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特開2017-25408レニウムの回収方法、レニウムとその他の金属とを含む溶液からレニウムを選択的に回収する方法、及びレニウムとその他の金属とを含む溶液にてレニウムの含有比率を高める方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-25408(P2017-25408A)
(43)【公開日】2017年2月2日
(54)【発明の名称】レニウムの回収方法、レニウムとその他の金属とを含む溶液からレニウムを選択的に回収する方法、及びレニウムとその他の金属とを含む溶液にてレニウムの含有比率を高める方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 61/00 20060101AFI20170113BHJP
   C22B 3/44 20060101ALI20170113BHJP
   C02F 1/32 20060101ALI20170113BHJP
   C02F 1/70 20060101ALI20170113BHJP
   C22B 3/20 20060101ALI20170113BHJP
   C22B 7/00 20060101ALI20170113BHJP
【FI】
   C22B61/00
   C22B3/44 101A
   C02F1/32
   C02F1/70 A
   C22B3/20
   C22B7/00 G
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-49036(P2016-49036)
(22)【出願日】2016年3月11日
(11)【特許番号】特許第5987244号(P5987244)
(45)【特許公報発行日】2016年9月7日
(31)【優先権主張番号】特願2015-147256(P2015-147256)
(32)【優先日】2015年7月24日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】592218300
【氏名又は名称】学校法人神奈川大学
(74)【代理人】
【識別番号】100151183
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 伸哉
(72)【発明者】
【氏名】堀 久男
【テーマコード(参考)】
4D037
4D050
4K001
【Fターム(参考)】
4D037AA01
4D037AA11
4D037AB08
4D037AB11
4D037BA18
4D037CA02
4D037CA09
4D037CA14
4D050AA01
4D050AA12
4D050AB66
4D050BA12
4D050BC09
4D050CA13
4D050CA15
4D050CA20
4K001AA02
4K001AA09
4K001AA17
4K001AA19
4K001AA25
4K001AA42
4K001BA01
4K001BA21
4K001BA22
4K001DB23
4K001HA11
4K001JA01
4K001JA03
4K001JA10
(57)【要約】
【課題】レニウムを含む溶液から、簡便な手法で、より短時間にレニウムを分離させることのできる方法を提供すること。また、レニウムとその他の金属とを含む溶液からレニウムを選択的に回収する方法を提供すること。
【解決手段】過レニウム酸イオンを含む溶液に、脂肪族第二級アルコール又は脂肪族第二級チオアルコールである電子供与剤、及びケトン化合物を添加する添加工程と、上記添加工程を経た上記溶液に紫外線を照射することにより、当該溶液に含まれる過レニウム酸イオンの還元体を析出させる紫外線照射工程と、上記紫外線照射工程により析出させた過レニウム酸イオンの還元体を上記溶液から分取する分取工程と、を含むことを特徴とするレニウムの回収方法を用いる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
過レニウム酸イオンを含む溶液に、脂肪族第二級アルコール又は脂肪族第二級チオアルコールである電子供与剤、及びケトン化合物を添加する添加工程と、
前記添加工程を経た前記溶液に紫外線を照射することにより、前記溶液に含まれる過レニウム酸イオンの還元体を析出させる紫外線照射工程と、
前記紫外線照射工程により析出させた過レニウム酸イオンの還元体を前記溶液から分取する分取工程と、を含むことを特徴とするレニウムの回収方法。
【請求項2】
前記紫外線照射工程における紫外線の照射を、前記溶液のpHが6.3以上である条件下で行う請求項1記載のレニウムの回収方法。
【請求項3】
前記電子供与剤が脂肪族第二級アルコールである請求項1又は2記載のレニウムの回収方法。
【請求項4】
前記電子供与剤が2−プロパノールである請求項1〜3のいずれか1項記載のレニウムの回収方法。
【請求項5】
前記ケトン化合物がアセトンである請求項1〜4のいずれか1項記載のレニウムの回収方法。
【請求項6】
過レニウム酸イオン及び共存金属(アルカリ金属及びアルカリ土類金属を除く。)を含む溶液に、脂肪族第二級アルコール又は脂肪族第二級チオアルコールである電子供与剤、及びケトン化合物を添加するとともにその溶液のpHを6.3以上に調節し、次いでその溶液に紫外線を照射して当該溶液に含まれる過レニウム酸イオンの還元体を析出させることを特徴とする、レニウムとその他の金属とを含む溶液からレニウムを選択的に回収する方法。
【請求項7】
過レニウム酸イオン、及び共存金属(アルカリ金属及びアルカリ土類金属を除く。)を含む溶液に、脂肪族第二級アルコール又は脂肪族第二級チオアルコールである電子供与剤、及びケトン化合物を添加するとともにその溶液のpHを4.7以下に調節し、次いでその溶液に紫外線を照射して当該溶液に含まれる共存金属の化合物を析出させることを特徴とする、レニウムとその他の金属とを含む溶液にてレニウムの含有比率を高める方法。
【請求項8】
前記共存金属がモリブデンである請求項6又は7記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レニウムの回収方法、レニウムとその他の金属とを含む溶液からレニウムを選択的に回収する方法、及びレニウムとその他の金属とを含む溶液にてレニウムの含有比率を高める方法に関する。
【背景技術】
【0002】
希少金属の一つであるレニウムは、石油の改質や有機化合物を製造する際における触媒をはじめ、耐熱合金や電子材料等といった分野において幅広く用いられる。しかしながら、レニウムは、その産出量が少なく、さらに近年の世界的な需給の逼迫のために入手が困難になりつつある。そのため、レニウムを含む鉱物からレニウムを効率的に回収するための技術開発や、レニウムを含む産業廃水や回収製品等からレニウムをリサイクルするための技術開発が求められている。
【0003】
このような背景のもと、例えば特許文献1には、レニウムを含む溶液にアルカリを添加して不要な成分を沈殿除去した後に、当該溶液における酸の濃度を所定の範囲に調整し、硫化剤を添加してレニウムを含む硫化沈殿物を生成させ、これを回収するレニウムの分離方法が提案されている。
【0004】
また、特許文献2には、レニウムを含む溶液に、硫酸アンモニウム等のアンモニア化合物を添加して冷却することでNHReOの沈殿を生成させ、これを回収するレニウムの回収方法が提案されている。
【0005】
また、特許文献3には、過レニウム酸イオンを含む溶液に非共有電子対を有する原子を持つ置換基を備えた化合物を加え、その溶液に紫外線を照射させて過レニウム酸イオンの還元体を析出させ、これを回収するレニウムの回収方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−58016号公報
【特許文献2】特開2010−168629号公報
【特許文献3】特開2013−221171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1及び2記載の方法によれば、レニウムを含む溶液からレニウムを分離することが可能であるが、より簡便な手順で、且つより効率的にレニウムの分離を行う手段が求められている。上記特許文献3記載の方法によれば、アルコール等の化合物を溶液に添加して紫外線を照射するという簡便な手順で効率的にレニウムを回収できるが、本発明者の調査によれば、本法では紫外線の照射を開始してからレニウムが析出し始めるまでのリードタイムとして10時間程度の時間が必要になることが判明している。本発明は、以上の状況に鑑みてなされたものであり、レニウムを含む溶液から、簡便な手法で、より短時間にレニウムを分離させることのできる方法を提供することを目的とする。
【0008】
また、レニウムは、上記のように産出量が少なくレアメタルに分類される金属であり、例えばモリブデン鉱からモリブデンを産出する際など、他の金属を得る際に少量の副産物として得られることが殆どである。このため、レアメタルであるレニウムを得るには、常に、主となる別の金属から少量のレニウムを分離するという難しい操作が必要になるのが実情である。このような状況に鑑み、本発明の別の側面では、レニウムとその他の金属とを含む溶液からレニウムを選択的に回収する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、上記特許文献3に記載される手順で過レニウム酸イオンを含む溶液にアルコール等の化合物を加えて紫外線照射を行うと、時間の経過とともにその溶液の中にケトン化合物が溜まっていき、溶液中のケトン化合物の濃度がある程度高くなった段階になって初めて過レニウム酸イオンの還元体が析出し始めることを見出した。すなわち、紫外線の照射を開始してから過レニウム酸イオンが還元体となって析出を始めるまでの上記リードタイムは、ケトン化合物が溜まるのに要する時間と推察された。このような知見のもと、本発明者は、紫外線の照射を開始する際に予めケトン化合物を溶液中に添加し、その上で同様の操作を行ったところ、リードタイムをゼロ、あるいは著しく短縮できることを見出した。さらに、本発明者は、こうした回収手段を用いる際に、処理対象となる溶液のpHを適切にコントロールすることにより、溶液中にモリブデン等の共存金属が存在する場合であっても主として過レニウム酸イオンの還元体を析出させたり、主として共存金属の化合物を析出させたりすることが可能なことを見出した。本発明は、これらの知見に基づいてなされたものであり、以下のようなものを提供する。
【0010】
(1)本発明は、過レニウム酸イオンを含む溶液に、脂肪族第二級アルコール又は脂肪族第二級チオアルコールである電子供与剤、及びケトン化合物を添加する添加工程と、上記添加工程を経た上記溶液に紫外線を照射することにより、当該溶液に含まれる過レニウム酸イオンの還元体を析出させる紫外線照射工程と、上記紫外線照射工程により析出させた過レニウム酸イオンの還元体を上記溶液から分取する分取工程と、を含むことを特徴とするレニウムの回収方法である。
【0011】
(2)上記紫外線照射工程における紫外線の照射を、上記溶液のpHが6.3以上である条件下で行うことが好ましい。
【0012】
(3)上記電子供与剤は、脂肪族第二級アルコールであることが好ましい。
【0013】
(4)上記電子供与剤は、2−プロパノールであることが好ましい。
【0014】
(5)上記ケトン化合物は、アセトンであることが好ましい。
【0015】
(6)また本発明は、過レニウム酸イオン及び共存金属(アルカリ金属及びアルカリ土類金属を除く。)を含む溶液に、脂肪族第二級アルコール又は脂肪族第二級チオアルコールである電子供与剤、及びケトン化合物を添加するとともにその溶液のpHを6.3以上に調節し、次いでその溶液に紫外線を照射して当該溶液に含まれる過レニウム酸イオンの還元体を析出させることを特徴とする、レニウムとその他の金属とを含む溶液からレニウムを選択的に回収する方法でもある。
【0016】
(7)また本発明は、過レニウム酸イオン、及び共存金属(アルカリ金属及びアルカリ土類金属を除く。)を含む溶液に、脂肪族第二級アルコール又は脂肪族第二級チオアルコールである電子供与剤、及びケトン化合物を添加するとともにその溶液のpHを4.7以下に調節し、次いでその溶液に紫外線を照射して当該溶液に含まれる共存金属の化合物を析出させることを特徴とする、レニウムとその他の金属とを含む溶液にてレニウムの含有比率を高める方法でもある。
【0017】
(8)上記(6)項及び(7)項において、共存金属としてはモリブデンを挙げることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、レニウムを含む溶液から、簡便な手法で、より短時間にレニウムを分離させることのできる方法が提供される。また、本発明によれば、レニウムとその他の金属とを含む溶液からレニウムを選択的に回収する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、実施例1〜4における、照射時間に対する過レニウム酸イオン濃度の変化を示すプロットである。
図2図2(a)は、比較例1における、照射時間に対する過レニウム酸イオン濃度の変化を示すプロットであり、図2(b)は、比較例1における、照射時間に対する水溶液中の総レニウム濃度の変化を示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<レニウムの回収方法>
まずは、本発明に係るレニウムの回収方法の一実施態様について説明する。なお、本発明は、以下の実施態様に限定されるものではなく、本発明の範囲において適宜変更して実施することができる。
【0021】
本発明に係るレニウムの回収方法は、過レニウム酸イオンを含む溶液に、脂肪族第二級アルコール又は脂肪族第二級チオアルコールである電子供与剤、及びケトン化合物を添加する添加工程と、添加工程を経た溶液に紫外線を照射することにより、当該溶液に含まれる過レニウム酸イオンの還元体を析出させる紫外線照射工程と、紫外線照射工程により析出させた過レニウム酸イオンの還元体を溶液から分取する分取工程と、を備える。以下、各工程について説明する。
【0022】
[添加工程]
添加工程は、過レニウム酸イオンを含む溶液に、脂肪族第二級アルコール又は脂肪族第二級チオアルコールである電子供与剤、及びケトン化合物を添加する工程である。過レニウム酸イオンを含む溶液としては、水溶液を好ましく挙げることができる。この溶液には、レニウムを含む鉱石や、レニウムを含む回収製品(リサイクル製品)等を由来とするレニウムが過レニウム酸イオンとして含まれる。
【0023】
過レニウム酸イオンは、ReOの化学式で表される化学種である。この化学種において、レニウムは七価の酸化数をとる。レニウムは、酸化を受けやすい元素であり、例えば、酸化数が六価となるレニウムの化合物であるReOは、空気中や溶液中で容易に酸化を受け、酸化数が七価となるレニウムの化合物であるReO(過レニウム酸イオン)となる。そのため、溶液に含まれるレニウムは、その大部分が過レニウム酸イオンとして存在していると考えられる。しかしながら、溶液に含まれるレニウムを確実に過レニウム酸イオンに変換しておくために、適切な酸化剤を溶液に添加しておいてもよい。このような酸化剤としては、過酸化水素水、過炭酸ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム、分子状酸素、空気バブル等が例示される。
【0024】
溶液中における過レニウム酸イオンの濃度は、溶媒に溶解させて溶液とすることができる程度であれば、特に限定されない。そのような過レニウム酸イオンの濃度の一例としては、1mmol/L〜100mmol/L程度を挙げることができる。
【0025】
電子供与剤は、後述する紫外線照射工程で照射された紫外線により励起した過レニウム酸イオンへ電子を供与してこれを還元するために添加され、このような電子供与剤としては脂肪族第二級アルコール又は脂肪族第二級チオアルコールが用いられる。脂肪族第二級アルコール及び脂肪族第二級チオアルコールには、非共有電子対を有する水酸基又はチオール基が含まれ、励起した過レニウム酸イオンがこの非共有電子対に含まれる電子により還元されると考えられる。つまり、紫外線の照射下で過レニウム酸イオンに含まれるレニウムが励起された際に、非共有電子対を備えた電子供与剤がレニウムに電子を供与し、七価のレニウム(すなわち過レニウム酸イオン)が六価、さらには四価まで還元されると考えられる。こうした還元が行われた結果、脂肪族第二級アルコール又は脂肪族第二級チオアルコール自身は酸化され、ケトン又はチオケトンとなる。例えば、電子供与剤である脂肪族第二級アルコールとして2−プロパノールを用いた場合には、過レニウム酸が還元された結果アセトンを生じることになる。
【0026】
脂肪族第二級アルコールとしては、2−プロパノール、2−ブタノール、2−ペンタノール等が挙げられる。脂肪族第二級チオアルコールとしては、2−プロパンチオール、2−ブタンチオール、2−ペンタンチオール等が挙げられる。これらの中でも、電子供与剤として脂肪族第二級アルコールが好ましく、脂肪族第二級アルコールの中でも2−プロパノールが特に好ましい。
【0027】
溶液中における電子供与剤の濃度は、過レニウム酸イオンの濃度に対して大過剰であることが好ましい。そのような電子供与剤の溶液中の濃度の一例としては、10mmol/L〜10mol/L程度を挙げることができる。なお、過レニウム酸イオンのモル濃度に対する電子供与剤のモル濃度の比は、5倍〜10000倍程度を例示することができる。
【0028】
ケトン化合物は、後述する紫外線照射工程において、紫外線照射開始から過レニウム酸イオンの還元体が析出し始めるまでのリードタイムを短縮するために添加される。ケトン化合物がこのような作用を生じる理由は必ずしも明らかでないが、添加されたケトン化合物が過レニウム酸イオンと錯体を形成し、過レニウム酸イオンの励起や還元反応を助けている可能性がある。
【0029】
ケトン化合物としては、脂肪族ケトン化合物が好ましく挙げられる。これらの中でもケトン化合物としてアセトン又はメチルエチルケトンが好ましく、アセトンが特に好ましい。
【0030】
溶液中におけるケトン化合物の濃度は、溶液に含まれている過レニウム酸イオンのモル濃度を考慮して決定され、溶液に含まれている過レニウム酸イオンのモル濃度に対して、0.5〜3.0倍のモル濃度が好ましく挙げられ、0.8〜1.2倍のモル濃度がより好ましく挙げられる。
【0031】
本工程にて、溶液のpHが6.3以上となるようにpH調整をしておくことが好ましい。このようなpH調整を行っておくことにより、次工程である紫外線照射工程にて溶液に紫外線を照射した際、レニウムとは異なる金属である共存金属(アルカリ金属及びアルカリ土類金属を除く。以下同様である。)が含まれている場合には過レニウム酸イオンの還元体を選択的に析出させることができるので好ましく、また、共存金属が含まれていない場合であっても過レニウム酸イオンの還元体の析出を促進させ、レニウム回収の収率を向上できるので好ましい。溶液のpHを調節する方法としては、一例として、水酸化ナトリウム水溶液や塩酸水溶液を添加することを挙げることができるが、特に限定されない。
【0032】
本工程にて電子供与剤及びケトン化合物が添加された過レニウム酸イオンを含む溶液は、紫外線照射工程に付される。
【0033】
[紫外線照射工程]
紫外線照射工程は、上記添加工程を経た溶液に紫外線を照射することにより、当該溶液に含まれる過レニウム酸イオンの還元体を析出させる工程である。このとき、七価のレニウム化合物である過レニウム酸イオン(ReO)が六価に還元されてReO、さらには四価のReOとなって析出する。
【0034】
上記のように、このときに用いる紫外線により過レニウム酸イオンに含まれるレニウムが励起され、還元反応を生じる。そのため、用いる紫外線は、過レニウム酸イオンに吸収される波長であることが必要である。この点、過レニウム酸イオンは300nm以下の波長にて幅広い吸収を有するため、用いる紫外線としては、300nm以下の波長を含むものであれば特に限定されない。また、用いる紫外線は、300nm以下の波長の紫外線を含めばよいので、300nm以下の波長の紫外線に加えて可視光線を含むものであってもよい。このような紫外線を発生させるために用いる光源としては、例えば、水銀・キセノンランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等が挙げられるが、特に限定されない。
【0035】
上記光源の中には、発光中に発熱して熱線(赤外線)を生じるものもある。そのような光源を用いた場合、被照射物である溶液の温度が過度に上昇することも考えられるため、光源と被照射物である溶液との間に熱線を遮断する光学フィルターを設けてもよい。このような光学フィルターとしては、フィルター内に水を封入した水フィルター等が例示される。
【0036】
紫外線照射工程では、上記のように、溶液に紫外線が照射されるが、その際、溶液を撹拌しながら紫外線の照射を行うことが好ましい。また、特に限定されないが、その際の溶液の温度として20℃程度を例示することができる。さらに、既に述べたように、レニウムは酸化を受けやすい元素であるため、紫外線の照射によって溶液中に生じたレニウムの還元体が再び酸化されて過レニウム酸イオンとなることも考えられる。そのため、紫外線照射工程は、アルゴンや窒素雰囲気下で行われることが好ましい。
【0037】
必要とされる紫外線の照射時間は、溶液に含まれる過レニウム酸イオンの濃度や、光源から発せられる紫外線の強度等によって変動する。したがって、紫外線の照射時間は、例えば、イオンクロマトグラフィー等の手段により溶液中の過レニウム酸イオン濃度の変化をモニターしながら決定されることが好ましい。一例として、10.37mmol/LのKReO、9.02mmol/Lのアセトン及び0.50mol/Lの2−プロパノールを含む水溶液(10mL)に対して、アルゴン雰囲気中で撹拌しながら水銀・キセノンランプ(出力200W)からの紫外線を照射した場合、およそ6時間で、溶液中の過レニウム酸イオンがイオンクロマトグラフィーにおける検出限界以下の濃度となる。
【0038】
なお、溶液に含まれる過レニウム酸イオンの濃度をイオンクロマトグラフィーでモニターする場合、カラムとして東ソー株式会社製のTSKgel IC−Anion−PWXLを用い、移動相として1.7mmol/L NaHCO+1.8mmol/L NaCO+20%アセトニトリル水溶液を用いることが例示される。
【0039】
[分取工程]
分取工程は、上記紫外線照射工程により析出させた過レニウム酸イオンの還元体を溶液から分取する工程である。これにより、溶液中からレニウムが回収されることになる。
【0040】
析出した過レニウム酸イオンの還元体は、上記の通り、六価のレニウムであるReOや四価のレニウムであるReOである。これは、固体であるので、従来公知の固液分離法により分離される。このような固液分離法としては、濾過、遠心分離等が例示される。
【0041】
溶液から分離されたレニウムは、その後、必要な処理を受けて再資源化されることになる。上記のように、本発明によれば、過レニウム酸イオンを含む溶液に電子供与剤及びケトン化合物を添加し、さらに紫外線を照射するという簡便な手法により溶液中からレニウムを分離させることが可能となる。
【0042】
<レニウムとその他の金属とを含む溶液からレニウムを選択的に回収する方法>
次に、本発明に係る、レニウムとその他の金属とを含む溶液からレニウムを選択的に回収する方法の一実施態様について説明する。なお、ここでいう「その他の金属」には、アルカリ金属及びアルカリ土類金属は含まれない。
【0043】
本発明に係る、レニウムとその他の金属とを含む溶液からレニウムを選択的に回収する方法は、過レニウム酸イオン及び共存金属(アルカリ金属及びアルカリ土類金属を除く。以下同様である。)を含む溶液に、脂肪族第二級アルコール又は脂肪族第二級チオアルコールである電子供与剤、及びケトン化合物を添加するとともにその溶液のpHを6.3以上に調節し、次いでその溶液に紫外線を照射して当該溶液に含まれる過レニウム酸イオンの還元体を析出させることを特徴とする。すなわち、本方法は、既に説明した上記「レニウムの処理方法」にて、処理対象となる溶液がレニウムとその他の金属とを含み、かつ処理対象となる溶液のpHを6.3以上とすることを特定したものであり、その他の点は上記「レニウムの処理方法」と同様の手順で行うことができる。そのため、上記「レニウムの処理方法」と重複する説明を省き、異なる点を中心に説明する。
【0044】
本実施態様の方法は、本発明者による次のような知見に基づいて完成されたものである。すなわち、過レニウム酸イオンと共存金属とを含む溶液に、脂肪族第二級アルコール又は脂肪族第二級チオアルコールである電子供与剤、及びケトン化合物を添加し、さらにその溶液のpHを6.3以上とした状態で紫外線照射を行うと、上記「レニウムの回収方法」の場合と同様に当該溶液中に析出物を生じるが、意外にも、その析出物には共存金属が殆ど含まれず専ら過レニウム酸イオンの還元体が含まれたものになり、残された溶液の総レニウム濃度、及び共存金属の濃度を調べると、総レニウム濃度が殆どゼロに近い値しか示さない一方で、共存金属は殆どそのまま残されていたとの知見に基づくものである。本実施態様の方法は、このような知見を用いたものであり、過レニウム酸イオンと共存金属とを含む溶液から、レニウムを析出体として回収するのに用いられる。
【0045】
なお、過レニウム酸イオンとともに溶液に含まれる共存金属は、溶液中において、0価の金属で存在することは殆どなく、何らかのイオンを形成した状態で存在するのが一般的である。したがって、厳密に言えば、「共存金属」でなく「共存金属、及び共存金属を含むイオン」と呼ぶのが正しいが、本明細書では、これらをまとめて「共存金属」と呼ぶことにする。
【0046】
共存金属は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属以外の金属であり、そのような金属としては、モリブデン、タンタル、アルミニウム、ニッケル、銅等が例示される。これらの金属の中でもモリブデンが特に好ましく例示される。溶液中における共存金属の濃度は、溶媒に溶解させて溶液とすることができる濃度であれば、特に限定されない。そのような共存金属の濃度の一例としては、1mmol/L〜100mmol/L程度を挙げることができるが、特に限定されない。
【0047】
溶液中に共存金属を含むこと、及び溶液のpHを6.3以上に調整することを特定することの他は、上記「レニウムの回収方法」における添加工程と同様の操作により、溶液が調製される。溶液のpHを6.3以上に調整するには、適切な酸及びアルカリの水溶液を用いればよい。このような酸及びアルカリの水溶液としては、塩酸水溶液と水酸化ナトリウム水溶液の組み合わせを例示できる。調製された溶液は、上記「レニウムの回収方法」における紫外線照射工程に相当する操作に付され、溶液中に過レニウム酸イオンの還元体である析出物が生成する。
【0048】
上記のようにして生成した析出物を、上記「レニウムの回収方法」における分取工程に相当する操作により回収すれば、過レニウム酸イオンの還元体を分離することができる。本実施態様の方法によれば、レニウムとその他の金属とを含む溶液からレニウムを選択的に回収することができるので、例えば、モリブデン鉱からモリブデンを産出する際など、主となる金属を得る際に少量の副産物として得られるレニウムを回収したり、レニウムを含む合金からレニウムを回収したりすることができる。
【0049】
<レニウムとその他の金属とを含む溶液にてレニウムの含有比率を高める方法>
次に、本発明に係る、レニウムとその他の金属とを含む溶液にてレニウムの含有比率を高める方法の一実施態様について説明する。なお、ここでいう「その他の金属」には、アルカリ金属及びアルカリ土類金属は含まれない。
【0050】
本発明に係る、レニウムとその他の金属とを含む溶液にてレニウムの含有比率を高める方法は、過レニウム酸イオン及び共存金属(アルカリ金属及びアルカリ土類金属を除く。以下同様である。)を含む溶液に、脂肪族第二級アルコール又は脂肪族第二級チオアルコールである電子供与剤、及びケトン化合物を添加するとともにその溶液のpHを4.7以下に調節し、次いでその溶液に紫外線を照射して当該溶液に含まれる共存金属の化合物を析出させることを特徴とする。すなわち、本方法は、既に説明した上記「レニウムの処理方法」にて、処理対象となる溶液がレニウムとその他の金属とを含み、かつ処理対象となる溶液のpHを4.7以下とすることを特定したものであり、その他の点は上記「レニウムの処理方法」と同様の手順で行うことができる。そのため、上記「レニウムの処理方法」と重複する説明を省き、異なる点を説明する。
【0051】
本実施態様の方法は、本発明者による次のような知見に基づいて完成されたものである。すなわち、過レニウム酸イオンと共存金属とを含む溶液に、脂肪族第二級アルコール又は脂肪族第二級チオアルコールである電子供与剤、及びケトン化合物を添加し、さらにその溶液のpHを4.7以下とした状態で紫外線照射を行うと、上記「レニウムの回収方法」の場合と同様に当該溶液中に析出物を生じるが、上記「レニウムの回収方法」の場合と異なり、その析出物には共存金属が多く含まれ過レニウム酸イオンの還元体は僅かに含まれるのみとなる知見に基づくものである。このような操作を行う結果、共存金属は析出物として溶液中から取り除くことができるようになる。本実施態様の方法は、このような知見を用いたものであり、過レニウム酸イオンと共存金属とを含む溶液において、溶液中から共存金属を取り除いてレニウムの含有比率を高めるのに用いられる。
【0052】
本実施態様における共存金属の種類、及びその溶液中の濃度については、上記「レニウムとその他の金属とを含む溶液からレニウムを選択的に回収する方法」の実施態様におけるものと同様であるので、ここでの説明を省略する。
【0053】
溶液中に共存金属を含むこと、及び溶液のpHを4.7以下に調整することを特定することの他は、上記「レニウムの回収方法」における添加工程と同様の操作により、溶液が調製される。溶液のpHを4.7以下に調整するには、適切な酸及びアルカリの水溶液を用いればよい。このような酸及びアルカリの水溶液としては、塩酸水溶液と水酸化ナトリウム水溶液の組み合わせを例示できる。調製された溶液は、上記「レニウムの回収方法」における紫外線照射工程に相当する操作に付され、溶液中に共存金属の化合物である析出物が生成する。
【0054】
上記のようにして生成した析出物を、上記「レニウムの回収方法」における分取工程に相当する操作により溶液中から除去すれば、溶液中から共存金属を分離することができる。その結果、溶液に含まれる総金属濃度に対するレニウムの含有比率を高めることができ、さらなる操作(すなわち濃縮操作)を行うことで溶液中のレニウムを濃縮することも可能である。本実施態様の方法によれば、レニウムと「その他の金属」とを含む溶液から「その他の金属」を選択的に除去することができるので、例えば、モリブデン鉱からモリブデンを産出する際など、主となる金属を得る際に少量の副産物として得られるレニウムを回収したり、レニウムを含む合金からレニウムを回収したりすることができる。
【実施例】
【0055】
以下、本発明のレニウムの回収方法について、実施例を示すことによりさらに具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0056】
[実施例1(アセトン濃度12.0mmol/L)]
2−プロパノール(0.50mol/L)、アセトン(12.0mmol/L)、過レニウム酸カリウム(KReO、10.37mmol/L)、及び水中のイオン強度を一定に保つための試薬である過塩素酸ナトリウム(NaClO、0.10mol/L)を含む水溶液を光反応セル(液量10mL)に入れ、アルゴン雰囲気中で撹拌しながら、水銀・キセノンランプを用いて上記水溶液に紫外〜可視領域の光(220〜460nm)を照射した。照射を開始してから1時間後、2時間後、3時間後、4時間後及び6時間後の水溶液をサンプリングし、水溶液中に残存している過レニウム酸イオンをイオンクロマトグラフィーで定量した。この定量で得られた、照射時間に対する過レニウム酸イオン濃度の変化を示すプロットを図1に示す。なお、イオンクロマトグラフィーでは、カラムとして東ソー株式会社製TSKgel IC−Anion−PWXLを用い、移動相として1.7mmol/L NaHCO+1.8mmol/L NaCO+20%アセトニトリル水溶液を用いた。
【0057】
[実施例2(アセトン濃度:9.02mmol/L)]
実験開始時における水溶液中のアセトン濃度を9.02mmol/Lにしたこと以外は実施例1と同じ手順で、紫外線照射の時間に対する水溶液中の過レニウム酸イオンの濃度変化を調べた。実施例1と同様に、照射時間に対する過レニウム酸イオン濃度の変化を示すプロットを図1に示す。
【0058】
[実施例3(アセトン濃度:4.63mmol/L)]
実験開始時における水溶液中のアセトン濃度を4.63mmol/Lにしたこと以外は実施例1と同じ手順で、紫外線照射の時間に対する水溶液中の過レニウム酸イオンの濃度変化を調べた。実施例1と同様に、照射時間に対する過レニウム酸イオン濃度の変化を示すプロットを図1に示す。
【0059】
[実施例4(アセトン濃度:2.29mmol/L)]
実験開始時における水溶液中のアセトン濃度を2.29mmol/Lにしたこと以外は実施例1と同じ手順で、紫外線照射の時間に対する過レニウム酸イオンの濃度変化を調べた。実施例1と同様に、照射時間に対する過レニウム酸イオン濃度の変化を示すプロットを図1に示す。
【0060】
[比較例1(アセトン濃度:0mmol/L)]
2−プロパノール(0.50mol/L)、過レニウム酸カリウム(KReO、10.37mmol/L)、及び水中のイオン強度を一定に保つための試薬である過塩素酸ナトリウム(NaClO、0.10mol/L)を含む水溶液を光反応セル(液量10mL)に入れ、アルゴン雰囲気中で撹拌しながら、水銀・キセノンランプを用いて上記水溶液に紫外〜可視領域の光(220〜460nm)を照射した。照射を開始してから水溶液を適宜サンプリングし、水溶液中に残存している過レニウム酸イオンをイオンクロマトグラフィーで定量した。同様にサンプリングした水溶液から遠心分離により固形分を分離し、水溶液中に含まれる総レニウム濃度をICP(Inductively coupled plasma;誘導結合プラズマ)発光分析で定量した。この定量で得られた、照射時間に対する過レニウム酸イオン濃度の変化を示すプロットを図2(a)に、照射時間に対する総レニウム濃度の変化を示すプロットを図2(b)にそれぞれ示す。
【0061】
水溶液中にアセトンを添加した実施例1〜4では、図1に示すように、紫外線の照射を開始してからすぐに過レニウム酸イオンの濃度が下がり始めることがわかる。そして、アセトンを9.02mmol/L添加した実施例2では、紫外線の照射を開始してから6時間経過後に水溶液中の過レニウム酸イオンが検出限界以下となることがわかった。また、実施例1及び2のプロットを対比すると、今回の実験条件となる過レニウム酸イオンの濃度(10.37mmol/L)では、アセトンの添加量が9.02mmol/L以上で効果が飽和することもわかる。なお、水溶液中から除かれた過レニウム酸イオンは、六価のReO及び四価のReOの混合物として沈殿していた。
【0062】
これに対して、水溶液中にアセトンを添加しない比較例1では、図2に示すように、紫外線の照射を開始してから10時間程度経過してから水溶液中の過レニウム酸イオンの濃度が低下し始め、水溶液中の過レニウム酸イオンが消失するまでに20時間近くの時間が必要であることがわかる。
【0063】
[実施例5(レニウムに対する選択性試験)]
本発明に係るレニウムの回収方法において、他の金属に対するレニウムの選択的回収性を調べた。選択的回収性を調べるにあたり、リサイクル時にレニウムと混合されていることの多いモリブデンを共存金属とした。つまり、レニウムとモリブデンとを共存させた状態で本発明に係るレニウム回収実験を行い、どの程度レニウムを選択的に回収できるのかを調べた。
【0064】
2−プロパノール(0.50mol/L)、アセトン(9.13mmol/L)、過レニウム酸カリウム(KReO、10.37mmol/L;レニウム純分として1.93g/L)、モリブデン酸カリウム(KMoO、10.37mmol/L;モリブデン純分として0.99g/L)、及び水中のイオン強度を一定に保つための試薬である過塩素酸ナトリウム(NaClO、0.10mol/L;0.99g/L)を含む水溶液を光反応セル(液量10mL)に入れ、アルゴン雰囲気中で撹拌しながら、水銀・キセノンランプを用いて上記水溶液に紫外〜可視領域の光(220〜460nm)を照射した。なお、調製された溶液のpHは6.3だった。照射開始前、及び照射を開始してから2時間後、3時間後、6時間後の水溶液をそれぞれサンプリングし、サンプリングした水溶液から遠心分離により固形分を分離し、水溶液中に含まれる総レニウム濃度及び総モリブデン濃度をICP発光分析で定量した。その結果を表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
表1に示すように、水溶液中の総レニウム濃度は時間経過とともに大きく減少していくのに対し、水溶液中の総モリブデン濃度の減少は小さかった。また、6時間後の水溶液から遠心分離により固形分を回収し、ICP発光分析によりこの固形分に含まれる金属の質量比を求めたところ、固形分29.85mg中、レニウム59.9質量%、モリブデン3.5質量%だった。以上の結果から、本発明に係るレニウムの回収方法によれば、金属イオンの混合物の中からレニウムを選択的に回収できることが示された。
【0067】
[実施例6(pHの変化に対する選択性の変化を調べる試験)]
2−プロパノール(0.50mol/L)、アセトン(9.0mmol/L)、過レニウム酸カリウム(KReO、10.37mmol/L)、モリブデン酸カリウム(KMoO,10.37mmol/L)、及び水中のイオン強度を一定に保つための試薬である塩素酸ナトリウム(NaClO、0.10mol/L)を含み、塩酸水溶液又は水酸化ナトリウム水溶液を用いて表2に示す各pHに調整された水溶液をそれぞれ光反応セル(液量10mL)に入れ、アルゴン雰囲気中で撹拌しながら、水銀・キセノンランプを用いて上記水溶液に6時間光照射した。反応後、溶液中の総レニウム濃度及び総モリブデン濃度と、沈殿が発生した場合には沈殿中の総レニウム量及び総モリブデン量をICP発光分析で定量した。その結果を表2に示す。
【0068】
【表2】
【0069】
表2に示すように、pHが9.1以上のサンプルでは、光照射後に溶液中の過レニウム酸イオンのほぼ全量が沈殿として析出したことがわかる。その一方で、これらのサンプルでは、溶液中の総モリブデン濃度は殆ど減少しておらず、沈殿中にもモリブデンは殆ど含まれていなかった。溶液のpHを6.3として同様の実験を行った実施例5でも同じような結果が得られたことから、少なくとも溶液のpHが6.3以上であれば、複数の金属イオンを含む溶液からレニウムを選択的に析出させることができると理解できる。これとは逆に、pHが4.7のサンプルでは、レニウムよりもモリブデンの方が沈殿中に多く含まれる結果となり、pHにより析出する金属の選択性が逆転することが理解できる。これらの結果をまとめると、レニウムと他の金属とを含む溶液系において本発明の方法を実行すると、溶液のpHが6.3以上のときにはレニウムが析出することによりこれを選択的に分取することができ、溶液のpHが4.7以下のときには他の金属が析出することにより溶液中から他の金属を除去できることがわかる。このことから、本発明によれば、レニウムとその他の金属とを含む溶液からレニウムを選択的に回収する方法が提供されることがわかる。
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2016年7月1日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
過レニウム酸イオンを含む溶液に、脂肪族第二級アルコール又は脂肪族第二級チオアルコールである電子供与剤、及びケトン化合物を添加する添加工程と、
前記添加工程を経た前記溶液に紫外線を照射することにより、前記溶液に含まれる過レニウム酸イオンの還元体を析出させる紫外線照射工程と、
前記紫外線照射工程により析出させた過レニウム酸イオンの還元体を前記溶液から分取する分取工程と、を含み、前記紫外線照射工程における紫外線の照射を、前記溶液のpHが6.3以上である条件下で行うことを特徴とするレニウムの回収方法。
【請求項2】
前記電子供与剤が脂肪族第二級アルコールである請求項記載のレニウムの回収方法。
【請求項3】
前記電子供与剤が2−プロパノールである請求項1又は2記載のレニウムの回収方法。
【請求項4】
前記ケトン化合物がアセトンである請求項1〜のいずれか1項記載のレニウムの回収方法。
【請求項5】
過レニウム酸イオン及び共存金属(アルカリ金属及びアルカリ土類金属を除く。)を含む溶液に、脂肪族第二級アルコール又は脂肪族第二級チオアルコールである電子供与剤、及びケトン化合物を添加するとともにその溶液のpHを6.3以上に調節し、次いでその溶液に紫外線を照射して当該溶液に含まれる過レニウム酸イオンの還元体を析出させることを特徴とし、前記共存金属がモリブデンである、レニウムとその他の金属とを含む溶液からレニウムを選択的に回収する方法。
【請求項6】
過レニウム酸イオン、及び共存金属(アルカリ金属及びアルカリ土類金属を除く。)を含む溶液に、脂肪族第二級アルコール又は脂肪族第二級チオアルコールである電子供与剤、及びケトン化合物を添加するとともにその溶液のpHを2.1を超え4.7以下に調節し、次いでその溶液に紫外線を照射して当該溶液に含まれる共存金属の化合物を析出させることを特徴とし、前記共存金属がモリブデンである、レニウムとその他の金属とを含む溶液にてレニウムの含有比率を高める方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
(1)本発明は、過レニウム酸イオンを含む溶液に、脂肪族第二級アルコール又は脂肪族第二級チオアルコールである電子供与剤、及びケトン化合物を添加する添加工程と、上記添加工程を経た上記溶液に紫外線を照射することにより、当該溶液に含まれる過レニウム酸イオンの還元体を析出させる紫外線照射工程と、上記紫外線照射工程により析出させた過レニウム酸イオンの還元体を上記溶液から分取する分取工程と、を含み、前記紫外線照射工程における紫外線の照射を、前記溶液のpHが6.3以上である条件下で行うことを特徴とするレニウムの回収方法である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
)上記電子供与剤は、脂肪族第二級アルコールであることが好ましい。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
)上記電子供与剤は、2−プロパノールであることが好ましい。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
)上記ケトン化合物は、アセトンであることが好ましい。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
)また本発明は、過レニウム酸イオン及び共存金属(アルカリ金属及びアルカリ土類金属を除く。)を含む溶液に、脂肪族第二級アルコール又は脂肪族第二級チオアルコールである電子供与剤、及びケトン化合物を添加するとともにその溶液のpHを6.3以上に調節し、次いでその溶液に紫外線を照射して当該溶液に含まれる過レニウム酸イオンの還元体を析出させることを特徴とし、前記共存金属がモリブデンである、レニウムとその他の金属とを含む溶液からレニウムを選択的に回収する方法でもある。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
)また本発明は、過レニウム酸イオン、及び共存金属(アルカリ金属及びアルカリ土類金属を除く。)を含む溶液に、脂肪族第二級アルコール又は脂肪族第二級チオアルコールである電子供与剤、及びケトン化合物を添加するとともにその溶液のpHを2.1を超え4.7以下に調節し、次いでその溶液に紫外線を照射して当該溶液に含まれる共存金属の化合物を析出させることを特徴とし、前記共存金属がモリブデンである、レニウムとその他の金属とを含む溶液にてレニウムの含有比率を高める方法でもある。