヘキサンジカルボン酸ジエステル(実施例1〜6)を配合することにより、配合していないもの(比較例1、3)と比較して、耐熱性試験の結果より、熱着色、熱による物性低下、即ち熱劣化が著しく減少していることがわかる。また、同様に耐候試験の結果より、光による着色も著しく減少していることがわかる。更に、従来のエポキシシクロヘキサンジカルボン酸ジエステル、即ち本発明の範囲外のエポキシシクロヘキサンジカルボン酸ジエステル(比較例2、4)を配合した場合、フォギング性の低下する傾向が認められるのに対して、本発明の範囲内のエポキシシクロヘキサンジカルボン酸ジエステル(実施例1〜6)を配合したものは、ほとんどフォギング性の低下が認められていない。これらの傾向は、硬質から耐熱性可塑剤を配合した軟質まで全く同じ傾向を示している。以上の結果より、本発明に係るエポキシシクロヘキサンジカルボン酸ジエステルが、非常に優れた安定化剤として、硬質から、半硬質、軟質用途まで幅広く有用であることがわかる。